福岡オフィス市場の現況と見通し (2015 年)

ニッセイ基礎研究所
2015 年 3 月 10 日
福岡オフィス市場の現況と見通し
(2015 年)
金融研究部 不動産市場調査室長
竹内 一雅
e-mail : [email protected]
1. はじめに
福岡のオフィス市場は今後、大きく変化することが期待される。国家戦略特区への指定に伴い、
天神明治通り地区において航空法に基づく高さ制限の緩和(67mから 76m)が決定した。これにあ
わせて福岡市が容積率の緩和などの実施を決定したことで、これまで長い間、建替えが進まなかっ
た天神地区の再開発が大きく進展しようとしている。本稿では、福岡オフィス市場の現況把握とと
もに 2021 年までのオフィス賃料の将来予測を行う1。
2. 福岡のオフィス空室率・賃料動向
福岡は過去 2 年間に、主要都市の中で最も空室率の改善幅が大きかった都市である(図表-1)。
三幸エステートによると、2013 年 2 月(12.38%)から 2015 年 2 月(7.53%)までの改善幅は▲
4.85 ポイント(以下 pt とする)に達し、改善幅は東京都区部(▲2.98pt)、札幌市(▲1.42pt)、仙
台市(▲1.68pt)
、名古屋市(▲2.72pt)
、大阪市(▲1.07pt)を大きく上回っている。
空室率の改善が大きく改善する中で、成約賃料も 2012 年下期から 2013 年下期まで大きく改善し
たが、この一年間は上昇スピードが落ち、ほぼ横ばいで推移している(図表-2)
。2014 年下期の成
約賃料は 8,035 円/月坪となっている。
図表-1 主要都市のオフィス空室率
図表-2 主要都市のオフィス成約賃料
空室率
15,000
22%
大阪市
20%
名古屋
18%
札幌市
12,500
16%
仙台市
福岡市
14%
12%
仙台市, 10.75%
大阪市, 9.25%
札幌市, 8.57%
10%
8%
10,000
名古屋市, 8.47%
福岡市, 7.53%
6%
東京都心3区,
4.74%
4%
東京都区部,
5.05%
7,500
2%
0%
東京都区部
東京都心3区
(出所)三幸エステート
札幌市
福岡市
仙台市
大阪市
名古屋市
5,000
2014-H2
2014-H1
2013-H2
2013-H1
2012-H2
2012-H1
2011-H2
2011-H1
2010-H2
2010-H1
2009-H2
2009-H1
2008-H2
2008-H1
2007-H2
2007-H1
2006-H2
2006-H1
2005-H2
2005-H1
2004-H2
2004-H1
2003-H2
2003-H1
2002-H2
2002-H1
2001-H2
2001-H1
2000-H2
2000-H1
1999-H2
1999-H1
1998-H2
1998-H1
1997-H2
1997-H1
00/01 01/01 02/01 03/01 04/01 05/01 06/01 07/01 08/01 09/01 10/01 11/01 12/01 13/01 14/01 15/01
(出所)「オフィスレント・インデックス」を基にニッセイ基礎研究所が作成
過去 2 年間の福岡市の空室率の改善幅を規模別にみると、大型ビル(▲6.93pt)と中型ビル(▲
1
2014 年の見通しは竹内一雅「福岡オフィス市場の現況と見通し(2014 年版)」不動産投資レポート 2014.3.10 ニッセイ基礎研究所
を参照のこと。
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6.28pt)で大きく、次いで小型ビル(▲4.96pt)
、大規模ビル(▲3.46pt)の順となっている2(図表
-3)
。ただし、過去一年間に小型ビルでの改善はほとんどなく、小型ビルとそれ以外の規模との空
室率格差が拡大している。
三鬼商事によると、2014 年の福岡ビジネス地区3の空室面積は 5.3 万坪で、2007 年の 5.1 万坪に
近づいており、2009 年のピーク(10.6 万坪)から空室面積は▲49.7%の大幅な減少となっている(図
表-4)
。2009 年以降、賃貸面積は+9.5%と堅調に増加している一方、賃貸可能面積は+0.4%とほと
んど増加がなかったことが空室面積の大幅改善の理由である。
図表-4 福岡ビジネス地区の賃貸可能面積・
賃貸面積・空室面積
図表-3 福岡の規模別空室率
75万坪
空室率
14万坪
25%
70万坪
12万坪
65万坪
20%
10万坪
60万坪
15%
10%
55万坪
8万坪
50万坪
6万坪
45万坪
4万坪
40万坪
5%
2万坪
35万坪
30万坪
0万坪
賃貸可能面積
(注)大規模:基準階面積 200 坪以上、大型:同 100~200 坪未満、中型:同 50~
100 坪未満、小型:同 20~50 坪未満
(出所)三幸エステート
賃貸面積
2014.12
平均空室率
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
小型ビル
1994
中型ビル
1993
大型ビル
1992
大規模ビル
1991
00/01 01/01 02/01 03/01 04/01 05/01 06/01 07/01 08/01 09/01 10/01 11/01 12/01 13/01 14/01 15/01
1990
0%
空室面積(右目盛)
(出所)三鬼商事
3. 福岡のオフィス需給と地区別動向
福岡ビジネス地区では、新規供給がほとんどない中で、着実な需要の増加がみられている。月次
推移をみると 2013 年 1 月以降に空室面積が増加した月は一度もなく改善が続いている(図表-5
右図)
。年ごとの推移でも 2014 年の賃貸面積の増加は 2 万坪を上回り、これは 1991 年以来の規模
である(図表-5 左図)
。空室面積も 2.2 万坪の大幅な減少で 1991 年以降の最大の減少幅だった。
図表-5 福岡ビジネス地区の賃貸オフィス需給面積増加分
<年次>
<月次>
4万坪
6,000坪
3万坪
4,000坪
2万坪
2,000坪
1万坪
0坪
0万坪
-2,000坪
-4,000坪
-1万坪
-6,000坪
-2万坪
-8,000坪
2014.12
2014.11
2014.10
2014.9
2014.8
2014.7
2014.6
2014.5
2014.4
2014.3
賃貸面積
2014.2
2014.1
2013.12
2013.11
賃貸可能面積
2013.10
2013.9
2013.8
2013.7
2013.6
2013.5
2013.4
2013.3
2013.2
2014.12
2013
2012
2011
2010
2009
空室面積
2008
2007
2006
2005
賃貸面積
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
賃貸可能面積
2013.1
-3万坪
空室面積
(出所)三鬼商事
2
3
三幸エステートの定義による。大規模とは基準階面積 200 坪以上のビル、大型ビルは同 100~200 坪未満、中型は同 50~100
坪未満、小型は同 20~50 坪未満のビル。
三鬼商事の定義による。福岡の主要 6 地区(赤坂・大名地区、天神地区、薬院・渡辺通地区、祇園・呉服町地区、 博多駅前地
区、博多駅東・駅南地区)をいう。
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福岡では 2014 年に大規模オフィスビルの竣工が一棟のみだったため、賃貸面積増加の 9 割が既
存ビルで吸収された(図表-6)
。既存ビルの増加面積は 1991 年以降で最大となった。
2014 年の一年間に地区別の空室率は全地区で大きく改善した(図表-7)
。2014 年末時点の空室
率は薬院・渡辺通地区が 5.74%と最も低く、天神地区(6.67%)、祇園・呉服町地区(7.67%)、赤
坂・大名地区(8.12%)
、博多駅・駅南地区(8.77%)、博多駅前地区(9.01%)と続いている。
福岡ビジネス地区で最も賃貸可能面積が広いのは天神地区(構成比 24.2%)で、次いで博多駅前
地区(21.6%)
、博多駅東・駅南地区(16.2%)
、祇園・呉服町地区(15.8%)
、薬院・渡辺通地区(12.1%)、
赤坂・大名地区(10.0%)となっている(図表-8)
。
2014 年の一年間に福岡ビジネス地区で賃貸面積は+2.1 万坪増加したが、このうち、博多駅東・
駅南地区が+6.2 千坪で最も大きく、次いで博多駅前地区(+5.6 千坪)、薬院・渡辺通地区(2.8 千坪)、
祇園・呉服町地区(+2.7 千坪)
、赤坂・大名地区(+1.7 千坪)、天神地区(+1.5 千坪)であった(図
表-9)
。このように、全地区で賃貸面積は増加し、その結果、全地区で空室面積の減少がみられた。
図表-6 福岡ビジネス地区の新築・既存ビル別
賃貸面積増分
図表-7 福岡ビジネス地区の地区別
オフィス空室率推移
3万坪
20%
18%
2万坪
16%
14%
1万坪
12%
10%
0万坪
博多駅前地区, 9.01%
博多駅東・駅南地区, 8.77%
赤坂・大名地区, 8.12%
福岡ビジネス地区, 7.70%
祇園・呉服町地区, 7.67%
天神地区, 6.67%
薬院・渡辺通地区, 5.74%
8%
-1万坪
6%
4%
-2万坪
2%
0%
2014.12
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
天神地区
博多駅東・駅南地区
薬院・渡辺通地区
図表-9 福岡ビジネス地区の地区別
オフィス需給面積増加分(2014 年)
-25千坪
18.4%
25.3%
-15千坪
-10千坪
-5千坪
天神地区,
-4,038
賃貸可能面積
20.9%
24.4%
天神地区
24.2%
15千坪
20千坪
25千坪
12.4%
薬院・渡辺通
地区
12.1%
祇園・
博多駅前
呉服町
地区,
地区,
5,614
2,673
博多駅東・
駅南地区,
6,214
薬院・渡辺通
地区, 2,810
15.8%
15.9%
10千坪
博多駅東・
駅南地区,
2,534
赤坂・ 天神
大名 地区,
地区, 1,503
1,695
賃貸面積
9.0%
祇園・呉服町
地区
15.8%
5千坪
祇園・呉服町地区,
23
10.5%
外:賃貸可能面積
中:賃貸面積
内:空室面積
0千坪
博多駅前地区,
68
10.0%
16.0%
博多駅前
21.3%
地区
21.6%
-20千坪
赤坂・大名地区
10.0%
博多駅東・駅南
地区
16.2%
3|
赤坂・大名地区
博多駅前地区
(出所)三鬼商事
図表-8 福岡ビジネス地区の地区別
賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積構成比
(出所)三鬼商事
1995
福岡ビジネス地区
祇園・呉服町地区
全体増加
(出所)三鬼商事
1994
1993
1992
2014.12
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
既存増加-前年新築
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
新築
1991
-3万坪
空室面積
博多駅東・
駅南地区,
-3,680
赤坂・大名地区
薬院・
祇園・
博多駅前
赤坂・
渡辺
天神地区,
呉服町
地区,
通
大名地区,
-5,541
地区,
-5,546
-1,695
地区,
-2,650
-2,810
天神地区
薬院・渡辺通地区
祇園・呉服町地区
博多駅前地区
(出所)三鬼商事
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博多駅東・駅南地区
4. 福岡の新規供給計画と「天神ビッグバン」
近年、福岡では新規の大規模ビルの竣工が少なく、2014 年は TERASO-Ⅱのみだった。2015 年
も長府博多ビジネスセンターの一棟だけで、2016 年には新博多ビルと東比恵ビジネスセンターⅡの
完成が予定されている。このように、2008 年~2009 年の大量供給以降、新規のオフィス供給面積
は低水準で推移している(図表-10)
。
福岡市中心部には福岡空港との近接性に基づく高さ制限や容積率の問題などから、築年の経過し
たオフィスビルの建替えが進んでいない。日本不動産研究所によると、福岡市のオフィス地区内で
1981 年以前に竣工したオフィスビル(ほぼ旧耐震ビルに相当)床面積の構成比は 42.0%に達し、
全国平均(28.3%)や東京都区部(26.1%)、大阪市(34.5%)などを大きく上回る(図表-11)。
ただし、今後、福岡市都心部での建替えや再開発が大きく進む可能性が出てきた。福岡では、国
家戦略特区(グローバル創業・雇用創出特区)に指定されたことから、航空法による高さ制限のエ
リア単位での特例承認が認められ、その第一号として天神明治通り地区では現在の 67mから 76m
へと 9m高いビルが建設可能となった。さらに、福岡市では国家戦略特区の指定を期に、独自の容
積率の緩和策4や立地交付金などにより天神地区の再開発を大きく進めるための「天神ビッグバン5」
プロジェクトを始動させた。このプロジェクトでは、今後 10 年間に天神地区で 30 棟の建て替えを
促し、延床面積を 1.7 倍(+31 万 3 千㎡(+9 万 4 千 7 百坪)の増加)に、雇用者数を 2.4 倍(+5
万 7200 人の増加)にすることを目指している。
すでに天神地区では、福岡地所による天神ビジネスセンター(仮称)の建設計画が進んでおり、
福岡ビルの建替え計画も実現に向けて動いている模様だ6。国家戦略特区への指定と福岡市による施
策が、築年の経過したビルの多い天神地区において、多数の再開発や建て替えを強く後押し、今後
の福岡のオフィス市場を大きく変化させる可能性が高い。
図表-10 福岡における大規模ビル新規供給計画
45%
30.8%
32.0%
25.7%
36.0%
35.4%
36.4%
35.1%
千葉
横浜
京都
神戸
広島
福岡
20%
8.7%
15%
1.0
17.4%
19.5%
25%
1.5
36.2%
28.3%
26.1%
35%
30%
2.0
28.3%
予測
33.2%
34.5%
40%
2.5
38.4%
41.3%
50%
3.0
42.0%
(万坪)
図表-11 主要都市における 1981 年以前に竣工した
オフィスビル構成比(2014 年 1 月現在)
10%
16.3%
仙台
さいたま
名古屋
札幌
31.7%
東京都区部
大阪
32.4%
36.2%
42.5%
30.7%
32.2%
5%
0.5
0%
全国
0.0
2017予
2016予
2014
2015予
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
(出所)CBRE、三幸エステート、ニッセイ基礎研究所
棟数構成比
床面積構成比
(出所)日本不動産研究所「全国のオフィスビルストック調査(2014.1 現在)
5. 福岡の人口動向と見通し
住民基本台帳人口移動報告によると、2014 年の福岡市の転入超過数は 6,564 人(前年比▲1,622
4
5
6
報道によると、福岡市は天神一丁目南ブロックの再開発ビルの容積率を、現行の 800%から 1400%まで上乗せを認める方針を固
め、2015 年秋に都市計画決定する方針という(西日本新聞、2015 年 2 月 25 日朝刊より)
福岡市「国家戦略特区をトリガーにしたプロジェクト-新たな空間と雇用を創出する『天神ビッグバン』 始動!~2,900 億円の建設
投資効果と毎年 8,500 億円の経済波及効果~」を参照のこと。高島市長によるメッセージも視聴できる。
西日本新聞「西鉄、天神「福ビル」建て替えへ 周辺の再開発事業にも弾み」(2014 年 9 月 12 日)
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人の減少)だった。主要政令指定都市では札幌市に次ぐ転入超過数であり、大阪市や名古屋市を上
回っている(図表-12)
。
転入超過数を男女年齢別にみると、20~24 歳女性の転入超過数の多さが目を引く(図表-13)
。
20~24 歳の転入超過数に占める女性比率は 68.0%に達する。また、0~4 歳を除くとほぼ全年齢で
転入超過が見られるのも特徴である。
福岡市の人口ピラミッドの特徴は、高校卒業後の 17 歳から 19 歳にかけて人口が大きく増加する
点である(図表-14)
。これら若者の転入超過数の多さは、人口に占める若者比率の高さにも反映し
ている。福岡市の 15 歳~29 歳の人口比率は 19.5%で、国内の人口 50 万人以上の都市でもっとも
高い(図表-15)
。
図表-12 主要都市の転入超過数
図表-13 福岡市の男女年齢別転入超過数(2013 年)
10,000
2,500人
5,000
2,000人
0
1,500人
-5,000
男
女
1,223
1,065
1,041
3,000人
2,601
15,000
1,000人
605
500人
32
55
12
66
36
74
32
53
57
50
9
120
78
39
-15,000
9
42
140
98
107
97
116
104
122
64
186
372
-10,000
0人
-4
-3
-20
90歳以上
85~89歳
80~84歳
75~79歳
70~74歳
65~69歳
60~64歳
55~59歳
50~54歳
45~49歳
40~44歳
35~39歳
30~34歳
25~29歳
20~24歳
15~19歳
5~9歳
10~14歳
福岡市
-175 0~4歳
-310
2014
2013
2012
2011
2010
大阪市
2009
2008
名古屋市
2007
2006
2005
仙台市
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
札幌市
-500人
-4
-2
-20,000
(出所)住民基本台帳人口移動報告
(出所)住民基本台帳人口移動報告
図表-14 福岡市と全国の人口ピラミッド(2010 年)
図表-15 主要都市における 15 歳~29 歳人口構成比
福岡市人口
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
30,000
35,000
40,000
45,000
50,000
100歳以上
95歳
90歳
85歳
80歳
75歳
70歳
65歳
61歳, 23,733
60歳
55歳
61歳, 2,261,917
53歳, 16,589
53歳, 1,478,697
50歳
45歳
40歳
37歳, 25,298
35歳
30歳
37歳, 2,017,073
27歳, 21,250
25歳
20歳
17歳, 12,925
15歳
10歳
27歳, 1,469,956
19歳, 1,200,148
17歳, 1,202,514
19歳, 20,217
7歳, 12,642
5歳
0歳, 13,798
0歳
0
500,000
7歳, 1,117,316
0歳, 1,045,975
1,000,000
1,500,000
全国人口
全国(下目盛)
福岡市(上目盛)
2,000,000
2,500,000
10.0%
11.0%
12.0%
13.0%
福岡市
八王子市
仙台市
京都市
川崎市
相模原市
特別区部
熊本市
鹿児島市
岡山市
札幌市
大阪市
名古屋市
さいたま市
松山市
川口市
船橋市
横浜市
広島市
神戸市
新潟市
東大阪市
姫路市
全国
宇都宮市
千葉市
北九州市
浜松市
堺市
静岡市
14.0%
15.0%
16.0%
17.0%
18.0%
19.0%
20.0%
19.5%
19.4%
19.3%
18.5%
18.4%
17.7%
17.5%
17.5%
17.2%
17.1%
17.1%
17.0%
16.9%
16.6%
16.5%
16.3%
16.2%
16.1%
16.1%
16.0%
15.8%
15.7%
15.6%
15.6%
15.4%
15.2%
15.1%
14.9%
14.9%
14.4%
(出所)国勢調査(2010 年)
(出所)国勢調査(2010 年)
こうした福岡市の若者の多さは、婚姻率や出生率の高さにも現れている。人口動態統計によると、
2013 年福岡市の婚姻率は 6.8‰(人口千人当たりの年間婚姻届出件数)で、出生率は 9.8‰(人口
千人当たりの年間出生数)と、主要都市の中ではともに最も比率が高い都市のひとつである(図表
-16)
。
国立社会保障・人口問題研究所の 5 年ごとの予測によると、福岡市の人口は 2020 年まで増加が
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続き、その後の人口減少も比較的穏やかに進むと考えられる(図表-17)
。ただし、生産年齢人口(15
~64 歳人口)はすでに 2010 年をピークに減少がはじまっており、当面は 5 年ごとに 2~3 万人の
減少が見込まれている。なお、住民基本台帳に基づく人口によると、2014 年 1 月末から 2015 年 1
月末にかけて、福岡の人口は+11,803 人の増加、同生産年齢人口は▲2,985 人の減少だった7。
図表-16 主要都市の婚姻率・出生率(2013 年)
図表-17 福岡市の人口見通し(5 年毎)
12.0‰
180万人
9.9‰
10.0‰
9.1‰
8.2‰
8.0‰
8.5‰
7.4‰
5.6‰
6.0‰ 5.3‰
7.9‰
7.5‰
8.6‰
8.2‰
7.6‰
7.1‰
6.1‰
8.4‰
160万人
140万人
6.8‰
6.7‰
5.3‰
4.9‰
5.2‰
5.7‰
149.9
146.4
8.3‰
7.9‰
6.1‰
5.5‰
予測
9.8‰
9.4‰
134.1
128.5
123.7
151.0
150.9
149.7
147.4
140.1
120万人 116.0
5.4‰
100万人
88.6
4.0‰
93.3
96.8
99.5
101.2
98.0
95.5
81.6
94.1
91.9
87.7
80万人
2.0‰
60万人
0.0‰
福岡市
北九州市
広島市
神戸市
大阪市
京都市
川崎市
名古屋市
横浜市
千葉市
仙台市
札幌市
都区部
全国
婚姻率
40万人
20万人
出生率
0万人
1985年 1990年 1995年 2000年 2005年 2010年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年
(注)出生率=(年間出生数)/(10 月 1 日現在日本人人口)×1000、婚姻率=(年
間婚姻届出件数)/(10 月 1 日現在日本人人口)×1000
(出所)住民基本台帳人口移動報告
総人口
生産年齢人口(15~64歳)
(出所)福岡市
6. 福岡のオフィス賃料見通し
福岡における今後のオフィス供給や人口流入、経済の成長見通しなどに基づくオフィス需給の見
通しから、2021 年までの福岡のオフィス賃料を予測した。
推計の結果、福岡のオフィス賃料は、
(標準シナリオによると)2014 年下期から 2017 年(下期、
以下同じ)まで+17.6%(2014 年下期比)上昇した後に、2019 年まで下落(同+5.2%)するが、再
び上昇して 2021 年には同+13.7%まで回復すると予測された(図表-15)
。
楽観シナリオでは当面の賃料上昇は 2017 年までに+28.9%(2014 年下期比)の上昇、悲観シナ
リオでも 2017 年に同+3.3%の上昇となり、その後の賃料の底は、楽観シナリオでは 2019 年に同
+18.6%、悲観シナリオでも 2019 年に同▲8.0%という結果となった。2021 年の賃料水準は、楽観
シナリオでは 2014 年下期比で+28.7%、悲観シナリオで▲1.8%だった。
図表-15 福岡オフィス賃料見通し
13,000
12,000
予測
11,000
10,000
9,000
8,000
7,000
標準
楽観
6,000
悲観
5,000
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
(注)各年下期の賃料を記載
(出所)「オフィスレント・インデックス」を基にニッセイ基礎研究所が作成・推計
7
なお、このうち、日本人人口は+10,726 人の増加、生産年齢人口は▲3,882 の減少だった。
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7. おわりに
福岡市はオフィス市況の改善が最も顕著な都市のひとつである。当面、需要の強さと供給量の少
なさから改善が続くと思われる。また、中長期的にみても、アジアとの近接性や、九州新幹線の開
通による九州各県との時間距離の短縮、福岡空港と都心部の近さ、若者の流入の多さなど多くの強
みがあるため、今後の成長に大きな期待が持たれている。
一方、都心部では築年の経過したオフィスビルが多いにもかかわらず、航空法の高さ規制や現行
の容積率では建替えると延べ床面積を縮小せざるをえないなどの問題から、これまでなかなか都心
部でのオフィスビルの更新や新築が進まなかった。
そうした中で、国家戦略特区(グローバル創業・雇用創出特区)の指定を契機に、福岡市は天神
明治通り地区における航空法の高さ規制の特例承認を獲得するとともに、
「天神ビッグバン」プロジ
ェクトとして、容積率の割り増しや立地交付金などの提供により、天神明治通り地区の再開発と建
て替えの推進を推し進める決定をした。
都市が成長するために、都心部の更新は非常に重要である。現在、博多駅前で進んでいる再開発
とともに、天神地区の再開発の進展は福岡の経済とオフィス市場を大きく変える可能性が高い。新
規開発による供給拡大はオフィス市況の圧迫要因であるが、同時に既存産業はもちろん、IT やコン
テンツ産業等の創業・成長による需要拡大により、福岡市がもつ国内でも有数の活力を今後も伸ば
し、グローバル都市間競争の中でのさらなる成長に期待したい。
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