ヨーロッパ地域のHTA機関 (まとめ1/2)

2014/10/03
ヨーロッパ地域のHTA機関
(まとめ1/2)
組織名
英国
オランダ
スウェーデ
ン
ポルトガル
フランス
NICE
CVZ
TLV
INFARMED
HAS
専業
兼業
兼業
専業
9,000万SEK
(12億円)
3,000万ユーロ
(30億円)
700万ユーロ
(7億円)
兼業
形態と
予算規模
経済評価の
使用場面
6,600万ドル
(78億円)
承認後、公的医療制度償還の可否を判断する際に使用
価格設定
対象
DoHの決定
あったとき
外来・代替
無しの新薬
すべての
新薬
すべての
新薬
一部の新薬
推奨
分析手法
CUA
推奨なし
CUA
推奨なし
推奨なし
1
2014/10/03
ヨーロッパ地域のHTA機関
(まとめ2/2)
費用対効果
の閾値
ICERの
提示
ガイドライン
英国
オランダ
スウェーデン
ポルトガル
GBP2-3万
EUR4万
(400万)
SEK40万
(540万)
(3万ユーロ)
なし
あり
あり
あり
(数値明示) (数値明示) (数値明示)
なし
?
あり
(2006)
あり
(1998)
あり
(2011)
あり
(2008)
あり
(2008)
フランス
なし
アジア太平洋地域のHTA機関
(まとめ1/2)
組織名
形態と
予算規模
経済評価の
使用場面
カナダ
連邦
カナダ
ケベック
豪州
韓国
タイ
CADTH
INESSS
PBAC
HIRA
HITAP
兼業
兼業
専業
兼業
専業
2,200万ドル
(20億円)
1,200万ドル
(9.5億円)
1,400万ドル
(12億円)
1,700億ウォン
(120億円)
2,000万バーツ
(5,000万円)
承認後、公的医療制度償還の可否を判断する際に使用
(豪州PBAC・韓国HIRAは、ある程度価格へも影響力)
対象
ほぼすべて
の
新薬
すべての
新薬
すべての
新薬
新規有効成分
含む医薬品
高額な
医薬品
推奨
分析手法
推奨なし
(多くはCUA)
推奨なし
推奨なし
推奨なし
CUA
2
2014/10/03
アジア太平洋地域のHTA機関
(まとめ2/2)
カナダ
連邦
費用対効果
の閾値
カナダ
ケベック
なし
豪州
韓国
タイ
なし
なし
あり
(4万ドル)
(2-3千万ウォン)
(15-18万バーツ)
なし
範囲で表示
なし
数値で表示
あり
(2007)
あり
(2008)
あり
(2011)
あり
(2008)
(5-7万ドル)
なし
ICERの
提示
あり
ガイドライン
あり
(2006)
assessment? appraisal? decision?
3
2014/10/03
英国における意思決定
○効果はQALYで評価し、増分費用効果比を算出する。
○ 対象となった医療技術について,3パターンのいずれかが勧告される。
(1)使用を推奨する
原則3ヶ月以内に提供を開始する義務が発生する。
(2)使用を推奨しない
拘束力はないが、厳しい予算制のため 事実上使用することは
困難となる
(3)一部の患者集団に限
定して使用を推奨する
○増分費用効果比による判断
20000ポンド/QALY以下
通常、使用が推奨される。
20000~30000ポンド
/QALY
費用対効果の評価結果に加えて、Appraisal
で様々な点を考慮して推奨するかどうかを決定。
30000ポンド/QALY以上
Appraisalでより強い理由がある場合に推奨される。
7
NICEのTAの推奨内容 (2000.3 – 2012.12)
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
Recommended
or Optimised
23
29
39
28
49
15
42
23
34
21
37
25
24
うちPASあり
0
0
0
0
0
0
0
1
2
6
3
9
9
Not
Recommended
1
2
6
3
0
0
3
7
9
9
8
11
12
Only in Research
3
0
9
2
0
3
3
0
1
1
2
0
1
Terminated
0
0
0
0
0
0
0
0
4
1
3
3
2
2000.3-2012.12
4
2014/10/03
TAの評価結果
100%
90%
80%
70%
60%
Terminated
Only in Research
50%
Not Recommended
Recommended or Optimised
40%
Recommended or Optimised with PAS
30%
20%
10%
0%
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
2000.3-2012.12
ICERが£20,000を上回るときは…
5
2014/10/03
“Non Health Factor”も考慮
オーストラリアPBACの「気にすること」
-定量できるもの
費用対効果
健康上のメリット
カバーしない場合の入手可能性
PBS及び政府の予算規模
6
2014/10/03
オーストラリアPBACの「気にすること」
-定量できないもの
不確実性
公平性
他の介入の有無
疾患の特性
対象患者
耐性の有無
→以上すべてを考慮するので、明確な
「閾値」なし。
オーストラリアPBACのAppraisalの結果
(2004-2012, 564品目)
90
80
5
0
13
薬剤品目数
70
60
50
40
30
20
10
0
3
10
23
2004
(38)
3
0
15
23
2
23
2
5
4
9
12
10
保留
21
31
19
非給付(2回目以降)
9
22
19
非給付 (1回目)
20
34
31
2005
(49)
26
29
2006
(49)
2007
(53)
36
制限付き給付
26
24
22
2008
(78)
8
9
11
2009
(64)
2010
(73)
2011
(85)
給付
3
2012
(75)
年 (品目数)
*2004-2008は、初回提出のもののみ算入。給付と制限付き給付の区別なし
7
2014/10/03
英国で終末期に用いられる薬の特例
(Life-extending treatment at the end of life)
以下の条件満たす治療に適用
余命24ヶ月未満
3ヶ月以上の余命延長効果
「延長」PFSもしくはOS
予測適応患者数<7,000人
→余命延長分には”同年代の健常者“と
同じQOL値割り当て
8
2014/10/03
最初の6週間分の薬剤 (3,139ポンド分)を
ファイザーが無料で提供
9
2014/10/03
オーストラリアPBACの
スニチニブ(腎がん治療)の評価
増分費用効果比ICER
増分費用効果比
年月
決定
2007.3
決定延期
比較対照
無増悪生存年
生存年
QALY
75,000105,000
105,000200,000
分析なし
インター
フェロンα
<スーテントが費用対効果に優れるという評価結果が提示されるまで、決定を延期>
2008.3
非給付
45,00075,000
BSC*
45,00075,000
75,000105,000
<新たな臨床試験の結果を追加。ICERの値大きく長期の有効性も不明瞭として非給付>
2008.7
制限付き給付
BSC*
分析なし
分析なし
45,00075,000
<価格引き下げとともに新たなデータを追加して再申請。ICERの値は大きいものの、
臨床上のニーズは高く、他の治療法もないことを指摘して給付を許可>
*BSC: Best supportive care
スーテントは腎がん以外にもGISTおよび膵内分泌がんについて、同様の議論がなされた
英国での患者アクセススキームの適用例
(抜粋, 2013年9月現在35薬剤)
年
No
薬剤名
適応
内容
CRないしPRに至らない場合はその費用をNHS
に払い戻す
14回以上の投与はメーカー負担
2007 TA129
ボルテゾミブ
多発性骨髄腫
2008 TA155
ラニビズマブ
加齢性黄斑変性症
2008 TA162
エルロチニブ
非小細胞性肺癌
ドセタキセルと同等の価格なら使用を推奨
2009 TA171 レナリドマイド
多発性骨髄腫
26サイクル以上の費用はメーカー負担
2009 TA176
転移性大腸癌
価格の16%を払い戻す
セツキシマブ
2009 TA180 ウステキヌマブ
尋常性乾癬
2010 TA185 トラベクテジン
軟部肉腫
2010 TA186 セルトリズマブ
90mgバイアルを45mgバイアルと同等の価格で
提供
5サイクル以上はメーカー負担
関節リウマチ
開始12サイクルはメーカーが無料で提供する
2010 TA192
ゲフィチニブ
非小細胞性肺癌
合意された割引価格で提供する(非公表)
2011 TA215
パゾパニブ
転移性腎細胞癌
12.5%の割引。将来の臨床試験結果に基づいて
払い戻す。
2011 TA218
アザシチジン
2011 TA220
ゴリムマブ
骨髄異形成症候群/ 慢性・
合意された割引価格で提供する(非公表)
急性骨髄性白血病
100mgを50mgと同等の価格で提供
乾癬性関節炎
2011 TA221 ロミプロスチム 免疫性血小板減少性紫斑病 合意された割引価格で提供する(非公表)
20
10
2014/10/03
オーストラリアPBACにおける
患者アクセススキームの内容
2005-2012で68件に患者アクセススキーム適用
内容
件数*
件数
価格引き下げ(PBACと企業との合意による引き下げ)
25
使用量(予測患者数を上回った部分は企業が負担)
11
リベート(給付価格の一部を割り戻し)
3
投与量・投与期間
(予め定めた投与量・期間以上は企業が負担)
6
その他(モニタリングコストの負担など)
2
アウトカム(追加臨床試験の結果で再評価など)
4
非公表
11
いったん非給付、価格を引き下げて給付を再申請
12
*件数は重複あり
実際のところ、NICEでは
どのあたりが「閾値」?
2011年末までのNICEのTA (240本)から、
ICERに基づいて意思決定がなされた510
件抽出
ICERおよびその他の因子が決定に及ぼす
影響を分析
その他の
因子
患者団体の関与 代替治療の有無 小児対象
出版年 疾患の重篤度 疾患領域 薬剤
確率感度分析の実施 NHS/PSS以外の立場
以外の立場
終末期の医薬品 その他
Devlin N, Dakin H. NICE Decisions: Exploring the Influence of Cost-Effectiveness
and Other Factors. OHE; 2013.
11
2014/10/03
意思決定の結果
費用対効果の結果と意思決定
12
2014/10/03
「50%非推奨」は45,000ポンド?
ICER以外の因子の関与は小さい
(300ポンド程度)
13
2014/10/03
疾患領域も影響?
右に寄るほど
「甘め」評価
2009年以降、「閾値」は高めにシフト
終末期医薬品は、さらに高め
14
2014/10/03
さらに、改革?
(NICEの提案)
終末期医薬品特例を「発展的解消」
二つの軸を追加して、重要度高いものに
ついてICERの閾値を2.5倍まで「おまけ」
Burden of illness
Wider societal impact
→どうやって測る?
Burden of illness, Wider societal impact
どうやって測る?
病気由来のQALY「目減り分」で測定
15
2014/10/03
計算例 (転移性腎がん)
平均年齢: 60歳
元気な人の「期待余QALY」:20.5QALY
腎がんの人の「期待余QALY」: 1.24QALY
絶対的目減り
(Absolute shortfall)
20.5−1.24=19.26QALY
相対的目減り
(Proportional shortfall)
(20.5-1.24)÷20.5=94%
絶対的・相対的ともに平均値上回る→閾値「おまけ」OK
31
「おまけ」適用の条件は?
目減り分が平均値 (絶対的:2.1QALY, 相
対的: 9%)を上回れば適用の可能性
領域
薬剤
絶対的
目減り
相対的
目減り
進行腎がん
sunitinib
19.26QALY
(20.5-1.24)
94%
(19.26÷20.5)
多発性硬化症
fingolimod
36.71QALY
(40.7-3.99)
90%
(36.71÷40.7)
アルツハイマー
donepezil など
7.09QALY
(8.7-1.58)
82%
(7.09÷8.7)
喘息
omalizumab
9.52QALY
(34.83-25.31)
27%
(9.52÷34.83)
16
2014/10/03
フィンゴリモド (多発性硬化症)の例
(TA254, 2012)
概 要
ICER
初回評価
インターフェロンβ-1a (Avonex)を比較対照
として、企業が分析結果を提出
£55,634
2回目の評価 (1)
企業が価格引き下げ+若干の修正
£10,839
2回目の評価 (2)
QOLスコアのデータソース修正
治療効果の減少度合いを修正 (5年間で半減)
感度分析: 比較対照は治療実態の重み付け平均
£17,275
£27,820
3回目の評価
「治療実態の重み付け平均」を再修正
障害進展の自然経過に関する仮定を修正
£25,000
–£35,000
患者アクセススキーム (PAS)に基づいて、給付を推奨
1. Assessment? Appraisal? Decision?
2. 経済評価と意思決定?
3. 経済評価と「都市伝説」
17
2014/10/03
米国ではQALYの使用は
法律で禁じられている???
2010年「患者保護と負担可能な医療保険法 (ACA)」
で、Comparative Effectiveness Research (比較効果
研究, CER) 推進のためにPCORI設立
「Cost/QALYを計算して償還の可否を決める」研究
をPCORI自身が行うことは禁止
PCORIはそもそも意思決定に直結する機関ではない
アメリカマネジドケア薬局協会 (AMCP)の
経済評価ガイドラインは、QALYを許容
CER? CEA?
CEA: Cost – Effectiveness Analysis
(費用効果分析)
いわゆる「費用対効果の評価」
介入の導入によるコストの変動幅と
健康アウトカムの改善幅を評価
CER: Comparative Effectiveness Research
(比較効果研究)
実質的には、「実臨床の場で他の医療技術よりも
効果があるか?」の評価
データベース用いれば後ろ向き・安く実施できる
18
2014/10/03
AMCP (Association of Managed Care
Pharmacy) dossier
AMCP: 各ヘルスプラン・製薬会社間の交
渉をスムースにするために、標準フォー
マットを策定 (AMCP Dossier)
Version 3.0 (2011) が入手可能
2013年 ver 3.1が発表
AMCPの「推奨アウトカム」
19
2014/10/03
EUでQALYの使用が
否定された???
Beresniak Aらのグループ “ECHOUTCOME”が、
EUからの助成を受けた研究でQALYの限界を指摘
あくまでEUは助成主体にすぎない
指摘された限界点は、「既知」のものの再確認
Andrew Walker (Univ. of Glasgow)のコメント
“Anyone who makes decisions using QALYs and who cannot
think of at least three issues with them is not thinking hard
enough”
ドイツでもQALYの使用が
法律で禁じられている???
2007-2008年から、IQWIGが効率的フロンティアを
使用した評価を提唱
アウトカム指標 (Clinical Benefit) はその都度選択
特定のアウトカム指標を「推奨」「禁止」いずれも
なし
20
2014/10/03
IQWIG「効率性フロンティア」は
斬新な手法?
本質的には、
「ICERの閾値をどう決めるか」の一手法
「閾値」は分析ごとに決まる
効果指標は主に疾病特異的な指標を使う
(QALYが「禁止されている」わけではない)
現時点では、使用実績は少ない
(それゆえ、どのアウトカムをとったとしても
「ほとんど使われていない」はある意味正しい)
efficiency frontierの作成
21
2014/10/03
著効を示す新薬は…
高価な新薬は…
22
2014/10/03
「著効だが高価」はどうする?
抗うつ薬の評価
対象:18-65歳の中等度〜高度の大うつ病患者
対象薬剤:4つの新薬 (薬①〜薬④)
比較対照:4つの既存薬 (薬⑤〜薬⑧)+プラセボ
効果指標:2ヶ月後の「反応」、「寛解」、「有害事象に
よる治療中断」、「再発」、「QOL」の5種類
分析期間:2ヶ月および12ヶ月
分析の立場:公的保険者の立場(12ヶ月については社会での立場での分析も併せて実施)
臨床効果データ:直接比較のランダム化比較試験(RCT)データをもとに、mixedtreatment comparison meta-analysisにより間接比較データを推計
長期的予後の推計:マルコフモデルにより、12ヶ月後の「寛解」、「有害事象によ
る治療中断」「再燃」を推計
QALYについては、「収集したRCTの中にデータなく、タ
リフがないため効果指標に採用せず」と明示
46
23
2014/10/03
費用の例(初期費用の内訳等)
単位(€)
プラセボ
薬剤(保険給付分)
薬剤(自己負担分)
心理療法
入院
外来費用
薬剤以外自己負担
合計
0.00
0.00
43.91
97.30
63.46
9.31
213.98
薬剤①
142.07
6.15
43.91
97.30
76.00
9.31
374.73
薬剤②
49.80
5.95
43.91
97.30
76.00
9.31
282.27
薬剤③
24.94
3.04
43.91
97.30
76.00
9.31
254.50
薬剤④
60.14
10.04
43.91
97.30
76.00
9.31
296.70
400
350
300
250
200
150
100
50
0
薬剤⑤ 薬剤⑤
薬剤⑥ 薬剤⑦ 薬剤⑧
上位推計 下位推計
19.43
19.43
9.14
98.78
22.68
3.01
3.01
0.00
9.22
0.00
43.91
43.91
43.91
43.91
43.91
97.30
97.30
97.30
97.30
97.30
76.00
76.00
83.81
76.00
76.00
9.31
9.31
9.31
9.31
9.31
248.97
248.97
243.47
334.52
249.20
薬剤(保険給付分)
薬剤(自己負担分)
心理療法
入院
外来費用
薬剤以外自己負担
48
24
2014/10/03
効率的フロンティアが描けるアウトカム、
描けないアウトカム
分析期間
アウトカム
効率的フロンティア
反応
寛解
作成可能
QOL
2ヶ月後
再発
データ少なく、分析しない
治療中断なし
寛解
作成不可能
12ヶ月後
治療中断なし
再燃なし
「2ヶ月後の寛解」を指標とした場合
・比較対照技術(薬剤⑤、薬剤⑥、薬剤⑦、薬剤⑧、Placebo)のみ
で効率性フロンティアを描く。
薬剤①
薬剤②
寛解率
(%)
薬剤③
薬剤④
薬剤⑤ 下方推計
薬剤⑥
薬剤⑦
比較対照技術
薬剤⑤ 上方推計
50
費用(€)
25
2014/10/03
基本分析の結果…
現状価格
「適正」価格
(寛解が基準)
「適正」価格
(反応が基準)
日本では?
2012年から、中医協に
「費用対効果評価専門部会」
2016年改訂での試行導入を視野に、
「おためし分析」
26
2014/10/03
禁煙治療の「一昨日」
2006年まで、保険適用なし
カウンセリング・ニコチン置換療法ともに
100%自己負担
「ニコチン依存症管理料」の新設要求
中医協の議論の中で、「費用対効果の検証」
要求
53
「費用対効果の検証」とは?
2006年1月18日 (基本問題小委員会)
麦谷医療課長
…診療報酬点数を入れても数億円でございま
すので、見返りは何千億円と来ますので、よ
ろしくお願いいたします。
対馬委員 (健保連)
…エビデンスを出していただいて改定の議論
をすることについては全くやぶさかではあり
ません。…データがない中において、「評価
を新たに設ける方向で検討する。」というの
は行き過ぎだろうと…
54
27
2014/10/03
「費用対効果の検証」とは?
2006年1月18日 (総会)
ニコチン依存症について、疾病であると
の位置付けが確立されたことを踏まえ、
ニコチン依存症と診断された患者のうち
禁煙の希望がある者に対する一定期間の
禁煙指導について、費用対効果を検討の
上、診療報酬上の評価を新たに設ける方
向で検討する。
55
海外データ(1/2)
2006年2月3日
中医協資料
米国での研究事例
56
28
2014/10/03
海外データ(2/2)
2006年2月3日
中医協資料
英国での研究事例
57
人は人、ウチはウチ…
2006年2月3日
対馬委員:
本当に海外の文献だけでいいのかな
というところもあって、国内でも随分
いろいろな検討もされていると思いますので、
もっと具体的な費用対効果が分かるような
資料の提出をお願いしたい。」
58
29
2014/10/03
構築したモデル
59
具体的なデータ (肺がん・男性)
1年間の罹患確率 (10万人あたり)
非喫煙
者
喫煙者
元喫煙
20歳
20-29
0.00
0.00
0.00
30-39
0.85
2.33
1.00
40-49
4.84
19.57
50-59
18.83
60-69
66.72
70-79
元喫煙
30歳
(-)
元喫煙
40歳
元喫煙
50歳
元喫煙
60歳
(-)
(-)
(-)
1.55
(-)
(-)
(-)
4.84
5.30
13.05
(-)
(-)
123.79
18.83
18.83
30.47
82.52
(-)
438.60
66.72
66.72
66.72
175.44
292.40
216.12 1420.71
216.12
216.12
216.12
216.12
568.29
肺がん罹患時の年間医療費: 234万円
60
30
2014/10/03
モデルでできること (1)
介入の比較
禁煙準備期の喫煙者に対して、
禁煙指導に加えてチャンピックスを
投与したときの医療費と寿命への影響を予
測した。
1人あたり、生涯医療費約3万円節約/健康
寿命約0.1年延長。
チャンピックスの導入には約142億円。
しかし将来の医療費を約237億円削減。
トータルでは約95億円の節約。
Igarashi A, Takuma H, Fukuda T, Tsutani K. Cost-utility analysis of
varenicline, an oral smoking-cessation drug in Japan.
Pharmacoeconomics 2009; 27 (3): 247-62.
61
モデルでできること (3) –
喫煙者が禁煙することのメリット
(IHEP研究)
性別
医療費削減
QALY延長
男性
81.9万円
0.87QALY
女性
49.1万円
0.51QALY
総医療費へのインパクト:
男性13.8兆円・女性2.1兆円
62
31
2014/10/03
新たなモデル:
新たなモデル DESモデル
モデル
DES: Discrete Event Simulationモデル
「1サイクルの長さ」設定不要
状態移行はいつでも発生可能
「禁煙成功したかどうか」でなく、
「禁煙に成功していた時間」を累積評価可能
複数回の禁煙チャレンジを再現可能
複数回チャレンジ→累積成功時間を評価
63
ワクチンの公費負担
医療保険ではなく予防接種法でカバー
定期接種:公費負担
任意接種:自己負担
任意接種を定期接種化?
任意接種を別のシステムで公費助成?
各自治体で、独自に助成?
医薬品よりも、費用対効果評価が「入り込み」やすい?
64
32
2014/10/03
ワクチンがらみの議論
任意接種 (=自己負担あり)のワクチンにつ
いて、定期接種化の可能性を議論
議論の中で、有効性・安全性に加えて、
費用対効果のデータも求められる
費用対効果「だけ」でなく、有効性+安全性+費用対効果
65
同じ土俵で、勝負しないと…
分析方法の「統一基準」作成
アウトカム指標
QALY
割引率
3%および0%
分析期間
生涯
分析の立場
医療費支払者+「社会」
66
33
2014/10/03
小児肺炎球菌ワクチン分析の概要
小児肺炎球菌ワクチンについて、
以下の5選択肢の費用対効果を比較
選択肢
非投与
内容
ワクチン接種を行わない
7価接種
7価ワクチンを4回接種【現行】
13価接種
13価ワクチンを4回接種
追加18ヶ月
7価を4回接種ののち、生後18ヶ月で13価ワクチンを
接種
追加24ヶ月
7価を4回接種ののち、生後24ヶ月で13価ワクチンを
接種
マルコフモデル
34
2014/10/03
費用と効果の推計結果 (割引3%)
非投与
ワクチン費用
0.0
7価
44,448.2
13価
7価 vs. 非投与 13価 vs.非投与 13価 vs. 7価
追加18ヶ月 追加24ヶ月
47,422.7
44,448.2
47,422.7
2,974.5
総医療費
192184.6 167,028.0 158,399.4
-25,156.6
-33,785.2
-8,628.6
160,594.9 161,502.9
55,947.0
55,778.3
中耳炎
179,407.4 155,335.8 146,916.9
149,022.9 149,900.4
-24,071.6
-32,490.5
-8,418.9
12,158.2
11,515.8
11,385.3
-642.4
-773.0
-130.5
11,429.0
髄膜炎
68.8
19.6
10.8
-49.2
-58.0
-8.8
18.3
19.0
菌血症
550.2
156.8
86.4
-393.4
-463.8
-70.4
124.7
142.2
192184.6
211476.1
205822.1
19291.6
13637.5
(5654.1)
216541.8
217281.2
0.0
22,978.8
22,979.0
22,978.8
22,979.0
0.1
28,550.7
28,468.9
304,649.6 269,011.6 256,547.0
-35,638.0
-48,102.6
-12,464.6
肺炎
11,441.4
コスト
総コスト
(直接費用のみ)
接種通院生産性損失
罹病生産性損失
生産性損失合計
259,765.9 261,032.2
304,649.6 291,990.4 279,526.0
-12,659.2
-25,123.6
-12,464.5
288,316.6 289,501.1
総コスト
(生産性損失含む)
496,834.2 503,466.6 485,348.0
6,632.4
-11,486.1
-18,118.5
504,858.4 506,782.4
QALY
30.060781 30.061386 30.061492
4
5
1
0.0006051
0.0007107
0.0001056
30.061434 30.061421
8
3
アウトカム IPD罹患確率
0.147064% 0.041906% 0.023146%
-0.105158%
-0.123918%
-0.018760%
0.033386% 0.037850%
IPD死亡確率
0.001381% 0.000393% 0.000217%
-0.000988%
-0.001164%
-0.000176%
0.000327% 0.000363%
1QALYあたり (直接費用のみ)
31,885,655
19,093,253
dominant
100,536,31 160,076,45
8
5
1QALYあたり (生産性損失含
む)
10,962,195
dominant
dominant
27,623,364 91,433,887
ICER
費用と効果の推計結果 (割引0%)
非投与
ワクチン費用
0.0
7価
45,065.4
13価
7価 vs. 非投与 13価 vs.非投与 13価 vs. 7価
追加18ヶ月 追加24ヶ月
48,081.2
45,065.4
48,081.2
3,015.9
総医療費
204,344.0 177,533.3 168,224.3
-26,810.8
-36,119.7
-9,308.9
170,470.3 171,425.3
57,085.5
57,085.5
中耳炎
190,666.6 165,008.1 155,921.9
158,076.2 158,999.0
-25,658.5
-34,744.7
-9,086.2
13,030.7
12,340.9
12,200.9
-689.8
-829.8
-140.0
12,245.6
髄膜炎
70.5
20.1
11.1
-50.5
-59.5
-9.0
18.7
19.5
菌血症
576.2
164.2
90.5
-412.0
-485.7
-73.7
129.8
148.2
204,344.0 222,598.6 216,305.6
肺炎
12,258.7
コスト
総コスト
(直接費用のみ)
18,254.6
11,961.5
-6,293.1
23,298.1
23,297.9
23,298.1
0.1
罹病生産性損失
323,344.8 285,383.4 271,936.3
-37,961.4
-51,408.5
-13,447.0
275,227.4 276,559.0
生産性損失合計
323,344.8 308,681.3 295,234.4
-14,663.5
-28,110.4
-13,446.9
304,349.7 305,681.3
3,591.1
-16,148.9
-19,740.0
531,905.5 534,192.1
0.0014754
0.0017400
0.0002646
77.9482587 77.9482247
0.033386% 0.037850%
接種通院生産性損失
0.0
23,297.9
総コスト
527,688.9 531,279.9 511,540.0
(生産性損失含む)
QALY
77.9466589 77.9481343 77.9483989
227,555.8 228,510.8
29,122.4
29,122.3
アウトカム IPD罹患確率
0.147064% 0.041906% 0.023146%
-0.105158%
-0.123918%
-0.018760%
IPD死亡確率
0.001381% 0.000393% 0.000217%
-0.000988%
-0.001164%
-0.000176%
0.000327% 0.000363%
12,372,640
6,874,441
dominant
39,848,850 65,399,958
2,433,975
dominant
dominant
5,028,930 32,214,338
1QALYあたり (直接費用のみ)
ICER
1QALYあたり (生産性損失含
む)
35
2014/10/03
増分費用効果比(ICER)の結果 (割引3%)
7価
13価
vs. 非投与 vs. 非投与
直接医療費のみ
生産性損失も含む
31,885,655 19,093,253
10,962,195
13価
vs. 7価
18ヶ月で
補助的
追加接種
24ヶ月で
補助的
追加接種
費用減少・ 100,536,318 160,076,455
効果改善
費用減少・ 費用減少・
27,623,364
効果改善
効果改善
91,433,887
費用効果平面(生産性損失含まない、割引3%)
220,000
24ヶ月で補助的追加接種
18ヶ月で補助的追加接種
215,000
7価を接種
費用 (円
円)
210,000
13価を接種
205,000
ICER:1,909万円/QALY
200,000
195,000
非投与
190,000
30.0600
30.0605
30.0610
30.0615
30.0620
QALY
30.0625
30.0630
30.0635
30.0640
36
2014/10/03
費用と効果の推計結果
(生産性損失含む、割引3%、13価はH26年度価格)
510,000
24ヶ月で補助的追加接種
505,000
18ヶ月で補助的追加接種
7価を接種
費用 (円
円)
500,000
495,000
非投与
dominant (費用削減、効果改善)
490,000
485,000
480,000
30.0600
13価を接種
30.0605
30.0610
30.0615
QALY
30.0620
30.0625
30.0630
B型肝炎ワクチンの費用効果分析
生産性損失の組み込み方
罹病にともなう生産性損失 (罹病損失)
18歳未満は保護者
18-64歳は本人の生産性損失
(こちらは早期死亡の生産性損失含まない)
接種にともなう生産性損失 (接種損失)
接種時の保護者の生産性損失
37
2014/10/03
Basic structure of natural history model
分析結果 (割引3%,100万人あたり)
セレクティブ
ワクチン費用
肝炎関連医療費
合計 (直接費用のみ,億円)
罹病生産性損失
接種生産性損失
合計 (生産性損失含む,億円)
獲得QALY
ユニバーサル
差分
9.610
4.869
14.479
10.885
0.556
25.920
184.211
2.283
186.494
4.150
141.742
332.387
174.601
-2.586
172.015
-6.735
141.186
306.467
31,037,070
31,038,104
1,034
ICER (直接費用のみ, 円)
ICER (直接+罹病, 円)
ICER (直接+罹病+接種,
円)
生産性損失含めると、むしろ費用対効果は悪化?
16,635,919
15,984,562
29,638,962
(死亡損失は計上していないが…)
38
2014/10/03
予防接種神話 (Vaccination myth)
治療(起きてから手を下す)よりも、
予防(起きる前に手を下す)は、効率が良い
予防なし
予
防
あ
り
病気なし
病気あり
病気
なし
△
(予防コスト分無駄)
◎
(予防のおかげで助かる)
病気
あり
×
(予防コスト+有害事象?)
△
(予防コスト分無駄)
Provisional results for various vaccines
Vaccinatiion
ICER per QALY gained (JPY, x
Hib
11.0 Million
Pneumococcus (child)
45.5 Million
Pneumococcus (adults)
dominant
HPV
2.0 Million
Varicella
dominant (first), 23.9 Million (second)
Hepatitis B
18.3 Million
Mumps
dominant (first), 1.3 Million (second)
Pertussis
0.7 Million
39
2014/10/03
さまざまな「予防」の費用対効果
介入
1QALYあたりの増分費用効果比
あたりの増分費用効果比
(ICER,医療費のみ考慮
医療費のみ考慮)
医療費のみ考慮
ニコチン置換療法
dominant
高齢者の肺炎球菌ワクチン
dominant
CTコロノグラフィー (大腸)
160万円/QALY
HPVワクチン
200万円/QALY
ロタウイルスワクチン
780万円/QALY
小児の肺炎球菌ワクチン (13価)
1,490万円/QALY
小児の肺炎球菌ワクチン (7価)
3,190万円/QALY
40