膜分離を利用した 次世代CO2分離回収技術による カーボンフリー水素の製造 九州大学 カーボンニュートラル·エネルギー国際研究所 准教授 谷口 育雄 1 化石資源依存からカーボンニュートラルへ 大気中のCO2濃度の増加に伴う地球温暖化および気候変動が 深刻な問題となっている。 化石資源エネルギー 水素エネルギー 2 我が国の電力事情 9割が化石資源由来 http://www.fepc.or.jp/ 3 想定される用途1 火力発電所など大規模CO2発生源におけるCO2分離 火力発電所 製鉄所 http://www-gio.nies.go.jp/ 4 二酸化炭素分離回収・貯留技術 CCS: CO2 Capture & Storage 貯留 分離回収 輸送 圧縮 4,200円/t-CO2 RITE report 2005 >7,200 円/t-CO2 http://bellona.ru/ CO2分離回収コスト低減で実用化 5 従来CO2分離回収技術とその問題点 モノエタノールアミン 4.0 GJ/t-CO2 (4,200円) 加熱!! http://www.tdk.co.jp/ 6 新技術:膜分離法 従来技術と比較して革新的省エネルギー 加熱等の追加エネルギー不要 分離回収コスト: 1,500円/t-CO2が可能 分離膜 CO2の分圧(濃度)差が駆動 力となり、分離が進行する。 7 CO2分離回収技術と適用用途 対象ガス CO2分圧/atm 適応技術 燃焼後 CO2/N2 ~ 0.1 吸収液、膜 燃焼前 CO2/H2 > 10 膜 O2/N2 - ケミカルルーピング CO2/N2 ~ 0.2 吸収液、膜 発生源 火力発電 所 酸素燃焼 製鉄高炉 石炭ガス化複合発電におけるCO2分離回収 CO + H2O CO2:H2 = 36:54, 24気圧 CO2 + H2 8 高性能CO2分離膜の設計 CO2分離素材としてのPAMAMデンドリマー ポリアミドアミンデンドリマー(第0世代) PAMAM 非常に高いCO2選択性 α(CO2/N2) = 4,000 α(CO2/H2) = 1,400 高分子マトリクスへの固定 9 簡便なCO2分離膜の調製 光重合 90秒 ポリエチレングリコールジメタクリレート PEGDMA 高分子膜の特徴 極めて高いCO2分離性能 安価な原材料 簡便な合成法 容易な成形 PEGネットワーク PAMAM含有(50 wt%) 高分子膜 10 PAMAM含有高分子膜のCO2分離性能 CO2選択性 透過速度/m3(STP)m/(m2 s Pa) CO2/H2選択性: 1,000以上、世界最高レベルの分離性能 PAMAM含量/wt% CO2分圧: 0.05気圧、相対湿度: 80%、温度: 11 CO2選択透過機構の解明 拡散 デンドリマーの擬似架橋 CO2は重炭酸イオンとなり膜を透過 CO2とデンドリマーの擬似架橋によりH2の透過を抑制 12 CO2分離膜の想定される用途 • 本技術はCO2/H2からのCO2分離に極めて高い分離 性能を示すため、石炭ガス化複合発電における CO2分離回収技術への利用が期待される。それ以 外にも、天然ガス井におけるCO2分離(天然ガス 精製)への利用も可能であると期待される。 • また、天然ガスなどの改質によるH2生成における CO2分離には既に十分な分離性能を有しており、 カーボンフリー水素の製造へも展開可能である。 13 石炭ガス化複合発電への利用と課題 分離膜の要求性能 透過性/GPU CO2選択性 CO2分圧/atm 目標性能 100 30 >10 現状 95 32 0.5 CO2分離回収コスト:1,500円/t-CO2 課題 · 耐圧性付与 · 耐久性評価 · 高圧での分離性能維持 · CO2/CH4やCO2/N2分離性能評価 燃焼後排ガス分離、天然ガス精製 14 CO2分離性能向上 QCO2 = N CO2 A × t × DpCO2 a (CO2 / H 2 ) = CO2透過速度(流束) CO2透過速度の向上 QCO2 QH 2 CO2選択性 高分子マトリクスの最適化 デンドリマー化学構造改変 CO2選択性の向上 添加剤 15 企業への期待1 • 高圧での分離性能評価については、高圧試 験結果を分離膜材料開発にフィードバックす ることにより克服できると考えている。 • 高圧ガス分離試験装置を持つ企業との共同 研究を希望。 • 膜モジュール作成技術を持つ企業との共同研 究を希望。 • また、CO2分離回収技術を開発中の企業には、 本技術の導入が有効と思われる。 16 水素生成の現状 真の水素社会とは、再生可能エネルギーによって水 を電気分解して得た水素の利用により確立される。 現状で水素は、以下の2通りで製造される。 ①化石資源由来電気エネルギーを用いた水の電気分解 ②メタンなどの水蒸気改質反応 後者が安価であるが、精製時にCO2が発生する。 CH4 + 2H2O 4H2 + CO2 17 カーボンフリー水素の製造 H2O, CO2 CH4 H2, CO2, etc. 水蒸気改質 H2 PSA H2, CO2, etc 燃料ガス CO2分圧: ~ 0.4 atm 分離膜モジュール CO2 PSAオフガスからのCO2分離回収 18 カーボンフリー水素の製造コスト 既存CO2分離膜の利用によるコスト試算 膜面積: 172 m2 運用時間: 12時間/日 膜単価: 2万円/m2 運用日数: 300日/年 膜材料費: 344万円 耐用年数: 5年 総モジュール作成費用: 395万円 H2製造: 300 Nm3/時間 CO2分離回収付加コスト: 0.72円/Nm -H 3 2 19 企業への期待2 • 既に十分なCO2分離性能を有しているため、 パイロットスケールでの試験を通じて実用化 の可否判断が可能。 • 膜モジュール作成技術を持つ企業との共同研 究を希望。 • 水素ステーションなどを持つ企業との共同研 究を希望。 • また、定置用燃料電池のカーボンフリー化に も本技術の導入が有効と思われる。 20 本技術に関する国際学術誌への成果報告 1. Taniguchi, I., Kai, T., Duan, S., Kazama, S., Jinnai, H., J. Membr. Sci., in press 2. Taniguchi, I., Kai, T., Duan, S., Kazama, S., Jinnai, H, Kobunshi Ronbunshu, 71, 202-210, 2014. 3. Taniguchi, I., Duan, S., Kai, T., Kazama, S., Jinnai, H., J. Mater. Chem., A, 1,14514, 2013. 4. Taniguchi, I., Urai, H., Kai, T., Duan, S., Kazama, S., J. Membr. Sci., 444, 96, 2013. 5. Taniguchi, I., Kai, T., Duan, S., Kazama, S., Energy Procedia, 37, 1067, 2013. 6. Kai, T., Taniguchi, I., Duan, S., Chowdhury, F. A., et al., Energy Procedia, 37, 961, 2013. 7. Duan, S., Taniguchi, I., Kai, T., Kazama, S., Energy Procedia, 37, 924, 2013. 8. Duan S., Kai, T., Taniguchi, I., Kazama, S., Desalin. Water Treat., 51, 5337, 2013. 9. Duan S., Taniguchi, I., Kai, T., Kazama, S., J. Membr. Sci., 423-424, 107, 2012. 10. Taniguchi, I., Kazama, S., Jinnai, H., J. Polym. Sci. B: Polym. Phys., 50, 1156, 2012. 11. Taniguchi, I., Ootera, Y., Chowdhury, F.A., et al., Polym. Bull., 69, 405, 2012. 12. Taniguchi I., Duan S., Kazama, S., Fujioka Y, J. Membr. Sci., 322, 277, 2008. 21 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :Crosslinkabke amine compound, polymer membrane using crosslinkable amine compound, and method for producing polymer membrane • 出願番号 :PCT/JP2012/058521 • 出願人 :(公財)地球環境産業技術研究機構 • 発明者 :段淑紅、甲斐照彦、風間伸吾、谷口育雄 22 産学連携の経歴 CO2分離膜 • 2008年-2010年 新日鉄エンジニアリングと共同研究実施 経済産業「省分子ゲート機能CO2分離膜の技術研究開発」補助事業 • 2011年-2012年 新日鉄エンジニアリング、日東、クラレと 技術研究組合を形成 経済産業省「二酸化炭素分離膜モジュール研究開発」委託事業 室温成形性プラスチック • 2010年-2011年 リコーと共同研究実施 • 2012年クラスターテクノロジーと共同研究実施 23 お問い合わせ先 九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 谷口育雄 TEL 092-802-6879 FAX 092-802-6879 e-mail ikuot@i2cner.kyushu-u.ac.jp 24
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