フルディジタルFMラジオ用 アンチエイリアスBPFの製作

プロ御用達! 完全フリー LTspice 活用コーナ
ダイレクト・アンダーサンプリング方式用! 受信感度
リード部品を使わないソリッド・タイプ! も良好!
フルディジタルFMラジオ用
アンチエイリアスBPFの製作
林 輝彦
Teruhiko Hayashi
アンテナ
A-Dコンバータへ
受信周波数にフィルタの中心周波数が追従する
フィルタから
トラッキング・フィルタ
ディジタル受信機
(ダイレクト・サンプリング方式)
デシメーション・
フィルタ
複素ミキサ
I 信号
×
ゲイン
A-D
コンバータ
fS
fS
周波数
アンテナ
cos
×
サンプリング
周波数
I 出力
LPF
Q 信号
Q 出力
LPF
sin
局部発振
周波数自動制御/
位相制御ループ
1.5 fS
バンドパス・フィルタ
A-Dコンバータへ
受信周波数設定
(a)受信周波数に中心周波数が追従する
(トラッキング・フィルタという)
除去したい帯域
(ナイキスト・
バンド)
ゲイン
目的のナイキスト・バンドに通過帯域を合わせる
除去したい帯域
(ナイキスト・
バンド)
fS
1.5 fS
周波数
(b)周波数特性固定のバンドパス・フィルタ
図 1 FPGA を使ったフルディジタル FM ラジオの入力部に使え
るエイリアス混信除去用 BPF を製作
本稿では,A−D コンバータのサンプリング周波数の 1 ∼ 1.5 倍の周波数
範囲
(第 3 ナイキスト・バンド)を受信することを想定してバンドパス・
フィルタを作る
最新のディジタル処理をする受信機でも,入力部
にはアナログ・フィルタが使われています.
アナログ・フィルタとしては,次の 2 通りが考え
られます
(図 1)
.
(1)受信している周波数に自動的にその中心周波数
が追従する「トラッキング・フィルタ」
(2)イメージ混信,エイリアス混信に対して十分な
排除能力をもった,周波数特性固定の「バンドパ
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ス・フィルタ」
前者のトラッキング・フィルタを使うときは,受
信周波数に合わせ,同調用のアナログ制御電圧をテ
ーブルなどから補間して生成したり,多数のコンデ
ンサをスイッチなどで切り替えるための ON/OFF
信号を生成する必要があります.しかし,同時に増
幅したり A−D 変換したりする信号の数を少なくで
き,ダイナミック・レンジや相互変調の問題が生じ
にくくなる利点があります.測定器のような使い方,
電界強度計のようなメジャリング・レシーバ,中継
用受信機は,性能重視なので,本誌 2014 年 12 月号
で紹介したトラッキング・フィルタを使います.
後者の広帯域なバンドパス・フィルタを使うとき
は,フィルタの周波数特性を制御する回路が基本的
に不要になるという利点があります.しかし,同時
に扱う信号の数が増えるので,高周波増幅器を飽和
させないよう,信号レベルを抑える必要があります.
また,レベルの高い信号を混合状態で扱うことにな
るので,相互変調による混信の問題についても,十
分に留意する必要があります.
FM チューナ用として使うのであれば,十分な性
能を出せて,手間いらずの広帯域バンドパス・フィ
ルタがいいでしょう.
2015 年 4 月号