第9章 統計データ 1 人口静態統計 1 A 人口静態統計 人 口 静 態 統 計 static statistics とは 「ある一時点で,人が何人いるのか」を調べるものです。人口は,誕生と死亡の繰り返 しで,常に変動しています。つまり,この変動の一時点を“静止画像にしたもの”が人口 静態統計だとイメージしてください。 人口静態統計で得られるデータは,総人口,老年人口割合や生産年齢人口割合などの人 口の構成割合,老年化指数や年少人口指数など各種の人口指数,世帯数など,国勢調査*1 によって得られたデータに基づいて作成されます。 �� �� *1 国勢調査:統計法に基づく基幹統計で,5 年に 1 度,10 月 1 日に行われる全数調査(悉皆調 査)です。直近の調査は 2010 年(平成 22 年)に行われたものです。次回の調査は 2015 年(平 成 27 年)になります。国勢調査が行われない年次は,総務省統計局から「10 月 1 日現在の推計 人口」が公表されます。 1 国勢調査は人口静態統計で,5 年に 1 度の全数調査 B わが国の総人口と人口構造 1 総人口 2013 年(平成 25 年)10 月 1 日現在の総人口は 1 億 2,729 万 8 千人でした。2004 年(平成 16 年)までは少ないながらも増加していましたが,2005 年には初めて減少しました。ま た,人口増加率は 1975 年(昭和 50 年)ころまでは年率 1%前後を保っていましたが,1995 年から 2000 年(平成 12 年)では 0.1~0.2%と低い値となり,2005 年,2009 年,2011 年, 2012 年,2013 年はマイナスとなっています。 つまり,わが国の人口は減少傾向にあり,2050 年(平成 62 年)には 9,708 万人となり,2060 年(平成 72 年)には 8,674 万にまで減少すると推計されています(平成 24 年 1 月出生中位・ 死亡中位推計) 。 326 第 9 章 統計データ 2 人口構成割合 a 年少人口割合 1 15 歳未満の人口が年少人口で,次の計算式で求めます。 人 口 静 態 統 計 年少人口割合(%) =年少人口/総人口×100 年少人口割合は,一貫して低下傾向にあり,2013 年(平成 25 年)には 12.9%となって います。 b 生産年齢人口割合 15 歳以上 65 歳未満の人口が生産年齢人口で,次の計算式で求めます。 生産年齢人口割合(%) =生産年齢人口/総人口×100 1990 年(平成 2 年)までは横ばい状態にありましたが,これ以降は漸減傾向となり, 2013 年(平成 25 年)には 62.1%にまで低下しています。 c 老年人口割合 65 歳以上の人口が老年人口で,次の計算式で求めます。 老年人口割合(%) =老年人口/総人口×100 人口の高齢化*2 を反映して増加の一途をたどり,2013 年(平成 25 年)には年少人口割 合を大きく上回り,25.1%となっています。 *2 老年人口割合が 7%を超えると高齢化社会,14%を超えると高齢社会,21%を超えると超高 齢社会といいます。7%(1970 年)から 14%(1994 年)になるのにかかった年数(倍加年数) は 24 年で,これは目下のところ世界最短です。 3 人口指数 a 年少人口指数 dependency ratio of child population 100 人の生産年齢人口で,何人の年少人口が養われているかを示す数値です。 年少人口指数=年少人口/生産年齢人口×100 第 9 章 統計データ 327 1950 年(昭和 25 年)以降はほぼ単調に低下しており,2013 年(平成 25 年)には 20.7 と なっています。 b 従属人口指数 1 ratio of dependent population 100 人の生産年齢人口で,何人の年少人口と老年人口が養われているかを示す数値です。 人 口 静 態 統 計 従属人口指数=(年少人口+老年人口)/生産年齢人口×100 1995 年(平成 7 年)ころまでは漸減傾向にありましたが,以後は増加に転じ 2013 年(平 成 25 年)には 61.1 になりました。 c 老年人口指数 dependency ratio of aged population 100 人の生産年齢人口で,何人の老年人口が養われているかを示す数値です。 老年人口指数=老年人口/生産年齢人口×100 漸増傾向にあり,2013 年(平成 25 年)には 40.4 となっています。つまり,100 人の生産 年齢人口で 40.4 人の高齢者を支えていることになります。 d 老年化指数 aging index 100 人の年少人口に対して,何人の老年人口がいるかを示す数値です。 老年化指数=老年人口/年少人口×100 少子高齢化を反映して急激に上昇し 2013 年(平成 25 年)には 194.6 にまで達しています。 2 328 第 9 章 統計データ 老年人口割合の 25.1%(平成 25 年)は超高齢社会を表している C 労働力人口 1 15 歳以上の人口のうち, “就業者”と“完全失業者”の合計を労働力人口といいます。2013 人 口 静 態 統 計 年(平成 25 年)の労働力人口は 6,577 万人(男性 3,773 万人,女性 2,804 万人)で前年に比 べ 22 万人増加しています。男性の 3,773 万人は 15 歳以上の男性人口の 70.5%で,女性の 2,804 万人は 15 歳以上の女性人口の 48.9%で,この数値を労働力人口比率といいます。 ちなみに,同年の完全失業者数は 265 万人で,完全失業率(完全失業者/労働力人 口×100)は 4.0%です。 D 世帯数 わが国では世帯規模の縮小が続き,2013 年(平成 25 年)の国民生活基礎調査によると, 世帯数は 5,011 万世帯ですが,1 世帯当たりの平均世帯人員は 2.51 人と,核家族世帯(総世 帯数の 60.2%を占め,内訳は,夫婦のみの世帯 23.2%,夫婦と未婚の子のみの世帯 29.7%, ひとり親と未婚の子のみの世帯 7.2%)の増加を反映する結果となっています。単独世帯 は 1,329 万世帯で 26.5%と前年より増加し,三世代世帯は 332.9 万世帯(6.6%)で漸減傾向 にあります。 また,65 歳以上の者のいる世帯は 2,242 万世帯で,全世帯の 44.7%を占めます。夫婦の みの世帯が 697.4 万世帯で,65 歳以上の者のいる世帯の 31.1%を占めます。単独世帯は 573.0 世帯で,65 歳以上の者のいる世帯の 25.6%ですが,これは同時に全単独世帯の 43.1%,全世帯の 11.4%に相当します。 三世代世帯 6.6% 単独世帯 26.5% その他の世帯 6.7% 世帯総数約 5,011万世帯 核家族世帯 60.2% 図9-1 世帯構造別にみた世帯数の内訳(厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査」) 3 核家族世帯は増加,単独世帯は横ばい,三世代世帯は減少 第 9 章 統計データ 329 2 人口動態統計 A 人口動態統計 2 人 口 動 態 統 計 vital statistics とは ある一定の期間(通常は 1 年)に発生した出生,死亡,死産,婚姻,離婚を把握するも のです。生まれた,死んだ,くっついた,離れた,という“動き”を捉えるので“動態” という言葉が用いられます。前項の“静態”とは対をなす概念です。 わが国の人口動態統計は全数調査で,毎年結果が発表されます。調査に関する事務は保 健所が担当しています。基幹統計であって,根拠とする主な法令は,戸籍法と死産の届出 に関する規程です。 人口動態統計のうちの死亡の調査では,死亡票(死因を記入する欄があります)を用い ます。 4 人口動態統計の担当は保健所 全数調査で毎年結果が公表される B 出 生 1 出生率 birth birth rate わが国の出生率(出生数/人口)は,第 2 次ベビーブームの 1973 年(昭和 48 年)には 19.4 (人口千対)もありましたが,以降は一貫して低下傾向を示し,2012 年(平成 24 年)には 8.2(出生数は 1,037,231 人)と史上最低となりました。 2 合計特殊出生率 total fertility rate(粗再生産率 crude reproduction rate) a 定 義 その年における女性の年齢別出生率を再生産年齢(15 歳~49 歳)で合計したもので, 実質的には,1 人の女性が一生の間に産む子どもの数(男児+女児)です。 330 第 9 章 統計データ 母親の年齢別出生数 ───────── 15 歳から 49 歳までの合計 年齢別女子人口 合計特殊出生率は,2.1 以上なら将来人口は増加します。また,2.0 を下回っていると将 来人口は確実に減少することになります。子どもを残さないままで死亡する人もいるた 2 め,人口維持のためには 2.07~2.08 程度は必要です。 人 口 動 態 統 計 b 現 状 以前は漸減傾向にあり,2005 年(平成 17 年)には史上最低(1.26)を記録しました。し かし,その後は 30 歳以上の出生率の上昇を反映して,わずかに上昇傾向となり,2012 年 (平成 24 年)には 1.41 まで戻しています。 県別にこの合計特殊出生率(平成 25 年の概数)をみると,最も高いのは沖縄県の 1.94 で,最低は東京都の 1.13 となっています。この状況は数十年に渡って持続しています。 出生児の母親の平均年齢は 2012 年(平成 24 年)は 31.5 歳です。同年の母の年齢別(5 歳 階級)別にみた出生率(日本女性人口千対)は,30~34 歳が 97.9 で最高で,25~29 歳の 87.2 がこれに次いでいます。その次が 35~39 歳の 49.5,さらにその次が 20~24 歳の 32.4 で す。 3 総再生産率 gross reproduction rate 再生産年齢(15~49 歳)の女性の,年齢別の女児出生率の合計です。言い換えれば, 1人の女性が一生のうちに産む女児数です。これが 1 を切ると人口が減少します。2012 年 (平成 24 年)は 0.68 で,1 を大きく割り込んでいます。 母親の年齢別女児出生数 ─────────── 15 歳から 49 歳までの合計 年齢別女子人口 4 純再生産率 net reproduction rate 総再生産率に,母親の世代の死亡率を生命表を用いて考慮に入れた場合の値で,総再生 産率より小さくなります。これは, 「女性が死亡すると,それ以降は,生まれるはずの子 が生まれないからである」と便宜上理解していただいて結構です。ただし,わが国ではこ の年齢層の女性はほとんど死亡しないので,純再生産率は総再生産率とほぼ同じか,わず かに低い値となります。実際,2012 年(平成 24 年)の純再生産率は 0.68 で,総再生産率 と同じ値でした。 母親の年齢別女児出生数 Lx ─────────── × ──── 15 歳から 49 歳までの合計 年齢別女子人口 100,000 第 9 章 統計データ 331 5 合計特殊出生率は 1.41,総再生産率は 0.68,純再生産率も 0.68 (2012 年) 2 C 死 亡 人 口 動 態 統 計 1 粗死亡率 death crude death rate 粗死亡率(死亡数/人口×1,000)は,年齢調整死亡率とは異なって年齢補正されていま せん。したがって,人口の高齢化の影響をまともに受けてしまいます。実際,1980 年(昭 和 55 年)ころを境に,高齢化の影響を受けて緩やかな上昇に転じ,2012 年(平成 24 年)に は 10.0(男 10.7,女 9.3)となっています。 2 年齢調整死亡率 age-adjusted mortality rate 上述のように,粗死亡率は高齢化の影響を受けてしまうため,基準人口(昭和 60 年モ デル人口)を用いて年齢構成を補正した死亡率が年齢調整死亡率です。 わが国の年齢調整死亡率(人口 1,000 対)は,死亡状況の改善に伴って年々低下し, 2012 年(平成 24 年)には男 5.2,女 2.7 となっています。 3 50 歳以上死亡割合(PMI)proportional mortality index,65 歳以上死 亡割合 PMI は,死亡者のうち 50 歳以上が何人がいたかを%で示したものです。これは,死亡 者のなかで 50 歳以上の人が占める割合が大きいほど,その保健環境が優れていると判断 されることになります(若年者が多く死亡する社会には問題があります) 。 ただし,現在用いられているのは PMI ではなく, “65 歳以上死亡割合”です。実際, 「国民衛生の動向」にも PMI の表記はなく,65 歳以上死亡割合の数値のみが掲載されてい ます。わが国の 65 歳以上死亡割合は 86.6%(2012 年)で,イタリアの 87.1%(2010 年) , スウェーデン 86.1%(2011 年)などとともに世界のトップグループに入っています。 332 第 9 章 統計データ D 死因の概要 1 死因別にみた死因順位 2 死因は,1990 年の WHO 総会で採用された第 10 回改訂国際疾病分類(ICD-10)によっ 人 口 動 態 統 計 て分類されます。わが国でも 1995 年(平成 7 年)からこの ICD-10 を用いています。 この ICD-10 導入の際の 1994 年に厚生省(厚生労働省となったのは 2001 年)は医師に対 して「心不全を死因として使うな」との周知を図りました。このため,終末期の状態とし ての“心不全”が急激に減り,結果として心疾患の死亡が激減しました。また,かつては 脳梗塞で寝たきりになっている患者が肺炎で死亡したとき,原死因は肺炎としていました が,ICD-10 では脳血管疾患による死亡とすることになったため,脳血管疾患による死亡 が激増する結果となりました。 以上の経緯を踏まえて,図 9-2 の主要傷病の粗死亡率の年次推移を見てください。ポイ ントは,2011 年(平成 23 年)に総数で肺炎が脳血管疾患と入れ替わって第 3 位に浮上し たことです。これは,高齢化に伴って,後期高齢者の肺炎(特に嚥下性肺炎が多い)が死 因として増加しているからです(p.336) 。 350 300 死亡率︵人口 万対︶ 悪性新生物 250 脳血管疾患 200 10 150 100 50 心疾患 結核 自殺 肝疾患 0・ ・ ,・ ・ 1950 60 昭和25年 35 肺炎 不慮の事故 ,・ 70 45 ・ ,・ 80 55 ・ ,・ 90 平成2 ・ ,・ 00 12 ・ ・ ,・ 13 25 〈資料〉 厚生労働省「人口動態統計」 注) 1)平成6年までの死亡率は旧分類によるものである。 2)平成25年は概数である。 図9-2 主要死因別にみた死亡率(人口10万対)の推移 (国民衛生の動向2014/2015より引用) 6 悪性新生物,心疾患,肺炎の粗死亡率は上昇の一途 粗死亡率が低下しているのは脳血管疾患 第 9 章 統計データ 333 2 年齢階級別死因第 1 位 死因の第 1 位は,10 歳代後半から 30 歳代までが自殺,その前後が悪性新生物,と記憶 するのがポイントです。 2 表 9-1 年齢階級別死因第 1 位(2013 年) 人 口 動 態 統 計 年齢階級 第 1 位死因 0~4 5~9 10~14 15~39 先天奇形,変形,染色体異常 不慮の事故 悪性新生物 自殺 40~89 90~99 悪性新生物 心疾患 65~ 悪性新生物 3 主要死因 a 悪性新生物 人口動態統計では“胃の悪性新生物”や“肺の悪性新生物”という表現が用いられてい ます。しかし,ここでは便宜的に“新生物”ではなく“癌”という表現を用い, “胃癌” や“肺癌”と表記します。また, “大腸癌”は,結腸と直腸の癌を合わせたものです。 2012 年(平成 24 年)の悪性新生物による死亡数は 360,963 人(男性 215,110 人,女性 145,853 人)です。部位別年齢調整死亡率(人口 10 万対)では,男性は前年と変わらず第 1 位は肺癌,次いで胃癌,大腸癌でした。しかし,女性では上昇の一途にあった乳癌が, 平成 23 年には大腸癌に追いついて第 1 位で並びましたが,再び 2 位に後退しました。また, 肺癌は第 3 位のままです。この数年で TOP3 の順位が入れ代わっているので要注意です。 表 9-2 悪性新生物の部位別年齢調整 死亡率(10 万対)(平成 24 年) 順位 第1位 第2位 第3位 断トツの 1 位 年齢調整死亡率 男性 女性 肺癌 41.0 胃癌 26.1 大腸癌 21.4 大腸癌 12.3 乳癌 11.5 肺癌 11.4 この部位別年齢調整死亡率を経時的に表したのが図 9-3 です。この 60 年間という長いス パンでみると男性では,肺癌,大腸癌,膵癌の漸増傾向と,胃癌の漸減傾向が明らかで す。女性では増加傾向にあるのは乳癌と膵癌のみで,胃癌と子宮癌は減少傾向にありま す。しかし,ここ 20~30 年のスパンでみると,1995 年をピークとして,肺癌と大腸癌は 334 第 9 章 統計データ 男女とも減少に転じています。なお,増加傾向にある(あった)癌は,すべて欧米に多い 癌です。 男 300 女 300 全悪性新生物 胃 100 気管、気管支及び肺 年齢調整死亡率︵人口 万対︶ 年齢調整死亡率︵人口 万対︶ 10 100 肝 大腸 10 食道 10 結腸 膵 全悪性新生物 2 胃 人 口 動 態 統 計 子宮 大腸 肝 10 結腸 気管、気管支及び肺 乳房 膵 白血病 胆のう及びその他の胆道 白血病 食道 胆のう及びその他の胆道 1 ・ ,・ 60 1955 昭和30年 35 ・ ,・ 70 45 ・ ,・ 80 55 ・ ,・ 90 平成2 ・ ,・ 00 12 ・ ・,・ 12 24 1 ・ ,・ 60 1955 昭和30年 35 ・ ,・ 70 45 ・ ,・ 80 55 ・ ,・ 90 平成2 ・ ,・ 00 12 ・ ・,・ 12 24 〈資料〉 厚生労働省「人口動態統計」 注) 1)大腸は,結腸と直腸S状結腸移行部及び直腸を示す。ただし,昭和40年までは直腸肛門部を含む。 2)結腸は,大腸の再掲である。 3)肝は,肝及び肝内胆管で示す。 4)年齢調整死亡率の基準人口は「昭和60年モデル人口」である。 図9-3 部位別にみた悪性新生物の年齢調整死亡率の推移 (国民衛生の動向2014/2015より引用) 7 年齢調整死亡率は 乳癌と膵癌は増加,胃癌と子宮癌は減少,肺癌と大腸癌は 1995 年以降は減少 b 心疾患 増加傾向にあった心疾患(高血圧性の疾患は含まれません)による死亡者数は,前述し たように“心不全を死因に採用しなくなった”ことで 1995 年(平成 7 年)には 2 位から 3 。なお,心疾患は 位へ転落しましたが,1997 年には再び 2 位に返り咲いています(図 9-4) 1 位になったことはありません。 2012 年(平成 24 年)の心疾患による死亡者数は 198,836 人で,全死亡数の 15.8%を占め ています。1995 年(平成 7 年)以降,虚血性心疾患の粗死亡率はほぼ横ばいですが,心不 全は再び上昇傾向を示しています。 わが国の虚血性心疾患の粗死亡率は男女ともアメリカ,イギリスの半分ですが,フラン スよりは高くなっています。 第 9 章 統計データ 335 180 死亡率︵人口 万対︶ 150 120 10 2 人 口 動 態 統 計 全心疾患 90 60 心不全 しばらくは 2 番手で安定 虚血性心疾患 30 その他の心疾患 0・ ・ 1950 昭和25年 ,・ 60 35 ・ ,・ 70 45 ・ ,・ 80 55 慢性リウマチ性心疾患 ,・ ・ ,・ ・ ・・ , 90 00 12 平成2 12 24 ・ 〈資料〉 厚生労働省「人口動態統計」 注) 「その他の心疾患」は,「全心疾患」から「虚血性心疾患」 「心不全」「慢性リウマチ性心疾患」を除いたものである。 図9-4 心疾患の死亡率の推移 (国民衛生の動向2014/2015より引用) c 肺 炎 明治~昭和初期には死因順位の第 1 位に君臨していましたが,昭和 30 年代に入ると激減 し,1980 年(昭和 55 年)ころまでは低下傾向にありました。しかし,これ以降は上昇に 転じ(1995 年の ICD-10 採用による一時的な低下を除く) ,2012 年(平成 24 年)の総死亡 数は 123,925 人で第 3 位です。 かつては乳幼児の死因として大きな割合を占めていた肺炎ですが,現在ではほとんど制 圧されています。これに対して,高齢化に伴う後期高齢者の肺炎による死亡の増加は無視 することができません。中高年の肺炎死亡率は,年齢の上昇とともに指数関数的な上昇 (年齢が 5 歳上がると死亡数は約 2 倍に,死亡率は約 1.3~1.5 倍になります)を示すのが特 徴です。 遂に第 3 位にまで 返り咲き! d 脳血管疾患 脳血管疾患の死亡率は,1970 年(昭和 45 年)以降は減少傾向にあります。1995 年(平成 7 年)の ICD-10 採用による一時的な増加によって,心疾患を抜いて第 2 位となりましたが, 1997 年(平成 9 年)以降は第 3 位に戻り,遂に 2011 年(平成 23 年)には肺炎にその座を譲 り第 4 位に後退しました。2012 年(平成 24 年)の死亡総数は 121,602 人です。 336 第 9 章 統計データ 200 全脳血管疾患 死亡率︵人口 万対︶ 150 気づいたら, 肺炎に抜かれ ていました 100 10 50 脳梗塞 2 脳内出血 人 口 動 態 統 計 その他の脳血管疾患 0・ ・ 1951 昭和26年 ,・ 60 35 ・ ,・ 70 45 ・ ,・ 80 55 ・ ,・ 90 平成2 ・ クモ膜下出血 , ,・ ・ ・・ 12 00 24 12 〈資料〉 厚生労働省「人口動態統計」 注) 1)脳血管疾患は,脳内出血と脳梗塞とその他の脳血管疾 患の合計である。 2)クモ膜下出血は,その他の脳血管疾患の再掲である。 3)脳血管疾患の病類別死亡率は,昭和26年から人口動態 統計に掲載されている。 図9-5 脳血管疾患の死亡率の推移 (国民衛生の動向2014/2015より引用) e 不慮の事故 2012 年(平成 24 年)の不慮の事故による死亡者数は 41,031 人で,死因順位では第 6 位と なっています。死亡の原因をみると,最も多いのは窒息(25.2%)で,次いで溺死及び溺 水(19.4%) ,転倒・転落(18.9%)の順になっています。年齢階級別にその原因をみる と,乳児期(0 歳)では窒息(82.8%) ,1~64 歳は交通事故が首位となっています。また, 65~74 歳では溺死及び溺水(24.3%) ,75 歳以上では食物の誤嚥などによる窒息(30.3%) が最多です。 f 自 殺 2013 年(平成 25 年)の自殺者総数は 27,283 人で,死因順位は第 7 位です。2010 年以降, 自殺者は 30,000 人を下回っています。自殺者の動機については,最も多いのは健康問題 で,経済・生活問題,家庭問題がこれに次いでいます。 5 歳年齢階級でみた場合,自殺率(人口 10 万対)は,男性では 50 歳代にピークがあり ますが,85 歳以上になるとこれより高率です。それでもここ 30 年ほどの間,65 歳以上の 自殺率はすべての年齢階級で男女ともほぼ一貫して低下しています。女性では 20 歳代後 第 9 章 統計データ 337 半と 50 歳代前半に小さなピークがみられますが,全体としては年齢とほぼ比例して上昇 しています。 E 母子保健統計 2 人 口 動 態 統 計 1 妊産婦死亡,死産,周産期死亡 a 妊産婦死亡 妊産婦死亡とは, 「妊娠,分娩,産褥における合併症により,妊娠中または分娩後 42 日 (6 週)未満に死亡した場合」をいいます。出産 10 万対*1 で表されます。 妊産婦死亡数 妊産婦死亡率=───────×100,000 死産数+出生数 2012 年(平成 24 年)年の妊産婦死亡数は 42 人で,妊産婦死亡率(出産 10 万対)は 4.0 と,世界のトップクラスに位置しています。 *1 出産とは,出生と死産を合計したものです。 b 死 産 「妊娠第 4 月(12 週)以降の死児の出産」を死産といい,自然死産と人工死産に大別さ れます。ちなみに,人工死産が認められるのは妊娠満 22 週未満の場合です。 死産率(出産千対)は,昭和 36 年に 101.7 を示して以来,ほぼ一貫して低下傾向にあ り,2012 年(平成 24 年)には 23.4 となっています。ただし,1966 年(昭和 41 年)は“ひ のえうま”の年であったことから,98.2 と特異な数値となっています。 c 周産期死亡 周産期とは, 「妊娠 22 週以後から生後 1 週未満」をいいます。周産期死亡とは「出産を めぐる児の死亡」を意味し, “妊娠 22 週以後の死産”と“早期新生児死亡”の合計をいい ます。これを出産千対で表したのが周産期死亡率です。 妊娠 22 週以後の死産数+早期新生児死亡数 周産期死亡率=──────────────────── ×1,000 妊娠 22 週以後の死産数+出生数 周産期死亡率は,記録のある 1979 年(昭和 54 年)の 21.6 以降は一貫して低下傾向にあ り,2012 年(平成 24 年)には 4.0 にまで低下しています。この数値は,世界で最も低い値 となっています。 338 第 9 章 統計データ 2 早期新生児死亡,新生児死亡,乳児死亡 早期新生児は生後 1 週未満の児を,新生児は生後 4 週未満の児を,乳児は 1 歳未満の児 を,それぞれ指しています。 出生 2 ∼4週未満 ∼1週未満 ∼1歳未満 人 口 動 態 統 計 早期新生児期 新生児期 乳児期 図9-6 早期新生児期・新生児期・乳児期 a 早期新生児死亡率 早期新生児死亡率は,1 年間に生まれてきた児 1,000 人に対する,1 週未満で死亡した児 の割合です。 2012 年(平成 24 年)の早期新生児死亡率は 0.8 で,世界で最も良好な値です。 生後 1 週未満の死亡数 早期新生児死亡率=──────────×1,000 1 年間の出生数 b 新生児死亡率 新生児死亡率は,1 年間に生まれてきた児 1,000 人に対する,4 週未満で死亡した児の割 合です。 2012 年(平成 24 年)の新生児死亡率は 1.0 で,世界のトップレベルです。 生後 4 週未満の死亡数 新生児死亡率=──────────×1,000 1 年間の出生数 c 乳児死亡率 乳児死亡率は,1 年間に生まれてきた児 1,000 人に対する,1 歳未満で死亡した児の割合 です。 2012 年(平成 24 年)の乳児死亡率は 2.2 で,やはり世界のトップレベルに位置していま す。 第 9 章 統計データ 339 生後 1 年未満の死亡数 乳児死亡率=──────────×1,000 1 年間の出生数 F 婚姻と離婚 2 人 口 動 態 統 計 1 婚 姻 婚姻件数は 1987 年(昭和 62 年)までは減少傾向にありましたが,その後はほぼ横ばい で経過し,近年はやや減少傾向となっています。2013 年(平成 25 年)の婚姻件数は 660,594 組で,婚姻率は 5.3(人口千対)です。平均初婚年齢は夫 30.9 歳,妻 29.3 歳で,こ の 40 年ほど一貫して上昇しています。 2 離 婚 バブル期(1986~1991 年)には減少していた離婚件数は,その後は顕著に増加し,2002 年(平成 14 年)には 289,836 件で離婚率 2.30(人口千対)と過去最高に達しました。その 後は,経済の好転によって離婚にブレーキがかかり,2013 年(平成 25 年)は 231,384 組 (離婚率は 1.84)となっています。 ちなみに,離婚の種類としては協議離婚(家裁に調停を依頼することなく,夫婦間で協 議する)が 87.1%(平成 24 年)を占めています。 夫も妻も初婚年齢 は上がる一方です 340 第 9 章 統計データ 離婚の種類は 協議が最多 3 平均余命 A 余命と寿命 3 平 均 余 命 「平均してあと何年生きられるか」を表したものが平均余命で,0 歳の平均余命を平均 寿命と呼びます。平均余命は,生命表*1 から算出されます。生命表は,その年次の年齢 別死亡率のみから作成されるため,平均余命は人口の年齢構成の影響を受けません。国全 体だけでなく,都道府県別,市町村別の平均寿命も算出されています。 *1 生命表:現在の年齢別死亡率が永遠に続くと仮定した場合に,観察集団の生存者が減少して いく様子を表あるいはグラフで示したものです。実際は,出生数 100,000 人の集団が,その年次 の年齢別死亡率で減少していく様子を数値表で表します。わが国では,国勢調査が行われる年 に完全生命表を作成します。そのほかの年には推計人口に基づく簡易生命表が作成されます。 B 平均余命と平均寿命の計算法 1 平均余命の計算法 まず,平均余命の推移に関する 2 つの資料(表 9-3,図 9-7)をご覧ください。 表 9-3 からわかるように,2013 年(平成 25 年)の女性の平均寿命は 86.61 年でした。で は,2013 年に生まれた女性が 20 歳になったときの平均余命は 86.61 年-20 年=66.61 年か? というと,そうではありません。この計算法を 90 歳の平均余命に用いれば 86.61 年-90=-3.39 で,マイナスになってしまいます。また,図 9-7 からわかるように,女性の 20 歳平均余命 は 66.94 年であり,86.61 年-20 年=66.61 年の式で出てくる値より大きくなっています。 これは,20 歳まで生き残った者は,その間の種々の試練や淘汰に耐えて生き残ったと いうことですから, “強い者”の集団となるわけで,それだけ平均余命も長くなるためで す。したがって,X 歳の平均余命を LX(0 歳の平均余命は L0 となります)とすると, LX>L0-X の関係となります。 第 9 章 統計データ 341 表 9-3 戦後における平均寿命の推移(単位 年) * 昭和 55 年 (80) 56 (81) 57 (82) 58 (83) 59 (84) 60* (85) 61 (86) 62 (87) 63 (88) 平成元 (89) 2* (90) 3 (91) 4 (92) 5 (93) 6 (94) 7* (95) 8 (96) 3 平 均 余 命 男 女 73.35 73.79 74.22 74.20 74.54 74.78 75.23 75.61 75.54 75.91 75.92 76.11 76.09 76.25 76.57 76.38 77.01 78.76 79.13 79.66 79.78 80.18 80.48 80.93 81.39 81.30 81.77 81.90 82.11 82.22 82.51 82.98 82.85 83.59 平成 9 10 11 12* 13 14 15 16 17* 18 19 20 21 22* 23 24 25 (97) (98) (99) (00) (01) (02) (03) (04) (05) (06) (07) (08) (09) (10) (11) (12) (13) 男 女 77.19 77.16 77.10 77.72 78.07 78.32 78.36 78.64 78.56 79.00 79.19 79.29 79.59 79.55 79.44 79.94 80.21 83.82 84.01 83.99 84.60 84.93 85.23 85.33 85.59 85.52 85.81 85.99 86.05 86.44 86.30 85.90 86.41 86.61 資料 厚生労働省「簡易生命表」「完全生命表」 注 *印は完全生命表である。 年 90 80 0歳 女 70 60 男 50 86.61 80.21 20歳 66.94 40歳 47.32 65歳 23.97 19.08 40 60.61 41.29 30 20 10 0 1955 昭和30 ’ 65 40 ’ 75 50 ’ 85 ’ 95 2005 ’ 13 年 60 平成7 17 25 資料 厚生労働省「簡易生命表」「完全生命表」 図9-7 平均余命の推移 2 平均寿命の計算法 実際に行われる生命表を使用した計算は複雑ですが,理解のために定常人口と生存数が 同じとした単純な例で説明します。 342 第 9 章 統計データ 10 生存数︵人︶ 年齢 生存数 死亡数 0歳 10 1 1歳 9 1 8 1 2歳 3歳 7 1 4歳 6 1 5歳 5 1 6歳 4 1 7歳 3 1 8歳 2 1 1 1 9歳 10歳 0 − 合計 55 9 8 7 6 10 0 1 2 3 4 5 4 3 5 6 7 年齢(歳) 2 8 1 3 9 10 平 均 余 命 図9-8 各年齢の生存数と死亡数 図 9-8 の左表に示したように,0 歳で 10 人いた生存者が,1 年ごとに 1 人ずつ死亡してい ったケースで考えてみましょう。これを図に示したのが右図の棒グラフで,全面積に相当 するのは,各年齢の生存数の合計なので,0 歳の 10 人+1 歳の 9 人+2 歳の 8 人…+1 人= 55 ということになります。 棒グラフの高さに相当するのは,0 歳の生存数なので 10 人です。したがって,平均の長 さ,つまり平均寿命は 55÷10 で 5.5 年となります。 8 平均余命 平均してあと何年生きられるか 平均寿命=0 歳平均余命 C 特定死因を除去した場合の平均寿命の伸び ある死因を除去した場合,平均寿命がどのくらい伸びるかというもので,生命表から算 出されます。2013 年(平成 25 年)の「簡易生命表」による「特定死因を除去した場合の 平均寿命の伸び」をみると,最も大きいのは男女とも悪性新生物(男 3.79 年,女 2.91 年) で,次いで心疾患(男性 1.45 年,女性 1.43 年)となっています。 つまり,男性の平均寿命は悪性新生物で死ぬことがなくなれば 3.79 年伸び,心疾患で死 ぬことがなくなれば 1.45 年伸びるということです。 第 9 章 統計データ 343 4 衛生行政統計 A 国民医療費 4 1 国民医療費とは 衛 生 行 政 統 計 医療機関等における傷病の治療に要する費用を計算したものが“国民医療費”です。診 療医療費,薬局調剤医療費,入院時食事・生活医療費,訪問看護医療費を含むほか,健康 保険等で支給される移送費も含みます。ただし,その範囲を傷病の治療費に限定している ため,正常な妊娠や分娩等に要する費用,健康診断や予防接種等に要する費用,固定した 身体障害のために用いる義眼や義肢等の費用は含まれていません。 また,国民医療費の対象となっていた費用のうち,2000 年(平成 12 年)から介護保険 に移行した費用はこれに含まれません。 医療費の 3 要素 1 人当たりの医療費は,受診率,1 件当たり受診日数,1 日当たり診療費の 3 つの要素で構成さ れています。計算式で表せば,次のようになります。 1 人当たり医療費=受診率×1 件当たり受診日数×1 日当たり診療費 2 国民医療費の動向 a 総 額 国民医療費は,推計を開始した 1954 年(昭和 29 年)以降は増加の一途をたどり,2011 年度(平成 23 年度)には 38 兆 5,850 億円(人口1人当たり 30 万 1,900 円)にまで達してい ます。ただし,上述したように 2000 年(平成 12 年)には介護保険が導入されたため,一 時的に微減しています。この国民医療費は国民所得の 11.13%に相当します。 b 制度区分別国民医療費 2011 年度(平成 23 年度)の国民医療費を制度区分別に分類すると,公費負担医療給付 分(7.2%) ,医療保険等給付分(47.5%) ,後期高齢者医療給付分(31.8%) ,患者等負担分 (13.0%)に大別されます。 c 財源別国民医療費 国民医療費を財源別にみると,最も多いのは半分近くを占める保険料(48.6%)で,公 344 第 9 章 統計データ 費負担は 38.4%,患者負担は 12.3%となっています。 患者等負担分 13.0% 公費負担医療 給付分 7.2% 後期高齢者 医療給付分 31.8% その他 0.7% 患者負担 12.3% 医療保険等 給付分 47.5% 保険料 48.6% 公費 38.4% 4 図9-10 財源別医療費(平成23年) 図9-9 制度区分別医療費(平成23年) 衛 生 行 政 統 計 d 診療種類別国民医療費 国民医療費を,医科診療医療費,歯科診療医療費,薬局調剤医療費,入院時食事・生活 医療費,訪問看護医療費,療養費等の 6 つに分類し,さらに医科診療医療費を入院と入院 外に分けて推計したものです。 2011 年度(平成 23 年度)の医科診療医療費は 27 兆 8,129 億円(72.1%)で,うち入院医 療費が 14 兆 3,754 億円(37.3%) ,入院外医療費が 13 兆 4,376 億円(34.8%)となっていま す。つまり,入院医療費の方が高くなっています(65 歳以上も入院が 9 兆 2,429 億円,入 院外が 6 兆 7,309 億円で,入院医療費が高い) 。 歯科診療医療費は 6.9%,薬局調剤医療費は 17.2%,訪問看護医療費はわずか 0.2%です。 入院医療費と入院外医療 費は,平成 21 年で逆転し, 平成 23 年も入院医療費 の方が多くなっています 訪問看護医療費 0.2% 薬局調剤医療費 17.2% その他 3.6% 歯科診療 医療費 6.9% 入院医療費 37.3% 入院外医療費 34.8% 図9-11 診療種類別国民医療費(平成23年) e 年齢階級別医療費 平成 23 年度の国民医療費を年齢階級別にみると,65 歳以上が 21 兆 4,497 億円(55.6%) で,5 割を超えています。そのうち,75 歳以上が 13 兆 1,226 億円(34.0%)を使っていま す。 人口 1 人当たりの国民医療費は,65 歳未満は 17 万 4,800 円ですが,65 歳以上は 72 万 0,900 円と 4 倍以上,75 歳以上が 89 万 2,200 円と 5 倍以上になっています。 第 9 章 統計データ 345 f 傷病区分別医科診療医療費 医科診療医療費を傷病区分別にみると,最も多いのは“循環器系の疾患”の 20.8%で, “呼吸器系の疾患”の 7.8%, “筋骨格系及び結合組織の疾患” 次いで“新生物”の 13.1%, の 7.5%, “腎尿路生殖器系の疾患”の 7.1%となっています 65 歳以上でも最も多いのは“循環器系の疾患”で,新生物がこれに次いでいます。 総数 65歳以上 循環器系 20.8% 4 衛 生 行 政 統 計 新生物 13.1% その他 43.6% 循環器系 このうち脳血管 27.4% 疾患と高血圧性 疾患がいずれも 約1/3を占める。 その他 50.9% 呼吸器系 7.8% 内分泌,栄養 筋骨格系及び 及び代謝疾患 結合組織 7.2% 7.5% 新生物 13.3% 筋骨格系及び 結合組織 8.4% 図9-12 傷病区分別医科診療医療費 9 国民医療費は 38.5 兆円超で,国民所得の 11%強,1 人当たり約 30 万円強 65 歳以上の医療費が,国民医療費の半分以上に及ぶ 財源の約半分は保険料 B 保健統計 1 地域保健 a 保健所と市町村保健センター 保健所は,地域保健法が制定されてから集約化が進み,2014 年(平成 26 年)4 月現在, 全国に 490 か所(都道府県立 365,政令市立 71,特別区立 23)となりました。 地域保健法によって設置が明確にされた市町村保健センターは,2012(平成 24 年)11 月現在で,全国に 2,650 か所となっています。 b 保健師数 2012 年(平成 24 年)末現在の就業保健師数は 47,279 人で(衛生行政報告例,厚生労働 346 第 9 章 統計データ 省) ,平成 22 年に比べ約 5%増加しています。就業先でみると,市町村が 56.1%で最も多 く,次いで保健所の 15.8%で,およそ 7 割(71.9%)が公的機関に勤務しています。 なお,平成 22 年末現在,医療関係従事者としての医師は 280,431 人で保健師の約 6 倍, 平成 24 年末現在の看護師(准看を含む)は 1,373,521 人で保健師の約 29 倍もいます。 c 保健師の活動の現状 平成 24 年度保健師活動領域調査(厚生労働省)によると,都道府県,保健所設置市・ 特別区,市町村,いずれにおいても保健福祉事業が保健師の活動状況のなかでは最多とな っています。図 9-13 に示したように都道府県で 29.6%,市町村で 51.2%,保健所設置市・ 4 特別区で 51.0%を占めています。 衛 生 行 政 統 計 次いで多いのが業務連絡と地区管理で,これも共通しています。 教育・研修 業務管理 研修参加 地区管理 コーディネート 業務連絡・事務 その他 保健福祉事業 29.6 都道府県保健師 17.9 51.2 市町村保健師 13.5 6.7 6.6 8.2 9.1 9.8 10.6 19.6 4.3 17.8 2.1 政令市・特別区保健師 51.0 0 20 40 3.1 3.4 3.9 7.7 3.3 3.6 12.6 3.3 1.6 60 80 100% 資料 厚生労働省「保健師活動領域調査」 図9-13 保健師の活動状況[再掲](平成24年度) 2 生活保護に関する統計 a 開始の理由 2011 年(平成 23 年)の福祉行政報告例(厚生労働省)によると,前述したように,かつ (27.6%)が減少し(そのうち,世帯主の傷病は 26.2%) , ては多数を占めた「傷病による」 長引く不況の影響から「働きによる収入の減少・喪失」が 27.8%と最多となっています (p.209 参照) 。 b 扶助の現状 2014 年(平成 26 年)12 月現在,生活保護受給者は 217.1 万人で,被保護世帯数は 161.8 万世帯と過去最高になっています。 8 種類の扶助のなかでは医療扶助が最多で,生活保護費 3 兆 6,000 億円の 46.0%(平成 24 年実績)を占めています。 第 9 章 統計データ 347 5 その他の保健統計 A 国民生活基礎調査 国民の健康状態を把握するために行う調査で,統計法に基づく基幹統計です。3 年に 1 回大規模調査(中間の 2 年間は小規模・簡易調査)を行います。ただし,健康・介護・貯 5 蓄については大規模調査年のみに行われます。直近の大規模調査は,2013 年(平成 25 年) そ の 他 の 保 健 統 計 に実施されました。 調査は,無作為に抽出した地区内に居住する全世帯に対し,調査員が保健,医療,福祉, 介護,年金,所得などについて面接調査を行い,その結果を調査票に記入します。有訴者 率や通院者率,そしてこれらの内容が都道府県のレベルで判明します。 以下に挙げた統計数値は,2013 年(平成 25 年)の国民生活基礎調査に基づくものです。 1 健康状態 a 有訴者率 傷病で自覚症状のある者(=有訴者)の人口千人に対する割合です。 2013 年の有訴者率は 312.4(人口千対)で,男性は 276.8,女性 345.3 と女性が高くなって います。この有訴者率を年齢階級別にみると 10~19 歳で 176.4 と最も低く,80 歳以上では 537.5 と高くなっています。また,65 歳以上では男性が 439.9,女性が 486.6 と,およそ 2 人 に 1 人が有訴者となっています。 有訴者を症状別にみると,男性で最も多いのは腰痛で,次いで肩こり,鼻がつまる・鼻 汁が出るの順となっています。女性で最も多いのは肩こりで,二番目は腰痛,そして手足 の関節が痛むの順となっています。 男 女 腰痛 肩こり 肩こり 鼻づまり・ 鼻が出る 図9-14 性別にみた65歳以上の有訴者率のTOP3 348 第 9 章 統計データ 腰痛 関節痛 b 通院者率 傷病で通院している者(=通院者)の人口千人に対する割合です。 2013 年の通院者率は 378.3(人口千対)で,男性は 358.8,女性 396.3 で有訴者率と同様に 女性が高くなっています。年齢階級別にみると,やはり 10~19 歳が 133.0 で最も低く,年 齢階級が上がるに従って上昇し,80 歳以上では 734.1 と高率になっています。次に 65 歳以 上でみると,70%近くが通院者となっています。 通院者を傷病別にみると,男性では高血圧症,糖尿病,歯の病気の順に多くなっていま す。女性でも最も多いは高血圧症ですが,これに次いで腰痛症,眼の病気となっています。 10 5 有訴者で最も多い傷病は,男は腰痛,女は肩こり そ の 他 の 保 健 統 計 通院者で最も多い傷病は,男女とも高血圧症 B 患者調査 国民の受療状況を把握するために 3 年に 1 回行う統計法に基づく基幹統計で,平均在院 日数や受療率などがわかります。直近の患者調査は,2014 年(平成 26 年)に実施されて います。 調査は,10 月中旬の特定の 1 日に,層化無作為抽出(入院は二次医療圏単位,外来は都 道府県単位)された医療機関を対象として,その医療機関を利用した患者数およびその内 容を報告してもらうものです。 以下に挙げた統計数値は,2011 年(平成 23 年)の患者調査に基づくものです。 1 受療率 a 受療率とは 1 年のうちのある時点(1 日)に,医療機関で外来あるいは入院の医療を受けた患者の 。 推計(推計患者数)を,人口で割った値に 10 万を掛けた値が受療率です(人口 10 万対) ちなみに,2011 年 10 月の調査日に全国の医療施設で受療した推計患者数は,入院患者 が 134 万人,外来患者が 726 万人でした。 b 受療率の状況 入院受療率は全体では人口 10 万対 1,068(約 1.1%)です。これを性別・年齢階級別にみ ると,男女ともに 10~14 歳が最も低く,90 歳以上が最も高くなっています。 第 9 章 統計データ 349 外来受療率は全体では人口 10 万対 5,784(約 5.8%)となっています。入院受療率と同様 に,これを性別・年齢階級別でみると,男性では 20~24 歳が最も低く,80~84 歳が最も 高くなっています。これに対して女性では,15~19 歳が最も低く,75~79 歳が最も高く なっています。 また,外来受療率は 0~14 歳と,85 歳以上では男性の方が高くなっています。 受療率︵人口 14,000 12,000 外来・女 10,000 外来・男 8,000 10 6,000 そ の 他 の 保 健 統 計 4,000 万対︶ 5 入院・男 2,000 入院・女 歳以上 ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ 5∼9 1∼4 0歳 0 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 14 19 24 29 34 39 44 49 54 59 64 69 74 79 84 89 資料 厚生労働省「患者調査」 図9-15 性・年齢階級別受療率̶入院,外来 (国民衛生の動向2014/2015より引用) c 傷病別分類 大分類の傷病別にみた受療率(人口 10 万対)は,入院では“精神及び行動の障害”が 225 “消 で最も高く, “循環器系の疾患”の 200 がこれに次いでいます。これに対して外来は, “筋骨格系及び結合織の疾患”の 798, “循環器系の疾患”の 755 化器系の疾患”の 1,036, の順になっています。65 歳以上に限ると入院・外来とも 1 位は循環器系の疾患となります。 中分類でみると,入院 1 位は統合失調症で,外来 1 位は高血圧性疾患となり,65 歳以上 に限ると,入院は脳血管疾患,外来は高血圧性疾患です。 表 9-4 受療率 1 位の疾患 入院 外来 大分類 総数 65 歳以上 精神および行動の障害 循環器系の疾患 消化器系の疾患 循環器系の疾患 中分類 総数 65 歳以上 統合失調症 脳血管疾患 高血圧性疾患 高血圧性疾患 2 平均在院日数 9 月中に退院した患者数およびその内容を報告してもらうものです。傷病別分類・年齢 階級別の平均在院日数が得られます。 2011 年 9 月中の平均在院日数は,全傷病で 32.8 日です。在院日数が長いのは,統合失調 350 第 9 章 統計データ 症の 561.1 日と血管性および詳細不明の認知症の 359.2 日です。 11 受療率が最も高いのは,入院は精神,外来は消化器 C 国民健康・栄養調査 健康増進法に基づく一般統計で,国民の健康状態,食品摂取量,栄養素等摂取量などの 5 実態を把握するとともに,健康増進対策に必要な資料を得るため,厚生労働省が毎年 11 そ の 他 の 保 健 統 計 月に実施するものです。 実際には,設定された単位区から無作為に抽出した 300 単位区内世帯(約 5,000 世帯)お よび世帯員(約 1,500 人)を調査の対象とします。一部の対象者には,血圧測定や血液検査 も実施され,赤血球数や HDL コレステロール値,ヘモグロビン A1c 値などを調べます。 以下に挙げた統計数値は,2012 年(平成 24 年)の国民健康・栄養調査に基づくものです。 1 栄養摂取量の状況と肥満の状況 a 栄養摂取状況 エネルギー摂取量は 1,874kcal で適正な水準にある。 蛋白質摂取量は減少傾向にあるが,動物性が 1/2 以上を占めている(動物性 53.5%>植 物性 46.5%) 。 炭水化物摂取量は減少傾向にあり,250g 台まで低下しましたが,炭水化物エネルギー 比率は最近は 59%台で横ばいである。 脂質摂取量は 55.0g/日で,エネルギー比率でみると 26.2%である。 脂肪エネルギー比率は,2015 年の日本人の食事摂取基準の目標量上限(30%)を超え る世代はない。 カルシウム摂取量(499mg/日)は近年横ばいで,推奨量には達していない。 鉄摂取量は,女性では 10~69 歳の年齢階級で,月経のある場合の推奨量に達している 階級はない。男性でも 14 歳以下は達していない。 食塩摂取量は減少傾向(成人男 10.8g/日,成人女 9.3g/日)にあるが,目標(12 歳以上 の男 8.0g/日,10 歳以上の女 7.0g/日)にはまだ隔たりがある。 b 肥満の状況 2 2015 年の日本人の食事摂取基準では,BMI〔体重(kg) ×身長(m) 〕が 18~49 歳は 18.5 未満,50~69 歳は 20.0 未満,70 歳以上 21.5 未満をやせを判定し,25.0 以上を肥満と 第 9 章 統計データ 351 判定します。 国民健康・栄養調査によると,男性では 29.1%が,女性では 19.4%が肥満です。年齢階 級別にみると,男性では 40 歳代の 36.6%が最も高くなっています。中高年男性の 3 割以 上が肥満です。 やせは特に 20 歳代の女性(21.8%)でその割合が高くなっています。 2 糖尿病の実態 わが国の糖尿病に関する状況およびその背景を把握し,今後の予防に反映することを目 的に行ったのが,1997 年(平成 9 年)の糖尿病実態調査です。この調査は 2007 年(平成 5 19 年)からは国民健康・栄養調査の重点項目として実施されています。 そ の 他 の 保 健 統 計 2012 年の国民健康・栄養調査では,糖尿病が強く疑われる者(ヘモグロビン A1c 値が 6.1%以上,または現在糖尿病の治療を受けている者)は約 950 万人でした。糖尿病を指摘 された者のうち,現在治療を受けている者は男性で 58.9%,女性で 60.6%で,治療を受け たことのない者が男性で 28.9%,女性で 27.3%にも及びます。 3 喫煙と飲酒 a 喫煙状況 2012 年の国民健康・栄養調査によると,喫煙習慣の割合は男性が 34.1%,女性が 9.0% でした。また,2013 年(平成 25 年)の日本たばこ産業の喫煙調査によると,20 歳以上の 喫煙者は男性で 32.2%,女性で 10.5%となっています。喫煙率は,男性では低下傾向にあ りますが,女性は横ばいとなっています。 喫煙率を西欧諸国と比較すると,わが国の男性は高く,女性は低いのが特徴です(2011 年のアメリカでは,男 21.6%,女 16.5%) 。 b 飲酒状況 2012 年の国民健康・栄養調査によると,飲酒習慣のある者*1 の割合は,男性で 34.0%, 女性で 7.3%となっています。飲酒習慣のある者を年齢階級別にみると,男性の 50~69 歳 では 40%を超えています。 *1 飲酒習慣のある者:20 歳以上で週 3 日以上飲酒し,飲酒日 1 日当たり 1 合以上を飲酒すると 回答したもの。 352 第 9 章 統計データ D 障害者統計 1 精神障害者の現状 a 患者数 上述したように,2011 年の患者調査では,精神および行動の障害で入院していたのは 人口 10 万対で 225 人でした。このうち 139 人(約 62%)が統合失調症でした。また,精神 5 および行動の障害で外来を受診したのは,入院より少ない 176 人(人口 10 万対)です。 そ の 他 の 保 健 統 計 一方,精神障害者の入院患者数は,1990 年代中葉をピークに減少傾向に転じ,2012 年 (平成 24 年)の病院報告*2 によると,在院患者数は 303,521 人となっています。なお,精 神病床の平均在院日数は,同報告によると 291.9 日となっています。 b 入院形態別患者数 患者数を入院形態別にみると,最も多いのは任意入院ですが,近年は減少傾向で 2011 年には 55.2%となり,医療保護入院の 43.7%がこれに次いでいます。措置入院患者数は 0.5%に過ぎません。 *2 病院報告:全国の病院および療養病床を有する診療所における患者の利用状況と病院の従事 者の状況を把握し,医療行政の基礎資料を得ることを目的とする調査で,毎年実施されています。 2 身体障害者の現状 a 身体障害児 厚生労働省が 2011 年(平成 23 年)に実施した“生活のしづらさなどに関する調査(全 国在宅障害児・者実態調査) ”によれば,在宅の身体障害児(18 歳未満)数は約 72,700 人 と推計されています。この数値は,2006 年(平成 18 年)に実施された身体障害児実態調 査(厚生労働省)に比べ,22.0%も減少しています。 障害の種類別にみると,最も多いのは肢体不自由の 58.1%で,次いで聴覚・言語障害の 16.2%,内部障害の 13.5%の順になっています。 b 身体障害者 上述した 2011 年(平成 23 年)の“生活のしづらさなどに関する調査”によれば,在宅 の身体障害者(18 歳以上)数は約 3,791,000 人と推計されています。この数値は,2006 年 (平成 18 年)に実施された身体障害者実態調査(厚生労働省)に比べ,8.8%増加していま す。 第 9 章 統計データ 353 障害の種類別にみると,最も多いのは肢体不自由(44.0%)で,内部障害(24.3%) ,聴 覚・言語障害(8.2%)の順となっています。 c 身体障害者手帳 2012 年度(平成 24 年度)末現在の交付台帳登載数は 5,231,570 人で,前年に比べ 24,790 人増加しています。 3 知的障害者の現状 2011 年(平成 23 年)の“生活のしづらさなどに関する調査”によれば,療育手帳を所 5 持する在宅の知的障害児・者は 621,700 人と推計され,この数値に施設入所児・者の そ の 他 の 保 健 統 計 119,000 人を加えた 740,700 人が,わが国の知的障害児・者総数と推計されます。 E 感染症統計 1 主な感染症の動向 ポイントとなるのは以下に示した 3~5 類感染症の発生状況です。以下に 2012 年(平成 24 年)の患者数を示します。 a 3 類感染症 コレラ:ここ 10 年ほどは 2 桁台の発生で,2012 年は 3 人でした。 細菌性赤痢:毎年,数百人程度の発生で,2012 年は 214 人でした。 腸管出血性大腸菌:2012 年は 3,768 人が報告されています。 腸チフス,パラチフス:双方ともに激減し,2012 年の腸チフスは 36 人で,パラチフス は 24 人でした。 b 4 類感染症 マラリア:2012 年の患者数は 72 人でした。近年の患者は輸入例であり,国内感染例は ありません。 日本脳炎:近年は減少傾向が著しく,2012 年は 2 人でした。 つつが虫病:近年は減少傾向にある疾患で,2012 年は 436 人でした。 エキノコックス症:北海道を中心に報告される感染症ですが,2012 年は 17 人でした。 354 第 9 章 統計データ c 5 類感染症 インフルエンザ:定点把握疾患で,2012 年の報告数は 1,676,374 人(定点当たり 341.14) でした。 百日咳:定点把握疾患で,2012 年の報告数は 4,087 人(定点当たり 1.30)でした。 風疹,麻疹:ともに全数把握疾患で,2012 年の風疹患者は 2,386 人,麻疹患者は 283 人 でした。 破傷風:全数把握疾患で,2012 年は 118 人でした。 性感染症:2012 年は,全数把握の梅毒が 875 人でした。また定点把握の性感染症は,性 器クラミジア感染症が 24,530 人(定点当たり 25.26) ,淋菌感染症が 9,248 人(定点当た 5 り 9.52) ,性器ヘルペス感染症が 8,637 人(定点当たり 8.89) ,尖圭コンジローマが 5,467 そ の 他 の 保 健 統 計 人(定点当たり 5.63)となっています。 2 後天性免疫不全症候群の動向 a 世界の動向 国連合同エイズ計画によると,2012 年末現在の世界の HIV 感染者は 3,530 万人と推計さ れています。2012 年の世界における新規 HIV 感染者数は 250 万人,エイズによる死亡者数 は 170 万人とそれぞれ推計されています。HIV の新規感染数(推計値)は,東アジア,ラ テンアメリカ,東欧・中央アジアなどでは減少していますが,サハラ以南のアフリカ,中 東・北アフリカ,南アジア,東南アジア,北アメリカでは増加しています。 b わが国の動向 わが国の HIV 感染者の原因は,かつては HIV に汚染された輸入血液凝固製剤(非加熱 製剤)によるものがその大半を占めていました。しかし,現在では感染者総数 15,812 人 ,その内訳は (2013 年累計)のうち,性的接触を原因とする者が圧倒的に多く(13,321 人) 同性間性的接触が 8,899 人,異性間性的接触が 4,422 人となっています。 静脈注射乱用を原因とするものは 68 人(0.43%),母子感染に起因するものは 37 人 (0.23%)に過ぎません。 c 2013 年のデータ エイズ動向委員会によると,2013 年(平成 25 年)の新規 HIV 感染者は 1,077 人で,原因 の 90%は性的接触(同性間性的接触が 71%,異性間性的接触が 18%)です。 また,新規 HIV 感染者の報告は,52%が関東・甲信越ブロック(東京を含む)で,近 畿ブロックの 21%がこれに次いでいます。 2013 年の新規エイズ患者の報告は 469 人でした。 第 9 章 統計データ 355 (人) 1,077 1,200 1,000 800 新規 HIV 感染者は, 日本人男性で同性間 性的接触を感染経路 とする人が多数を占 めています 600 469 HIV感染者数 400 200 AIDS感者数 0 ・ 1985 昭和60年 ,90 平成2 ・ ・ ,95 7 ・ ,00 12 ・ ,05 17 ・ ,10 22 ・ ,13 25 資料 厚生労働省エイズ動向委員会 注 報告数は凝固因子製剤によるHIV感染を含まない。 5 図9-16 HIV感染者・エイズ患者報告数の推移 (国民衛生の動向2014/2015より引用) そ の 他 の 保 健 統 計 12 わが国の新規 HIV 感染者は,7 割以上が同性間性的接触 3 結核の動向 a わが国の動向 昭和初期から第二次世界大戦終戦直後まで長い間,死因順位の第 1 位を占めていました (当時は,青年層の罹患が多かった)が,その後は一貫して減少し,2012 年(平成 24 年) の死因順位は 26 位にまで低下しています。ただし,結核の罹患率は欧米諸国に比べると まだ高い状況にあります。 b 2012 年のデータ 2012 年(平成 24 年)の新規登録患者数は 21,283 人で,そのうち 8,237 人が感染性の高い 菌喀痰塗抹陽性肺結核患者です(ここ 10 数年は減少傾向) 。また,新規登録患者を年齢階 級別にみると,死亡率・罹患率・有病率とも,ほぼ年齢に比例して上昇し,70 歳以上で 最高となるため,結核は高齢者の疾病であるといえます(新規登録患者の 55.6%を 70 歳 。 以上の者が占めています) 結核の発生には地域差があり,2012 年の罹患率は大阪の人口 10 万対 27.1 が最高で,長 野県の 9.5 が最低です。 同年末現在の結核登録患者数は 52,173 人で,そのうちの 14,858 人が治療を要する活動性 全結核患者です。 13 結核新登録は 70 歳以上が 5 割以上を占めている 結核の罹患率の地域差は大きい 356 第 9 章 統計データ 4 食中毒統計 a 中毒の概況 食中毒の患者と死者の発生状況は,食中毒統計によります。この統計は食品衛生法に基 づいてなされる食中毒の届出を集計したものです。 食中毒の患者数は,ここ 20 年あまりは 2 万~3 万人前後で推移していますが,2013 年(平 成 25 年)は 20,802 人(発生件数は 931 件)の発生がみられました。また,腸管出血性大腸 菌 O157 によって,2011 年には 7 人が,2012 年には 8 人が,2013 年には植物性自然毒によ り 1 人が死亡した食中毒がありました。 5 以下に挙げたデータは,2013 年(平成 25 年)の食中毒発生状況(厚生労働省)による そ の 他 の 保 健 統 計 ものです。 b 原因食品 原因食品が判明している食中毒件数は 793 件(85.2%)で,このうち最も多かったのが 「その他」の 59.3%,次いで魚介類に起因するものの 17.0%,複合調理食品の 6.9%,野菜 およびその加工品の 6.7%の順になっています。 c 病因物質 食中毒を病因別にみると,病因物質が判明している食中毒件数は 903 件(97.0%)で, このうち最も多かったのは細菌の 40.0%で,ウイルスの 38.9%がこれに次いでいます。こ れらの詳細をみると,最多はノロウイルスの 36.3%で,これに次ぐのがカンピロバクター の 25.1%です。 この病因物質の判明している食中毒を患者数(20,423 人)別にみると,最も多いのはノ ロウイルスの 62.0%で,二番目に多いカンピロバクターは 7.2%に過ぎません。 食中毒を病因物質 (2013 年)別にみると, 件数でも患者数でもノ ロウイルスが最多です F 歯科疾患実態調査 1 現在歯の状況 2011 年(平成 23 年)の調査によると,20 歯以上有するものの割合は,40 歳代で 97%以 第 9 章 統計データ 357 上,50 歳代で 85%以上,80~84 歳でも 28.9%と,20%を大きく上回っています。また, 8020 達成者(80 歳で 20 本以上の歯を有する者の割合)は 38.3%にまで増加しています。 なお,80 歳の 1 人平均現在歯は 12.7 本です。 2 う歯の状況 う歯をもつ者の割合(5 歳以上,永久歯)は,最も低いのは 5~9 歳の 10.0%で,最も高 いのは 45~54 歳の 99.1%です。 近年は 5 歳以上 45 歳未満で減少傾向がみられるのに対して,45 歳以上では増加傾向が みられます。 5 そ の 他 の 保 健 統 計 G 学校保健統計 1 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査 平成 25 年の同調査によると,小学校,中学校,高等学校,特別支援学校における“い じめ”の認知件数は 185,860 件でした。 “いじめ”の認知学校数の割合は,小学校が 48.4%,中学校が 65.5%,高等学校が 44.4%,特別支援学校が 20.4%となっています。 “いじめ”の様態のなかでは,総計(複数回答)で「冷やかしやからかい,悪口や脅し文 「パソコンや携帯電話等で,誹謗 句,嫌なことを言われる」が最多で 64.4%を占めました。 中傷や嫌なことをされる」は 4.7%でしたが,高等学校に限ってみると 19.7%もありました。 2 学校保健統計調査 学校における定期健康診断の結果についての抽出調査で,統計法に基づく基幹統計の 1 つです。幼稚園,小学校,中学校,高等学校を対象に,毎年 4 月 1 日から 6 月 30 日までの 間に調査します。この調査では,身長,体重および肥満傾向の割合などのほか,被患率も 報告されます。 2013 年(平成 25 年)の調査によると,小学校では被患率が最も高いのは“う歯”で,第 2 位が“裸眼視力 1.0 未満”となっています。う歯は,近年すべての学校段階において未処 置率が低下傾向にあります。中学校,高等学校では現在,う歯は第 2 位となっています。 表 9-5 に各学校段階における被患率を示します。 358 第 9 章 統計データ 表 9-5 小学校,中学校,高等学校における被患率(平成 25 年度) 順位 小学校 中学校 高校 1位 う歯 54.1% (未処置 27.0%) 裸眼視力 1.0 未満 52.8% 裸眼視力 1.0 未満 65.8% 2位 裸眼視力 1.0 未満 30.5% う歯 44.6% (未処置 19.7%) う歯 55.1% (未処置 23.7%) 資料 文部科学省「学校保健統計調査」 5 〈小学生〉 〈中学生〉 そ の 他 の 保 健 統 計 〈高校生〉 H 産業保健統計 1 労働災害と業務上疾病 a 労働災害 労働災害による“死亡者数”および“休業 4 日以上の死傷者数” ,次項で説明する“休業 4 日以上の業務上疾病”は,1980 年(昭和 55 年)ころからほぼ単調に減少してきましたが, 近年は死亡者数および業務上疾病は多少の増減を繰り返しています。 図 9-17 に示したように,2013 年(平成 25 年)の死亡者数は 1,030 人で,休業 4 日以上の 死傷者数は 118,157 人。 第 9 章 統計データ 359 万人 60 死亡 6,000 50 5,000 休業4日以上 40 死亡 4,000 3,000 (休業) 118,157 休業8日以上 30 20 2,000 10 1,000 0 ・・ ,・ 60 1953 昭和28年 35 (死亡)1,030 ・ ,・ 70 45 ・ ,・ 80 55 ・ ,・ 90 平成2 ・ ,・ 00 12 ・ , ・ ,・ 10 13 22 25 休業4日以上︵休業8日以上︶ 人 7,000 0 〈資料〉 厚生労働省「労災保険給付データ及び労働者死傷病報告」 5 図9-17 労働災害による死者数の推移(死亡災害と休業4日以上) (国民衛生の動向2014/2015より引用) そ の 他 の 保 健 統 計 b 業務上疾病 2013 年(平成 25 年)の休業 4 日以上の業務上疾病者は 7,310 人でした。ただし,上述し たようにこの数値は近年増減を繰り返しています。 業務上疾病の内訳をみると,災害性腰痛の 60.0%が突出して高く,これに物理的因子に よる疾病の 10.7%が続いています。 また,精神障害等による労災認定件数は増加傾向にあり,2013 年(平成 25 年)には 436 人にまで達しています。 14 業務上疾病で最も多いのは災害性腰痛 増加傾向にあるのは精神障害等 2 健康診断 a 定期健康診断 定期健康診断における有所見率*3 は,1990 年(平成 2 年)以降は単調に増加しています。 2013 年(平成 25 年)の有所見者割合は 53.0%でした。これを項目別にみると血中脂質 の 32.6%が最も高く,血圧の 14.7%がこれに次いでいます。 *3 有所見率:定期健康診断の結果,何らかの所見を有する労働者の割合(%)で,有所見者数 /受診者数×100 で計算します。 b 特殊健康診断 2013 年(平成 25 年)の対象業務別特殊健康診断において有所見者数が最も多かったの は騒音の 39,460 人で,これに有機溶剤の 36,050 人と電離放射線の 21,445 人が続いています。 360 第 9 章 統計データ じん肺健診における有所見者数の割合は,1983 年(昭和 58 年)以降はほぼ単調に減少 し,2013 年(平成 25 年)には 1.0%になっています。 3 労働時間と女性の労働力人口比率 a 労働時間 わが国における戦後の労働時間は,所定内労働時間(就業規則などで定められた実労働 時間) ,所定外労働時間(所定内労働時間を超えた労働時間。つまり,残業や休日出勤な ど) ,総実労働時間(前の二者を合わせたもの)のいずれにおいても,1960 年(昭和 35 年) 5 をピークとしてほぼ単調に減少してきました。 そ の 他 の 保 健 統 計 ちなみに,厚生労働省による毎月勤労統計調査(平成 24 年分)によると,同年の所定 内労働時間は 1,640 時間/年で,所定外労働時間は 125 時間/年,総実労働時間は 1,765 時間/ 年となっています。 b 女性の年齢階級別労働力人口比率 各年齢別人口に占める労働力人口の割合を示すもので,図 9-18(平成 24 年)に示した ように,25~29 歳と 45~49 歳の 2 か所がピークで,35~39 歳で底となり,グラフは M 型 を呈しています。これは,結婚,出産,育児などのために退職し,育児が一段落した後に 再び就労することに起因しています。 (%) 90 77.6 80 70 75.7 68.6 67.7 68.7 60 50 40 30 20 14.6 10 69 70 (歳) ∼ 65 64 ∼ 60 59 ∼ 55 54 ∼ 50 49 ∼ 45 44 ∼ 40 39 ∼ 35 34 ∼ 30 29 ∼ 25 24 ∼ 20 19 ∼ 15 ∼ 0 (備考)1.総務省「労働力調査(基本集計)」より作成。 2.「労働力率」は,15歳以上人口に占める労働力人口(就業者+ 完全失業者)の割合。 図9-18 女性の年齢階級別労働力率の推移(平成24年) (内閣府:男女共同参画白書 平成25年版より一部抜粋) 第 9 章 統計データ 361 白
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