岩手県金ヶ崎町でのSRI

岩手県金ケ崎町でのSRI
‐平成26年度の報告‐
佐藤 敬佳 武藤 由子(岩手大) 溝口 勝(東京大) 小関 新喜
目的
・土壌環境
間断灌漑が
に与える影響を調べる
・収量
圃場調査
(A)間断灌漑圃場
(B)対照圃場
昨年度
施肥の影響で
水管理の差を示せず
施肥量ゼロ
SRI農法(乳苗・疎植)
土壌環境
土壌水分量
Eh
窒素量
栽培条件
(A)間断灌漑圃場
(B)対照圃場
水管理 活着後間断
慣行の水管理
苗
乳苗(1葉、草丈10cm程度)
田植え 疎植(30cm間隔)
肥料 窒素肥料なし(除草剤は使用)
発芽した種籾を苗床に撒いた後
32℃で2日育成する
28℃で2日育成。草丈10㎝に揃える
H26年度 調査圃場
• 調査地 岩手県胆沢郡金ヶ崎町 5.8a(畦波板で2分割する)
・乳苗を移殖(1~3本/株)・疎植 37株/坪(30cm間隔)
・(A)活着後間断灌漑⇔(B)慣行稲作の水管理
(B)
(A)
間断灌漑圃場
ひとめぼれ
対照圃場
ひとめぼれ
2.9a
2.9a
間断灌漑
慣行の
水管理
調査項目
稲の生育
① 草丈 A,B圃場より
各5株を測定
② 茎数
③ SPAD値
気象条件等
① 日射
② 風向・風速
③ 降水量
④ 温度・湿度
⑤ 湛水深(水位計)
土壌
① 水分量
② 温度
③ EC
④ Eh
⑤ アンモニア態窒素量
⑥ 硝酸態窒素量
田面水・土壌水・(水路水)
① アンモニア態窒素濃度
② 硝酸態窒素濃度
田植え (5月19日)
移植後
乳苗 移植前
土壌の状態
(A)間断灌漑圃場
(B)対照圃場
一度亀裂が入るまで乾燥した
靴で踏んでも沈まない程度の
水分量を目安に管理する
灌水時は地面から数cm程度の
水位を維持している
稲刈り2週間前(9月22日)
稲刈り (10月8日)
栽培暦
月
(
7
6
収穫
日
8
10 10 11 12 13 13
中干し
落
水
日
落
水
収穫
結熟期
間断灌漑
出穂期
最
高
分
げ
つ
期
10
結熟期
9
出穂期
8
9
10 11 12 12 12
穂ばらみ期
19
有効分げつ期
(B)
対照
日
水管理
(A)
間断
田植え
)
稲の状態
(
対
照
6
9
穂ばらみ期
葉数
B
8
8
最高分げつ期
日
19
7
有効分げつ期
田植え
)
間
断
灌
漑
6
葉数
稲の状態
A
5
8
気温と降水量
35
50.0
日降水量(mm)
45.0
気象庁データ 降水量(mm)
日平均気温(℃)
40.0
30.0
20
25.0
梅雨
15
20.0
15.0
10
10.0
5
5.0
0
6月12日
6月26日
7月10日
7月24日
台風8号
8月7日
8月21日
9月4日
台風11号
9月18日
台風19号
5月
記録的な高温と多照
6月
高温/梅雨入6/6ごろ(平年より8日早い)
7月
高温/多照/梅雨明け7/28ごろ(平年並)
8月
日照時間が少ない/降水量が多い
9月
多照/低温
日平均気温(℃)
日降水量(mm )
30
25
35.0
0.0
5月29日
日平均気温 累計
H25年度 2500℃
H26年度 2577℃
(6/2~9/26)
体積含⽔率_平均
湛⽔深(⽔位計)
湛⽔深(実測)
(A)間断灌漑
体積含⽔率_平均
(B)対照
20
10
0
湛水深(cm)
0.4
0.2
0.8
湛⽔深(⽔位計)
湛⽔深(実測)
0.6
10
0
0.2
-10
乾燥
0
5/29
7/8
7/28
8/17
9/6
9/26
落水
-20
6/18
7/8
7/28
8/17
9/6
9/26
60.0
60.0
(A)間断灌漑
50.0
⽇降⽔量(mm)
50.0
気象庁データ(mm)
日降水量(mm )
日降水量(mm )
中干し
-20
6/18
20
0.4
-10
0
5/29
30
40.0
30.0
20.0
20.0
0.0
0.0
6/18
7/8
7/28
8/17
9/6
9/26
気象庁データ(mm)
30.0
10.0
5/29
⽇降⽔量(mm)
(B)対照
40.0
10.0
湛水深(cm)
体積含⽔率 
0.6
30
体積含⽔率 
0.8
水管理と土壌水分量
5/29
6/18
7/8
7/28
8/17
9/6
9/26
土壌水分量とEh(5cm深)
0.8
(A)間断灌漑
体積含水率
2000
1000
落水
1500
0.4
1000
500
500
0.2
0.2
0
0
0
5/29
2000
Eh
0.4
体積含水率 
1500
Eh
中干し
0.6
Eh
体積含水率 
0.6
2500
(B)対照
Eh
乾燥
0.8
2500
体積含水率
‐500
6/18
7/8
7/28
8/17
9/6
Eh>0の期間が長い
9/26
0
5/29
‐500
6/18
7/8
7/28
8/17
9/6
Eh<0の期間が長い
体積含水率が小さい(乾燥している)
Ehが大きくなる(酸化的な状態)
9/26
1500
田面水
土中水
1
Eh
1000
硝酸態窒素濃度 (mg/L)
乾燥
500
0.04
0
‐500
0.02
アンモニア
1500
田面水
土中水
Eh
1000
乾燥
0.8
500
0.6
0
0.4
‐500
Eh
硝酸
Eh
アンモニア態窒素濃度 (mg/L)
0.06
田面水・土中水の窒素濃度
(A 間断灌漑圃場)
‐1000
‐1000
0.2
‐1500
‐1500
0
5/29
‐2000
6/18
7/8
7/28
8/17
9/6
9/26
0
5/29
‐2000
6/18
7/8
7/28
8/17
9/6
9/26
土中水の各窒素濃度は土壌のEhに対応
Ehが高い
好気的な状態
硝酸態窒素濃度 高
アンモニア態窒素濃度 低
田面水・土中水の窒素濃度
(B 対照圃場)
土中水
Eh
落水
1000
500
0.04
0
‐500
0.02
‐1000
‐1500
‐2000
6/18
7/8
7/28
8/17
9/6
9/26
1500
アンモニア
田面水
土中水
落水
中干し
0.8
Eh
1000
500
0.6
0
0.4
‐500
Eh
田面水
アンモニア態窒素濃度 (mg/L)
硝酸
中干し
0
5/29
1
1500
Eh
硝酸態窒素濃度 (mg/L)
0.06
‐1000
0.2
0
5/29
‐1500
‐2000
6/18
7/8
7/28
8/17
9/6
9/26
土中水の各窒素濃度は土壌のEhに対応
対照圃場に
用水路の各窒素濃度平均
流入
(B)対照圃場には灌漑水に 硝酸態窒素 0.33(mg/L)
用水路の水を使用
アンモニア態窒素 0.08(mg/L)
(5/29~8/18測定)
土壌中硝酸態窒素量 (mg/100g乾土)
0.2
硝酸
0.18
土壌中アンモニア態窒素量 (mg/100g乾土)
採取土壌の窒素量
(A)間断灌漑
(B)対照
0.16
0.14
0.12
0.1
0.08
0.06
0.04
0.02
0
0
0.2
0.4
0.6
体積含水率
体積含水率が小さい
好気的な状態
0.8
1
※表層5cmから採取
0.7
アンモニア
(A)間断灌漑
0.6
(B)対照
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
体積含水率 
硝酸、アンモニア量が多くなる
硝化や有機物の無機化
1
地温
40.0
35.0
地温(℃)
30.0
25.0
20.0
15.0
10.0
(A)間断灌漑
5.0
(B)対照実験
0.0
5月29日
6月18日
7月8日
7月28日
8月17日
9月6日
9月26日
田面水の有無、土壌の体積含水率が異なるため
(A)間断灌漑は (B)対照より地温が大きく上下している
10月16日
草丈
120.0
平成25年度
SRI農法(施肥あり)
約103cm
100.0
草丈(cm)
80.0
60.0
40.0
(A)間断灌漑
20.0
(B)対照圃場
0.0
6月18日
7月8日
7月28日
8月17日
9月6日
茎数
25
平成25年度
SRI農法(施肥あり)
約36本
茎数(本)
20
15
10
対照圃場
中干し
5
(A)間断灌漑
(B)対照圃場
0
6月4日
6月24日
7月14日
8月3日
8月23日
9月12日
SPAD値
44.0
42.0
SPAD
40.0
38.0
38以下
37以下
36.0
34.0
(A)間断灌漑圃場
32.0
(B)対照実験圃場
30.0
6⽉24⽇
7⽉14⽇
8⽉3⽇
8⽉23⽇
岩手県(ひとめぼれ)の栄養診断指標
(玄米タンパク質含有率を考慮)
幼穂形成期(7月中旬) 38以下
穂揃期・出穂15日後
37以下
9⽉12⽇
根群域
※地上から5㎝毎に押しピンを設置
約45cm
約60cm
(A)間断灌漑圃場
(B)対照圃場
節間の距離
第4節間
第5節間
第4~5節間
A平均
12.3
4.5
16.8
B平均
13.5
5.7
19.1
B非倒伏
平均
12.7
5.8
18.5
B倒伏
平均
14.2
5.6
19.8
9月29日測定 ※A圃場はほぼ倒伏なし
特に倒伏に影響のある部位
通常は長くても12~13cm程度
(A)間断灌漑に対し、
(B)対照の第4~5節間が長い
収量
(玄米kg/10a)
総量
1.9mmフルイ
くず米
割合
昨年度
との
比較※
上
下(くず米)
(A)間断灌漑 301.3
289.0
12.3
4.08(%) 54.3(%)
441.5
424.0
17.5
3.96(%) 79.5(%)
(B)対照
※平成25年度の調査におけるSRI農法(肥料使用)の収量に対する、
各総量の割合
収量の差の要因
水管理の違いによる土壌環境の差
用水からの窒素の流入
まとめ
間断灌漑が土壌環境と収量に与える影響を調べた
➡間断灌漑が土の酸化還元状態と窒素形態に影響した
今年度の調査における課題
間断灌漑が収量に及ぼす影響は、用水に含まれる
窒素の効果ではっきりしなかった
来年は
ポット試験・・・間断灌漑が収量に及ぼす影響
圃場調査・・・(A)間断灌漑 施肥有(通常の半分?)
(B)間断灌漑 施肥なし