特　集整備新幹線の電気関係技術整備新幹線の電気設備は、①鉄道の高速化　②安全・安定輸送　③省エネルギーの課題に対し、さまざまな施策に取り組んでいます。建設主体である当機構は、施工性・経済性などを勘案しながら、線区に適した電気設備を構築しています。新幹線の電気設備としては、列車や駅の設備に電気を供給するエネルギー系の設備と、列車を安全・快適に運行させるための列車制御・情報通信系の設備に大別できます。 ●電灯電力設備 ●運転保安設備 ●電車線路設備電気設備列車制御・情報通信系〈駅〉電気設備の紹介変電所 ●送変電設備エネルギー系 ●電灯電力設備 ●情報通信設備 ●電車線路設備 ●情報通信設備 ●運転保安設備 ●送変電設備信通機器室指令所 ①エネルギー系 ●送変電設備電力会社から送られて変電所とは、きた電気を、列車走行に必要な電気に変換し送り出す設備です。新幹線の場合、１５４，０００Ｖ以上の三相交流を２５，０００Ｖの単相交流に変換しています。変電所には電気の入り切りを行うための遮断器や断路器の設備を設置し、短絡や地絡などの電気事故が発生した場合には速やかに電気の供給を停止する機能を有しています。 ●電車線路設備変電所で変換した電電車線路とは、気を列車に供給するための設備の総称であり、トロリ線、ちょう架線、き電線などの電線類およびこれらの支持物などで構成されています。トロリ線は列車のパンタグラフと直接接触しており、高速走行を可能とするために高い張力が必要です。また、支持物は、耐震性に優れた鋼管柱を本線に採用しています。 4 鉄道・運輸機構だより No.42　2014 Summer 架空地線 ATき電線 AT保護線ちょう架線可動ブラケットトロリ線列車防護スイッチ信通機器設置箇所信号機箱列車無線中継機保守用コンセント箱漏洩同軸ケーブル（LCX）インピーダンスボンド沿線電話機明かり区間電気設備電力ケーブルダクト信通ケーブルダクト送水管ダクト送水管ダクト ATき電線 AT保護線可動ブラケットちょう架線トロリ線高圧ケーブル電話位置標漏洩同軸ケーブル低圧ケーブル（LCX）トンネル警報機トンネル照明用灯具信通ケーブルトンネル区間電気設備保守用コンセント箱器材杭に収容・沿線電話器・配電盤・信通機器・インピーダンスボンド 5 鉄道・運輸機構だより No.42　2014 Summer トンネル照明用スイッチ列車防護スイッチ ●電灯電力設備す。駅などにあるレール分岐部では走安全に走行するための情報を伝えまです。列車を検知し、走行する列車に安全かつ能率的運転保安設備とは、に列車を運行するための設備の総称 ●運転保安設備無線による情報を確実に伝送させる列車無線装置があります。なお、列車送装置、列車と情報伝送を行うためので通話や情報伝送を行うための光搬の総称です。指令所と駅、現場設備間列車運行や鉄道情報通信設備とは、運営を円滑に行うために、各所で必要 ●情報通信設備線路設備や駅、事務所、トンネルなど行する線路を確定させ、列車が通過すため、漏洩同軸ケーブル（ＬＣＸ）を設 ②列車制御・情報通信系に設けた照明設備などで構成されてる際に途中転換しないような仕組みけています。また、通話回線をＩＰ化電灯電力設備とは、駅設備、運転保安設備、情報通信設備や消雪基地設備います。駅の照明は、建物との調和、利を構築しています。また、列車位置なすることにより、効率的で低コストのもに、ＬＥＤや ※ 良い設備も採用しています。 Hf な情報を迅速に伝送するための設備用者の利便性、快適性を考慮するととどの情報を指令所に集約させること設備を構築しています。などへの電源を供給する配電所・配電照明などの効率のにより、効率よく列車運行を管理する Hf Hf ※ 照明：高周波点灯専用形蛍光灯のことで、専用の蛍光灯と安定器（インバータ式）を組合わせた器具で構成され、高効率、高出力を実現しています。システムを構築しています。 ①ルーフ・デルタ結線変圧器トロリ線に無酸素銅に（クロム）、（ジルコニウム）などを添加し ②ＰＨＣトロリ線機構で開発した最近の技術の一例電力会社から超高圧で受電する変電所に用いる「ルーフ・デルタ結線変エネルギー化を図りました。これまで圧器」を開発し、建設コストの低減、省）を用いた架 Hardened Copper alloy 線方式を開発しました。これまで使用た析出強化型銅合金（た、これまでに必要であった昇圧変圧約３割向上させることが可能となり、トの低減にも貢献しています。保守の軽減に貢献しています。集電特性を確保したまま、耐摩耗性を Precipitation使用していた変圧器と比較すると、変 Cr していたトロリ線と比較すると、高速 Zr 圧器の質量を約％低減、電力損失を約％低減することができました。ま 15 器が不要となることにより、建設コス 25 漏洩同軸ケーブル新玉名駅の照明新玉東変電所（九州新幹線）長野変電所（北陸新幹線） 6 鉄道・運輸機構だより No.42　2014 Summer （Copper clad Steel ）（Precipitation-Hardened Copper alloy）析出強化型銅合金銅覆鋼 ③無絶縁ＤＳＡ-ＴＣＡＴＣとは、自動列車制御装置）の略で（ Automatic Train Control あり、列車が安全に走行できるよう、地上から列車に常に情報を送信しています。近年の新幹線においては、こ化に貢献しています。り、乗り心地の向上、列車間隔の短縮キ制御を実現しました。このことによ報を送信することで効率的なブレーことにより、レール絶縁に伴って必要するという方式を実現しました。この絶縁物を入れずに列車の位置を把握していましたが、改良した設備では、れまで実現できなかった技術を取りにおいて重要な課題の一つです。こ省エネルギー、保守の省力化を考慮した電気設備の構築が、鉄道建設〜あとがき〜ています。一であった設備が削減可能となったほこのような装置をさらに改良し、部の整備新幹線において無絶縁ＤＳか、情報送信に必要なケーブル芯線が削減でき、建設コストの低減に貢献しＡＴＣという設備を構築しました。新保安器箱：レールに加わる異常電圧・電流からケーブルや機器を保護する保安器等の機器を収容する箱。インピーダンスボンド(ZB)：レール絶縁箇所において、帰線電流だけを通し、信号電流を区分するための変圧器。のＡＴＣ情報をデジタル化していまレール絶縁保安器箱幹線で採用されている一般的なＡＴ ZB省略す。従来のアナログ情報の時には制限インピーダンスボンドＣはレールに絶縁物を入れることでレール速度の情報を送信していましたが、デレール電気的に区分して列車の位置を把握ルーフ・デルタ結線変圧器ジタル化により停止すべき場所の情信号ケーブル信号ケーブル入れる際は、安全性、信頼性および経済性を十分に検討する必要があります。北陸新幹線（長野・金沢間）や北海道新幹線（新青森・新函館北斗間）においても、実車による走行試験を通して、これらの課題について確認する予定です。電気設備は土木構造物と比較すると寿命の短い設備であり、取替部品が入手困難な場合や、システムの更新に多額の投資が必要となる傾向があります。鉄道を取り巻く情勢からさらなる安全性が求められる中、適切な計画により設備構築することを心掛けたいと考えています。鉄道・運輸機構だより No.42　2014 Summer 7 （新）　（無絶縁方式の軌道回路構成）（従来）　（有絶縁方式の軌道回路構成）芯線数削減保安器箱保安器箱保安器箱レール絶縁省略 ZB ZB ZB ZB 整備新幹線の電気関係技術特集　電車線路設備の一例 CSトロリ線 PHCトロリ線鋼銅合金硬銅