5.3 柱の断面設計 5.3.6 SRC柱 5.3.6 SRC柱 INDEX: 曲げモーメントと軸力に対する計算・せん断力に対する計算・2 軸応力の検討・軸力制限 (1)曲げモーメントと軸力に対する計算 1)許容曲げモーメントと許容軸力の計算 柱の許容曲げモーメントは(SRC 規準(2001)17 条)に基づき一般化累加強度により算定する。 N rN sN M rM sM ここで sM :軸力 sN を受ける S 部分の許容曲げモーメント rM :軸力 rN を受ける RC 部分の許容曲げモーメント S 部分の許容曲げモーメントはS柱に準じ、 (全体、局部)座屈を無視して計算する。ただし、SRC 柱 の場合、許容曲げモーメントの計算にウェブは考慮しない。軸応力度、せん断応力度の算定については 建物共通条件の SRC ウェブ軸力考慮指定により、ウェブを考慮するかどうかを指定できる(デフォルト は「考慮」 ) 。 「考慮」とした場合、ウェブ部について軸力・せん断力の組合せ応力度を検討する。鉄骨継 手位置での計算では、継手形式が「HTB」の場合、指定の低減係数で鉄骨の断面性能を低減する。 RC 部分の許容曲げモーメントは RC 柱に準じて計算する。このときコンクリートの許容圧縮応力度は 圧縮側の鉄骨比を考慮した下式による。 fc fc( 1 15spc ) sAc spc bD ここで fc :コンクリートの許容圧縮応力度 sAc :圧縮側の鉄骨断面積 b、D :コンクリート断面の幅と成 2)設計法 部材端については、断面設計の方法として SRC 造としての設計のほか、 「RC 設計」 、 「S 設計」を指定 できる。 「RC 設計」の場合、sM =0 として設計する。 「S 設計」の場合、rM =0 として設計する。 一般的な SRC 設計の場合、許容曲げモーメントは最初に RC 部分と S 部分の軸力分担を決定し、それ ぞれの対応する許容曲げモーメントの累加値とする。S 部分の曲げモーメント分担率 α の指定がある場 合、S 部分の分担曲げモーメント sM を作用曲げモーメント M に対し sM M とする。 軸力の分担は RC 部分の許容曲げモーメントができるだけ大きくなり、かつ、軸力の変動に対して RC、 S 両部分の許容モーメントが滑らかに変化するよう決定する。作用軸力に対する軸力分担の概念的関係 B-5.3.6-1 5.3 柱の断面設計 5.3.6 SRC柱 を下図に示す。ここで Nopt は RC 部分の最大許容モーメントに対応する軸力である。 rNc sNc rM(Nopt) sM0 設計手順 圧縮 ← 存在軸力 → 引張 RC rNt ①RC 部許容モーメントが最大と RC 軸力分担 曲げモーメント分担 S なる RC 部軸力 Nopt を決める。 ②存在軸力 N から Nopt を引き 鉄骨負担軸力 sNc を求める。 ③sNc 時の S 部許容モーメントを RC S 求める。 ④RC 部と S 部の許容モーメント Nopt を足し SRC 部材の許容モーメン トを算出する。 S sMt rM0 sM0 図-5.3.6.1 SRC 柱の軸力分担と許容モーメント構成比の概念 具体的な設計手順は下記である。 ① 存在軸力に応じて鉄骨と RC の分担軸力を決定(sNd、rNd) ② 鉄骨の分担軸力に対する許容曲げモーメントを計算(sMd=sMa)。なお、座屈長さ(部材長)が断 面せいの 12 倍を超える場合は、学会 SRC 規準17 条 5 項により、鉄骨の許容圧縮応力度を鋼構造設 計規準に準じて算定する。 ③ S 部分の分担率 α の指定がある場合 sM M を検討する α 未満の場合、分担率を満たす sMd、sNd、rNd を再設定 ④ sMd を存在モーメントから引いて RC の設計モーメントを決定(rMd) ⑤ rMd に対し必要主筋量を求め、主筋がならぶかどうかを検討 ここでステップ③の具体的手順は下記である。 1. 軸力 0 の鉄骨許容モーメントを求める(sM0) 2. M sM0 の場合、分担率 α を無視して検討し、注意メッセージを出力する。 3. M sM0 の場合、 sMd M とする 4. sMd'に対する鉄骨許容軸力を下式で求める sNa 5. sMd sM0 sNd sMd sM0 sNd'=sNa とし、RC 部分の設計軸力を修正する(rNd'=N-sNd') B-5.3.6-2 5.3 柱の断面設計 5.3.6 SRC柱 sN rN sNd rNd' sNd' rNd sMo sMd sM rM αM=sMd' 図-5.3.6.2 S 部分分担率 α による各部設計応力の修正 RC 部分と S 部分のせん断力分担はモーメント分担に比例させるから、短期せん断検討時に S 部分の許 容せん断耐力が不足する場合がある。その場合は S 部分の設計曲げモーメントを 0.99 S部分の許容せん断力 sMd 存在モーメント 設計用せん断力 と修正し(減じ) 、ステップ④の手順を繰り返す。なお、この場合、軸力分担は変更しない。結果的に S 部分の軸耐力に余剰が生じる。これはウェブに軸力を負担させている場合もあり、軸力の影響で再度ウ ェブの耐力が不足するようになる事態を回避するためである。 (2)せん断力に対する計算 許容せん断力は(SRC 規準(2001)18 条)に基づき下式による。 長期荷重時 Q Qa 短期荷重時 sQd sQa rQd rQa 1)長期許容せん断力式 長期許容せん断力の算定は下式による。 Qa 1 rQa rQa 'fs b j α'、β、j は下式による。 α α ' b' 3 b b' α の場合 b 3 b' α の場合 b 3 B-5.3.6-3 5.3 柱の断面設計 5.3.6 SRC柱 4 M 1 Qd 15 As b j j 7 d 8 かつ 12 d D dt b' b sB ここで D :柱成 b :柱幅 As :鉄骨せん断断面積 dt :引張側の主筋重心位置 sB :鉄骨のフランジ幅または直交方向の鉄骨成 2)短期許容せん断力式 S 部分の許容せん断力は下式による。 sQa sAs sfs ここで sAs:鉄骨せん断面積 sfs:鉄骨の許容せん断応力度 RC 部分の許容せん断力は下式による。 rQa min rQa1、rQa2 rQa1 fs 0.5 pw wft b j b' rQa2 2 fs pw wft b j b j 7 d 8 d D dt pw aw bx b' b sB pw の値が 0.6%を超える場合は 0.6%とし、pw の最小値は 0.1%とする。 ここで D :柱成 b :柱幅 d :柱の有効成 dt :引張側の主筋重心位置 aw :1 組の帯筋断面積 x :帯筋間隔 B-5.3.6-4 5.3 柱の断面設計 5.3.6 SRC柱 fs :コンクリートの許容せん断応力度 wft :帯筋のせん断補強用許容引張応力度 3)設計用せん断力 設計用せん断力は方向別に算定し、設計ルートに応じて次のように設定する。 また、主な記号は次の通りとする。 rQy :柱梁の降伏メカニズムを考慮したせん断力 rQd :鉄筋コンクリート部分の設計用せん断力 sQd :鉄骨部分の設計用せん断力 rMd/M :鉄筋コンクリート部分のモーメント分担率 sMd/M :鉄骨部分のモーメント分担率 rMd L /M L :鉄筋コンクリート部分の長期モーメント分担率 sMd L /M L :鉄骨部分の長期モーメント分担率 Qℓ :長期せん断力 Qo :単純梁とした場合のせん断力(柱では Qℓ とする) Qe :地震力(短期水平力)によるせん断力 sM1 :柱の鉄骨部分の柱頭部の短期許容曲げモーメント sM2 :柱の鉄骨部分の柱脚部の短期許容曲げモーメント rM1 :柱頭部の鉄筋コンクリートの負担する終局曲げモーメント rM2 :柱脚部の鉄筋コンクリートの負担する終局曲げモーメント h' :柱の内法寸法 a)ルート 1 およびルート 3 の場合 ① Qd min Qd1、Qd2 ② Qd1 rQd1 sQd1 ③ Qd2 rQd2 sQd2 ここで sQd1 sMd Q n・Qe M sQd2 sMd L sM1 sM2 Q ML ' rQd1 rMd Q n Qe M rQd2 rMd L rM1 rM2 Q ML ' n=1.0(固定値) n=1.0(固定値) 鉄骨分担率指定がある場合、 sMd/M は Max(sMd/M,(指定値)) rMd/M は Min(rMd/M,(1-指定値)) とする。 B-5.3.6-5 5.3 柱の断面設計 5.3.6 SRC柱 rQdy は以下の 3 ケースのうちで一番せん断力が小さくなる値とする。 柱頭:柱ヒンジ/柱脚:柱ヒンジ 柱頭:柱ヒンジ/柱脚:梁ヒンジ 柱頭:梁ヒンジ/柱脚:柱ヒンジ ただし、ピン接合の大梁は柱取り付き梁と扱わず、梁の rMy はゼロとする。また、柱に RC・SRC 大梁が取り付かない場合、柱 rMy は地震時曲げモーメントの RC 負担分とする。 b)ルート 2 の場合 (構造規定(2001)付録 1-4.1) ① rQd min rQd1、rQd2 ② rQd1 2( Q sQd ) ③ rQd2 rM1 rM2 h' sQd sM1 sM2 h' ルート 2 では鉄骨分担率指定は無効である。 ここで、Q は Qe を用いる。また、柱頭部の RC 部分の終局曲げモーメント rM1 は、柱の頭部に接続す る左右の梁の S 部分の短期許容曲げモーメントと RC 部分の終局曲げモーメントの和の 0.5 倍(最上階の 柱にあっては 1.0 倍)から柱の頭部 S 部分の短期許容曲げモーメントを引いた値(負になる場合は 0)と、 柱の頭部の RC 部分の終局曲げモーメントのうち、いずれか小さい値とする。rM2 は柱脚の RC 部分の終 局曲げモーメントとする。 S 部の許容曲げモーメントは構造関係技術基準の次式による。 sMs Ze fbs sMs Ze ( fts sN / sA ) sN / sA fts ここに Ze :鉄骨の有効断面係数 fbs :鋼材の短期曲げ許容応力度 fts :鋼材の短期引張り許容応力度 sA :柱鉄骨の圧縮・引張り有効断面積 RC 部分の終局曲げモーメントは構造関係技術基準の次式による。 梁: rMy 0.9 at y d rN max rN 柱: rMy 0.8 at y D 0.12 b D 2 Fc rN max 0.4 b D Fc 0.4 b D Fc rN rN max rMy 0.8 at y D 0.5rN D(1 rN ) b D Fc rMy 0.8 at y d 0.4 N D rN min rN 0 ここに at 0 rN 0.4 b D Fc :引張鉄筋断面積 B-5.3.6-6 5.3 柱の断面設計 5.3.6 SRC柱 σy :引張鉄筋の降伏点 d :梁の有効成 D :柱成 rN :柱の長期軸力と地震力による軸力の和(コンクリート負担分) sN :柱の長期軸力と地震力による軸力の和(鉄骨負担分) b :柱の幅 Fc :コンクリートの設計基準強度 ルート 2 の場合、rM1 は下式による。 rM1 MINn ( LgMR RgML ) sM1, rMu , rM1≧0 ここに、 n :rM1 を計算する節点の上に柱が存在するときは n=0.5、存在しない場合は 1.0 とする。 L(R)gMR(L):柱頭に連なる左側(右側)大梁右端(左端)に関して、柱の地震時せん断力の符 号に応じた、梁の S 部分の短期許容曲げモーメントと RC 部分の終局曲げモーメントの和。柱の せん断力が+の場合は左側(右側)大梁右端(左端)は上曲げ(下曲げ) 、-の場合は下曲げ(上 曲げ)とする。 sM1 :柱頭に関して、軸力 sN 下の鉄骨部の短期許容曲げモーメント rMu :柱頭に関して、軸力 rN 下の RC 部の終局曲げモーメント B-5.3.6-7 5.3 柱の断面設計 5.3.6 SRC柱 設計用せん断力の「構造関係技術基準」との比較を次表に示す。 表-5.3.6.1 設計ルートによる設計せん断力の扱い 構造関係技術基準 本システム Qd=min(Qd1,Qd2) Qd=Qd1、Qd2、min(Qd1,Qd2) Qd1=QL+nQE から指定(ルート 1 用、デフォルト min ルート 1 柱・梁 nは 1.0 以上 (Qd1,Qd2) ) Qd2=Q0+αQy rQd1=rMd/M×(QL+nQE) αは 1.0 sQd1=sMd/M×(QL+nQE) Qy は両端降伏 nは 1.0 rQd2=rMd/M×QL+α(rM1+rM2)/ 柱では、柱頭梁降伏可 h' sQd2=sMd/M×QL+α(sM1+sM2)/ h' αは 1 M1,M2 は両端の終局 M 柱の RC 部分では上下一方梁の RC 終局 M との小さい方 ルート 2-1・2-2 柱・梁 rQd=min(rQd1,rQd2) rQd=rQd1、rQd2、min(rQd1,rQd2) rQd1=2(Q-sQd) から指定(ルート 2 用、デフォルト min rQd2=rQL+(rM1+rM2)/h' (Qd1,Qd2) ) rQd1=2(Q-sQd) 柱の場合 rM1=min(上側梁 sMa+rMu rQd2=rMd/M×QL+α(rM1+rM2)/ -柱頭 sM1,柱頭 rMu) h' rM2=柱脚 rMu αは 1 梁の場合 柱の場合 rM1=min(上側梁 sMa+rMu rM1,rM2 は両端 RC 終局 M -柱頭 sM1,柱頭 rMu) rM2=柱脚 rMu 梁の場合 rM1,rM2 は両端 RC 終局 M B-5.3.6-8 5.3 柱の断面設計 5.3.6 SRC柱 ルート 3 柱・梁 Qd=min(Qd1,Qd2) Qd=Qd1、Qd2、min(Qd1,Qd2) Qd1=QL+nQE から指定(ルート 1 用、デフォルト min nは 1.0 以上 Qd2=Q0+αQy αは 1.0 (Qd1,Qd2) ) rQd1=rMd/M×(QL+nQE) sQd1=sMd/M×(QL+nQE) Qy は両端降伏 柱では、柱頭梁降伏可 nは 1.0 rQd2=rMd/M×QL+α(rM1+rM2)/ h' sQd2=sMd/M×QL+α(sM1+sM2)/ h' αは 1 M1,M2 は両端の終局 M 柱の RC 部分では上下一方梁の RC 終局 M との小さい方 SRC造で、Qd2 計算時に取り付き部材がない側は、存在M E ×rMd/Mを採用する。 B-5.3.6-9 5.3 柱の断面設計 5.3.6 SRC柱 (3)2 軸応力の検討 2 軸曲げの検討は、z軸、y軸回りの設計曲げモーメントと SRC 柱の許容曲げモーメントにより、RC 柱と同様の方法で、それぞれの軸回りの割増しモーメントと割増軸力を設定する。 2 軸せん断の検討は長期応力に対しては RC 柱と同様の方法でそれぞれの方向の割増せん断力を設定す る。短期応力に対しては、RC 部は RC 造に準じて方向別に割増しせん断力を設定するが、S 部は 2 軸に よるせん断力の割増しは行わない。詳細は RC 柱の 2 軸相関を考慮したせん断設計・短期応力に対する 設計による。 2 軸応力の検討方法は、通常の1軸応力の検討と同じ方法による。 (4)軸力制限 SRC 柱は、短期荷重時の作用圧縮力に対し下記の軸力制限を検討する。ただし検討とし、断面計算の 可否判定には考慮しない。 制限軸力= n ( 1 2 Ac Fc As F ) 3 3 ここで Ac b D または Ac 1 D2 4 As :鉄骨の全有効断面積 F :鋼材の F 値 nのデフォルト値は 1.0 である。 B-5.3.6-10
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