マーケットウィークリー・815号産業ニュース 2015.2.13 安全運転支援システムにトヨタ、ホンダも本格参入作成者：冨ケ原信久トヨタが安全運転支援システムに本格参入 15年は自動車メーカーの販売戦略上、安全運転支援システムが重要なセールス・ポイントとなりそうだ。10年に富士重工が「アイサイト」をレガシーに搭載したことをきっかけに、自動車各社が導入を進め、消費者の認知度が高まったことがある。日本自動車工業会調査によると「前方障害物衝突防止支援システム」に魅力があると消費者9割が回答。「車線逸脱防止支援システム」「歩行者の検知・保護支援システム」「誤発進防止システム」などその他の先進安全技術にも関心を示し、消費者のクルマ選びに安全性が評価の対象となっていることが明らかになった。これまで市販車への搭載に慎重だったトヨタ（7203）も、15年春以降に新型のシステム導入を決定。国内シェアの高いメーカーの本格参入で、普及率が高まりそうだ。各社の安全運転支援システムの性能評価も開始一方、各社の技術が異なり比較しにくいことが購入者にとってネックだった。だが、14年10月に国交省が初めて実施した「ぶつからない車」の性能調査の結果を公表。国内自動車メーカー9社26車種が参加し、先進安全技術の予防安全性能がランキング化された。今回の調査は対物の衝突被害軽減ブレーキと車線逸脱警報装置の2項目だが、性能差が想像以上に開いた。15年度から周辺視界情報提供装置、16年度から歩行者に対する衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱防止装置、夜間歩行者警報装置の性能評価を追加する予定だ。日本はこれまで安全技術の過信を警戒し搭載には消極的だったが、安倍政権後は関係省庁が連携。支援体制を整えたことで、自動車各社の安全運転支援技術の開発競争を促すほか、普及にも役立ちそうだ。先行する欧米では衝突被害軽減ブレーキを重視国内自動車各社が安全運転支援システムの開発を進める背景には、主要自動車市場である欧米でも安全性能評価「自動車アセスメント（ＮＣＡＰ)」が設定され、評価ポイントを高めていることがある。ＥＵは 13年11月から全ての新モデルの商用車、15年11月から全商用車の新車に衝突被害軽減ブレーキの装備を義務化。ユーロＮＣＡＰの最高ランク取得にも、同ブレーキの搭載を必須とした。14年は対車両性能を評価したが、16年からは対歩行者性能も加える予定だ。米国では米国道路安全保険協会(ＩＩＨＳ)が13年から自動車保険料が下がる「トップセーフティピック+（最高安全評価）」の取得には、衝突被害軽減ブレーキの搭載を必須とした。理由として衝突被害軽減ブレーキ搭載車の事故比率が低いことを挙げている。トヨタの本格参入で普及度アップが確実視トヨタが15年に発売する新車から順次導入する予防安全パッケージの名称は「Toyota Safety Sense」。衝突被害軽減ブレーキは2種。小型車向け「同Ｃ」は赤外線センサーと単眼カメラを一体化した。センサーユニットは独コンチネンタル社が提供する。前方の車両に対応し、時速80km以下の走行で作動。赤外線センサーの検知距離は30m程度だが、単眼カメラでそれ以上の距離を補完。30km分減速し運転者の衝撃を軽減させる。夜間視界支援、車線逸脱防止支援もパッケージした。中型車・高級車向け「同Ｐ」はミリ波レーダーと単眼カメラを一体化。センサーユニットはデンソー（6902）製。車両のほかに道路横断中の人にも対応し、対車両なら作動速度は最高速から40km分減速、対人なら時速80km以下で30km分減速できる。「同Ｃ」の装備に加え車間距離マーケットウィークリー・815号 2015.2.13 維持走行支援をパッケージした。価格は普及を目指した設定とする意向で、注目度も高まりそうだ。先行する富士重工は機能アップで対抗衝突被害軽減ブレーキの性能で先行する富士重工（7270）は日立（6501）の子会社日立オートモティブシステムズと共同開発。14年10 月以降、「アイサイト（ｖｅｒ3）」を国内で販売する新型車から順次導入を進める。従来の「ｖｅｒ2」の障害物検知センサーであるステレオカメラの視野角、視認距離を共に約40％拡大。カラー画像化と併せ、視認範囲拡大、物体認識精度向上、ブレーキランプ点灯や赤信号の認識が可能となり、安全性能が進化した。自車と対象物の衝突回避もしくは被害軽減が可能な想定速度も時速約50kmに向上。日経Automotive 誌の自動ブレーキ機能評価では、これまで10社12種の自動ブレーキシステムを調査したが、「アイサイト（ｖｅｒ2）」「アイサイト（ｖｅｒ3）」とも最高評価「ＡＡＡ」を獲得した。レーンキープアシストなど多種運転支援機能も付けながら、価格は10万円（税抜き価格）に設定し、ユーザーからも好評を得ているようだ。ホンダも本格参入。日産は認知度アップで対抗ホンダ（7267）は15年2月発売の新型ミニバン「ジェイド」に安全運転支援システム「ホンダセンシング」を搭載し、今後採用車種を広げていく。衝突軽減ブレーキシステムはミリ波レーダーと単眼カメラで前方の対物・対人を検出する。単眼カメラは前方約60mまで識別可能と精度を高めた。レーダーは富士通（6702）の子会社富士通テン製、カメラは日本電産（6594）の子会社日本電産エレシス製で、路外逸脱抑制機能など全7つの機能を装備し、セット価格は14万円程度となるもよう。普及促進で先行する日産（7201）は15年度中に、国内で販売するほぼ全ての車両に「エマージェンシーブレーキ」を搭載すると発表。センサーは車種別にミリ波レーダーか単眼カメラ、または簡易型のレーザーレーダーを使った3つのタイプを設定した。その他の自動車メーカーも独自の安全装置を導入済みだが、トヨタ、ホンダが本格参入に進んだことで、機能や性能のほかアピールの強化を進めていくことになりそうだ。各社の安全運転支援システムの機能には制限があるものの、開発が進むことでより自動化へ向かうことが期待される。 ◇独立行政法人自動車事故対策機構（ＪＮＣＡＰ）の14年予防安全性能試験結果順位メーカー 1 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 19 20 24 25 26 スバルレクサス日産スバルスバル日産日産マツダレクサストヨタマツダレクサスホンダ三菱トヨタスズキスズキスズキスズキダイハツホンダホンダホンダダイハツダイハツホンダ車種名グレードレヴォーグ LS スカイラインフォレスターインプレッサエクストレイルノートアテンザ NX カムリアクセラ IS オデッセイアウトランダー PHEV ハリアーソリオバンディットハスラーワゴンR 1.6GT EyeSight 460 F SPORT 200GT-t Type P 2.0i-L EyeSight XV HYBRID 2.0i-L EyeSight 20X エマージェンシーブレーキパッケージ X エマージェンシーブレーキパッケージ XD L Package 300h version L G Package XD 300h F SPORT ABSOLUTE EX G Navi Package HYBRID Advanced Package BANDIT-DJE G FX スペーシアタントカスタムフィット N-BOX Custom N-WGN ミライースムーヴカスタムヴェゼル X RS”SA” HYBRID・Lパッケージ G・Aパッケージ G・Aパッケージ L”SA” X”SA” HYBRID Z （出所）自動車事故対策機構資料よりＣＡＭ作成被害軽減ブレーキ検出装置 1,599cc カメラ 4,608cc ミリ波+カメラ 1,991cc ミリ波 1,995cc カメラ 1,995cc カメラ 1,997cc カメラ 1,198cc カメラ 2,188cc レーザー+ミリ波 2,493cc ミリ波 2,493cc ミリ波 2,188cc レーザー+ミリ波 2,493cc ミリ波 2,356cc ミリ波 1,998cc ミリ波 2,493cc ミリ波 1,242cc ミリ波 658cc レーザー 658cc レーザー 658cc レーザー 658cc レーザー 1,496cc レーザー 658cc レーザー 658cc レーザー 658cc レーザー 658cc レーザー 1,496cc レーザー排気量確認作動域 10～60km 10～60km 10～60km 10～60km 10～60km 10～60km 10～60km 10～60km 20～60km 20～60km 10～60km 20～60km 10～60km 10～60km 20～60km 10～45km 10～30km 10～30km 10～30km 10～30km 10～25km 10～25km 10～25km 10～30km 10～30km 10～25km 得点はみ出し警報得点確認作動域（Ａ）検出装置（Ｂ） 32.0 カメラ 60km/h～ 8.0 32.0 カメラ 60km/h～ 8.0 32.0 カメラ 60km/h～ 8.0 31.9 カメラ 60km/h～ 8.0 31.3 カメラ 60km/h～ 8.0 24.5 カメラ 60km/h～ 8.0 20.7 カメラ 60km/h～ 8.0 19.6 カメラ 60km/h～ 8.0 18.9 カメラ 60km/h～ 8.0 18.2 カメラ 60km/h～ 8.0 17.8 カメラ 60km/h～ 8.0 8.0 17.5 カメラ 60km/h～ ? 25.3 なし ? 14.9 カメラ 60km/h～ 8.0 14.8 カメラ 60km/h～ 8.0 ? 10.7 なし ? ? 8.9 なし ? ? 8.9 なし ? ? 8.8 なし ? ? 8.0 なし ? ? 8.0 なし ? ? 8.0 なし ? ? 8.0 なし ? ? 7.8 なし ? ? 7.4 なし ? ? 6.7 なし ? 合計（Ａ+Ｂ） 40.0 40.0 40.0 39.9 39.3 32.5 28.7 27.6 26.9 26.2 25.8 25.5 25.3 22.9 22.8 10.7 8.9 8.9 8.8 8.0 8.0 8.0 8.0 7.8 7.4 6.7