確率・統計 A 第 3 章 平均と特性量 (Part 1) 3.1. 平均の定義 講師:栁原宏和 E-mail: [email protected] Web: http://www.math.sci.hiroshima-u.ac.jp/~yanagi/ProbStatA.html 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.1 平均の定義 (離散型) (1/2) 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.2 平均の定義 (離散型) (2/2) 定義 3.1. 確率変数 X のとりうる値が有限個 であるとき, 単純確率変数と呼ばれる. とり 得る値の集合を D={x1,…,xn} とするとき, n n j =1 j =1 m = E(X ) = å x j P(X = x j ) = å x j f (x j ) を X の平均または平均値 (mean),あるい は期待値 (expectation) という. ここに, f(x)=P(X=x) である. 定義 3.1. (続き) 同様に, 離散型確率変数の 場合で, とり得る値の集合が可算集合 D={x1,x2,…} のとき, X の平均は ¥ ¥ j =1 j =1 m = E(X ) = å x j P(X = x j ) = å x j f (x j ) として定義される. この場合, 右辺の級数が 絶対収束するとき, すなわち, å ¥ j =1 | x j | f (x j ) < ¥ のとき, X の平均は存在するという. 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.3 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.4 平均の定義 (連続型) 特性量の必要性 確率変数Xの確率分布PXとは PX(A)=P(XÎA), AÎ によって定義される確率測度PX のことである. 確率分 布PXは分布関数 FX(x)=PX((-¥,x])=P(XÎ(-¥,x]) によって一意的に定まることが知られている.また, 離 散型あるいは連続型の場合には,その確率密度関数 によって確率分布が定まる. しかし, 異なる分布を比較 したり, 分布のだいたいの様子を表すためには, その 分布の特徴を表すようないくつかの量が重要となる. 最も重要な量は平均である. 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.5 定義 3.2. 確率変数 X は連続型とし, その確率密 度関数を f(x) とする. このとき, m = E(X ) = ò ¥ -¥ xf (x )dx を X の平均または平均値 (mean),あるいは期 待値 (expectation) という. 右辺の積分が絶対 ¥ 積分可能であるとき, すなわち, ò-¥ | x | f (x )dx < ¥ のとき, X の平均は存在するという. 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.6 平均の例 1. 確率変数Xの確率分布がB(1,p) (XがB(1,p) に従う or X~B(1,p)) のとき, E(X)=p. 2. 確率変数Xの確率分布がB(n,p) (XがB(n,p) に従う or X~B(n,p)) のとき, E(X)=np. 3. 確率変数Xの確率分布がU(a,b] (XがU(a,b] に従う or X~U(a,b]) のとき, E(X)=(a+b)/2. 4. 確率変数Xの確率分布がN(m,s2) (Xが N(m,s2) に従う or X~N(m,s2)) のとき, E(X)=m. 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.7 3.2. 基本的性質 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.8 練習問題1 確率変数の関数の期待値 (1/2) X~U(0,1]のとき,Y=X2の平均を計算して みよう. ìï1 (0 < x £ 1) Xの確率密度関数は fX (x ) = ïí ïï0 (上記以外) ïî ìï0 (x £ 0) ïï ï 分布関数は FX (x ) = P(X £ x ) = ïíx (0 < x £ 1) ïï ïï1 (x > 1) ïî 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.9 練習問題1の解法 1 ìïå ¥ x f (x ) (離散型) ï j =1 j j 確率変数の期待値 : E(X ) = ïí ¥ ïï xf (x )dx (連続型) ïî ò-¥ では E{g(X )} は ? 定義に従えば, 確率変数Y=g(X)の確率関数または確 率密度関数 h(y) を求め, ¥ ì ï y h(y j ) (離散型) å ï j =1 j ï E{g(X )} = E(Y ) = í ¥ ï yh(y )dy (連続型) ï ï î ò-¥ を計算すればよい. 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.10 確率変数の関数の期待値 (2/2) 定理 3.1. 確率変数 X が離散型のとき, そのとる 値を xj,j=1,2,… とし確率関数を f(xj) とする. ま た X が連続型のとき, その確率密度関数を f(x) とする. このとき ¥ ì ï å j =1 g(x j )f (x j ) (離散型) ï ï E(g(X )) = í ¥ ï g(x )f (x )dx (連続型) ï ï ò-¥ î 注 3.3. この定理は, g(X) の平均が本来 g(X) の分布か ら求められるべきであるが, X の分布から求められる ことを述べている. 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.11 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.12 練習問題1の解法 2 定理 3.1 の多変量版 定理 3.2. n 次元確率ベクトル X が離散型のと き, とりうる値を x1,x2,… とし確率関数を f(xj) とする. また, X が連続型のとき, その確率密 度関数を f(x) とする. このとき, ¥ ì ï g(x j )f (x j ) (離散型) å ï j =1 ï E{g(X )} = í ¥ ¥ ï g(x )f (x )dx (連続型) ï ï îò-¥ ò-¥ 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.13 変数変換後の確率密度関数 (1/2) 練習問題2 X1とX2が独立でN(0,1)に従うとき, Y1=X1+X2 とY2=X1-X2 の同時確率密度 関数を計算してみよう! X1とX2の同時確率密度関数は f (x 1, x 2 ) = 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.14 1 1 exp(-x 12 / 2) ⋅ exp(-x 22 / 2) 2p 2p 定理 3.3. n 次元確率ベクトル X は連続型で, 確率密度関数 f(x1,…,xn) をもつとする. また, X のとりうる値は領域 ={x;f(x)>0}Ìn であるとする. x=(x1,…,xn)¢ から y=(y1,…,yn)¢ への変換 ì ï y1 = u1(x ) = u1(x 1,..., x n ) ï ï ï ï í ï ï ï y = un (x ) = un (x 1,..., x n ) ï ï î n は領域 を領域 に写し, 次の性質 (1)~(3) をみたすとする. 1. 1-1 である. 2. 逆変換 yx: xi=vi(y)=vi(y1,…, yn), i=1,…,n は C1 クラスである. 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.15 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.16 変数変換後の確率密度関数 (2/2) 練習問題2の解法 ¶x 1 / ¶y1 ¶x 1 / ¶yn 3. ヤコビ行列式 J = ¶x n / ¶y1 ¶x n / ¶yn の値が任意の yÎ に対して0でない. この変換により定義される確率変数を Yi=ui(X)=ui(X1,…,Xn), i=1,…,n とする.このとき,Y=(Y1,…,Yn)¢ の確率密度関数は次式で 与えられる. ì f (v1(y ),..., vn (y )) | J | (y Î ) ï ï h(y1,..., yn ) = í ï 0 (y Î c ) ï ï î 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.17 期待値に関する関係式 (1/2) 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.18 定理3.4の証明 定理 3.4. 確率変数 X と Y は平均を 持つとする. 1. 任意の定数 a に対して E(aX)=aE(X) 2. E(X+Y)=E(X)+E(Y) 3. X£Y E(X)£E(Y) 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.19 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.20 期待値に関する関係式 (2/2) 定理3.5の証明 定理 3.5. 確率変数 X と Y は平均を持ち 独立とする. このとき E(XY)=E(X)E(Y) 注3.5. 定理3.2と定理3.5を用いると, 確率 変数XとYが独立とすると E{g(X)h(Y)}=E{g(X)}E{h(Y)}. (gとhに少し仮定が必要. また, E{g(X)}と E{h(Y)}が存在することも必要) 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.21 確率・統計A,第3章 平均と特性量 Part 1: P.22
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