環境調和型 付着阻害物質の開発

環境調和型
付着阻害物質の開発
東京農工大学・大学院農学研究院
応用生命化学部門
准教授
北野 克和
2014/6/17 東京農工大学 新技術説明会
研究背景(1)
海洋付着生物に対する付着防汚剤
フジツボ、イガイ、ヒドロ虫などの海洋付着生物
船底、漁網、発電所の冷却システム等に付着し多大な被害
日本だけでも年間数千億円の駆除費が必要
近年有機スズ化合物が使用されていたが環境汚染の観点から使用禁止
現在の対策方法
農薬系、重金属系を有効成分とした防汚剤の利用
2014/6/17 東京農工大学 新技術説明会
研究背景(2)
付着阻害のコンセプト
殺生剤による付着阻害(biocide)
海洋付着生物を殺生することによって付着を防止
毒性物質・化合物
有機スズ化合物・銅系化合物・booster biocide
忌避による付着阻害(non-biocide = repellent)
海洋付着生物を殺生することなく付着のみを阻害することにより防止
嫌がる物質・化合物
物理的要因
海洋生物由来の低分子有機化合物
2014/6/17 東京農工大学 新技術説明会
従来技術と問題点
現在主に使用されている付着阻害物質
 亜酸化銅(Cu2O)
 バイオサイド(農薬系化合物)
付着生物を殺生すること(毒性)によって付着を防止
環境汚染が懸念
2014/6/17 東京農工大学 新技術説明会
研究背景(3)
海洋生物由来の付着阻害活性物質
ウミウシ、カイメンなどから単離
H NC
CN
CN
H
3-Isocyanotheonellin
10-Isocyano-4-cadiinene
2-Isocyanotrachyopsan
EC50 = 0.13 μg/ml
EC50 = 0.14 μg/ml
EC50 = 0.33 μg/ml
新技術事業団創造科学技術推進事業
伏谷着生機構プロジェクト(1991~1996)
2014/6/17 東京農工大学 新技術説明会
研究背景(4)
付着阻害活性発現の構造-活性相関の考察
イソシアノ基が付着阻害活性発現に重要
天然物よりも合成が容易、強い付着阻害活性を
発現する化合物を複数創製
海域によっては、市販品と同等の防汚効果を観察
2014/6/17 東京農工大学 新技術説明会
新技術の特徴・従来技術との比較(1)
アミノ酸誘導体イソニトリル化合物
 高い付着阻害活性
 付着生物の付着を忌避的に阻害(低毒性)
 最終的に生分解されて無毒性のアミノ酸へと変換
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新技術の特徴・従来技術との比較(2)
アミノ酸イソニトリル化合物の付着阻害活性(1)
 タテジマフジツボ(B. amphitrite)キプリス幼生に対する付着阻害活性
CuSO4
CN
1 (Gly)
EC50 = 0.27 μg/mL
EC50 = 0.19 μg/mL
O
O
2 (Ala)
EC50 = 0.81 μg/mL
%
μg/mL
阻害率
死亡率
フジツボを殺生することなく付着のみを阻害
Positive control
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新技術の特徴・従来技術との比較(3)
アミノ酸イソニトリル化合物の付着阻害活性(2)
 タテジマフジツボ(B. amphitrite)キプリス幼生に対する付着阻害活性
CN
O
CN
O
3 (Val)
EC50 = 1.27 μg/mL
4 (Leu)
EC50 = 0.79 μg/mL
O
O
5 (Ile)
EC50 = 0.03 μg/mL
100
80
60
40
20
0
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新技術の特徴・従来技術との比較(4)
アミノ酸イソニトリル化合物の付着阻害活性(3)
 タテジマフジツボ(B. amphitrite)キプリス幼生に対する付着阻害活性
H
N
CN
6 (Phe)
EC50 = 0.02 μg/mL
7 (Tyr)
O
O
8 (Trp)
EC50 = 0.06 μg/mL
EC50 = 0.12 μg/mL
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新技術の特徴・従来技術との比較(5)
アミノ酸イソニトリル化合物の付着阻害活性(4)
 タテジマフジツボ(B. amphitrite)キプリス幼生に対する付着阻害活性
O
O
9 (Met)
EC50 = 0.62 μg/mL
CN
O
O 10 (Asp)
EC50 = 0.05 μg/mL
11 (Glu)
EC50 = 1.24 μg/mL
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新技術の特徴・従来技術との比較(6)
アミノ酸イソニトリル化合物の付着阻害活性(5)
 タテジマフジツボ(B. amphitrite)キプリス幼生に対する付着阻害活性
O
NH
CN
O
O 12 (Lys)
EC50 = 0.08 μg/mL
13 (Gln)
14 (Thr)
EC50 = 0.07 μg/mL
EC50 = 0.02 μg/mL
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新技術の特徴・従来技術との比較(7)
アミノ酸イソニトリル化合物の付着阻害活性まとめ
Compound
アミノ酸
EC50
( µg / mL )
LC50
(µg / mL )
安全域
(LC50 / EC50)
1
Gly
0.19
>100
>500
2
Ala
0.81
>100
>120
3
Val
1.27
>100
>70
4
Leu
0.79
43
55
5
Ile
0.03
66
2200
6
Phe
0.02
>100
>5000
7
Ac-Tyr
0.06
>100
>1600
8
Trp
0.12
>100
>800
9
Met
0.62
46
74
10
Asp
0.05
48
960
11
Glu
1.24
>100
80
12
Ac-Lys
0.08
>100
>1200
13
Gln
0.07
>100
>1400
14
Thr
0.02
49
2450
CuSO4
0.18
3.4
19
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研究背景(5)
シトロネロール誘導体イソニトリル
 タテジマフジツボ(B. amphitrite)キプリス幼生に対する付着阻害活性
CN
OH
CN
15
16
EC50 = 0.31 μg/mL
CN
EC50 = 0.16 μg/mL
OBz
17
EC50 = 0.65 μg/mL
Cl
18
OAc
CN
CN
EC50 = 0.58 μg/mL
Br
19
CN
I
20
EC50 = 0.36 μg/mL
EC50 = 0.47 μg/mL
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新技術の特徴・従来技術との比較(8)
N置換アミド化合物の製造方法
アルコールを基質
2
2
1
1
2
tert
3
3
1
3
アルケンを基質
O
R1
R1 = alkyl
+
R
2
N
H
R
3
R2 = H, Me
R3 = H, alkyl, aryl
A) TFA, KBr
R2
B) TFA, MsOH
N
90ºC
R1
R3
O
20 examples
up to 96% yield
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新技術の特徴・従来技術との比較(9)
N置換アミド化合物の製造方法
or
HCONH2
TFA, 90℃
アルコール、アルケンをトリフルオロ酢酸(TFA)中ホルムアミドを加熱
条件下で作用させることによりN置換ホルムアミドが生成
アルカリ金属塩を添加すると効率的に反応が進行
ホルムアミド以外のアミド化合物でも同様の反応が進行
2014/6/17 東京農工大学 新技術説明会
実施例(1)
付着阻害活性物質(17)の合成
36 mmol
Formamide (10 eq)
KBr (2 eq)
TFA (20 eq)
90℃
Dehydration
17
収率;71%
2014/6/17 東京農工大学 新技術説明会
想定される用途
イソニトリル化合物
 船底防汚塗料を含む付着防汚剤の有効成分として利用されることが期待
農薬系化合物が付着防汚剤に利用されているということは?
 付着阻害剤活性を有するイソニトリル化合物は新規農薬候補として期待
 上記等の製造にN置換アミド化合物の合成法が利用されることが期待
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実用化に向けた課題
環境調和型付着防汚剤
長期間のフィールド試験
フジツボ以外の生物に対する毒性・蓄積性試験
製造方法に関する検討
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企業への期待
 付着防汚剤開発
新規付着防汚剤成分として期待されるイソニトリル化合物の製
造方法の検討について興味をもつ企業との共同研究を希望
 新規生理活性の探索
付着防汚剤だけでなく、農薬としての新規機能、および抗マラリ
ア活性を含めた他の生理活性探索に興味をもつ企業との共同
研究を希望
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本技術に関する知的財産権(1)
・発明の名称
アミノ酸イソニトリル骨格を有する
水中付着生物の防汚剤
・出願番号
特許出願中 未公開
・出願人
国立大学法人東京農工大学、
一般財団法人電力中央研究所
・発明者
北野 克和、他1名
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本技術に関する知的財産権(2)
・発明の名称
N置換アミド化合物の製造方法
・出願番号
特願2012-045853(特開2013-180983)
・出願人
国立大学法人東京農工大学
・発明者
北野 克和、他1名
2014/6/17 東京農工大学 新技術説明会
本技術に関する知的財産権(3)
・発明の名称
イソニトリル化合物および水中付着生物防汚剤
・登録番号
特許第4933261号
・出願人
国立大学法人東京農工大学、
一般財団法人電力中央研究所
・発明者
北野 克和、他3名
2014/6/17 東京農工大学 新技術説明会
お問い合わせ先
東京農工大学
先端産学連携研究推進センター
TEL 042-388-7550
FAX 042-388-7553
e-mail [email protected]
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