ATHLETE JOKER PV の有用性

JAPAN LIFELINE PERIPHERAL MARKETING REPORT
金子 伸吾
Vol.01
先生 (済生会西条病院 循環器科 医長)
ATHLETE JOKER PV の有用性
術者紹介
1996 年 愛媛県立西条高等学校卒業
済生会西条病院 循環器科
心・血管カテーテル治療室長
2004 年 都立墨東病院循環器科
2002 年 愛媛大学医学部医学科卒業 都立墨東病院臨床研修医採用
2011 年 済生会西条病院循環器科 医長 現在に至る
金子 伸吾 先生
http://www.saiseikaisaijo.jp
【H P】済生会西条病院
【Blog】金子(済生会西条病院)の日々是戦 <学生見学可> http://mrintervention.blogspot.jp
ATHLETE JOKER PV は Coronary 用の First Floppy Wire として評価が高い ATHLETE JOKER を末梢用に転用した物であ
る。特徴としては CM-Core によるトルクレスポンスの良さ、ステンレススチール(SS)素材による先端の形状記憶と耐久
性、コイルワイヤーへのコーティングにより、微小血管への迷入や Perforation の防止と TightLesion に対する通過性を両
立させていることが挙げられる。特に、EVT において多くの施設で First Choice Wire となっているプラスチックジャケッ
トの製品に比べ、先端耐久性は大きく優れている。その特徴を実際の EVT に活かした症例を提示したい。
年齢:
60 代 性別:男性 既往歴:DM+HT-HL-SM- CKDFig. 1-1
主訴:
患側下腿の安静時疼痛、爪周囲の黒色変化、しびれ
現病歴:1 型糖尿病でインスリン加療中にもかかわらず、HbA1c は
10%前後で 10 年以上が経過。1 年前より主訴が進行し、深爪による創
もみられたため、PPI を施行することとした(Fig. 1-1 〜 3)
。
Target Lesion: Lt.ATA,PTA,PerA
Fig. 1-2
Fig. 1-3
JAPAN LIFELINE PERIPHERAL MARKETING REPORT
使用デバイス
Guiding wire :
ATHLETE JOKER PV(Japan Lifeline)、Aguru Support(Boston)、
Micro catheter : 4Fr.CXi(Cook Japan)、ProminentNEO135cm(Tokai medical)
Ballon catheter : SHIDEN(OTW)2.0 × 150(KANEKA)、Coyote2.5 × 220(Boston)、Jackal4.0 × 100(KANEKA)
Sheath :
4.5Fr.Parent55cm(Medikit)
手技手順 • 方法
同 側 順 行 穿 刺 4.5Fr.Parent PLUS + CXi + ProiminentNEO + ATHLETE JOKER PV で 開 始。PTA を ま ず Cross 後 に
Aguru Support に交換、SHIDEN2.0 × 150 で POBA を行った (Fig. 2)。続いて、ATA の完全閉塞を同様のシステムで
Cross、POBA をした。IVUS 上 (Fig. 3)、血管径が 3mm 弱あったため、Coyote2.5 × 220 で Dorsal まで拡張し (Fig. 4, 5)、
近位部は Jackal4.0 × 100 で POBA を行った (Fig. 6)。その後、色調不良、安静時疼痛、黒色変化いずれも改善し、PPI 後、
5 ヶ月経過しているが、症状再燃も認めていない。
Fig. 2
Fig. 3
Fig. 5
Fig. 6
Fig. 4
結果・考察
Fig. 7
このように、おそらくは FPD(Flat Panel Detector)ではない血管撮影装置
では確認ができないであろう、Microchannel と化した退縮血管に対する追従
性も ATHLETE JOKER PV にはすばらしいものがあった。また、先端の耐久
性はこれまでの末梢用 Floppy Wire に比べて優れるものの、やはり長い狭窄
や閉塞を Long バルーン通過させるためにはコアシャフトの剛性も考慮する
と、Support Wire への交換の手間を惜しまず行う必要があると考える。この
ことにより、バルーンの通過性、BKA3 枝+足関節以遠の病変に対して一本
の ATHLETE JOKER PV で安全かつ確実な治療を行うことができた。
また、IVUS の確認により、退縮傾向のある PTA や ATA においても安全かつ
確実な POBA を行うことができ Balloon を順次サイズ UP(2.0 → 2.5 → 4.0)
することで、安全かつ本来の血管径まで拡張することができることも証明さ
れた (Fig. 7)。
また、可能であれば BKA の病変に対しては 3 枝全てを拡張し、さらに足関節
以遠についても拡張しておくということが必要であると考える。
年齢:
60 代 性別:男性
既往歴:DM+HT+HL-SM+ CKD+
主訴:
足底の難治性胼胝(中心に黒色壊死あり)
現病歴:20 年以上の糖尿病罹病歴があった。2013 年 6 月より腎不全となり、維持透析
となる。その際のフットケアで難治性の胼胝が指摘された。エコー上 BKA3 枝閉塞が認め
られ、血行再建が必要と判断した (Fig. 1)。
Target Lesion:Lt.ATA
Fig. 1
JAPAN LIFELINE PERIPHERAL MARKETING REPORT
使用デバイス
Guiding wire : Cruise(St.jude Medical)、X-tremePV(St.jude Medical)、INSPIRE-EXE(FMD)、AstatoXS9-40(ASAHI INTEC)、
ATHLETE JOKER PV(Japan Lifeline)、MeisterBLACK(Century Medical)、AstatoXS9-40(ASAHI INTEC)
Micro catheter : 4Fr.CXi(Cook Japan)、ProminentRapter(Tokai Medical)、ProminentNEO60cm(Tokai Medical)、Qualia(Neich)
Ballon catheter : SIDEN(OTW)2.0 × 200(KANEKA)、Bandicoot3.0 × 200(SJM)
Sheath : 4.5Fr.ParentPlus(Medikit)
手技手順 • 方法
左鼠径同側順行性:4.5Fr.ParentPlus + 4Fr.CXi + ProminentRapter
Cruise → X-tremePV → INSPIRE-EXE → AstatoXS9-40
左足背:エコーガイド穿刺で ProminentNEO60cm → Qualia + ATHLETE JOKER PV → MeisterBLACK → AstatoXS9-40
ATA、PerA、PTA いずれも閉塞している (Fig. 2) 幸い、Distal の足背動脈—ATA の Middle までは側副血行路で造影される (Fig.
3)。Anterior のみで通過が得られない場合はこのルートから Retrograde アプローチを行う戦略を立てた。このようなチャ
ネルがわずかに見えている状態では ATHLETE JOKER PV は大いなる威力を発揮する。Anterior からは ProminentRapter
に INSPIRE-EXE を使用しているが、どうしても ATA の肩を通過せず、一部で Perforation がみられた (Fig. 4)。そのため、
DistalPuncture を行うこととした。この Prominent 到達部位まで、ATHLETE JOKER PV は約 15 秒で到達した。20G サー
フローの外筒から ProminentNEO に交換する際も抜けたり、進みすぎたりせず、非常によいスタビリティーを発揮した。
2.5ml のメダリオンシリンジで弱く造影するも、一部 Perforation していたため、Microcatheter を抜きながら造影する「う
ちぬき造影※」でどこまでが本来の Microchannel であるかを同定する。
最終的には、Astato9-40 で少し掘り進め、そこに Qualia を留置、Anterior に ASTATO9-40 を移動し、ランデブーとした (Fig.
5)。ワイヤー Cross 後、POBA をし (Fig. 6)、一部 Dissection が生じたため (Fig. 7)、さらに POBA(3mm、4 気圧、5 分)
を追加した。最終造影では、胼胝の部分に血流がいくことを確認する (Fig. 8)。その際、当院の放射線技師が作成した、足固
定具を使用する。(KCJL2013 で報告)2 週間後、デブリドメントを行うこともなく、7 年間、患者さんが悩まれていた胼
胝は治癒した。
Fig. 2
Fig. 3
Fig. 4
※血管外に Guide Wire+ マイクロカテが出ている恐れがあるときに行う。2cc シリンジをきわめて弱い力で造影剤を入れながら、マイクロカテを
引いてくる。すると本管にもどったときに血管が造影され、どこまでが True ルーメンだったかが確認できる。
Fig. 5
Fig. 6
Fig. 8
西条病院カテ室
Fig. 7
JAPAN LIFELINE PERIPHERAL MARKETING REPORT
年齢:80 代 性別:女性 主訴:下肢冷感、色調不良
現病歴:糖尿病性腎症で維持透析(5 年以上)
。以前より主訴はあったが、最近になり増強
したため、当院を紹介される。エコー上左右とも Iliac、SFA に狭窄があり、1 ヶ月前に
左 SFA の治療は行っている。今回は、左鼠径から Puncture を行い、山越で、右 SFA90%狭窄に対する治療目的であった(Fig.1)
Target Lesion:Rt.SFA
使用デバイス
Guiding wire : AMPLATZ Extra Stiff(Cook Japan)、ATHLETE JOKER PV(Japan Lifeline)
Micro catheter : CXi(Cook Japan)、Qualia(Neich)
Ballon catheter : MUSTANG(Boston)、Rival(Medicon)
Sheath : 6Fr.ParentPlus(Medikit)
Stent : MISAGO(TERUMO)
手技手順・方法
左 Femoral より対側山越しアプローチ 6Fr.ParentPlus45cm + CXi + Qualia + ATHLETE JOKER PV で開始 (Fig. 2)。基
本的に Slender 手技を推奨し、4.5Fr. システム+ Bare-Stent-Technique を用いるが、この Case では Aorta Bifurcation に
石灰化があり、通過に難渋が予想されることから、やむを得ず 6Fr システムとした。
Lesion の Cross 後、CXi を貫通させ、0.035inch Amplatz Extra stiff ワイヤーに交換、Rival4 × 100 で前拡張後 (Fig. 3,Fig. 4)、
Distal より MISAGO 6 × 100 + 7 × 100 + 7 × 80 を留置し(Fig. 5)、
MUSTANG(BSJ)6 × 150 で高圧拡張を行い終了とした (Fig. 6)。
Fig. 1
Fig. 3
Fig. 4
Fig. 5
Fig. 2
Fig. 6
考察・まとめ
Vol.000
このように透析患者の石灰化をともなった高度狭窄に対しても、ATHLETE
JOKER PV は有効であった。さらに、このケースでは、この中枢側にある Iliac
の 75%狭窄に対しても治療が必要であった。順行穿刺でなく、反対側からの
山越しアプローチであったが、ATHLETE JOKER PV のもつスタビリティーの
高さは維持されており、First Wire としての役割を十二分に果たすと考えられ
た。しばしば経験するシース先端から病変までのサポート力の弱さは、4Fr.Cxi
(90cm)およびシャフト剛性の強い Qualia がカバーすることで、補うことが
できる。
また、55cm の 4.5Fr.ParentPlus に比べ 6Fr.ParentPlus は 45cm と短い。そ
のため、山越しを行った 0.035 ワイヤーで一旦は SFA まで選択できるも、シー
ス先端が CFA にまで到達しないこともある。その場合経験するのが、SFA・
DFA 分岐角あるいは SFA 入口部狭窄による SFA 選択の難しさである。ワイ
ヤーをシェイピングし、さらに CXi のアングルを操作する必要がでてくるが、
山越アプローチでは意外にスムーズにいかないこともある。ATHLETE JOKER
PV の先端形状の「つくりやすさ」はこの場合にも有効であり、さらにその
後 Qualia を入れて先端を 0.5 ㎜から 1 ㎜のみ先行させるスタイルで SFA の
Lesion を Cross することで、シェイピングによる微小血管迷入のリスクや手
間を回避することができる。
総括
冠動脈インターベンションに比べ、とくに BKA、BU のインターベンションではマイクロカテーテルとの相性、相互操作
がきわめて重要となる。その上で、ATHLETE JOKER PV と相性が最もよいのが、ATHLETE JOKER PV のコアシャフト
の強度を保管すること、さらに短い完全閉塞の部位を Dotter で貫通させる目的で、Neich の Qualia、東海メディカルの
PromoinentNEO、Xemex の X-Support と考えている。なお X-support については、先端の柔軟性がないため(その分直
線貫通性は非常に強い)、ATHLETE JOKER PV は不透過部分を完全にこえた状態でないと TightLesion の Dotter は難しい
ことがあるため、注意も必要である。
腓骨動脈末梢と全脛骨動脈をつなぐ穿通枝などの側副血行路を経由させる場合や、足関節以遠の DorsalArch や Pedal Arch の急峻な角度を通過させるときには ProminentBTA ともよい相性であった。
さ ら に、Case2 で は、Retrograde Approach で 足 背 動 脈 を エ コ ー ガ イ ド で 20G サ ー フ ロ ー に て Puncture し た 際、
Microchannel の Tracking にも非常に有用であり、かつ、先端耐久性が優れていることからその後の活用にも支障をきたさ
なかったということが証明されている。
このように、ATHLETE JOKER PV は通常の狭窄、エコーでわずかに血流がみられるような MicroChannel、角度の強い分
岐の選択と PPI においても冠動脈と同じく、First Choice Wire として、我々の期待に十分応えてくれる優れたワイヤーで
あるといえる。
JOKER PV 構造図
ガイドワイヤー後端側識別マーカー
JAPAN LIFELINE PERIPHERAL MARKETING REPORT
BKA-Intervention の Tips
まずほとんどが透析患者であり、狭小血管、退縮血
その際、マイクロカテーテルで第 2 カーブを覆ってし
管、さらに高度石灰化の三重苦であることが多い。
まうことにより余計な迷入も低減することができる。
そこで最も必要なのが、バックアップ力である。4.5Fr
ATHLETE JOKER PV や Cruise は石灰化を伴った狭
あるいは 3Fr.Parent の中に Cxi、マイクロカテーテ
小病変に対する侵入性が高いため、MicroCatheter
ル、ワイヤーを入れる「4 段ロケット」法は既にス
(特に Corsair や Prominent)を力尽くでねじ入れた
タンダードとなっているが、注意点も必要である。
場合、途中で trap(マイクロカテーテルもその中の
3Fr.Parent に 4Fr.CXi を 入 れ た 場 合 は ガ イ デ ィ ン
ワイヤーも)され、システム全抜去を余儀なくされ
グシース側管からの造影が不可能である。しかし、
る、あるいは一度石灰化に食い込んだ場合、マイク
4Fr.CXi に Y コネクターを装着し、マイクロカテー
ロカテーテルが伸展あるいはその先端が破断される
テルを Qualia とすることで、Cxi 側管からの造影が
レベルの力でなければ抜去すら困難となることもあ
可能となる。
る。ただ、小生のこれまでの経験上では、ATHLETE
ワイヤーの先端形成も BKA-Intervention を 100 例
JOKER、Cruise ともにワイヤーが破断され CTO 内
行うまでは悩むことが多かった。特に、ATA の近位
に残留した経験はない。
部完全閉塞の場合は、まず POP-ATA への角度が 90
とくに、ATHLETE JOKER PV についてはコアシャ
度であること、さらに、ATA に入った直後の閉塞が
フトが柔らかく、Qualia または ProminentNEO を
多く、
そこが 90 度の屈曲点となっていることが多い。
十分に活用させる方法がある。それらを前進させた
これは RCA#1 の CTO と同じ形状であるが、ATA
あとに 4Fr.CXi を進めることで、極めて強いバック
入口をガイディングがダイレクトに選択することが
アップを安全に得られることができる。マイクロカ
不可能である、という条件の悪さが加わる。そこ
テーテルで Dotter 後、SupportWire に交換する手
で、有用なのが、ATHLETE JOKER PV を Judkins
順を惜しまなければ、ほぼ全例、末梢までバルーン
Curve に形成することである。先端 2mm を 60 度、
を通過させることができると考えている。
その先 10mm を 45 度として、全てをマイクロカテー
テルから出すと (Fig. 1)、POP-Trunk から ATA を選
ぶに最適のカーブとなる。少しマイクロカテーテル
から引き、先出しを 8mm とすると PeronealTrunk
から PTA を選択するのにちょうどよいカーブとな
る。
さらに、先端を 0.5-1mm しか出さない状態で (Fig. 2)
Fig. 1
マ イ ク ロ カ テ ー テ ル ご と 進 め る と Qualia ま た は
ProminentNEO の 直 進 性 に よ り、BKA あ る い は
Fig. 2
SFA の直線部分を貫通してくれる。足関節近くで
PerA から側副血行路―足背動脈への選択を行う場
合、Pedal Arch や Dorsal Arch を選択していく場合
Fig. 3
には 2mm60 度の第 1 カーブ (Fig. 3) を使えばよい。
2013-11-05-01