電磁波レーダの原理 日本無線株式会社 株式会社 計測技術サービス 1、基本原理 レーダ装置 反射波形 表面反射波 コンクリート表面 放射波 媒体1:ε1 反射波 D T 境界面 媒体2:ε2 境界面の反射 レーダ方式での深さ/厚さ測定に ついては、図-1に示すように、材 質(比誘電率:電気的特性の一種) の異なる境界面での電磁波の反射を 利用しています。 深さDは式(1)により、求めら れます。式からわかるとおり、電磁 波がコンクリート表面に放射され、 境界面で反射して、再び表面に戻っ てくるまでの時間を利用しています。 ここで、式の中の記号は以下となり ます。 透過波 ε1:媒体1の比誘電率 ε2:媒体2の比誘電率 D:表面から境界面までの深さ V:電磁波の速度(m/s) T:反射時間(s) 時間 図-1 レーダ装置の原理図 D=(1/2)xTxV =(1/2)xTx(3x108/ ε (m) ・・・・・・・ (1) 1) 2、反射強度と反射物体の材質推定 反射の強さを示す反射率γは、式(2)のように表されます。 γ=( ε ・・・・・・・・・・・ (2) 1― ε 2 )/( ε 1+ ε 2 ) 従いまして、境界面での反射強度は、境界面を形成している各々の媒体が有する固有の 比誘電率の差によって決定され、反射波形の極性も比誘電率の大小関係により決まります。 図-2のように、ε1>ε2の場合には、反射波形の最初のピークは左側になっています。 トンネルの巻厚裏の空洞の測定の場合が、このケースに相当します。 反射波形 左側ピーク 反射波 ε1:コンクリート (ε1≒8) 境界面 ε2:空気(ε2=1) 透過波 図図 図-2 ε1>ε2の場合 -1- 図-3のように、ε1≺ ε2の場合には、反射の最初のピークが右側になっております。 コンクリート床のデッキ測定の場合がこのケースに相当します。 反射波形 ε1:コンクリート (ε1≒8) 右側ピーク 境界面 ε2:金属(ε2≒∞) 図-3 ε1≺ ε2の場合 3、主な材質の比誘電率 代表的な材質の比誘電率を表-1に示します。表-1と式(2)からわかるように、コン クリート裏が玄武岩・石灰岩のような場合には比誘電率がほぼ同じですので、反射率γが 零に近くなり、従って境界面からの反射波形が検出できなくなります。 材 質 名 空気 淡水・海水 砂(乾) 砂(湿) ローム(乾) ローム(湿) 比誘電率 1 81 2.6 25 2.5 19 表-1 代表的な材質の比誘電率 材 質 名 比誘電率 材 質 名 粘土(乾) 2.4 石灰岩(湿) 粘土(湿) 15 コンクリート 玄武岩(湿) 8 アスファルト 花崗岩(湿) 7 砕石路盤 頁岩(湿) 7 金属 砂岩(湿) 6 比誘電率 8 9 5 9 ∞ 4、測定結果画像表示方法 反射波形(Aモード)を基に断面画像(Bモード)を表示する仕組みについて、説明しま す。図-4は単独筋を断面図表示(Bモード表示)と反射波形表示(Aモード表示)で同時 にモノクロで表示した例です。 断面図表示 反射波形表示 左側の断面図(Bモード)表示で赤い、 縦線(縦カーソル)の位置での反射波形 表示(Aモード)が右側に表示されています。 この反射波形表示により、表面からの 最初の大きなピーク波形の極性(右側ピーク) から、図-3の例のように、反射材質の 推定が可能です。 横カーソルは、断面図表示・反射波形表 示に共通して連動し、深さ(かぶり厚さ)を 測定するのに使用します。反射波形表示で 最初の右側ピークの位置が正確な深さ(かぶ り厚さ)となります(断面図表示では黒い山 図-4 測定結果表示の説明 形の肉厚のほぼ中心)。 -2- 5、山形画像について コンクリート中の単独のパイプあるいは鉄筋が、なぜ山形状の画像として表示されるのか を図-5を基に説明します。 図-5 山形の断面画像 図-4の右側の反射波形の集合体が断面画像ですが、図-5に示すように、装置が物標に 近づいてから遠ざかるまでの距離差(D1~D2)により、各位置で反射波形が発生する時 間が異なり、結果として、断面画像は山形画像になってきます。 -3-
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