外力下における広角・小角X線散乱 測定に基づく炭素繊維複合材料の 力学変形挙動解明 豊田工業大学極限材料専攻 田代孝二、山元博子、吉岡太陽、田原大輔、王 海 三菱レイヨン(株) 大竹研究所基礎解析センター 小林 貴幸 あいちシンクロトロン光センター 加藤一徳、酒井久資 1 PAN系炭素繊維 スポーツ用途 比強度、比弾性率 比強度(=強度/密度) /105 m2s-2 PAN系炭素繊維 (高強度) PAN系炭素繊維 (高弾性率) 航空宇宙分野 Boeing787 比弾性率(=弾性率/密度) /105 m2s-2 麻生宏美、間鍋徹, 炭素, 227, 115 (2007). 2 炭素繊維の製造工程 ポリアクリロニトリル繊維 (PAN) 空気中 200~300℃加熱 耐炎化繊維 窒素中 1000~3000℃加熱 炭素繊維 3 炭素繊維の微視的構造(モデル) ナノボイド 繊維軸 黒鉛結晶 d(002) d(100,101) 10 b 内部 002 表層 a c S. C. Bennett, D. J. Johnson, Carbon, 17, 25 (1979). TEM 4 黒鉛の結晶構造 002面 繊維軸 六方晶 a 10 b 10面 c 100面 101面 002 5 CF単繊維中の応力不均一分布状態 (Kobayashi, Tashiro, Carbon, 53, 29-37(2013)) 炭素繊維に σbulk=1GPa の応力を与えた場合の応力分布 CF252GPa CF445GPa 1 GPa 4.0GPa 1 GPa 0.5GPa 0.5GPa 0.92 1.0GPa 2.3GPa 0.4GPa 1.5GPa 0.14 弾性率の低い炭素繊維 炭素繊維の内部に応力の高い部 分が存在している可能性。 0.31 0.59 0.4GPa 表層、極表層の欠陥 ⇒クラックの進展 弾性率の高い炭素繊維 繊維極表層で応力が高い。また繊維 極表層、表層には欠陥が存在しやす い。⇒繊維極表層、表層からの破壊 6 炭素繊維の破壊開始点 Strength /MPa 7000 6000 5000 4000 3000 100 300 500 Modulus /GPa 700 繊維表面に破壊開始点 K. Naito, Y. Tanaka, J. M. Yang, Y. Kagawa. Carbon, 46, 189 (2008). 7 実際の使用 炭素繊維の複合材料 接着剤 CF 8 炭素繊維複合材料 力学変形の様子 炭素繊維の変形? マトリックスの変形? 応力不均一分布? 破壊挙動? 9 本研究の目的 (1) 炭素繊維複合材料の力学変形に伴う炭素 繊維の結晶域、非晶域、高次構造、接着剤 の変形を微視的観点から追跡する (2) それに基づいて、炭素複合材料における力 学的性質の弱点を明らかにし、炭素繊維 複合材料強化のための指針を与える 10 実験 (1) あいちシンクロトロン光施設ビームライン8S3 (2) 炭素繊維複合材料の変形時における構造 変化を追跡するために、広角X線回折、小角 X線散乱の二次元パターンを「その場」測定 (3) 試料 炭素繊維複合一軸配向試料(板) 繊維軸に平行、垂直な曲げ変形 11 II-CCD (SAXS) 2.2m vise sample Pilatus (WAXD) sample thickness 0.5mmt X-ray beam 1.5x0.6 mm2 fiber axis X-ray wavelength 0.93 Å 12 fiber axis CF Composite center outside inside Compression // fiber Bulk strain -1.9% Si WAXD 10 (100 + 110) X-ray beam 1.5x0.6 mm2 sample thickness 0.5mmt SAXS 13 fiber axis center outside inside CF Composite Compression // fiber X-ray beam Bulk strain -1.8% Si Si WAXD 002 SAXS 14 15 fiber axis X-ray beam d(10) Inside center outside 16 d(002) fiber axis X-ray beam outside center inside 17 d(002) fiber axis outside center inside X-ray beam 18 まとめ (1)予備的実験ではあったが、炭素繊維複合材料 の力学変形挙動を広角・小角X線散乱測定によっ て追跡することができた。 (2)バルクな変形と黒鉛結晶域の変形とを比較す ることができた。ただ精度がそれほどは高くない。 (3)より定量的かつ高精度の測定を、微小変形か ら破壊に至る広い応力範囲にわたって、様々の変 形モードで行うことが今後必要である。 19
© Copyright 2024 Paperzz