微小面積表面電位測定技術

合同分科会 (2002.11)より
微小面積表面電位測定技術
山口晋一(トレック・ジャパン)
概要:
静電気の特徴は、その電位(電圧)は非常に高いのですが、電荷量が僅かな為通常の電圧測定器(デジ
タルマルチメータ)のように対象物に測定電極を接触して測定する事が困難と成っています。その為静電
気電圧(表面電位)の測定は非接触で行なう事が必要となります。非接触で表面電位の測定御行なう事が
出来る測定器は色々有り、一般的に静電気測定器と呼ばれております。この、静電気測定器には大きく分
けて2つの測定器があります。電界計というカテゴリーの測定器と表面電位計というカテゴリーの測定器
に分かれております。
電界計の測定原理:
図1の様に被測定物に向けられた測定電
R
被測定物
測定電極
極は、被測定物が持っている静電気(V 0)
C
−
の影響を受け逆の極性の誘導電位が生じま
+
す。ここで測定電極における電流と電圧の変
V
化を見ると、電圧は上昇して行きながら有る
C
V
電圧で安定します。電流は、始め電流が流れ
ますが暫くすると電流は流れなくなります。
変調器
発振器
この状態では、静電気の測定はできませんか
ら、測定電極を音叉の上に置き音叉の根元に
※変調方法:音叉による測定電極の振動
〃 測定口のシャッターリング
ピエゾチップ貼り付け、ピエゾチップに交流
q
※測定物理量:E =
(V/m)
測定値は測定距離に依存する。
電圧を印加する事で音叉を振動させます。測
4πε0 n 2
定電極が振動する事によって、電極と被測定
図1:電界計の測定原理
物間の距離が変化し、同時に測定電極と被測
定物の間に有る静電容量も変化することで、
10.00
測定電極に変位電圧・変位電流が誘起されま
8.00
す。(注1)
6.00
電界計は、この変位電圧(V 1)を検出し
4.00
そのピーク値を測定する事で被測定物の帯電
2.00
電位の絶対値を表示します。また同時に、電
0.00
極振動波形と信号波形を同期検波し被測定物
15
20
25
30
35
40
45
50
-2.00
が帯電している極性を判定します。この場
-4.00
合、測定されているピーク電圧は電界計と被
電界計KV
測定物との距離に依存します。測定器メー
表面電位計
-6.00
KV
電界計ーKV
カーは事前にこの距離で測定器の校正を行っ
-8.00
表面電位
ております。従いまして、測定に際しては測
計ーKV
-10.00
測 定距離mm
定器メーカーが推奨されている測定距離で測
定しなければなりません。推奨距離よりも近
図2:電界計/表面電位計 測定距離と測定電位の関係
づけて測定すると、実際の表面電位より高い
電圧を表示します。推奨距離よりも遠ざければ低い表面電位を表示してしまいます。
図2は、電界計と表面電位計の特性を表したものです。図3は、電界計が一般的に推奨されている距離
約25mmの距離で測定した時、電界計が測定している面積を表したものです。この時電界計が測定して
いる面積は約170mmφと成ります。
1
表示KV
0
注1:測定器のメーカーにもよりますが、測定電極の前にシャッターのような役割を行なう物を置き、測
1
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定電極に集まる電気力線の数を変化さ
せる事で同じような効果を生じさせ測
定している計測器もあります。これは、
回転セクター型或いはフィールドミル
型と呼ばれています。
グランドケーブル
電界計
表面電位計の測定原理:
D=2.5cm
デバイス
図4の様に被測定物に向けられた測
φ170mm
*測定値は距離に依存する。
定電極は、被測定物が持っている静電
気(V 0)の影響を受け逆の極性の誘導
d:25mm時の測定面積φ170mm
電位が生じます。ここで測定電極にお
図3:電界計の測定例
ける電流と電圧の変化を見ると、電圧
は上昇して行きながら有る電圧で安定し
発信器
ます。電流は、始め電流が流れますが暫
くすると電流は流れなくなります。この
測定電極
状態では、静電気の測定はできませんか
同期検波器
ら、測定電極を音叉の上に置き音叉の根
プローブユニット
元にピエゾチップ貼り付け、ピエゾチッ
増幅器
増幅器
高圧発生器
プに交流電圧を印加する事で音叉を振動
積分器
させます。測定電極が振動する事によっ
V :フィードバックループ
C
d
CAL
非測定物
て、電極と被測定物間の距離が変化し、
同時に測定電極と被測定物の間に有る静
インピーダンス
整合
電容量も変化することで、測定電極に変
V
V
表面電位計ユニット
位電圧・変位電流が誘起されます。(注
2)
図4:表面電位計回路
表面電位計は、この変位電流(I 1)を
プローブ内部で増幅し、測定器本体内部
ハンディー型
で 2 段増幅します。増幅された信号を同
表面電位計
期検波を行い、測定対象物の帯電極性を
確認します。確認された帯電極性と同じ
*測定値は測定距離に依存しない。
極性の電圧を測定プローブ全体に印加
(VFB フィードバック電圧)します。ほぼ
φ25mm
グランドケーブル
d:5mm
瞬時に被測定物とプローブとが同電位と
φ50mm
d:10mm
なります。プローブと被測定物が同電位
デバイス
φ80mm
d:15mm
に成りますと、今まで存在していました
φ120mm
d:20mm
測定電極と被測定物間の静電容量が打ち
φ170mm
d:25mm
消され、測定電極から変位電圧・変位電
流の信号が無くなります。信号が検出さ
d:25mm時の測定面積φ170mm
れなくなった事を受けて、プローブの電
図5:ハンディー型表面電位計の測定例
圧上昇を停止しその時の電圧を維持しま
す。このとき被測定物と測定プローブが同電位となり、測定器内部で発生している電圧が被測定物と同じ
電圧になっています。そこで、測定器内部で発生させている電圧(VM)を表示する事で被測定物の表面
電位測定が可能となります。
このような測定方式をフィードバック方式又はゼロ位法と呼びます。この方式を採用する事で、表面電
位計は測定距離に依存しにくい表面電位の測定が可能となり、センサープローブを被測定物に近づけられ
る為微小な面積の測定が可能となります。但し測定距離が変化した場合、測定面積も変化しますのでこの
点に付いては注意が必要です。(図5、図6参照)
FB
0
M
2
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注2.表面電位計の場合、測定電極の前に
シャッターのような物を取り付けているセン
サーのタイプと測定電極を横方向に振動させ
るタイプの物と2種類あります。
表面電位計
グランドケーブル
プローブ
微小面積・微小電位測定技術:
*測定値は測定距離に依存しない。
デバイス
φ3mm
d:1mm
上記の表面電位計の技術を使用し、微小
φ25mm
d:5mm
φ70mm
面積の測定が出来る測定器を開発いたしまし
d:10mm
た。それが ModelPR1182 微笑面積・微小電
位測定用表面電位計です。
(図7、図8参照)
d:10mm時の測定面積φ70mm
プローブ内部の測定電極を微小化し、ま
図6:表面電位計の測定例
たプローブ内部のオペアンプの改良、ノイズ
の低減等の対策を施した事で微小面積の表面
電位測定が可能となりました。測定距離50μの時、約200μφの面積の表面電位測定が可能です。測
定電圧は、±100 V と成ります。参考までに実験回路図(図9)、測定対象電極の詳細を記載しておき
ます。(図10)
図7:Model PR1182 表面電位計
仕
様
測定電圧:0〜+/− 100 V
出力範囲:測定電圧の1/100
測定面積: 200μmφ(但しプローブと測定表面との
距離が50μmの時)
応答速度: 4 m sec(100 V ステップ入力時)
測定感度:10m V
測定精度:0.1% FS
プローブ寸法:9 . 7mmφ X 50mm L
Model PR1182 表面電位計
特長
測定面積:200μmφ
(但しプローブと測定表面との距離が50μmの時)
測定分解能:10m V
応答速度:4 m sec (100 V ステップ入力時)
プローブケーブル:1 . 5 m
図8:微小面積・微小電位計測
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図9:測定面積確認実験
図10:測定面積確認実験
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