海馬ニューロンの形態形成における F-BAR/EFC 蛋白質 Rapostlin の役割

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
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海馬ニューロンの形態形成におけるF-BAR/EFC蛋白質
Rapostlinの役割( Abstract_要旨 )
脇田, 洋平
Kyoto University (京都大学)
2014-03-24
http://hdl.handle.net/2433/188841
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
ETD
Kyoto University
(続紙 1 )
京都大学
博士(生命科学)
氏名
脇田
洋平
海 馬 ニ ュ ー ロ ン の 形 態 形 成 に お け る F-BAR/EFC蛋 白 質 Rapostlinの 役
割
(論文内容の要旨)
論文題目
Pombe Cdc15 homology (PCH) 蛋 白 質 は 、 細 胞 膜 管 状 陥 入 を 起 こ す F-BAR/EFC ド メ
インを持ち、様々な細胞膜の再構成に重要な役割を果たしている。その中でも、
Rapostlin/formin-binding protein 17 (FBP17) は 代 表 的 な PCH 蛋 白 質 の 1 つ で あ り 、 エ
ン ド サ イ ト ー シ ス の 調 整 に 必 須 な 蛋 白 質 と し て 注 目 を 集 め て い る 。 ま た 、 Rapostlin
は Rho フ ァ ミ リ ー 低 分 子 量 G 蛋 白 質 Rnd2 の エ フ ェ ク タ ー と し て 同 定 さ れ た が 、そ の
神経系における機能は全く不明であった。
本 論 文 で 私 は 、Rapostlin が 海 馬 を 含 む 発 達 段 階 後 期 の 脳 に 強 く 発 現 し て い る こ と を
見 出 し た 。こ の 時 期 は 、樹 状 突 起 ス パ イ ン の 形 成 お よ び 成 熟 が 盛 ん に 行 わ れ る 時 期 で
あ る 。 初 代 培 養 海 馬 ニ ュ ー ロ ン に お い て 、 shRNA に よ る Rapostlin ノ ッ ク ダ ウ ン お よ
び F-BAR ド メ イ ン に 変 異 を 入 れ 細 胞 膜 管 状 陥 入 を 起 こ す 能 力 を 欠 失 し た
Rapostlin-QQ を 過 剰 発 現 す る と 、ス パ イ ン 形 成 が 阻 害 さ れ た 。Rapostlin-WT の shRNA
耐 性 変 異 体 を 発 現 さ せ る と 、 Rapostlin ノ ッ ク ダ ウ ン に よ る ス パ イ ン の 減 少 が 回 復 し
た 。し か し な が ら 、Rnd2 結 合 領 域 で あ る HR1 ド メ イ ン 、あ る い は SH3 ド メ イ ン を 欠
損 さ せ た Rapostlin shRNA 耐 性 変 異 体 ( Rapostlin-∆HR1、 Rapostlin-∆SH3) を 発 現 さ
せ て も 、 ス パ イ ン の 減 少 は 回 復 し な か っ た 。 さ ら に 、 海 馬 ニ ュ ー ロ ン で Rapostlin の
ノ ッ ク ダ ウ ン お よ び Rapostlin-QQ の 過 剰 発 現 は 、ト ラ ン ス フ ェ リ ン の 取 り 込 み を 阻 害
し た 。 Rapostlin の ノ ッ ク ダ ウ ン と 同 様 に 、 Rnd2 の ノ ッ ク ダ ウ ン は ス パ イ ン 形 成 お よ
び ト ラ ン ス フ ェ リ ン の 取 り 込 み を 阻 害 し た 。こ れ ら の 結 果 か ら Rapostlin と Rnd2 が 協
調 的 に 働 き 、ス パ イ ン 形 成 を 制 御 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。実 際 、Rnd2 は Rapostlin
による細胞膜管状陥入を促進した。
以 上 の 結 果 か ら 私 は 、F-BAR ド メ イ ン 蛋 白 質 Rapostlin は 、Rnd2 に よ る 調 節 を 受 け 、
細 胞 膜 ダ イ ナ ミ ク ス を 制 御 し て ス パ イ ン 形 成 を 制 御 す る こ と を 見 い 出 し 、ス パ イ ン 形
成の新たなメカニズムを明らかにした。
(続紙 2 )
(論文審査の結果の要旨)
本 研 究 は 、細 胞 膜 管 状 陥 入 を 起 こ す F-BAR/EFCド メ イ ン を 持 つ 分 子( Po
mbe Cdc15 homology、PCH蛋 白 質 )の な か で も 、 生 体 内 に お け る 機 能 が
未 だ よ く わ か っ て い な い Rapostlinに つ い て 、 脳 神 経 系 に お け る そ の
新しい機能を初めて明らかにし、さらにその活性化の分子メカニズ
ムを解明した研究である。
Rapostlin/formin-binding protein 17 (FBP17) は 代 表 的 な PCH蛋 白 質 の 1つ
で あ り 、Rhoフ ァ ミ リ ー 低 分 子 量 G蛋 白 質 Rnd2の エ フ ェ ク タ ー と し て 同 定 さ れ
たが、その神経系における機能は全く不明であった。本 研 究 は 、 細 胞 膜 制
御 機 能 を 持 つ Rapostlinが 神 経 細 胞 に お け る 形 態 形 成 の 制 御 に 関 わ る
ことを初めて示したものであり、細胞生物学分野における細胞の形
態と細胞膜制御を結びつける分子メカニズムの一端を明らかにした
点において、意義のあるものと考えられる。
本 研 究 で は 、 脳 の 発 達 に 焦 点 を 絞 り 、 Rapostlinの 脳 の 各 発 達 段 階
における発現量や発現部位について詳細に調べ、海馬の神経細胞の
樹 状 突 起 ス パ イ ン が 特 に 活 発 に 形 成 さ れ る 時 期 に お い て Rapostlinの
発現が多いことを見いだし、実際に海馬の神経細胞を培養すること
で 、 Rapostlinが 樹 状 突 起 ス パ イ ン の 形 成 に も 関 わ っ て い る こ と を 明
ら か に し た 。 次 に 本 研 究 で は 、 Rapostlinが ス パ イ ン 形 成 を 制 御 す る
分 子 メ カ ニ ズ ム の 解 明 を 試 み 、 Rapostlinの FCH領 域 が 樹 状 突 起 ス パ
イ ン の 形 成 に 必 要 で あ る こ と を 見 出 し た 。 Rapostlinの FCH領 域 は 、
エ ン ド サ イ ト ー シ ス を 制 御 す る 領 域 で あ り 、 実 際 に Rapostlinが 海 馬
の神経細胞で恒常的なエンドサイトーシスに関わっていることを明
ら か に し た 。 さ ら に 、 Rapostlinの HR領 域 、 SH3領 域 も 樹 状 突 起 ス パ
イ ン の 形 成 に 必 要 で あ る こ と を 見 出 し た 。 Rapostlinの HR領 域 は 、 低
分 子 量 G タ ン パ ク 質 R n d 2 と の 結 合 領 域 で あ る こ と か ら 、本 研 究 で は R
nd2が 樹 状 突 起 ス パ イ ン 形 成 に 関 与 し て い る こ と も 明 ら か に し 、 Rap
ostlinの 活 性 が Rnd2に よ っ て 制 御 さ れ て い る 可 能 性 を 示 唆 す る 結 果
が得られている。
本 論 文 は 、 こ れ ま で 生 体 内 に お け る 機 能 が 未 知 で あ っ た Rapostlin
の神経細胞における機能とその制御メカニズムについて論理的かつ
一貫性をもって示したものであり、神経細胞の樹状突起の形成、さ
らには複雑な神経ネットワークの形成過程の基本的な分子機構の解
明に寄与する重要な発見である。これらの理由により、本論文は細
胞 生 物 学 分 野 の 発 展 に 貢 献 す る 重 要 な 論 文 で あ る と み な し 、博 士( 生
命科学)の学位論文として価値あるものと認めた。
平 成 26年 2月 7日 、 論 文 内 容 と そ れ に 関 連 し た 口 頭 試 問 を 行 っ た 結
果、合格と認めた。
論文内容の要旨及び審査の結果の要旨は、本学学術情報リポジトリに掲載し、公表と
する。特許申請、雑誌掲載等の関係により、学位授与後即日公表することに支障がある
場 合 は 、 以 下 に 公 表 可 能 と す る 日 付 を 記 入 す る こ と 。( た だ し 、 学 位 規 則 第 8 条 の 規 定
に よ り 、 猶 予 期 間 は 学 位 授 与 日 か ら 3 ヶ 月 以 内 を 記 入 す る こ と 。)
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