薬の運命を左右する血液の中の運び屋 −血中タンパク質による薬の選別−

講演タイトル:α1-酸性糖タンパク質バリアントにおける薬物選択性の機序解明
薬の運命を左右する血液の中の運び屋
−血中タンパク質による薬の選別−
熊本大院薬 ○末永綾香、上野 恵、福永直子、村上由佳、西 弘二、小田切優樹
我々の血液中には、ヒト血清アルブミン(HSA)やα1-酸性糖タンパク質(AGP)などの
タンパク質が存在し、外から異物として取り入れた薬などの運び屋として働いている。
薬を服用した場合、HSA は酸性薬物を、AGP は塩基性薬物を結合することで、互いに薬物
の選別を行い、標的となる組織に運んでいる。そのうち、AGP にはアミノ酸配列が約 10%
異なる 2 種類のバリアントが存在し、それぞれ異なる薬物選択性を示す。そこで、我々
は血液から精製された AGP をさらに 2 つのバリアントに分離・精製した。一方、酵母細
胞あるいは大腸菌を用いて、遺伝子組換え技術により、ヒトの AGP バリアントをそれぞ
れ発現・精製し、血液由来のものと同等の性質を有する 2 種類の組換え型 AGP を得るこ
とに初めて成功した。この技術を用いて、薬物結合への関与が予測されるアミノ酸残基
に変異を施し、薬物結合性の変化を測定することで、AGP バリアントの薬物選択性の機序
解明を行った。
我々が服用する塩基性薬物が体内で AGP によりどのように選別されるかが分かれば、
塩基性薬物の正確な服用量や薬効の把握及び副作用回避のための有用な情報の提供が期
待できる。