三次元動作解析装置を用いた片麻痺運動障害評価

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Japanese Journal of Comprehensive Rehabilitation Science (2014)
Original Article
三次元動作解析装置を用いた片麻痺運動障害評価 Quantified Paralysis
Performance Assessment(QPPA)の信頼性と最小可検変量の検討
1,2
1
2
1
3
3
尾崎健一 , 加賀谷斉 , 近藤和泉 , 才藤栄一 , 今井幸恵 , 園田 茂 , 伊藤慎英
4
1
藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学 I 講座
独立行政法人国立長寿医療研究センター機能回復診療部
3
藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学 II 講座
4
藤田保健衛生大学医療科学部リハビリテーション学科
2
要旨
Ozaki K, Kagaya H, Kondo I, Saitoh E, Imai S, Sonoda S,
Itoh N. Reliability and minimal detectable change of
Quantified Paralysis Performance Assessment(QPPA)
using a three-dimensional motion analysis device. Jpn J
Compr Rehabil Sci 2014; 5: 109︱116.
【目的】三次元動作解析装置を用いた片麻痺運動障
害 の 定 量 的 評 価 法 Quantified Paralysis Performance Assessment(QPPA)を開発し,臨床場面で使用する
前段階として,再現性と,最小可検変化量を検証する
ことである.
【方法】初発脳卒中患者 66 名(男性 39 名,女性 27
名,年齢 60±12 歳(平均±標準偏差))を対象として,
QPPA での計測を2回1セットで行った.計測は上肢
機 能(腕=QPPA-UE), 下 肢 機 能(股 関 節=QPPAHip,膝関節=QPPA-Knee,足関節=QPPA-Ankle)の
4種類を行い,各指標マーカの拳上距離と最大速度を
代表値とした.1セットの計測の各代表値から,級内
相関係数(Intraclass correlation coefficient; ICC),およ
び, 最 小 可 検 変 化 量(minimal detectable change) の
95%信頼区間(以下,MDC95)を算出した.
【結果】急性期の同一症例から2週間以上の間隔を空
けて,2セットの計測値が得られた場合は,別のデー
タとして分析を行い,総計 91 セットの計測値から
QPPA 指標における ICC 0.956~0.989 および MDC95
4.56~6.79%を得た.
【結論】QPPA の代表値は高い再現性を示した.また,
最小可検変化量は小さく,順序尺度の評価法より臨床
的変化を鋭敏に捉えられると推測された.
キーワード:三次元動作解析,片麻痺,間隔尺度
著者連絡先:尾崎健一
藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学Ⅰ講座
〒 470︱1192 愛知県豊明市沓掛町田楽ケ窪 1︱98
E-mail: [email protected]
2014 年9月9日受理
本研究において一切の利益相反や研究資金の提供はあ
りません .
はじめに
日本での脳卒中患者総数は 123 万 5,000 人(2011
年)[1]であり,これらの患者は麻痺を中心とした
さまざまな障害を抱えながら,社会生活を送ることに
なる.そこで急性期,回復期,維持期の各時期におけ
るリハビリテーションの役割が重要となってくる.
リハビリテーションを効果的,効率的に行うために
は,まず正確な評価が必要である.国際機能障害分類
(ICIDH; International classification of impairments,
disabilities and handicaps) で は 障 害 を 機 能 障 害
(impairment), 能 力 低 下(disability), 社 会 的 不 利
(handicap)の3層に分けることを提唱している[2].
脳卒中片麻痺は機能障害に分類され,機能障害レベル
で麻痺を適切に評価し機能改善を図ることが重要であ
る.
片麻痺の評価は,古くは Twitchell[3]による急性
期片麻痺患者の詳細な記述レポートで試みられ,その
後,いくつもの評価法が考案されてきた.才藤ら[4]
は,脳卒中機能障害評価法を①筋力低下を捉えた評価
法,②共同運動−分離運動という動作パターン障害を
主とした評価法に大別している.①として,徒手筋力
検査(MMT: Manual Muscle Testing)や,MMT から上
下肢得点を算出する Motricity Index[5]などが,②と
して,Brunnstrom Stage[6]が挙げられる.Brunnstrom
Stage は,いくつかの動作パターンの実行可否により
上肢,手指,下肢を各 stage 1 から stage 6 までの6段
階で評価するものである.この他に,片麻痺以外の所
見も含めた総合的機能障害評価法が提案されており,
Fugl-Meyer scale(以下 FMA)
[7]や Stroke Impairment
Assessment Set(以下 SIAS)[8]が挙げられる.FMA
は共同運動に腱反射,協調運動を加えた上下肢評価と,
感覚,関節可動域(range of motion,以下 ROM)の評
価である.一方 SIAS は運動機能,腱反射,感覚に加え,
疼痛,ROM,体幹,非麻痺側,高次脳機能を0点か
ら3点または5点で採点するという,より総合的な評
価法である.しかし,これら評価法は診察,視診によ
る判断で,グレーディングを行っており多分に主観的
な順序尺度であると言わざるを得ない.
このようにリハビリテーション医学で用いられる評
価に順序尺度が多く,結果的に正しい解釈が行われて
Jpn J Compr Rehabil Sci Vol 5, 2014
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尾崎健一・他:三次元動作解析装置を用いた片麻痺運動障害評価の信頼性検討
いない可能性があるという問題が提起され[9, 10],
Rasch 分析などを用いた間隔尺度への変換や,定量的
な新たな評価手段の導入が推奨されている.そこで,
計測装置を用いた客観的な間隔尺度による障害評価に
より,従来の順序尺度評価では変化を捉えることがで
きなかった臨床的変化がより鋭敏に検出可能となると
期待される.本研究の目的は,三次元動作解析装置を
用いた片麻痺運動障害の定量的評価法を開発し,その
再現性および最小可検変化量を検討することである.な
お,この新しい評価法を Quantified Paralysis Performance Assessment(以下 QPPA)と呼ぶことにしている.
対象
本研究は前向き研究として行われ,エントリー基準
は初発脳卒中患者(テント上,一側性病変)で車椅子
での座位保持が可能であり,指示動作が理解可能な者
とした.除外基準は,コントロール不良の高血圧,心
不全,呼吸不全を有する者と,重度失語および重度認
知症にて指示動作不能な者とした.
研究参加への同意の得られた対象 66 名の内訳は,
男性 39 名,女性 27 名,年齢 60±12(平均±標準偏
差)歳であった.疾患の内訳は,脳梗塞 34 名,脳出
血 30 名,くも膜下出血2名,病変は左側 34 名,右
側 32 名,初回計測時の発症後日数平均は 173 日で
あった.研究への参加に対するインフォームドコンセ
ントは,全ての対象者またはその家族に対して事前に
研究参加の危険性や途中で研究参加の中止を要求して
も対象者には一切の不利益がおこらないことを十分に
説明した後,書面をもって行った.なお,本研究は当
院倫理委員会の承認(第 08-098 号)を得て行われた.
方法
三次元動作解析装置にて4種類の動作の計測を行
い,評価項目とした.具体的には,上肢機能(腕),
下肢機能(股関節,膝関節,足関節)を評価した.そ
れ ぞ れ を QPPA-UE,QPPA-Hip,QPPA-Knee,QPPAAnkle と呼ぶ.
1.計測機器
三次元動作解析装置は KinemaTracer®(キッセイコ
ムテック社,松本市,日本)を使用した.このシステ
ムは,複数台の CCD カメラを1台の収録・解析用 PC
に IEEE1394 で接続しただけのシンプルな機器構成
となっており,コントロールオブジェクトを用いて
キャリブレーションを行い,指標マーカを被検者に装
着すれば計測を開始することができる.計測環境とし
ては,サンプリング周波数は 60 Hz とし,コントロー
ルオブジェクトは通常の 120⊠60⊠50 cm フレーム,
マーカは標準的な 30 mm の全球マーカとした.簡便
性を考慮して全ての計測を座位姿勢で行うよう統一し
た.CCD カメラは三次元化に必要な最少台数である
2台とし,カメラ同士をフレームで固定した.計測環
境を図1に示す.上下肢を同一条件で撮影可能とする
ためにカメラ間距離を1m,カメラ−被検者間距離を
2m とした.指標マーカの視認性,解析の容易さから
麻痺側(計測側)45° から撮影とした.
Jpn J Compr Rehabil Sci Vol 5, 2014
図1.計測環境
フレームを用いて二つの CCD カメラを1m の距離で
固定している.被験者とフレームの距離は2m.麻痺
側(計測側)前方 45° から撮影.
2.計測方法
教示動作は従来の片麻痺評価法を参考にした.動作
が simple task であること,評価肢位が座位での撮影条
件と一致することから,動作は SIAS 運動項目(SIASMotor; SIAS-M)の動作に準じて設定した.QPPA-UE
では,まず反対側の膝に置いた手を肩外転,肘屈曲し
口に運ぶという SIAS knee-mouth test を行わせ,さら
にこの状態から手を挙上させた後に口に戻るという系
列課題を設定した.加えて,口から手を拳上し口に戻
る動作は可能な限り速く,高く5回行わせた.下肢機
能評価は当初各動作を組み合わせて系列動作とするこ
とを検討したが,動作が複雑になりすぎて被検者が遂
行困難であったため,SIAS-M にならって,股関節機
能評価(QPPA-Hip),膝関節機能評価(QPPA-Knee),
足関節機能評価(QPPA-Ankle)を個別に計測するこ
ととした.QPPA-Hip は股関節を 90° 屈曲位より最大
屈曲させる動作を可能な限り速く,高く5回行わせた.
QPPA-Knee は膝関節を 90° 屈曲位から可及的に伸展
させる動作を可能な限り速く,高く5回行わせた.ま
た,この際に大腿が椅子から離れないように指示した.
QPPA-Ankle は足関節を 10 度底屈位から踵部を床に
つけたまま,できるだけ最大背屈位まで,背屈・底屈
を可能な限り速く5回行わせた.
マーカは教示動作を最も反映する位置に設定した.
QPPA-UE で は 手 関 節 マ ー カ(手 関 節 背 側 中 央)
,
QPPA-Hip は膝関節マーカ(大腿骨外側上顆),QPPAKnee は 足 関 節 マ ー カ(腓 骨 外 果; 以 下, 外 果),
QPPA-Ankle は足尖マーカ(第5中足骨頭)とした.
実際の撮影場面とマーカ位置を図2に示す.
QPPA の指標は各マーカの垂直方向の移動距離(拳
上距離)と最大速度(拳上速度)とし,5回動作中の
中3回の平均値を採用した.麻痺が重度で5回動作が
実施できない場合は,施行回数中の最大値を採用した.
拳上距離では,体格差の補正のために各肢長で補正を
行った.具体的には,KinemaTracer® での解析時の画
像上から,QPPA-UE は上肢長(肩峰外側端~橈骨茎
尾崎健一・他:三次元動作解析装置を用いた片麻痺運動障害評価の信頼性検討
図2.撮影風景とマーカ位置
状突起),QPPA-Hip は大腿長(大転子~大腿骨外側
上顆),QPPA-Knee は下腿長(大腿骨外側上顆~外果),
QPPA-Ankle では外果~第5中足骨頭を計測し,拳上
距離を除した.QPPA-Knee では,健常人による予備
的検討で股関節屈曲が起こり,挙上距離が不当に長く
なることがあったため,膝関節マーカ挙上距離を引い
て,股関節屈曲分の補正を行った.さらに健常人計測
で 得 ら れ た 計 測 上 限 値(QPPA-UE: 1.9, -Hip: 0.9,
-Knee: 0.9, -Ankle: 0.7)で除し 100 を乗することで%
表示とした.拳上速度は健常人計測で得られた平均値
(QPPA-UE: 214.1 cm/s, -Hip: 157.9 cm/s, -Knee:
268.8 cm/s, -Ankle: 56.6 cm/s)で除し 100 を乗するこ
とで%表示とした.距離(Distance)を D,速度(Velocity)
を V と し,QPPA-UE は QPPA-U
(D)
,-U
(V)
,-Hip は -H
(D)
,-H
(V)
,-Knee は -K
(D)
,-K
(V)
,-Ankle は -A
(D)
,
-A
(V)と表記し,これら8指標を使用した.教示お
よび指標マーカ位置,指標を表1に示す.
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3.解析方法
対象者の QPPA 計測を,日を改めて2回行った.計
測は三次元動作解析装置 KinemaTracer® を用い,計測
方 法 の 項 で 決 定 し た 方 法 に 従 い,QPPA-UE, -Hip,
-Knee, -Ankle を撮影した.2回の計測は,急性期から
亜急性期患者(発症後 180 日以内)では3日以内に
行い,慢性期患者(発症後 181 日以上)では7日間
以内に行った.また,計測日と同一日に計測者以外の
者により SIAS-M を評価し,麻痺の変化が無いことを
確認した.急性期から亜急性期患者において,前回の
計測から 14 日以上の計測間隔を空けて再度計測可能
だった場合,別データとして扱い,計 91 計測を対象
とした.
2回計測分のデータを用い,各指標の級内相関係数
(Intraclass correlation coefficient; ICC),および,最小
可検変化量(minimal detectable change; MDC)の 95%
信頼区間(以下,MDC95)を算出した.本研究は同一
装置による検者内信頼性を検討するデザインであるた
め ICC は ICC(1, 1)を用いた.MDC95 は,測定の標
準誤差(standard error of measurement; SEM)を求め,
以下の式により算出した.
MDC95=SEM⊠1.96⊠ 2
結果
計 測 時 の SIAS-M を 表 2 に 示 す. 中 央 値 は U/E
(proximal),L/E(proximal, hip),L/E(proximal,
knee)で score 3,L/E(distal)で score 2 であり,L/E
(distal)がやや重度な対象群であった.
各 QPPA 指標の散布図を図3,算出した ICC(1, 1),
SEM,MDC95 を 表 3 に 示 す.ICC(1, 1) は 0.956 ~
0.989 といずれも 0.95 を超え,高い再現性を認めた.
MDC95 は 4.563~6.791 であった.今回 QPPA の指標
は%表示としているので,MDC95 から指標全体中の
表1.QPPA の教示動作とマーカ位置,指標
評価項目
教示動作
マーカ位置
指 標
-UE
反対側の膝に置いた手を肩外転,肘屈曲し口
に運ぶ.そこから可能な限り速く,高く手を
挙げ,口に戻す動作を5回行う.
手関節背側中央
拳上距離=U(D)
最大速度=U(V)
-Hip
股関節を 90° 屈曲位より最大屈曲させる動作
を可能な限り速く,高く5回行う.
大腿骨外側上顆
拳上距離=H(D)
最大速度=H(V)
-Knee
膝関節を 90° 屈曲位から十分伸展させる動作
を可能な限り速く,高く5回行う.この際,
大腿が椅子から離れないように注意する.
外果 拳上距離=K(D)
(膝拳上分補正)
最大速度=K(V)
-Ankle
足関節を 10 度底屈位から踵部を床につけた
まま,できるだけ最大背屈位まで,背屈・底
屈を可能な限り速く5回行う.
第五中足骨頭 拳上距離=A(D)
最大速度=A(V)
拳上距離=5回中の中3回の拳上距離の平均[cm]⊠100/各肢長[cm]
/計測上限値
(各肢長 U
(D):肩峰外側端~橈骨茎状突起,H(D):大転子~大腿骨外側上顆
K
(D):大腿骨外側上顆~外果,A(D):外果~第五中足骨頭間
計測上限値 U(D):1.9, H(D):0.9, K(D):0.9, A(D):0.7)
拳上速度=5回中の中3回の最大拳上速度の平均[cm/s]⊠100/健常者平均値[cm/s]
(健常若年者平均値 U(V):214.1 cm/s,H(V):157.9 cm/s,K(V):268.8 cm/s,A(V):56.6 cm/s)
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図3.QPPA 指標の再現性
横軸を1回目計測,縦軸を2回目計測とした散布図を示す.いずれも ICC(1, 1)は 0.95 以上で高い再
現性を認めた.QPPA-UE 拳上距離=U(D),最大速度=U(V),QPPA-Hip 拳上距離=H(D),最大速度=
H(V),QPPA-Knee 拳上距離=K(D),最大速度=K(V),QPPA-Ankle 拳上距離=A(D),最大速度=A(V).
表2.対象者の計測時の SIAS-M
SIAS-M
U/E(proximal)
L/E(proximal, hip)
L/E(proximal, knee)
L/E(distal)
0
1
2
3
4
5
Total
9
4
4
18
16
15
7
12
11
21
19
17
23
19
27
24
21
17
25
10
11
15
9
10
91
91
91
91
表3.QPPA 指標の ICC(1, 1)
,SEM,MDC95
QPPA
-UE
-Hip
-Knee
-Ankle
U(D)
U
(V)
H(D)
H
(V)
K(D)
K(V)
A
(D)
A(V)
ICC(1, 1)
SEM
MDC95
0.989
0.965
0.977
0.971
0.956
0.976
0.965
0.978
2.431
1.898
2.450
1.840
1.843
1.645
1.911
1.994
6.738
5.260
6.791
5.101
5.109
4.563
5.299
5.528
何%の変化が有意であるかを推測することができる.
考察
麻痺を原因とする筋力低下は,基本的には筋張力の
実測値を測定するべきである.しかし,MMT:3 の定
義が「関節を重力に抗して全可動域で動かせること」
とあるように,実際には動作によって評価している部
分も多い.さらに中枢性麻痺の評価では,運動パター
ン,すなわち,動作が重視される.従来はこの動作を,
視診という主観的な採点によって評価していた.本研
究は,麻痺という機能障害を臨床実用的な三次元動作
解析法で客観的に定量化するという目的で行った.実
際,これまでに行われてきた動作解析装置を用いた研
究は,下肢ではそのほとんどが歩行を対象としており
[11],機能障害レベルの評価は少ない[12].上肢
はリーチ動作の報告が多く[13, 14],症例数の少な
い予備的検討か,訓練ロボットなど特定の訓練効果の
一指標として用いられていることが多い.
ICC は推測統計学の創始者の一人である Fisher に
よって提唱され,Shrout によって定式化された[15].
ICC には(1)一人の検者が複数の被検者を評価した
ときの検者内信頼性 ICC(1, 1),
(2)複数の検者によっ
て複数の被検者を測定する場合の検者間信頼性 ICC
(2, 1)
,および(3)技量の異なる検者(変量要因)
が脳卒中患者(年齢,性別,病巣,入院期間などを規
定した)(変量要因)を評価するときの検者間信頼性
ICC(3, 1)がある.本研究は同一装置による検者内信
頼性を検討するデザインなので,ICC(1, 1)を用いた.
動作解析の再現性検討として,Wagner ら[16]の報
告がある.これは,慢性期片麻痺患者 14 名でリーチ
動作の動作解析指標の再現性を検討しており,リーチ
距離(ICC:0.93~0.99),最大速度(0.74~0.95),
最大関節角度変化(0.93~0.99)で高い再現性を認め
たと報告している.本研究でも ICC:0.956~0.989
と高い再現性を認め,同様の結果となった.
SEM や MDC は,臨床的に意義のある最小変化量
(minimal clinical important difference; MCID) の 指 標
の一つである[17].近年,リハビリテーション分野
の評価法においてもこれらの検討が行われている.
Hiengkaew ら[18]は,慢性期脳卒中患者において各
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尾崎健一・他:三次元動作解析装置を用いた片麻痺運動障害評価の信頼性検討
種下肢機能評価の MDC95 を検討しており,Berg Balance
Scale は5点(全体の 10%)
,Fugl-Meyer Assessment の
下肢項目は4点(全体の 16%)だったと報告している.
順序尺度の評価法は,再現性が必ずしも高くなかった
り尺度の段階が少なかったりするため,臨床上,主観
的な変化を感じ取れる以上に変化しないと MCID を
超えることができない.他方,間隔尺度である QPPA
指標の MDC95 は 4.563~6.791(≈全体の%)であり,
有意な変化を捉えやすいと推測される.
本研究の限界として,一つ目に計測の簡便化が挙げ
られる.今回,カメラ台数の最少化および上下肢の撮
影環境統一により計測の簡便化を図っている.しかし,
SIAS-M や Brunnstrom Stage といった従来の片麻痺評
価法と比較して短時間で評価できるわけではなく,機
器の自動解析化や計測方法の更なる簡略化を検討する
必要がある.二つ目に手指機能評価がないことが挙げ
られる.手指動作は動きが小さく,同一条件での撮影
が困難であるため本研究に盛り込まなかった.今後,
手指機能評価の開発を行う予定である.三つ目に動作
による麻痺の評価であることが挙げられる.関節運動
が起こらない重度麻痺の評価が困難で,床効果となっ
てしまう可能性がある.四つ目に外的妥当性が検証さ
れていないことが挙げられる.今回,再現性や MDC
が良好な評価法であることは明らかとなったが,指標
が本当の意味で片麻痺を評価しているかは不明であ
る.SIAS-M や Fugl-Meyer Assessment といった従来の
片麻痺評価法との基準関連妥当性の検証を行う必要が
ある.
もし,これら課題が解決されれば,治療群間および
施設間でのリハビリテーション効果判定や,片麻痺患
者への麻痺の変化の詳細なフィードバックとして
QPPA が利用でき,客観的なデータを与えることにな
るであろう.
謝辞
信頼性研究に協力いただいた,理学療法士の加藤嘉
隆さん,大橋綾乃さん,作業療法士の首藤智一さん,
尾中寿江さんに感謝いたします.また,KinemaTracer®
の撮影環境設定に協力いただいたキッセイコムテック
社の田口勇次郎さん,青木健光さんに感謝いたします.
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