石綿に関する大気汚染防止法改正(平成26年施行)の内容

第
編集 発行
31 号
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2014.6.2 発行
飛散性アスベストに関する事前届出義務が「工事の注文者」に!!
石綿に関する大気汚染防止法改正(平成26年施行)の内容
石綿障害予防規則・廃棄物処理法との関係を整理する!
■石綿を含む建築物等の解体などに求められる対応(一部)
大気汚染防止法における「特定建設材料」
=大気汚染防止法における「特定工事」
必要な対応
(一部)
根拠となる法律
大気汚染防止法
レベル1
レベル2
レベル3
(発じん性著しく高い)
吹き付け石綿
(発じん性高い)
耐火被覆材、断熱材、保温材
(発じん性比較的低い)
石綿含有形成板
建築物等を解体し、改造し、又は補修する作業を伴う建設工事の受注者(=建設工事の元請業者)は、当
該解体等工事が特定工事に該当するか否かについて調査を行わなければならない。 <第18条の17>
事前調査の実施
石綿障害予防規則
大気汚染防止法
事前届出
石綿障害予防規則
作業
石綿障害予防規則
廃棄物の処分
廃棄物処理法
建築物、工作物又は船舶の解体、破砕等の作業(吹き付けられた石綿等の除去の作業を含む。) 、石綿等
の封じ込め又は囲い込みの作業を行う事業者は、あらかじめ、石綿等の使用の有無を目視、設計図書等
により調査しなければならない。 <第3条>
「特定工事の発注者」が
特定粉じん排出等作業の実施の届出
(都道府県知事あて)
―
「作業を行う事業者(建設業者)」が
建築物解体等作業届
(所轄労働基準監督署長あて)
―
~石綿障害予防規則に定められる作業~
特別管理産業廃棄物
(普通)産業廃棄物
「廃石綿等」
「石綿含有産業廃棄物」
(飛散性アスベスト)
(非飛散性アスベスト)
■石綿(アスベスト)に関する規制の概要
■大気汚染防止法改正のポイント3点
ポイント3:報告・立入検査の対象拡大
石綿は、髪の毛よりも細い繊維状の鉱物で
あり、主に建築材料として使用されてきまし
た。しかし、飛散したアスベストを呼吸器か
ら吸い込むことで、悪性中皮腫の原因となる
ことなど有害性が明らかとなっています。現
在アスベスト製品は製造されていませんが、
過去に使用した建築物の解体などを行う際に
は、大気中に放出されるリスクと作業者の健
康を損なうリスクがあります。
アスベストに関する規制は、大気汚染防止
法、石綿障害予防規則、廃棄物処理法の3つ
の法令が主に関わります。
ポイント1:事前調査の義務
図表の中には表現されていませんが、この
改正で、報告聴取を求められる対象・立入検
査の対象が、それぞれ拡大されています。
報告徴収については、届出がされない場合
を含めた解体工事の発注者・受注者も対象に
なります。立入検査が可能となる範囲につい
ては、工事の行われる建築物も対象となりま
す。
廃棄物処理法においては、石綿を含む廃棄
物のうち、飛散性が高いものは特別管理産業
廃棄物に該当します。一方、非飛散性アスベ
ストは、原則として破砕などの中間処理が禁
止されているなどの特例がありますが、普通
の産業廃棄物として処理されます。
石綿障害予防規則は、労働安全衛生法の定
める規則です。その目的は、労働者の健康を
守ることにあります。石綿障害予防規則は、
石綿を含む建材の除去や解体作業について、
湿潤化を行うこと、作業者は保護具を使用す
ることなどの作業基準を定めています。
大気汚染防止法は、有害大気汚染物質の排
出規制を目的とする法律であり、石綿障害予
防規則とは異なる目的をもちます。
この改正で、建築物の解体などを行う場合
に、元請業者がその調査を行うことを義務付
けることになりました。その結果を工事の発
注者に書面で説明し、工事の場所に掲示する
ことも合わせて義務付けられています。
ポイント2:届出義務は発注者に
大気汚染防止法は、改正前から飛散性アス
ベストが廃棄物として排出されるような特定
工事についての届出義務を定めていました。
これまで、届出の義務は施工者(建設業者)
にあることが定められていましたが、発注者
に変更されています。石綿を撤去する作業の
安全、粉じんの飛散防止対策は、必要な費用
負担を行う発注者の参画が無ければ実現でき
ないと考えているためです。
これは、建設リサイクル法の届出義務と同
様の考え方になります。建設リサイクル法に
基づく届出の義務は、制度の創設時から施工
者ではなく発注者にあります。
実務的には、発注者(施主)がそのルール
を把握し届出書式を作成することは困難であ
るため、委任状を受けて建設業者が届出する
ことになるかもしれませんが、撤去費用の負
担者を含めた関係者全員が、石綿の使用の有
無と作業のリスクと飛散防止対策の必要性を
共有することができる改正になります。
建築物の解体などを行う際の石綿飛散防止
対策は、廃棄物処理の観点(廃棄物処理法)
からも、労働者保護の観点(労働安全衛生法
の石綿障害予防規則)からも、有害粉じんの
環境への放出防止の観点(大気汚染防止法)
からも、規制の強化が続いています。
※レベル3への対策
発じん性が比較的低いとされるレベル3
(スレートなどの石綿を含む形成版など)に
ついては、大気汚染防止法においても、石綿
障害予防規則においても、事前の届出義務は
定められていません。使用された建材の使用
量としてレベル3の用途が多いことから、レ
ベル1・レベル2よりも身近に排出が考えら
れます。
一部の地域では、法令以上の対応が求めら
れており、レベル3の作業についても条例等
で届出を求めている場合もあります。
(廃棄物から環境問題を考える) ユニバースクラブ会員専用 「Clubごみュニティ」 第31号 2014.6.2