GPC-光散乱法による
高分子特性解析
昭光サイエンティフィック(株)
理化学機器事業本部
発表内容
  GPC(SEC)法の概要とその問題点
  静的光散乱法の概要
  GPC-光散乱システムの構成
  アプリケーションの紹介
  粘度検出器の紹介
代表的な高分子の分子量測定法
方法
型
平均分子量
有効な測定分子量範囲
膜浸透圧
絶対法
Mn
104∼106
蒸気圧浸透法
絶対法
Mn
<105
NMR
絶対法
Mn
<105
光散乱
絶対法
Mw
X線小角散乱
絶対法
Mw
102∼106
沈降平衡
絶対法
Mw,Mz
102∼106
固有粘度
相対法
Mv
102∼5
107
GPC
相対法
Mn,Mw,Mz
102∼5
106
103∼5
107
高分子学会編 新高分子実験学 高分子実験の基礎‐分子特性解析‐(共立出版)より一部抜粋
GPC(SEC)法とは
排除
排除限
界容量
時間
排除限界分子量:100,000
排除限界分子量:4,000,000
分子量分布測定の手順
●
●
●
M
W
●
●
●
●
Elution volume
Elution volume
●
●
●
●
●
●
Elution volume
分子量既知の標準品
で較正曲線を作る。
分子量未知の試料を
測定する。
作成した較正曲線で
分子量の計算をする。
GPC法の問題点
  標準試料との相対比較法であり、標準試料と
構造の異なる試料に対しての分子量測定精
度を期待できない。
  GPCカラム内の充填ゲルとの相互作用(吸
着、排除)がある試料に対して適応しない。
多角度光散乱検出器の紹介
Multi Angle Light Scattering;MALS
GPCに接続可能な光散乱検出器
 
多角度光散乱検出器(Wyatt Technology社製)
18角度、8角度、3角度検出器がある。オプションで粘度検出器も追加可能
 
2角度式光散乱検出器(Precision Detectors社製)
90°と15°の2角度検出器
 
トリプル検出器(Viscotek社製)
90°+15°光散乱検出器、粘度検出器、RI検出器の組み合わせ
 
低角度光散乱検出器;LALLS(東ソー製他)
低角度1点の検出器、現在は販売されていない。
 
フロー式動的光散乱測定器(Malvern社製他)
粒子径測定のみで、分子量は測定できない
光散乱
分子に光があたると、
分子には振動双極子が誘起される。
光の波長と同じ
電磁波(光)を
放射=光散乱
静的光散乱測定(分子量)
incident beam
scattered light
重い粒子も軽い粒子も同じ波長で振動する
溶液中では分極率は屈折率増分(dn/dc)の2乗に比例
濃度→0、測定角度→0の外挿点で
散乱強度 ∝(濃度) (分子量) (dn/dc)2
静的光散乱測定(分子量)
蛋白質が会合するとした場合のシュミレーション
(dn/dcが変化しないと仮定する)
分子量1万×10個 濃度1mg/mL 散乱強度
1V
モノマー
分子量2万×5個 濃度1mg/mL 散乱強度
濃度検出器は応答量変わらない ダイマー
2V
分子量10万×1個 濃度1mg/mL 散乱強度
濃度検出器は応答量変わらない 会合体
10V
静的光散乱測定(分子サイズ)
散乱光の干渉作用
分子サイズ小 分子サイズ大
散乱点が1つ 散乱点が複数
レーザー光
弱
各角度の
散乱強度
が同じ
強
角度により
散乱強度が
違ってくる
静的光散乱測定(分子サイズ)
散乱光の干渉作用
微小サイズ分子 Rg <10nm
等方散乱
非等方散乱
巨大サイズ分子 Rg >10nm
Rg:根平均慣性回転半径
静的光散乱法理論式
K ∗c
1
=
+ 2 A2c
R(θ ) MP(θ )
K :光学定数=4π2(dn/dc)2 n02/Naλ04
n0 :溶媒の屈折率、Na:アボガドロ数
λ0:真空中の入射光の波長
R(θ):過剰還元散乱強度
C :試料濃度
M :重量平均分子量
A2 :第二ビリアル係数
P(θ):分子内干渉因子
P(θ)-1=1+1/3k2<S2>+O(k4)
k=(4π/(λ0/n0))sinθ/2
角度を0°に近似すると・・・ P(0°) → 1
K ∗c
1
= 2 A2 c +
R (0 )
M
濃度を0に近似すると・・・C→0
K ∗c 16π 2 n02 2
1
2 ⎛ θ ⎞
=
rg sin ⎜ ⎟ +
2
R(θ )
3Mλ0
⎝ 2 ⎠ M
Zimm plot:
Zero angle:
K ∗c
1
= 2 A2 c +
R(0 )
M
K ∗c
2 ⎛ θ ⎞
Plot
vs. sin ⎜ ⎟ + kc
R(θ )
⎝ 2 ⎠
Zero concentration:
K ∗c 16π 2 n02 2
1
2 ⎛ θ ⎞
=
r
sin
+
⎜ ⎟
g
2
R(θ ) 3Mλ0
⎝ 2 ⎠ M
A2 from initial
slope !
GPC-MALS測定では、
光散乱測定時には非常に
希薄濃度状態を検出して
いる。
rms radius from
initial slope
!
MALS測定実測例
ポリスチレンMw=8,000,000g/mol
15角度測定例
Y軸切片=1/Mw
青点=散乱強度の逆数
初期勾配∝Rg
散乱強度の測定角度変化∝分子サイズ
(RMS半径=慣性回転半径=Rg)
MALS(DAWN HELEOS)の検出部
フローセルの周りに18個の検出器を設置
検出フォトダイオード
laser
高角度
θ
低角度
GPC-MALSシステムの構成
SEC-MALS
MALSのデータ取り込み
・ 全検出器同時に1∼8 ポイント / secで取り込み
・ 各スライス毎、分子量(Mw)RMS半径(Rg)測定
・スライスデータ例
Ve:12.342(mL) Mw:7.3E+6 (g/mol) Rg:165.5 (nm)
・ MALS 3Dプロット 736スライス
測定角度 23°∼ 147° 全15角度
3D Plot - stdpst7s
散
乱
強
度
スライスデータ
溶出容量
17
16
15
14
13
高角度
12
11
10
9
8
7
6
5
4
測定角度
3
低角度
屈折率増分(dn/dc)
dn/dcとは…
試料濃度による屈折率の増分
空気
光
① 溶媒
② 試料
溶媒
入射光の角
度が濃度に
比例する
C=0 C=1 C=2
③ 温度
④ 波長
一定の条件下で
は変化しない物
理量
Mw>2000では分
子量にほとんど
依存しない
dn/dc値の測定方法
  専用の示差屈折率計を使用する。
(最適な測定法)
  GPCカラムからのサンプル回収率を100%と
仮定し、dn/dc既知の物質を用いて校正した
RI検出器より得られたピーク面積値とサンプ
ル注入量からdn/dc値を見積もる。
(簡易的に求める方法ではあるが、様々な問
題点あり)
示差屈折率検出器 Optilab rEX
機能
 dn/dc測定が可能
 絶対屈折率測定が可能
 HPLC用RI検出器として使用可能
特長
 光源波長の選択が可能(LED交換)
 (633、658、690nm etc.)
 温調範囲;4∼50℃
 ワイドダイナミックレンジ
dn/dc測定
実際例 Pullulan48K in 50mM NaNO3
Set Concentrations
0.50
OPTILAB
信号強度
Adjusted
Output (volts)
0.40
C=0.25%
0.30
C=0.20%
0.20
C=0.15%
C=0.10%
0.10
C=0.05%
0.00
-0.10
0
5
10
Time
(minutes)
測定時間
第 5 回 M A L S 研 究 会 談 話 会
15
20
dn/dc測定
実際例 Pullulan48K in 50mM NaNO3
4.00x10
dn/dc Curve
-4
n
dn
3.00x10 - 4
2.00x10 - 4
1.00x10 - 4
dn/c (mL/g)
dn/dc
(mL/g)
0.00
1.55x10 - 1
1.50x10 - 1
1.45x10 - 1
1.40x10 - 1
1.35x10 - 1
1.30x10 - 1
0.0
5.0x 10- 4
1.0x 10- 3
1.5x 10- 3
Conc entration (g/mL)
試料濃度 (g/mL)
K no wn C al ib ra ti on c on st an t (1 /v ol ts ): 1 .1 88 8e -0 3
d n/ dc ( mL /g )
: 0 .1 42 5 ± 0. 00 02
2.0x 10- 3
2.5x 10- 3
各種ポリスチレンの測定
サンプル
1.National Institute of Standards and Technology;NIST(米国)
多分散ポリスチレン標準 SRM-706a Mw=285,000(保証値)
2. Polymer Standard Service社(ドイツ)
ポリスチレン標準 8-star, Mn=45,500 one arm
GPC-MALS測定条件
カラム
:Shodex GPC KF-806L(昭和電工製)
溶離液 :トルエン
流速
:1.0mL/min
光散乱 :DAWN HELEOS(Wyatt Technology社製)
RI検出器 :Optilab rEX(Wyatt Technology社製) 分子量vs.溶出時間
SRM706a
測定値 SRM706a
8-Star
Mw=2.896×105
Mw=3.854×105
8-Star
参考値 SRM706a Mw=2.85×105
8-Star* Mw=3.64×105
8-StarのMw値は、Mn=45,500(one arm)×8
とした計算値
回転半径vs.溶出時間
SRM706a
8-Star
測定値
SRM-706a
8-Star
Rz=27.9nm
Rz=15.6nm
参考値
SRM-706a
Rz=27.8nm
コンフォメーションプロット(logMw vs.log〈rg〉
SRM706a;傾き0.62
8-Star;傾き0.55
SRM706a GPC測定
1
1.0
6.5
6.0
5.5
0.5
mV
4.5
4.0
0.0
3.5
6.0
6.5
7.0
7.5
8.0
8.5
minutes
9.0
9.5
10.0
測定結果
Mn=103,015
Mw=292,369
10.5
Log M
5.0
較正曲線作成に使用し
たPS標準(8点)
Mw= 3,053,000
956,000
483,000
189,300
60,450
30,300
10,050
3,790
11.0
保証値
Mw=285,000
8-StarポリスチレンのGPC測定
1
1.0
6.5
6.0
0.5
5.5
mV
0.0
4.5
4.0
-0.5
3.5
6.5
7.0
7.5
8.0
8.5
9.0
9.5
10.0
10.5
Log M
5.0
較正曲線作成に使用し
たPS標準(8点)
Mw= 3,053,000
956,000
483,000
189,300
60,450
30,300
10,050
3,790
11.0
minutes
測定値
Mn=187,511
Mw=254,115
参考値
M=364,000
GPC-MALS-粘度検出器への展開
 
 
 
固有粘度[η]の測定
GPCの検出器として使用
MALSとの組み合わせによ
りMark-Howink-Sakurada Plotを容易に作成可能
粘度検出器測定原理
•  4 Capillary Bridge
ηsp = 4ΔP / ( IP − 2ΔP )
 
比粘度ηsp
ηsp = η /η0 − 1
 
固有粘度[η]
[η ] = lim ηsp / c
c→0
Mark-Houwink-Sakurada equation
[η] = KM α
log [η] = logK + α log M
·Rod-like polymer
→
> 1.0
·Random coil polymer → 0.5 – 0.7
·Spherical molecule → < 0.5
北海道大学 工学研究科 生物機能高分子専攻 佐藤敏文准教授よりご提供
Mark-Houwink-Sakurada plots
Z�
Figure. Mark-Houwink plots in DMF at 25 oC of
�����poly-1 (hyperbranched) and poly-3(linear). Satoh, T. Kakuchi, T. et al�Macromolecules, 40(26), 9313-9321(2007)
北海道大学 工学研究科 生物機能高分子専攻 佐藤敏文准教授よりご提供
まとめ
GPC-光散乱法は・・・
  構造の影響や、サンプルとカラム充填剤との
相互作用の影響を受けず真の分子量分布、
分子サイズ分布を測定可能である。
  分岐度、形状情報を得られる。粘度検出器
を付加することにより、その範囲はさらに広
がる。