第 第11 11 組織犯罪対策の強化 組織犯罪対策の強化 (1) 暴力団犯罪に対する警察の活動 最近の暴力団は「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴力団対策法」 という。)」による規制と、社会全体の暴力団排除気運の高まりや暴力団犯罪の取締りの推進 などによって社会から孤立化しつつありますが、他方で社会経済情勢の変化に対応して活動 形態の多様化、犯行手口の巧妙化、組織実態の不透明化を図っています。 また、暴力団は拳銃発砲事犯や殺人、強盗等の凶悪犯罪を依然敢行しているほか、資金獲 得活動においては恐喝、覚醒剤の密売、賭博等の伝統的な犯罪に加え、社会構造や社会経済 情勢の変化に対応し、暴力団共生者(暴力団関係企業を含む。)等を利用するなどして、雇用 保険金詐欺事犯、生活保護費等の不正受給事犯、組織的な振り込め詐欺等の特殊詐欺事犯、 高金利によるヤミ金融事犯、なまこ等の密漁事犯、更には海外の犯罪組織と結託した犯罪を 引き起こし、一般市民の日常生活や経済取引に介入するなど、道内の治安の大きな脅威とな っています。 ア 暴力団の人員 道内の暴力団員(暴力団構成員及び暴力団準構成員等〔注1〕の合計)は平成27年末現在、 約2,520人を把握しており、前年より約70人減少しています。このうち、広域暴力団である 山口組、稲川会、住吉会の3団体の合計は約2,420人と暴力団員の約96%を占め、中でも、 山口組は約1,700人と暴力団員の約67%を占めています。 また山口組は、平成27年8月に分裂し、新団体「神戸山口組」を発足し、両団体の間で 対立抗争事件が起きている状態にあります。 道内の神戸山口組は、平成27年末現在、約130人を把握しています。 表示文字列 道内の暴力団人員(過去5年) 23年 2,230 24年 準構成員等 2,050 25年 810 1,770 26年 890 1,340 27年 1,250 1,220 0 500 構成員 600 1,300 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 件 ※ 道内の暴力団員は、全国の暴力団員(約4万6,900人〔構成員約2万100人、準構成員等 約2万6,800人〕 )の5.4%を占めています。 〔注1〕 暴力団準構成員∼暴力団の一定の統制下にあって、暴力団の威力を背景に暴力的不法行為を 行うおそれがある者、又は、暴力団に資金や武器等の供給を行うなど暴力団の維持若しくは運 営に協力する者のうち暴力団員以外の者をいう。 - 55 - イ 道内の指定暴力団 指定暴力団とは、暴力団のうち暴力団対策法に基づき各都道府県公安委員会が指定した 暴力団をいい、同法に基づき平成27年末現在、全国で山口組や稲川会等21団体が指定され、 同法の規制を受けています。道内には他都府県で指定された6団体(山口組、稲川会、住 吉会、会津小鉄会、極東会、松葉会)の傘下組織があります。 (2) 暴力団犯罪の検挙状況 ア 資金源犯罪に対する取締り 暴力団は、資金を獲得するために恐喝、賭博、みかじめ料、覚醒剤の密売等を行ってお り、近年発生しているなまこ等の水産資源の密漁事犯、暴力団共生者による社会的弱者を 狙った振り込め詐欺などの特殊詐欺事件を敢行して資金を獲得しています。 こうした犯罪に対し警察は毅然とした対決姿勢で臨み、平成27年中は947人の暴力団員を 検挙していますが、暴力団の生命線とも言える資金源を剥奪し、暴力団組織の壊滅を図る ためにも資金源犯罪を中心とした取締りの強化を図っていきます。 《事例1》札幌市内金融業男性被害の強盗殺人、死体遺棄、死体損壊事件 平成27年6月、特異家出人を端緒として、1年以上にわたる地道な捜査により、岡山県 警察との合同捜査本部は、債務返済を免れるため被害者を殺害、その後、遺体を遺棄した として被害者の知人の男2名を検挙しました。 (南署、捜査第四課) 《事例2》稲川会小林組幹部による銃刀法違反、建造物損壊事件 平成27年10月、共同住宅の壁面に向けて拳銃を発射したとして、暴力団幹部ら2名を検 挙し、犯行に使用された拳銃を苫小牧港内の海底から発見しました。 (苫小牧署、捜査第四課) イ 暴力団による銃器犯罪の取締り 平成27年中の道内における暴力団等からの拳銃押収は1丁であり、同拳銃を使用した共 同住宅に対する発砲事件の発生が1件ありました。 全国における暴力団からの拳銃押収は63丁で、暴力団等による拳銃発砲事件は8件発生 し、死者1名、傷者3名となっています。 警察では税関、海上保安庁等とも共同し、組織の総力を挙げて違法銃器の摘発に向けた 取締りを強化しています。 (3) 暴力団対策法の効果的な運用 ア 道内における中止命令等発出状況 暴力団対策法の施行後(平成4年から平成27年末現在)、道内において暴力団対策法に基 づいて2,090件(中止命令1,987件、再発防止命令103件)の命令を発出しています。 このうち、山口組に対するものが1,522件(72.8%)、稲川会に対するものが305件 (14.5%)、住吉会に対するものが65件(3.1%)で、これら3団体で1,892件(全体の 90.5%)を占めています。 - 56 - 平成27年中は、暴力団員が現金を借りた人から法律で定められる制限額を超える高利債 権の取立てをした事案や、因縁をつけて金品を要求した行為など49件の中止命令(再発防 止命令を含む。)を発出し、暴力団員からの不当な要求を中止させたり、嫌がらせ行為を防 止するなど大きな成果を収めています。 道内における中止命令等発出件数(過去5年) 23年 75 24年 44 25年 44 26年 42 27年 49 0 20 イ 40 60 80 100 主な中止命令等発出事例 ○ 暴力団幹部が17歳の少年に対して「俺の事は兄貴と呼べ。」「組長には絶対に逆らうな よ。」などと申し向け、事務所当番をさせるなどして加入を強要した事案に対して中止命 令を発出し、暴力団加入行為を中止させました。 ○ 暴力団幹部に離脱の意思を伝えたところ「分かりましたという訳にはいかないからな。」 などと威迫して、組織からの脱退を妨害した事案に対して中止命令を発出し、暴力団か らの離脱を妨害する行為を中止させました。 ○ 暴力団幹部が中古車販売業者に対して「ヤクザと揉めたら俺が出て行ってやる。」「面 倒みてやる。毎月1万持って来い。」などと告げ、用心棒料を要求した事案に対して中止 命令を発出し、用心棒料等の要求行為を中止させました。 【参考】 暴力団対策法で禁止している不当な要求行為等の主な内容 【資金を得るための行為】 1 ○ 人に対して、企業や団体の不正な経営内容や異性問題のスキャンダル等、人に知られてい ない事実の宣伝又は公表にかこつけて、口止め料として金品等を要求する行為 2 ○ 人に対して、不当に寄附金、賛助金、その他名目のいかんを問わず、みだりに金品等の贈 与を要求する行為 3 ○ 建設工事等の請負業務の発(受)注者に対して、その発(受)注者が拒絶しているにもか かわらず下請参入、資材の納入等の受入れを要求する行為 4 ○ 縄張内で飲食店や商店、会社等を営む者に対して、あいさつ料・みかじめ料等名目のいか んを問わず金品を要求する行為 5 ○ 縄張内で飲食店や商店、会社等を営む者に対して、日常業務用の物品購入、興業の入場券、 パーティー券等の購入、用心棒料等を要求する行為 - 57 - 6 ○ 金銭を目的とする消費貸借上の債務で、利息制限法に定める利息の制限額を超える利息の 支払いを伴うものについて、債務者に対し履行を要求する行為 7 ○ 人から依頼を受け、報酬を得て又は報酬を得る約束をして、債務者に対し、乱暴な言動 を交えたり、迷惑を覚えさせるような方法で訪問したり、電話をかけるなどして債権を不当 に取り立てる行為 8 ○ 人に対して、金銭を目的とする消費貸借上の債務や家賃、購入した物品の代金等の全部又 は一部の免除や履行の猶予をみだりに要求する行為 9 ○ 金銭貸付業者以外の者に対して、みだりに金銭の貸付け、手形割引等を要求し、又は金銭貸 付業者に対して、その者が拒絶しているにもかかわらず、貸付け、手形割引等を要求する行為 10 ○ 金融商品取引業者その他の金融商品取引業務を営む者に対して、その者が拒絶しているに もかかわらず、金融商品取引を行うこと、又は金融商品取引業者に対して著しく有利な条件 により有価証券の信用取引を行うことを要求する行為 11 ○ 株式会社に対して、みだりに自己株式の買取り又はそのあっせんを要求したり、株式会社 の取締役、執行役、監査役、株主に対し、その者が拒絶しているにもかかわらず、買取り、 あっせんを要求する行為 12 ○ 銀行等に対して、その者が拒絶しているにもかかわらず、預金・貯金の受入れを要求する行為 13 ○ 正当に使用する権利に基づいて、建物やその敷地を使用している者に対し、その意思に反 して明渡しを要求する行為 14 ○ 土地、建物を占拠したり、自己の氏名を表示したり(支配の誇示)して、所有権者、担保 権者等が拒絶しているにもかかわらず、支配の誇示をやめることの見返りとして明渡し料等 を要求する行為 15 ○ 宅建業者に対して、その者が拒絶しているにもかかわらず、宅地等の売買・交換をするこ と、又は売買・交換・貸借の代理・媒介をすることを要求する行為 16 ○ 宅建業者以外の者に対して、宅地等の売買・交換をすること、又は人に対して宅地等の貸 借をすることをみだりに要求する行為 17 ○ 建設業者に対して、その者が拒絶しているにもかかわらず、建設工事を行うことを要求する行為 18 ○ 暴力団の示威行事の用に供されるおそれが大きい集会施設等の管理者に対して、その者が 拒絶しているにもかかわらず、その施設を利用させることを要求する行為 19 ○ 人から依頼を受け、報酬を得て、又は報酬を得る約束をして交通事故等の示談交渉を行い、 損害賠償として金品を要求する行為 20 ○ 人に対して、買った商品、受けたサービスの欠陥等を口実に損害賠償等の名目で、あるい は有価証券の売買で損害を被ったと因縁を付けて損失補てんを要求する行為 21 ○ 行政庁に対して、許認可等の要件に該当しないのに許認可等をするように要求したり、不 利益処分の要件に該当するのに不利益処分をしないよう要求する行為 22 ○ 行政庁に対して、許認可等の要件に該当するのに許認可等をしないように要求したり、不 利益処分の要件に該当しないのに不利益処分をするよう要求する行為 23 ○ 国、地方公共団体等に対して、国・地方公共団体等が行う売買、貸借、請負等の契約の入札 に関して参加資格がない者や指名基準に適合しない者を入札に参加させるよう要求する行為 24 ○ 国、地方公共団体等に対して、国、地方公共団体等が行う売買、貸借、請負等の契約の入札 に関して参加資格がある者や指名基準に適合する者を入札に参加させないよう要求する行為 - 58 - 25 ○ 人に対して、国、地方公共団体等が行う売買、貸借、請負等の契約の入札に参加しないこ と又は一定の価格その他条件で入札の申込みをすることをみだりに要求する行為 26 ○ 国、地方公共団体等に対して、その者が拒絶しているにもかかわらず、自己や自己の関係 者を国・地方公共団体等が行う売買、貸借、請負等の契約の相手方とすること、又は特定の 者を契約の相手方としないことをみだりに要求する行為 27 ○ 国、地方公共団体等に対して、国・地方公共団体等が行う売買、貸借、請負等の契約の相 手方に、下請等の発注や資材・物品を納入させるよう指導・助言することなどをみだりに要 求する行為 【その他】 1 ○ 一般人が暴力団員に借金の取立てや交通事故の示談を依頼する行為 2 ○ 暴力団への加入を強要したり、暴力団からの離脱を妨害する行為 3 ○ 暴力団の統制に反する行為をしたことに対して、指詰めを強要したり、指詰めをする行為 4 ○ 少年に対して、入れ墨を強要したり、入れ墨を入れる行為 5 ○ 借金の返済場所や交渉の場所として組事務所使用を強要したり、暴力団事務所の表示を外 周、又は外部から見通すことができる状態にして、付近の住民や通行人に不安を与えるよう な行為 などを禁止しております。このような被害を受けている、または、困っている方がいる場合は、 迷わず最寄りの警察本部か警察署に相談してください。 (4) 北海道暴力団の排除の推進に関する条例 ア 施行の経緯 この条例は社会から暴力団を排除し、安全で平穏な道民生活を実現し、社会経済活動の健全 な発展及び青少年の健全な育成に寄与するために、平成23年4月1日から施行されました。 イ 条例の特徴 条例は「暴力団を恐れないこと」「暴力団に対し資金を提供しないこと」「暴力団を利用 しないこと」を基本理念とした上で ・ 道の責務∼暴力団排除のための施策の総合的な実施 ・ 道民の責務∼自主的な暴力団の排除の推進、道が実施する暴力団排除施策への協力 ・ 事業者等の責務∼暴力団排除への積極的な取組、道が実施する暴力団排除施策への協力 を定め、道、道民、事業者等が一体となって相互に連携し社会全体で暴力団の排除を推進 しようとするものです。 ウ 条例の適用状況 平成27年中、3件の勧告を実施し公共工事から暴力団事業者を排除しました。 ○ 勧告発出の事例(平成27年中) ・ 水産加工業者が暴力団員から密漁した鮭を譲り受けた暴力団利用行為等の禁止事案 ・ 高圧ガス製造業者が暴力団員が密漁に使用する空気ボンベを無償で譲渡した利益供与 事案 ・ 飲食店経営者が、暴力団員を用心棒とした暴力団利用行為事案 - 59 - エ 北海道暴力団排除推進協議会 平成23年9月2日、北海道における暴力団の排除活動を総合的に取組むための推進母体 として、北海道知事を会長、北海道警察本部長及び北海道暴力追放センター理事長を副会 長とする「北海道暴力団排除推進協議会」が設立され、毎年、推進協議会を開催していま す。昨年は10月に北海道暴力団推進協議会が開催され、構成団体の意思統一が図られてお り、北海道から暴力団を排除する気運が一層高まりをみせています。 =参考= 北海道暴力団の排除の推進に関する条例(概要) ① 道が講ずべき措置 ・ 道の公共事業から暴力団関係者を排除します。 ・ 道の公の施設が暴力団の活動に利用されないために、必要な措置を講じ ます。 ② 事業者が講ずべき措置 事業者が暴力団を利用する行為や利益供与することなどが禁止されます。 ※ 悪質な違反者は勧告、公表の対象となる場合があります。 ③ 不動産の譲渡等における措置 暴力団事務所に使用されることを知りながら不動産の譲渡などをすること が禁止されます。 ※ 悪質な違反者は勧告、公表の対象となる場合があります。 ④ 青少年の健全育成を図るための措置 学校等の周囲200mの区域内での暴力団事務所の開設、運営が禁止されます。 ※ 違反した場合は処罰されます。 北海道警察ホームページ 平成23年4月1日から「暴力団総合対策コーナー」を新設し、暴力団の情勢、 暴力団排除活動の紹介、暴力団員の検挙情報等の閲覧ができます。 (5) ア 暴力団等の排除活動の推進 暴力団等の排除活動 暴力団等の排除活動とは、暴力団等(暴力団員、政治活動標ぼうゴロ、社会運動標ぼう ゴロ、新聞・雑誌ゴロ、総会屋等の反社会的勢力。以下、「暴力団等」という。)を利用す ることや資金を提供することをなくして暴力団の活動の基盤となる資金源を遮断し、市民 社会から暴力団等を排除するための活動です。 市民生活のあらゆる場から暴力団等を排除するために、北海道警察は公益財団法人北海 道暴力追放センター(以下「暴力追放センター」という。)、弁護士会の民事介入暴力対策 委員会(以下「民暴弁護士」という。)などの関係機関や各自治体、地域・職域暴力追放組 織等の団体と連携して「暴力団等を利用しない、暴力団等を恐れない、暴力団等に金を出 さない」を合言葉に、官民一体となって暴力団等を排除する活動を推進しています。 - 60 - 【主な暴力団等排除活動】 ○ 暴力排除組織の結成 現在、道内には、市町村(地域)単位の暴力追放運動推進協議会と、建設業や金融業 といった職域単位の暴力追放運動推進協議会が結成されており、暴力団等の排除活動に 大きく貢献しています。 ○ 暴力団等に対処するための講演等の実施 北海道警察は平成27年中、暴力団等の犯罪や不当な要求被害に遭うことが多い建設業、 保険業、飲食業、金融業、行政機関等を対象にした被害防止対策、暴力団排除要領等に ついて全道各地で306回の講演や講習会を行い、暴力団等からの不当な要求行為等の防止 に大きな成果を収めています。 イ 民事訴訟支援 暴力追放センターを中心に警察、民暴弁護士の三者が連携して、被害等回復のための民 事訴訟支援活動を行っています。 暴力団等から ・ 被害に遭ったときの損害賠償請求 ・ 貸金の返済請求 ・ 家賃等の支払い請求、建物明渡し などで困っている方は暴力追放センター、民暴弁護士、最寄りの警察署等に迷わず相談し てください。 ウ 行政からの暴力排除 行政対象暴力とは、暴力団等が不正な利益を得る目的で地方公共団体等の行政機関又は その職員を対象として行う違法又は不当な行為をいい、北海道警察は、あらゆる手段を講 じて行政からの暴力を排除しており、生活保護適用対象者からの排除、道有財産一般競争 入札等からの排除、公営住宅からの排除など各行政機関と連携しながら各種対策を進めて います。 エ 暴力団排除のための部外への情報提供 暴力団排除条例において事業者は、取引の相手方が暴力団員ではないことを確認するた めの必要な措置を講ずるよう努めるものとされており、各種業界では定款、約款などへの 暴力団排除条項の導入が進んでいます。各種取引から暴力団を排除するなどして社会から の暴力団排除を一層推進するため、北海道警察では、暴力団員等該当性情報の部外への提 供を積極的に推進しています。 ※ 警察が行う部外への情報提供は、達成される公益の程度により、情報提供の要件や内 容が異なります。また、情報提供に際して相談の相手方の身分確認資料及び取引関係を 裏付ける資料が必要となり、提供を受けた情報を他の目的に使用しないことを約束して いただく誓約書が必要となる場合があります。 - 61 - オ 保護対策の強化 全ての都道府県において暴力団排除に関する条例が制定されるなど、社会全体による暴 力団排除の気運が高まる一方、暴力団との関係の遮断を図る企業等に対する危害が相次い でいることから、これら関係者を保護するための対策を強化しています。 保護対象者とは ・ 暴力団等による犯罪の被害者その他の関係者 ・ 暴力団排除活動関係者 ・ 暴力団等との取引、交際、その他の関係の遮断を図る企業等の関係者 ・ 暴力団から離脱した者又はその意思を有する者 ・ その他暴力団等から危害を受けるおそれのある者で、保護を必要とするもの をいい、暴力団等から危害を受けるおそれがあると認めたときは、危害を受けるおそれの 程度に応じてその危害を防止するために必要な措置を講じています。 カ 身辺警戒員の指定 北海道警察では、平成24年4月1日から、保護対象者に対する暴力団等からの危害を 防止し、保護対策の万全を期すことを目的として保護対象者の直近又は周辺における警戒 活動に従事し、その身辺の安全を確保することを任務とする身辺警戒員の運用を開始し、 現在、全道で約50名の指定員がいます。 (1) 薬物乱用の恐怖 覚醒剤などの薬物が、私たちの日常生活に深く浸透し、中学生を含む少年にまでまん延す るなど深刻な状況にあります。 特に覚醒剤は中枢神経を興奮させる作用があり、使用すると一時的には、爽快感や眠気、 疲労が取れたような感じになりますが、効果が切れると激しい脱力感、疲労感、けん怠感に 襲われ、このため続けて使用したいという欲求が起こり、使用する回数や量がどんどん増え ていき、自分の意思では止めることができない中毒症状になっていくのです。 乱用が進むと幻覚や妄想が現れ、悲惨な事件・事故を引き起こす原因にもなり、また乱用 をやめても何かの刺激をきっかけに突然精神障害が起こるフラッシュバック(再燃現象)を引 き起こすことがあります。 (2) 薬物乱用の深刻化 ア 覚醒剤事犯 平成27年中、道内の覚醒剤事犯検挙人員は467人で、前年に比べ31人(6.2%)減少し、 覚醒剤の押収量は約482g(末端価格約3千万円相当)で、前年に比べ約26㎏減少しました。 検挙した467人のうち再犯者は345人で、全体の約74%を占めています。 - 62 - イ 大麻事犯 平成27年中、道内の大麻事犯検挙人員は140人で、前年に比べ36人(20.5%)減少しており、 そのうち初犯者が101人で、全体の約72%を占めています。 乾燥大麻の押収量は約28.1㎏で、前年に比べ約2.2㎏増加し、大麻草の押収量は約61.7㎏ で、前年に比べ約51.7㎏減少しました。 ウ 麻薬及び向精神薬 平成27年中の道内の麻薬及び向精神薬取締法違反事犯の検挙人員は14人で、前年に比べ 7人増加しました。 エ 指定薬物事犯 平成27年中の道内の指定薬物事犯の検挙人員は27人で、前年に比べ3人減少しました。 また、平成27年4月に関税法改正に伴い、指定薬物(通称名RUSH)の密輸入事件を 数多く認知することとなり、同輸入事実において検挙件数が増加しました。 (3) 薬物乱用のない社会を 薬物乱用は、人の心身をむしばむと同時に大切な 家族を苦しめるほか、薬物の密売は暴力団組織の 主要な資金源となっています。 昨今社会問題となっている危険ドラッグを含めて 違法薬物根絶のためには、一人一人が「薬物乱用は 許さない」という強い意識を持ち、薬物乱用を拒絶 する規範意識が社会全体に保たれていることが必要 です。 このため、警察では薬物の密輸・密売組織の取締 りを強化するとともに、関係機関・団体と緊密な連 携を図りながら、薬物の危険性、有害性などの広報啓発活動を行っており、薬物乱用を拒絶 する社会環境づくりを推進しています。 (1) 銃器事犯の現状 平成27年中の全国における銃器発砲事件の発生件数は8件で、前年に比べ24件減少しまし た。その全てが暴力団構成員等によるものとみられています。また、平成27年中の全国にお ける銃器発砲事件による死傷者数は4人で、前年に比べ6人減少し、その全てが暴力団構成 員等となっています。 道内では、暴力団構成員によるアパートに対する発砲事件が1件発生しており、この発砲 事件での死傷者はありませんでした。 銃器発砲事件の発生件数及び死者数は、暴力団員等によるものとみられるものを含め、長 - 63 - 期的には減少傾向にあるものの、暴力団員等による対立抗争とみられる銃器発砲事件が発生 しており、繁華街や住宅街等、市民の身近な場所で発生するこれらの事件は、依然として社 会の大きな脅威であり、予断を許さない状況にあります。 (2) 銃器事犯の取締状況 平成27年中の道内における拳銃押収数は8丁で、このうち暴力団員等から押収した拳銃は 1丁でした。また、全国における拳銃押収数は383丁で、前年に比べ23丁減少しました。 このうち暴力団からの押収数は63丁で、前年に比べ41丁減少し、暴力団以外の者からの押 収丁数は320丁で、前年に比べ18丁増加しました。 (3) 違法銃器根絶に向けた活動 銃器犯罪は、一般市民のごく身近なところで発生し、地域住民に著しく不安を与えるなど 平穏な市民生活の脅威となっています。警察では違法銃器の摘発を重要課題の一つとして、 組織の総力を挙げた取締りを強化しております。 また、税関、海上保安庁等の取締り関係機関とも連携して、道民の皆様の協力を得ながら、 拳銃等の違法銃器を道内に持ち込ませないための活動を展開しています。 (4) 拳銃110番報奨制度 実名、匿名を問わず、拳銃に関する情報を下記のフリーダ イヤルに提供していただき、その情報により拳銃等が押収さ れ、かつ被疑者が検挙されたとき、状況に応じて報奨金が支 払われる制度です。(※ 実名の場合、1丁につき10万円が目安です。) 「あなたの情報が、拳銃根絶につながります。」 拳銃に関する情報はフリーダイヤル じ ゅ う み な な し 0120−10−3774 で24時間受け付けています。 (1) 日本で活動する国際犯罪組織の動向 我が国において犯罪行為を行っていると思われる国際犯罪組織(外国に本拠を置く犯罪組 織、来日外国人犯罪グループ、その他の国際犯罪を行う多数人の集合体)は、出身国や地域 別に組織化され、強盗や窃盗を行う組織、クレジットカードの偽造や詐欺を行う組織、薬物、 銃器の密輸入、密売等を行う組織など、国籍ごとに犯行に特徴があり、日本の暴力団等の犯 罪組織とも密接な関係が見られます。最近では、日本人を含む複数の国籍の者で犯罪組織を 形成するなど構成員の多国籍化がみられ、犯行形態も複雑、多様化し、組織の実態が不透明 化しています。 - 64 - また、過去の検挙事例から、こうした犯罪組織構成員の活動をサポートするため、偽装身 分や居住場所を提供する組織のほか、構成員が病気になった場合に備えた無許可の病院や薬 局、犯罪に欠かせない通信手段である不正な携帯電話の販売店等の存在など、国際犯罪組織 が犯罪インフラを利用している実態が明らかとなっています。 (2) 北海道で活動する国際犯罪組織の動向 国際犯罪組織の動向として、中国人犯罪組織は稼働先の同僚等を誘い込むなどしてグルー プを形成し、明確な役割分担の下、他の国籍者や暴力団と結託しながら犯罪を敢行しており、 ロシアマフィアも同様に暴力団関係者らと連携して巧妙に道内に企業進出するなど、治安へ の脅威となっています。 (3) 警察の取組 ア 関係各機関・団体等との連携強化による国際犯罪組織の実態解明と取締り 国際犯罪組織の活動実態を解明するため、各都府県警察との情報交換や入国管理局、税 関、海上保安庁等の関係取締機関や港湾管理者、関係団体との連携を強化し、犯罪組織の 実態解明を図るとともに取締りを強化しています。 イ 国際的な連携の強化 警察庁を通じて外国捜査機関との積極的な情報交換を行うなど、国際的な連携を強化し ています。 ウ 違法ヤード対策の強化 自動車や中古の大型機械などを広い土地に集めて解体、処分する場所(ヤード)は都市 の郊外等でよく見られ、それらの中には、正規の許可を取らずに違法に営まれているもの があり、盗難自動車を始めとした盗品の隠し場所になっていたり、外国へ密輸出するため の集積基地となっている場合があります。 全国で過去に検挙した例では、外国人窃盗団が大量の盗難品を違法なヤード内の倉庫の 中に隠匿していた例や、何台かの盗難自動車を組み合わせて別の車に作り変える工場とな っていて、そこから外国船へ積み込み密輸出していた例があり、国際犯罪組織の活動拠点 となっていました。 摘発した違法ヤード - 65 - 暴力団等の犯罪組織を弱体化させ壊滅に追い込むためには、犯罪収益の移転を防止するとと もに、それを剥奪していくことが重要です。 このため「犯罪による収益の移転防止に関する法律」に基づく疑わしい取引情報の分析、特 定事業者に係る取引時の本人特定事項等の確認義務に対する違反の把握、預貯金通帳等の譲り 受け、譲り渡し事犯の検挙を進めるとともに「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関 する法律」に定めるマネー・ローンダリング事犯の検挙、起訴前の没収保全制度を活用した没 収対象財産への保全措置の実施等、様々な犯罪収益対策を推進しています。 (1) 近年における我が国の犯罪情勢 ア 犯罪のグローバル化対策 世界的規模で活動する犯罪組織が構成員の多国籍化を図り、それぞれの特性を生かしつ つ、より大規模かつ効率的に犯罪を敢行しており、その活動地域も日本国内に止まらず、 あらゆる国や地域に及ぶといった「犯罪のグローバル化」という大きな質的変化が進み、 治安に対する重大な脅威となっています。 道内においても過去に百貨店を対象とした多額貴金属窃盗事件が発生するなど、犯罪の グローバル化に加え、組織化、巧妙化が進んでおります。 また、我が国には平成27年1月1日現在、不法残留者が約6万人おり、不法入国者、偽 装滞在者等を含めると更に多くの外国人が不法に滞在し、その多くが不法就労していると みられ、こうした人々が特定の地域、地区に居住し、様々な犯罪の温床となるケースも見 られます。 イ 犯罪インフラ対策 犯罪インフラとは犯罪を助長し、又は容易にする基盤のことをいい、基盤そのものが合 法なものであっても犯罪に悪用されている状態にあれば犯罪インフラとなります。 こうした犯罪インフラは、社会の急速な変化に応じて我が国の犯罪組織や詐欺、窃盗、 サイバー犯罪といった、あらゆる犯罪の分野で着々と構築され、巧妙に張り巡らされつつ あり、その存在は我が国の治安に対する重大な脅威となっています。 ⑵ 犯罪のグローバル化・犯罪インフラ対策の重要性 犯罪のグローバル化、犯罪インフラ対策は、10年先の治安対策という観点から速やかに対 策を講じなければなりません。犯罪インフラの代表例については次のとおりですが、これら は既にあらゆる犯罪に利用されているところです。 北海道警察においても、こうした現下の厳しい犯罪情勢に的確に対処するため、全国の警 察や関係機関との連携の下、諸対策を推進しています。 - 66 - ⑶ 犯罪インフラの代表例 1 他人名義の携帯電話等 他人名義の携帯電話、レンタル携帯電話、プリペイド式携帯電話などは、犯行の追跡を 困難にする道具として振り込め詐欺、薬物密売の客受や犯罪グループの連絡手段として使 用されるなど代表的な犯罪インフラの一つです。 2 他人名義の預貯金口座 他人名義の銀行口座、預貯金通帳は、振り込め詐欺やヤミ金などの入金口座として利用 されたり、犯罪収益を隠匿するための口座として利用されています。 3 インターネットの違法、悪質サイト インターネットは、世界中の人々と情報の交換ができる便利なサービスですが、反面、 わいせつな画像を掲載、販売したり、自殺や犯罪を助長する内容を掲載する等の違法、悪 質なサイトも多く存在します。 また、インターネットオークションや掲示板などの合法的なサービスが違法薬物や盗難 被害品の販売に利用されるなど、結果として犯罪に利用されている場合があります。 4 偽造身分証明書 自動車運転免許証や住基カード、外国人登録証などの身分証明書を偽造することで偽り の名前や住所で携帯電話の契約ができたり、銀行口座を開設したりすることができ、これ ら携帯電話や銀行口座が振り込め詐欺などの犯罪に利用されています。 5 地下病院・地下薬局・地下銀行 日本に不法入国、不法残留している外国人は一般の診療機関で受診することができませ ん。また、無免許、無許可の病院・薬局は地下病院、地下薬局と呼ばれ、在留資格のない 外国人などの生活を支援しその活動を助長しております。こうした外国人が本国への送金 に利用する無許可の銀行は地下銀行と呼ばれ、これも犯罪インフラの一つとなっています。 ※ (1) 無許可、無免許の事業者(いわゆるモグリ)などは、地下○○と呼ばれています。 薄野地区の現状 薄野地区は、風俗店や飲食店等約6,450店が密集する東北以北最大の歓楽街で、市民等が憩 う社交の場であり、夜の観光名所でもあります。 しかし、華やかな街並みの裏では、暴力団等の犯罪組織が不法な利益を求めて暗躍してい るほか、市民や観光客等に不安感や迷惑感を与え、治安に悪影響を及ぼすことが懸念される 悪質な客引きや違法風俗営業等が後を絶たず、取締りを強化しています。 (2) 北海道警察歓楽街総合対策 平成17年、主要な繁華街・歓楽街を管轄する都道府県警察では、健全で魅力あふれる繁華 街・歓楽街の再生を目指し、繁華街・歓楽街における違法風俗営業店、不法就労、暴力団等 の犯罪組織等に対する取締りを行うとともに、街の新たな魅力づくりとの効果的な融合を目 指した取組を推進することとし、北海道警察においては、「北海道警察歓楽街総合対策本部」 - 67 - を設置して全道の歓楽街において、取締り等と地域住民と連携・協働した環境浄化対策を推 進することとしました。 平成20年からは総合対策の対象地域を薄野地区に絞って重点的な対策を推進しており、平 成27年中の対策の重点は ・ 風俗関係事犯等及び組織犯罪の取締り並びに犯罪インフラの根絶 ・ 地域住民、自治体、関係団体等との協働による健全で魅力あふれるまちづくりの推進 でしたが、平成28年は ・ 風俗関係事犯等及び組織犯罪の取締り ・ 商店街等や自治体と連携した犯罪組織、違法風俗店等の排除及び犯罪インフラの解体等 ・ 商店街等や自治体との協働による迷惑行為の防止と街並みの改善 を重点として各種取締りのほか、札幌市副市長が会長となる「クリーン薄野活性化連絡協議 会」等と連携・協働し、官民一体となって各種対策を行い、歓楽街の環境浄化を推進してい ます。 平成27年中は、薄野地区において風俗関係事件等で117件134人(うち暴力団等23件25人)を 検挙しています。 《事例》 ① 暴力団関係者が関与するぼったくり社交飲食店における無許可・名義貸し風俗営業事件 ② ハプニングバーと称する飲食店における公然わいせつ事件 ③ 年少者を稼働させていた無許可風俗店における無許可・年少者使用事件 ④ マッサージ店を仮装した性風俗の禁止地域営業事件 - 68 -
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