Geoscience 東濃地科学センターとは o u tline 地 層 を科 学 す る 地層処分の 安全確保の 考え方 outline 東濃地科学センターでは、 地層科学研究を進めています。 地層処分を安全に実施するためには、地下につい て、様々な角度から研究を行っています。 ? 地下に 処分した廃棄物が 地下水に溶け出して わたしたちの近く までこないの? 私たちは普段からいろいろな用途で電気を使用しています。その電気は、火力、水力、原子力などで作ら れており、日本の電気の約3分の1は原子力発電でまかなわれています。一方で、原子力発電所で使い終 えた燃料からは、その再処理によって高レベル放射性廃棄物が発生します。 原子力機構は、高レベル放射性廃棄物を地層に安全に処分するための研究や技術の開発を行ってい ます。その研究のうち東濃地科学センターでは、地下の環境や地下深くでどのような現象が起こっている のかを研究する『地層科学研究』を行っています。 処分した廃棄物に 地下資源の 近づいてしまわ ない場所を ないの? ウラン鉱山 地層処分 とは 策と などを掘っていて、 粘土 金属製の 容器 選びます。 ガラス固化体 火山や 地震などで地下に ウラン プルトニウム 日本では、原子力発電 所で使い終えた燃料を、再 利用できる燃え残ったウラ ンや新しくできた燃料とし て使えるプルトニウム、そ れ以外の残存物である高 レベル放射性廃棄物に分 けて、資源の有効活用を 行うこととしています。これ を『核燃料サイクル』と言い ます。 ガラス固化体 燃料加工 (高レベル放射性廃棄物) 処分した廃棄物が 地表近くに 持ち上げられたり しないの? 核燃料 サイクル 原子力 発電 再処理 re p o r t ? ? 1 人工的に閉じこめる対 ● 石油・石炭 ( 高レベル放射性廃棄物) 火山や地震な どの天然現象の 影響を 受けない場所を 選びます。 2 地下深い地層が持って ● いる「物質を閉じ込める 力」で防ぎます。 中間貯蔵 地質環境の長期安定性に関する研究 超深地層研究所計画 地層処分 使用済燃料 i n f o r m at i on 隆起・侵食/気候・海水準変動 使用済燃料の再処理によって生じた高 レベル放射性廃棄物からは最初強い放射 線が発生します。放射線は年月が経つに つれ減っていきますが、それでも長い期間 を要します。 そこで人間の生活環境に影響を及ぼさ ないように処分する必要があります。世界 中でさまざまな方法が検討されてきました が、最も問題点が少なく、技術的に実現性 が高い『地層処分』が選ばれており、日本 では法律により、地下300mより深い地層 中に埋めて処分することが決められてい ます。 出典:原子力発電環境整備機構 01 地層処分施設のイメージ図 地上施設 火山・地熱活動 地震・断層活動 深度500mステージ 斜坑 立坑 立坑 地下施設 連絡坑道 処分パネル (処分坑道の集合した区画) 東濃地科学センターで 進める 地層科学研究 02 Geoscience 東濃地科学センターとは o u tline 地 層 を科 学 す る 東濃地科学センターの あゆみ outline 東濃地科学センターの施設 用地境界線 昭和 37 年 旧通産省地質調査所が旧国道21号沿いで ウラン鉱床の露頭を発見 昭和 40 年 原子燃料公社(のちに動力炉・核燃料開発 事業団に改組)が土岐市肥田町に東濃探 コンクリートプラント 瑞浪地科学研究館 瑞浪国際地科学交流館 鉱事務所を開所 巻上設備 防音ハウス 巻上設備 昭和 48 年 東濃鉱山調査立坑竣工 昭和 61 年 地層科学研究開始 平成 3 年 東濃鉱山第2立坑竣工 平成 4 年 広域地下水流動研究開始 平成 7 年 岐阜県・瑞浪市及び土岐市と「東濃地科学 管理棟 re p o r t 排水処理設備 工事施工者事務所 受変電設備 (非常用発電設備) センターにおける地層科学研究に係る協 主立坑 換気立坑 瑞浪超深地層研究所 100m (内径 4.5m) 管理棟 定」締結(12月28日) (内径 6.5m) 予備ステージ 平成 8 年 超深地層研究所計画開始 平成 10 年 動力炉・核燃料開発事業団から核燃料サイ (深度100m毎) クル開発機構に改組 正馬様用地 平成 14 年 東濃鉱山 瑞浪市有地「土地賃貸借契約」及び「土地 賃貸借契約に係る協定」締結(1月17日) 瑞浪超深地層研究所開所(4月) 21 瑞浪超深地層研究所造成工事着工(7月) 深度300m研究アクセス坑道 瑞浪市 平成 15 年 深度300m ステージ 日吉川 i n f o r m a ti o n 道 動車 状自 環 海 東 N ボーリング横坑 瑞浪超深地層研究所立坑掘削工事着工 (7月) 土岐IC 瑞浪IC 平成 16 年 瑞浪駅 (3月) 深度500m ステージ 19 東濃鉱山における地層科学研究の終了 東濃鉱山の休止(10月) 土岐JCT 中央 自動車道 CHUO EXPWY JR 中央本線 駅 平成 17 年 市 岐 土 深度500m 研究アクセス北坑道 研究所が統合し、独立行政法人日本原子 力研究開発機構が発足(10月) 深度500m 研究アクセス南坑道 土岐川 核燃料サイクル開発機構と日本原子力 岐阜県及び瑞浪市と「瑞浪超深地層研究 所に係る環境保全協定」締結(11月14日) 土岐南多治見IC 土岐市 平成 22 年 東濃鉱山の閉山措置の着手(10月) ※イメージ図 東濃地科学センター 03 ペレトロン年代測定装置 04 Geoscience 地層科学研究について r e p ort 地 層 を科 学 す る outline 東濃地科学センターで進める地層科学研究 超深地層研究所計画は、岩盤や地下水を調査する技術および解析する手法の確立、 深い地下で用いられる工学技術の基盤の整備を目的とした地層科学研究を行っていま 超深地層 研究所計画 す。この研究は、平成8年に原子力機構の所有地(正馬様用地)で開始しました。平成14 研究坑道を利用した研究段階 第3段階 坑道を利用して詳しく研究します。 年からは瑞浪市からお借りした市有地(瑞浪超深地層研究所)において主に研究を進め ています。 1 瑞浪超深地層研究所での研究 瑞浪超深地層研究所では、主に花崗岩を対象として、岩盤の強さ、地下水の流れ、水質 地下の坑道が完成すると、地下深くの岩石や地下水がどのよ うに変化していくのかを、直接調べることが可能となります。ここ では、地下深くでどのような現象が起こるのかを詳しく研究しま す。 などを調べたり、実際に地下に研究坑道(立坑および水平坑道)を建設して研究を行っています。 研究は3つの段階に分けて進めています。 (標高; m) 第1段階 地表からの調査予測研究段階 堆積岩 地表から調査して地下の様子を予測します。 花崗岩 0 -200 測定車 発振装置 受振機 第1段階の研究において、まず地表 での地質調査に加え、人工的な地震 を利用することによって地層の重なり やずれなどの地質の構造を調べま す。続いてボーリング調査を行い、地 下深くの岩石や地下水などについて 調べ、地下の様子を予測します。 なお、本調査研究は、平成16年度を もって終了しています。 re p o r t 岩盤中の物質の移動に関する調査研究 200 市有地は、20年間の予定でお借りしており、地層科学研究の終了後、研究坑道は埋め戻してお返しすることに なっております。ただし、瑞浪市が希望される場合は研究施設の跡利用がなされることになっており、そのための 利用方策について、関係自治体や地域の代表者・有識者の参加を得た「超深地層研究所跡利用検討委員会」を 設置して検討を行っています。 -400 断層 -600 正馬様用地での研究 センターの正馬様用地には、地下数百mより深い土岐花崗岩(結晶質岩)の中に月吉断層があります。 -800 この月吉断層は、断層を横切る方向には水を通しにくい性質を持っています。ここではこれまでに行われた研究 の成果を活用して、地下の環境、特に断層の近くの地下水の様子を評価するための調査・解析手法の最適な組 -1000 み合わせを検討し、調査技術の向上を図っていきます。 反射してくる振動 -1200 反射法弾性波探査 i n f o r m a ti o n 第2段階 ボーリング調査 研究坑道の掘削を伴う研究段階 月吉断層 研究坑道を掘削しながら研究します。 第2段階では実際に坑道を掘削 しながら調査を行い、第1段階で予 測をした地下の様子とどの程度合 っている の か を確 認します。 さら に、坑道の掘削が地下深くの岩石 や地下水に、どのような影響を与 えるのかを、あわせて調査します。 詳しい地層のスケッチなどが作成 され、研究が進められます。 ボーリング孔 N N 壁面観察 05 ボーリング孔 06 Geoscience 地層科学研究について r e p ort 地 層 を科 学 す る outline 広域地下水流動研究では、東濃地域を例として広い範囲(数km四方〜数十km四方)の 深い地下(数km∼十km)の地下水の流れ方や水質などを明らかにする調査や解析の技 広域地下水 流動研究 術と、その方法が適切かどうかを評価するための技術を確立することを目指しています。 この研究は平成4年に開始し、平成16年度までにボーリングなどの主な現場作業を終 了しました。現在は地下水圧などの長期的な観測を行っています。 2 地質環境の長期安定性に関する研究では、日本の地殻変動や火山活動などの 特徴やその影響の程度について様々な例を研究し、地質環境が将来どのように変 地質環境の 長期安定性に 関する研究 化するのかを予測する手法を整備することを目指しています。 地震・断層活動に関する研究の例 この研究の一例として、地表にはっきりとした地震断層が現れないままに過去数 3 東濃地域の35km四方の領域では、地下水の流れが地形と大きな断層により影響を受 けることと、標高マイナス2,000m付近より浅い領域では土岐川と木曽川の流域境界の尾 十万年以上繰り返し活動した活断層の調査技術の研究を紹介します。 根で雨水が地下に浸み込み土岐川から流出することが推定されました。解析の結果に基 下図は、重力の値と活断層や地表に現れた線状の地形とを比べたもので、色の づき、数km四方を対象とした調査研究の調査範囲(下図右)を設定しました。 変化が大きい場所に活断層や線状地形が多くある傾向が分かります。このことか ら、重力の値の分布の調査は、地下の活断層が分布する可能性のある場所を推 re p o r t 定する場合に活用できると考えられます。 重力が平均より 大きい 平均の重力 標高 3500 3000 2500 2000 標高などの影響を除いた重力の値と活断層や線状地形の比較 1000 500 300 100 火山・地熱活動に関する研究の例 動との関連性を調査する手法の研究を紹介します。 この研究の一例として、ある地域の地形が時間とと 数km四方を対象とした調査研究では、人工的な地震を利用した地下の調査、航空機で 下図は、「地磁気・地電流法」と呼ばれる方法で地下 もにどのような変化をしていくのかを予測する手法の 磁気等を測定する調査、ボーリング調査などのデータを用いて地下水の流れなどを解析 の電気の流れやすさを測定したものです。電気の流れ 研究を紹介します。 しました。これまでの研究から、地下水の流れの方向に沿ったボーリング孔から得られた やすい領域の上部と地殻内地震の下限がほぼ同一で 下図は、ある場所の地形変化が、そこに流入する土 データを用いて解析を行った結果と、水質変化から予測される流れの方向※が、よく一致 あることから、電気の流れやすい領域はマグマやそれ 砂の量と流れ出る土砂の量の差によって起こると仮 することがわかりました。これにより、地下水流動解析が適切かどうかを評価するために に関連する高温流体と考えられます。このことから「地 定してコンピュータで解析した例です。このような可視 は、地下水の流れの方向に沿ったボーリング調査が効果的であることや、地下水の流れ 磁気・地電流法」はマグマなどを特定する調査技術の 化技術は分かりやすく説明する手法としても有効と考 に大きく影響する地下の構造を知るためには、地下水の流れの方向に直角に交差する 一つとして有効であると考えられます。 えられます。 0 ローカルスケール 研究実施領域 解析領域とモデル化断層 広域地下水流動研究 i n f o r m at i on この研究の一例として、地殻の温度の様子と火山活 隆起・侵食/気候・海水準変動に関する 研究の例 50 断層を調査することが効果的であることなどがわかりました。 土岐川 (流出域) 1000 電気が流れ にくい 10 Na-Ca-HCO3型 低pH Na-HCO3型 100 (km)20 Na-CI型 高pH 10 電気が流れ やすい 1 30 (白丸印は地殻内地震を、黄星 印は低周波地震を示す) 地下水流動方向 水質変化から予測される流動方向の比較 07 鳴子火山(宮城県) 0 涵養域 深さ ※地下水は地下を流れる間 に周囲の岩盤と反応して 水質がNa-Ca-HCO 3 型か らNa-HCO 3 型へ変化しま す。また、この間に地下水 中のpHは上昇します。これ らのことから図のような地 下水の流動方向が考えら れます。 0 10 20 30 水平距離(km) 40 50 (km) 現在の地形 12万年後の地形の解析結果 08 i n formation Geoscience 取り組み outline 安全管理 と 環境管理 地 層 を科 学 す る 地域交流 と 情報発信 地層科学研究や立坑掘削をはじ 東濃地科学センターが実施する研究開発はもとより、原子力全般について知っていただくため、地 めとする工事は、環境保全に注意し 域行事への参加やセミナー、見学会の開催を行っています。その他、ホームページを利用して、最 ながら安全第一で進めています。 新の施設写真・ライブカメラ映像を配信するとともに、研究開発成果を掲載するなどの情報発信に また、瑞浪超深地層研究所の活動 努めています。 に関しては、岐阜県および瑞浪市と 締結した「瑞浪超深地層研究所に関 地域行事 する環境保全協定」に基づき、工事 に伴い発生する排水の分析結果に ついてホームページなどを通じて公 東濃鉱山は研究目的を達成し、閉 山措置を実施しています。作業にあ たっては周辺環境への影響を確認 情報・意見交換会 セミナー 研究開発の状況や成果、さらに今後の 地球科学やエネルギーなど様々 研究開発の方向性について、大学、研究 機関、企業等の研究者・技術者等に広く 紹介し、情報・意見の交換を行う機会を設 けています。 な分野で活躍されている先生をお 招きし、講演会を開催しています。 re p o r t 表しています。 地域で行われる行事に積極的に参加し、地層科学研究 について多くの方々に知っていただけるよう、活動を行っ ています。 するためのモニタリング等を行って います。 国際共同研究 と 技術協力 技術の世界的発展や安全性の向 上、効率的な研究を目的として、国 際共同研究や海外技術者の研修・ 交流などの協力を行っています。ま i n f o r m a ti o n た、国内の研究機関や大学等とも研 究協力を進めています。 施設見学会 サマー・サイエンスキャンプ 研究坑道内をご覧いただく見 学会を定期的に開催しておりま す。事前予約が必要となります ので、お問い合わせください。 全国の高校生を対象にした科学技 術体験合宿プログラム「サマー・サイ エンスキャンプ」に参加し、科学技術 への興味・関心を深める取り組みを 推進しています。 インフォメーションコーナー 原子力機構に関する業務に対してさらなるご理 解をいただくために、機構資料の閲覧、複写の交 付を行っています。 09 10
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