「スチールハウス」って何ですか? スチールハウスの概要を説明します 2000.10 by M.Nakao 日本最初のスチールハウス (1996.1) 「構造評定」(後で説明)は、1995.9 に通過しました。 施工中の様子(ASI社パンフレットより) 一寸中を覗いてみましょう 縦に通っている材は薄鋼板で作られたリップ溝形断面で、 「スタッド」と呼ばれます 横の部分を眺めると 「スタッド」が通っ ている様子が良く 判ると思います。窓の 下部は、 「腰壁」、上部は「垂 壁」になっ ています。 「垂壁」部は、「まぐ さ」とも呼 ばれます。 「スタッド」の上下 部には、これと 直交して溝形断面の「 トラック」材 があるのですが、この 写真では 隠れてしまって見えま せん。 平面モデュールによ って若干寸法が 異なりますが、日本の 場合には 通常、モデュール寸 法 = 910 mm なの で、スタッド間隔は 半モデュール、つ まり、455 mm となります。 「スチールハウス」の定義 我が国での「スチール ハウス第1号」を最初 にご覧戴きまし た。写真は、1996 年1月に撮影しました。後 で説明する「構造評 定」は、 1995 年 9月に通過したものです 。 骨組の形式は、アメリ カから導入された形式 となっています。 日本での「スチールハ ウス」の定義について 、少し説明して おきましょう。 「スチールハウス」は 、骨組を構成するのに 、薄い鋼鈑を用い ています。「薄い」っ て、どの位「薄い」の かと言うと、2.3mm 未満の厚さの鋼鈑が大 部分だ、と言う事です 。 この種類の骨組の建物 が日本で建設可能とな ったのは、 1995 年 7月からなのです。 それ迄の我が国では、 主要な構造材料に使用 する鋼材厚は、 「最も薄くても 2.3mm 以上」と言うのがルー ルでした。 鉄骨構造と鋼材厚 スチールハウスが導入される前までは、鉄骨構造(鋼構造)の 主要構造部分に用いられる鋼材厚は2.3mm 以上でした。 一部(屋根の母屋や、壁の胴縁など)には1.6mm 厚の鋼材も用い られており、室内の間仕切り用フレームや天井野縁材には1mm ∼ 1.2mm 厚の鋼材も使われていました。 主要構造部分に4.5mm 以上の厚さの鋼を用いる構造を通常「重量 4.5mm 未満の厚さの鋼を主に用いる 鉄骨造」(俗称です)と呼び、 構造を「軽量鉄骨造」と呼んでいます。 「軽量鉄骨造」は、我が国でも約60年の歴史があり住宅にも多用 されています。 軽量鉄骨造について 我が国で約 60年の歴史がある「軽量 鉄骨造」は、住宅に多 用さ れていて、約 30年前位から開発が軌道 に乗り、世の中に多く 建 設されている鋼構造の 「工業化住宅」は、大 部分がこの「軽量 鉄骨造」となっていま す。 「工業化住宅」のメー カーは、セキスイハウ ス、積水化学工業、 ダイワハウス、旭化成 工業、エヌケーホーム 、ミサワホーム、 ニッセキハウス、トヨ タ自動車、ナショナル 住宅産業、クボタ ハウス、住友林業、等 です。 かつては「プレハフ ゙住宅」と「仮設小屋 」のように呼ばれた時 代も ありましたが、今や、 高品質の住宅となって います。 これら住宅のシステム は、 ( 財)日本建築センターで「 評定」を受け て来ました。「構造評 定」部分は下の規定に よっています。 「低層建築物の構造耐 力性能評定に関する技 術規定(鉄鋼系)」 :昭和52年 4月1日制定、平成 9年 7月11日最新改訂 スチールハウスの歴史 最初のスチールハウスは、1928年に米国ピッツバーグ 郊外に建設されたが、次の理由で普及には至らなかったとの事です。 ① 木材が安価(鋼材の約1 / 2)であった。 ② 特定の鉄鋼メーカーに限定され、全国展開できなかった。 ③ 宣伝が不足した。軽量形鋼の供給体制がなかった。 ④ 消費者の好みに合わなかった。(全てを鉄にしようとした) ⑤ 接合がボルト・ナットであった。 ⑥ 鉄鋼メーカーが住宅を建設しようとし、建設会社に技術を教えなかった。 その後、1960年代から急速な普及が始まりました。 オーストラリアでも、既に、約 30年間の実績があるようです。 <以下の文献から引用> 「欧米のスチールハウス」、(社)鋼材倶楽部、1995.4. では、日本では? 「スチールハウス」が 我が国に導入され始め て5年が経過しました。 導入のキッカケは「外 圧」でした。アメリカ では既に「確定した技 術」 となっているのに、日 本が許可をしないのは 怪しからんではないか ? という「圧力」の他に 、日本国内でも、自動 車用の「薄板」を製作 して いた鉄鋼メーカーが、 当時かげりの見えた自 動車産業の他に、同じ 技術で生産できる板を 住宅にも使用して貰お うと考えて開発に取り かかっていました。 「木造ツーバイフォ ー」のような「一般工 法」とする事を究極も 目的として、 国内での開発を行って きたのは、鉄鋼メーカ ーの集まりである、 (社 ) 鋼材倶楽部です。 「KC型スチールハウ ス」と言う名称がこの グループの開発す るシステム名です。 スチールハウスと「構造評定」 スチールハウスにも、 「工業化住宅」と似た ような「構造評定」の 仕組みがあり、 次の基準によっていま す。 「スチールハウス建築 物の性能評定・評価基 準」 :平成7年7月14日制定 (平成7年4月∼6月作 成) この基準の中では、「 0.8mm 以上の厚さの鋼を用い る構造」を対象として いるの ですが、現在は例外的 に 0.48mm 厚(オーストラリア製 )のものも認められて います。 非常に薄いのですが、 閉鎖形の断面にロール してあって、構造耐力 性能が 十分ある為です。 この「構造評定」を終 了した物件数は、平成10年11月現在、以下の通りで す。 個 別:48 プラン :11 システム:34 この内 42% が米国社/オーストラ リア社、又は、その技 術によるものです。 スチールハウスの特徴 [メリット] ・一部だが、環境問題に対応(鋼材のリサイクル) ・部材が軽い(人力で運べる) ・鋼部材は価格が木材に比べて安定している ・鋼部材は品質や寸法が安定している ・鋼部材には「白蟻被害」はない [デメリット] ・防錆に注意する必要がある ・施工が下手だと、局部変形が生じる ・日本では設計・施工法が未だ普及していない どんな構造材料を使うのか? ・コンクリート、鉄筋 : 主として基礎に使います ・鋼材 薄板(原則 0.8mm以上)とその整形品 接合用金物・ビス(ドリリングタッピンねじ)、釘 材質は、ASTM A446 グレードA,D(米国) ZSB400(鋼材倶楽部規格)、等 ・面材 構造用合板、OSB、パーティクルボード、MDF 石膏ボード、等 (鋼板の枠材にビス・釘で接合して、耐力壁を構成します) 用いられる鋼製部品の例 壁の枠組を構成する、スタッド材・トラック材や、梁 として用いられるジョイスト材は、メッキされた(溶 融亜鉛メッキ-5% or 55% アルミ含有もあります) 鋼板をロール成形(一部にはベンダー曲げもあり ます)した形鋼が使われます。 他の金物類も、溶融亜鉛メッキ等の防錆加工が 施されたものが用いられます。 鋼製部品の例と、「ロール成形」の様子を示して おきます。 鋼製部品と工具(写真提供:鋼材倶楽部 (写真提供:鋼材倶楽部)) 鋼材倶楽部規格のスタッド・トラック材 (ZSB400) 薄板とその整形-1 ロール前のコイル( Angels Metal Inc.にて取材) 薄板とその整形-2 ロール機( Angels Metal Inc . にて取材)
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