BOF の温度及び圧力印加による反射スペクトルシフト

2007 年 電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会
CS-4-4
BOF の温度及び圧力印加による反射スペクトルシフト
Reflection Spectrum Shift caused by Temperature and Pressure
斧田 誠一
Seiichi
Onoda
中野 正行
黒木 保
Masayuki Nakano
㈱渡辺製作所
WATANABE CO.,LTD.
Ryo Nagase*
*日本電信電話株式会社 NTT フォトニクス研究所
NTT Photonics Laboratories, NTT Corporation
フィルタ設計時のシミュレーション値とほぼ一致している。
1. まえがき
Reflectance γ (dB)
0
筆者らは先にファイバ端面に多層膜 BPF(Band Pass Filter)を
直接形成した BOF(BPF On Fiber-end)を反射センサとして、外
部物理量に応じて変化する反射スペクトルシフトを、BPF の中心
波長を挟む 2 つの波長における反射率比から割り出す新たなフ
ァイバセンシグ方式を提案した1)。
今回実際に BOF センサを試作し、温度による反射スペクトル
シフトを評価したところ、FBG に比べて大きな波長シフトが得ら
れた。ついで BOF の膜厚方向に圧力を加えたときの反射スペク
トルを求めたところ、ここでも大きな波長シフトが得られることを
見出した。併せて報告する。
-4
-8
Temperature
-12
-16
1534
1538
1542
1546
1550
1554
Wavelength λ (nm)
図 5 BOF 反射スペクトルの温度依存性 (–20~50℃)
Wavelength λ (nm)
つぎに、ある規準温度
1544.6
y = 0.0123x+1544
において反射スペクトルの
1544.4
中心波長を挟む 2 つの波
1544.2
長における反射率の動き
1544.0
に注目すると、両者は温
1543.8
-20 -10 0 10 20 30 40 50
度変化に応じて±プッシ
Temperature T (℃)
ュプルに変化するから、そ
図 6 BOF 反射率半値中心
の比を求めることによって
波長の温度依存性
スペクトルシフト量を安定
3
に割り出すことができる2)。
2
上記データをもとに、
1
室 温 にお い て反 射 スペ
0
ク ト ルの 波 長勾 配 が最
-1
急となる 2 つの波長
-2
(1540.7/1547.9nm)を設定
し、両波長における反射
-3
-20 -10 0 10 20 30 40 50
率比ζ(dB)を求めた結果
Temperature T (℃)
を図 7 に示す。温度に対
図 7 2 波長反射率比の温度依存性
し て ζが リ ニア に 変化
していることがわかる。温度勾配は 0.08dB/K であった。す
なわち反射率比の検出感度が 0.08dB 以下であれば、±1K
の温度センシングが可能であることを示している。
2. BOF の試作
Differential Reflectance ζ (dB)
図1のように単一モードフ
ァイバのフェルール端面に、
SiO2/TiO2による2キャビティ
SMF フェルール
多層膜 BPF
誘電体多層膜BPFをイオン
図 1 BOF の形成
アシストにより蒸着した。
図2(a)(b)は平面研磨SiO2
フェルールおよび球面研磨
ZrO2フェルールのBOF外観
である。図3にBPFの斜断面
写真を示す。図4はこれらに
(b)球面研磨
(a)平面研磨
よる温度プローブの外観で
ZrO2 フェルール
SiO2 フェルール
図 2 試作 BOF 外観
ある。
図 3 BOF 斜断面
長瀬 亮*
Tamotsu Kuroki
4. 反射スペクトルの
圧力特性
図 4 温度プローブ
3. 反射スペクトルの温度特性
BOF の 成 膜 材 料 が
TiO2/SiO2 といった弾性誘
電体であることから、膜厚方
向に圧力が印加されると、
弾性変形によって多層膜の
光路長が変化し、温度の場
合と同様反射スペクトルが
ZrO2 フェルール BOF の反射スペクトル温度特性を求めた。
図 5 に-20℃から 50℃までの温度範囲を 5℃刻みで振ったとき
のスペクトルを重ねて示す。図 6 は温度に対する半値中心波長
の変化を求めたものである。温度上昇とともに 12pm/K の割合で
長波長側へリニアにシフトしていることがわかる。この波長シフト
量は平均的な FBG の温度感度(10pm/K)に比べて 2 割大きく、
1/2
LOAD
Core
Cladding
Ferrule
BOF
BK7
図 8 BOF 圧力特性の測定
10
Spectrum shift Δλ(nm)
シフトするものと予想される。
図 8 のように、球面研磨 ZrO2 フェルールの BOF を BK7 板に
押し当てて荷重(0~34N)を加えたときのスペクトル変化を求め
た。図 9 に結果を示す。図 10 は半値中心波長の変化である。2
桁(0.1~10N)の荷重変化に対して 3nm 程度波長がシフトしてい
る。
Reflectance γ (dB)
-10
-12
Δλ=1.4847 W 1/3
Interpolation
λ 0=1545.7nm
①SiO2 / BK7
Δλ=1.40 W 1/3
Boundary of
fiber(SiO2)&
ferule(ZrO2)
0.1
Load
0.01
0.1
1
10
100
Load W (N)
-14
図 12 荷重に対する波長シフト特性
-16
-18
1520
②ZrO2 / BK7
Δλ=1.21 W 1/3
1
1530
1540
1550
図 12 は荷重対波長シフトの関係を示したもので、プロットは
実測値、実線は計算値である。ただし波長シフトは直接には求
められないので、荷重に対する中心波長変化が Hertz の 1/3 乗
則にフィットしている領域のデータをもとにゼロ荷重時の波長を
内挿し、そこからの偏差として求めた。
計算直線①は荷重による接触面積がファイバ断面内の場合、
直線②は ZrO2 フェルールに大きくはみ出した場合の特性であ
る。計算による両者の境界は接触面積がファイバ断面と等しくな
るときで、荷重 1.2N に相当する。図のように計算と実測はよく一
致している。荷重 0.2N 以下で波長シフトが寝てくるのは摩擦の
影響である。
圧力による波長シフトの要因として光弾性効果による屈折率
の変化も考えられるが、上記のように Hertz 理論で非常によく説
明できることから、その影響は無視できる程度と考えてよいだろ
う。
1560
Wavelength λ (nm)
図 9 BOF 反射スペクトルの荷重依存性 (0~34N)
1545
Wavelength λ (nm)
先の温度センシングと同
じようにして、荷重 8(N)
1544
時のピーク値の半値をあ
1543
たえる 2 つの波長
(1539/1547nm)を設定し
1542
たとき の荷重対 反射率
1541
比 ζ(dB)を求 めたのが
0.1
1
10
100
図 11 である。BOF によっ
Load W (N)
て荷重(歪)の検出が可
図 10 BOF 反射率半値中心
波長の荷重依存性
能であることがわかる。
同図で荷重の小さい領
3
域で反射率比ζが寝て
2
いるのは測定治具の摩
1
擦による影響である。
0
ここで上記特性を
-1
Hertz の弾性接触論によ
-2
って検証してみよう。圧
-3
力ないし荷重によって膜
0.1
1
10
100
Load W (N)
厚が圧縮されるとすれば、
図 11 2 波長反射率比の荷重依存性
BOF の波長シフト率は
弾性圧縮率(歪)に等しいと考えてよいはずである。このとき波長
シフトΔλは次式であたえられる。
Differential Reflectance ζ (dB)
5. あとがき
3K 2 / 3W 1 / 3 l0
Dl = el0 =
2/3
2pE A R A
2
誘電体多層膜により形成された BOF の温度および印加圧力
に対するスペクトルシフト特性を実測評価した。温度に対しては
12pm/K と通常の FBG より大きな温度感度が得られた。膜厚方
向への印加圧力に対しては、2 桁の荷重変化に対して 3nm の
波長シフトが観測された。荷重と波長シフトの関係は Hertz の弾
性接触論でよく説明できる。以上のことから BOF が新たな温度
および圧力センサとして可能性をもつことが実証された。
<謝辞>
BOF の試作で協力頂いた光伸光学工業(株)技術部遠藤尚
マネージャに感謝します。なお本研究の一部は 2005 年の経産
省地域新生コンソ-シアムの中でなされたものである。併せて
謝意を表したい。
・・・・・・・・・・・・・(1)
2
1
3 1 -νA
1 -νB
= (
+
)
K
4
EA
EB
<参考文献>
・・・・・・・・・・・・・(2)
1)
ここで、EA、EB およびνA、νB はファイバ材 SiO2 あるいはフェル
ール材 ZrO2 および BK7 のヤング率とポアソン比、RA はファイバ
端面の曲率半径、W は荷重、εは歪である。 上式より、スペク
トルシフトを大きくするには、接触子材料のヤング率とポアソン
比を大きくし、接触半径を小さくすればよいことがわかる。
2)
3)
4)
2/2
「2 波長プッシュプル反射計測方式(DWPR)の提案」
斧田、塚本、荻野、丸山、山下 2007.3 信学総大 C-5-13
「BOF によるファイバ温度センシングの提案」
斧田、井上 2007.3 信学総大 C-5-14
「BOF 反射スペクトルの温度依存性」
斧田、中野、黒木、井上 2007.8.23 信学会 EMD 研資
「BOF 反射スペクトルの膜厚方向圧力依存性」 斧田、
黒木、中野、井上、長瀬 2007.8.23 信学会 EMD 研資