第Ⅰ部 基調報告① 韓国の有機稲作生産技術 イ・ヨン( LEE Youn) 1984~2013 農村振興庁 国立農業科学院 ブラント栄養、有機農業関連部門担当 2013~ 環境農業団体連合会 有機農業研究所 主席研究員 研究分野 有機農業システム、土壌と肥料管理 人類が農業を開始して以来、作物として稲を選択したことは農業の歴史上最も革新的で成 功的な事例の一つだ。アジアのような夏に雨が多いモンスーン気候で稲作は水中で育つこと が可能で、養分利用効率が高いという点でも畑作や家畜に比べて生産性の面で有利な つそ の 点がある。食糧生産が農業の主要な機能という点は過去も現在も変わりはないが、農業 が持 他の多様な機能が再び注目されている。特に稲作の場合、洪水調節機能、地下水涵養 機能、土壌流出防止の外にも最近は生物多様性の確保が多くの関心を集めている。 有機農業的な技術面から養分の循環は主要な原理の一つであるが、耕種農業や畜産が農家 単位に専門化された現実で農場単位で養分を循環することは難しい問題だ。 このような点 で畜産, 稲, 畑や果樹作物がバランスよく点在する村単位での養分循環は一つの代案になる だろう。 韓国で病害虫防除のための商業用有機農業資材は比較的高価な価格で販売されている。 したがって多い農家は自分たちで製造して利用する資材が多く、植物抽出物が主要な原料に なっている。 現在、一部の試験場ではこのような植物抽出物の効能に対して体系的な研究 が行われ、同時に生産性, 品質, 耐病性などを含めて有機農業にふさわしい稲品種を選ぼぶ 努力が進められている。 韓国ではカモ、米ぬか、ジャンボタニシなどが有機農業で除草目的に利用されてきたが、 現在は大部分の農民は利用が楽で効果が優れたジャンボタニシ利用の除草を好んでいる。過 去20年以上、ジャンボタニシを使用して環境に有害な事例は明かになっていないが、現在も ジャンボタニシに対する議論は終わっていない。 現在、ジャンボタニシに変わる除草技術 に関する研究が行われているが、緑肥・被覆と不耕起を組み合わせた技術だ。 大部分の研究結果は有機農業が慣行農業より生物多様性の面で有利だと述べているが、こ れに関連する政府支援はない。 ただ、NGOや農家単位で都市学生のための体験学習などの目 的に利用している現状だ。 有機稲作が持って来る生物多様性の増進を社会的価値や経済的 価値に計量化して消費者に知らせる努力が必要だ。 またまだ稲栽培ではより親環境的な技 術が持続的に開発されなければならないし、このような技術が農民に普及していく韓中日農 民たちの間の技術交流や協力が必要だ。 韓国の有機稲作の生産技術 村単位の養分循環 全南、潭陽(タムヤン)にある村では、村の前に27haの有機水田、里山の裾野には20haの有 機柿、そして約400頭の韓国伝統牛(無抗生剤認証)を飼育している。 秋の収獲前、田に大麦 を種蒔きし、稲のわらと春に収穫した大麦は牛の飼料として利用、家畜糞の堆厩肥は一部が 果樹園で使用されるが、それ以外は大部分は春に稲作のための養分として供給される。果樹 園はヘアリーベッチとライ麦で早生栽培と行うため、ヘアリーベッチから相当量の養分が供 給されている。 養分供給と雑草抑制のための緑肥の利用 まだ多くの農民たちが有機稲作で養分供給用に油粕を利用する場合が多いが、徐徐に緑肥 を利用する農家が増えている。政府の緑肥種子の費用補助が大きな役割を果たしている。 ヘアリーベッチ、ライ麦がよく利用されるが、南部地方では蓮華草が利用されたりする。緑 肥を利用して新たに開発された技術には 春に完全に育ったヘアリーベッチを倒して無耕起 状態で苗を植える技術だ。ヘアリーベッチが養分を供給してくれると同時に分解されるとき に発生する物質が雑草の発芽を抑制すると知られている。 作物保護 有機稲作で病害虫抑の制用に活用できる植物性資材にはトウキ、ニンニク、桂皮、ウコン、 イチョウの葉、センダン、クララなどがあるが、このような抽出物は地域試験場で効果が相 当部分検証されている。 環境問題 水田農業で発生する温室ガス問題はいつも論難になっているが、水田の嫌気的(酸素の少 ない)状態が亜酸化窒素(N2O)やメタン(CH4)を発生させる条件を提供するためだ。まだ韓国 では有機稲栽培と慣行稲栽培の温室ガス発生を比べた資料はない。しかし研究結果を通じて 農民たちに田に浅く(1~3cm) 水を入れることを勧めている。この方法は慣行方法に比べて温 室ガス発生を 70%位減すと知られている。 Nutrient cycling in a village scale Hairy vetch for nutrient and weed control
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