補強用外ケーブルの維持管理(点検・取替え) [PDF:1.08 MB]

エスイー の 技 術 情 報
SE通信
2014年12月号
編集・発行
橋梁構造事業部
■ TOPICS の紹介 ■
今号の『SE通信』のキーワードは
『補強用外ケーブルの維持管理(点検・取替え)』です。
「外ケーブル方式による橋梁補強工法」は、既設橋の耐荷力回復、耐荷力向上、たわみの改
善、連続化などの構造系変更対策として、コンクリート橋・鋼橋を問わず多くの実績があります。
本工法に用いられる「補強用外ケーブル」は、海上部などの腐食環境においても、その使用環
境に応じた適切な防錆性能を発揮し、補強効果を長期にわたり維持できるように防錆処理を施し
ています。
しかしながら、橋梁の長寿命化を確実に行っていくため
には、補強用外ケーブルについても他部材と同様に定
期的な点検や維持管理が必要と考えます。現実に、外
的な衝撃により外ケーブルが損傷し、新しい外ケーブル
に取替えた事例も発生しています。
今号では、補強用外ケーブルに関しての、点検の基本
的項目、外ケーブルの取替え事例についてご紹介します。
■補強用外ケーブルの点検の基本■
今年の6月に改訂された国土交通省「橋梁定期点検要領」では、長さ2m以上の橋の定期点検
は、5年に1回の近接目視を基本とすることが明記されています。
補強用外ケーブルについても、長期間安全に使用していくためには、適切に点検を行う必要があ
ります。ここでは、点検時に着目する部位と調査項目をご紹介します。
点検時の着目部位
①
定着部および定着部近傍の主桁
②
偏向部および偏向部近傍の主桁
定着部
③
外ケーブル
ケーブル部
調査項目
・定着部および定着部近傍の主桁の劣化
(コンクリートのひび割れ、鋼材の変形)
・定着装置の劣化(コンクリートのひび割れ、鋼材の腐食)
・横締め鋼材の劣化(腐食、さび汁)
・偏向部の劣化
(鋼材の変形・腐食、ボルトのゆるみ・抜け落ち・腐食)
・偏向部近傍の主桁の劣化(コンクリートひび割れ、鋼材の変形)
・防錆キャップの劣化
(鋼材の腐食、さび汁、ボルトのゆるみ・抜け落ち・腐食)
・被覆材の劣化、損傷(亀裂、変色、めくれ)
・PC鋼材の劣化(腐食、露出)
・ケーブルの振動(桁の固有周期との同期)、たわみ
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■補強用外ケーブルの取替え事例■
ここでは、外ケーブルの被覆材が損傷しPC鋼線が腐食したことにより、新しいケーブルへ取替えた
事例についてご紹介します。
【概 要】
本橋は、昭和40年代に竣工された後、塩害による劣化で耐荷力が低下したこと、B活荷重へ
の対応が必要となったことから、外ケーブルによる補強が行われました 。
補修工事が完了して十数年が経過したところで、1本の外ケーブルで被覆材が重機による接
触により損傷し、内部の鋼材が腐食したため、新しい外ケーブルに取替えることとなりました。
<被覆材損傷状況>
<橋梁概要>
橋
長 : 約26m
構造形式 : PCポストテンション単純T桁橋
CL
1400
桁長 L=26000
SEEE F-TS外ケーブル
定着部
変更部
<定着部詳細>
<補強用外ケーブル(SEEE工法/F-TS型)>
Step1:外ケーブル端部防錆処理の撤去
・外ケーブル取替えに先立ち、緊張ジャッキによる
張力解放のために、端部の防錆処理を取り外し
た。
撤去前
・外ケーブル端部の防錆処理として、ペトロラタム
系防錆テープとアルミ製保護キャップが施されて 外部:アルミキャップ
いた。
内部:防錆テープ
撤去後
状態は健全(著しい発錆なし)
※11年経過
Step2:損傷外ケーブルの張力の解放
・当時の工事記録からは対象の外ケーブル
の設計張力を確認できなかったため、現状
の張力をリフトオフ試験により計測し、新設
外ケーブルの導入張力を決定した。
・張力の解放作業は、主桁に外ケーブルの
張力差から生じる面外方向の偏心力を与え
ないようにするために、主桁両側に配置され
ている外ケーブルの張力を2台の緊張ジャッ
キを用いて同時に解放した。
緊張ジャッキ作業状況
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油圧ポンプ操作状況
Step3:損傷外ケーブルの撤去(ケーブル部)
・張力解放後、定着装置の出口付近で外ケーブルを切断し、定着部内に
外ケーブルの定着体を残した状態で、先に外ケーブル中間部のみを撤去
した。
対象主桁
・切断したケーブルは、隣の主桁の外ケーブルに受け替え、河川への転落
のないよう慎重に撤去作業を行った。
主 桁
撤去ケーブル
撤去
撤去ケーブル
Step4:損傷外ケーブルの撤去(定着部)
・定着部の撤去方法について、一般的に定着装置の背面側には緊張ジャッキで引き抜くだけの十分な作業スペー
スがないため、定着装置の前面側に押出す必要がある。
・本橋においては、定着鋼管内部に充填されている防錆用のウレタン樹脂が、定着体押出し時に抵抗するため、
油圧ジャッキを用いて撤去作業を行った。
<定着体の押出し撤去の概念図>
井型フレーム
押し出された定着体
角鋼管とPC鋼棒で構築した井型フレームにより
定着装置に反力を取り、小型ジャッキで定着体
を前面側に押し込む。
※あと施工アンカーなどの加工不要
撤去時最大押込み荷重:約85kN
※押込み荷重は、充填材の種類やケーブル
容量により異なるため注意が必要
押込み用小型ジャッキ
Step5:新設外ケーブルの配線・緊張工および仕上げ工
・緊張作業においては、張力解放作業時と同じように、主桁に外ケーブルの張力差から生じる偏心力を与えない
ように2台の緊張ジャッキを用いて2本同時に張力を導入した。
・緊張管理における導入張力は、ケーブル張力解放時に計測した実張力を基に決定した。
外部:アルミキャップ
作業状況
取替完了後のケーブル
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内部:防錆テープ
■ 補強用外ケーブルに関するエスイーの技術■
■SEEE工法/補強用F-TS型外ケーブル
SE通信:2012年12月号「外ケーブル補強工法の防食方法と耐久性」
ケーブル部と定着体に工場にてあらかじめ
防錆処理を施すことができ、確実かつ容易
に緊張作業が行える補強工事に適した外
ケーブルです。
<特 長>
1.防 食 性:定着具、ケーブルなど全ての部材に防錆処理が可能
2.定 着 性:ねじ式定着のため、セット量が無く経済的な設計が可能
3.維持管理性:ねじ式定着のため、再緊張や取替えが容易に可能
■引き寄せジャッキ
SE通信:2011年7月号「緊張作業空間のない外ケーブル補強」
2本のケーブルを中間部で引寄せるように張力導入するシステム
です。緊張後は専用のカップラーを用いて接続することにより緊張力
を保持します。特に、外ケーブル両端部に緊張作業空間が確保で
きない場合に有効です。
油圧ジャッキ
テンションバー
緊張前
緊張後
固定側架台
緊張側架台
固定
緊張
固定
緊張
接続
■カプラー型ロードセル
ロードセル機能を付加したカプラーにより、ケーブル中間部
の張力を実測できるシステムです。
<特 長>
1. ケーブル中間部の設計断面などの張力の直接測定が可能
2. 供用中のケーブル緊張力のモニタリングが可能
ロードセル機能
荷重計キャリブレーション
500
荷重(kN)
400
300
200
100
0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
mV/V
【お問合せ】
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株式会社エスイー 橋梁構造事業部 http://www.se-kyoryokozo.jp/contact/
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