握力 (上肢筋力) 測定の目的 握力は、新体力テストなどにおいて、上 肢筋力を評価する代表的な項目として用 いられている。スポーツにおける握力の役 割は、ボール等を使用した投球動作、バッ ト、ラケット、クラブなどの用具を使用し た打球動作にある。また、格闘技における 対相手の保持や、器械体操の鉄棒などの把 握にも重要である。握力は、前腕屈筋群の 等尺性の最大筋力を評価している。 測定法 (1)計測前に、握力計の指針をリセット する(ゼロにする) 。 図2.測定時の姿勢 (2)第 2、3、4 指の近位指節間関節(第 二関節)が 90 度になるように、握り幅を (4)左右交互に2回ずつ計測を行い、3 調節ねじで設定する。 秒間で最大の力を発揮するように指示す 等尺性の筋力測定は、測定する関節角度 る。左右それぞれの最大値を代表値とする。 によって、発揮される筋力が大きく異なる ため、握り幅を正確に設定することが重要 である。 測定データの評価法 握力の評価は、JISS に来訪した選手にお ける握力の平均値と対比する。もし、過去 に測定したデータがあれば、筋力の推移に ついても検討する。また、体重当たりの筋 力が重要なスポーツであれば、絶対値だけ ではなく、相対値(体重割)の握力につい ても比較する。さらに、左右の握力を比較 することにより、左右差について検討する ことができる。 参照値には、性別と年齢(ジュニア 18 図1.握り幅の設定 歳以下、シニア 19 歳以上)によって分類 してあるので、対応するカテゴリーと比較 (3)測定時は、両足を肩幅程度に開き、 する。また、5 段階評価基準を用いて、選 直立姿勢にする。前腕を体側から離した姿 手の握力が、どのレベルにあるのか評価す 勢で、握力を計測する。 る。 まとめ 参照値 握力の測定は、握り幅の調整と測定時の (1)基礎データ 表1 握力 性別 カテゴリー シニア 男 ジュニア 女 測定人数(人) 690 平均値 56.4 ± ± 標準偏差 5.7 最大値 85.0 - 最小値 35.5 206 51.0 ± 5.0 71.5 - 33.0 シニア 375 38.9 ± 3.3 56.0 - 27.5 ジュニア 217 36.3 ± 5.5 47.0 - 14.5 (単位:kg) 立位姿勢を確認することが、正確な測定に は重要である。上肢を用いるスポーツであ れば、継続的に握力を測定することは、上 肢筋力の変化を評価することにつながる だろう。 (2)5 段階評価の基準 表2 握力 性別 カテゴリー 評価5 男 参考文献 女 シニア 70.7 ジュニア 63.5 シニア 47.2 ジュニア 50.1 評価4 65.0 58.5 43.9 44.6 評価3 59.3 53.5 40.6 39.1 評価2 53.6 48.5 37.3 33.6 評価1 47.9 43.5 34.0 28.1 (単位:kg) 1)日本体育協会監修・松井秀治編:コー チのためのトレーニングの科学、pp. 443-444、大修館書店、1996. 2)文部科学省スポーツ・青年局:新体力テ スト実施要項、p2、文部科学省
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