Enforcement Cloning System pKF3/E.coli TH2 Competent Cells

製品コード
6086/9056
Enforcement Cloning System pKF3
(製品コード 6086)
E.coli TH2 Competent Cells
(製品コード 9056)
説明書
Enforcement Cloning System pKF3 は Hashimoto-Gotoh,T. らの enforcement cloning 法をシステム化し
たもので、特殊なベクターと大腸菌宿主を用いることで外来遺伝子の挿入されたクローンのみが生育し
てくるという非常に簡便なクローニングシステムです。これにより従来のような煩雑な組換え体の選別
が不要で、遺伝子ライブラリーの作製、PCR 産物のサブクローニング等の用途に威力を発揮します。
I.Enforcement Cloning System の原理
(A)
rpsL + 遺伝子は、タンパクの生合成を行な
rpsL うリボゾーム粒子を構成するタンパクの 1
つである S12 をコードする遺伝子です。ス
トレプトマイシン(Sm)はこのタンパクに
結合し、タンパク合成の複合体形成反応を
E. coli
Host genome
阻害し、生育阻害を引き起こすことが知ら
れています。この rpsL 遺伝子に変異を持つ
大腸菌(rpsL -)は Sm 耐性を示します。
(A)
しかし、これらの rpsL 遺伝子の変異は野
Sm 耐性
生型遺伝子に対して劣性で、Sm 耐性宿主
(rpsL -)であっても rpsL + 遺伝子を持った (B)
プラスミドベクターなどにより形質転換し、
rpsL +
rpsL 正常な S12 リボゾームタンパクを発現させ
+
ることにより Sm 感受性となります。
(B)
また、プラスミドベクターの rpsL 遺伝子
中 に 外 来 遺 伝 子 を 挿 入 し、Sm 耐 性 宿 主
Transform
(rpsL -)を形質転換すると、プラスミドベ
Plasmid Vector
クターの rpsL 遺伝子からは正常な S12 リ
ボゾームタンパクが発現しなくなるため、
rpsL rpsL +
形質転換体は Sm 耐性となります。(C)
このことを利用し、クローンのスクリーニ
ングが不要となったクローニングシステ
ムが Enforcement Cloning System pKF3 で
す。つまり、rpsL 遺伝子とクロラムフェ
Sm 感受性
ニコール(Cm)耐性を持つプラスミドベ
クター pKF3 の rpsL 遺伝子中のマルチク (C)
rpsL +
ローニングサイトに外来遺伝子を挿入し、
rpsL - 宿主(Sm 耐性)である E.coli TH2
+
Competent Cells を用い形質転換を行ない、
Cm と Sm を含むプレートに生育してくる
挿入したい外来遺伝子
コロニーを選択するだけで容易に外来遺伝
子が挿入されたクローンを得ることができ
ます。
rpsL -
+
Transform
rpsL -
Sm 耐性
Plasmid Vector
II.製品の内容
Enforcement Cloning System pKF3 はプラスミドベクター pKF3 DNA と E.coli TH2 Competent
Cells より構成されています。
Enforcement Cloning System pKF3(10 回用)(製品コード 6086)
pKF3 DNA(0.5 μg/μl)
20 μl
E.coli TH2 Competent Cells
100 μl × 10
pBR322 DNA(0.1 ng/μl)
10 μl
SOC 培地*
1 ml × 10
E.coli TH2 Competent Cells(製品コード 9056)
E.coli TH2 Competent Cells
100 μl × 10
pBR322 DNA(0.1 ng/μl)
10 μl
SOC 培地*
1 ml × 10
*:SOC 培地の組成:2 %
0.5 %
10 mM
2.5 mM
10 mM
10 mM
20 mM
Tryptone
Yeast extract
NaCl
KCl
MgSO4
MgCl2
Glucose
III.保存
pKF3 DNA:- 20 ℃
E.coli TH2 Competent Cells:- 80 ℃
IV.製品説明
< pKF3 DNA >
pKF3 DNA は pHSG399 由来のクロラムフェニコール耐性遺伝子と trp プロモーター / オ
ペレーターの下流に合成 rpsL 遺伝子を結合させた遺伝子をもつ enforcement cloning 用
に構築されたプラスミドベクターです。
合成 rpsL 遺伝子上にはアンバー変異と 39 種類の制限酵素切断部位をもつマルチクローニ
ングサイトが設計されており、より多くの制限酵素に対応することができます。また、マ
ルチクローニングサイトが長いため 7 種類のシーケンスプライマーが設計されています。
4
T1
o
c
I-E
o
Nc u II
Pv p V an II
Ns c I-B
I)
Sa I-(Eae )
I
l
Ba I-(Ava
Xh o
I
Sph
N de I
Mlu I
Bst1107 I-(Acc I)
EcoR I
Aor51
HI
Fsp I
Hin
d II
Sp
I
lI
Bs
Bs tP I
pM -Ec
oO
I
65
I
pKF3 のクローニングサイト図
sa
-I (D
I)
r
ambe
rps
L +4
87
Ps
h
(S B I
p
Hp e I)
(S a I
p
e
I)
ori
LI
0/2246
POtrp
2.0
Apa
pKF3
2246 bp
I
1.5gl E I
H
am
tI
s
I-P
)
eI
Ea
I-(
3
e8 ※I
52
s
S a Eco
Fb ot II)
N l II
va
Bg a I-(A
Sm H I
m
Ba
I
I
Kpn
)
e
(Dsa I
Nh
Sac IIXba I
Acc III
0.5
Ava II
Sca I
Sal I-(A
cc I)
Ssp I
Cla ※
I
Pvu
I
Stu
I
t-5
ca
1.0
※ Fba I, Cla I は dam methylase の影響を受ける。
pKF3 Primer F1
PshB I
(Spe I)
(Dsa I)
EcoT14 I
Nco I
Hpa I
Pvu II
Ban II
Sac I
Nsp V
pKF3 Primer F2
(Eae I)
Bal I
(Acc I)
Bst1107 I
(Ava I)
Xho I
Sph I
Nde I
Mlu I
Fsp I
EcoR I
Aor51H I
(Spe I)
Hind III
BstP I
EcoO65 I
Spl I
pKF3 Primer R4
Sse8387 I
pKF3 Primer F3
Pst I
BspM I
Fba I※
(Eae I)
Not I
Bgl II
Eco52 I
(Ava I) BamH I
Sma I
pKF3 Primer R3
(Dsa I)
Sac II
Kpn I
Xba I
Acc III
Ava II
(Acc I)
Sal I
Pvu I
Cla I※
pKF3 Primer R2
Stu I
Nhe I
pKF3 Primer R1
●( )内の酵素は pKF3 DNA を複数カ所切断する。
● * 印の酵素は dam methylase の影響を受けるため、dam+ の DNA は切断されない。TaKaRa pKF3
DNA(製品コード 3100)は、dam によりメチル化されている。
関連製品
pKF3 Sequencing Primers:
pKF3 Primer F1(製品コード 3890)
pKF3 Primer F2 *
pKF3 Primer F3 *
pKF3 Primer R1(製品コード 3893)
pKF3 Primer R2(製品コード 3894)
pKF3 Primer R3 *
pKF3 Primer R4 *
5' - GTGAG CGAGG AAGCG GAAGA A - 3'
5' - TAAAG TGGCC AAATC TAACG - 3'
5' - TGCAG GAACA CTCTG TTATC - 3'
5' - GATAA TAAGC GGATG AATGG CAGA - 3'
5' - GGACG TTTTA CACCG TATTT C - 3'
5' - CAGGT TGTGT CCTTC ACCAC CTAT - 3'
5' - TTCGG TTTCT TCGGA GTAGT AGTG - 3'
150 pmol
150 pmol
150 pmol
*カスタム合成注文にて承ります。
詳細に関しましては、弊社ドラゴンジェノミクスセンターまでお問い合わせください。
(TEL. 077-543-7331、FAX. 077-543-7225)
< E.coli TH2 Competent Cells >
TH2 株は遺伝子組み換えの当初より汎用され、遺伝的形質も安定した HB101 株由来で、
HB101 の trp リプレッサータンパクをコードする遺伝子 trpR に変異(trpR 624)を持った
株です。rpsL 20、supE 44、trpR 624 であり、pKF3 を用いた enforcement cloning に適し
た host strain です。
・ GenotypesupE 44 , hsdS 20(r B - , m B -), recA 13 , ara- 14 , proA 2 , lacY 1 , galK 2 ,rpsL 20 , xyl- 5 ,
mtl- 1 , thi- 1 , trpR 624
・ 形質転換効率
1 ng の pBR322 DNA を用いて形質転換した場合、107 transformants/1 μg DNA
以上の効率が得られるよう調製してあります。
V.使用方法
(1) pKF3 DNA 約 1 μg を制限酵素で切断し、フェノール、クロロホルム抽出、エタノー
ル沈殿を行ない pKF3 DNA 制限酵素断片を回収する。
(2)
pKF3 DNA 制限酵素断片(35 fmol、約 50 ng)にインサート DNA(35 〜 350 fmol)を
加えた DNA 溶液を調製し、DNA Ligation Kit Ver.1、Ver.2.1(製品コード 6021/6022)
あるいは DNA Ligation Kit <Mighty Mix>(製品コード 6023)のプロトコールに従い
16 ℃、30 分間反応させる。
(3) 反応液の一部(20 μl 以下かつ 10 ng 以下)を使用直前に氷中で融解した E.coli TH2
Competent Cells 100 μl と 14 ml 丸底チューブ(ファルコン・ラウンドチューブ等)
中で穏やかに混和する。
(4) 氷中、30 分間放置する。
(5) 42 ℃ で 45 秒間インキュベートする。
(6) 氷中、1 〜 2 分間放置する。
(7) あらかじめ 37 ℃ に保存しておいた SOC 培地を最終 1 ml になるよう加える。
(8) 37 ℃ で 1 時間振とうする(160 〜 225 rpm)。
(9) L-broth プレート(クロラムフェニコール 12 μg/ml、ストレプトマイシン 50 μg/ml
を含む)に適当量*をまく。
*:直径 9 cm のプレートの場合、100 μl 以下にして下さい。
(10)
37 ℃ で一晩放置する。
製品に関する注意
1.コンピテントセルの運搬は、ドライアイス / エタノールに入れて行なってください。
2.14 ml 丸底チューブ(BD 社 Code 352059 または 352057 等)の他、1.5 ml マイクロ遠
心チューブを用いても形質転換は可能ですが、効率が若干悪くなることがあります。
3.100 μl のコンピテントセルを用いる場合、形質転換する DNA の量を、高純度なもので
10 ng 以下にしないと、効率は悪くなります。
4.スケール(コンピテントセルの量など)を変えたり、他のチューブを用いて形質転換
を行なうときは、最適の条件を検討する必要があります。(例えば、エッペンドルフ
チューブを用いるときは、42 ℃ で 60 秒間インキュベートしてください)。
5.SOC 培地の他、L - broth、φ b - broth でも構いませんが、若干効率が悪くなることが
あります。
・L - broth:10 g Bacto tryptone、5 g Bacto yeast extract、5 g NaCl/1 L water pH
を 1 N NaOH で 7.5 前後に調整し、オートクレーブする。
・φ b - broth:5 g Bacto yeast extract、20 g Bacto tryptone、5 g MgSO4・
7H2O/1 L water pH を 1 N KOH で 7.5 前後に調整し、オートクレー
ブする。
6.希釈の必要なときは、(7)で加えた培地で行なってください。
7.一度融解した Competent Cell を再度凍結保存することはお勧めしません。やむを得ず
必要な場合は、ドライアイス / エタノール中で凍結させ、- 80 ℃ で保存してください。
ただし、形質転換効率は 1 オーダー以上低下する可能性があります。
8.pKF3 plasmid を増やす際に配列の欠失や挿入変異が起こる場合があることが確認され
ていますので、できるだけ購入された pKF3 plasmid をそのままご使用ください。ど
うしても増やす必要のある場合は、クロラムフェニコールで選択をかけ、Sup free 株(例
えば MV1184 など)で増やすことは可能です。
VI.使用上の注意
Enforcement Cloning System において注意すべき点は exonuclease の混入です。特に pKF3 の切
断に使用する制限酵素の純度が非常に重要になってきます。
つまり、制限酵素に exonuclease が混入していると pKF3 の制限酵素切断末端より、exonuclease による消化が起こり、rpsL 遺伝子に deletion が生じて正常な S12 リボソームタンパクが発現
しなくなり、インサートが挿入されていなくても Sm 耐性としてコロニーを形成するため、バッ
クグラウンドとして insertion 効率低下の原因となります。
TaKaRa の制限酵素は、この pKF3 を用いた Enforcement Cloning System を利用した exonuclease の検出を QC に取り入れていますので、高い純度を保証しており、安心してお使い頂けます。
VII.参考文献
1)Toba-Minowa,M. and Hashimoto-Gotoh,T. (1992) Gene ,121. 25-33
2)Hashimoto-Gotoh,T. et al . (1993) Gene ,137. 211-216
VIII.関連商品
pKF3 DNA(製品コード 3100)
E.coli TH2 Competent Cells(製品コード 9056)
pKF3 Sequencing Primers(製品コード 3890/3893/3894)
IX.注 意
・本製品は研究用として販売しております。ヒト、動物への医療、臨床診断用には使用しないよ
うご注意ください。また、食品、化粧品、家庭用品等として使用しないでください。
・タカラバイオの承認を得ずに製品の再販・譲渡、再販・譲渡のための改変、商用製品の製造に
使用することは禁止されています。
200903