つばめ燕三条税理士法人燕事務所　真島一誠四十年以上にわたりＴＫＣ一筋職員と関与先の安心のため法人を設立 ── 燕三条税理士法人は、新潟でも歴史ある事務所の一つとうかがっています。真島一誠（ましま・いっせい◎63歳）がわさわ会員（関東信越会新潟支部）／椛澤綾子会員ですが、長男なので地元に戻る東京の羅紗問屋で勤めていたのて、商業高校卒業後に一年だけ真島　昭和四十五年三月のことです。洋服屋さんになりたく ── 真島先生の入所はいつ頃でしたか。ある事務所だと思っています。会員事務所としてもかなり歴史二七八番目の入会だったそうです。ＴＫＣ入会は昭和四十五年九月のことで、全国で所が設けられました。坂上先生のＴＫＣらくして、増設事務所としてこの燕事務に開設したのが昭和三十二年。その後しばが税理士登録し、事務所を新潟県三条市たとえ失敗したとしても、やらなければてやってみなさい、やってみれば分かる。務でも、何でもまずは積極的に食いついに残っています。ＴＫＣシステムでも会「ダボハゼでいいんだわ」という言葉が胸平成七年に税理士登録。登録後、ＴＫＣのメンバーでお互いに励まし合いながらが、税理士事務所の職員でつくる勉強会真島　五勝一五敗（笑）。そんなに長く頑張る人はあんまりいないと思います ── 税理士への道は順調でしたか。写伝票の時代からずっとＴＫＣ一筋です。先生がＴＫＣに入会されたので、三枚複年以上になります。入所半年後の頃に坂上平成7年税理士登録、同年TKC入会。平成20年6月燕三条税理士法人設立、従たる事務所に。TKC関東信越会新潟支部支部長。 ■燕三条税理士法人燕事務所住所：新潟県燕市水道町2丁目8番25号電話：0256-63-2369 URL：http://www.tubame.bz/ 関与先件数220件（法人・個人）。税理士2名、職員数12名（巡回監査担当者10名）。真島　法人の代表である坂上富男先生ことになりました。父親の縁で失敗もできないんだ ── 。こういう積極に入会して東間清吾先生から言われた頑張りました。その後無事に合格できて、この燕事務所に入ってもう四十翌月巡回監査率一〇〇％を維持し続け、ＴＫＣシステムの徹底活用とＫＦＳの一体推進を重視し、関与先へのきめ細かなサービス提供を心掛けているという真島一誠会員。職員時代から四十年以上「ＴＫＣ一筋」という真島会員に、自計化推進やペーパーレス化に向けた取り組みなどをはじめ、「巡回監査＋ＴＫＣシステム」を軸にした事務所経営の手法をお聞きした。巡回監査をベースに税理士業務を徹底し地域社会へ貢献する会員事務所訪問 46 税理士業務で会員事務所訪問人化して本当によかったと思います。もらいました。椛澤さんの入所を機に法相談したら、「良それでセンター長にがわさわい方がいますよ」と椛澤さんを紹介して関与先はなおさら不安なはずなんですね。も、職員の私が不安に思うくらいだからんだろう」と不安を感じていました。で「うちの事務所も万一の時にはどうなるたわけです。税理士は一身専属ですから、真島職員時代に、職員仲間の会があって、時々事務所の名前が変わる人がい ── 平成二十年六月に税理士法人を設立されていますね。から事務所を任されるようになりました。その後、燕事務所をまとめていた先輩が定年退職されたので、平成十六年三月的な姿勢が大事なんだと教わりました。いる経営者は多いのかもしれません。ました。事務所経営の安定性を重視してお願いしたいんだ」というご相談もありは至りませんでしたが、「税理士法人に安心してくれていると思います。関与に続できる。職員も関与先も、ものすごくあっても椛澤さんがいるから事務所は継わけではないのですが、万が一私に何か真島　税理士法人にする前から二事務所体制だったので実質的に何か変わった拍子にお話が進んでいきました。に話をしたんです。そうしたらとんとんの事務所で働いてみたい」とセンター長と思いました。それでその場で、「ＴＫＣ界のお話みたいで、「ＴＫＣってすごいな」ＯＭＳを見せてもらった時はもう別の世に行かせてもらったりしていたんです。椛澤　ＴＫＣの電子申告セミナーに参加したり、知り合いの会員事務所に見学 ── ＴＫＣとの出会いは？務所の都合でできなかった」ということに決めました。そのために、まずは「事平成十六年に先輩から事務所を引き継いだ時、「巡回監査率一〇〇％」を目標大前提になるわけですからね。のはやっぱり巡回監査。すべての業務の針にしています。中でも、重視している準業務として例外を作らない」ことを方真島　ＴＫＣの先進事務所を参考にしながら、基本的に全部推進。「すべて標 ── いずれも高い数字ですが、重視されているのはどんな点でしょうか。で、関与先が紹介されました。『中小会計要領に取り組む事例六五選』げさまで、中小企業庁から出されている適用企業は現在一四九社あります。おか二十五年一月から一斉に適用を開始して、付は二一七件。「中小会計要領」は平成五件、ＦＸシリーズは一九一件、書面添は一〇〇％、継続ＭＡＳ導入件数は一六椛澤私は以前、他社システム利用で、関与先の証憑書類を全部預かってくる事をなくそうと思い、翌月末に集中していた巡回監査の日程を分散させました。それから年一関与や「二カ月に一回でいい」という関与先に対して、事務所の方針ししました。たいていは月次関与に切りを理解していただくために膝詰めでお話 ── 燕事務所のＫＦＳ実践状況等について、現在の状況を教えてください。けない場合は商工会議所に紹介するなど替わりましたが、どうしても理解いただ真島　関与先件数は二二〇件で、ほぼすべてが月次関与です。翌月巡回監査率監査日を分散させ月次関与に統一繁忙期でも巡回監査率は一〇〇％！務所で勤務していました。当時は七～八正もしょっちゅう。決算間近に宅急便で届く資料にはたいてい不備があるので電話で問い合わせるのですが、「一年も前のことは思い出せない」「資料は残ってない」と言われる。時間も労力もかかるので、「このやり方どうなのかな」と。 TKC 2014・5 47 種類の会計ソフトを使っていて、遡及訂地域社会に積極的に貢献するてくれればいいなと割り切っています。そこで社長が気付いん言われると思う。でも同じことをたぶしたが、その事務所務所に移っていきまった関与先が他の事最近も「中小会計要領」の適用を嫌がいということです。するべき経営ではなで、もううちに依頼体が問題だと思うのい企業があること自に月次関与ができな会員事務所の関与先もそも私たちＴＫＣていきましたね。そして、円満に解消しそのほうが双方にとって幸せですよね。お互いに利口になったというか（笑）。に行ってもらっていたのですね。だからいて、そのたびに社会保険事務所に取り二月末までとしているのは、一月に届く源泉徴収票をなくしてしまう関与先がったいないから、早く帰れと（笑）。時で皆帰宅します。特に冬は暖房費がも外の時期に残業は一切なく、定時の十七半までの残業を認めていますが、それ以す。一月十六日から二月末までは十八時確定申告を終わらせる体制ができていま用意していただいて、原則二月末までで査ができる。関与先にも一月中に資料をだから繁忙期の二月でも一〇〇％巡回監おかげで現在はほとんど月次関与になりましたから、特殊業務がないんです。と思います。ある。訪問するというのは大事なことだそれから、当時は「ＰＸ２を自計化推進の起爆剤に」というＴＫＣの支援策も弾力的な金額の運用に変えました。ンタル料＋顧問報酬」をセットで考えるうしたら推進できるかを皆で考えて「レ的に推進するようになったのは平成十一小林事務所内では平成五年頃から自計化推進の話は出ていたのですが、本格職員の小林くんが頑張ってくれました。推進への意識が高まりました。この時はＦＳ作戦もあって、事務所全体で自計化もらって、自計化推進を決意。第一次Ｋもう手書きの時代じゃないと気付かせてすよ。確かに自分でも読めない（笑）。な字で書いてくれんか」と言われたんででも、税務調査で「真島さん、あんたも忙しいとは思うけど、もうちっと丁寧相手のあることだから。システムの組み合わせや料金を柔軟に提からシステムを提案し、企業に合わせてえて、給与計算や販売管理といった側面あったので、関与先のニーズを第一に考年頃からだったと思います。この時、ど ── 関与先数にこだわってはいないと。「立ち上げ専任者」が全関与先を支援一〇〇社達成を餃子一〇〇個でお祝い三十分以内で行けるところが中心。近い ── ＫＦＳの推進はどのように取り組んできましたか。もう一つの工夫は、立ち上げ支援担当者を巡回監査担当者と別にしたことです。っていきました。示。この方法で、自計化率が徐々に上が真島　継続ＭＡＳと書面添付は事務所側で「やろう！」と決めたらできること巡回監査担当者はＯＡコンサルタント研方が関与先に何かあった時にすぐ駆けつ簡単に共有できますが、やっぱり直接おだけれども、ＦＸ２は難しかったですね。ディスプレイやメールもあるので情報はけられますから。いまの時代、リモート会いしないと分からないことはたくさん真島　はい。事務所からあまり遠いところはお断りしていますしね。結果的に燕事務所の皆さん。真島会員の隣が社員税理士の椛澤綾子会員、３列目の一番左が自計化推進を担当した小林国男氏。 48 会員事務所訪問思います。当時ＳＣＧサービスセンターをとれるようになったのは大きかったとって、関与先と密なコミュニケーション定のレベルで立ち上げができるようにな専任で担当しました。おかげで、ある一関与先の立ち上げ支援と初期指導を私がにあたっては燕事務所と三条事務所、全修を受講しているのですが、ＦＸ２推進成。皆で餃子を食べてお祝いしました。弾みがつき、平成十七年に一〇〇社を達緒に開催して皆で推進する体制ができてした。定期的な所内研修をセンターと一よう！」という企画にして盛り上がりま〇〇社達成したら、餃子を一〇〇個食べすることになったんです。事務所でも「一らが早く一〇〇社を達成するか対抗戦をこの会社では、私の巡回監査が終わると従業員皆に号令をかけて、全員で私の従業員も五人に増えています。いまでは黒字に転換し、売上が前年の倍、報酬もとれないくらいだったのですが、先は、設立当初は社長一人で始めて役員椛澤　つくづく毎月の巡回監査って大事なんだと感じます。ある製造業の関与お伺いしている良さだと思います。変動はあまりないですね。これは月次でいう営業会議がその場で始まるんです。うしたらもっと利益率が上がるのか」と話を聞いてくれるんですね。そして、「どちなみに中野先生との対抗戦はうちが勝ちました。ここは大事なところね（笑）。巡回監査が終わると全員が集合して営業会議が始まるが職員の情報共有のための会を立ち上げてくれて、提案時の話法やデモの仕方など、他事務所の推進ノウハウを勉強させてもらったことも推進に大きく役立ちましたね。前月の業績が黒字だと、営業会議兼祝勝したい」という大きな夢を語ってくれまをされている。今年のお正月には、社長会みたいになって、とても楽しんで経営 ── 関与先さんはどのような業種が多いのでしょうか。した。社長自身も以前と比べて明らかに真島燕市は金属洋食器から始まったものづくりの地域なので、関与先も製造変わったと思います。真島　あるおばあちゃんは、伝票を何枚も書いて腱鞘炎だったそうです。それ業に関連する企業が多いですね。その周喜んでもらえたね。「うちは伝票やめたが、「自計化したら腱鞘炎が治った」とで。お前さんとこは？」なんて関与先同辺の卸売業や金属金型メーカー、最近はから贈られる「ＦＸ２一〇〇社達成記念」すがにリーマン・ショック後は五五％く真島六三％ですが、関与先のことを考えるとまだまだだと思っています。さ真島　よく「『老・壮・青』がそろっている」なんて言われます（笑）。私も ── 職員さんの年齢層の幅が広いと感じました。失敗しても「明るく起き上がる」「老・壮・青」皆で助け合う事務所が「五年後をめどにジャスダックに上場士の話で推進が進んだ部分もあります。サービス業が少しずつ増えています。の盾が飾ってあった。二人して目を丸くらいまで下がりましたが、こういう大き ── 直前期の関与先さんの黒字割合はどのくらいですか。ただ、二事務所で五十件を超えた平成十三年頃から推進件数が伸び悩んだんですね。ある時、中野亘先生（現ＴＫＣ関東信越会総務委員長）と一緒に先進事務所のして、「一〇〇社、一緒に頑張ろう！」な外部環境の変化を除けば、黒字割合の小湊昭事務所に見学に行ったら、ＴＫＣと奮起しました。そして二事務所でどち TKC 2014・5 49 人の方が多いけど、他事務所で勤務しては問わないですね。いまは新卒で入ったかけていますが、会計事務所経験の有無に進んでくれればいい。募集は受験校で務所に入ってから皆となじんで同じ方向 ── 採用時の基準はありますか。真島特にないんです（笑）。優秀な人を採用するのも大事ですが、事す。良い事務所になっていると思いまそれでも結果的に年齢バランスの定期採用は基本的にはありません。出てから順次補充しているので、していく人が多いですね。欠員がたが、七十歳前後で自主的に退職図ることに。定年制も廃止しまし金共済に加入して、一層の充実をして以後の退職金は中小企業退職支払いました。そ法人化に伴い、退職金を一度皆に格者は五名。あと中級一科目を残していいます。現在、巡回監査士五名、中級合回監査士研修については全員参加として研修は基本的に希望制ですが、中級・巡積極的に研修に参加してもらっています。員研修の合格者です。ですから職員には、真島　職員時代、私もＴＫＣの職員研修に参加していましたし、第二期上級職いてあって、一日の活力になりますよ。皆で唱和しています。結構良いことが書人会発行の『職場の教養』という冊子をへの加入をきっかけに、毎日の朝礼で法を大事にしています。だから倫理法人会かわいそうでしょう。皆が助け合う環境を辞めざるを得なくなる……。それではいと、その人は孤立してしまって事務所明るく起き上がるというか（笑）。でなえるし、なんとかしようと皆がまとまる。どうすればいいかと再発防止策を話し合有するんです。そうすると、じゃあ次は ── 定着率の高さの秘訣は何でしょう。真島誰でも失敗することがありますよね。その失敗例を皆に公開して情報共まずは給与計算をＰＸ２に、請求業務をＦＭＳに、事務所の経理処理をＦＸ２事務所の合理化を始めたんです。思って、ペーパーレス事務所を目指して、所が手書きというのはおかしいだろうと真島　ペーパーレス化は頑張りましたね。関与先に自計化を提案していて事務 ── 事務所内にモノが見あたりません。かなりすっきりしていて、驚きました。巡回監査支援システムの徹底活用ですっきりオフィスへ大変身！その積み重ねが大事なんだと思います。さいことの提供がものすごく喜ばれる。なります。些細なことですが、結局、小ること。これで保存場所が分かりやすくＵＳＢフラッシュメモリの名前を変更す改善しました。関与先に普及したのは、る機能が増えていって、相当業務効率がデータ連携するなど。事務所全体で使えで「手形管理」をしていれば科目内訳とて教えてもらっています。例えばＦＸ２ソコンの意外と知られていない機能、知いた人もいるし、厳しい基準を設けて最る人が一名。皆頑張ってくれています。含めて長く働く人初から間口を狭めることはしないようにレス環境を実現するにはどうしても職員へと移行していきました。ただペーパーっていると便利なことを「小ネタ」とししています。私が若い頃は職員の入れ替実務面では、月に一回担当ＳＣＧに来てもらって「ＴＫＣシステム研修」を開の意識改革が必要だったので、見えるとが多いですね。わりもありましたが、補充で採用するよ催しています。ここでは、システムやパ ── 研修についてはいかがですか。うになってからはほぼなくなりました。すっきりと整理整頓されている1階のオフィス。壁には「唯一外せなかった」（真島会員）という飯塚毅全国会初代会長の写真のみ。お客様の訪問がすぐ分かるよう、机は玄関の方を向いている。 50 会員事務所訪問広げていきました。何年も使っていない次は自分たちの机の上、それから机の引き出し、書棚、金庫の中……と範囲をまで外してしまいました。は壁にモノを貼らないようにして、時計ころから少しずつ整理整頓を開始。最初ラガラになりました。それでも、もっといます。おかげで事務所二階の書庫がガでの出力・保存を極力しないようにしてＦＡＸも掲示板やサーバーを活用し、紙てデータ化して管理・保存しています。を活用して、決算関係書類をはじめすべと思われます。しベルの会員事務所＋」。「標準的なレたら、評価は「Ｃてやってみ楽しみにし現状分析をなったり、気付いと問題の先送りにかし、ややもする紙を減らせるんじゃないかと模索中です。そろばんとか結構いろいろなモノが出てきましたよ（笑）。それで、不要なモノは捨てる、事務所にモノを残さない、という方針で進めていったんです。面白いれが……」と書いた時には差をつけ ── お二人の、今後の抱負を教えていただけますか。っていたんだけれど（笑）。現状がうま「凡事徹底」を大事にし続け最も身近で頼りにされる存在に椛澤　後継者が最近入社した会社の社長から、後継者教育の一環として「何かくいっているからこのままでいい、といもので、モノがないのがだんだん快感にや保存方法を提案してきたとか、関与先困ったことが起きたら必ず燕三条税理士うわけではなくて、事務所の将来のためされてキレイになっていくと、今度は関与先のことが気になる。書類の管理方法てある。自分では結構頑張っていると思られたりするおそのトイレを掃除してきたという職員も出法人に相談するように」と一番に伝えたには継続的な改善を重ねる必要があるんなってくるんですよ。事務所が整理整頓てきた（笑）。良いことだと思います。と聞いて、非常にうれしく思いました。だな、と改めて感じました。うちの事務所は凡事徹底というか、何より基本を大事にしている事務所だと思おかげで定期的な職員採用や潜在的な顧客に対する情報発信、関与先拡大に向それから巡回監査支援システムの活用もペーパーレス化に一役買いました。それまでなかなか浸透しなかったのですが、います。これからも巡回監査を徹底して、事務所経営の課題が明確になりました。紙ベースの「巡回監査報告書」の使用を止でありたい。どんなことでも一緒に向きもっともっと事務所をよくして、関与先けた積極的な活動など、漠然としていたい」と言っていたのですが、決算が終わあっていけるような強い信頼関係を、事に良いサービスを還元して地域社会に貢関与先から最も身近で頼りにされる存在ったら自動的に支援システムを使わざる務所全体で構築していきたいですね。めたんです。字の上手な人は「手書きがいを得ない環境にしました。退路遮断した（ＴＫＣ出版　篠原いづみ）献していく「総合力」ある事務所をつくおかげで、ＤＡＩＣ２も含め全ＴＫＣシっていきたいと思います。で事務所の経営品質を見直してみました。真島今回の取材が良い機会だと思い、『会計事務所の経営品質向上マニュアル』ステムが支援システムにのりました。いまでは「楽々ライブラリ」と複合機閑静な住宅街にある燕事務所。周辺には金物製造の製作所も多数存在する。 51