携帯電話革命 アブストラクト 現在、携帯電話産業は世界を舞台に大きく変化しようとしている。そして 2001 年から次 世代型携帯電話のサービスも始まろうとしている。その大きな変化に IT 後進国として見ら れてきた日本の携帯電話会社が主役として踊り出るかもしれない。その経済効果は計り知 れない。本稿では NTT ドコモのiモードの国内での成功を例にして、はたしてこのiモー ドが世界でも成功するか、という観点から国内外の業界の現在の情勢そして今後の展望を 検証する。 1 章では現在、加熱する国内の携帯電話産業について、一章で「iモード」を擁して、圧 倒的なシェアを誇る NTT ドコモを中心に追いかける2社(KDDI、J フォン)の情勢を加 入者数、加入者数推移、から考察していく。またどうしてここまで「iモード」が爆発的 な普及を達成したのか、そのサービス内容やコンテンツを考察するとともに今後始まる新 しいサービス又はビジネスへの可能性を探っていく。2 章では java 対応の「iモード」や 次世代型携帯電話の登場そして「ブルートゥース」を使った家電との融合、更に携帯電話 を使った電子財布の構想など今後の携帯電話の進化の可能性を見ていきたい。そして 3 章 では国外情勢を規格の違いをみながら検証し日本との経営スタイルの違いを見てその日本 企業の成功の可能性を検証していく。 以上の考察を踏まえて NTT ドコモの「iモード」をつかった日本発の世界標準への可能 性があることを証明する。 学籍番号 5197183 三橋 達也 5197187 三宅 良太 目次 はじめに Ⅰ iモードによる変革と課題 1 iモードとは一体どういうものなのか? (1)iモードとは一体何なのか? (2)iモードで何ができるのか? (3)iモードの料金システム(パケット方式について) 2 iモードが起こしたインターネット・ビジネスの変革 (1)モバイルバンキング (2)モバイルトレードの発展 3 iモードの問題点 Ⅱ 携帯電話の進化 1 Java 対応iモード 2 次世代携帯電話 3 携帯電話の未来 (1)携帯電話がパソコンに近づく日 (2)ブルートゥースの可能性 (3)携帯電話の財布化 Ⅲ 国内外の情勢 1 国外の情勢 (1)北欧 (2)東アジア (3)アメリカ 2 国内3社比較 (1)NTT ドコモ (2)KDDI と J フォン 3 日本規格と欧州規格 最後に はじめに 「IT(情報技術)革命」 。この一年この言葉が新聞やテレビに登場しなかった日は無い。 この言葉は流行語になるほどの言葉であるが、実際日本はこのITでは世界のどのくらい 進んでいるかというと日本は実はITの分野では世界の後進国なのである。日本はIT先 進国といわれるアメリカ合衆国とではIT革命の流れでは 10 年の差をつけられているとも いわれる。これではいけないと、日本政府もこのIT(情報技術、簡単にいえばインター ネットに関連する事)の分野の普及にかなりの予算を割いているが、これは実はパソコン を介したインターネット、つまり有線を使ったインターネットの分野であり、本稿で取り 上げる携帯電話を使ったインターネット接続、つまりモバイルインターネットの分野では 実は日本は世界一の先進国なのである。では、何が日本をモバイルインターネットの先進 国にしたのかというと、それは「iモード」であり、そのサービスを提供する会社の「NTT ドコモ」である。実際、携帯電話を使ったインターネット接続サービスを開始したのは世 界でも NTT ドコモが最初で、この分野では日本の、しかも NTT ドコモの技術力が世界で も群を抜いて高いのである。よって、このiモードが世界標準になることができれば、日 本はモバイルという分野において大きなイニシアチブを取ることができる。本稿では、携 帯電話の可能性と国内外の携帯電話業界の動向を論点にしてiモード(NTT ドコモ)が世 界に広まることができるかということを考察していく。 Ⅰ iモードによる変革と課題 1iモードの仕組み (1) iモードとは一体何なのか? iモードとは 1999 年 2 月に NTT ドコモが始めた携帯電話によるインターネット接続サ ービスのことである。それまで、インターネットに接続できる端末と言えば、パソコンが 主流であった。しかし、 「パソコンでインターネットに接続しようと思うと、それなりの知 識と手間が必要になり、誰でもインターネットができるとは言いがたい」1)と言われてい た。それに比べiモードの場合は、まずiモード対応の携帯電話を購入し、その際にiモ ードのサービスに加入するだけで、その瞬間からインターネットに接続できるのである。 iモードの功績とはまさにそこであり、携帯電話という誰でも持っている端末を使って、 誰も簡単にインターネットに接続できる環境を出現させたということである。つまり、今 までパソコンに馴染みがない、また、操作が難しいからといってインターネットを敬遠し ていた人も、簡単にインターネットに接続できる機会が与えられたということになる。 (2)iモードで何ができるのか iモードで可能なことはホームページ(web ページ)の閲覧とeメールのそう送受信で ある。 まず、ホームページの閲覧から説明していく。iモードのホームページ閲覧機能は基本 的にはパソコンのブラウザの機能と大差はない。ただ、普通のホームページと、記述言語 が異なっている。パソコンで日ごろ見るホームページに使用されている記述言語は HTML というが、iモードでは、HTML を簡略化した C-HTML(コンパクト HTML)という言 語を採用している。 C-HTML も基本的なところは HTML と同じなので既存のホームペ ージをiモード用に書きかえる手間が少ないというメリットもある。が、HTML を簡略化 したものであるので、「使用できないタグがいくつかある」2)のと、外国の携帯電話での インターネット接続サービスで見られるホームページでは、WAP という記述言語が標準な ので、iモードで外国のホームページは見ることができないという欠点もある。もう一つ は、eメールの送受信である。iモード機能のない携帯電話にもメール機能は付いている が,基本的には同じ会社間の携帯電話でしかメールを交換することしかできない。 (3) iモードの料金システム(∼パケット通信方式∼) 通常インターネットを利用すると、プロバイダに支払う料金とともにアクセスポイント までの電話回線使用料が 3 分につき 10 円かかる。これを長時間使用すると、月々の支払い がかなりの金額になってくる。これに対し、iモードの料金システムは、月額の基本料金 300 円とパケット料金で構成されている。パケット料金とは、読み込んだデータの量で課金 されるシステムである。このシステムなら、 「一度データを読み込んでも新しいデータを読 み込まない限り何分同じ画面を見ても新たに課金されない」3)のである。 「パケット料金 は 128 ビットが 0,3 円となっている。また、eメールなら送受信ともに 20 文字まで 0,9 円、最大文字数の全角 250 文字で送信 4,2 円、受信2,1円が目安になっている。 」4) 図 1 メール料金図 メールの場合の通信料 本文の文字数 送信 受信 20文字 0.9円 0.9円 50文字 1.5円 0.9円 100文字 2.1円 1.2円 150文字 3.0円 1.5円 250文字 4.2円 2.1円 出所)http://www.nttdokomo.co.jp/i/whats.html「NTT ドコモホームぺージ」より作成 また、iモードのサイトには無料コンテンツと、コンテンツのサービスを利用するのに情 報料がいる有料コンテンツの2種類がある。この「有料コンテンツは、iモードのコンテ ンツの約2%」5)である。有料コンテンツを利用するには、だいたい「月 100 円∼300 円 ほどの情報料を利用者は支払うことになる。この料金は通信料金と一緒に NTT ドコモが徴 収する形になる。この際手数料として情報料の9%が NTT ドコモ側の収入となる。一般に この仕組みを情報料金徴収代行システムという。 」6)このシステムのメリットは、サイト 運営者にとっては確実にサイト運営料が手に入り、情報料の未払いが起こらない。また、 代金の回収は、NTT ドコモが行ってくれるので、代金回収のコストがかからない点が挙げ られる。 「だから、情報を提供するサイト運営者はその収入を見越して新規にiモードにコ ンテンツを提供しようと考える。」7)ようになる。また、NTT ドコモ側のメリットは一人 一人の情報料に対する手数料は少ないが、優良なコンテンツを目当てに新たなユーザーが 増えれば増えるほど膨大な手数料収入が望める点である。このように、iモードの料金シ ステムは、ユーザー、コンテンツ提供者、NTT ドコモの 3 者に十分なメリットのある、優 れたシステムとなっている。 2 iモードが起こしたインターネットビジネスの変革 (1)モバイルバンキング iモードの登場は、インターネットビジネスの分野にも変革を起こしつつある。その一 つとしてiモードを使ったモバイルバンキングがある。 iモードで受けられるモバイルバンキングサービスには、2 つのタイプがある。一つは、 「預金の振込、引出しなどほぼ ATM でできることがiモードでできるサービス、もう一つ は、預金の残高確認のみができるサービス」8)である。 モバイルバンキングのメリットは、いつでもどこでも銀行のサービスが受けられる点と、 「携帯電話の画面が小さいことにより、操作している画面が他人に見えずらく、プライバ シーが守られやすい。」9)という点が挙げられるであろう。また、パソコンを使ったオン ラインバンキングでは、ハッキングなどにより個人データが流出しやすく、必ずしもセキ ュリティが高いとは言えないが、携帯電話の場合は、現在のところ、そういう事例も報告 されていないので、そういう心配は無いだろうと思われる。これでは、オンラインバンキ ングの分野では携帯電話のほうが優れていると判断しがちであるが、「オンラインバンキ ングの分野ではパソコンも重要な役割を担っているといえる。過去数ヶ月の入出金のデー タなど重いデータの処理は、処理速度に勝るパソコンのほうが向いている」10)である。 その代わり、「電子マネーの蓄積や決済に利用できる電子財布のような役割は、常に持ち歩 いている携帯電話のほうが向いている。 」11) また、モバイルバンキングが進むと、駅前の出店構造が変化することが考えられる。現 在、 「駅前の一等地を占めているのは銀行や証券会社あるいは保険会社であり、またその支 店や営業所、代理店など」12)である。ところが、モバイルバンキングが普及すると、携 帯電話から口座の開設や残高照会、資金移動、定期預金の契約や解約までその場で可能に なる現金の引出しや入金に関しても近所のコンビニエンスストアーに設置されるであろう 「銀行や他の金融機関の多く ATM から 24 時間いつでも可能になると思われる。となると、 はわざわざ地代の高い駅前の一等地に店舗を構える必要がなくなる」13)しかし、店舗が まったく必要なくなるかといえばそうではなく、 「相続や年金の手続き、投資の相談など窓 口の業務は無くならない。 」14)が現在のように駅前に店舗を構える必要は無く、ファー ストフード店のように街道沿いやショッピングセンターなど、我々の住宅に近いところで 定型化された業務を行う軽量化された業務形態が登場すると思われる。もちろん、現在の ような高い給料の人員は必要無くなり、いろいろな点から、かなりのコストダウンが可能 になると思われる。このことによる経営上のメリットは必ずしも少なくない。 (2) モバイルトレードの発展 日本でも金融ビッグバンの一環として 1999 年 10 月に株式売買委託手数料が完全自由化 され、日本でも本格的なインターネット証券取引時代がやってきた。 「松井証券や新規参入 企業を中心に早くも手数料最低 1000 円を打ち出している」15)ように、米国同様に手数 料は大幅にダウンしてきた。こうした手数料の値下げによって、個人によるインターネッ トを介した証券取引のユーザーが増大している。さらに日本ではiモードなどの携帯電話 によるネット接続が発達しているのでネット接続ができる携帯電話で株価情報や市況状況 をリアルタイムに入手し,株や債権などの売買注文ができるモバイルトレードの利用率が 高まってきている。 「当初は、大和証券と日興証券の2社がサービスを提供してきたが、そ のほかの会社も参加を急ぐ方向」16)である。2000 年3月に入って、証券界最大手の野 村証券がiモードによるオンライントレードのサービスを開始した。野村の場合は口座数 は15万、預かり資産は 1 兆円に上る。この野村がiモードを利用したサービスを開始し たことはつまり、ドコモに 15 万人分の通信利用料収入が入るというメリットが生じてくる。 「日本でオンライン取引に熱心な証券会社は、松井証券、大和証券、今川三澤屋証券など だが、このほかオンライン専門業者の日興ビーンズ証券、マネックス証券なども営業活動 を一段と活発化させている。 」17)iモ−ドによるモバイル・トレーディングの特徴の一つ は、株価に変動があった場合や売買が成立した際に、呼び出し音を鳴らして顧客に知らせ るサービスである。また、 「日本のオンライン取引口座数は、2∼3年後に 200∼300 万口 座(現在は50万口座)に急増、新しい個人投資家層の呼び込みにつながるものと予想」1 8)できる。2001 年春にサービスを開始する予定の W-CDMA 対応の次世代携帯電話が登 場する頃には、携帯電話で直接株式の売買を行うモバイルトレーディングがかなり増えて くると予想される。 3 iモードの問題点 今までは、iモードの良い点を述べてきたが、ここでは、iモードが抱える問題点を指 摘したいと思う。 2000 年の春頃に、iモードが繰り返しサービスを停止する問題が発生した。「iモードの 加入者が爆発的に増大したせいで、データの流通量がiモードセンターのサーバの処理容 量を越えたことが原因」19)とされている。 対策として NTT ドコモは、 「それまで1ヵ所(東京都大田区)であったiモードセンタ ーを 6 月には横浜にも開設し、その後順次数ヵ所にiモードセンターを開設してデータの 流通量を分散して信頼性の向上を図った。(その後、システム設計上の欠陥があるとして、 ソフトの交換やハードディスクの増設により、障害は解決される見とおしという発表がド コモ側からあった。 ) 」20) 「企業にとってはビジネスのインフラであり、利用者にとっては生活のインフラであるi モードサービスが止まるということは、多少のタイムラグが許される一般のインターネッ ト以上に問題が重要になるであろう。また、iモードをジャストインタイムで利用するこ とを前提としたビジネス(たとえばiモードを利用したモバイルトレーディングなど情報 の即時性が求められるビジネスなど)では、iモードに障害が起きると大きな損害が出な いはずがないと思われる。 」21) さらにiモードを使ったいたずらへの対策も必要であ ると思われる。先ごろ、iモード対応携帯電話機へ電子メールを送信し、受信者に認識の ないまま 110 番へ電話をかけさせる等のいたずらメール被害が発生した。詳しく説明する と、あるホームページを閲覧しているときに、はいというボタンをクリックすると 110 番 へ、いいえというボタンをクリックすると 119 番へ電話がかかってしまうといういたずら である。この問題で発生するであろう最悪の事態を想像すると、不特定多数の人間がこの ホームページを閲覧したときに電話回線がパンクして、事件や火事が発生しても電話がつ ながらないなどのトラブルが発生し、警察や消防などの社会の安全に関わる重要な機能が 正常に働かなくなる危険が生じてくる。NTT ドコモ側も対策に乗り出していて、 「ホームペ ージや請求書などに注意を促す文書を添付したり、iモードの端末のほうで、発信電話番 号をディスプレイに表示したり、表示された電話番号への発信を行うかの確認画面を追加 した携帯電話端末を発売する予定もある。 」22) iモードが抱える問題点をいくつか取り上げてみたが、まだ、問題点はいくつもあるよう に思われる。また、iモードサービス開始当初は、利用者の増大によりサーバがダウンす るなどというトラブルは予想できなかったように現在の時点では想像できないようなトラ ブルや問題点が発生するかもしれないと予想される。これらのことをどう解決していくか がiモード(NTT ドコモ)ひいては携帯電話業界全体の課題ではないかと思われる。 Ⅱ 携帯電話の進化 1 Java 対応iモード NTT ドコモは世界に先駆けて、2001 年初冬に Java 対応携帯電話503iシリーズを発 売する予定である。 これまでのiモ−ドは携帯電話の小さな画面に表示するため、HTML をコンパクトにし た C-HTML と呼ばれる言語を採用していた。ただし、ホームページで表示できるのは文字 や静止画像までとの制約があった。その後画面のカラー化、着信音の和音化など、進化を 遂げてきた。そしてこの Java を搭載することにより、携帯電話はさらに劇的な進化を遂げ ることになる。 ここで、Java について簡単に説明しておく。「Java とは、アメリカのサン・マイクロシ ステム社が開発したネットワーク用プログラム言語で、強力なセキュリティ機構や豊富な ネットワーク関連の機能が標準搭載されている」23)。また、Java の最大の利点は、「ウ インドウズやマッキントッシュなどの基本ソフト(OS)に依存することなく単独でプロ グラムを動かすことができる点」24)である。 では、Java を搭載することにより携帯電話はどう進化するのかというと、まず、端末の 画像表示能力が上昇し、動画の表示が可能になる。現在のiモ−ドで人気の高いサイトで あるキャラクターの画像配信も動画になり、アニメーションをするようになる。このほか にも、Java を搭載することで可能となることがあるので、次に挙げておく。イ)ゲームを 楽しむことができるので、事前にゲームをダウンロードしておき、電波の届かないところ でゲームを楽しむことができる。ロ)検索、申し込みなどにコミュニケーション性の高い Java の特性を活かして、ニュース・情報サイトからユーザー設定のキーワードで定期的に サイトからニュースを取り出すことが可能になる。ハ)SSL など認証用のソフトをダウン ロードすることにより、端末のセキュリティが強化され、モバイル EC(電子商取引)が本 格化する。」25)以上に挙げた事の他にも、いろんなサービスが可能になってくると思わ れる。さらに、2001 年に開始が予定されている次世代携帯電話と Java を組み合わせると、 もっといろんな事が携帯電話の端末で可能になってくるであろうと思われる。 2 次世代携帯電話 2001 年 5 月に NTT ドコモが世界に先駆けて次世代携帯電話 IMT-2000 のサービスを開 始する。IMT-2000 について説明しておくと、IMT-2000 とは、国際電気通信連合(ITU)に よって定められた次世代携帯電話の正式名称である。 ITU では、次世代携帯電話の規格を定めるにあたって、次に挙げる3つの特徴を要求し た。イ)クリアな音声通信の確保。ロ)高速データ通信を可能にする。ハ)世界中で同じ 携帯電話端末を使用できる国際ローミングを可能にする。 」26)ITU の示したこの3つの 特徴を達成し、次世代携帯電話の国際規格に選ばれたのが W-CDMA、cdma2000、EDGE の3規格である。 このうち、日本で採用される IMT-2000 の規格は、W-CDMA と cdma2000 である。この W-CDMA と cdma2000 という規格がどういうものであるかこの2つの規格の違いをとっ て説明すると、このふたつの規格には、どちらも CDMA という規格が採用されている。こ の規格は、すでにauの cdmaone で採用されている規格である。その特徴を簡単に挙げる と、 「今までの通信方法(PDC 方式)と違い、電話ごとにそれぞれ違う符号を付けることで、 同じ周波数の帯域を、複数の電話機が、同じに用いることができる。」27)考え方として は、パケット方式の考え方に似ている。さらに、今までは通話品質が必ずしも良いとは言 えなかったビルの谷間などでも安定した通信品質を確保することができ、また、CDMA 規 格では同時に最大 3 つの基地局と通信できるため移動中でも通信が途切れることがないな どの特徴がある(これをソフトハンドオーバー技術という)。また、W-CDMA、cdma2000 規格のどちらも電波は 2GHz を使用し、さらに音声、データ通信の高速化が図られている ので、 音質にはそれほど大きな差はなさそうでであるが実際には W-CDMA 端末、 cdma2000 端末どちらも発売されていないので実際販売されて使ってみないとわからない。では、 W-CDMA と cdma2000 との違いはどこになってくるのかというと、この 2 つの規格の違い は電波をどのように使うかという違いである。 「W-CDMA はひとつの大きな帯域にデータ 通信のデータや音声データなどが複数入り交じって1つのチャネルで送信される。だから、 もし、たとえば音声とデータ通信とさらに動画を転送するような場合、音声と動画のデー タが大きすぎて、データ通信ほうの通信速度の低下や電話の音声品質の低下、などと言う 事がおこるかもしれない。 」28) それに対し、マルチキャリア方式(必要に応じて、複数のチャネルを使う方式)を採用 している cdma2000 では、 「音声は音声、データはデータで別の帯域を使ってデータの送受 信がされるので、お互いのデータ量がお互いのデータ転送速度に影響することはない。が、 逆にいうと、何かの都合で帯域を1チャネル分しかとれなかった場合は、音声、データ通 信、どちらかしか使えなくなってしまう、という可能性も出てくるかもしれない。 」29) ただ、実際に、そのような障害が起こるかは、iモードで起こった障害と同様にユーザ ーの増え方に基地局の充実具合がついていくことができるかが鍵となってくるので、端末 が発売されていない現在はわからないが、サービス開始当初のトラブルは、ユーザーの不 信感を買い、ユーザー離れを引き起こす可能性が予想されるので、NTT ドコモ、J−フォン、 KDDI(au)ともにそういうトラブルが発生しないように万全の体制を敷いてサービスを 開始すると予想される。 さらに述べると、W-CDMA は従来採用していた PDC 規格の設備はまったく使用できず、 基地局などのネットワークを1から作り上げなければならないので、2001 年 5 月のサービ ス開始当初はどうしても W-CDMA 端末が使用できるエリアは東京や大阪などの大都市に 限られてくると考えられる。この点、 cdma2000 は cdmaone を発展させた規格であるから、 cdma2000 と cdmaone が両方利用できる端末がはじめから開発・供給されれば、サービス 開始当初から全国で端末が利用できる可能性が予想されるが、W-CDMA 端末の場合でも 「PDC とのデュアルモードをサポートしたもの(現在のドッチーモのようなもの)が出て くる可能性はあるが、サービス開始当初から出すのは難しいと予想される。 」30)技術面 でのちがいは以上の点であるが次世代携帯電話の普及の鍵を握っているのはiモード発売 後の NTT ドコモのシェアが急速に拡大したのと同様にその端末でどのような情報サービス が提供されるのかというコンテンツの勝負になってくると思われる。コンテンツの勝負に なれば、iモードで業界トップの位置を不動のものとした NTT ドコモの優位性は明らかで ある。さらに、次世代携帯電話のサービス開始時期についても各社でかなり違いが出てい るので見てみると、下図のようになる。 各移動通信業者の IMT-2000 展開プラン 図2 事業者 方式 サービス開 開始場所 始時期 NTTドコモ W-CDMA 2001年春 東 京 23 区 、 川崎、横浜 J-フォン W-CDMA 2001年秋 東 京 、 名 古 屋、大阪 KDDI(au) cdma2000 2002年 東京、名古 屋、大阪 出所)藤沢太郎「図解でよくわかる携帯電話ビジネスのしくみ」、明日香出版社、2000 年、95 ページより作成 上の図で注目すべき点は、KDDI のサービス開始時期が 2002 年の 9 月と、NTT ドコモ と比べて一年以上遅れているところである。携帯電話業界は日々ものすごいスピードで変 化している。それは端末の面でもいえるしコンテンツなどの情報サービスの分野について もそうである。その世界において、同じようなサービスを展開するのにライバル会社と一 年以上の差があるというのは、かなり厳しいと思われる。あくまでも NTT ドコモと競争し 業界トップを狙う姿勢を表明している KDDI(au)とは違い 2001 年の 12 月に次世代携 帯電話のサービスを開始する予定の J−フォンは NTT ドコモとは競合するというよりか、 ターゲットを若者や女性に限定したりして他の2社とはサービスの差別化を図っていくよ うに思われる。以上次世代携帯電話を取り巻く日本国内の情勢を考察したが、次世代携帯 電話においても NTT ドコモの優位性は変わらず、NTT ドコモがその資本力とコンテンツ の豊富さを武器に業界の先頭を突っ走ると予想される。 3 携帯電話の未来 (1)携帯電話がパソコンに近づく日 携帯電話は、日々進化しつづけている。携帯電話が発売された当初は、単に電話ができ るだけというものであったが、現在では、簡単な計算やゲーム、スケジュールの管理やさ らに web ページの閲覧、eメールの送受信など、徐々に性能がパソコンに近づいてきてい る。携帯電話は今でも小さなパソコンと言う事ができるが、現在の所パソコンとは決定的 に違う点がある。それは、端末自体の大きさが小さいので、端末の処理速度がパソコンと 圧倒的に違う点である。 「現在の携帯電話はパソコンと比べ、CPU の処理速度が 100 分の 1、メモリーの容量が 400 分の1に過ぎない」31)のである。これは、 「現在の技術では 消費電力の関係で、コンパクトなボディの携帯電話にはこの程度の性能しか実現できない」 「日本には、低電圧で動作する LSI や長寿命・小型の電池など、 32)ためである。だが、 電子部品の技術に優れた企業が中小も含めて、多数存在する」33)。しかも、「それらの技 術をモーターなどの機械部品や、デジカメなどの精密部品などとも融合させることも得意」 34)である。これらの技術が進歩すると、携帯電話に高性能のデジカメなどの付属機能を つけることも可能になるし、携帯電話の性能自体が格段にアップし、パソコン並の処理速 度をもつ CPU が搭載されるかもしれない。となると、近い将来には、携帯電話はパソコン に取って代わる時代がくるかもしれないのである。 (2)ブルートゥースの可能性 ブルートゥースというのは、 「ノートパソコンや PDA、携帯電話などのあらゆるデジタル 機器のワイヤレス接続を可能にした新しい無線の規格」35)である。ケーブルを使わずに 接続して、音声やデータをやり取りできることのできるこのブルートゥースには、2つの 特徴があるとされる。まず、一つ目の特徴としては、「最大1M(100 万)ビット/秒での 港即データ通信が可能な点、もう一つは、0.5 平方インチの小型のトランシーバーを利用す るため、小型で、消費電力がかなり小さい点」36)である。と言うことは、携帯電話など の小型機器に搭載することが可能になり、さらにその機器のバッテリーを長持ちさせるメ リットが生じてくる。また、「ブルートゥースの電波の届く範囲は、10 メートル以内であり、 障害物があっても利用できる。 」37) このブルートゥースが携帯電話に搭載されると携帯電話がどう進化するか考察すると、 まず、携帯電話をポケットに入れたままで、イヤホンとマイクのみで通話ができるように なると考えられる。また、携帯電話でパソコンを操作して電子メールを送受信することが できるようになると考えられる。さらに携帯電話が家電のリモコンになり、電波の届く範 囲にある家電を操作できるようになると考えられる。また、ブルートゥースを介して、パ ソコンや PDA はもちろん、デジタル家電などあらゆるデジタル機器をコードレスで融合さ れるものと予想することができる。このように、携帯電話とブルートゥースの融合で、携 帯電話の可能性がさらに広がると予想されるのである。 (3) 携帯電話の財布化 携帯電話の進化は、以上で終わりではない。近いうちに携帯電話が財布代わりになるか もしれないのである。「実際、携帯電話の先進国であるフィンランドでは、携帯電話で商品 が購入できる自動販売機があり、携帯電話を財布として利用している。 」38)のだ。それ を可能にするのは SIM(加入者認証モジュール)カードという IC カードである SIM カー ドの特徴は、携帯電話の番号など各種の個人データを保存できるところにある。また、 「SIM カードは携帯電話本体から自由に取り外しが可能で、携帯電話の端末を自由に交換するこ とが可能になる。」39)実は、この SIM カードは現在の携帯電話の国際標準である GSM 規格では広く使用されているのであるが、日本で多く普及している PDC 方式では使用され ていない。だから、日本ではなく北欧のフィンランドで、携帯電話による買い物が可能だ ったのである。しかし、日本でも近いうちに携帯電話を財布代わりに利用できるようにな ると思われる。その理由は次世代携帯電話にこの SIM カードが標準装備されるからである。 では、携帯電話による決済がどういう仕組みになっているのか自動販売機の例を取って 説明する。 「まず、携帯電話の SIM カードにインプットしてあるデータで、契約者が契約し ている電話会社を特定する。ボタンを押して希望の缶ジュースを購入すると、自動販売機 は SIM カードと購入金額のデータを電話会社の課金システムに送信する。そのとき、本人 以外のなりすましを防ぐために電子認証を行い、携帯電話の持ち主であることが認証でき てから決済となるシステム」である。40) 携帯電話が電子財布となれば、財布代わりとして、たまたまお金の持ち合わせが無くて も自動販売機でジュースやタバコを買うことができ、スーパーやコンビニでの買い物のと きなど、比較的小額な決済が必要な場面で役に立つであろうと思われる。さらに、SIM カ ードに記録されている個人データを電子認証することにより、携帯電話は、クレジットカ ードの代わりともなる。このことにより、携帯電話で、コンサートのチケット予約や、航 空券の予約、また、電子モールでのオンラインショッピングが可能になり、その支払いも 携帯電話一台あれば可能になると思われる。 このように携帯電話に SIM カードが搭載されれば、日本ではあまり普及したといえない eコマースが携帯電話によるeコマース、略してM(モバイル)コマースと形をかえて一 気に広まる可能性が生まれてくると予想されるのである。 Ⅲ 国際競争の幕開け 1 国外の情勢 日本では 2000 年 3 月末の時点で PHS を含めた携帯電話加入者数は 5684 万台に達した、 これは固定電話超えている。これほど急速な携帯電話の普及を誰が予想したであろうか。 しかし、携帯電話が固定電話を超えたのは日本が始めてではない。フィンランドをはじめ とする北欧では 98 年末頃から携帯電話が固定電話を超える国が出始めていた。ということ は携帯電話をはじめとするモバイルは北欧の方が普及率が高いため、その開発や応用が進 んでいる。また IT 技術の成長が著しい東アジア諸国も携帯電話普及率を急激に伸ばしてい る。この章では世界各地域の携帯電話産業を考察して今後の国際競争を考えていきたい。 (1)北欧 現在において携帯電話の先進国は?と聞かれたら、普及率や開発の面から考えるとフィ ンランドやデンマークといった北欧諸国である。ではなぜ北欧諸国でこれほどまで携帯電 話の普及率が伸びたのか、その代表とも言えるフィンランドを例に見てみると以下のよう なことが言える。 フィンランドでは国土の大半が森や湖である、冬も長く厳しい。その為、固定(有線) 電話の工事がとても大変なものになる。そして雪の中を車で長い時間移動しなければなら ないこともしばしばある。もし途中で故障などしてしまった場合、携帯電話は国民の生命 を支えるライフラインになってくる。このような理由はスウェーデンやデンマークなどの 北欧諸国にも共通することである。 以上の理由からフィンランドでは国を挙げて携帯電話を国民の必需品とする方針を進め なければならなかった。まずフィンランドでは国が企業を支援してノキアのような携帯機 器メーカーを育て、携帯電話の供給を確保した。また通信料金も一般市民が使いやすいよ うに安く設定した。 このフィンランドのような政策を北欧諸国も行ったため現在、北欧諸国は携帯電話にお けるモデル国とも言われるほど発展した。 (2) 東アジア 現在、韓国やシンガポール、香港などの東アジア諸国では急速に IT 革命が進んでいる。 韓国では「サイバーコリア21」という構想を掲げ国を挙げて情報技術の発展を推進して いる。このような情報技術の発展はその国の経済を大きく活性化させている。ここで言わ れる情報技術の発展はパソコンによるものがほとんどである。しかしビジネスに活用する 携帯電話への注目度と需要は非常に高い。 それはビジネスに対する考え方の違いによるものである。 香港やシンガポールのビジネ スマンは非常に個人主義が強く、取り引きなどは個人対個人で行われることが多い、その 際に使う連絡手段にはオフィスの電話よりも携帯電話の方がスムーズで詳しく交渉が出来 る。又、タイでは昼の時間帯に慢性的に交通渋滞が起きる。これは大事なビジネスチャン スを潰してしまうことにもなりかねない。このようにタイやシンガポール、香港などの東 アジア諸国ではビジネスマンを中心に携帯電話は広がっている。学生や OL のコミュニケー ションツールとして普及していった日本とは少し違うものである。 中国については少し事情が変わってくる。中国では 1999 年1月1日の時点で携帯電話の 普及率は 2.1%である。しかしその加入数は 25103600 台である。また成長率も 80%と非常 に高い。これは中国における固定電話の普及率にも関係してくる。中国では固定電話の普 及率は周りのアジア各国に比べると非常に低い。よって中国では、携帯電話が当初から一 般用として利用されるケースが多い。経済発展に伴って急激に増加する通信需要に、莫大 な資金と長期間を要する固定電話回線の整備では対応しきれなかったため、より安価で短 期間に整備できる移動体通信が普及するようになったのである。結果として中国は今後の グローバルスタンダードの競争に大きく関わる非常に重要なマーケットになるであろう。 (3)アメリカ これまでのアメリカの携帯電話産業は多数の会社が乱立していた。しかし世界的な携帯 電話会社の統合の動きを受けて、アメリカでも統合の動きが激しい。 アメリカでは現在でも十分な周波数帯が割り当てられているためアナログ式(第一世代携 帯)が主流である。アメリカ人の考え方としても携帯電話は電話機能を重視しているため なんの問題もなかった。このため電波効率の良いデジタル式への移行は、他の携帯先進国 とくらべて遅れている。また N I I 構想や、G I I 構想によって官民挙げてインターネット での世界進出を進めてきたので、携帯電話やモバイルの分野に目がまわらなかったという ことも言える。しかし NTT ドコモの i モードの成功をうけてアメリカでの携帯電話を使っ た IP 接続サービスへの注目度は高くなってきている。例えば軍事目的に限られていた GPS (全地球即位システム)の一部民間転用を正式に許可した(2000/5) 。これは今後のモバ イル分野の最有力コンテンツと考えられる位置情報分野である。その内容は米軍が世界中 のすべての国を監視できるように張り巡らされていた軍事衛生や衛星通信を、民間でも使 えるようにするというものである。これによって世界中のどこにいても携帯電話からの緊 急通報が出来るようになる。例えば山岳地帯でも砂漠の真ん中でも密林の中でも緊急通報 ができるというものだ。この機能は 2001 年から発売される携帯電話には標準装備される予 定である。更にお家芸でもある豊富なインターネットのコンテンツをモバイルに移植する 動きも広がりつつある。このようにアメリカでは高度な軍事技術や豊富なインターネット の知識を利用してモバイルにおいても世界制覇を狙おうとしている。 2 国内 3 社の比較 現在国内における携帯電話会社(キャリア)は大きく分けて3つの会社に別れる NTT ド コモ、KDDI(au、TU-KA) 、J フォンである 2000 年 11 月現在の加入者数は以下の図 の通りである。 図 2000 年 11 月事業者別契約数 3 純増数 累計 NTT ドコモ 460000 33561000 Au 70700 10282600 Jフォン 106500 9311400 合計 637200 53155000 出所)http:/www.tca.or.jp/japan/annual/2000/pdf/c4_1.pdf「社団法人電気通信事業者協会」 より作成 図 4 2000 年度 グループ NTTドコモ 加入者数の推移 2000年4月 2000年5月 2000年6月 2000年7月 2000年8月 2000年9月 29,998,000 30,391,000 30,933,000 31,576,000 32,068,000 32,639,000 au 10,203,400 10,220,600 10,235,800 10,172,400 10,186,600 10,201,800 J-フォン グループ 8,420,600 8,587,500 2000年10 2000年11月 月 8,748,800 8,891,700 8,994,300 9,108,200 NTTドコモ 33,101,000 33,561,000 au 10,211,900 10,282,600 J-フォン 9,204,900 9,311,400 出所)http:/www.tca.or.jp/japan/annual/2000/pdf/c4_1.pdf「社団法人電気通信事業者協会」 より作成。 図 5 2000/11 i-mode Ez‐web j-sky 合計 IP 接続サービスの加入者数 1373000 15410000 428100 4578200 355500 3968200 2156600 23956400 出所)http:/www.tca.or.jp/japan/annual/2000/pdf/c4_1.pdf「社団法人電気通信事業者協会」 より作成 見てもわかるように現在では NTT ドコモが圧倒的に多い。このような結果になったのには 訳がある。ここでは i モードにより多数のユーザーを獲得したドコモを中心に三社の経営戦 略を見ていきたい。 (1) NTT ドコモ 1999 年 2 月ドコモは i モードサービスを開始した。開始当初そのサービスの内容はほど んど知られておらず、ほとんどの人がどんなサービスかを理解していなかった。携帯電話 の新しいサービスという感じでしか捕らえられられていなかったのである。 もちろん携帯 電話を使った IP 接続サービスは世界初なので仕方のないことではあるが。 ではなぜこの i モードが市場の50%以上を占める NTT ドコモの主力商品となったのか。 答えはそのエンターテイメント性にあった開始当初そのサービスは IP 接続よりも i モード 独自のサービスである占いや着メロといったサービスに人気があった。指示をしたのは女 子高生や女子大学生そして OL といった年齢層であった。そして広告宣伝などのマーケティ ング戦略との相乗効果が加わり i モードは若い世代を中心に急速な拡大を続けた。もうひと つの大きな要因はドコモが自らコンテンツ開発に携わらなかったということも挙げられる。 ドコモはインフラの設備に徹し、情報提供会社やユーザーがおもしろいアイデアを出し合 ってコンテンツ開発を競った。結果としてこのことがサービスの質を高め、ユーザーを増 やすという好循環につながった。そして現在では 3300 万人という圧倒的な加入者を集め他 社を大きく引き離し、圧勝の勢いを見せている。 (2) KDDI と J フォン ドコモの成功を見た KDDI(旧セルラーグループ)も 99 年 4 月から携帯電話による IP 接 続サービス「ezweb」という名称で開始した。それに続いて当時、日産自動車の通信事業撤 退に伴い DDI グループの傘下に入ったツーカーグループも 11 月から同じ名称でサービス を開始した。続いて 99 年 12 月からは日本テレコムグループのJフォン 3 社が「Jスカイ」 というサービスを始めて先行する 2 社を追いはじめた。この「Jスカイ」を始めるにあた りJフォンでは当初から 256 色対応のカラーディスプレー携帯電話を投入し、着信時のメ ロディーを和音化するなどマルチメディア性を高め他の先行する 2 社よりも差別化をはか った。Jフォンの経営戦略の特徴としては、徹底的に若者にターゲットを絞ったサービス の充実が挙げられる。その最たるものとして、メールサービスの充実が挙げられる。Jフ ォンは、いまやメールはJフォンと呼ばれるほど、メールサービスについては、機能、料 金ともに他社よりも充実している。 このように i モードに続いて他の 2 社も携帯電話を使った IP 接続サービスを始めたが加 入者数推移や IP 接続サービスの加入者をみてもわかるようにドコモとは差を広げられるば かりである。 3 日本規格と欧州規格 現在、IT 後進国として軽んじられてきた日本がモバイルインターネット接続サービス「i モード」を誕生させ、1 年あまりで 1000 万人を超える加入者を獲得し大成功をしたことで 大きな注目を世界から集めている。最大の関心は世界でもこの爆発的な普及を成功させら れるかということである。現在 i モードは日本でしかそのサービスを受けることは出来ない。 これは世界と日本の規格の違いにある。 現在、世界市場を覆っているのは欧州勢力による GSM(Global system of mobile communication)規格である。GSM とはヨーロッ パで 1992 年に商用サービスを開始したデジタル携帯電話の名称で、ETSI(欧州電器通信 標準化機構)が 1887 年に標準化を行った。その後普及がアジア、太平洋地域におよんだも のである。現在、世界の携帯電話の 50%がこの GSM である。 一方、日本の規格はという と日本と一部の国でしか通用しない PDC 規格である。世界シェアを見ても 10%にしか満 たない。つまりiモードで大成功をおさめているNTTドコモであるが、それは日本とい う小さな国で成功したに過ぎないのである。 図 国 6 携帯電話の各国別普及状況(1999 年 1 月 1 日現在) システム 加入数 普及率(%) 成長率(%) イギリス GSM 13001000 22.26 フランス GSM 11159800 19.16 ドイツ GSM 13980000 17.05 デンマーク GSM 1854140 35.66 ノルウェー GSM 2081208 47.3 スウェーデン GSM 4526632 51.12 フィンランド GSM 2966249 57.8 イタリア GSM 20300000 35.49 オランダ GSM 3351305 21.35 アメリカ CDMA 64541000 24.12 中国 GSM、CDMA 25103600 2.11 香港 GSM、CDMA 2800000 42.42 韓国 CDMA 13981000 31.45 台湾 GSM 4190000 20 シンガポール GSM 1020200 32.91 日本(参考) PDC、CDMA 38996000 30.8 注1.普及率は人口 100 人あたりの加入者数 注 2.成長率は前年同時期加入者数との比較 注3.アメリカ以下の国(日本を除く)については 98 年のデータ 55.8 92.6 68.4 24 23.5 42 38 72.6 98.5 19 80.84 34.91 105.24 212.69 43.89 35.67 出所)http:/www.tca.or.jp/japan/annual/2000/pdf/c4_1.pdf「社団法人電気通信事業者協会」 最後に 携帯電話は発売当初こそ単に電話機能が付いているだけのツールであったが、iモード の登場によりそれまでパソコンでしかできなかったeメールの送受信や簡単な web ページ の閲覧が可能になったことにより、単なる電話ではない多機能な情報通信端末に進化した。 さらに次世代携帯電話が登場することにより、携帯電話の画面でテレビやビデオなどの動 画を見たり、またインターネットの音楽サイトからダウンロードした音楽を聴くことがで きたり、動画配信が可能になったことにより現在より複雑なゲームが遊べるようになる。 また、本稿では触れなかったが、PDA(携帯情報端末)との融合により、現在のeメール 機能が強化され、個人スケジュールの管理やメモ機能も充実するであろう。さらに、次世 代携帯電話に SIM カードが標準装備されることにより、携帯電話の個人認証機能が強化さ れ、自動販売機やコンビニ、スーパーなどで携帯電話を財布代わりに使用でき、また銀行 口座への電子振込により、小額の電子決済が可能になる。さらにブルートゥースとの融合 により携帯電話であらゆる家電の操作が可能になり、携帯電話は家庭のリモコンと化す。 このようにほんの数年後には携帯電話ひとつでこれだけのことができるようになり、携 帯電話は劇的な進化を遂げることになる。こうなってくると携帯電話は情報通信端末から マルチメディアツールとなり、さらには水道、ガス、電気などと同様に私たちの生活にな くてはならないもの、すなわちライフラインとなってくるであろう。これだけのことを可 能にした基礎がiモードであり、iモードにより引き起こされた、また今後引き起こされ るであろう数々の変革はもはや21世紀の産業革命といえるのではないかと思われる。 また業界全体の動向を見ると MCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシア ム )によると 2001 年度のモバイル端末の市場規模は 2001 年度 で 9,983 億円、2002 年度 では 13,146 億円 、更に 2003 年度 では 15,134 億円と予想される。移動電話加入者は 2003 年度には 8000 万人にものぼると予想される。これらの国内における急速な成長は「i モー ド」 「J-スカイ」 「ezWeb」などの携帯電話の IP 接続サービスが牽引しているのは言うまで もない。そして一番の功績者は NTT ドコモの「i モード」である。低迷が続く日本経済に おいて非常に明るい話題にもなりつつある。しかし、この成功はあくまで国内に限ったこ とである。 現在の経済は世界中が連動して動いており、携帯電話産業においても、そしてに日本にお いても例外ではない。ひょっとすると、海外企業のより優れたサービスが日本を含めた世 界中で流行するかもしれない。そうなると現在の日本経済を支える一つでもある国内の携 帯電話産業は廃退することになるであろう。そうならない為にも国内における勝利者であ る NTT ドコモはいち早く世界進出をして世界の勝利者にならなければならない。 注釈 1)EC研究会&スユアe‐パブリシング研究会「全図解iモ‐ドビジネスのすべて」、あさ出版、2000 年、12‐14 ページ 2)EC研究会&スユアe‐パブリシング研究会「全図解iモ‐ドビジネスのすべて」、あさ出版、2000 年、20 ページ 3)、4)EC研究会&スユアe‐パブリシング研究会「全図解iモ‐ドビジネスのすべて」、あさ出版、 2000 年、28−29 ページ 5) 、6) 、7)藤沢太郎「図解でよくわかる携帯電話ビジネスのしくみ」 、明日香出版社、2000 年、36 ペ ージ 8)藤沢太郎「図解でよくわかる携帯電話ビジネスのしくみ」 、明日香出版社、2000 年、112 ページ 9) 、10) 、11)EC研究会&スユアe‐パブリシング研究会「全図解iモ‐ドビジネスのすべて」 、あ さ出版、2000 年、42 ページ 12) 、13) 、14)篠原勲「iモード大革命ドコモが世界を制する日」 、東洋経済新報社、2000 年、72 ページ 15)、16)17)。18)篠原勲「iモード大革命ドコモが世界を制する日」、東洋経済新報社、2000 年、74−78 ページ 19) 、20) 、21) 、EC研究会&スユアe‐パブリシング研究会「全図解iモ‐ドビジネスのすべて」 、 あさ出版、2000 年、204−205 ページ 22)http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/00/whatnew0904.html「NTT ドコモホームページ」2000 年 12 月 1 日 23) 、24) 、25)藤沢太郎「図解でよくわかる携帯電話ビジネスのしくみ」 、明日香出版社、2000 年、 98−101 ページ 26)藤沢太郎「図解でよくわかる携帯電話ビジネスのしくみ」 、明日香出版社、2000 年、50 ページ 27)藤沢太郎「図解でよくわかる携帯電話ビジネスのしくみ」 、明日香出版社、2000 年、90 ページ 28) 、29) 、30) 、http://k-tai.impress.co.jp/column/keyword/2000/08/01/ 「ケータイWatchケータイ用語の基礎知識」2000 年 12 月 10 日 31)、32)、33)、34)、EC研究会&スユアe‐パブリシング研究会「全図解iモ‐ドビジネスの すべて」 、あさ出版、2000 年、70 ページ 35) 、36) 、37) 、藤沢太郎「図解でよくわかる携帯電話ビジネスのしくみ」 、明日香出版社、2000 年、 102−105 ページ 38) 、39) 、40) 、藤沢太郎「図解でよくわかる携帯電話ビジネスのしくみ」 、明日香出版社、2000 年、 106−109、130−131 ページ 参考文献 EC研究会&スユアe‐パブリシング研究会「全図解iモ‐ドビジネスのすべて」 、あさ出版、2000 年、 藤沢太郎「図解でよくわかる携帯電話ビジネスのしくみ」 、明日香出版社、2000 年、 篠原勲「iモード大革命ドコモが世界を制する日」 、東洋経済新報社、2000 年、 http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/00/whatnew0904.html 「NTT ドコモホームページ」 http://k-tai.impress.co.jp/column/keyword/2000/08/01/ 「ケータイWatchケータイ用語の基礎知識」 http:/www.tca.or.jp/japan/annual/2000/pdf/c4_1.pdf (社団法人電気通信事業者協会 第4章 海外における電気通信の動向) http://club.pep.ne.jp/mcpchp/text/sijot.htm (MCPC モバイル市場需要予測)
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