アメフト普及に iPhone を活用

ITpro 掲載ユーザー事例
関東学生アメリカンフットボール連盟
アメフト普及に iPhone を活用
学生との連絡からファンサービス、指導者育成まで想定
写真 1
関東学生アメリカンフットボール連盟の倉本和夫常務理
事・広報渉外部長
取り組みの一つがアメフトファンへの情報発信
だ。2009 年 9 月からは、
「K-STREAM」とい
うインターネットラジオによる試合の実況、解説
を始めた。インターネットラジオ自体はパソコン
でも聞けるが、iPhone を使うことで別のメリット
が生まれる。それは、試合会場で聞けること。ア
メフトを会場で観戦している観客の中にも、ルー
ルを完全に理解していない人は少なくない。そん
な観客にとって、試合の実況、解説は観戦の助け
になる。「歌舞伎などのイヤホンガイドのようなも
の」と倉本常務理事は説明する。
関東学生アメリカンフットボール連盟は、98 大学、約
4500 人の選手が加盟する団体だ。大学生からなる学生
執行部と協力し、大学アメフトの大会運営、普及活動、
選手たちの支援などを実施している。その活動に一役買っ
ているのが iPhone だ。既に、学生執行部に所属する学
生たちとの連絡やファンサービスに iPhone を利用。指導
者育成やチームの戦力分析などにも生かしていく方針だ。
同連盟が iPhone を導入したのは 2009 年 9 月。連盟
理事と学生執行部のメンバーに約 50 台を貸与した。主な
用途は理事と学生の連絡だ。連盟が主催する大学アメフト
の大会では、試合の運営、試合結果の報告など、あらゆ
る場面で学生執行部の学生たちが活躍する。自然、理事
と学生の連絡も密になる。ソフトバンクモバイルを利用す
れば、同社の携帯電話間の通話が定額になることから、
理事と学生双方に iPhone を持たせ、通話コストを抑えよ
うと考えた。
ただ、これだけなら一般の携帯電話でも十分、iPhone
である必要はない。あえてiPhone にしたのは
「これを機に、
アメフト普及のためのさまざまな活動に iPhone を活用し
ていきたいと思ったから。iPhone の映像や音声、Web
ブラウジングといった機能には可能性を感じた」と、同連
盟の倉本和夫常務理事は話す(写真 1)
。
以前にも、場内専用のミニ FM 局「K-WAVE」
で実況、解説を放送していたが、座席によっては
電波環境が悪く聞きづらいといった問題を抱えて
いた。加えて、観客にわざわざ FM ラジオを持参してもらう手
間も掛かる。日常的に持ち歩いている iPhone でインターネッ
トラジオを聞けるようにしたことで、これらの問題を解消した。
ジェイネット TV と共に始めた YouTube でのダイジェスト映像
の配信も、情報発信の一環だ(写真 2)
。「一人でも多くの人に
アメフトを目にする機会を持ってもらいたい」(倉本常務理事)。
テレビで放映される機会が少ないアメフトにとって、インター
ネットの動画配信は武器になる。しかも iPhone で見られると
なれば、忙しくて試合会場に足を運べない人も気軽にアクセス
できるだろう(写真 3)
。
e ラーニングで指導者育成を目指す
アメフトにとって、普及と並ぶ課題が指導者の育成である。
アメフトは、ボディーコンタクトが激しい競技のため、安全性
が常に問題視される。事故を防ぐには適切な監督、指導が不
可欠だ。また、ほかの競技と比べてルール変更も頻繁なため、
最新情報を常にチェックしていなければならない。指導者の果
たす役割は大きい。
だが、現実は指導者が常に不足している状態だ。大学チーム
の監督、コーチのほとんどは OB で、忙しい仕事の合間に学生
たちを指導している。監督、コーチ向けに指導者育成のための
講習会などを開いても、出席するのは困難だ。
この状況を改善するため、連盟が検討しているのが e ラーニングの導入である。選手へ
の指導方法や安全確保、ルールに関する講習を自宅のパソコンや iPhone などで受講でき
れば、仕事と指導の掛け持ちで忙しい監督やコーチにも参加してもらえる。ルール変更が
あった場合、その解説を短い動画にまとめて配信し、iPhone などで見られるようにしてお
けば、練習中や試合前に確認するのにも役立つと考えている。
写真 2
試合のダイジェスト映 像を ジ ェ イ ネ ッ
ト TV がYouTube で配信している
さらには、「各チームが自由に使える分析ツールなども提供していきたい」と倉本常務理
事は意気込む。アメフトでは、相手チームを分析する「スカウティング」と呼ばれる作業
が勝利の鍵を握る。各チームのスカウティング担当者は自チーム、対戦チームの試合中の
プレーをビデオカメラで録画し、監督、コーチ、選手と共にそれを徹底的に分析する。「こ
のスカウティングに使う映像を、パソコンや iPhone で気軽に見られるようにすれば、監督、
コーチにとって便利なはず」(倉本常務理事)と言うのだ。
既にいくつかの企業がシステム開発に着手している。その代表は動画配信システムの構
築、運用などを手掛けるピーヴィーが提供するサービス「VS-1」
だ。試合を録画した動画ファ
イルをアップロードして、チーム内で共有できる。試合の記録(スタッツ)を併せて登録
すれば、映像と連動させて視聴することも可能だ。
写真 3
iPhone でもダイジェスト映像を見ら
れる
「日本ではアメフトはまだまだマイナースポーツ。だからこそ、連盟による情報発信が重要」
と倉本常務理事は話す。観客には、アメフトに興味を持ってもらえるよう、映像や音楽コ
ンテンツなどを提供する。監督やコーチ、選手には、安全かつ充実した競技生活を送って
もらえるよう、チーム運営や指導の支援をする。いずれの場合も、情報にアクセスするた
めのへのハードルは低いに越したことはない。そのためのツールとして、iPhone に寄せる
期待は大きい。
(平野 亜矢=日経パソコン)
2010/8/17
出典 :「ITpro」(日経 BP 社)
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