FLUKE サーモグラフィー編(全22P・PDF)

FLUKE サーモグラフィー
よくある質問ポケットブック
www.fluke.com/jp
第一部 サーモグラフィーの基本知識
目 次
第一部 サーモグラフィーの基本知識
Q1
赤外サーモグラフィーの基本構造を教えてください。 .........................................7
Q2
なぜサーモグラフィーから「カチャ、カチャ」という音がするのですか?
自動校正とは何ですか? ................................................................................7
Q3
サーモグラフィーを使用前に予熱する必要がありますか?................................7
従来の測定ツールと比較した赤外サーモグラフィーの優れた点
Q4
サーモグラフィーと赤外線温度計(スポット式温度測定器)との比較...................8
Q5
サーモグラフィーとデータロガーとの比較 .........................................................9
Q6
サーモグラフィーと熱シュミレーション解析ソフトとの比較...................................9
型式選択についてのご提案
Q7
適切な分解能の選択方法を教えてください。 ....................................................9
Q8
適切な熱感度の選択方法を教えてください。 ....................................................9
Q9
各用途の適切な温度レンジアビリティの選択方法を教えてください。................10
Q10
サーモグラフィーの精度範囲を教えてください。 ..............................................10
Q11
サーモグラフィー用にはどのような赤外レンズがありますか?
それぞれのレンズはどのような分野に使うことができますか?
必ず購入しなければならないのでしょうか? ...................................................10
3
第一部 サーモグラフィーの基本知識
Q12
他社のサーモグラフィーでも Fluke IR-Fusion®と同等の
技術的効果のある赤外-可視画像のスポット対スポットの
重ね合わせ画像が描けるのでしょうか?........................................................11
Q13
Fluke のサーモグラフィーにはなぜ同類製品と同様の
(iPhone や iPad と通信が可能な)Wi-Fi 接続機能が
搭載されていないのですか? ........................................................................11
Q14
Fluke のサーモグラフィーはボタン操作ですが、
他社製品のようなタッチパネル式の方が簡単ではありませんか?...................11
Q15
他社のサーモグラフィーは Fluke と同様に堅牢で耐久性がありますか?.........11
Q16
Fluke のサーモグラフィーの品質保証条項を教えてください。..........................12
Q17
Fluke のサーモグラフィーの熱解析ソフトにはどのような特徴がありますか?
別途購入しなければなりませんか? ..............................................................12
第二部 サーモグラフィー使用にあたっての注意事項
サーモグラフィーのパラメーター
Q18
私のサーモグラフィーでは正確に温度測定ができないのですが、
その原因を教えてください。 ...........................................................................12
Q19
放射率とはなんですか? 各材料の放射率にはどのような特徴がありますか?
放射率は測定にどのような影響を与えるものですか .......................................13
Q20
放射率を調整する場合、どのようなことに注意しなければなりませんか ...........13
Q21
金属や反射などの低放射率の物体を測定する簡単な方法がありますか?......14
-
-
-
-
-
4
絶縁テープ法
スプレイ塗布法
塗布法
接触温度計法
放射率事後修正
第一部 サーモグラフィーの基本知識
Q22
放射率が異なる物体を測定する場合、撮影アングルに注意する必要が
ありますか? ................................................................................................16
Q23
背景温度補正はなぜ必要なのですか?.........................................................16
Q24
どのような場合に透射率を調整しなければなりませんか?
調整方法を教えてください。...........................................................................17
Q25
カラーパレットの使用方法を教えてください。
各カラーパレットにはどのような特徴がありますか?.......................................17
Q26
サーモグラフィーはどの程度遠方まで撮影することができますか?
最大測定距離はありますか? 計算方法を教えてください。
距離が離れている場合、測定精度に影響がありますか? ...............................18
Q27
Fluke サーモグラフィーにより測定可能な最小目標寸法を教えてください。 ......18
計測器の使用に影響を与える可能性のある環境要因
Q28
サーモグラフィーの計測器の作動温度について何か注意しなければ
ならないことがありますか? 0ºC 以下でも測定や充電ができますか? ...........18
Q29
サーモグラフィーを使用する環境の湿度に何か制約はありますか? ...............18
Q30
現場にスモークや水蒸気がある場合、測定に影響を与えますか?
どのように対応すべきでしょうか? .................................................................18
Q31
Fluke のサーモグラフィーは防爆認証を取得していますか?
ハザードエリアでの測定にも使えますか? .....................................................19
Q32
現場が雨天の場合、正確な測定に影響が生じますか?..................................19
Q33
現場が強風の場合、正確な測定に影響が生じますか?..................................19
Q34
サーモグラフィーの使用により生ずる電磁波が他の機器の動きに
干渉することがありますか?測定現場にある他の機器から
放射される電磁波の影響を受けることがありますか? ....................................19
5
第一部 サーモグラフィーの基本知識
サーモグラフィー使用時のプチ・テクニック
Q35
狭い空間内で目標を測定する場合、測定対象物からの放射物を鏡で
反射させることにより測定することはできますか? ..........................................20
Q36
サーモグラフィーを使って、作動中の設備の測定を行うことができますか?
測定対象物の作動速度率に制限はありますか? ...........................................20
Q37
夜間の測定は太陽反射の影響を受けないため、
効果的な測定ができますか? .......................................................................20
Q38
連続モニタリングにより温度トレンドチャートをとることができますか?..............20
Q39
スピーディーに温度分布曲線を得る方法を教えてください。.............................21
Q40
撮影画像の赤外線熱画像と可視光画像が重ならないのは
どのような原因が考えられますか? 補償の方法を教えてください。 ................21
サーモグラフィーの保守メンテナンス
Q41
赤外線サーモグラフィーは定期的な校正が必要ですか?
もし必要な場合、主にどのパラメーターをもとに校正したらよいですか? ..........22
Q42
赤外線サーモグラフィーのレンズ・クリーニングとメンテナンスを
行う場合の注意事項を教えてください。 ..........................................................22
6
第一部 サーモグラフィーの基本知識
第一部 サーモグラフィーの基本知識
Q1
赤外サーモグラフィーの基本構造を教えてください。
A:
大まかに 5 つの部分から構成されています。
1) 赤外線レンズ:被測定物体から放射される赤外線を受け、それを結像させます
2) 赤外線検出器部分:熱放射信号を電気信号に変換します
3) 電子部分:電気信号を処理します
4) ディスプレイ部分:電気信号を可視光画像に変換します
5) ソフトウェア:収集した温度データを処理し、見かけの温度と画像に変換します
Q2
なぜサーモグラフィーから「カチャ、カチャ」という音がするのですか?自動校正とは何ですか?
A:
通常 1)サーモグラフィーを移動させるスピードが速い時、2)サーモグラフィーを起動させたばかりの時
にサーモグラフィーの中から「カチャ、カチャ」という音がします。
自動校正の理由:サーモグラフィーは環境の温度変化に応じて自動的に調整を行いうことで、それら
の変化が検出器の精度に影響を与えないようにしています。自動調整は通常、2~3 秒かかり、停止
したディスプレイに「校正中」と表示されます。
Q3
サーモグラフィーを使用前に予熱する必要がありますか?
A:
どのようなサーモグラフィーでも十分な予熱時間をおかなければ、精度の高い温度測定や最高品質
の画像を得ることができません。予熱時間は一般に、型式と環境条件の変化により異なります。
サーモグラフィーは 3~5 分以内で予熱がほぼ完了しますが、最も正確な温度測定結果を得たい場合
は、最低 10 分以上予熱することをお勧めします。
温度差がかなり大きい環境間を移動する際、予熱時間を通常よりも長くとる必要がある場合もあり
ます。
7
第一部 サーモグラフィーの基本知識
従来の測定ツールと比較した赤外サーモグラフィーの優れた点
Q4
サーモグラフィーと赤外線温度計(スポット式温度計)との比較
A:
赤外線サーモグラフィーの非常に優れた点とは、簡単に申し上げて、安全であること、直感的操作が
可能なこと、高性能、測定漏れの防止が可能、4 点になります。
以下に主要な特徴をまとめておきます。
赤外線温度測定器
赤外線サーモグラフィー
赤外線画像
無
大面積の対象物もスピーディーに測定するこ
とができるだけでなく、スポットまたは小面積
の測定も高精度
可視光画像
無
可視画像付きで、問題点の一夜その他の現
場情報を正確に記録
単点測定機能
無/測定対象面積の平均温度
を取得
有/サーモグラフィーの画素レイアウトの点ご
とに温度を読み取ることが可能
代表的な距離係数比
10:1~20:1
300:1 以上
レーザーインジケーター
有/但し、測定目標のみを表
示する機能。温度スポットの測
定とは異なります。
多くがレーザーインジケーター、LED 灯が搭
載されており、現場での識別に役立ちます。
安全距離における精度の
高い測定
不可能/測定距離が大きくな
るにつれ、温度が減衰します。
可能/使用者にとって安全な距離を外れても
精度の高い測定が可能です。
データ記録
無
画像として温度情報を記録;保存、送信、複製
が可能。
データ解析
無
有/バックグラウンドにて解析を行う機能を搭
載、赤外線の専門的レポートを作成可能。
8
第一部 サーモグラフィーの基本知識
Q5
サーモグラフィーとデータロガーとの比較
A:
サーモグラフィーをデータロガーと比較した場合、主に次のような優れた点があります。
データロガー
赤外線サーモグラフィー
温度採取点の数
通常数点から数十点のみ
検出器の画素数により数千から数万点
狭小エリアでの測定
温度検出器では接触不可能
撮影に制約無し
測定対象物 の温度 に与
える影響
接触式温度測定のため熱伝導
が起こり、測定対象物の元々
の温度分布が変わってしまう可
能性があります。
非接触式温度測定のため、測定対象物の温
度分布に影響を与えません。
Q6
サーモグラフィーと熱シュミレーション解析ソフトとの比較
A:
熱シュミレーションソフトとは測定対象物の理論的出力にのみ基づいて発熱と温度分布を計算するも
ので、実際に使用される原料の違いや部品の散熱能力や散熱係数による効率等を考慮したものでは
ありません。そのため、測定結果は参考値にすぎません。しかし、サーモグラフィーは測定対象物の
実際の温度分布を把握し、スピーディーにホットスポットとコールドスポットを捕捉することができます。
Q7
適切な分解能の選択方法を教えてください。
A:
サーモグラフィーの赤外線分解能については、常に最高の分解能である必要はありません。測定の
必要にあわせて、画像品質、制度、操作、価格から総合的に選択することが大切です。通常、320×
240 や 160×120 のサーモグラフィーを使えば重要な案件はほとんど測定することができます。Fluke
サーモグラフィーは卓越した画像品質と堅牢性、耐久性を誇り、操作も容易な最もバランスが取れた
製品です。
Q8
適切な熱感度をどのように選べばよいのですか?
A:
一般的な日常のメンテナンス業務に対しては、≤ 100 mK(0.1ºC)が適用されます。遠距離でのモニタ
リングや研究分野では、より熱感度の高いサーモグラフィーを推奨します。建築診断分野では、Fluke
建築専用サーモグラフィー(TiR シリーズ)があります。これは同仕様の汎用型と比べて熱感度が高
く、最高 ≤ 45 mK(0.045 ºC)となり、建築物の欠陥から起きる非常に微細な温度変化をより容易に識
別することができます。
9
第一部 サーモグラフィーの基本知識
Q9
用途ごとの適切な温度レンジアビリティの選び方を教えてください。
A:
日常的なメンテナンスの場合、ほとんどが-20ºC~250 ºC 又は-20ºC~350ºC のレンジで十分です。
建築に関する問題点の診断では、ほとんどが-20ºC~150ºC のレンジアビリティで十分です。
研究開発や他の分野では、具体的な使用目的の温度測定範囲に応じて適切な製品を選んでくださ
い。
Q10
サーモグラフィーの精度範囲を教えてください。
A:
赤外線サーモグラフィーは国家基準に準拠しており、その精度は読み数の±2%又は±2ºC の内、大
きな方の値をとることになります。
より高い精度が必要な測定では、その赤外線サーモグラフィーを省及び省相当の地方政府の計量事
務所に送付し、校正証書を発行してもらうことができます。校正証書には正確な温度とサーモグラフィ
ーによって測定した温度の対照表がありますので、その表を使いサーモグラフィーの測定の精度を更
に調整することができます。
Q11
サーモグラフィー用にはどのような赤外レンズがありますか?それぞれのレンズはどのような分野に
使うことができますか?必ず購入しなければならないのでしょうか?
A:
通常、標準レンズ、広角レンズ、長焦点レンズがあります。長焦点レンズは遠距離での撮影用、広角
レンズはより広い範囲での撮影用ですが、非常に近距離(10 cm 以内)での小規模物体の温度測定
に使うこともできます。
Fluke Ti55FT、Ti50FT はオプションのレンズを装着することによりレンズを変更することができます。
睿鍳シリーズ(Ti27、Ti29、Ti32)では標準レンズに広角又は長焦点レンズを上から被せれば、遠距
離や近距離の測定を行うことが可能です。
日常的に使う場合では、Fluke サーモグラフィーの標準レンズでほとんど大丈夫です。
10
第一部 サーモグラフィーの基本知識
Q12
他社のサーモグラフィーでも Fluke IR-Fusion®と同等の技術的効果のある赤外 - 可視画像の
スポット対スポットの重ね合わせ画像が描けるのでしょうか?
A:
®
Fluke が搭載する IR-Fusion は、現在、同類製品の中では、赤外線画像と可視光画像の重ね合わせ
能力が最も優れた技術です。全赤外線画像、全可視光、ピクチャー・イン・ピクチャー、AutoBlend ™
の最適化組合モード等を含むスポット対スポットの重ね合わせによる最高の効果を発揮する他、カラ
ー・アラーム機能も附属しています。
Q13
Fluke のサーモグラフィーにはなぜ同類製品と同様の(iPhone や iPad と通信が可能な)
Wi-Fi 接続機能が搭載されていないのですか?
A:
現在、Fluke サーモグラフィーのデータ通信インターフェイスには SD カード、CF カードや USB ビジュ
アルインターフェイスがございます。更に、PAL(中国方式)、NTSC(北米方式)へのビジュアル出力が
可能(Ti50FT/Ti55FT のみ)ですので、ほとんどのお客様に安定的なデータ通信を行っていただくこと
ができます。
現在、ほとんどのお客様はまだ Wi-Fi 機能をお使いになっていため、その新機能を搭載するための開
発コストは発生しておりません。
Q14
Fluke のサーモグラフィーはボタン操作ですが、他社の製品のようなタッチパネル式の方が
簡単ではありませんか?
A:
Fluke サーモグラフィーは片手でボタン操作を行うことができるようにデザインされております。この方
式の方が覚え易く操作し易いことが実践から証明されております。
一部の作業では、操作をする方が手袋をはめて測定する場合もありますので、その場合もタッチパネ
ルでは操作ができません。
Q15
他社のサーモグラフィーは Fluke と同様に堅牢で耐久性がありますか?
A:
Fluke のサーモグラフィーは、2 mの落下試験や過酷な振動試験、電磁波による干渉や極度の温
度、高湿度環境での耐破損試験をクリアしておりますが、競合他社の製品はそれらと同等の劣悪な
環境での測定に耐えられるかが証明されていません。
11
第一部 サーモグラフィーの基本知識
Q16
Fluke のサーモグラフィーの品質保証条項を教えてください。
A:
Fluke ではいくつかの品質保証とサービスプログラムを選ぶことが可能です。標準の品質保証期間は
2 年ですが、オプション購入により保証期間を延長することが可能です。
Q17
Fluke のサーモグラフィーの熱解析ソフトにはどのような特徴がありますか?
別途購入しなければなりませんか?
A:
Fluke の SmartView は非常に高い機能を備えた専門的な熱解析ソフトウェアです。熱画像の温度
摘出、画像修正機能、臨機応変に修正可能な何種類ものレポート・テンプレートがついています。この
ソフトウェアは Fluke サーモグラフィーに添付されるものですので、使用権限に制限はなく、ずっと無償
のアップグレードをすることができます。旧バージョンとも互換性があります。
第二部 サーモグラフィー使用にあたっての注意事項
サーモグラフィーのパラメーター
Q18
私のサーモグラフィーでは正確に温度測定ができないのですが、その原因を教えてください。
A:
温度測定が正確に出来ない場合、まず正しく操作しているかを確認してください。
1) きちんと焦点が合っているかの確認:赤外可視光線重ね合わせモードのピクチャー・イン・ピクチャ
ーは、焦点が正しく合っているかどうかを判断する時に便利に使うことができます。
焦点がきちんと合っていることが確認できた場合は、左の写真のように、赤外線と可視光が完全
に重なっているかどうかを確認してください。
2) サーモグラフィーのパラメーターが正しく設定されているかを確認してください。
放射率:調整方法の詳細は Q18-Q21 を参照してください。
背景温度補正:調整方法の詳細は Q22 を参照してください。
透過率:調整方法の詳細は Q23 を参照してください。
12
第一部 サーモグラフィーの基本知識
Q19
放射率とはなんですか?各材料の放射率にはどのような特徴がありますか?
放射率は測定にどのような影響を与えるものですか?
A:
放射率εとは物体が外に放射する赤外線強度のことです。各物体の放射率は全て 1 という定数未満
です。
非金属素材と金属素材では放射率は大きく異なります。
大多数の非金属素材(プラスチック、ペンキ、皮革、紙等)の放射率は比較的高く、異なる色の同一素
材は目標の放射率が非常に近く、誤差は通常、測定精度の範囲を越えません。表面に光沢のある非
金属素材の一部(タイル、ガラス等)は比較的低いです。
金属素材の放射率は通常 0.5 未満となり、次の要因による影響をうけます。
1) 素材:素材ごとに放射率は異なります。例えば銅の放射率は通常、アルミより高くなります。
2) 表面の光沢:表面が粗い素材の放射率は通常、光沢のある表面のものよりも高くなります。
3) 表面の色:表面が黒を代表とする濃い色の場合、放射率は薄い色よりも高くなります。
実際の計測では適切な放射率を設定すれば、サーモグラフィーが測定対象物から放射される赤外線
を採取し、それらを誤差なく(又は誤差を抑えて)正確な表面温度に換算することができます。
Q20
放射率の調整にはどのようなことに注意しなければなりませんか?
A:
Fluke 赤外線サーモグラフィーではメニューの中の「放射率表」の各種素材デフォルト放射率を選択す
るか、「手動による放射率の設定」を選ぶことができます。手動による設定では次のことに注意が必要
です。
1) できるだけ測定対象物上にある放射率が高い部分(非金属、表面が粗い、低反射)を参考点とし
て選んでください。
2) 放射率が 0.5 より低い場合、できるだけ直接測定を避けてください。具体的な測定方法については
Q20 を参照してください。
3) 放射率の低い表面を撮影しなければならない場合、ファインダーに入るように放射率の高い参考
物を一つ置くか、接触式による測定結果を参考として対照しながら放射率を比較調整するよう推
奨します。
13
第一部 サーモグラフィーの基本知識
Q21
金属や反射などの低放射率の物体を測定する簡単な方法がありますか?
A:
放射率の低い測定対象の表面温度を正確に測るために、次のいくつかの方法を推奨します。
a. 絶縁テープ法
絶縁テープ(3M の電気絶縁テープ、品番 1712、黒、放射率:0.93)を測定対象物の表面に密着して
貼り付け(気泡や皺が生じないように)、測定対象物の表面とテープの温度が同じになるまで十分な
時間を置いて下さい。測定対象の素材表面温度と貼り付けた絶縁テープの表面温度が同じになる
か、近い温度になるまで赤外線サーモグラフィーの放射率を調整してください。この時の放射率が測
定対象素材物の正確な放射率となります。
適用するケース:この方法は測定対象目標が相対的にかなり大きく、温度が比較的低い(80℃未満)
場合で、測定のために測定対象物の表面状態を変えたくない場合に適用します。例えば、各種ラジエ
ターモジュール、光沢のある IC チップ(比較的大きい)表面、金属表面等です。
b. スプレイ塗布法
塗料(アクリル樹脂、Botny 社の自動スプレイ塗料を推奨、黒;放射率:0.97)を測定対象目標の表面
に薄く均一にスプレイ塗布し、測定対象目標の表面と塗膜温度が同じになるまで十分な時間をとりま
す。その後、スプレイ塗装していない表面の温度と塗装した表面の温度が一致するかその温度に近く
なるまで赤外線サーモグラフィーの放射率を調整します。この時の放射率が測定対象目標物の正確
な放射率となります。
適用するケース:この方法は比較的高温の測定対象目標もしくは比較的小寸法の測定対象目標に適
用します。測定対象物表面の状態が変わってもよい場合、例えば設備メンテナンスにおける配管、バ
ルブ等、静止状態の設備;製造業における比較的小さい IC チップの表面、ボンディングワイヤ、不規
則な形状のラジエタープレート、コンデンサーの端部、LED チップ(表面は銀メッキ)等となります。測
定対象物の表面に塗布した塗料は測定後、拭きとることは不可能なことも併せて申し上げます。
c. 塗布法
水性の白墨(晨光水性のホワイトボード用マーカーを推奨、品番 MG – 2160、黒、放射率:0.95)を
測定対象物の表面に塗布し、対象物の目標表面と塗布面の温度が同じになるまで十分な時間をおき
ます。その後、塗布していない表面の温度と塗布した表面の温度が一致するかその温度に近くなるま
で赤外線サーモグラフィーの放射率を調整します。この時の放射率が測定対象目標物の正確な放射
率となります。
適用するケース:この方法は物体表面の状態を変えることができない場合(塗布後、拭き取りが可能)
やテープの貼り付けに適さない対象物に適用します。塗布法は比較的小さい目標物向きですが、目
標物の表面温度が 100℃を超える場合には適しません。油性マーカーは使ってはいけません。もし、
誤って油性マーカーを使ってしまった場合、塗布面をきれいに拭き取ることは困難です。
14
第一部 サーモグラフィーの基本知識
d. 接触温度計法
サーモカップル、サーミスター等のように測定対象物の表面温度を直接計測する熱接触式温度計を
用い、サーモグラフィーで測定して得た表面温度と接触式温度計によって得た表面温度が一致する
かその温度に近くなるまで赤外線サーモグラフィーの放射率を調整します。この時の放射率が測定対
象目標物の正確な放射率となります。
適用するケース:表面に接触して温度測定が可能な現場であるかに注意が必要です(特に帯電して
いる現場や作動中等の現場)。
e. 放射率事後修正
SmartView ソフトウェアでは熱画像をマルチポイント/エリア放射率修正機能により修正することが可
能です。修正により更に正確な温度データを得ることができます。
15
第一部 サーモグラフィーの基本知識
Q22
放射率が異なる物体を測定する場合、撮影アングルに注意する必要がありますか?
A:
表面が粗い素材の場合、目標寸法が合えばサーモグラフィーの撮影アングルに制約はありません。表
面が滑らかな非金属(ガラス、タイル等)や金属素材の場合、その表面から反射される干渉エネルギー
を避けなければならないため、垂直方向に 30 度を超えないアングルが望ましいとされています。普通
の金属表面の場合、撮影アングルは垂直方向に 45 度を超えない範囲まで広げることが可能です。
普通の金属表面
表面が滑らかな非金属と
測定対象物
金属の素材
垂直方向
表面が滑らかな非金属と
金属の素材
普通の金属表面
Q23
背景温度補正はなぜ必要なのですか?
A:
放射率が比較的低い測定対象物は周囲の物体のエネルギーを反射する可能性があります。この計
算外の反射エネルギーが測定対象物自身の赤外線エネルギーに加わることになるので、そのエネル
ギー分をもし消去できなければ、測定後の読み取り値の精度は下がります。そのため現場環境の温
度状況を基に「背景温度補正」等のパラメーターを修正し、それらの干渉を消去する必要があります。
16
第一部 サーモグラフィーの基本知識
Q24
どのような場合に透過率を調整しなければなりませんか?調整方法を教えてください。
A:
物体から放射される赤外線は大気を通過しサーモグラフィーのレンズまで到達しますが、その前に大
気中の気体分子(水蒸気等)と微粒子(埃、雪、氷の結晶等)に吸収や散乱されて減衰します。もし校
正を行わなければ、測定した温度の読み取り値は距離の増大に比例して減少してしまいますので、
「透過率」というパラメーターで調整を行うのです。透過率は通常、100%として設定しますが、以下の
状況ではサーモグラフィーの「透過率」のパラメーター調整に注意が必要となります。
1) サーモグラフィーの前に赤外線ウィンドウがある場合:赤外線ウィンドウの減衰特性を基に相応の
透過率を設定する必要があります。
2) 空気中に肉眼で見える程度の煙や水蒸気がある場合:温度が安定した発熱目標を先ず比較的近
距離から測定し、その後、煙や水蒸気の中で再度測定を行います。2 回の温度値を求めた後、サ
ーモグラフィーの透過率(又は放射率)を修正し、2 回の温度値を一致させます。そのように透過率
(又は放射率)を設定した赤外線サーモグラフィーであれば煙や水蒸気の中でも他の目標物を測
定することが可能です。
Q25
カラーパレットの使用方法を教えてください。各カラーパレットにはどのような特徴がありますか?
A:
カラーパレットとは、サーモグラフィーによる撮影範囲内の最高・最低温度をもとに各温度のエリアとカ
ラーとの対応関係を自動的に調整し、カラー画像をディスプレイに表示するものです。現在、最も多く
使われているカラーパレットのスケールは以下の 3 種類です。
グレー:輪郭線が最も鮮明ですが、ホットスポットが比較的判断し難い
アイアン:輪郭線が比較的鮮明ですが、ホットスポットが比較的判断し難い
レッド - ブルー(レインボー):輪郭線が鮮明ではありませんが、ホットスポットが最も判断し易い
レッド - ブルーのカラーパレットに「ウルトラ・コントラスト(Ultra Contrast)」モードを追加すれば、現
場においてよりスピーディー且つ鮮明に問題箇所を捉えることが可能です。
17
第一部 サーモグラフィーの基本知識
Q26
サーモグラフィーはどの程度遠方まで撮影することができますか?最大測定距離はありますか?
計算方法を教えてください。距離が離れている場合、測定精度に影響がありますか?
A:
サーモグラフィーには最大計測距離という絶対的な定義は存在しません。計測できる最大距離を確定
するためには、先ず測定対象の目標の大きさを把握する必要があります。サーモグラフィーは型式に
応じたパラメーターがあり、それは空間分解能(又は距離係数比)と呼ばれています。これにより、ある
距離上の計測物の最小寸法が決まります。
Fluke では空間分解能 FOV を計算できるソフトウェアをご提供しております。このソフトウェアを使えば
各サーモグラフィーの測定目標の寸法と距離の関係をスピーディーに計算することができます。
http://assets.Fluke.com/OnlineTools/FOV_calc.htm
Q27
Fluke サーモグラフィーにより測定可能な最小目標寸法を教えてください。
A:
現在、Fluke サーモグラフィーの睿鍳シリーズ Ti27 / Ti29 / Ti32 では広角レンズを組み合わせていま
すので、マイクロ撮影(≤ 10 cm)では最小直径 0.07 mm の物体、例えば IC チップのボンディングワイ
ヤ等も測定することができます。
計測器の使用に影響を与える可能性のある環境要因
Q28
サーモグラフィーの計測器の作動温度について何か注意しなければならないことがありますか?
0ºC 以下でも測定や充電ができますか?
A:
一般に、サーモグラフィーは-10~50ºC の範囲で作動しますが、環境温度が 0ºC 以下の場合、スイッ
チを入れてから 30 分以上おいて十分に予熱をしてから測定されることをお勧めします。また屋外での
連続測定時間は 20 分以内にしてください。バッテリーの蓄電能力を下げないために、過度に気温の
低い場所や過度に暑い場所での充電は避けてください。
Q29
サーモグラフィーを使用する環境の湿度に何か制約はありますか?
A:
湿度が 10%~90%、結露が無いことです。
Q30
現場にスモークや水蒸気があった場合、測定に影響を与えますか?
どのように対応すべきでしょうか?
A:
空気中に肉眼で見える煙や水蒸気がある場合、ある程度の影響がありえます。
安定した温度の発熱目標を近距離で測定した後、煙や水蒸気の中で再度測定を行い、2 つの温度値
を得ます。更にそれらの 2 つの温度値が一致するまでサーモグラフィーの透過率(又は放射率)を修
正します。その透過率(又は放射率)の赤外線サーモグラフィーを使えば煙や水蒸気の中でも他の目
標を測定することができます。またはサーモグラフィーにビニール袋をかぶせ、先ほどと同じように透
過率を調整します。
設定と調整を行えば、測定精度に著しい影響は出ません。
18
第一部 サーモグラフィーの基本知識
Q31
Fluke サーモグラフィーは防爆認証を取得していますか?ハザードエリアでの測 定にも使えますか?
A:
現在、Fluke 赤外線サーモグラフィーは防爆認証を取得していませんが、遠距離での撮影に優れてい
ますので、測定距離をとっても測定対象目標の寸法が条件をクリアするのであれば、ハザードエリア
の外から正確に焦点を合わせることにより測定が可能です。
Q32
現場が雨天の場合、正確な測定に影響が生じますか?
A:
雨が降っていても、測定精度への影響はあまりありませんが、測定対象物の表面に水滴が付着して
いる場合、熱量の異常流失が生じる可能性があり、それによって物体の正常な表面温度を正確に測
定できない場合があります。また、降雨環境が計器自体を損壊する可能性もあるため、雨天における
直接測定は推奨しておりません。
Q33
現場が強風の場合、正確な測定に影響が生じますか?
A:
強風の場合、正確な測定に大きな影響が生じます。電力業界での赤外線サーモグラフィー診断基準
では、測定対象目標の風速は 5m/秒を超えないこととされています。もし現場の風速がこの基準を超
えた場合、測定対象物の散熱が速すぎ、低めの温度として計測されてしまいます。
Q34
サーモグラフィーの使用により生ずる電磁波が他の機器の動きに干渉することがありますか?
測定現場にある他の機器から放射される電磁波の影響を受けることがありますか?
A:
Fluke 赤外線サーモグラフィーは授受するだけの設備であり、サーモグラフィー自体は信号を放射して
いませんので、お客様の現場設備や製品に対する干渉はなにもありません。
外部の電磁波の影響:現在、電界アルミの大規模電流の整流キャビネットがサーモグラフィーに干渉
することが分かっています(通常、この種の現場電流は 10 万アンペア以上となります)。
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第一部 サーモグラフィーの基本知識
サーモグラフィー使用時のプチ・テクニック
Q35
狭い空間内で目標を測定する場合、測定対象物からの放射物を鏡で反射させることにより
測定することはできますか?
A:
鏡は赤外線の反射率が高くありませんので、つや出し研磨した金属を使って反射させることをお勧め
します。測定に当たっては反射角度を正確に調整する必要があります。
Q36
サーモグラフィーを使って、作動中の設備の測定を行うことができますか?
測定対象物の作動速度率に制限はありますか?
A:
測定対象物のサーモグラフィーに対する運動速度率によって決まります。もし測定対象物の運動速度
率が 20 km/hr 未満であれば、フレームレートが 9 Hz 以下のサーモグラフィーを使うことができます。
20 km/hr よりも高い場合、フレームレート 60 Hz のサーモグラフィーを購入する必要がありますが、こ
のサーモグラフィーは特別許可申請をしなければなりません。
Q37
夜間の測定は太陽反射の影響を受けないため、効果的な測定ができますか?
A:
Fluke サーモグラフィーと付属の熱解析ソフトにより背景温度補正、放射率の設定等により環境温度
の干渉の多くが消去されます。
一部の特殊な業界では測定効果を上げるために夜間の測定を行っています。例えば建築物のリーク
測定は夜間の方が環境温度は比較的安定しているため、建築物の溜まり水、空洞等によって生じる
微小な温度差を識別し易くなります。
20
第一部 サーモグラフィーの基本知識
Q38
連続モニタリングにより温度トレンドチャートをとることができますか?
A:
Fluke Ti45FT 及び Ti55FT の赤外線サーモグラフィーは測定対象物に対し 1 秒間隔の連続撮影を行
うことが可能です。それを附属の熱解析ソフト InsideIR 4.0 によって問題箇所の温度変化を曲線で表
示させ、トレンド解析を行うことができます。
ビジュアル出力方式により画像の温度変化をリアルタイムで記録することができます。Ti50FT と
Ti55FT は PAL、NTSC 方式によるビジュアル出力に対応しており、標準で 2 m のビジュアル出力ライ
ンを搭載していますので、プロジェクター、ビデオレコーダー、その他 AV 出力端子をもつディスプレイ
設備に直接接続することが可能です。また UV200 ビジュアル転換カードを追加することにより、コンピ
ューターとの接続も可能です。但し、出力画像が流体メディア方式の場合、データの値が付加されて
いませんので、連続撮影機能によりリアルタイムでデータ収集する方法に変更が可能です。また、トリ
ガー値を設定すれば、サーモグラフィーは必要な温度値から連続測定を開始することや連続測定を
停止することが可能です。
Q39
スピーディーに温度分布曲線を得る方法を教えてください。
A:
撮影した熱画像上に任意で引いた一本のラインは SmartView 熱解析ソフトによるバックグランド解析
により各点の位置及び温度の対応関係曲線を表示することができます。
Q40
撮影画像の赤外線熱画像と可視画像が重合しないのはどのような原因が考えられますか?
補償の方法を教えてください。
A:
2 つのケースでこのような問題が起こる可能性があります。
1) 焦点が合っていないケース
2) 撮影距離が近過ぎるケース:各赤外線サーモグラフィーには赤外線と可視光の最小焦点距離が
あります(それぞれ赤外線レンズと可視光レンズに対応)。撮影距離が 2 種類のレンズの最小焦
点距離より大きい場合、赤外線と可視光の画像は完全に融合しますが、近距離での撮影は画像
がずれる可能性があります。
赤外線熱画像と可視画像が重ならない場合、SmartView ソフトの画像編集により可視画像の位置を
移動させ、赤外線画像とのずれを修正することができます。
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第一部 サーモグラフィーの基本知識
サーモグラフィーの保守メンテナンス
Q41
赤外線サーモグラフィーは定期的な校正が必要ですか?もし必要な場合、主にどのパラメーターを
基に校正したらよいですか?
A:
正常に使用されている場合、2 年に 1 度、温度精度を検査するようお勧めします。お客様の必要性に
応じて、重複率、精度等を主に校正されると共に、使われる方の現場で必要な他の項目を校正される
ようお勧めします。お客様ご自身で黒体炉をおもちの場合は、ご自身で校正することも可能です。もし
そのような設備が無い場合、Fluke 北京メンテナンスステーションまでご返送していただいても結構
です。
お客様の使用習慣、使用環境又は測定基準により校正サイクルがより短くなることがあります。
Q42
赤外線サーモグラフィーのレンズ・クリーニングとメンテナンスを行う場合の注意事項を
教えてください。
A:
サーモグラフィーの故障を防ぐため、次のような手順にてクリーニングとメンテナンスを行われることを
推奨します。
レンズとディスプレイのクリーニング:
1) 先ずエアスプレイを使って大きな粒のゴミや埃を吹き飛ばし、その後、布で拭きます。
2) レンズ専用の非腐蝕型溶液又は石鹸をぬるま湯に溶いたもの(溶剤は絶対に使用しないでくださ
い)で柔らかい綿布を軽く湿して(布を液体に浸さないでください)、レンズを優しく拭きます。
3) コンピューターモニター用の清潔なクリーニングクロスでディスプレイを優しく拭きます。
本体のクリーニングと保管:
 軽く湿した清潔な柔らかい布でサーモグラフィーの本体を優しく拭いてください。必要な場合は、石
鹸をぬるま湯に溶いた水で布を軽く湿らせてください。クリーニング完了後はできるだけすみやか
にレンズカバーを取付け、携帯用ボックスに入れて保管して下さい。
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