中国商品のブランド化戦略

平成 19 年度
情報学研究科修士論文
中国商品のブランド化戦略
情報学専攻
A6g51501 WANG XIN
1
中国商品のブランド化戦略
文教大学大学院
情報学研究科情報学専攻
WANG XIN
要約
ブランドとは元々、自分の家畜などに焼印を施し、他人の家畜と区別するために行われたものであ
る。現在では、自分のブランドを、他の売り手・売り手集団の製品・サービスと区別し、競合他社(他
者)のものと差別化することを目的としている(名称、言葉、シンボル、デザイン等)。同時に、付
加価値を追求することも重要である。[注1]
世界経済のグローバル化とともに、近年、資金、技術、人材が大量に中国へ流れ込んできた。その
結果、現在の中国は「労働集約型産業」という形態によって、「世界の工場」として国際市場で優位
に立ってきた。豊富かつ安価な労働力による低コスト・低価格の製品を大量に生産し、経済の急成長
が世界中で注目されている。
一方、元高、エネルギー資源の輸入価格上昇によるインフレ圧力などの諸問題により、生産拠点を
中国から南アジアや東南アジアといったより労働力の安い新興国へ移転する傾向が見えてきた。この
ような背景のなかで、中国商品のブランド化が重要になってきた。言い換えると、ブランド化戦略は
中国の生き残り戦略である。
近年、中国商品に対する評価が高くなっている。言葉で表現すると、従来の Made in China(中国
製商品)から Made by Chinese(中国商品)へ変わってきた。つまり、中国商品の品質は向上し続
けている。中国製商品の「安かろう、悪かろう」という従来のイメージは変わってきた。これは中国
商品をブランド化する土台になっている。ただし、一つの商品をブランド化するのは簡単ではない。
アメリカの COCACOLA、 フランスのルイ・ヴィトン (Louis Vuitton )、イタリアのフェラーリ
(Ferrari)などのブランドの歴史と文化を検討してみると、Status Symbol (地位象徴)と Life Style
はブランドが定着する要因である。
本論文では、自動車と航空機の積極的な事業展開を、分析の結果に基づき、ブランド化戦略を提案
する。
2
目次
要約
2
目次
3
第一章
ブランド
4
第二章
中国の生き残り戦略
7
Ⅰ. ミクロの面
7
Ⅱ. マクロの面
8
1. 人件費問題
8
2. 電力不足の問題
8
第三章
重工業におけるブランド化戦略
11
Ⅰ. 中国製自動車
11
1. 提案
11
2. 他の注意点
16
3. 海外に進出するに際する注意点
19
Ⅱ.中国産旅客機
21
1. 現状と分析
21
2. 提案
22
第四章
まとめ
25
参考文献
28
3
第一章
ブランド
ブランド(英:brand)とは、「焼印をつけること」を意味する brander という古ノルド語から
派生したものであるといわれている。古くから放牧している家畜に自らの所有物であることを示す
ために自製の焼印を捺した。現在でも brand という言葉には、商品や家畜に捺す「焼印」という
意味がある。これから派生して「識別するためのしるし」という意味を持つようになった。
このことから、ブランドは、他の売り手・売り手集団の製品・サービスを識別し、競合他社(他
者)のものと差別化することを目的とした、名称、言葉、シンボル、デザイン及びそれらの組み合
わせであるとされる。他社(他者)の製品・サービスより優れており、それを顧客に認識させるこ
とによって、企業等にとっては顧客の安心感を獲得でき、自有ブランドに「価値」が生まれる。
[注 2]
文字や図形で具体的に表現された商標もブランドの一つである。狭義には、ファッション分野で
の高級品イメージのついた一部メーカー及び商品群を指す(「ブランド物」)。
世界中の軽工業において、エルメスやヴィトンといったブランドは知価ブランドと呼ばれるもの
の中で最も有名である。しかし、これら 2 つに代表されるような知価ブランドというものは、はじ
めから知価ブランドであったわけではない。エルメスの歴史を見ると、創業者のティエリ・エルメ
スは、鉄道や、自動車が登場する前のヨーロッパにおいて、皇帝御用達の馬具職人として活躍して
いた。時代の変化とともに人々の移動手段が、馬車から自動車に取って代わっていくにつれて、馬
具のニーズが急激に減少していた。3 代目エミールが、馬具製造の伝統的な技術を生かした皮革製
品を製造していったことが始まりである。
ヴィトンは、世界初の旅行鞄専門店で、革新的なトランクを発表して鉄道や船の旅行、普及し始
めた車に適した耐久性と防水性を兼ね備えたトランクで、名声を確立した。その後、時代のニーズ
に合った、今の代名詞とも言える、ソフトな鞄の製造に着手していったのである。伝統ブランドが
知価ブランドに取って代わる瞬間は、時代の最先端で、職人が生き残りをかけて試行錯誤の末に生
まれた、バイプロダクト(By-Products)を生み出すといっても過言ではない。[注 3]
今、エルメスやヴィトンがブランドとして、世界中の人々に愛用されるわけは、まず、Status
Symbol である。そして、性能である。さらに、デザインの差別化である。
1.エルメスのケース:
「馬車から自動車へ」,当時ヨーロッパ人の Life Style が変わった背景の中
で、ブランドに対するニーズも変化した。これで、Life Style はブランドのニーズを決定するとい
うことが分かった。
2.ヴィトンのケース:「車に適した耐久性と防水性を兼ね備えたトランク」のノウハウを生か
し、「職人が生き残りをかけて試行錯誤の末」のようにブランドが生まれてきたことも必然的とい
えるだろう。このケースで、ブランドのノウハウは By-Products の生産に繋がるということが分か
った。
狭義のファッション分野に対して、広義には、様々なタイプのブランドが存在している。重工業
において、自動車業界では、ロールス・ロイス、フェラーリ 、メルセデスの S クラス、BMW の 7
4
シリーズ、トヨタのレクサス等のブランドがある。
3. ロールス・ロイスのケース:1955 年には、ファントム IV がエリザベス 2 世の御用車に採用
され、念願の頂点を極めている。[注 4]
その後、単なるお金持ちでは、ロールス・ロイスは手に入らなくなってきた。なぜなら、身分を調
べられるからだ。このケースで、ロールス・ロイスのようなブランドは Status Symbol として定着
している。逆に言うと、
「自分の Status Symbol を見せたい」という思惑を持っている人々に対し
て、ロールス・ロイスのようなブランドは市場があると考えられる。
そして、もう一種類のブランドがある。例えば、Coca-Cola、McDonald's である。典型的なアメ
リカン・ブランドである。アメリカ人の飲食文化に沿って、作り上げたブランドだ。特徴は、商品
自体は安いが、知名度は非常に高い。
4. Coca-Cola、マクドナルド(McDonald's)のケース:Coca-Cola、McDonald's のようなブラ
ンドはアメリカ人の Life Style を反映する。同じように、ブランドは人々の Life Style を反映する
ことができるということが分かった。
以上の考察によって、得た 1.「Life Style はブランドのニーズを決定する」;2.「ブランドのノ
ウハウは By-Products の生産に繋がる」;3.「ブランドは Status Symbol を反映できる」;4.「ブ
ランドは Life Style を反映できる」という四つの結論をさらに掘り下げると、以下のような結果に
なる:
例えば、フェラーリの場合は、本来のコーポレート・カラーは「黄色」である。これは会社がモ
デナ県マラネッロにあり、そのモデナ県の「色」が黄色であることに因む。[注 5]しかし、なぜ、
フェラーリは赤(ロッソ)が非常に有名であるかというと、我々はイタリアに対して情熱的
(Passion)というイメージが強いからだ。この中で、イタリア文化に対する理解も大きく作用し、
「フェラーリの赤のイメージが強い」といった結果になったと考えられる。逆に、イタリア文化が
あるからこそ、イタリア人の Life Style が成り立ってきたし、フェラーリのようなブランドが生
まれてきたわけであるからだ。一方、イギリスでは、貴族文化により、Status Symbol が決められ、
ロールス・ロイスのようなブランドが生まれてきた。関係図で表すと、図 1 のようになる。
5
Life
LifeStyle
Style
決定関係
影響関係
ニーズ
ブランド
ブランド
Status
StatusSymbo
Symbol l
文化
文化
決定関係
ノウハウ
By-Products
図1
新たなブランド
ブランドを定着させる要因の関係図
第Ⅰ章で得た結論:
「文化はブランドを決定する。」によって、ブランドを育てる際に、二つの選
択肢が存在している。選択肢 1 は「自分の文化を理解してもらい、商品をブランド化する。
」
;選択
肢 2 は「他文化を理解した上に、商品をブランド化する。
」この結論と図 1 の関係は提案に活用す
る。
6
中国の生き残り戦略
第二章
Ⅰ.ミクロの面
近年中国経済の高速成長とともに、中国において、生活水準が著しく上がってきた。同時に、中
国人の Life Style も変わりつつある。この変化によって、中国人のブランド品に対する需要も大き
くなった。例としては、2006 年のロールス・ロイス車にとって最大の市場はアメリカ合衆国であ
り、なかでもロサンゼルス地区での販売が突出している。次いでイギリス、中国の順である。[注
6]そして、この需要はこれからもっと拡大していく。しかし、ただ単に「量的に拡大していく」で
はなく、「質」の需要が拡大していく。このことを図で表すと次のようになる。
横軸は低価品(数)、縦軸は高価品を表す。
高価品
2020年中国の
生活水準
2010年中国の
生活水準
2000年中国の
生活水準
低価品
図2
満足効用曲線
結論を先に言えば、中国において増大中のブランドの需要に対して、もし中国企業の「質的な供
給」、いわゆる中国商品のブランド化を備えておかなければ、貿易の黒字から貿易の赤字に転じるに
違いない。
ゆえに、中国にとっては、中国商品のブランド戦略は生き残り戦略である。
7
Ⅱ.マクロの面
1. 人件費問題
中国における成長の原動力は安価な人件費と土地を利用して世界の工場になれたことである。世界
の工場になるには輸出入のために海に面していることが必要条件となる。ベトナムはこの条件を共に
有している。現在、中国の沿岸工場地帯の人件費が高騰してきている。
賃金は大体1ヶ月3万円ぐらいになっている。一般的にはより安価な人件費を求めるために中国の
内陸部に工場の移動が始まると考えられがちなのだが、現実は違う。なぜなら、内陸では物を輸送す
るコストが莫大になってしまうからだ。沿岸に南下してきており、ベトナムに進出する工場が後を絶
たなくなってきている。ベトナムの賃金は大体6千円ほどのため、上海や深センに比べて人件費が6
分の1で済む。
中国国内の人件費上昇、外資企業優遇政策の調整などの要因により、日本の対中投資が減少してき
た。「CHINA+1」現象(中国への投資以外に候補地を探す海外直接投資行動)が日増しに目立つよ
うになり、投資の着目点にも変化が生じている。「CHINA+1」とは、日本企業が投資リスクを分散
するために、中国に投資するのと同時にベトナム、インド、タイなどそのほかのアジア諸国にも投資
し、工場建設や発展拠点を設立する投資戦略のことを指す。日本の国際協力銀行のデータによると、
「今後 3 年間に事業発展を最も希望する場所は?」という問いに対し、中国を選択した日本企業の割
合は 2004 年には 91.1%だった。それが 2005 年には 82.2%、2007 年には 77%と推移している。イ
ンド、ベトナム、タイを選択する割合が年々増加している。JETRO が発表したデータによると、日
本の対中投資にはピーク時期が 3 度あり、3 度目のピークは 2001 年から始まった。2005 年の投資額
は過去最高を記録し、日本の対外投資の約 14%を占めた。2006 年の対中投資額は 05 年と比較して
29.6%減少した。対外投資全体に占める割合も 12%に下落している。 [注 7]
これで、人件費の高騰によって、外資が減ってきたということが分かった。
2. 電力不足の問題
間違いなく、電力不足の問題も対中投資に影響を与えた。
8
(資料)中国統計局 CEIC
図3
中国の電力消費及び発電設備容量と実質GDP成長率
2004 年の中国における電力不足は 2000 万キロワットとも 3000 万キロワットともいわれている。経
済が急速に発展した 2002 年、中国の製造工業は 12.6%の成長を示し、鉄鋼業の電力使用量は 20%も
増加した。一般家庭でも、テレビ、洗濯機、冷蔵庫だけの時代は 1 家庭 1KW で済んだが、エアコン、
パソコン、AV 機器など様々な家電類の増加で 3KW を突破、北京ではここ3年、住民の電力消費は平
均 20.6%増加している。2020 年までに新たに 4 兆 4 千万 KW(年平均 2200 万 KW)程度の電力量の増
加が必要とされているが、ここ数年は 1200 万KW程度の増加にすぎない。現在建設中で 2005 以降 3
年間に投入できる電力源は建設に時間のかかる水力発電が多く、しかも必要量 7500 万 KW 以上に対し
5500 万 KW と約 2000 万 KW 不足している。[注 8]
中国経済が高度成長してきた原動力は大量の外国企業からの投資である。外国の企業にとっては、
過去数年の中国において、一番魅力的なところは安価な人件費である。だが、この「魅力」は消える
一方だ。さらに、電力不足の問題と人民元の切り上げの問題によって、外国企業にとっては、中国の
投資環境は芳ばしくなくなっていくだろう。
2010 年までは、外国の企業が中国から撤退する見込みは低いと思われる。ただし、どんなに優れた
事業でも、時が経つにつれ環境が変われば、当初の優秀さは失われていく。事業の継続的改善により
連続的にバージョンアップしていくだけでは、いつか限界が訪れ、市場そのものが消滅してしまう。
市場があってこそ、企業は存続が可能となるのだから、既存の市場が失われる前に、企業はイノベー
ションにより、新たな市場/事業を生み出す必要がある。同じように、中国企業にとっては、中国商
品をブランド化せざるを得ない状況に追い込まれている。これもこの論文の研究経緯である。
例えば、日本も 1971 年のニクソン・ショック以来、度重なる円高で相当な試練を受けてきた。陶
磁器、金属食器、繊維といった伝統工業が価格競争力を失って凋落した。日本にとって幸いだったの
9
は、同時期に自動車や家電、光学機器などの新しい産業が発展し、伝統産業に代わる輸出の担い手と
して頑張ったことだ。
つまり、労働集約型産業から高付加価値型産業への転換がスムーズに進んだことで、ニクソン・シ
ョック、1985 年のプラザ合意という二つの大きな円高の波を乗り越え、経済発展を遂げることがで
きたことだ。
トヨタやキャノンなどの日本企業が、円高の進行に負けず輸出を拡大し、業績を伸ばすことができ
たのは、必死の思いで海外企業に負けない独自の技術開発をしてきたことが裏づけとなっている。も
し、中国が独自技術を取得してそれを発揮して、例えば中国オリジナルのハイブリッド車や燃料電池
車などを開発できるだけの底力を蓄えれば、たとえ年 10%の元高が進行しても耐えられるかもしれ
ない。[注 9]
中国経済にとって、労働集約型から高付加価値型への産業構造の転換をいかに早く実現できるか
が、大きなカギとなる。ゆえに、今後中国商品のブランド化は極めて重要な課題となる。
仮説:中国商品の一部ブランド化ができたら、中国商品の全体をブランド化しやすくなる。それによ
って、2010 年以降の中国経済を上方にシフトできる。
仮説
経済の成長
中国商品のブランド化できる場合
中国商品のブランド化の重要性
中国商品のブランド化の重要性
中国商品のブランド化できない場合
中国商品のブランド化できない場合
2000年度
図4
2005年度
2010年度
中国商品をブランド化する重要性のイメージ図
10
時間
第三章
重工業におけるブランド化戦略
Ⅰ.中国製自動車
中国の果敢な挑戦は自動車市場でも目立つ。中国は既に 2006 年時点で日本(1148 万台)、米国
(1126 万台)に続く、世界 3 位の自動車生産国(719 万台)に浮上した。輸出台数も 2004 年の 7
万 8000 台から、05 年には 17 万 3000 台、2006 年は 34 万台と倍増ペースの伸びを記録している。
内需市場の規模も 722 万台に拡大し、2006 年は日本を抜き、米国に次ぐ 2 位となった。[注10]
中国の自動車産業は今発展しているが、時が経つにつれ環境が変われば、当初の優秀さは失わ
れていく。事業の継続的改善により連続的にバージョンアップしていくだけでは、いつか限界が
訪れ、市場そのものが消滅してしまう。市場があってこそ、企業は存続が可能となるのだから、
既存の市場が失われる前に、企業はイノベーションにより、新たな市場/事業を生み出す必要が
ある。
イノベーションとは、シュンペーター(1939)に由来する概念であろう。シュンペーターのイ
ノベーション定義は、①新結合、②発明の事業化、③創造的破壊などと微妙に違う。新結合とは
「生産要素を新しいやり方で結合」し、新しい製品、製法、生産の仕組み、組織などを生み出す
ことである。[注11]
自動車でも中国の強みは部品産業だ。中国製自動車のデザイン現状は差別化がない。エンジン
の開発と生産力は低い。
一方、研究開発の形態には、①「研究→開発→生産→販売」という形で、技術知識向上のプロ
セスが研究成果から製品化に一方通行的に向かう関係[技術推進 (technology push ) 型、または
リニア (linear) モデル]、②生産・販売次元における市場需要(の情報)が製品・製法の開発を
牽引するような関係[需要牽引(demand pull)型、③科学研究や生産技術の開発活動と市場需要
や「顧客の声」とが相互に複雑な影響を与えつつ進展していく関係[連鎖(chain-linked)モデル]
などのとらえ方がある。[注12]
この三つのモデルを提案に活用する。
1.
提案
(1) 中国製自動車をブランド化する前提はエンジンである。
エンジンは自動車の「心臓」である。自己のエンジンがないことは、自己の命を他人に抓まれてい
ることを意味する。中国の自動車メーカーが、本当の自主ブランドを確立したいならば、まずはエ
ンジンの研究で自主を目指すべきである。技術推進 (technology push ) 型のモデルとブランドを
育てる際に、選択肢 1 の「自分の文化を理解してもらい、商品をブランド化する。」に当てはまる。
今中国本土自動車メーカーの平均開発費用対売り上げの比率は 1.5%である。世界的な平均水準
4%-6%と比べると、この差は小さくない。[注13]
過去の 20 年間、中国政府は自動車産業に対して、
「市場で技術に換える。」という政策で対応し
てきた。つまり、海外メーカーは中国市場に入る際に、まず、中国のメーカーと合弁会社を作らな
11
ければならないため、それによって、技術を吸収することである。しかも、海外自動車メーカーは
新しいモデル車を中国市場に投入する意図を示した。だが、20 年経って、未だに、中国の自動車メ
ーカーの自主開発力は低い。
その原因は:自動車の開発、特にエンジンの開発にとっては、長期的な研究から得た経験と巨額
な開発費用がポイントとなる。
TOYOTA の生産技術と生産システムは完成に三十年もかけていた。この三十年で達成したレベルは
中国メーカーにとっては、簡単に辿りつけない。しかも、寄り道がない。TOYOTA の三十年は中国メ
ーカーにとっては、課題となる。
●
大学、大学院をエンジン開発の第 2 研究所にする。
研究開発(Research and Development: R&D)とは、[注 14]「科学や技術(engineer-ing)に
おける基礎研究と応用研究、そして設計ならびに原型(prototype)」や生産工程の開発」である。
それは通常、①基礎研究、②応用研究、③開発に類別される。①基礎研究とは、
「科学知識の向上
のための創造的な研究で、特定の産業目的をもたない。」②応用研究とは、「新しい科学知識の発
見へ向けられた研究であるが、製品または製法に関して特定の産業目的を持つ。
」そして、③開発
とは「いまだ定型化されていないタイプの技術活動であり、他に利用できる発見事業(resource
findings)もしくはそれ以外の科学知識を、製品または製法に転換するための技術活動」をいう。
つまり、研究開発とは、事物やその生産方法についての心知識を生み出す活動である。
一方、科学(science)と技術(technology)という区分もある。そこでは科学研究が基礎研究
に、技術的研究(もしくは製品または製法に向けられた応用科学的研究)が応用研究あるいは部
分的には技術開発に対応している。分類の原則からいえば、
(純粋)科学には産業目的がなく。技
術活動は商業目的を持つという対応関係となる。これらの見方に従えば、国の研究機関や大学な
ど非利益追求組織での研究開発は科学に関連し、産業での研究開発が技術に関連することになる。
[注15]
当然に、大学生や大学院生はエンジンの開発レベルを持っていない。だが、学生が新しいことを
学ぶのは速い。そして、革新的な発想やアィデアを持っている。大学の研究成果を商品化すること
によって、研究費用の削減もできる。そして、企業と大学両方にとっては、メリットがある。
●
中国国内で、自主開発エンジンによるスポーツカー・レースを設立する。
欧州では、レースとともに自動車技術と自動車文化が発達してきた。レーシングドライバーの収
入が高いとともに、その社会的な地位が高く、非常に教養が豊かである。物量の問題でなく、文化
の土壌の問題である。[注16]
勿論このレースは今中国に進出している F1 と太刀打ちできないが、ただし、国産自動車の間で
の競争だけで、かなりの国民的な関心を持たせることができる。「自家の自動車のメーカーはどん
なパフォーマンスを見せてくれるのか」、
「大会の最高時速はいくつか?」、
「車のデザインはどうで
あるか?」のような思惑で見ている人は恐らく多いだろう。そして、国は自動車の発展を期待して
12
いるので、賞金の形で、国からの援助も貰えるだろう。何より、各メーカーの間で、販売の競争か
ら、エンジンやボディやデザインなどの競争へ移らせるのは重要である。
さらに、レースで得たデータはエンジンの改善と開発に役立つ。顧客からの車に関する意見より、
レースはチームで戦うことによって、専門的な視点で、車の欠点を見つけだすのは速い。
●
航空機の開発に投資する。
民用航空機のエンジンやボディなどは非常に複雑な製造技術を要求されている。中国は民用航空
機に力を入れている。この膨大なプロジェクトに参加することによって、最新のデータや製造技術
を入手することができる。
世界の一流自動車メーカーのほとんどは航空機用のエンジンを供給した。例えば、BMW、ロール
ス・ロイス、ルノーなど。今では、何れも世界的に有名な自動車メーカーである。特に、ボーイン
グ社最新の 787 にトレント 1000 を採用する等、ロールス・ロイス製エンジンを積極的に採用する
エアラインが増えている。[注17]
これを経験にし、中国自動車メーカーも積極的に、中国旅客機のプロジェクトに向かって、投資
し、共同でエンジン開発を行うべきだ。実現できたら、ブランドイメージが強まるし、そして、新
たな車種の開発も可能になる。
(2) ヨーロッパやアメリカや日本にデザイン研究所を設立する。
さて、現代の研究開発では、今見たような意味での科学と技術の接近が著しい。両者の機械的
な区分は困難でさえある。それは 20 世紀初頭に、組織化された研究開発の場としての研究所の企
業内部化が進んだことを契機とする。もう少し遡って、19 世紀中頃、科学分野での組織的研究が
ドイツなどで開始された。アメリカでは、トーマス・エジソンにより研究所が初めて設立された
(1876 年)。その後、第 1 次世界大戦までに約 100 の研究所が個人または企業により設立された
が、その大半は電気と科学の新分野を中心とするものであった(Mansfield[1968]3 章)。カロザ
ースがナイロンを発明したことも著名である(Rosen-bloom=Spencer[1996]1 章)。いずれにせよ、
研究所が大企業内部に設立されて以来、科学知識の向上という面でも、企業の研究開発(industrial
R&D)が大きな役割を担うようになった。[注18]
例えば、自動車の場合は、輸入車だと、中国製より高い値段を付けても、売れる。これはブラ
ンド力と優れたデザインによって決められている。デザイン研究所を設立する目的は、ヨーロッ
パやアメリカや日本などのような自動車業界の中心地にデザイン研究所を設立することによって、
まず、現地の優秀なデザイナーを確保することができる。人材の確保によって、大手メーカーと
の差を縮めることができる。それから、現地研究所によって、海外の先進的な生産技術や生産文
化を学ぶこともできる。学んだ知識は、中国の工場に活用する。このようなアプローチで、中国
製自動車の製造と加工のレベルを向上させる。需要牽引(demand pull)型モデルとブランドを
育てる際に、選択肢 2 の「他文化を理解した上に、商品をブランド化する。」に当てはまる。
13
情報の収集、処理
情報の発信
情報の活用
Know-how
情報 流行の仕様
情報
情報
流行の色
情報 流行のデザイン
情報
海外デザイン
研究所
人材
人材
デザイナー
情報
Needs
情報 生産技術
情報 品質管理の経験
図5
自動車デザイン研究所の役割関係図
14
自動車の
自動車の
デザイン
デザイン
と生産レ
と生産レ
ベルの向
ベルの向
上
上
海外デザイン研究所に
よるデザインの差別化
大学、大学院
をエンジン開発
の第2研究所
にする
革新的な発想
中国自動車のブランド化
エンジン開発力の向上
のプロセス
相乗効果
航空機の開発
に投資する
データ、製造技術
☆ 研究費用の削減
自主開発エンジン
によるスポーツ
カー・レースを設立
する
図6
国からの援助
中国製自動車をブランド化する提案の関係図
(3) DELL の方式で自動車の生産、販売をする。
これは提案 1 と逆のブランド化するアプローチである。つまり、まず連鎖(chain-linked)モデル
と選択肢 2 を実現でき、そして、技術推進 (technology push ) 型のモデルと選択肢 1 を実施し、さ
らに、連鎖(chain-linked)モデルと選択肢 2 をするというサイクルになる。
536 自動車改造社が存在する現状の中、林立の自動車改造社の何割かを統一し、自動車改造社のノ
ウハウや技術や設備や人材と自動車部品の強みを活かしながら、消費者にエンジンやボディやインテ
リアなどの選択肢を与え、選んでもらう形で車の組み立てと販売を行う。顧客とのコミュニケーショ
ンをとりながら、最終的に商品を作り出す。顧客自らの選択によって、他商品との差別化を行う。た
だし、強力なネットサビースが必要となる。そして、安全性の配慮を前提にしなければならない。
リアルタイムで受注し、デジタル化された生産管理をし、販売費用と在庫管理費用を大幅に削減で
きる。そして、規模が大きくなるとともに、顧客のニーズを把握でき、独自に部品を開発したり、メ
ーカーに要請したりと、オリジナルな部品を売り出す必要がある。最終的にエンジンをはじめコア部
15
分の差別化もできるようになる。
(4) 業界の再編は、中国の自動車ブランドに繋がる。
2005 年までに、中国の自動車業界では、146 自動車製造社と 536 自動車改造社がある。中国の
自動車市場は戦国時代に入った。この業界環境の中で、60%の自動車メーカーは、赤字経営に陥っ
ている。[注17]
これほどの数だと、大規模になりにくい。規模がないと、開発費用もそれなりに少ないため、ブ
ランド商品を作りだすのも困難である。ゆえに、業界の再編は、中国自動車産業の国際的な競争力
の鍵となる。
研究開発体制の構築上、研究開発の要員数や支出額の面で「規模の経済性」があるかどうか。こ
れは企業規模(売上高、資産など)の拡大と研究開発活動(R&Dの支出額や要因数、およびその
技術的成果)の関係を問うことを意味する。資金調達力や研究開発能力等の見地から、技術革新を
推進するためにはある程度以上の企業規模を必要とし、ある程度の市場支配力(独占力)を必要と
するという見解があり、それは「シュンペーター仮説」と呼ばれている。[注19]
例えば、2007 年 12 月 26 日、中国自動車大手の上海汽車が南京汽車の全株式を 20 億 9500 万元(約
330 億円)で買収することにした。発表された契約の内容によると、上海汽車は南京汽車の完成車
及び部品部門を傘下に収め、その他サービス貿易部門などは、上海汽車集団と躍進集団(南京汽車
の親会社である躍進集団)が合弁で設立する東華公司に移される。上海汽車は 20 億 9000 万元(約
330 億円)で南京汽車の株式を買収し、躍進集団は上海汽車の 3.2 億株と東華公司の 25%の株式を
取得する。
中国最大規模となる今回の提携により、上海汽車が世界トップクラスの自動車メーカーとなり、
南京汽車が国内最大の自動車製造基地とすることが期待される。[注 20]
このような企業が続々と誕生できるように、中国政府による政策のシフトが必要である。
2. 他の注意点:
●
ブラント企業並みのキャッチ‐コピー(Sales Message)を創り、各ブランド名を改善する。
今、中国国内において、自動車産業だけではなく、中国企業全体のキャッチ‐コピー(世界共通
的)の意識とレベルは低い。消費者にとっては、認識しにくいキャッチ‐コピーが多い。ブランド
を育てたいならば、まず、消費者に企業のことを認識してもらわなければならない。だから、ブラ
ンドのキャッチ‐コピーは企業の名刺である。企業は消費者に自社を紹介する際に渡すものなので、
しっかりキャッチ‐コピーを考えるべきだ。
そして、一口にブランドと言っても幾つかの階層がある。概念として、最上位になるのは、企業
グループとしてのブランド(Corporate Brand)であり、その下には事業部門ブランド(Division
Brand)、商品グループブランド(Product Group Brand)といった形でブレーク・ダウンされて
いく、図12のようになる。[注 21]
16
企業ブランド
事業ブランド
製品カテゴリー
ブランド
個別モデル名
図7
ブランド名の階層図
中国の企業は勿論企業のロゴに力を入れているが、ただし、文化の違いをやはり理解していない。
海外に進出する際に、現地の言語や文化などを調べた上で、現地に相応しい Product Group Brand
で対応すべきである。何年か前に、中国の企業がブラジルに進出した際に、痛い目にあった。これ
らの事は恥でもあり、教訓でもあり、そして、経験でもある。一方、SONY のようなブランドは、
典型的な良い例である。まず、どこの国の人でも、楽に発音できる。そして、シンプルで覚えやす
い。さらに、グロバール的な企業のイメージが強いので、欧米の人々は暫くの間、SONY は日本の
企業と思わなかった。
中国の企業は国内においては、ほとんどの商品ブランド名(Product
Brand)は漢字もある。
これは、中国の商標法による、義務付けである。ただし、海外に進出する時に、漢字からピーイン
へのアプローチで対応したら、意味や意味の変化(同音による)が生じるので、むしろ、最初から
グロバール化に対応できる Product Group Brand を考えたほうが良い。
そして、Product Group Brand のグロバール的な対応性を向上させるために、中国の自動車企業
をはじめ、生産業全体の Product Group Brand デザインのコンテストを開催する。
●
品質管理(QC)
中国の自動車業界では、メーカーの品質や規格や納期などのトラブルが多発している。このよ
うなほとんどの原因は品質管理を徹底しなかったからだ。あるいは、中国製造産業全体の品質管
17
理レベルと経験の足りなさによって、発生したことだ。せっかく、十数年をかけて、Made By China
から Made By Chinese へ、イメージを向上させたのだから、この先も、品質管理は一番重要な位
置に置かなければならない。
●
ES(地球環境満足)
現在顕在化している中国の環境・エネルギー問題の主要な要素は外資系企業ではなく、中国国
内の事情に原因があると考えられる。もちろん外資系企業の工場で中国の労働者が大量に雇われ
ており、中国の国民所得が向上するとともに、消費活動が活発化しているのは事実である。消費
活動が活発化する中で、家電製品や自動車などの購入者が大幅に増えるにつれて、エネルギー消
費量や廃棄物量が急増している。しかしながら、中国の政府、企業や消費者は環境問題に対する
認識が十分ではないため、環境対策が十分になされない地場の工場で大量に製造され、環境・省
エネ性能が低い製品が大量に使用される事態になっている。
環境・エネルギー問題はその他様々な自然、社会、産業要因によって複合的に発生するもので
あるが、非常に大雑把に中国の環境・エネルギー問題の原因構造を考えると、中国政府と企業の
対応の遅れ、環境・省エネに対応する基礎施設の未整備、豊かになってきた消費者の生活行動と
意識の未成熟さといった「政府と企業」、「インフラ」、「国民」に原因があり、これらの要素こそ
が今後の中国の中長期的な環境・エネルギー問題のキーを握っていると考えられる。[注 22]
この背景で、中国自動車企業にとって、環境改善活動は重要である。環境改善活動を展開する
とともに、社会貢献ができ、By-Products を見つける可能性が十分に考えられる。これによって、
新たなビジネスを展開できる。さらに、マスコミの報道による宣伝ができ、企業のブランドイメ
ージも向上する。イメージは図 8 のようになる。
18
環境改善の活動
社
会
貢
献
宣伝
By-Products
マスコミの宣伝
によるブランド
イメージの向上
新たなビジネス
の展開
図8
環境活動による利点の関係図
3. 海外に進出するに際する注意点:
(1)M&A による海外進出
自動車先進国の自動車および部品メーカーを M&A することによって、短期間でのブランド力
を実現できる。
例えば、イギリスの MG 社を買収した中国のナンジン・オートモービル・グループ(南京汽車)
が、MG モデルを復活させることを発表したが、いずれその生産をアメリカ国内で行う予定もあ
ることを明らかにした。そして、イギリス国内の工場ではロードスターモデルを、アメリカオク
ラホマ州にある工場では新型のクーペを生産する予定だと言う。また、中国の南京汽車の工場で
は、3 つのセダンモデルを生産する。
イギリス情報誌による、3 つのセダンモデルのひとつであるMGローバー75 の場合は、「1998
年当時のMGローバー75 をそのまま再現した感じである。この車を買うか?と問われたら、もし
私が中国に住んでいたら yes と答えるだろう。しかしイギリスの工場でこのMG7の製造が再開
されるのは不幸にも 1~2 年後の予定なので、イギリス人がこの車を買うことは多分ないだろう」
という意見に対して、どうように対応していくのかは M&A 後の課題となる。[注 23]
「買収するだけで、革新をせずに、結局うまくいかず手放す。」という結末にならないように、
19
買収した企業のノウハウを土台にして、少しずつレベルアップをする必要がある。
(2)海外工場の設立
中国自動車メーカーにとっては、海外へ進出する際に、海外工場の設立は直面しなければなら
ない課題である。ただ単に工場を設立して、生産は順調に進むにはわけいかない。なぜなら、現
地なりの問題が生じるからだ。
例えば、TOYOTA はアメリカでの現地生産を始めた時、カンバン方式を使用してきた。しかし、
有名なカンバン方式でも、アメリカでは機能しない時がある。そもそもカンバン方式とは,「必要
なものが,必要なときに,必要なだけ」生産ラインの各ポイントに届けられるように,生産の各工程
間で緊密な調整を図るための仕組みのことである。これにより中間在庫の大幅な削減が可能とな
る。後工程が前工程に対して,必要な部材の量と期日を「カンバン」とよばれる指示書で示し,それ
に基づいて前工程が作業をおこなうというものである。カンバン方式は,トヨタ自動車がアメリカ
のスーパーマーケットの在庫管理方式からヒントを得て考案したものでジャスト・イン・タイム方
式とも呼ばれ,世界で採用されつつある。素晴らしい管理方式だが、カンバン方式の採用当時、交
通渋滞がよく発生するアメリカでは、納品期限に間に合わないケースは多発していた。
そこで、中国自動車メーカーとっては、現地に対する調査、分析、理解、対応というアプロー
チは重要であり、海外進出の成敗の鍵となる。
(3)外交による販売
2006 年、中国製自動車の海外への進出は活発だった。例えば、ロシアへの輸出額は 3.5 億ドル
に上った。販売台数は 3.8 万を記録し、昨年同期と比べ、成長率は 300%だった。
一方、ロシア政府は中国メーカーに対して、厳しい産業政策を出した。ロシア現地で組み立て
工場を設立しようとしている中国メーカーは、なかなかロシア政府からの優待政策を貰えなかっ
た。しかし、これらの優待政策は、ロシアが WTO に加盟した時に、約束した政策であった。
ロシア自動車市場は中国自動車業界にとっては、重要である。なぜなら、まず、市場が大きい。
現在、ロシア自動車市場は 150 万台の規模である。しかも、その内の 40%はモスクワに集中して
いる。
そして、市場の潜在性がある。ロシア製自動車は 80 年代の商品が多いので、本国では人気がな
い。それに対して、欧米車と日本車は値段が高いので、ロシアの一般庶民にとっては、憧れの存
在である。一方、中国車は同類の欧米車と日本車と比べ、値段が安いという競争力を持つため、
ロシアでは市場がある。
[注 24]だから、ロシア自動車市場は中国自動車メーカーにとっては、
手放せない存在である。ただし、この問題は中国自動車メーカーの自力で解決できない。改善す
る方法は、中国政府とロシア政府の間での交渉のみだ。アメリカの元大統領クリントンは、中東
へ行った際、ボーイング社のトップが同行し、セールスマンを演じた。この例は中国政府のトッ
プにとっては、良い見本である。つまり、場合によって、政府も中国製自動車のブランド化に役
割を果たさなければならない。
20
2. 中国産旅客機
1. 現状と分析
背景:航空市場では、原油高による燃料費の高騰を背景に、燃費性能に優れた中小型機への切
り替えが進んでおり、リージョナルジェットも今後 20 年間で 5000 機の需要が見込まれている。
そして、中国経済の高度発展とともに、中小型機による、国内における支線運行のニーズが増大
すると見込まれている。
国際的な市場:全世界の大型旅客機(100 席以上)市場の規模が今後 20 年間で約 2 万 3000 機程
度と見られており、実にそのうちの 13%程度は中国が購入する計算になる。
国内的な市場:英国経済紙フィナンシャル・タイムズの需要予測によれば、現在世界最大の旅
客機購入国である中国は、2025 年までに計 2929 機の旅客機を購入する必要に迫られるという。
2006 年 10 月 25 日、世界最大の民用航空機メーカーであるアメリカのボーイング社は 2006 年の
中国地域「市場展望レポート(CMO)」を発表し、2025 年の中国の航空機の数は 3 倍増の 3900
機、総額は 2800 億ドル、アメリカに次いで世界で二番目の民用航空機市場となる、という予測
を出した。
中国旅客機メーカーは動き出した。2007 年 12 月 21 日に組み立てを終えた旅客機は標準型の
「ARJ21-700」、国内での名称は「翔鳳」である。国有企業である中国航空工業第一集団が生産し、
来年初めに試験飛行を始める。巨大な航空機市場を抱える強みがあるほか、海外での販売も狙う。
深セン航空からの 100 機受注も発表され、累計受注は 171 機となった。これまでの受注はすべて
国内企業からだが、今後「世界市場での販売に力を入れる」としている。
「翔鳳」の座席数は 78―105 席を有する。同機の設計航程は 1200~2000 海里である。中国国
内の 98%以上の航路を直行便で結ぶことができる。昆明空港を基準に設計したことで、中国西部
の高原の空港での離着陸や運行にも適応している。[注 25]
「翔鳳」の開発は偶然ではない。中国旅客機メーカーの生産レベルは着実に伸びてきた。たと
えば、2003 年、中国メーカーが開発した4―5人乗りの小型自家用機「小鷹―500」は 200 万―
300 万元(2600 万円―3900 万円)という低価格で、航空機での中国のコスト競争力を示してい
る。[注 26]
それから二年後、ジンバブエなどの国が「新舟 60」(ターボプロップ旅客機、定員 60-95 人)
17 機を購入した。ジンバブエ航空会社は「新舟 60」を高く評価し、
「使用性能は良好、燃費がよ
く、メンテナンスもしやすい、簡単に使えて実用的だ。」との感想を示した。[注 27]
一方、20 数年前、中国は世界の航空分野で輝かしい成果を挙げた。1970 年 8 月、中国政府は持
てる力を総動員して、独自の大型航空機開発戦略プロジェクト(「運 10 プロジェクト」)をスタ
ートさせた。1978 年に航空機の原型設計が完了し、1980 年 9 月 26 日に、「運 10」は初めて空を
飛んだ。1985 年までに、「運 10」は前後して 130 回の離着陸をこなし、飛行時間は 170 時間、最
大航続距離は 3600 キロ、最大時速は 930 キロ、最大飛行高度は 11000 メートル、最高飛行時間は
4 時間 49 分だった。「運 10」の客室はエコノミークラス座席 178 席、混合座席 124 席の配置で、
21
最大離陸重量は 110 トンであった。性能の面では、「運 10」はすでに「大型航空機」の基準をク
リアするものとなった。[注 28]しかし、1980 年代中ごろ、「運 10」は財政経費支出の削減によ
って、ストップをかけられた。残念な結果になったが、「翔鳳」に貴重なデータを残した。そし
て、中国独自の「大型航空機」にとっても、ルーツ的な存在である。
そして、巨大な航空市場は中国産旅客機にとっては、一番のチャンスである。巨大な航空市場
が存在することは中国大型航空機を生産でき、あるいは中国産旅客機をブランド化するまでに、
力を蓄える空間となる。
つまり、
「翔鳳」は自動車に例えると、軽自動車のような存在で、国内市場でも国際市場でも十
分に市場がある。現時点中国産旅客機の開発からブランド化に至るまでの、ある程度の基礎はあ
る。なぜそう言えるかというと、全世界で運航するボーイング社旅客機部品の 36%に「Made in
China」が組み込まれているからだ。例えば、ボーイング 737 の生産国は勿論米国だが、部品の
相当部分は中国製だ。垂直尾翼全体と水平安定板、胴体後部、翼の前後辺縁部、ドア、緊急脱出
口、操縦席を含む内装など機体のさまざまな部分に中国製部品が使われている。ボーイング社の
他の機種も事情は似ている。これらの部品は中国の成都航空集団、西安航空集団、上海汽車、米
中合弁の BHA など中国企業が供給している。ただし、中国は旅客機のコア部分、いわゆるエン
ジン、電子装置、アルミニウム製胴体の生産能力を揃えていない。[注 29]
大型航空機を作れるかどうかについては、3 つの条件がある。つまり、経験の蓄積、経済力お
よび技術基盤である。現在、中国では、この 3 つの条件は基本的に備わっている。
2. 提案
現状分析に基づき、中国産旅客機のブランド化に関する提案は以下のようになる:
(1) アフターサービスに力を注ぐ。
現状では、中国の大型航空機の本格的な誕生はまだ不可能である。この状況の中で、現有の「翔
鳳」の販売を展開すると同時に、品質管理を徹底的に行うことは一番重要な位置にある。なぜな
ら、まず、航空機は命に関わるものだからだ。そして、新規参入で、どうしても「安かろう、悪
かろう」のイメージが強いから、品質問題が発生したら、今後大型航空機のブランド化をしにく
くなるからだ。
現時点で、「翔鳳」の潜在顧客は発展途上国である。発展途上国では旅客機の整備能力は低い。
この事情に対して、積極的にアフターサービスと追加サービスを提供する必要がある。
具体的に: (1)整備センターを現地で設立する。
(2) 整備人材を派遣する。
(3) 定期的に、旅客機を点検し、点検の間に、代用の旅客機を貸し出す。
この一連の活動によって、常に旅客機の高いパフォーマンスを維持する。中国産旅客機の性能
を見せ付ける。言い換えると、潜在顧客の発展途上国はまさに、中国産旅客機の性能の見せ場で
ある。良いスタートは中国産旅客機とっては、極めて重要である。
22
(2) 人材を確保、獲得する。
「ハイテク産業」とは、事業活動が科学技術成果に大きく依存し、しばしばそこでの技術変化
が急速かつ継続的であるような産業をいう。分析上は、研究開発支出額の売上高に占める比率や
( 科学者 や技 術者な ど) 研究開 発要 員の全 従業 員に占 める 比率 [両者 をとも に研 究集約度
(research-intensity)または技術集約度(technology-intensity)と呼ぶ]が高い産業を、ハイテ
ク産業と定義することが多い。この意味で、ハイテク産業は技術機会が豊かなことと同義になる。
技術水準が競争優位と密接に結びついている産業といってもよい。[注 30] つまり、人材は中国
産旅客機のブランド化にとって、重要である。
これに対し、エアバス社は 2006 年 7 月北京に技術センターを設立し、中国人技術者の数を 200
人に増やす計画を示した。[注 31]これは、ボーイング社とエアバス社の中国産旅客機の新規参
入における反応の第一弾に過ぎない。今後、旅客機生産、整備の人材を廻る競争は激しくなるだ
ろう。この競争で、もしも負けたら、「大型航空機」の国家特定プロジェクトは失敗になるに間
違いない。
「財経」誌によると、「大型航空機」の国家特定プロジェクトにおける初期の研究・開発経費
は 500 億元~600 億元となっている。人材確保を廻る競争が原因で、この経費の中、人材に対す
る投資額を最優先に考えておかなければならない。そして、勿論この経費の中では、外国の優秀
な人材を獲得する際に生じる費用も含まれなければならない。
(3) 自動車メーカーと技術提携する。
中国の航空機産業が家電、自動車などとひと味違った展開になっているのは、軍事技術が民生産
業にうまく応用されていることだ。中国は昨年の有人衛星が象徴するように航空宇宙産業に資金
と人材を大量に投入してきた。主に軍事的な動機だったにせよ、その技術蓄積が旅客機に生きて
いる。[注 32]
確かに、初期の段階では、経費の国からの援助があったが、援助が間に合わない時があるかも
しれない。これに対し、中国自動車メーカーとの提携は必要になる。これによって、開発や研究
費用を分け合い、研究成果もお互いに共用する。中国旅客機メーカーにとっても、中国自動車メ
ーカーにとっても、ナッシュ均衡的なことであるので、実現するのは難しくない。
(4) 強力的な政府のバックアップは必要である。
中国経済の高速発展とともに、すでに激しくなってきた貿易摩擦は中国航空機プロジェクトにと
っては、潜在的な問題となる。特に、今後中国航空機プロジェクトの発展と同時に、中国とアメ
リカと EU の間では、貿易摩擦はますます激しくなる一方であるのに対して、中国政府はどれほど
アメリカと EU の圧力を耐えられるかも中国航空機プロジェクト成敗の要因となる。そこで、中国
政府は外交と経済的な準備をしておかなければならない。
23
そして、アフリカだけではなく、他の潜在顧客となる地域との交渉も、中国政府のトップにとっ
ては、役割を果たさなければならない。
航空機の
航空機の
ブランド化
ブランド化
自動車メーカー
との提携
品質管理
国からの援助
政府の
バックアップ
人材の確保
☆ 国内人材の確保
☆ 整備センターの設立
☆ 国外人材の獲得
☆ 整備人材の派遣
☆ アフターサービス
経験
経済力
技術基盤
土台
図 9 航空機のブランド化提案の関係図
まず中国旅客機の大型化をし、それから、ブランド化できれば、将来、中国経済の持続的な発
展に牽引車的な存在になるのは間違いない。単純に GDP を比較することは無意味である。国の
貧富は GDP の多少を見るのではなく、GDP の構成を見るのである。8 億本のズボンを作るのと、
航空機 1 機を作るのとでは、GDP は同じである。しかし、航空機を作れる国は豊かな国であるが、
ズボンだけを作れる国は貧しい国である。ゆえに、大型航空機の生産とブランド化を実現できる
かどうかは、中国の先進国仲間入りの象徴となるものである。
24
第四章
まとめ
いままで述べてきたように、この数年、中国経済が高速的発展してきた原動力は外国資本の導
入であった。もし、外資がなければ、中国経済の高速発展は不可能だったろう。一方、外国企業
の思惑は中国の安価な人件費と膨大な市場を求めて投資したわけである。ただし、人件費の高騰
と電力不足などの問題が目立つようになっているとともに、外国の企業は新たな投資先を探して
いる。
この背景の中で、中国経済の発展を維持するために、中国商品のブランド化は一つの手段だと
考えられる。これは本論文の研究経緯である。そして、なぜ自動車や航空機などの商品をブラン
ド化するかというと、以下のようになる。
表1
中国における産業別 GDP 構成比と産業別就労人口構成比
産業
第 1 次産業
第 2 次産業
第 3 次産業
産業別 GDP 構成比(%)
15
52
33
産業別就労人口構成比(%)
50
21
29
出典:国際金融情報センター
表のように、中国の第2次産業は中国の GDP の中で、半分以上の割合を占めているので、極
めて重要な存在である。第 2 次産業が Made in China から Made by Chinese への競争力を高め
れば、外資が減っていっても、中国経済の持続的な発展が可能であることは間違いない。
一方、2007 年 12 月 17 日に、世界銀行の世界経済統計により、MER ベースの中国の GDP は
8 兆 8000 億元(約 970 兆円)、世界全体の GDP の 14.9%を占めていた。世銀報告の PPP ベー
スでは、中国の GDP は 5 兆 3000 億ドル(約 583 兆円)、世界全体の GDP の 9.6%を占め、国
別では 2 位となった。1 位はアメリカ、3 位は日本となっている。購買力の増加とともに、商品の
ブランド化も必要になってきた。
そして、自動車や航空機などの商品のブランド化が先行して、第 2 次産業の全体、さらに、第
1 次産業と第 3 次産業もブランド化が出来たら、中国経済はもっと発展できると考えられる。
特に、ハイテク分野の代表である航空機のブランド化の成敗は中国経済にとって、次のステー
ジ、所謂先進国になる鍵である。
本論文の提案は、重工業の代表である自動車および航空機のブランド化こそが、中国経済の生
き残り戦略として最重要であるというものである。これらのブランドが牽引役となって、他産業
への大きな波及効果を期待できる。
25
[注]
[注1] 出典: フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」を参考に執筆した。
「ブランド」2007.04.11 13:57 取得
[注 2] 出典: フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」を参考に執筆した。
「ブランド」2007.04.11 13:50 取得
[注 3]橋本直仁 2007.06.25 掲載 2007.08.24 取得
www.lifestudies.org/jp/univ/hashimoto01.html
[注 4] 出典: フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」を参考に執筆した。
「ロールス・ロイス」2007.04.12 14:27 取得
[注 5] 出典: フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」を参考に執筆した。
「フェラーリ」2007.04.12 15:27 取得
[注 6] 出典: フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」を参考に執筆した。
「ロールス・ロイス」2007.04.13 17:27 取得
[注 7] 「人民網日本語版」2007.02.05 掲載 2007.04.11 取得
http://j.peopledaily.com.cn/2007/02/05/jp20070205_67581.html
[注 8] 「Chinavi」2003.12.01 掲載
2007.04.11 取得
http://www.chinavi.jp/koramu109.html
[注 9] 三宅輝幸 2007.06.21 掲載 2007.08.24 取得
http://www.qdecc.com/Article.asp?NewsID=333
[注10] 李竜洙(イ・ヨンス)記者 朝鮮日報 2007.10.10 掲載
2007.10.12 取得
http://www.chosunonline.com/article/20071010000038
[注11] Schumpeter[1939] p.84, 87-88, 訳書 121、126 ページ
[注12] 明石芳彦
新庄浩二(2003)「産業組織論
新版」有斐閣
p.236
[注13] 2007.06.25 掲載 2007.08.24 取得
http://www.6park.com/news/messages/60465.html
[注 14]アメリカ科学財団(National Science Foundation: NSF)の定義による。
[注15] 明石芳彦 新庄浩二(2003)「産業組織論
新版」有斐閣 p.235
[注16] 林 義正 (2002) 「世界最高のレーシングカーをつくる」光文社文庫 p.24-30
[注17] 出典: フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」を参考に執筆した。
「ロールス・ロイス」2007.08.13 10:27 取得
[注18] 2007.06.25 掲載
2007.08.24 取得
http://www.6park.com/news/messages/60465.html
[注19] 明石芳彦 新庄浩二
[注 20] Yahoo ニュース
(2003)「産業組織論
2007.12.29 掲載
新版」有斐閣 p.247
2007.12.31 取得
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071229-00000006-rcdc-cn
[注 21] 2007.08.20 取得
26
http://www.initiaconsulting.co.jp/pdf_file/brand.pdf
[注 22] 天野宏欣
中国情報局 2006.09.05 掲載
2007.05.08 取得
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2006&d=0905&f=column_0905_003.shtml
[注 23]2007.03.30 掲載 2007.10.12 取得
http://blogs.dion.ne.jp/arimadidi/archives/cat_237693.html
[注 24]2007.06.25 掲載 2007.08.24 取得
http://www.6park.com/news/messages/60465.html
[注 25]経済トピックス
2007.04 掲載 2007.10.15 取得
http://www.shanghai.or.jp/osaka-city/news/79.html
[注 26]NIKKEI NET2004.07.08 掲載 2007.10.15 取得
http://www.nikkei.co.jp/neteye5/goto/20040708n7778000_08.html
[注 27]「人民網日本語版」2005 年 12 月 24 日
http://j.peopledaily.com.cn/2005/12/24/jp20051224_56190.html
[注 28]北京週報
2007.06.13 掲載
2007.08.24 取得
http://www.pekinshuho.com/yzds/txt/2007-06/13/content_65845_2.htm
[注 29]朝鮮日報
2007.10.10 掲載
2007.10.12 取得
http://www.chosunonline.com/article/20071010000038
[注 30] 明石芳彦
[注 31]朝鮮日報
新庄浩二(2003)「産業組織論
2007.03.20 掲載
新版」有斐閣 p.246
2007.10.12 取得
http://www.chosunonline.com/article/20070320000042
[注 32]後藤康浩(2004)http://www.nikkei.co.jp/neteye5/goto/20040708n7778000_08.html
27
参考文献
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新版」有斐閣
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モデルの比較と経営戦略への適用」日経広告研究所
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(2002)「世界最高のレーシングカーをつくる』
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H・トーマス・ジョンソン、アンデルス・ブルムズ(2002) 「トヨタはなぜ強いか(自然生命シ
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http://www.brics-kabu.com
http://center-new.blogspot.com/
http://j.peopledaily.com.cn
http://www.chosunonline.com
28
Strategy of Making to Brand of Chinese Commodities
Wang Xin
Summary
The origin of brand is to give the burned symbol to domestic animals, and to distinguish
them from others. Today, the brand aims to distinguish own brand from the products and
the services of other sellers and seller groups, and to differentiate it from competitors and
others (e.g., names, words, symbols, and designs, etc.). At the same time, it is important
to pursue the value added.
Capital, technology and talents have recently rushed into China accelerated by the
globalization of the world economy. As a result, China has stood dominant as "Factory in
the world" taking advantages of the “labor intensive industry”. By utilizing abundant and
cheap labor force, low-price products have been manufactured, and rapid economic
growth has been prominent all over the world.
On the other hand, the tendency to move the production base from China to South Asia
and Southeast Asia, where cheaper labors are available, is phenomenal. This has been
accelerated by Yuan appreciation, inflationary pressures by the rise of import prices, etc.
Branding of Chinese commodities has become more and more important in this
background. In short, the branding of Chinese commodities has been appreciated in the
world. In this sense, the branding is Survival Strategy to China.
In these days, Chinese commodities have been highly valued globally. The change from
the past Made in China (commodities made in China) to Made by Chinese (Chinese
commodities) is a good example. In other words, the quality of Chinese commodities keeps
improving. The past image of "it is cheap but bad" of the commodities made in China has
changed. This is the foundation where Chinese commodities become brands. However, it
is not easy to make one commodity a brand.
Looking at COCACOLA in the US, Louis Vuitton in France, and the history and the
culture of the brand such as Ferrari of Italy, Status Symbol (position symbol) and Life
Style are main factors of establishing brand. In this thesis, I propose the strategies of the
representative high-value-added commodities of the Chinese market.
I present the branding strategies for car and aircraft based on the result of the
analysis.
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