Title 雁行型産業発展 : 小島モデル Author(s) - HERMES-IR

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雁行型産業発展 : 小島モデル
小島, 清
駿河台経済論集, 10(2): 101-130
2001-03
Departmental Bulletin Paper
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/10086/16764
Right
Hitotsubashi University Repository
雁行型産業発展 :小島モデル
論
文
雁行型産業発展 :小島モデル
小
Ⅰ 課
島
活
題
赤松雁行形態論 は,1
9
8
0
年代 のアジア経済発展 の基礎 モデル として世界的に
有名 になった (
小 島活
2
0
0
0
.3)
0 1
9
9
7
年 7月にタイか ら始 まったアジアの通
貨 ・金融危機 とともに批判 の矢面 に立 たされている。 しか しそれ らは雁行型経
済発展 の国際的 (
ない し地域 的)伝播 の側面 をめ ぐっての討議 である。
Thef
l
yi
ngge
e
s
epa
t
t
e
mo
fde
ve
l
o
pme
nt
)が経済
今や雁行型経済発展論 (
発展論 ない し開発経済論 として優 れた もの,有用 な ものである との理論的真価
e
ndo
ge
no
us
が問われ るに至 った。近年急進歩 しつつ あ る内生 的経 済成長論 (
gr
o
wt
ht
he
o
r
y) と比較 して再評価 されつつある。 この ことを大 いに歓迎 した
い。 なかんづ く,経済企画庁研究所 で伊藤敏隆 グループが 『
構造変化 を伴 う東
s
雁行形態論-』経企庁経済研 究所編 『
経済分
アジアの成長一新古典派成長論v
6
0
号 (
2
0
0
0
.1)なる浩潮 な研 究 レポー トを発表 した。それは後発国の
析』第1
経済発展 を解 明す るには,雁行形態論 が行 ってい る よ うに,産業構 造 の多様
化 ・高度化 を中心 に据 えるモデルでなければな らない と言 う。かかる問題意識
DPとい う一部 門分析 であ る内生 的経済成
の設定 は正 しい。 しか し,それ をG
長論 に依拠 しつつそれ を修正拡充す ることによって果たそ うとしているように
見 うけ られる。 もう一つ,内生的経済成長論 は結局先進経済の ものであって,
後発工業化国のため には別の発想が要望 されるのではないか。 こういった伊藤
グループ報告 をめ ぐる若干の コメン トを第 Ⅱ節で展 開 してみ る。
産業構造の多様化 ・高度化 と各キイ産業の能率化 によって経済発展 を段 階的
に推進 し,先進経済 にキ ャッチ ・アブす る とい うのが雁行型経済発展 の小 島モ
o
n
o
mi
cJ
o
u
r
n
al1
9
6
0の小 島論文が これである。国際経済学の伝
デルである.Ec
c
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c
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r
-Ohl
i
nThe
o
r
e
m) に立脚 す る も
統 た る要素賦存比 率論 (
す なわ ちHe
-1
0
1-
駿河台経済論集 第1
0
巻第 2号 (
2
0
0
1
)
のである。それを最適資源配分図に表現 し直 したものが本稿の第Ⅲ節である。
伊藤 グループの複雑な数式モデルよりははるかに簡単明瞭であ り実際問題に適
用 し易いはずである。
第Ⅳ節では,雁行型産業発展モデルを国民経済発展へ適用する場合の留意事
項が先ず検討 される。ついで 日本経済へ適用 した小島の実証研究が紹介 される。
もう 1つの主要問題たる雁行型発展のアジア諸国への伝播については別稿にゆ
ずることにする。
Ⅱ 内生的経済発展論
伊藤 グループ報告書が,次のような問題意識に立脚 していることについては,
私はそれを全面的に歓迎 し支持 したい。すなわち 「
東アジアの高度成長は,こ
の雁行形態論により,良 く説明できる,とい うのが,本研究の基本的な立場で
」(
経済分析
ある。
第1
6
0
号 ,p.
1
2
)
0
「このように一国でみると,持続的な経済成長は,産業構造の変化 を伴 うこ
と,また各国比較で (
横断的に)みると,既存の比較優位産業が,つ ぎつ ぎと
先行国か ら後続国へ と移行 してい くことがわかる。 このような発展形態が,い
Fl
yi
ngGe
e
s
ePa
t
t
e
r
n)の基本的な考え方である。
」(
同
わゆる 「
雁行形態論」 (
所)
。
伊藤敏隆教授はじめ研究 グループの方々が どれだけ正確に雁行型経済発展論
を理解 されているかは分 らないが,区別 さるべ き 2つの問題がある。第 1は,
a
t
c
h
-up pr
o
c
e
s
sにおいて,産業構造の多様化 ・高度化 と各産業
先進経済へのc
の能率化が継起的に繰返 されつつ経済発展 をとげること一 一国の雁行型経済発
展のプロセス-。第 2は,雁行型発展が リーダー雁 (
l
e
a
de
rgo
o
s
e
)か ら後続
o1
f
l
owe
rgee
s
e
)へ,順次国際的 (
或いは地域 的)に伝播 し,相互成長刺
雁 (
vi
r
t
uo
usc
i
r
c
l
e
)発展 をもた らすことである。伊藤研究
戟的な地域的好循環 (
グループはこの二つの問題 を,私が努力 している雁行型経済発展論の本来の方
,
新 しい成長論」の線 に沿って,それを修正 ・拡大する
向に拠 ってではな く 「
構造変化 と内生的
ことによって解明で きないか と試みている。 ことに第 2章 「
」が第 1の問題 に,第 7章 「
産業構造高度化 ・直接投
成長 (
柴田 ・稲村論文)
資 と経済成長 (
深尾 ・保原論文)」が第 2の問題に,アプローチ している。
-1
0
2-
雁行型産業発展 :小島モデル
(
1
) 新成長論
gr
o
wt
ht
he
o
r
y)は急速に発展 し多様化 して きた。基本的
近年,成長理論 (
な新古典派成長モデルであるSo
l
o
w (
1
9
5
6
)か ら始 ま り,Pa
ulRo
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r(
1
9
8
6
)
や Ro
be
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tLuc
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s(
1
9
8
8
) は技術 と人的資本が成長の原動力であることを明 ら
be
r
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rSa
l
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トMa
r
t
i
n(
1
9
9
5
) らによって
かに した。そ してRo
各種内生的成長論が展開されつつある。これ らを一括 して 「
新成長論」 と呼ぶ
Ada
m Smi
t
hや Da
vi
dRi
c
a
r
d
oらの古典派 と区別する意味で)0
ことにしたい (
新成長論は次の生産関数を出発点 とする。
Y-F(
K,L)
ここでγは一つの同質の財の産出量即 ちGDP (
国内総生産)の量であるとする。
,
は投入量 を各 1単位
このYが資本Kと労働Lの投入 によって生産 される。K,I
増せばγは増加する。即ちK,Lの限界生産物 (
力)は正である (
F′
>0)o L
F"<0)
.
か LK,Lの投入量 を増加するにつれその限界生産力は逓減す る (
このため資本投入が継続的に増加すると,成長は逓減 し遂に利潤ゼロに陥 り停
資本蓄積モデル)と名づけるならば (
そ
止することになる。か りにK-モデル (
れがソロー ・モデルであった),資本限界生産力の逓減 に伴い成長が停止せ ざ
るをえないという限界に直面する。 この限界 を克服するために技術進歩が導入
されることになったのである。
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ntr
e
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nst
os
c
a
l
e(
規模 につ いて収
生産関数については もう一つ c
穫不変) という仮定を置 くo(
1
)
式において,KとLの投入量 をともに 人倍 に増
せば産出高Yも1倍になる。次のコブ-ダグラス型であ らわす。
Y-F(
K,L)-K山
L
,1 u
αは資本シェア, 1-αは労働 シェアである。
完全競争が支配 している一つの経済では,賃金率 をW,資本の レンタルをr
であ らわすならば,企業は利潤極大化 を目ざして,次の間題を解 くことになる。
ma
xI
F(
K,I
,
)-r
K-WLI
K,i
企業は労働の限界生産物が貸金に等 しくなるまで労働 を雇い,資本の限界生産
物が資本の レンタル価格 に等 しくなるまで資本 を投入する (
産出物の価格 を標
準化 して 1とおいている)
0
-1
0
3-
駿河台経済論集
第1
0
巻第 2号 (
2
0
0
1
)
雁行型産業発展 :小島モデル
W-票 -(1-α)
i
aF
Y
r=T K=ak
wL+r
K=Y
(
2)
式の生産関数は,労働者 1人当 りの産出量 をy-Y/
L,労働者 1人当 り資
本をk-K/
Lとすると,
y=ku
と書 き直せ る。横軸 にk,縦軸 にyをとる図 1において,このy-kq
生産関数は,
上方に凸なる放物線 として描ける。これが次のことを示す。すなわち労働者 1
人当 り資本が増加するにつれて,企業の生産する労働者当 り産出量 も増大する。
しか し,労働者 1人当 り資本の収益 は逓減す る (
ジ ョー ンズ邦訳
1
999,p.
2
8)。
次に,資本Kは次のように して蓄積 される.労働者であ り消費者で もある個
人 (
家計)は,その所得,すなわち賃金 と資本 レンタル収入の合計 Y-wL+r
K
の一定割合Sを貯蓄する.そ してこのs
Yを投資する,すなわち資本の蓄積 に充
てる。毎期資本ス トックの一定割合dが減耗するものと仮定する。期 間当 り資
本ス トックの変化 K,
_
I
-K,を連続時間についての量 として表 した ものを,k っ
まり資本の成長率 とする。そこで資本蓄積方程式は
K-s
Y-dK
となるo もう 1つ,人口増加率は所与のnであるとする。 この場合,労働力の
成長率L/Lもnになる。
こうして,資本の蓄積方程式 を労働者 1人当 りの関数 として書 き直す と次の
ようになる。
k-s
y-(
n+d)
k
(
7)
式 を図 1のようにあ らわすことがで きる。 これが基本的なソロー ・ダイヤ
は上述の生産関数(
5)
である.これに貯蓄率S
グラムである。第 1の曲線ッ=ka
(
< 1) を掛けた第 2の曲線s
y-s
kq
が一人当 り投資を示 している.第 3の曲線
n+d)
kなる直線で,人口増加 と資本減耗分であ り,労働者 1人当 り資本
は, (
装備量を保持するために不可欠な労働者 1人当 り新規投資の額をあ らわ してい
る。s
y曲線 と(
n+d)
k直線 との差額が 1人当 り資本装備量の変化 になる.k
o
に
-1
0
5-
駿河台経済論集
第1
0
巻第 2号 (
2
0
0
1
)
おいては投資が続け られて 1人当 り資本装備量が増加す る (
資本深化c
a
pi
t
a
l
y- (
n+d)
k即 ちk-0になるk*
の点 まで続 くO
de
e
pe
ni
ngと言 う)。それは,s
この点で労働者 1人当 り資本装備量は一定になる,即 ち定常状態s
t
e
a
dys
t
a
t
e
に達するのである。
資本蓄積方程式(
7)
の両辺をkで割ると次式が導ける。
k/k-s
kq 1-(
n+d)
ここで αは 1よ り小 さいので,k
が増大す るにつれてkの成長率は次第に低下
8)
式 を図 2のように描 くことがで きるO即ちs
y/kは右下 りの曲線
する.そこで(
になる。これは労働者 1人当 り資本装備量kの水準が高 まると,投資の平均生
y/k産物s
投資収益曲線 と名づけよう-
は,資本蓄積の収益逓減 (αは 1
より小)により漸減するのである。そこで人口増加 と資本減耗をカバーするに
必要な 1人当 り投資率 (
n+d)と,この投資収益率 とが一致す るk*点 まで,投
資すなわち資本ス トックの増加 (
成長)が続けられる。それがk
/
kである。
か くて明 らかになったソロー ・モデルの重要な結論はこうである。すなわち,
資本蓄積が進むにつれ,投資の収益は逓減 し,定常状態に達 し,一定水準の成
長に止 まるということである。
(
2) 成長拡大方策
成長を停止 させない,いな成長 を拡大するための諸方策が究明された。図 2
で言 うと,投資収益線s
y/kを右方- シフ トさせ,最適資本装備額k*を右方へ移
行 させる方策 を見出すことである。
yを増大 させ ることである。(
n+d)と
第 1の方策は,貯蓄率Sを高め,投資s
一致するより高い水準の新 たなk*に到達す るまで労働者 1人当 り資本装備量
を高める。そうすると 1人当 り産出量 も増大 し,経済全体 として以前 よりも豊
かになるのである。
第 2は,生産関数の中に,何 らかの技術進歩変数Aをとり入れることである。
たとえば,
Y-F(
K,AL)-Ka(
AL
,
)一一q
とするのである。技術変数Aの取入れ方にヴラエティがあるが,総括 してAKモデル (
資本蓄積 +技術進歩モデル) と言われる。Aの増大 とい う生産関数の
変化があると,図 1のs
y曲線 を上方にシフ トさせ,また図 2のs
y/k (
投資収益
-1
0
6-
雁行型産業発展 :小島モデル
曲線) を右方へ シフ トさせ る。その結果,一人当 り最適資本装備量k*
の水準
を高めることになる。これが小島モデルにおいて 「
生産方法の能率化」 と言っ
ている方策であるが,それには厳密に言 うと二種ある (
後述)
0
第 3に,生産技術 的に,Y財はⅩ財に くらべ より資本集約的投入 を要す ると
しよう (
資本 には物 的資本 と人的資本を含むとする)
。図 2で言 うと,図示の
s
y/k曲線がⅩ財生産についての投資収益 曲線であるに対 し,それ よりも右方に
もう一本,よ り資本集約的なY財 につ いてのs
y/
k曲線 を描 くのである。資源
(
労働 ・資本)配分 をⅩ財生産について減 じ,Y財生産に増加するな らば,つ
まり産業構造 を多様化 ・高度化 させるならば,先の生産方法の能率化 と同様に,
両財生産における加重平均値 になる)の水準 を
一人当 り最適資本装備量k* (
高めることになる。これが小島モデルにおいて 「
産業構造の高度化」 と言って
いる方策である。
結局,次節で詳論するように,雁行型産業発展の小島モデルでは,資本蓄積,
生産の能率化,産業構造の高度化 とい う 3変数 を用いて,後発経済のキ ャッ
チ ・アブ発展プロセスを解明 しようとしているのである (
小島清
1
9
9
9,pp.
2
卜2
4
参照)
。
く
伊藤 グループ分析 )
同 じ問題意識をもつ伊藤グループではいかなるアプローチが とられているの
であろうか。代表 として 『
経済分析
6
0
号』の第 2章 「
構造変化 と内生的
第1
成長」 (
柴田 ・稲村論文)を取上げてみ よう。農業 と軽工業 との 2部門分析 は,
へクシヤー ・オ リー ン命題に従って行われる。軽工業の方が農業 よりも資本集
約的であるとする。両者の生産関数はK-モデルに従 う。そ うす ると,貯蓄率
が低いときには,農業か ら軽工業へ移行で きず,低い国民所得水準のままにと
どまる可能性が高い。貯蓄率が高ければ,農業に特化する可能性は少な く,軽
p.
43
)の
工業 をもつ ように産業構造 を多様化 ・高度化で きる, と結論す る (
である。 これは小島モデルと全 く同 じね らいと結論である。
しか し第 3部門 (
重工業)を導入するに当っては,それはa
dva
nc
edt
e
c
hno
1
-
ogyを採用す るとする。 これはAK-モデルであって,創設固定費用 を要 し,そ
pi
l
l
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re
f
f
e
c
tも生
れが大 きい程 より大 きい規模経済がえられる,また大 きなs
ずるという技術進歩である。 この結果,要素市場 と財市場での均衡の決定は,
農業 ・軽工業の 2部門についての完全競争 とは別の原理によって決定 され, 3
-1
0
7-
駿河台経済論集
第1
0
巻第 2号 (
2
0
01
)
部門間の資源配分は複雑にな り,不確定に陥る。私はこういうかっこうで第 3
部門そ して技術進歩 を組みいれない方が よい と思 う。またa
dva
nc
e
dt
e
c
hno
1
-
o
gyは外国に伝播 し,外部効果をもた らす といった雁行型発展の国際伝播 プロ
ppr
o
a
c
h
セスを解明 したいための伏線であるようであるが,その間蓮 は別 にa
した方が よいのではあるまいか。
雁行型経済発展の国際的伝播 を最 も詳 しく取上げているのが第 7章 「
産業構
造の高度化,直接投資 と経済成長」 (
深尾 ・保原論文)である。 (
この間題は紙
幅の制約上本稿の主題ではな く別稿 にゆず らねばならない)
。この論文は 「
産
業構造の高度化 を内生的に説明するモデル」 を構築する。それは精赦であるが
めん どうな数学モデルである。 どの程度高度な財 を生産で きるかのボー ダー
(
範囲) を㊥で示す と,それは資本 (
物的 ・人的資本の合計)の蓄積が進むほ
ど高 まる (
増加関数)。だが他方,新製品の開発 コス トが低いほ ど㊥は高 まる
(
減少関数)
。開発 コス トは資本集約度が高い,すなわち高度な財ほ ど大 きく
なると仮定すると,資本蓄積の進展 とのかねあいで産業構造の高度化が進むこ
とになるのである。
小島モデルは,資本蓄積の進展 と,財別資本集約度の格差だけによって産業
構造の高度化 を説明するシンプルなものである。探尾 ・保原モデルはこれに開
発 コス トの大小 という変数を追加 し複雑化 したことになる。
そこでそのような複雑化のね らいとか有用性が問われねばならない。第 1に,
深尾 ・保原モデルは新製品開発 を担 う先導削 ことって必要なモデルである。第
2に,雁行塑経済発展論は後発工業国 (
日本 も含め)のキャッチ ・アブ ・プロ
セスの解明に目標が しぼ られてお り,新製品開発は先導国に任かせ,後発国は
それを模倣するな り技術導入すると仮定 しておいてよい。 もちろん新製品,釈
工業の導入に当っては,技術,資本財などの輸入急増,国際収支安定化などの
困難が伴い,先進国か らのb
i
gpus
hが必要である (
Pr
e
bi
s
c
h 1
9
5
9を見 よ) と
いった議論 も出されている。
第 3に,深尾 ・保原モデルは海外直接投資 (
FDI
)の導入問題につなげたい
というね らいがある。すなわち直接投資による技術移転は受入国にとって本来
必要 とされた開発 コス トを低下 させるという論理で結びつけるのである。この
ようなアジア経済成長へのモデルの適用をね らいとするのであれば,直接投資
の導入か ら始発す る発展モデル (
FDHe
dgr
o
wt
hモデル) を当初か ら構築 し
-1
0
8-
雁行型産業発展 :小島モデル
r
o
t
r
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deo
r
i
e
nt
e
dFDIというモデルが
た方が よいであろう。そこでは小島のp
0
0
0
.3参照)0
重要な貢献 を果たすはずである (
小島 2
(
3
)雁行型発展論の評価
世銀報告 『
東アジアの奇跡-
経済成長 と政府の役割-
』(
オ リジナル
1
9
9
3,邦訳 1
9
9
4
)やADB報告 『アジア :変革への挑戦』 (
オリジナル 1
9
9
7,
邦訳
1
9
9
8
)では,その考え方の基礎 として,新古典派的理論 と内生的成長理
論が検討 されている。雁行型経済発展の赤松 ・小島理論は,それ らの分析 に
e
f
e
rして くれてはいない。こ
当って十分考慮 されているようであるが公式 にr
ういう状況下,雁行型産業構造高度化論をベ ターとして前面にお し出された経
企庁 ・伊藤 グループの研究 レポー トを歓迎 し高 く評価 したいのである。
Ra
de
l
e
ta
ndSa
c
hs(
1
9
9
7
)が,開発途上国の注 目に値す る開発理論 として,
i
gpus
h蕗,第 2にi
mpo
r
ts
ubs
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i
t
ut
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nti
ndus
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r
ypr
o
t
e
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o
n論
第 1にb
i
ngge
e
s
emode
l
をあげ,それを積極 的に評価 して くれ
とな らんで,第 3に且y
ている。すなわち,1
9
9
7
-9
8
年の東アジアの危機は,一過性の金融 ・通貨危機
にす ぎないか ら,東アジア経済は短期 間にそれを克服 した後,雁行型発展 に
従って長期的な成長 を続けると判断 しているのである。
l
do
r
,
Ve
r
do
o
r
n,
Thi
r
l
wa
l
l
といったイギ リス学派成長論が,産業構造
なおKa
変動 を成長の重要な要因と見ている (
これについての私の研究は進んでいない。
小島清
1
9
9
8
.9 を見よ)。今後検討 を加えたい。
Ⅱ 雁行型経済発展 モデル
赤桧雁行形態論のモデル化は,最初,小島清 「
資本蓄積 と国際分業一赤松博
士 「
産業発展の雁行形態」の-展開-」赤松要博士還暦記念論集 『
経済政策 と
9
5
8,pp.
4
4
3
-9
6 によって試み られ,それ をr
e
丘neL要
国際貿易』春秋社 ,1
j
i
maKi
yo
s
hi
,
"
Ca
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約 したものとして,Ko
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Vo
l
.
LXX (
De
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e
mbe
r1
9
6
0
)
,pp.
7
5
7
-6
8
が公刊 された。それは数字例 に よる
やや難解 なものであった。以下のように幾何図型によってより正確 に展開 しう
ることが さいきん分かったので,ここに提示 してみたい。
-1
0
9-
駿河台経済論集
第1
0
巻第 2号 (
2
0
0
1
)
小島モデルの基本は,国際貿易の伝統であるf
a
c
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o
rpr
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po
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he
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r
y(
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労働 と資本)を,資本蓄積の
He
c
ks
c
he
r
-Ohl
i
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he
o
r
e
m)であ り,生産要素 (
進展につれ,いかに複数産業部門に配分 してい くかを明示することにある。そ
ういう動態的資源配分についてはその後Ro
na
l
dW.
J
o
ne
s(
1
9
7
9
)がs
ugge
s
t
i
ve
な解明方式を与えていることがわかった (
それは小島 (
1
9
9
8.
l
l
)で紹介 した)。
(
1
) 赤松オリジナルの要点
赤松 「
雁行形態論」の核心 を小島は次のように要約 した。
小島は,雁行的発展の基本形態 (
生産の能率化) も副次的形態 (
生産の
多様化) ち,一国の資本蓄積の進展,いいかえれば資本対労働既存比率が
高まることを軸 として継起するとのモデルを提出 した。すなわち,一産業
の生産方法の改善,生産能率の向上,コス トの低下は,資本蓄積が進み資
本対労働比率が高まり,より資本集約的な生産方法に移 ることによって可
能 となる。他方,所与の労働 ・資本価格比率の下で,Ⅹ財 よりもY財は,
Y財 よりもZ財はさらにいっそう, より資本集約的な生産方法をとるとし
よう。そ うであるな らば資本蓄積が進み一国の資本 ・労働既存比率が高
まってはじめて, Ⅹ財のほかにより資本集約的なY財 も,さらに Z財 も生
産 しうるに至る。つ まり生産の多様化 も資本蓄積の関数 とみなしうる。こ
うして資本蓄積が進むにつれ,生産の能率化 と多様化 との二つが可能にな
る。 しか し両者の間にはかな りの選択の余地が残 されてお り,そこに興味
ある国際分業の動態問題が発生する。すなわち,資本蓄積が進み資本 ・労
働既存比率が高まるにつれ,第 1に,労働 ・資本相対価格 を低 く抑えてお
けば, より資本集約的な財 も生産で きるように,生産の多様化 をはか りう
る。だが第 2に,より資本集約的な財の国際競争力 を高めるには,労働 ・
資本相対価格 を高め,生産の能率化 をはか らねばな らない。第 3に,労
働 ・資本相対価格が高まると,より労働集約的な財の生産費は相対的に高
まり,比較劣位 に陥る。 より有利な産業への転換か (
構造調整の必要)港
外直接投資進出かを求めざるをえなくなる。これ らの選択に直面 しつつ,
生産の多様化 と,多様化 した各生産の能率化,さらには比較優位弱化産業
の海外直接投資進出をくり返 してい くのが,一国産業発展の動態なのであ
る (
小島 1
9
7
5
,p.
2
3
3
.
)
0
-1
1
0-
雁行型産業発展 :小島モデル
(
2
)初期状態
図 3のX曲線 , Y曲線のように,各財の生産関数をi
s
o
q
u
a
n
t(
等産出量曲線)
によって示す ことにする。x曲線 は 1単位のⅩ財 を生産す るのに要する労働L
(
横軸) と資本K (
縦軸)の種 々な組合わせ投入量 をあ らわ している。等産出
量曲線 は原点に向かって凸型である。 これはLとKそれぞれの限界生産力は正
であるが,限界生産力は逓減するので,Lの投入量 を増 し,Kの投入量 を減 ら
してい くときの限界代替率は逓減するか らである。
x一等産出量曲線 にMN直線が接す るal点が求 まる。 Ⅹ財 1単位の最適生産点
である。MN線の傾斜は,賃金率W と資本 レンタル率Rとの要素価格比率 W-
W/
Rをあらわす. al,
点では Lの限界生産九/
Kの限界生産力 -W/
Rとなるので,
最小の投入 コス トで 1単位のⅩ財を生産 しうることになるのである。要素価格
比率が変われば最適生産点 も (
例えばa
Z
のように)変わるわけであるo
MN線はもう一つ予算線 (
b
ud
g
e
tl
i
ne
)の役割 を演ずる。a】
点でのⅩ財 1単
位の生産 コス トは,労働で計ればo〟,資本ではかればoⅣの費用がかか り,
点で Y財の最適生産点が求
費用 と等 しい価格で販売 される。同一MN線上のb.
まるが,Y財 もⅩ財 と同 じコス ト-価格であることを示す。
〟′
〃′
線 と〟〝
Ⅳ〝
線 は平行 であるか ら同 じ要素価格比率である。 しか しス
Rにおいて賃金が割高に (レ
ロープがMN線 よりも急 になっているか らW-W/
点に,Y財は
ンタルが割安に)変ったことを意味する。最適生産点はⅩ財はaZ
b
2
点に,それぞれ移 る。つ まり賃金が相対的に騰貴 したので,よ り労働節約的
Ⅳ′線の
(
より資本使用的)な要素投入係数に変えたのである。この結果,〟′
〟"線 よりも高いコス ト-価格であることか ら分かるように,Ⅹ財の方
方が〟"
す ぐ後で説明することだが) Ⅹ財の方が よ
が Y財 よりも割高になる。 これは (
り労働集約的であ り,賃金騰貴の影響 をより多 くか うむるか らである。
v
e
c
t
o
r
)の傾斜 はa.
点でⅩ財生産 に投入 され
原点Oか らal
へ引いた半直線 (
た労働 (
Lr) と資本 (
I
,
y)の比率 (
Kx
/
L
x) つ まり要素集約度 を示す.同一要
素価格比率の下での Y財の最適生産点bl
では, ob、
半直線がoa.
半直線 よりも急
a2
点 とb
2
な傾斜であ り, より資本集約的である。別の要素価格比率の下で も (
点を比較せ よ)そうなる。つまりY財生産はいかなる要素価格比率の下で も常
にⅩ財生産 よりもよ り資本集約的である-
す なわちK
x
/
L
x<Ky
/
L
y
- と仮
定する。図示の ようにY曲線がx曲線 よりも左側 に位置 し, 1回 しか交わ らな
- 111-
駿 河台経済論集
第1
0
巻第 2号 (
2
0
0
1
)
資本 (k:
) 〆
M"
〟′
M 労働 (
i)
図3
いときにこうなる。この仮定によりいわゆる
「
要
とになる。
次 に一国全体 の労働既存量i
I
は,図
素集約度逆転」は生 じないこ
縦軸のMl。
であ り,要素既存比率 k-3の横軸oM量であ り,資本既存量I
Kは
積の進行によるkの増加が,われわ
線の傾斜で示 される。資本蓄
豆/iは以 0
が,それは労働既存量iは不変 とし,
れの考察 における重要な変数の一つである
に
が第 1期には人.
資本既存量音が,初期
にA。
であった もの
に増加 し,01線の傾斜が急
とする。
最後 にもう 1つ収穫不変 (
c
o
ns
t
a
ntr
e
t
u
r なることによって示 される もの
る。 0 人0線上のal点では Ⅹ財 1単位が,
ol。
線 で 示 され
る
n
st
os
c
a
l
e
)の仮 定がおかれてい
要素投入Kx/
L
xによ MN線で示 される要素価格比率Wの下で,
っ
L
xをともに 2倍に増やせば産出量 も 2
倍
てになることが期待で
,生産 される。い ま要素
投 入まり
のK
xと
きる.つ
,0
雁行型産業発展 :小島モデル
・
う β /,
b
;''
/,2
/ {b
'
Iy/b
f//
:>
//
/
, ラ
:
C
:
a
2
:/ a
l
A
''
//
〃図
4
シニ
/
/d
; //:/ ,/ - -/
,,
/
-,7 4
2
7
i'
〟〝
〟′
駿河台経済論集 第10巻第 2号 (
2
0
01
)
A.
線上 でOa
.
の 2倍 の距離 の ところで 2倍 の産 出量 が得 られ る。 これがc
o
ns
t
a
ntr
e
t
ur
nst
os
c
a
l
eである。 この仮定が以下の 2財への資源配分 と産出量の
決定について有効 に活用で きるのである。
(
3
) 資源の最適配分
労働 ・資本)の最適配分の
図 3と全 く同 じ構成である図 4を用いて,資源 (
1
)
餐
決定方式 を解明 したい。そ してい くつかの変化の効果を明 らかに したい。(
本蓄積の進行。(
2)
要素価格比率W=W/
Rの上昇 。(
3)
要素価格 の二重構造。(
4)
Y
産業だけでの技術進歩。 もっと多 くの組合 わせケースが考え られる。その中か
らいかなる産業発展の コースを選択す るかが重大な課題 となるのである。
図 4において,要素価格比率 (
W) が〟N線 である とき, Ⅹ財 1単位 の最小
生産費はベ ク トルOa
l
であ り,その傾斜が要素集約度Kx/
L
xを示す。oa
l
直線 は
初期 の要素賦存度 k-豆/f
I
-Ml
(
,
/OM
すなわち対角線
01.
, と同一である。
このような場合 には,労働 ・資本 をともに完全雇用す るにはl(
点 でⅩ財だけを
Ⅹ産業への完全特化)のがベス トの選択である。その際のⅩ財生産
生産する (
量 はoA
(
,
/
Oa
.
≒1.
65となるO この生産量が図 5にx点 として示 される. Y財の生
産量 は図 5のy点の ようにゼ ロである。
同 じ要素価格比率の下での Y財 1単位の最適生産点はb.
である。 この点 は初
期要素賦存ボ ックス (
0, 10
)の境界線上 にある。 したがって若 しY財の生産
に完全特化するならば,b,
点で Y財 1単位 を生産 しうる。資本 は全部使用 され
るが,b.
lo
に相当す る労働が雇用 されず,失業することになる.それ故,初期
I
の下では,労働集約財 Ⅹの生産に完全特化することが,経済全体
要素賦存嘉/i
として最 も能率的な資源配分であるということになる。少 くとも低資本蓄積の
状況では低資本集約財 (
高労働集約財)への資源配分 を多 くす ることが必要で
ある。つ ま り,要素既存比率線oAに近い要素集約 度の財へ の資源配分 (した
がって生産量)が多 くなるのである。
Ⅹ財への完全特化ケースでは,Ⅹ財 しか生産 されないのであるか ら,Ⅹ財生
c
o
mpa
r
a
t
i
vea
dva
nt
a
ge
) を持 ち,輸出 されることは言 うまで
産が比較優位 (
もない。代 りに Y財は比較劣位財 とな り輸入 されるわけである。
-1
1
4-
雁行型産業発展 :小島モデル
[
ケース 日
章素賦存比率の上昇 :資本蓄積
資本蓄積が進み,要素既存比率線がol。
か ら01.
に, よ り急 な傾斜 に変 わっ
たな ら,いかなる資源配分の変化が生ず るであろ うか。ただ し要素価格比率
(
MN線)は変 らない もの とする。図 3に見 られるように01.
線はa.
点 とb点 の
線 はal
中間を通るか ら両財の同時生産 (
不完全特化)が可能になる。 またoA1
点か ら遠 ざか り,b点 へ近づ く.これにつれⅩ財への資源配分が減 りY財への
それが増加することになる。正確にどれだけ変化するかが図 4によって示 される。
に平行にIl
dl
線 を引 く. また Y財のそ
図 4において,Ⅹ財の要素集約皮線oa,
線に平行にAI
C
1
線 を引 くOこの平行四辺形 (
ダイヤモ ン ド型)の交点
れたるOb1
が,労働 ・資本の完全雇用 を保障する, Ⅹ財 とY財への最適資源配分点
c
l
とd.
であるが,単位生産費は
となる。すなわち,Ⅹ財への資源配分はベ クターOcl
oa.
であるか ら,生産量 はocl
/Oa.≒0.
86となる (
図 5のC
.
点)
。他 方 ,Y財へ
となるが,単位生産費はobl
であるか ら,生産量 は
の資源配分 はベ クターodl
odI
/Obl
≒1.
42となる (
図 5のdt
点)
。
すなわち,資本蓄積の進展につれ,労働集約的なⅩ財の生産が減 り,資本集
約的なY財の生産を増すことが可能になる。 この結果が,図 5に示 されている
のである。
図 5の横軸は二重の意味をもつ。一つは時間 (
t
i
me
)であ り, もう一つは要
K/ZであるO初期のt
.
か らt
.
の間にko
<kl
となる。 これを 「
構造変
素既存比率k--
動期」 と呼ぶが,この間に,図 3や図 4で示 したように,資本蓄積が進んで要
,
か ら0日 こ上昇 した と見るのである。t
.
とt
,
′の間を 「
能率化
素既存比率線が01.
-kl
′であるとする.本
期」 と称するが,この期間には要素既存比率は不変でkl
.
とt
.
'の間に,ko
<k.
-k,
′に上昇す るのであるが,比較静学の方法 を採 る
当はt
本稿では,違った諸変数のそれぞれ異なる動態的効果を示すために構造変動期
s
t
a
ge
) を完
と能率化期 に 2分 したのである。両者あわせて一つの発展段 階 (
了するのである。
さて図 5において,f
o
-t
l
の構造変動期 に,要素既存比率豆/Zがk
o
か らk.
に上
点へ減少 し,道 に資本集約
昇する間に,労働集約的Ⅹ財の生産量 はx点か らcl
的 Y財の生産量はy点か らd】
点へ増加 した。後者 を拡大す ることが経済発展 の
-つの 目標であるとすれば,資本蓄積の進展はその 目標に重要な貢献 を果たす
と言えるであろう。
-1
1
5-
駿河台経済論集
第1
0巻第 2号 (
2
001
)
なお財価格比率p=py
/
p,
は,構造変動期 には不変に保たれる。 また要素価格
比率W-W/R もこの期には不変に保たれる。それ らが変るのが次の能率化期の
問題である。
要するに,資本蓄積の進行によってⅩ財に加 うるにより資本集約的なY財の
di
ve
r
s
i
f
i
c
a
t
i
o
n)し高度化 (
upgr
a
d
生産をも行いうるように産業構造を多様化 (
i
ng) しうるようになる。多様化志向構造変動である。 どれだけ高度化が達成
できるかは主に資本蓄積のスピー ドに依存する。他 は, Ⅹ財 とY財の最適資本
集約度の差が影響 をもつ。
産業構造の高度化につれ,より資本集約的なY財が比較優位 を持ち,その生
産 と輸出が拡大することになる。他方,労働集約的なⅩ財は比較優位 を弱め,
さらには比較劣位化 し,生産を減 らし,輸入を増す ように転ずるのである。
[
ケース 2] 賃金率の相対的騰貴
資本蓄積 と経済成長が進展するにつれ賃金率の相対的騰貴が生ずる。それは
経済発展の成果 として望 ましいことで もある.図 3において要素価格比率W賃金率 Wの相対的騰貴,資本 レンタルRの相対 的低 落),MN
W/Rが騰貴 し (
線か らM ′
N′とM〝
N" (
両者は平行で,同一のW/Rである)へ よ り急 な傾斜に
-,Ob2
-ベ クターが図 4
転 じたとしよう。最適生産点 はa2
とb2
へ移 る. このOa2
に描かれる.oa2
-ベ クターに平行 に んd2
線が,またob2
-ベ クターに平行 に).cZ
線が引かれ,資源配分点 としてC
2
とd2
点が求め られる。 Ⅹ財の生産量はx-oc2
/
≒2,Y財の生産量 はy-odZ
/Ob2
≒0.
4となる。図 5にC
2
点 とd
2
点 として示
oa2
される。 この間に,要素価格比率はwl
か らW2に賃金率が相対的に上昇 し,財価
は,Ⅹ財が割高,Y財が割安に変わるのである。
格比率p-pJpr
要するに,賃金率が相対的に騰貴すると,その影響 をより多 く被 る労働集約
財 (
Ⅹ)の相対価格が騰貴 し,Ⅹ財が増産 され,Y財 (
資本集約財)が減産 さ
れることになる.この ことは,図 3において,要素既存比率線oll
に対 し,a2
点はa.
点 よりもいっそ う接近す るのに,逆 にbz
点はb.
点 よ りもいっっそ う遠 ざ
かることか らも了解できる。 これは一見期待に反する矛盾 した結果のように見
える。図 5で明 らかなように,賃金率の相対的騰貴は,資本集約財 Yを増産 し
たいというね らいとは逆にそれを減産 させ ることになる。そ うなるのはこの能
率化期には資本蓄積量は不変であると仮定 したか らである。
-1
1
6-
雁行型産業発展 :小島モデル
この矛盾か ら得 られる第 1の教訓は,資本集約財生産を拡大する (
そういう
構造変動 を成功 させ る)ためには,資本蓄積 をスピー ドアブせねばならないこ
とは言 うまでもないが (
それをg
i
ve
nの条件 として),賃金率の相対的引上げを
急いではならないと言 うことである。賃金率上昇は資本集約財生産を拡大する
のでな く反って縮小 させ るか らである。
Ⅹ) 産業の賃金率を引
資本集約財生産の拡大 を促進するには,労働集約財 (
上げないでお くかむしろ引下げて,Y財産業 と較べて低い賃金格差 (
貸金の二
重構造)にすることが有効である (
ケース 3として直 ぐ後に検討する)
。
もう一つの矛盾が見出される。賃金率が相対的に騰貴すると,労働集約財 Ⅹ
の価格が資本集約財 Yに くらべて割高になる。それ故に,封鎖経済ではⅩ財を
相対的に増産することが刺激 される。だが開放経済ではこれは許されない。Ⅹ
財が割高になるということは,Ⅹ財が比較優位 を弱めつつあるか,すでに比較
劣位 に転落 したことであ り,輸入が増加 し,このⅩ財の国内生産は低い輸入価
FDI
) によっ
格 と競争で きる量にまで減産 されねばならない。海外直接投資 (
て,海外の低賃金を活用する国際生産に一部分置 き換 えることも重要な解決策
となる。 とまれ資源配分 (
それに従 う両財生産量)は,封鎖経済下 と開放経済
下 とではかな り違ったものにならざるをえない。 このことを考慮すべ きである。
資本集約財 Yにおいては,資本 レンタルの相対的低落に伴いこの財の相対価
格が低廉化 し,比較優位 を強め,輸 出を増加 しうることになる。その意味で
pr
o
-t
r
a
deo
r
i
e
nt
e
d(
順貿易志向的)である。ただ生産方法が よ り資本集約的
になるため (
b.
点 に くらベbz
点ではそ うなる)所与の資源既存度 kl の下で
は,Y財への資源配分比率 (したがって生産量比率)が 目的に反 し減少する。
それ故,資本蓄積のスピー ド・アブ化に応 じてW-W/
Rを緩やかに引上げてい
くべ きである。
賃金率の相対的騰貴 (
逆に言えば資本 レンタルの相対的低落)は,所与の等
産出量曲線の上でのより資本集約的生産方法への移行 をもた らし,そういう意
味での (
第 1種 の)生産の能率化 (
r
a
t
i
o
na
l
i
z
a
t
i
o
n) を達成す る。そ して資本
集約的 Y財の相対 コス ト (
-価格)をⅩ財に くらべ割安にする。つ まりY財の
比較優位 を強め輸出を拡大 させる。そういう意味では望 ましい。だが Y財の相
対的生産量 を反って減少 させ るという矛盾 をもつ。 こういう矛盾的結果に陥 ら
ないで Y財 を拡大できる発展 コースを見出 しえない ものであろうか。
-1
1
7-
駿河台経済論集 第10巻第 2号 (
2
0
01
)
[
ケ-ス 2の修正]
図 5に戻 って考 えてみ よう。 tI
時点でⅩ財 とY財 の生産量が 1:1になるe
点にもって くるとしよう。Y財の生産量はdl
点か らe点へ増産量が減 らされる。
Y財は資本集約的であるか ら投入労働量に くらべ資本量がそれだけ節約 される
ことになる。同様に労働集約的なⅩ財ではc
l
点 に くらべ減産量の少いe点 にと
どめるC
.それに応 じてやは り資本が節約 される。
点 とbl点で生産するな らばⅩ財 とY
図 4によって見るな らばこうであるo a .
財が各 1単位得 られる。a
点 か らOb
】
に平行 な線 を右側縦軸 に向って引 こう。
またb.
点か らoa
l
に平行な線 を引こう。 この両線は右側縦軸で人.
点よりも低い点
(
E点 と呼ぼう)で交わる (
必 らず縦軸上に来るとは言えないが) としよう。
A.
線 とE点 との差額が,MN線 の要素価格比率Wの下で,Ⅹ,Y両財生産量 を
1:1にとどめた場合に生 まれる資本の節約分である。 この節約分 を使って,
t
l
-i
.
'の能率化期 に両財の生産方法 をより資本集約的なものに高めることがで
きる。
2
点
今度は能率化 して も両財生産量 を 1:1に保つ としよう。それは図 4のα
とb
2
点で生産すればよいということであるO今度はa
Z
点か らob
Z
に平行な線 を,
またb
.
I
,
5.
か らoa
2
に平行な線 を引こう。両線の交点 (
E′と呼ぼ う)が右側縦軸
上に求まる。 このE′
点は人】
点 と一致する場合 もあるが,Al
点 より上方に位置す
るであろ う。E′とんとの差額はこの経済の資本蓄積不足分であ り,資本蓄積
をスピー ドアブしなければならないということを示す。
或いは,第 2に,賃金率の相対的上昇 を少 くし,a
Z
,bZ
各点の資本集約度 を
図示 よ りも低 く保 てば,資本蓄積量Al
の下で, Ⅹ,Y両財の産 出量 を 1:1
(
図 5のe点)に保つ ことができよう。
さらに第 3に,生産の多様化 ・高度化 を最初に,低 い相対貸金Wの下で行っ
て,両財の生産量 を 1'
.1にする。そ うすると既述のように (Al
-E) なる資
本の余剰が生ずる。そこで次の期に,この余剰資本 をちょうど使い果たす よう
に,相対貸金Wを適切 に引上げ,各財の生産をより資本集約的な,よ り能率的
な方法に高めることがで きる。
以上のような配慮のいずれか或いは複合 を講 じなければ,図 5のように,Ⅹ
財は構造変動期で大幅に減産 された ものが,能率化期には増産に転ずる。 また
Y財では,-たん大幅に増産 されたものがす ぐ減産に転 じなければならなかっ
-1
1
8-
雁行型産業発展 :小島モデル
た。 このような不合理は回避すべ きである。高資本集約財に産業構造を高度化
するにも,各財の生産方法を能率化するにも, ともにより多 くの資本が要る。
e
que
nt
i
a
l(
継起的)に,先ず構造変動 をや り次いで能率化 を実
従って両者はS
現するというのが現実的である。両者を同時に実施することは資本不足に陥 り
困難である。 日本経済は雁行型 (
f
l
yi
ng
-ge
e
s
epa
t
t
e
r
n)産業発展 を成功 させ
たが,それは構造変動 コース と能率化 コースの繰返 しであった。
構造変動期 には,資本蓄積の進展に応 じて,より資本集約的なキイ産業が新
設 され拡大する。能率化期にはキイ産業の相対的シェアはそれ以上拡大 しない
が, より資本集約的な生産方法に能率化することにより,コス ト-価格 を低下
させ うる。比較優位 を強め輸出を増大 しうる。賃金率はキイ産業 と劣位化産業
とで ともに,構造変動期には不変であるが,能率化期には引上げ られ,国民的
厚生の向上に直接 に貢献 しうることになる。それが順調な繁栄期 をもた らすの
である。
[
ケース 3] 要素価格の二重構造
点がⅩ財の最適生産点,bが Y財の最適生産点 になるよう
図 3において,a.
な組合わせを選んだとしようO ということは,Ⅹ産業では要素価格比率 をwl
MN線の傾斜 に定め,Y産業ではW2
-M〝
N"
線の傾斜 に決めるのである。
W2
であるか ら,賃金率 をⅩ産業で低
wl
<
く,Y産業で高 くするという賃金率の産業
間格差すなわち二重構造 を設けるということである。或いは,貸出利子率 をⅩ
産業向けには高 くし,Y産業向けには低 くして融資するのである。al
点 とb
2
点
でのⅩ財対 Y財のコス ト比率 (-価格比率)が どうなるかは一義的に言えない。
けだ し労働で計ると,oM>OM〝となってⅩ財が割高であるが,資本で計 ると
oN<ON"となって逆にⅩ財が割安になるか らである。
-ベクター,Y財はob・
2
-ベクターを用いるとして図 4のダイヤ
さてⅩ財はoa,
モ ン ドを措 くと,Ⅹ財への資源配分点はA,Y財へのそれはβ点 となる。そこ
.
2
4,Y財生産量 はoB/Obl
Z≒ 1
.
0
6となる。図 5にA
でⅩ財生産量 はoA/Oat≒ 1
点 とβ点 として示 されるように,要素価格格差のない [
ケース 2] に くらべ,
-A)は少な く,Y財の生産量減少
Ⅹ財の生産量増加 (
C
.
(
d
.
-B)も少ない。
ケース 3]の方が,先の
資本集約的 Y産業においてのみ能率化 を果たすこの [
[
ケース 2] に くらべるとY財生産を拡大するという目標にはよりよく貢献す
-1
1
9-
駿 河台経 済論集
第1
0
巻第
2号 (
2
0
0
1
)
ることになる。ただ しY財の比較優位が強 まるか否かについては一義的に言え
ないのである。
[
ケース 4] 技術進歩
資本集約的 Y産業において技術進歩が実現 したとしよう。技術進歩の原因は
研究開発)による優れた (
s
upe
r
i
o
r
) な生産
いろいろある。大企業の R&D (
方法 と新製品の開発 とがある。 もう一つ大規模生産化 により学習効果 (
l
e
a
r
n
-
i
ngbydo
i
ng)が多 くな り労働者 の技 能 (
s
ki
l
l
)が向上す る とい う規模 経済
(
e
c
o
no
mi
e
so
fs
c
a
l
e
)がある。いずれに して も知識 (
kno
wl
e
dge
)す なわ ち
huma
nc
a
pi
t
a
l
)の増加が必要不可欠である。
人的資本 (
i
s
o
qua
nt
)がy-か
技術進歩の結果,図 3において,Y財の単位産出量曲線 (
s
o
qua
nt
上での
らy*
一曲線へ移った としよう。技術進歩は所与の生産関数即 ちi
最適生産点の要素価格比率の変化につれての移行ではな く,生産関数 自体のシ
フ トであることに注意 されたい。技術進歩には数種のタイプが挙げられている
c
ks
'ne
ut
r
a
l
な技術進歩 を仮定する。原点か ら引いたベ クター
が,ここではHi
ob.
線上に新最適生産点b.
*
が位置する (
要素価格比率が変った場合 にも,例 え
ば,ob2一ベ クター線上にbZ
*
点が来る)。 こうであると資本/労働投入係数 (
要
素集約度)は変わらないで両生産要素の比例的に前 よりも少い投入で 1単位の
Y財 を生産できる,従ってコス ト (-価格)が引下げ られるのである。 これが
第 2種の生産能率化である。
図 4を見 よう)
,〟Ⅳ線の要素価格比率 の下
そこで [
ケース 1]の ように (
,bl
点で最適資源配分がなされた後,能率化期 に入って,Y財生産での
で,a.
'
が最適単位生産点になったとしよう。 oa.
線 とobl
*
線
み技術進歩が実現 し,b.
.
点が求
とに 右点か らそれぞれ平行線 を引 くと,最適資源配分点 としてC
.
点 とd
まるo これは [
ケース 1] と全 く同 じである。ただ一つ重要な違いが生ずるo
X財の生産量 はoc.
/oa.
であって [
ケース 1] と変 らない。だが,Y財の単位
*に引下げ られているので, Y財の生産量 はod.
/Ob.
*≒1.8となっ
コス トはobl
て,[
ケース 1]におけるよ りも多 くなるO また Y財の相対価格p=py
/
p,
は安
くなるのである。
.
へ と減少す るが,能率化
図 5で見ると,Ⅹ財の生産量は構造変動期 にx- C
期でcl
′になる,つ ま り不変 に止 まる。 これに対 しY財の生産量 は,y-d
】
と増
-1
2
0-
雁行型産業発展 :小島モデル
*
点 まで さらに増加す ることになる。資
加 した ものが,技術進歩のお陰で,d】
本集約的 Y財をキイ産業 として拡大 したいという目標にとって,望 ましい発展
コースだと言える。 また,要素価格比率は不変の下で Y財相対価格が低下する
のであるか ら,実質賃金率は上昇することになる。 この点で も望 ましい。
(
4
)産業構造高度化 コース
i
n
d
e
t
e
r
mi
n
a
t
e
)に
財の数が生産要素の数 を上回る と,資源配分 は不確定 (
な り,資源配分を一義的に決めえな くなる。い くつかの配分ケースが発生 し,
政策 目標 に照 らしてその選択が重要な課題 となる。
Ⅹ,Y二財につ き,技術進歩に基づ くα-,β-なる 2種の生産方式 (
mo
d
e
)
を仮定することは, 4つの生産関数,つま り4種の財を取扱 うわけで,労働 ・
資本なる 2つの要素の数を上回 り,均衡は不確定に陥る。要素価格の変動の有
無を加えるともっと複雑 になる。そこで常に 2財 2要素モデルになるように,
前提 を設けてセ ッ トする必要がある。 また資本蓄積率 とか技術進歩は本稿では
g
i
v
e
n
)とせ ざるをえない。それ らをモデルの中で内生的に決定 される
所与 (
e
n
d
o
g
e
n
o
u
s
)経済発展理論」の課題
ように組立てる努力が最近の 「
内生的 (
となっているのである。
2財 2要素モデルになるようにい くつかのケースが,資本 (
物的資本だけで
な く人的資本 も含む)蓄積率 を与えられた もの として,検討 された。その結果
次のことが判明 した。 (i)
所与の資本蓄積率の下で,資本集約的なキイ産業を
で きるだけ大 きくするには,構造変動 と能率化 とを,同時にではな く,二期に
S
e
q
u
e
n
t
i
a
l
)に行 う必要がある。 (i
i)資本蓄積の進展 は,資本
分けて継起的 (
集約財の相対的生産拡大,労働集約財の縮小 を可能にする。資本集約財の生産
拡大 という構造高度化 目標に貢献する。 しか し(
i
i
i
)
賃金率の相対的騰貴は国民
的厚生の上昇のために望 ましい,また資本集約財の相対価格 を引下げ輸出競争
a
t
i
o
n
a
l
i
z
a
t
i
o
n
」には貢献す るが,資本集約財生産
力 を強めるという 「
能率化r
d
i
の縮小,労働集約財 の拡大 とい う,構 造高度化 目標 とは相反す る矛盾 (
l
e
mma
)効果をもた らす。 この結果,構造変動期にいったん拡大 した資本集約
財の生産を,能率化期に縮小 しなければならないといった困難が生ずる。そこ
i
v)
構造変動期 における資本集約財
でこの困難を回避する方策が検討 された。 (
の拡大 と労働集約財の縮小 とを少 しひかえ目にして全資本投入量を節約 し,こ
-1
2
1-
駿河台経済論集
第1
0
巻第 2号 (
2
0
0
1
)
れをそれに続 く期に能率化 に投入すれば,資本集約財のスムーズな拡大 と競争
力強化の両 目標 を達成で きる。 (Ⅴ)労働集約財産業では賃金率 を資本集約財産
業に くらべ相対的に低 く抑えるといった要素価格の産業間二重構造が許 される
i
v)と同様な結果が得 られる。 さらに(
vi
)資本集約財生産においての
ならば,(
み技術進歩が実現するならば,そのキイ産業の拡大 と競争力強化の両 日標が達
成で きる。能率化 を技術進歩によって達成するのが最 も望 ましい産業構造高度
化の方策だということになる。 さらに技術進歩によるコス トと価格の低下は実
質賃金の上昇 をもた らすわけである。
Ⅳ 国民経済発展への適用
(
1
) 産業発展 コースの選択
構造変動 を先に行い次いで能率化 コースに進めとしたのは, 2財 2要素モデ
ルを構築 し資源配分均衡 をいつ も確定的なものにするためである (
技術進歩が
拡大 したキイ産業でのみ起 るとしたの も同 じね らいの方便である)
。限 られた
資本蓄積 を有効に活用するためにはそういう順序でのコースの継起的推進が最
善である。
だが資本蓄積のほかに,Ⅹ,Y財 という要素集約度の違い,要素価格の変化,
技術進歩などを導入すると均衡は不確定 とな り多数の組合わせケースが発生す
る。そこで政策 目標に照 らしてどのケースを選択するのが最善か という問題に
直面する。
政策 目標 としては次の三つがある。 (a)ね らいとする資本集約度の高いキイ
産業 をで きるだけ拡大すること-
産業構造高度化 目標。 (b)拡大産業 を能率
化 し国際競争力を強化すること-
輸出推進 目標。 (C)
実質賃金率 を引上げる
こと-
国民的厚生 目標。
第 1に,W-W/
Rという要素価格比率の上昇つ まり賃金率の相対的騰貴は,
国民所得中の労働収入のシェアを引上げることになる。それが実質賃金率の上
昇になるか どうかは疑問である。それは財価格 (-コス ト)の騰貴 を導 くか ら
実質賃金率の上昇には必ず しもな りえないであろう。つ まり目標 (C)には貢献
しないであろう。賃金率の相対的騰貴はより資本集約的生産方式への移行を必
gr
o
wt
ha
c
c
o
u
nt
i
ng)において,資本投入増 による
然化するか ら,成長会計 (
-1
2
2-
雁行型産業発展 :小島モデル
成長を生むわけである。
この賃金率の相対的引上げが労働者グループの側か ら強 く要求 される (
政策
)にはネガティ
目標 (C))わけであるが,資本集約財産業の拡大 (
政策 目標 (a)
ブに働 らく。む しろ労働集約財産業を低賃金 ・低資本集約度にとどめてお く方
が 目標産業の拡大に役立つ。従って賃金率の相対的引上げは急いではならない。
構造高度化を行 きす ぎない程度に進展 させた上でなお資本蓄積量に余裕がある
ならば,それを賃金率の相対的引上げに用いるべ きである。政策当局の賢明な
舵取 りが必要 とされる。
これに対 し第 2に, 目標産業における技術進歩 と規模経済利益は,コス ト低
減により,その産業の拡大 と輸出競争力の強化 に貢献するだけでな く,財価格
の低廉化 を通 じ実質賃金率の上昇 をもたらす。最 も望 ましい成長のエ ンジンで
ある。生産 と輸出の拡大が さらに大 きな規模経済利益 を生むといった継起的 ・
vi
r
t
u
o
us c
i
r
c
l
e
) を喚起する。 これが,成長会計におけるTFP
累積的好循環 (
(
t
o
t
a
lf
a
c
t
o
rpr
o
duc
t
i
vi
t
y)つ まり仝要素生産性の増大を生み出すのである。
なお, (
イ)
労働単位当 り生産性 と(
ロ)
一人当 り国民所得 とは,厳密 に言 うと,
.
6
5ぐらいである (
国際
もとより同一ではない。人口の労働力率は 1ではな く0
間で も差がある)
。国民所得 には労働-の報酬だけでな く,資本その他各種の
貢献への報酬が含 まれている。だが (
イ)の労働単位当 り生産性の上昇 とほぼ平
行に, (
ロ)の 1人当 り国民所得 も変化すると考えてよい。なお要素価格の国際
的均等化 は,別稿で論ずべ き重要な問題 として残る。
(
2
) 多数財 ・多数国
財の数が 2つ以上になると,労働 ・資本 という要素の数を上回るので,均衡
を確立で きるモデルにな らな くなる。確定モデルに仕組むために第 1に,財
(
或いは産業) をかな り大 きい範噂-
発展段階産業範噂-
で取上げる。Ⅹ
=繊維 ・雑貨 な ど労働集約財,Y-鉄鋼 ・化学 な ど資本集約財 ,Z-電気機
器 ・自動車など各種機械 という資本 ・知識集約財,の三産業 ぐらいに くくるの
である。繊維 といっても生糸,綿工業,化合繊 など,さらに上流 ・中流 ・下流
といった生産工程を考慮すると実に多種類の財が含 まれている。電気製品につ
いても同様である。 これ らは大範噂産業の中の多様化 として取扱 うのである。
段階移行)
そ して大範噂のⅩ産業か らY産業へ発展の主軸がステ ップ ・アブ (
-1
2
3-
駿河台経済論集 第1
0
巻第 2号 (
2
0
0
1
)
することを発展段階の一段階アブとみなす。それを完了 した上で,次にY産業
か らZ産業へ と第二次段階アブをはかるのである。-発展段階には,戦後 日本
0
-2
5
年を要 した。
経済では2
自国と外国の多数財について 自国生産費/
外国生産費を算出 し,その大 きい
比率の割高なものか ら小 さい比率の割安なものへ順にならべ るならば,それが
2国多数財の比較生産費表である。それを算定することは不可能ではないにし
ても非常に困難なことである。だが実際問題 としては,比較生産費表の全系列
が必要なわけではない。はっきりと自国が割高になる比較劣位財 と,自国が割
安になる明 らかな比較優位財 とは,考慮 しな くてもよい。つ まり比較優位表の
両端は問題外であって,中間にある二財だけについて輸出で きるか輸入すべ き
かを決めねばならないのである。
T (
情報技術)関連
上述Ⅹ,Y,Z三産業のほかに農業 といったⅩ 産業,I
産業 といったZ
+
産業 を仮定 してよい。そこで経済発展の第 1段階ではⅩ 産業
か らⅩ産業へのステ ップアブ (
産業構造高度化)が課題であ り,明 らかに比較
劣位 にある,また未知数の,Y, Z,Z+産業は考慮外 において検討 して よい。
第 2段階に進むと,明 らかに比較劣位 に陥ったⅩ 産業 と,未知数の Z,Z+産
業 とは無視 して,X,Y二産業だけを考慮の対象 とし,それ らへの資源配分や
比較優位 を検討すればよいのである。発展の第 3段階についても同様に今度は
Y,Z産業を検討の対象 とすればよい。
第 2段階について,最適資源配分を考えてみよう。明 らかに比較劣位化 した
Ⅹ一
産業)については,輸入見込量 を差引いた必要生産量 を予め政策的
農業 (
K) 労働 (
i) 賦存量か ら控除
に策定 し,それに必要な資源配分量 を全資本 (
小島清
する。そ して残 りの資本量 と労働量をⅩ,Y両産業に最適に配分する (
1
9
9
4
,p.
2
3
6を見 よ)。そ うすれば 2財 2要素モデルになるので,図 4によっ
て均衡配分 を確定で きるのである。なお未知数の ZやZ十
産業 は考慮外 に置 く
のである。
国の数が 2以上になると,既述比較生産費表の作成は不可能になる。多数の
自国以外の世界) として一括 し,あたか も一つの国であるか
諸外 国をROW (
の如 く取扱 うより他 に しょうがない。その際ROWでは自由貿易が支配 し,一
物一価の法則が成立 し,その生産費 (-価格)が 自国のそれ と十分に比較可能
な状態になっていると期待 しなければならない。変動為替相場の下では相場が
-1
2
4-
雁行型産業発展 :小島モデル
時々に変わ り,比較は容易ではない。その他 に距離の違いによる運送費の相違
も考慮 しなければならない。 これ らは不可能ではないに して も著 しくめんどう
な調査を必要 とする。
しか し実際には,上述の多数財の場合 と同様に,明 らかな比較劣位国,圧倒
的な比較優位国 という両極端 は考慮外 にお き,検討対象 とす る X,Y二財 と
いった産業について,比較劣位 ・優位が 自国と近接 している国を対象 として,
輸出 ・輸入の可能性 を検討することになる。例えば日 ・米間,或いは日 ・韓間
のⅩ, Y産業について検討 し,貿易パ ター ンを決め,貿易拡大 をはかるという
のが実際の政策課題 となるのである。
長期の歴史的 ・動態的発展過程 をわれわれの分析対象 としているので,先導
l
e
a
de
r
) と後続 国 (
f
o
l
l
o
we
r
) とい う区別が重要 になる。先導国は,Ⅹ,
国 (
Y財に続いて Z,Z
十といった新製品また よ り能率的な生産方法 を次 々と研究
開発 してい く必要がある。 自生的 (
e
ndo
ge
no
us
)経済発展のプロセスの解明
が理論的課題 となる。これに対 し後続 国にとっては,先導国へc
a
t
c
h
-upす る
プロセスが課題であ りその理論 (
赤松 ・小島の雁行型発展論のごとき)の樹立
が必要である。そこでは先導国のように新技術の開発で な く,外国技術 (
bo
r
-
r
o
we
dt
e
c
hno
l
o
gy) と外 国資本 に依存 しつついかに急速 に工業化 を高度化 さ
せるか という課題の究明が必要であるO もうーっ, 日本経済のように,米 ・欧
へのc
a
t
c
h
-upに成功 し,つ ま り後続 国的地位 を卒業 し,アジア諸国に対す る
先導国の役割 を果たす ようになった国 もある。こうい う場合 にはc
a
t
c
h
-upと
l
e
a
de
r
的役割 との全プロセスを解明 しなければならないのである。
(
3) 日本経済発展への当てはめ
o
n
o
mi
cJ
ou
r
n
al
,De
c
,1
9
6
0
論文は 2要素 (
資本 ・労働), 3財
小島のTheEc
(
Ⅹ -農業,Ⅹ-軽工業 ,Y-重化学工業), 3生産方式 (α, 〟, γ) とい
う複雑な不確定モデルを,戦前 日本経済の実証 と照合 させつつ (
Ko
j
i
ma 1958
d,1
9
6
0
b),上述のような確定化の仮定を加 えて当てはめ,数字例 によって産
業発展 コースを解明 している。その結果は表 1のように要約で きる。
明治開国 (
1
9
7
8年)か ら日露戦争前の1
9
02
年 までを第 Ⅰ期 とする。資本蓄積
量 は,労働9
0
0に対 し,明治開国時の僅かに1
5
0の低い水準か ら2
5
0に高 まった。
Ⅹ 財生産 (
農業)が大部分を占め, Ⅹ財 (
軽工業)生産を僅かに発足 させ,明
-1
2
5-
駿河台経済論集 第1
0巻第 2号 (
2
001
)
治開国以前 の劣 った生産方式 αか ら, よ り優 れたそれ βへ生産 を能率化 させ た。
要 素価 格 比率 W-W/
Rは, α方 式 で は 1:2,β方式 で は 1:1
.
5で あ る。 こ
れ につ れ 資本集 約 度K/Lが ,Ⅹ 産業 で は1
/6か ら1
/4.5へ 高 ま り,生 産 は能率
/2か ら1
/1に高 まる。結局 この第 Ⅰ期 は農業 (
茶 ・
化す る。 同様 にⅩ産業 で は1
生糸 な どの輸 出産品 を含 む) 中心 の能率化期 であった。
1903
- 1913) で は,資本蓄積 は250で不 変 で あ った。 この資本 を活
第 Ⅱ期 (
用 して絹織物 ・綿製 品 とい った Ⅹ産業 (
軽工業) をで きるだけ拡大 しようとし
農業) の生 産 高 は575か ら383へ 縮 小 , Ⅹ (
軽工
た構 造 高 度化 期 で あ る。Ⅹ (
莱) の生産高 は92か ら212へ大幅 に増加 した。 この ような資本集約 的産業
(
Ⅹ)
の大拡大 のため資本不足 に陥 り,生産方式 を βか ら αへ , よ り資本節約 的 な も
の に逆転せ ざるをえなか った。
第 Ⅲ期 (
191
3- 1927) で は,第一次世 界大戟 の好 影響 を享 受 して,400へ 高
まった資本蓄積量 を活用 して生産 の能率化
(
αか らβ方式へ) を果 たす こ とが
383か ら371
へ) で あ り, Ⅹ財 の 生 産 増
で きた。 Ⅹ 財 の 生 産 減 は ご く僅 か (
は,212か ら270へ とか な り多い。 その上 ,若干 (
50単位) であ るが よ り資本集
約 的 な Y財 (
重化学工業) の生産 をス ター トさせ た。
1928- 1942) に入 り,不変 の資本蓄積量 (
400)の下で , Y財 (
量化
第 Ⅳ期 (
表 1 戦前 日本 の産業発展 コース
第Ⅰ期
(
1
9
7
8
-1
9
0
2
)
第Ⅱ期
(
1
9
0
3
-1
9
1
3
)
働f
資本蓄積
I
=9
0
0に対し
(
K)(
労
)
2
5
0
2
生産量
Ⅹ一(農 業)
5
9
2
7
5
5
0
2
1
2
3
8
3
Ⅹ (
軽工業)
0
第Ⅲ期
(
1
91
3
-1
9
2
7
)
(
1
9
2
第Ⅳ期
8
-1
9
4
2
)
4
0
0
2
0
3
7
1
4
0
0
2
8
8
0
らβへ能率 Pからαへ後退 αからβへ能率 pからαぺ
4
7
生産方式
Y (
重化学工業) αか
5
0
1
3
6
注)財の相対価格がわかると
化
構造変動
業化)
(
軽工 化
構造変動
学工業化)
(
重化
後退
GDPが,また
,それを各財の生産量に乗
じて,合計すると
その各期成長率が算出できる。それが困難である。けだし,財の相対価格は,労働で
計るか資本ではかるかによって異なってくる。また α生産方式かβ方式かで異なって
くるからである.このGDPが算出できると,「
成長会計」の推
雁行型産業発展 :小島モデル
0か ら1
3
6
へ急拡大 した。代 りに
学工業)生産の拡大 に重点が移った。それは5
Ⅹ (
農業)の生産は3
71か ら2
8
8
へ と減少を続け,Ⅹ (
軽工業)の生産は前期に
2
7
0のピークをうちそれか ら2
4
7
へ と減少に転ずることになった。資本蓄積量が
4
0
0と前期 と同 じであったため資本不足 に陥 り,Ⅹ , Ⅹ,Yの生産方式はすべ
てβか らαへ再び後退せ ざるをえなかった。
この第Ⅳ期はすでに 日支動乱,そ して第二次世界大戦へ と戦時経済体制 に
移ったため,重化学工業化は未完成に終った。農業,軽工業の復興 と重化学工
業の本格的拡大をはかることが,戦後の課題 となったのである。
9
6
0
年小島モデルでは,財別生産関数 (
i
s
oqua
nt
)のシフ トという技術
この1
革新能率化は未だ考慮に入れ られていなかった。伸 ばしたいキイ産業において
技術進歩が起 る [
ケース 4
]にすると,構造変動期の困難が どれ程軽減 される
]
かを検討するのは興味ある課題である。 (
なお賃金率の二重構造 [
ケース 3
は算出された。
)
9
6
0
年論文での 日本経済への雁行型産業発展論のあてはめは,本稿で
また,1
のモデル化 と必ず しもコンシステ ントでない。すなわち,産業構造の多様化 ・
高度化が (
第 Ⅱ期,第Ⅳ期),資本蓄積不変の下で行われ,ために生産方法 を
β方式か ら α方式へ,より非資本集約的なものに後退せ ざるをえないことが,
実証モデルでは強調 されることになった。逆に資本蓄積の増加期 (
第 Ⅰ期,第
Ⅲ期)に生産方法の能率化 をはかったので,順調な経済成長を実現 しえたこと
が示 されているのである。
戦後 日本経済について も雁行型産業発展の実証研究が続けられている (
たと
9
9
7を見 よ)0 「
成長会計論」 をとり入れて一層研究 を深化 させ
えば Ko
j
i
ma 1
たい ものである。
参照文献
赤松要
(
1
9
3
5
.7)
,「
吾国羊毛工業品の貿易趨勢」名古屋高商 ・商業経済論叢第1
3
巻
上冊。
赤松 要
(
1
9
3
7
.7),「
吾国経済発展の結合弁証法」名古屋高商 ・商業経済論叢第1
5
巻
上冊。
Aka
ma
t
s
uKa
na
me(
1
9
6
1
)
,"
A The
o
r
yo
fUnb
a
l
a
nc
e
dGr
o
wt
hi
nt
heWo
r
l
dEc
o
n-
2
7-1
駿河台経済論集
第1
0巻第 2号 (
2
0
01
)
omy:
'We
l
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Pl
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6
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9
6
-2
1
5
・
,H
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1
9
6
2
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Ma
r
c
h
-Aui
ngCount
r
i
e
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gus
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)
,卜2
3
.
As
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アジア開発銀行著,吉E
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恒昭監訳 (
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) 『アジア :変革への挑戦』東洋経済新報社。
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伊藤敏隆ほか (
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0.1) 『
構造変化 を伴 う東 アジアの成長一新古典派成長論v
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形態論-』経済企画庁経済研究所編 『
経済分析』第1
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チ ャールズ Ⅰ. ジ ョー ンズ著 香西寮監訳 (
1
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9
) 『
経済成長理論入 門- 新 古典
,
学派か ら内生的成長理論へ-
』 日本経済新聞社。
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小島清 (
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),「
経済発展 と輸入依存度」,中山伊知郎博士還暦記念論文集。
次に収録
,
小島活 (
1
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b) 『日本貿易 と経済発展』国元書房,第 2章。
小島晴 (
1
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C)
,「資本蓄積 と国際分業一赤松博士 「産業発展の雁行形態」の-展開
-」赤松 博士還暦記念論集
『
経済政策 と国際貿易』春秋社.
小島清 (
1
9
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8d)
,「日本の経済発展 と交易条件」国際経済第10号。
,
次に収録。小島晴 (
1
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) 『日本貿易 と経済発展』国元書房,第 3章。
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小島清 (
1
9
5
8
g),「日本経済の雁行形態的発展 と貿易の役割」一橋論叢 ,4
0
巻 5号。
,
次に収録。小島清 (
1
9
5
8
h) 『日本貿易 と経済発展』国元書房,第1
0章。
,
小島晴編 (
1
9
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a
) 『
論争 ・経済成長 と日本貿易』弘文堂。
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雁行型産業発展 :小島モデル
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小島晴 (
1
9
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1
),「
経済成長 と最適輸入依存度」一橋大学経済研究
5。
,
1
96
2
) 『
世界経済 と日本貿易』勤草書房,第 8章。
次に収録。小島 晴 (
1
9
6
7.
l
l
),「日本の工業化 と交易条件小島晴 (
塩野谷命題 に関す る覚書-
」一
8
巻第 5号。
橋論叢,第5
1
9
7
5
)
, 「雁行形態論 とプロダク トサ イクル論小島清 (
赤松経済学の-展開-
」
門下生編 『
学問遍路一赤松要先生追悼論集-』世界経済研究協会。
,
1
9
9
4
) 『
応用国際経済学』第 2版,文具堂。
小島晴 (
1
9
9
4.9),「わが国海外直接投資の動態」駿河台経済論集
小島清 (
第 4巻第 1号。
,
次に収録。小島晴 (
1
9
9
6
) 『開放経済体系』文最堂,第 7章。
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小島晴 (
1
9
9
5
.9),「日本経済の輸入行動論集
低 い輸入依存度の謎-
」駿河台経済
第 5巻第 1号。
,
次に収録。小島活 (
1
9
9
6
) 『開放経済体系』文最堂,第 5章。
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新古典派の開放経済体系- 」駿河台経
小島清 (
1
9
9
8.9),「
供給説経済成長論済論集
第 8巻第 1号。
小島清 (
1
9
9
8.
l
l
)
,「束 アジアの雁行型経済発展-
成功 と再構成-
」世界経済評
論。
小 島晴 (
1
9
9
9
),「
地域統合の経 済学-
静態的利益 と動態 的利益-
」国際経 済 ,
投稿第 5号。
小島清 (
2
0
0
0
.3)「
雁行塑経済発展論 ・再検討」駿河台経済論集
第 9巻第 2号。
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駿河台経済論集
第1
0巻第 2号 (
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ステープ ン ・ラデ レッ ト/ ジェフ リー ・サ ックス (
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8.2),「それで もアジア経済
は延 る」 中央公論。
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世界銀行著, 白鳥正喜監訳 (
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東 ア ジアの奇跡 ・経済成長 と政府 の役割』東
洋経済新報社。
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