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日本経済新聞 印刷画面
2014/10/30 13:00
(日本車前へ エコカーの覇権握れ(下))「夢のエンジン」開発に熱
2014/8/7付 日本経済新聞 朝刊
マツダ本社の研究開発(R&D)部門で技術者たちが夢のエンジンの開発を急ぐ。「ガソリン
車で1リットル当たり40キロメートル、ハイブリッド車(HV)なら50キロメートルを超えら
れる」と期待される未来の低燃費エンジンだ。
同社が進めているのは「予混合圧縮着火(HCCI)」という
技術。空気とガソリンの混合気をエンジンに送り込む。ピストン
で圧縮して温度を高め、自己着火させる。燃費を大きく改善でき
るうえ窒素酸化物(NOx)も出にくく「究極の燃焼技術」ともさ
れる。
だが制御の難しさなどが壁となり、実用化できた自動車メーカ
ーはない未到の技術だ。マツダでも実際の車にエンジンを載せて
AICE設立の記者会見をする関
係者(5月19日、東京都港区)
走らせるのはなお先の話で、現在はコンピューターシミュレーシ
ョンを駆使して最適なエンジン構造などを探っている段階だ。
マツダがHCCIの実用化をめざすのは東京五輪がある2020年
ごろ。「『いまさら内燃機関なんて』とも言う人もいるが、改善
できる余地はまだまだある」。マツダで開発の旗を振る人見光夫
常務執行役員は執念をみせる。
自動車の誕生当初から動力だったエンジン。100年に及ぶ開発
競争で行き着くところまで行き着いたと思われがちだが、技術革
新の動きに再び火が付いた。燃料電池車(FCV)や電気自動車
(EV)が登場したとはいえ、世界の車の9割はエンジン駆動
だ。
欧州勢は小排気量エンジンと過給器(ターボチャージャー)を組み合わせる燃費改善技術など
で攻勢を強めている。エンジン車で顧客を海外勢に奪われれば、今後、普及が見込まれるFCV
やEVでも日本車が不利になる懸念が出てくる。
ホンダは「予混合スパーク点火燃焼(HLSI)」と呼ぶ技術開発に力を注ぐ。エンジンの手
前であらかじめ空気と燃料を混ぜ合わせるしくみはHCCIと同じ。ただ自己着火ではなく、従
来エンジン同様に点火プラグで燃焼を制御する。
絶対的な効率ではHCCIに劣るが、様々な走行条件のもとで安定して動かしやすいエンジン
をつくれる。うまく制御できれば「HCCIより性能を高められる可能性がある」(篠原道雄・
http://www.nikkei.com/news/print-article/tc/?bu=BFBD9496EABA…A8BF919A9886FDB7A4ABB59697EF&ng=DGKDZO75344440X00C14A8TJ1000
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2014/10/30 13:00
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環境安全企画室長)と期待を込める。
各社がエンジン開発にしのぎを削る一方で、HVにEV、さらには年度内にはFCVの市販が
始まる。エンジン一つをとっても「複雑かつ多様になり、技術者など各社のリソースが逼迫して
いる」(自動車大手)と懸念する声もある。
打開策が産学官が連携する「自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)」の設立だ。国内の
全乗用車メーカー8社が共同で4月に設立。産学協同での基礎研究を得意とする欧州メーカーに
対抗する。早稲田大学の草鹿仁教授のチームは2年後を目標に、ディーゼルエンジンに使う排ガ
ス浄化フィルターの効果などを予測するシミュレーション技術を確立する。実用化できればフィ
ルターの試作を減らし、開発期間を短くできる。
研究にはトヨタの現役技術者も加わる。得た知見は共有財産とし、それを各社がエンジン開発
に生かす。研究段階での「協調」と製品化での「競争」がキーワードだ。AICEの大津啓司理
事長は「日本の車業界の開発基盤を強くしていきたい」と意気込む。
FCVやEVなど次世代エコカーの普及を占ううえでもエンジンの進化から目が離せない。
小谷洋司、田中暁人、大島有美子が担当しました
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