サッシとドアセットの性能試験 - 一般財団法人日本建築総合試験所

テーマ解説
サッシとドアセットの性能試験
Performance Tests for Sash and Door-sets
西村 宏昭*1、苺谷 信次*2、前田 豊*3、田中 学*4、小南 和也*5、阪口 明弘*6
1.はじめに
一般に、建築部材には種々の性能が要求される。それ
らは独立に、あるいは相互に関係をもつが、完成した製
性能に加えて2.8節の面内変形追随性能が要求される。サ
ッシとドアセットに要求される性能と準拠する試験規格
または基準の一覧を表-1.1に示す。
品はそれらの要求されるすべての性能を同時に満たす必
サッシは一般に窓枠部材を指し、これにガラスやパネ
要がある。高度に成長した経済社会では、製品に要求さ
ルを嵌め込んだ建材は窓と呼ばれる。海外の規準では
れる性能は高水準に至り、また多岐にわたる。建築材料
Windows and Doorsが一対の用語として用いられること
も例外ではなく、常に技術革新があり進歩し続けている。
が多いが、ここではわが国の慣例に従ってサッシの用語
性能の細分化や多様化は製品の選択の幅を広げるが、ユ
を用いる(実質的には窓のことである)
。また窓とドアを
ーザーは製品全体の性能に関する情報の把握が困難にな
総称して建具と呼ぶこともある。なお、ドアセットは扉
ることがある。性能を確認するための試験においても細
と枠の両方が組み込まれた部材を指している。この用語
分化は避けられず、製造者が自社の製品においてさえ、
を用いるなら、サッシもサッシセットと呼ばれるべきで
どのような性能が要求されており、それを確認する試験
あるが、これも慣例に従って単にサッシと呼ばれている。
にはどのようなものがあるかを掌握しきれないこともあ
サッシとドアセットの性能は設計者が要求する場合の
る。そこで、建材の種類ごとに要求性能と性能試験をま
他、製品規格でグレードが決められているものがあり、
とめる試みが今回の編集企画である。先ず第1弾として、
それらの中から設計者が選択して決定することがある。
本号ではサッシとドアセットを取り上げた。
製品規格はサッシではJIS A 4706、ドアセットではJIS
サッシとドアセットは、普通、断熱、防音サッシ/ド
A 4702で主に規定されており、それらは各性能試験規格
アおよび防火設備(防火戸)に分類される。さらにドア
のJISを参照している。JIS以外に、BL規格、建築基準法
セットは耐震性能が要求されるものがある。普通サッ
または住宅品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法
シ/ドアは本稿2.1∼2.7節に記述した機械的な性能が要求
律)で要求される性能もある。各性能の選択とそれらの
され、防音サッシ/ドアでは第3章の防音性能が、また
性能の組み合わせは、設計者が設計しようとする建築物
断熱サッシ/ドアでは第4章の断熱性能がそれぞれ付加
の重要性や経済性を考慮して決定するが、それには社団
性能として要求される。防火設備は第5章の防火性能が
法人日本サッシ協会の小冊子「わかりやすいサッシ・ド
機械的性能に付加して要求される。耐震ドアは、機械的
アの性能」が助けになるであろう。
*
1
2
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3
*
4
*
5
*
6
*
NISHIMURA Hiroaki:(財)日本建築総合試験所 試験研究センター 耐風試験室 室長 博士(工学)
ICHIGOTANI Shinji:耐風試験室 主査
MAEDA Yutaka:耐風試験室 主査
TANAKA Manabu:環境試験室 室長代理
KOMINAMI Kazuya:環境試験室 室長
SAKAGUCHI Akihiro:耐火防火試験室 室長代理
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GBRC Vol.34 No.2 2009.4
本稿では、試験項目ごとに定義または適用、試験方法
として負圧の通気量の測定も行なっている。通気量は、
および性能評価についてまとめた。なお、サッシとドア
測定した漏れ量を通気面積で除して、1m2当り、1時間当
セットには、ここで示した性能以外に、防犯性能や飛来
りの空気の量[m3/h・m2]で表される。
物耐衝撃性能が要求されることがあるが、当所ではそれ
らの試験に未だ対応できていないので本稿では省略した。
当所の試験装置には小型圧力箱と大型圧力箱の2種類
があり、建具のサイズにより使用する圧力箱を選択する
ことができる。試験体サイズは、枠の外寸法で小型圧力
表-1.1
サッシとドアセットの性能と試験規格
箱を使用するときには高さ2030mm×幅2030mm、大型
圧力箱を使用するときには高さ3100mm×幅4100mmま
でである。
写真-2.1.1
試験体を小型圧力箱に設置した状況
写真-2.1.2
小型圧力箱に捕集箱を設置した状況
2.動風圧試験(機械的性能試験)
2.1
2.1.1
建具の気密性試験
定義
気密性とは、建具の表裏に圧力差があるときに隙間を
通る空気の量を表す性能で、日常的に発生する強風また
は室内換気によって生じる圧力差を対象としている。建
具の気密性は単位時間当りの単位面積を通過する空気量
[m3/h・m2]を用いたA等級で表される。
2.1.2
試験方法
試験はJIS A 1516「建具の気密性試験方法」によって
行なわれる。試験体を圧力箱と捕集箱(写真-2.1.1、図2.1.1)の間に固定し、図-2.1.1に示すように送風機から
圧力箱に空気を送り込み、予備加圧(500Pa)を3回加え
た後、圧力箱と捕集箱との圧力差を10Pa、30Pa、50Pa、
100Pa、50Pa、30Pa、10Paの順に圧力差を変化させ、そ
れぞれの圧力差におけるサッシを通過する空気を捕集箱
で集め流量計を通過する通気量を測定する。JIS A 4702
およびJIS A 4706の試験方法にはないが、当所では参考
46
図-2.1.1
気密性試験の概略
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2.1.3 気密性の等級と性能
気密性にはJIS A 4702またはJIS A 4706の性能規定に
より図-2.1.2に示す等級が規定されている。昇圧時およ
び降圧時のいずれか大きい方の通気量が上回らない気密
性等級線の最大等級を気密性能等級とする。
写真-2.2.1
図-2.1.2
2.2
水密試験装置(小型圧力箱)
通気量線図
建具の水密性試験
図-2.2.1
水密試験装置
図-2.2.2
水密試験手順
2.2.1 定義
水密性能とは、暴風雨時に雨水の浸入を防ぐ建具の性
能で、建具の屋外面に散水(4ë/min・m2)と変動圧力を
同時に掛けて、室内側への漏水を調べる。水密性能は負
荷する圧力差(Pa)を用いたW等級で表される。
2.2.2 試験方法
試験はJIS A 1517「建具の水密性試験方法」による。
試験体を圧力箱に固定し(写真-2.2.1および図-2.2.1)、
送風機を用いて予備載荷の後、圧力箱内に周期2秒の変
動圧力を加えながら水を噴霧し(図-2.2.2)、その時の試
験体からの室内側への漏水の有無を観察する。試験装置
は小型圧力箱と大型圧力箱の2種類があり、建具のサイ
ズにより使用する圧力箱を選択することができる。試験
表-2.2.1
水密性の性能基準
体のサイズは、枠の外寸法で高さ2030mm×幅2030mm
から高さ7100mm×幅4100mmまでの5種類である。
2.2.3 水密性の等級と性能
水密性能にはJIS A 4702またはJIS A 4706の性能基準
により表-2.2.1に示す等級が規定されている。
水密性の性能基準は、該当する等級において建具の枠
を越えて室内側に漏水が発生しないことである。
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2.3
2.3.1
建具の耐風圧性試験
定義
試験は、正圧、負圧それぞれ予備加圧500Pa以上を3回
加えた後開閉確認を行ない、指定された等級に応じて4
耐風圧性は、設計風荷重に対して建具が耐える性能を
等分した圧力を順次加圧する(図-2.3.2)。
いう。設計用風荷重は建築基準法に基づいて設定される
が、製品では7段階に分類された圧力差[Pa]を用いたS等
級で表される。
2.3.2
試験方法
試験はJIS A 1515「建具の耐風圧性試験方法」によっ
て行なわれる。試験体を圧力箱に固定し(写真-2.3.1、
図-2.3.1)、圧力箱内の圧力を増減させて試験体の変形と
破壊の有無を観察する。設定される圧力差には正圧(室
外側から室内側に向かう圧力)と負圧(室内側から室外
側に向かう圧力)の両方がある。
試験装置は小型圧力箱と大型圧力箱の2種類があり、
図-2.3.2
耐風圧性試験手順
建具のサイズにより使用する圧力箱を選択することがで
きる。試験体のサイズは枠の外寸法で高さ2030mm×幅
2030mmから高さ4100mm×幅7100mmまでの5種類であ
る。
2.3.3 耐風圧性の等級と性能
耐風圧性にはJIS A 4706またはJIS A 4702で、表-2.3.1
に示す等級と性能基準が定められている。
耐風圧性の性能基準は、該当する等級の圧力を与えた
ときに建具に破損がないこと、除圧後開閉に異常がなく
使用上支障がないことの他、各部材における変形量が基
準を満足することである。
表-2.3.1
写真-2.3.1
耐風圧試験装置(小型圧力箱)
図-2.3.1
48
試験概略図
耐風圧性の性能基準
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2.4
建具の開閉力試験
表-2.4.1
開閉力の性能基準
2.4.1 定義
建具の開閉力は比較的小さい力でサッシやドアを開閉
することができる能力をいう。
2.4.2 試験方法
試験はJIS A 1519「建具の開閉力試験方法」によって
行なわれる。開閉力試験方法には、開閉力の確認と測定
(写真-2.4.1∼写真-2.4.3)の両方が決められている。JIS
A 4702とJIS A 4706では50Nで開閉できることが規定さ
れているので開閉力の確認のみを行なう。開閉力の測定
値が要求される場合(開閉繰り返し試験など)には、建
具が開閉する際の最小の荷重を測定し、その荷重で連続
して5回の開閉ができることを確認する。
試験装置はおもり、ワイヤーおよび滑車を使用する。
写真-2.4.1
スイング・ドアセットの開き力、閉じ力測定試験
試験体および試験体用枠は任意の場所に固定できるが、
気密性試験等を同時に行なう場合は、圧力箱に取り付け
た状態で行なう。
図-2.4.1
写真-2.4.2
スライディング・ドアセットの開き力測定試験
写真-2.4.3
スライディング・ドアセットの閉じ力測定試験
試験方法の概略図(スライディング・ドアセット)
2.5
2.5.1
建具の戸先かまち強さ試験
定義
戸先かまち(框)とは窓を構成する鉛直部材をいい、
戸先かまち強さは窓が開いた状態でのかまちの強度をい
うが、規定では剛性で評価されている。
2.5.2
試験方法
試験はJIS A 1522「建具の戸先かまち強さ試験方法」
図-2.4.2
試験方法の概略図(スイング・ドアセット)
に従い、載荷用おもりと滑車を用いて行なう。試験体を
圧力箱に固定して、気密性試験等も同時に行なうことが
2.4.3 開閉力の性能
開閉力の性能基準はJIS A 4706およびJIS A 4702に表2.4.1のように規定されている。
可能である。
図-2.5.1のように、戸先かまち(閉鎖時に枠に接する
かまち)の中央の面内方向(戸の面に平行な方向)およ
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び面外方向(戸の面に垂直な方向)におもりを載荷し、
ィングの2つの開閉方式についての試験が可能である。
それぞれのたわみ量を測定する。
それぞれの装置にセットできる試験体サイズ(建具の寸
法)はスイング・ドアで高さ1800mm∼2400mm×幅
600mm∼1000mm、スライディング・サッシ/ドアで高
さ約3000mm×幅約3000mmまでが可能である。
試験体を開閉繰返し装置(写真-2.6.1、写真-2.6.2)に
取り付けて毎分5∼10回で繰り返し開閉を行ない、試験
前および一定回数毎に戸の開閉力および戸と枠の隙間
(戸先側および下枠側)の大きさを測定する。JISの規定
開閉回数はJIS A 4702「ドアセット」で10万回、JIS A
4706「サッシ」で1万回と決められている。なお当所で
は、スイング・ドアの場合にラッチの解除を含め、繰り
返し開閉を行なっている。
図-2.5.1
2.5.3
戸先かまち強さ試験概略図
戸先かまち強さの性能
戸先かまち強さの性能は、JIS A 4706に決められたス
ライディング・サッシの耐風圧性能がS-5等級以上のもの
だけに適用され、表-2.5.1に性能基準が定められている。
表-2.5.1
2.6
2.6.1
写真-2.6.1
開閉繰り返し試験中の状況(スイング・ドア)
戸先かまちの性能基準
開閉繰返し試験
写真-2.6.2
定義
開閉繰り返し試験中の状況(サッシ)
開閉繰り返し試験は、建具の供用期間内における開閉
に伴う耐久性を調べる試験である。
2.6.2
試験方法
開閉繰り返し試験はJIS A 1550「サッシの開閉繰り返
し試験方法」およびJIS A 1525「ドアセットの開閉繰返
2.6.3 開閉繰返しの性能
建具の開閉繰返しの性能基準はJIS A 4702またはJIS
A 4706に規定回数の繰り返し開閉を行なった後に「開閉
に異常がなく使用上支障がないこと」と規定されている。
し試験方法」によって行なわれるが、スライディング・
2.7
ドアセットはJIS A 1550「サッシの開閉繰り返し試験方
2.7.1 定義
法」によって行なわれる。
建具の開閉繰り返し試験は、スイングおよびスライデ
50
ねじり強さ・鉛直載荷・耐衝撃性試験
ドアのねじり強さと鉛直載荷は、開いたドアに子供が
ぶら下がった状態を想定し、ドアの強度を確認する試験
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である。耐衝撃試験はドアに人が当った衝撃に耐える性
能を確認する試験である。
2.7.2 試験方法
試験はJIS A 1523「ドアセットのねじり強さ試験方法」、
JIS A 1524「ドアセットの鉛直載荷試験方法」および
JIS A 1518「ドアセットの砂袋による耐衝撃性試験方法」
によって行なわれる。
ねじり強さ試験は、図-2.7.1、図-2.7.4のように載荷を
行ない開閉に異常がなく、使用上支障がないかを確認す
る。
鉛直載荷試験は、図-2.7.2、図-2.7.4のように載荷を行
図-2.7.4
ねじり強さと鉛直載荷試験の載荷プロセス
なった後に、開閉に異常がなく、使用上支障がないかを
確認する。
2.7.3
ねじり強さ・鉛直載荷強さ・耐衝撃性の性能
ねじり強さ、鉛直載荷、耐衝撃性の性能はJIS A 4702
の性能基準により表-2.7.1のように示されており、各性
能項目とも開閉に異常がなく、使用上支障がないことと
なっている。鉛直載荷のみ残留変位が3mm以下と規定さ
れている。
表-2.7.1
図-2.7.2 鉛直載荷試験
図-2.7.1
ねじり強さ、鉛直載荷、耐衝撃性の性能基準
ねじり強さ試験
耐衝撃性試験は、図-2.7.3のように規定の落下高さ
(170mm)で砂袋(30kg)を用いて1回の衝撃を与えて、
有害な変形や開閉に異常がなく、使用上支障がないこと
を確認する。
2.8
2.8.1
片開きドアセットの面内変形追随性試験
定義
面内変形追従性は、地震によって建築物が変形したと
きに、居住者がその建築物から脱出するために、容易に
ドアが開くことができる性能である。そのような性能を
もつドアは耐震ドアと呼ばれ、ドア枠に与える面内変形
角(rad)を用いて3分類のD等級で表される。
2.8.2
試験方法
試験はJIS A 1521「片開きドアセットの面内変形追随
性試験方法」に準拠する。
層間変位試験装置(写真-2.8.1)にドアセットを取り
付けた(図-2.8.1)後、規定された等級まで順次層間変
図-2.7.3
耐衝撃性試験
形角を与える。各段階で3回の変形角を与え、1回目と3
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回目の変形角を与えた状態において開放力およびラッチ
およびサムターンの解錠トルクを測定する。
試験装置には幅4700mm×高さ7000mmまでの試験体
3.遮音性試験
3.1
定義
遮音性とは、外部交通騒音などの空気伝搬音を遮る程
の設置が可能で、ドアセット以外にもカーテンウォール
度を表す性能である。ドアセットやサッシの場合には、
や外壁などの試験を行なうこともできる。
T等級を用いて表示することが多い。また住宅性能表示
制度(品確法)では、JIS A 1419-1附属書2に示された空
気音遮断性能の平均値Rm(1/3)を用いて表示される。
3.2
試験方法
遮音性試験では、実験室においてJIS A 1416に基づい
た音響透過損失の測定が実施される。基本的には図-3.1
に示すような2つの残響室の間に試験体を設置し、スピ
ーカーから音を放射した時の、音源室と受音室の室内平
均音圧レベルを1/3オクターブごとに測定する。測定値
に対して受音室の等価吸音面積による補正を行い、次の
(3.1)式により音響透過損失Rが求められる。
R=L1−L2+10log10(S/A)……………………………(3.1)
写真-2.8.1
ここに、L1
:音源室の室内平均音圧レベル[dB]
L2
:受音室の室内平均音圧レベル[dB]
S
:試験体の遮音面の面積[m2]
A
:受音室の等価吸音面積[m2]
層間変位試験装置
ただし、JIS A 4702および4706に基づく場合には、音
響透過損失はJIS Z 8401に従って整数で表示される。
試験は通常の施工状態に準じた構造について実施され
る。試験体仕様にガラスを含む場合には、実際に使用が
予定されるガラスを用いるか、ガラスが特定されていな
い場合には仕様で決められたもののうち遮音性能上最も
不利なガラスの仕様で試験を実施する。
試験体の遮音面寸法は、原則として室内側仕上げ面を
基準として設定される。具体的な基準面の位置の例が、
JIS A 4702およびJIS A 4706に示されている。
当試験所の場合、遮音性試験には第2・第3残響室を用
図-2.8.1
面内変形追従性試験の状況
いる。試験の概要を図-3.1に、試験実施状況を写真-3.1
に示す。
2.8.3
面内変形追随性の等級と性能
面内変形追随性はJIS A 4702の性能基準により、表-
試験では、ドアセットまたはサッシの本体と枠を組み
込んだRC製の取付け枠を事前に製作して搬入し、残響室
2.8.1に示す等級が規定されている。面内変形追随性の性
間の開口部に設置する。当財団の残響室間の開口寸法は、
能はJIS A 4702のスイング・ドアセットのうち耐震ドア
幅4200mm×高さ2600mm(別途工事により高さ3100mm
セット(片開き)のみに適用される。
まで拡張可能)であり、RC製の取付け枠の外寸がこの寸
法以下であれば試験が実施可能である。
表-2.8.1
52
面内変形追従性の性能基準
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【関連規格】
・JIS A 1416:2000「実験室における建築部材の空気音遮
断性能の測定方法」
・ISO 140-3 Acoustics− Measurement of sound
insulation in buildings and of building elements−Part
3:Laboratory measurements of airborne sound
insulation of building elements
図-3.1
音響透過損失試験の概要
4.断熱性能および結露防止性能試験
4.1
4.1.1
断熱性試験
定義
サッシやドアなどの建具の断熱性能を表わす指標とし
ては、熱貫流率(U値、単位
[W/m2・K]、従来K値とも呼
ばれていたもの)、もしくはその逆数である熱貫流抵抗
)が一般的に用いられている。
(Ru値、単位
[m2・K/W]
熱貫流率とは、固体壁の両面が流体に接するとき、単
位面積の固体壁を通過して、単位温度差をもつ高温側流
写真-3.1
試験実施状況(音源室側)
体から低温側流体へ単位時間に伝わる熱流量(JIS A
0202断熱用語より)と定義されており、建具の場合は両
3.3
遮音性の等級と性能
遮音性能の評価では、図-3.2の遮音等級線が参照され、
側の空気温度差が1K(ケルビン)であるとき、1m2相当
の面積を通過する熱流量で表され、U値が小さいほど断
以下の手順 a)または b)の条件を満たすときに、その遮
熱性が優れていることとなる。
音等級(T等級と呼ばれる)にあると判断される。
4.1.2
a)125∼4000Hzの音響透過損失(16帯域の各値)が、
すべて該当する遮音等級線を上回る。
試験方法
建具の断熱性能の試験方法はJIS A 4710「建具の断熱
性試験方法」に規格化されており、原理的にはJIS A
b)1 Oct.Band毎の音響透過損失換算値を求め、その
1420「建築用構成材の断熱性測定−校正熱箱法及び保護
換算値(6帯域の各値)が該当する遮音等級線を上
熱箱法」によって測定される。熱貫流率は熱箱内の供給
回る。
熱量から取付パネルなどの損失熱量を差し引き、試験体
なお各周波数帯域で該当する等級線を下回る値の合計
が3dB以下の場合はその遮音等級となる。
空気音遮断性能の平均値Rm(1/3)は、実験室で測定され
両側の環境温度差及び伝熱面積から(4.1)式を用いて算出
し、最後に両側の表面熱伝達抵抗の補正を加えて基準化
熱貫流率として表される。
た各周波数帯域の音響透過損失から、1/3Oct.Bandの中
試験条件は低温側0℃、高温側20℃とするのが一般的
心周波数100∼2500Hzの15帯域における測定値の算術平
で、試験体両側の熱伝達抵抗は試験体ごとに行われる校
均値を求め、小数点以下を四捨五入した整数値である。
正時の気流等の条件を保って試験を行う。なお、この測
定方法は基本的にはISO 12567-1と整合している。
φin−φl−φsur−φedge
U=────────────── ………………………(4.1)
Δθn・K
ここに、φin
:熱箱内の供給熱量[W]
φl
:熱箱の損失流量[W]
φsur
:取付パネルを通過する熱量[W]
φedge :取付パネル端部を通過する熱量[W]
Δθn :試験体両側の環境温度差[K]
図-3.2
遮音等級線
A
:伝熱面積[m2]
53
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財団法人ベターリビングの優良住宅部品にも断熱性試
4.1.3 断熱性能の等級と性能
験方法(BLT)が規格化されており、測定原理は同様で
断熱性能は、表-4.1に示すようにJIS(JIS A 4702「ド
あるが、JISでは熱放射を考慮した環境温度差を用いてい
アセット」及びJIS A 4706「サッシ」)ではH-1∼H-5の
るのに対して、BLTでは両側の空気温度差を用いている
等級で熱貫流抵抗値として規定されており、BLTでは4
こと、また表面熱伝達抵抗の設定値、校正方法、試験体
型∼S型の等級で熱貫流率として定められている。
周囲に生じる熱流の取り扱いなどの細かな部分で若干の
表-4.1
サッシ及びドアの断熱性能の規定値
違いがある。
当所の場合、熱箱の開口寸法が幅1900mm×高さ2100
mmであり、その中に試験体を納めるように設置し、建
具周囲の取付パネルの設置は当所ですべて行うようにし
ており、これによって取付パネルの熱物性や取り付け精
度を確保している。
JIS A 4710の断熱性能試験装置の概要を図-4.1に、そ
の試験状況を写真-4.1に示す。また、当所では、試験体
姿勢が鉛直だけでなく、天窓のような水平姿勢の試験体
にも対応できるように上下に恒温室をもつ試験装置も所
有しており、現実に即した試験が可能である。
【関連規格】
・JIS A 1414「建築用構成材(パネル)及びその構造部
分の性能試験方法」
・ISO 12567-1 Thermal performance of windows and
doors−Determination of thermal transmittance by
hot box method−Part 1:Complete windows and
doors.
4.2
結露防止性能試験
4.2.1 定義
結露とは空気中の水蒸気が温度の低いところで凝結し
て水滴となる現象である。日本の住宅で結露というと水
滴で曇った窓ガラスを想像するように、冬季によく見掛
ける現象である。その結露に対してどれだけの抵抗性が
あるのかを試験するのが結露防止性能(防露性能ともい
う)試験である。結露防止性能は、断熱性能のように定
量的に表現されるものではなく、室内外で設定された空
気温湿度などの要求される環境条件下での結露発生の有
無を判断することとなる。サッシやドアなどの建具は、
主にガラス、金属、プラスチックなどの吸湿性も透湿性
図-4.1 JIS A 4710の断熱性能試験装置の概要
もない材料で構成されている場合が多いため、表面結露
が評価対象となる。
4.2.2 試験方法
結露防止性能は、その対象となる材料の熱湿気物性値
が分かっていれば、理論計算によりほぼ推定でき、窓ガ
ラスの中央部のような部材構成が単純な部位では計算に
より性能が特定できる。しかし、サッシの框と枠の取合
い部のような複雑な形状や隙間を有する部材、材料内で
空気流動が生じる部分がある場合には計算が困難である
写真-4.1 断熱性能の試験状況
(冷却側バッフルを取り除いた状態)
54
ので、結露の発生は計算ではなく試験によって確認され
る。
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試験方法はJIS A 1514「建具の結露防止性能試験方法」
台にまで結露水が流れ出すと内装材の変色やカビなどの
で規定されており、基本的には空気温湿度が制御できる
発生原因となり、最悪の場合は窓周囲の構造体の腐朽に
2室タイプの実験室(図-4.1の断熱性能試験装置の熱箱が
まで至る恐れがあるので、結露被害防止の観点において
ない状態)を用いる。
も許容されない。
室内側空気を20℃、50%RHの条件に維持した状態で、
また、サッシでは室外側にシャッターや雨戸、室内側
室外側空気を5℃間隔でステップ状に順次下げていった
にカーテンやブラインドなどの付属物が取り付けられる
場合の試験体表面における結露発生状況を目視観察す
場合が多い。一般に、室外側に付属物が付加されるとサ
る。また、試験体表面温度から温度低下率を算出し、空
ッシの室内表面温度が上昇するので結露防止性能は向上
気温度と表面温度の相関グラフから結露発生点を推定す
するが、室内側に付属物が付加されると逆に室内表面温
る。なお、試験体が金属やガラスのような断熱性の低い
度が低下して結露防止性能は低下する。このような場合、
材料で構成されている場合、内外の気流条件が表面熱伝
付属物を考慮しない試験結果と実際の生活環境下での結
達率に影響し、結果を左右するので、気流条件の明確な
露性状に違いが生じるかもしれないことに注意する必要
設定が必要である。
がある。実際の使用環境でのサッシの結露防止性能を評
試験体の製作では、断熱性能試験と同様に、建具周囲
価する場合、サッシ単体の試験結果だけでなく、その試験
の外壁に相当する部分を断熱性のあるパネルに置き換え
条件や施工方法、付属物なども十分考慮する必要がある。
るのが一般的であるが、建具の取付方法によっては周囲
に熱的弱点部が生じることがあり、それらを含めて試験
することが必要な場合もある。当所では、幅2000mm×
高さ3000mm以下の寸法の試験体を用いて試験が可能で
ある。また、断熱性能試験と同様に、水平姿勢の試験体
(最大寸法1800mm×3000mm)にも対応できる。
5.防火性能試験
5.1
定義
サッシとドアセットの防火性に関する用語を表-5.1に
列挙する。
表-5.1 防火性に関する用語
結露防止性能試験の状況を写真-4.2に示す。
写真-4.2
結露防止性能の試験状況
4.2.3 結露防止性能の評価
結露防止性能について定められた評価基準はないの
で、その製品に要求される性能に対して満足しているか、
あるいは所定の性能を有しているかどうかで判断する。
また、その判断においては、結露をまったく許容しない
結露防止という考え方と実害を伴わない範囲で結露を許
容する結露被害防止の考え方がある。例えば写真-4.2の
ように結露が生じた場合は結露防止の観点では受け入れ
られないが、結露被害防止の観点では(1)のようにガラ
ス面に結露が生じても、結露水がサッシの枠内を通して
速やかに室外に排水されれば、窓の額縁や壁などを濡ら
表-5.1の定義を整理し、防火設備の分類を表-5.2に示
す実害は生じないので問題はない。一方(2)のように窓
す。当所耐火防火試験室で試験を受けるのは、例示仕様
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ではない防火設備等の国土交通大臣認定を取得しようと
仕様は、原則的には認定を取得しようとする防火設備の
する場合になる。
周壁の仕様と同じにするが、湿式、乾式の両工法での認
表-5.2
防火設備の分類
定を希望する場合は乾式壁(表-5.4の標準仕様)とし、2
体の試験体を製作する。
表-5.4
防火設備の試験体数と周壁仕様
5.2.3 試験実施
図-5.1に示すように試験体を壁炉の前面に取り付け、
写真-5.2に示すように炉内から加熱する。サッシではロ
ック(鍵)を締めた状態で試験するが、ドアではラッチ
のみが掛かった状態で試験し、錠前はロックしないこと
5.2
5.2.1
試験方法
になっている。
試験装置
防火設備等の認定試験には、表-5.3および写真-5.1に
示す当所の大型壁炉または中型壁炉を用いる。2つの炉
はサッシやドアセットの大きさによって使い分け、片開
き扉や小型サッシは主に中型壁炉で試験を行う。
表-5.3
壁炉の寸法
図-5.1
写真-5.1
5.2.2
壁炉に試験体を取り付けた断面の模式図
大型壁炉(右)と中型壁炉(左)
試験体製作
試験体は、鋼製枠の中に開口部を有する壁(周壁)を
製作し、その開口部にサッシ枠、ドア枠を固定して、サ
ッシまたはドアセットをはめ込んだものとする。周壁の
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写真-5.2
防火設備の試験状況
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試験方法の概略を表-5.5に示す。炉内温度が標準加熱
温度を辿るように所定時間加熱し、その間壁炉に取り付
けた防火設備等が判定基準を満たせば合格となる。
表-5.5
防火設備等の試験概要
5.3.2
事前相談(試験体仕様の選定)
認定を受ける際、認定を希望する仕様の範囲(バリエ
ーションと呼ばれる)を提出し、当財団との打合せを経
て、試験体仕様を決定することになる。試験体仕様の決
定に参考となる、業務方法書に示されている評価ルール
を表-5.6に紹介する。
表-5.6 防火設備等の主な評価ルール
5.3 防火設備等の大臣認定
5.3.1 認定手順
防火設備等について国土交通大臣の認定を取得するた
めには、当財団のような指定性能評価機関で試験を実施
【参考文献】
1)財団法人 日本建築総合試験所:防耐火性能試験・評価業務
方法書,2005. 10変更.
し、評価を受ける必要がある。認定に至るまでの手順を
6.おわりに
図-5.2に示す。
建築部材の性能は試験によって確認されることが多
い。基規準で要求される性能には多くの種類があるので、
部材ごとに整理する編集企画に従って、今回はサッシと
ドアセットを取り上げた。今後、他の建築部材の性能試
験についてもまとめてご紹介する予定である。
図-5.2
防火設備等の大臣認定までの手順
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