上面スリットダクトバスレフ - 真空管オーディオ ザ・キット屋

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上面スリットダクトバスレフ
このスピーカーは TangBanb の8cmフルレ
ンジユニット W3-517SB 用にチューニングした
内容積2.2L の小型バスレフです。バッフル
面積を極力小さくして点音源を狙い、コンパクト
でもそれなりの低音感を稼げる容積を確保、設置
場所を選ばない設計としてあります。特に上面
開口とすることで、欲しい低域の量感のみを
しっかり引き出して、ダクトから漏れる不要な
中低域音を直接耳に届かなくしているので、
すっきりと締まった軽快で弾力のある低音と
豊かな響きが楽しめます。
また、スリットを上面に設けることのもう
一つのメリットとして、背後の壁との距離をあまり意識しなくても良いので、セッテイングの自由度
が広がります。(コーナー置きすることで更に低域の量感を稼げますが、質感やバランスは好みによ
りますので、適宜試してベストポジションを見つけてください。)
製作例では15mm厚のレッドウッド集成材を使用し、オイルフィニッシュ仕上げとしています。
木目の暖かさとユニットの木製フェィズプラグのデザインとも相まって、アンティークな落ち着いた
雰囲気の仕上がりとなっています。
肝心な音ですが、エンクロージャーの材質や仕上がりにも影響されていると思いますが、明るく軽
快な音調で響きの豊かなサウンドです。決してワイドレンジなユニット特性ではありませんが、能率
が87dB と高いためキレが良く、音が前へ前へと飛んでくる感じで、うまくセッテイングすると SP
間のやや後方に音場が展開します。ポートチューニングもうまく行っている様で、多少パワーを入れ
てもバランスが崩れずリニアリティは高いと思います。(口径は8cmですので大音量再生は無理で
す。リニアリティが確保できる音量範囲は口径応分と考えてください。)
音楽ソースはジャンルを選ばずJAZZ,クラシック共にそつなくこなします。クラシックではバ
イオリンが多少線が細く感じますが、ピアノ,チェンバロ,オーボエは良い感じで、オケもパワーを
入れると、とても8cmのフルレンジと思えないスケール感が得られます。JAZZのベースは多少
軽目ながら適度な弾力と引き締まった感じで好印象です。(アルコはちょっと繊細感が不足かな?)
サックスはやや細めですが、ピアノは響きが豊かで特定の帯域での共鳴による音崩れなどもなく、満
足行くレベルだと思います。ボーカルはサ行,タ行のきつさも無く非常に耳馴染みが良く、点音源効
果も効いて、ビックマウスにならず良い感じです。ザ・キット屋のデモソースはどれもうまく鳴らし
てくれます。
尚、このスピーカーはベタ置きは厳禁です。適当なインシュレータや高密度のウッドブロックで浮
かせて、エンクロージャを自由に響かせてやることで自然で心地よい音を聴かせてくれます。
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1.組立図および板取図
2.参考制作費
・スピーカユニット(TangBand:W3-517SB
・ターミナル(RIT CC-1/G 1ペア)…
・内部配線,圧着端子,ニードルフェルト
1ペア) …
1,000円
1式
…
約300円
・レッドウッド修正材(t15×210mm×910mm)×2枚
・ボンド,サンドペーパ,等補助材料
・塗料(水性ウレタンニス)
…
…
2,345円×2=4,690円
…
2,800円(カット代込み)
約300円
約500円
※ 板材や仕上げ方法により製作費用は変化しますが、概ね1万円以内で1ペア製作できます。
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3.組立て
板取り図に基づいてホームセンターで精度良く直線カットしてもらいます。(木口の直角度は重要
ですので、必ず捨切りをしてもらってから指定寸法にカットしてもらいましょう。)
丸穴はホームセンターの工作室で糸鋸盤を借用して慎重に加工します。
下の写真が切出したバッフル板および拡散板(補強板を兼ねる)です。バッフル板の内側は取り付け
ネジ部以外をR5〜7程度に面取りしてユニット背面の音抜けを良くします。
いよいよ組み立て開始、内部構造はこんな感じです。(隠し釘で仮止め中、ボンドはタップリ使用)
ダクト出口は組立て前にR5程度に面取りしておきます。
(スリット隙間寸法はできるだけ正確に)
組立ての最終工程、端金で圧着。接着が完了したら、鉋,サンダーでしっかりと目払いして表面が滑
らかになるまで丁寧にサンドペーパーで研きます。
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オイルフィニッシュ仕上げ(エボニー)としましたが、やはり仕上がりはプロのようには行きません。
ターミナル,内部配線,吸音材(適宜),ユニットを取り付けて完成です。
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4.調整
鳴らし始めは固めで情報量が少ない感じでしたが、ペーパーコーンの繊維がほぐれて、エージング
が進むにつれて、情報量はどんどん増えて繊細感が出てきます。当初、吸音材は底面にのみ、ニード
ルフェルトを敷いただけでしたが、徐々に歯切れの悪さが目立ち始めました。特にピアノの特定の周
波数帯域でモ〜ンという篭ったような不自然な響きが乗るようになって来ました。エンクロージャ側
面の並行面間で定在波が発生していると思われたので、側面部に手芸用の薄いフェルトを張り込んで
試したところ篭りが大きく改善し、音にメリハリと繊細感,立体感が出るようになりました。
調整成功です!吸音材の入れ過ぎは音の鮮度を損ないますので、このままの状態で暫く様子を見る
ことにします。
− 以上 −
ご参考
セッティングはリスニング距離との関係はありますが、間隔はやや広目で内振りにし、軽く見下ろ
す感じで顎の先で焦点を結ぶようにしてやると適度に音像密度が高まり良い感じです。
下記は拙宅での設置状況ですが、SP間隔は約1.8mで距離は2.3m程度です。設置位置がや
や高いため、少し斜め下に向けてソファに深く腰掛けた時に顎の先で焦点が結ぶ感じにしています。