ポリプロピレン・ポリアクリ レートプロツクポリマ… で表面改質したフィ ラー

ポリプロピレンwポリアクリレ}トブロックポリマー
で表面改質したフィラー充填ポリプロピレン複合材料
の界面構造が力学特性に及ぼす影響
永田員也・日笠茂樹。児子英之・前川一彦*・吉原資二*・苗宮行浮串
KazuyaNagata,ShigekiHikasa,KazuhikoMaekawa*,MototsuguYosihara*,andYukiatsuKomiya*
キーワード
複合材料/ポリプロピレン/フィラー/相溶化剤/力学特性
KEYWORDS
Composite/Polypropylene/Filler/Compatibilizer/Mechanicalpropeties
要
旨
疎水ユニットのポリプロピレン(Pp)と極性ユニットとしてカルポン酸官能基を有したポリアクリレー
トとからなるブロックポリマー(ジプロツクポリマー:分子量15000,Pアブロック:ポリアクリレートブロ
ック=2:1)に水酸化マグネシウム(Mg(OH)ユ)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、アルミナ、シリカ、
タルク、炭酸カルシウム(CaCOユ)などの表面化学特性の異なるフィラーとのコンパウンドをトルエン溶
媒湿式法で調製した。得られたコンパウンドの動的粘弾性を測定した結果、Mg(0Ii)2、刃(OH)3、アル
ミナ、CaCO,などのアルカリ性表面を持つフィラーではジプロックポリマーのtan8ピーク温度温度は10
℃以上高温側にシフトしたが、シリカ、タルクのtan∂ピーク温度温度はほとんど変化しなかった。ジ
プロツクポリマーで表面改質したMg(OH)2、CaCO,、タルクなどのフィラーをPPに30wt%充填し、得ら
れた複合材料の力学特性を測定した。Mg(OH)2、CaCO,,などのアルカリ性表面を持つフィラー充填複合
材料ではジプロツクポリマー添加にともない弾性率は徐々に低下し、降伏強度は表面改質量増加にとも
ない3wt%付近まで増加し、それ以降一定となった。一方、タルク充填フィラーではジプロックポリマー
の添加によりこれら力学特性はほとんど変化しなかった。以上の結果から、マトリックス/フィラー界
面の相溶化剤が強固な界面層を形成するためには疎水鎖がマトリックスと同様の構造を有しているだけ
ではなく、親水鎖の官能基であるカルポン酸とフィラー表面の相互作用も重要な因子であることが明ら
かとなり、動的粘弾性の結果と一致していた。
言
1緒
相溶化剤は極性の異なるポリマー同士を複合
化させた ポリマーブレンドにおいて多用されて
ーの表面改質は脂肪酸、シランカップリング剤、
月旨肪酸石けんなどのポリオレフイン系相溶化剤と
いる。相溶化剤は複合化させるポリマーの極性に
合わせた官能基を持つランダム共重合体、グラフ
る。著者らはエチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸
ビニル基が無機フィラーの分散性を向上させるこ
ト共重合体、ブロック共重合体などが用いられ、
界面に相溶化剤が作用することによりマトリック
とを報告しており、この相溶化剤の有機官能基は
極性ポリマーをミクロ均一分散させる作用と同様
スポリマー中に複合化させたポリマーがミクロ均
の効果が期待できるユ〉・3)。
一分散する。ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)
などのポリオレフイン系相溶化剤はオレフィンと
フィラー充填ポリオレフインはその優れたコス
トパフォーマンス、リサイクル可能、低環境負荷
無水マレイン酸、アクリル酸、アクリレート、酢
酸ビニル、アミン、エポキシなどの官能基を有し
などの長所からさらに使用量が増加すると予想さ
同じ官能基を有した低分子化合物が使用されてい
たモノマーとの共重合体がポリアミド、ポリ塩化
れているが、その一方で複合材料に要求される特
性は高度化、多様化してきている。この要求を満
ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどの極性
足するためには〟皿からnmサイズへのフィラーの微
ポリマーとの複合化で使用されているり。一方、
ポー」オレフィンに充填される親水性の無機フィラ
粒子化、微粒子の均一分散ならびにマトリックス/
*(株)クラレ
は満足できなくなってきている。ポリオレフイン
フィラー粒子界面の構造制御などこれまで用いら
れてきた低分子化合物によるフィラー表面改質で
ー35-
面化学特性の異なる水酸化マグネシウム(協和マ
グネシウム(株)200-06H;Mg(OH)2)、水酸化ア
系相溶化剤であるマレイン酸変性ポー」プロピレン
(MA血_PP)は炭酸カルシウム充填PP複合材料に
ルミニウム(昭和電工(株)ハイジライト43M;〟
(OH)5)、α_アルミナ(昭和電工(株)高純度アル
おいて粒子を均一分散させるだけではなく、
MA血_PPはフィラー/粒子界面にマトリックスと一
体化した界面層を形成し、複合材料の力学特性を
ミナUA5055;AムOj)、炭酸カルシウム(ファイマ
リックス/フィラー粒子界面を多様に制御するた
テック(株)AFF95;CaCO,)、高純度ct-クオーツ(高
純度化学(株);SiOユ)、タルク(勝光山工業所(株)
めには、相溶化剤の分子構造制御が必要と考えら
SK_C2)などのフィラーを用いた。なお、フィラ
れるが、ポリオレフイン複合材料の界面制御に関
しては、MAム_PPについてしか詳細な検討がなさ
ーの特性を蓑1に示している。フィラーとジプ
ロックポリマーの複合化は5%ジプロツクポリマ
れていない。
ートルエン溶液に120℃、2時間乾燥したフィラ
大きく改善することが報告されている車6'。マト
本研究では、疎水ユニットがPPと極性ユニッ
ーを所定量添加し、エバボレーターを用い90℃、1
時間混合後、脱溶媒し、真空乾燥機により80℃、2
トとしてカルポン酸官能基を有したポリアクー」レ
時間放置することにより溶媒を完全に除去するこ
ートからなるブロックポリマー(ジプロツクポリ
マー)を用い水酸化マグネシウム、水酸化アルミ
とにより行った。得られた複合体を6インチロー
ルを用い160℃で5分間雇練することによりフィ
ニウム、アルミナ、シリカ、タルク、炭酸カルシ
ウムなどの表面化学特性の異なるフィラーとのコ
ラー粒子とジプロックポリマーを十分混合した。
ンパウンドを調製し、コンパウンドの動的粘弾性
ジプロツクポリマーで表面改質した;Mg(OH)2、
特性測定によりフィラ⊥表面との相互作用につい
CaCO3、タルクなどのフィラーとポリプロピレン
(PI})の混練はpI}、ジプロックポリマー、フィラ
て検討した。その結果、水酸化マグネシウム、水
酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウムな
どのアルカリ性表面を持つフィラーとジプロツク
ー(30wt%)をそれぞれ所定量配合、ドライブレン
ドし、二軸押出機((株)日本製鋼所製TE‡30SS-3
25BW-2V)を用いて行った。二軸押出機は入り口温
度160℃、出口温度220℃(温度ゾーン9カ所で段階
ポリマーは強い相互作用を有していることが明ら
かとなった。さらに、ジプロツクポリマーで表面
的に温度設定)、回転数60rpmで行った。なお、比
較の高分子表面改質剤としてジプロツクポリマー
改質した水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、
タルクをPPに充填し、得られた複合材料の力学
特性から界面構造を考察した。
2
の疎水鎖と同様の構造を持つ舶h-PPは三洋化成工
業(株)製ユーメックス1001を用いた。PPは日本
ポリオレフイン製ブロックPP;も胱112を用いた。動
実験方法
的粍弾性測定試料はフィラーとジプロツクポリマ
2.1試料調製
フィラー表面改質剤は疎水鎖がポリプロピレ
ン、極性鎖が官能基としてカルポン酸を有したポ
リアクリレートのブロックポー」マー(ジプロック
ポリマー、(株)クラレCB-OM12;数平均分子量=
ー複合体ロールシートを230℃、7分間、110kg・
cm-ユの圧力で1mmのシートに圧縮成形し、20℃
で冷却プレスすることにより調製した。力学特性
測定用試料はJIS
K7113、7171に準じた試料片金
15,000、PPブロック:ポリアクリレートブロック
型を用い、成形機入り口温度180℃、出口温度230
=2:1)を用いた。フィラ十表面とジプロツクポ
リマー間の相互作用を検討する目的で、平均粒子
径や比表面積などの物理特性がFまぼ等しいが、表
℃(温度ゾーン3カ所で段階的に温度設定),冷却温
度3b℃で50t射出成形機((株)日本製鋼所J50EⅡ)
により作製した。
表t フィラーの特性
MagnらSiumhydroxide
平均粒子掻
トm
m2甘1
0.6
10.1
pH
†∈0・U合\.山Pu巾一山
フィラー
1.00E+11
比表面積
10.3
(Mg(OH)z)
CatGiumcarbonate
0.9
了.0
9.0
(CaCO3)
A暮8minロmhydroxid8
0.6
7.0
10.2
0.7
4.8
7.6
(Al(OH)。)
α一Al11mhla
r
1.00E+9
▲
▲
1.00E+8
†3.2
5,5
3_2
11.0
9.7
1・00E-1烏
◆●
】.00E・ト7
←
▲
◆
l■
1.00E+6
1.80E-2
-50
1.2
■
¶
己
1.00[+5
(Al203)
α-Quarz
1.00E・り0
0
50
100
150
200
温度/Oc
(S・02)
Tat¢
図11沖-ジプロツウポリマーの動的粘弾性特性
…36…
-50
0
50
100
-50
0
50
100
-50
温度/Oc
図2
2.2
0
50
100
ーク温度およびピーク値とフィラー充填量の関係
を示している。CaCO3、Mg(0甘)2、Al(OH)。、アル
ミナ充填試料のt血aピーク温度は粒子充填量増
チャック間崖巨離115mmで温度
加とともに高温側にシフトし、50vol%充填で約15
℃高せ1温度となった。一方、タルク、マS王Oz充填試
料のtan8 ピーク温度は粒子充填量依存性を示さ
23℃,湿度50%の恒温恒湿条件下でテンシロン(イ
ンストロン社5583型)を用い測定した。
(2)曲げ試験(弾性率測定)
なかった。また、tan8■ピーク値はピーク温度が
k7171に従い、短冊状の試験片(長さ80mm、
幅10mm、厚さ3mm)試験速度2mm・min∴
3にはtan8
温度分散を示している。また、図
(1)引張試験
支点間拒離
50mm、3点曲げ法により温度23℃,湿度50%の恒温
恒湿条件下でテンシロンを用い測定した。
高温側にシフトしたフィラー充填試料では粒子充
填量増加とともに低下していったが、タルク、Si
O2充填試料では粒子充填量依存はほとんど認めら
れなかった。このようなの粒子充填にともなうta
2.3
動的粘弾性測定
動的粘弓単性測定はレオメータ】((株)レオロ
ジー
100
各嶺フィラー充てんPPけジプロツクポリマーの動的粘弾性
JISI(7113に従い、1号形試料片(長さ175mm、平
行部長さ60mm、平行部幅川Ⅲm、厚さ3min)を用いて
JIS
50
温度/Oc
力学特性の評価
試験速度50mm・min∴
0
n8ピーク温度の高温側へのシフトは酸化チタン、
ガラスピ…ズ、チタン酸バリウム、酸化スズなど
レオスぺクトラーDVE-V4)を用い、周波数
11Hz、昇温速度3℃佃血、測定温度範囲-80℃か
ら180℃の範囲で行った。
▲
フィラーの物理特性
フィラーの比表面積および平均粒子径はそれぞ
れB.E.T.一点法比表面積測定装置(湯洩アイオニ
クス(株)製MONOSORB)およびレーザースキ
ヤーン式粒度分布測定装置(GALA社製
CIS_1)を用いて測定した。
3
Mdel
p\亀じ月こb疋乍S焉のm
2.4
●
●
●
車
▼
9
「「
一一千一
.
-
d
二て
0.2
0.4
0.6
0.2
0.4
0.6
結果及び考察
亀こ男もSのコ竃>焉心血
3.1フィラー表面とジプロツクポリマー間の相
互作用
図1にはジプロックポー」マーの貯蔵弾性率
(Eり、損失弾性率(E,り、損失正接(tan8)の温度分
散を示している。0℃付近のE-tおよびtan8のピ
ークはPPの非晶質分子鎖およびカルポン酸の存在
するポリアクー」レート鎖の緩和であり、ジプロツ
12
0.08
0.04
0
クポリマーのガラス転移に帰属される6)。図2に
はジプロツクポリマーにCaCO3、Mg(0‡Ⅰ)2、タルク、
フィラー体積分率
園ユ t乱6のピーク温度およびピ…り値とフィラー充てん豊の関係
SiO2を0から50vol%まで複合化した試料のtan∂の
-37Ⅶ
ピ
あり、その化学構造が4S砧・3MgO・HzOと表される
の親水性フィラーをポリ塩化ビニル、エポキシ樹
脂、エチレンー酢酸ビニル共重合体などの極性ポ
含水ケイ酸マグネシウムである‖)。タルクがこの
リマーに充填した系で認められることが報告され
ような層状構造であり、粉砕時に層間剥離と粉砕
ている3)・乃へ」"。この現象はマトリックスポリマー
によりフィラー粒子が製造されている。従って、
の官能基とフィラー表面の界面層にポリマーが相
互作用で束縛されているためであると考えられて
タルクの懸濁pHは二層目の水酸基を有したマグネ
いる。また、粒子充填にともなうーan8
シアのアルカリ性と表面のシー」カの酸性のバラン
ピーク値
の低下が大きいはど強い相互作用でフィラーがポ
ー」マーを拘束している。ジプロックポリマーと類
似した構造を持つMAh-PPにCaCO3充填した複合材
料においても粒子充填にともなうtan8
ピ…ク温
スにより決定されるため、P椚.7とアルカリ性を
示すが、そのフィラー粒子表面は主としてシリ
カ成分が存在していると考えられる。この理由か
ら、タルクはとSiOz同様、ジプロツクポー」マーの
カルポン酸とは強い相互作用を示さなかったと考
えられる。
度の高温側へのシフトとピーク値の低下が報告さ
れている。この強い相互作用はMAh-PPの無水マレ
ジプロックボー」マー改質フィラー充填PP
3.2
イン酸が空気中やフィラー表面の水分子により開
環し、カルポキシル基とCaCO3粒子表面のカルシ
の力学特性と界面構造
著者らは炭酸カルシウムをオレイン酸およびMA
ウムイオンが中和塩を形成することに基づくと考
えられている。CaCO3、Mg(OH)z、Al(OH)3、アル
b-PPにより表面改質し、改質粒子をPPに充填した
ミナはその懸濁pHは8以上のアルカリ性表面を
有しており、ジプロックポリマーの官能基のカル
びに力学特性解析から検討した結果、次のような
ポン酸がプロトン解離しやすい。さらに、これら
ン酸改質複合材料ではマトリックス/粒子界面で
歪みが与えられるとポイド形成しやすい界面構造
を形成している。MAもーPP改質複合材料ではマト
複合材料における界面構蓮はSEM破断面観察なら
構造を形成することを報告している6)・12)。オレイ
フィラー表面には吸着水分子層が存在しており、
トルエン/フィラー懸濁溶液中でジプロツクポリ
リックスと充填粒子はMAb-PP分子鎖を介して一
マーのカルポン酸の解離とフィラー表面での中和
塩形成や表面水酸基とのイオンイオン相互作用
形成を容易にしていると考えられる。その後の脱
体構造を形成している。ジプロックポリマーのカ
ルポン酸とフィラー表面の相互作用が異なるフィ
溶媒、熱処理、プレス成形の工程においてこれら
ラーに対して表面改質を行い、それらをppに充
填した複合材料の界面構造に関して力学特性から
フィラー表面の吸着水の脱水、表面水酸基とジプ
ロツクポリマ…カルポン酸との脱水反応によりカ
ルシウム、マグネシウム、アルミニウムイオンと
ジプロツクポリマーのカルポン酸がイオン結合を
検討した。なお、ジプロツクポリマ}の構造とは
形成していると推察される。以上のようにアルカ
リ性表面を持つフィラー(アルカリ性フィラー)で
タルク30wt%をPPに充填した複合材料の弾性率な
らびに降伏強度とジプロックポリマーまたはMAh-
の酸塩基反応がジプロックポリマーの分子鎖の強
い拘束に関与していると考えられる。
PP添加量の関係を示している。これら相溶化剤の
一方、タルク、SiO2充填試料ではtan8ピーク温
度およびピーク値の粒子充填量依存はほとんど認
ている。
異なる相溶化剤ポリマーとしてMAb-PPを用いた。
図4、図5および図6にそれぞれCaCO3、Mg(0恥、
添加量はフィラーに対する重量%(wt射として示し
められず、ジプロックポリマーの官能基であるカ
30 O ハU
ルポン酸と強固な相互作用を有していないと考え
られる。SiOzの表面水酸基は懸濁pIiに対応するpH
3
∧U
2
ハU
l王I
マーのカルポン酸の解離が起こらず、アルカリ性
フィラー表面のように容易に塩形成やイオンーイ
オン相互作用形成をしないと考えられる。この理
由のため、その後の脱溶媒、熱処理、プレス成形
00
H
・′
k
O0 0
∧U
仁.
0
の工程における
SiO主義面の吸着水が脱水してもS
iO2表面とジプロックポリマーのカルポン酸とは
強い相互作用を示さなかったと考えられる。タル
2
-
4
6
8
10
MAトPP.PP-diblockの表面改質葺/%
図4
クは懸濁pHがアルか」であり。CaCO3、Mg(OH)2
などのフィラーと同様の酸塩基相互作用が期待さ
相溶化剤改質CaCOj30、机%充てんPPの力学特性
と改質塁の関係
(軋○):MÅb4PP,(吼□):pP-diblock
(▲,△):MAlトPpCaCOコ未充てん
(◆,◇)‥CB-OM12CaCO3未充てん
れる。タルクは表面にケイ酸、二層目に水酸基を
有したマグネシア、三層目にケイ酸の三相構造で
Ⅶ38-
再d芝\髄潔$藍
遥∑\冊史敵も用
4以上からプロトン解離を起こしやすく酸性を示
し、SiOzの表面吸着水分子層ではジプロツクポリ
ハリ
ロックポリマー添加に伴う弾性率の低下はマトリ
ックスに比べ非常に高い弾性率をもつCaCO。およ
びMg(OH)2粒子の周りに弾性率の小さなジプロツ
伯d三\哩淵$盤
qd≡\椰出藍も療
クポリマー(MAb-PPの弾性率;約2000MPa、ジプロ
0
2
4
ックポリマーの弾性率;約400MPa)が存在している
ためであると考えられる。一方、タルク充填試料
の弾性率がジプロツクポリマー添加量に依存しな
かったことは、弾性率の小さなジプロツクポリマ
ーがマトリックス/フィラー粒子界面に多く存在
していないと考えられる。
6
MAhヰP,PP-dゐlo¢kの表面改質量/%
マトリックスにフィラーを充填せずジプロツク
ポリ'マーまたはMAb-PPを添加した試料の降伏強度
図5
柏溶化剤改質Mg(OE)ヱ30wt%充てんPPの力学特性
と改質豊の関係
(吼○):MA血一PP,(札□):PP-diblock
(▲,△):M〟--PPMg(OH)z未充てん
(◆,◇):CB-OM12Mg(OH)2未充てん
はこれら相溶化剤の添加量増加とともにわずかに
低下した。CaCO3およびMg(0批充填した袴合材料
の降伏強度はMAh-PP添加量増加にともない、それ
ぞれ、19MPaから25MPa佃Ah-PP添加量約3wt%)およ
び2射膵a(甘Ab-PP添加量約3wt%)まで増加し、それ
以降ほぼ一定の値となづた。CaCO。およびMg(〔昭)2
充填した複合材料の降伏強度はジプロツクポリマ
O0 0
ー添加量増加にともない、それぞれ、19MPaから
の23甘Pa(ジプロックポリマー添加量3wt%)および2
川Pa(ジプロツクポリマー添加量3wt%)まで増加
40
し、それ以降ほぼ一定の値となった。笹木や著者
らはMAh-pP改質炭酸カルシウム複合材料におい
l■
O ハU0
3
∧U
O ハリ0
2O
1O
・・・・ ・・・
+・・・・′
・:・・・
蒔d≡\恨事宅壁
♪些≡\掛史記ヒ癌
::葛:二:二者壬
OO 0
てMAb-PPがマトリクス/フィラー粒子界面に存
在し、良好な界面接着性を有した構造を形成する
ため、マトリックスの降伏強度が改善されると報
告おり 5)・6)、MAb-PPおよびジプロックポリマー
を表面改質剤として用いた試料の降伏強度の結果
0
2
4
はこれら報告と一致していた。従って、アルカリ
性フィラーにおけるジプロックポリマー添加に伴
6
PP-diblockの表面改質慮/%
う降伏強度の増加は、マトリックス/フィラー粒
図6
相溶化剤改質Talc30wt%充てんPPの力学特性
と改質景の関係
(吼0):Talc充てん
(喀,口):T8lc未充てん
子界面に強い相互作用を持ってジプロックポリマ
ーが存在していることを示している。したがって、
ジプロックポリマーを表面改質剤としてアルカリ
性フィラーに用いた場合、フィラー表面とジプロ
ックポリマーのカルポン酸は強い相互作用で拘束
され、さらに、疎水鎖のPPがマトリックスと一体
化した界面構造を形成すると考えられる。一方、
PPにフィラーを充填せずジプロックポリマーま
たはMAb-PPを添加した試料の弾性率は相溶化剤の
添加量依存性がほとんどなくマトt」ックスとはぼ
タルク充填複合材料ではジプロックポリマー添加
同じ値であった。CaCO3およびMg(OE)2充填した複
合材料の弾性率はMAh-PP添加量増加にともない、
とジプロツクポリマーは強い相互作用を有してお
による降伏強度の改善が認められず、タルク表面
それぞれ、1540MPaから1620MPa(8Ⅵrf%添加)および
らず、アルカリ性フィラーのような一体構造を形
成していないと考えられる。
1560MPaから1690MPa(5wt%添加)へとわずかに増加
した。一方、ジプロックポリマーを用いた場合添
4
加量増加とともにCaCO3およびMg(0Ii)2充填した複
まとめ
疎水ユニットがpp
と極性ユニットとしてカル
ポン酸官能基を有したポー」アクー」レートからなる
合材料の弾性率はそれぞれ1540MPaから1180肝a(8
wt%添加)および1560MPaからⅠ540MPa(5両甘添加)へ
と徐々に低下した。タルク充填した複合材料の弾
性率はジプロツクポリマーの添加量に依存ぜず、
ボー」オレフィンブロックポリマー(ジプロツクポ
はば一定であった。フィラー充填系におけるジブ
し、そのコンパウンドの動的粘弾性特性からこれ
リマー)に表面化学特性のことなるMg(OH)2、刃
(OH)ユ、アルミナ、CaCO3、シリカ、タルク充填
【 39-
5
らフィラー表面とジプロックポリマーの官能基で
参考文献
康 編,=実践ポリマーアロイーt,アグネ承
1)大柳
風社,91(1993)
仁,日本接着学会誌,
2)永田員也,児子英之,岩蕗
あるカルポン酸との相互作用を検討した。Mg
(OH)2、AHoH)3、アルミナ、CaCO3などのアル
カリ性表面を持つフィラーではジプロツクポリマ
34,290(1998)
ーのtan∂ピーク温度温度は10℃以上高温側にシ
フトしたが、シリカ、タルクのそれはほとんど変
化しなかった。この相互作用はフィラー表面水酸
3)K.Nagata,S.Kodama,H.Kawasaki,S.Deki,and
M.Mizuhata,J.Appl.Polym.Sci.,56,1313(1995)
4)笹木
艶伊藤憲一,児玉恒雄,井手文雄,高分
子論文集,32,645(1975)
基とジプロックポリマーの・COOH基間での酸塩
基相互作用と考えられ、Mg(OH)2、Al(OH)3、ア
勲,伊藤憲一,児玉恒晩井手文雄,高分
5)笹木
子論文集,33,122(1976)
ルミナ、CaCO3などのアルカリ性フィラーには強
い相互作用が認められたが、シリカおよびタルク
仁,高液祐美子,福田
6)永田員也,岩蕗
山正治,日本接着学会誌,33,39(1997)
には強い相互作痛が認められなかった。
ジプロックポリマーで表面改質したこれらフィ
ラーをPPに充填し,得られた複合材料の力学特性
を測定した結果、アルカリ性表面を持つフィラー
7)飯坂捷義,日本ゴム協会誌,60,117(1987)
充填複合材料では相溶化剤添加にともない力学特
3099(1981)
9)Y.S.Lipatov
潔,片
8)G.J.HowardandR.J.Shanks;J.Polym.Sci.,26,
性の大きな影響を与えるが、タルク充填複合材料
F、:T.Fabulyak,J.Appl.
Polym.Sci.,16,2131(1972)、
の力学特性にはジプロツクポリマ←改質効果は認
められなかった。これはマトリックス/フィラー
粒子界面のジプロツクポリマー剤が強固な界面層
10)D.H.Droste
and
and
A.T.Diberenetto,J.Appl.
Polym.Sci.,13,2149(1969)
11)鈴木富士雄(フィラー研究会編),=フィラー活
用辞典‖,大成社,102(1994)
を形成するためには疎水鎖がマトリックスと同様
の構造を有しているだけではなく、親水鎖の官能
基であるカルポン酸とフィラー表面の相互作用も
重要な因子であると考えられ、動的粘弾性の結果
12)永田員也,児子英之日笠茂軋伊藤亮粗目本
接着学会誌,3$,No.1,2(2002)
と山致していた。
叫40仙