シュトゥットガルト 産学連携州立大学における オートモーティブIT

Automotive IT Studies at
the Cooperative State University Stuttgart
By Prof. Dr. Rudolf
Messer, BadenWürttemberg
Cooperative State
University Stuttgart,
Marcus Jenter,
Dr. Kai Pinnow, and
Matthias Wagner,
ETAS
シュトゥットガルト
産学連携州立大学における
オートモーティブIT教育
ETAS、製品や講師、研究論文を通じて教育を支援
バーデン・ヴュルテンベルク産学連携州立大学シュトゥットガルト(情報テクノロジー部門)では、オートモー
選択科目に関しては、自動車に特化した
ティブITに関する学習プログラムを提供しています。これは、自動車制御分野のノウハウを持つ ITスペシャリスト
テーマが主要であることに変わりはありま
に対する自動車メーカーの高い需要に応え、学部長Prof. Dr. Rudolf Messerが中心となって2006年に開講さ
せん。基礎課程は、ECU 、センサ、アク
れたものです。
チュエータといった個々のモジュールから成
る電気/電子工学で構成され、それぞれの
応用という視点から授業が行われます。
学士の需要
クラスの定員は25名以下という少数制で、
2009卒業年より、バーデン・ヴュルテンベ
個々の教育プログラムに多数の個別指導が
学連携教育大学(the Stuttgart University
ルク産学連携州立大学(以下、同州立大)
加えられます。また企業から講師が派遣さ
of Cooperative Education)は、新たに
の卒業生はすべて学士号を取得します。こ
れ、さまざまなテーマで特別授業が行われ
バーデン・ヴュルテンベルク産学連携州立
れにより他大学で修士課程の研究を続ける
大学(主要拠点シュトゥットガルト)とし
ことが可能になります。この学位はドイツ
ます。ETASからもMarcus JenterやDr. Kai
Pinnowといった専門家が出向いて講師を
て公認され、8つの研究センターと3ヶ所の
の中央評価・認定機関(ZEvA)の要件に対
務めています。
キャンパスに統合されました。
応するものです。
この州立大学に在籍する学生数は2万3千人
この認定要件への準拠を徹底するため、同
にのぼり、新入生の数は2008年に18%増
州立大では品質管理の検証と審査基準の維
加しました。ドイツ全土から入学志願者が
持を目的としたシステムを整備しました。
チャとプログラミング」という題 目 で、
集う当大学で、希望する研究科目に登録す
卒業生は、英国の大規模な総合大学の一つ
ECUの働きや組込みの目的などについての
るには、一般/テーマ別の大学入学資格に
であるオープン・ユニバーシティにおいて
授業です。自動車における電気/電子の発
加え、大学と提携している多数の企業の内
Bachelors Degree with Honors(優等学
展といった歴史的な概論に始まり、ディー
1社と研修契約を結ぶ必要があります。これ
士号)を取得することで、海外の修士課程
ゼルエンジン制御やインフォテインメント・
らの企業はバーデン・ヴュルテンベルクに
に進むことができます。今後は同州立大で
コンポーネントを例に挙げながら、電気/
拠点を持つ研修企業や機関であり、大学と
も修士課程を整える予定で、企業と連携し
電子システムのハードウェアおよびソフト
密接に連携しています。企業は科目の内容
て実践的なテーマに関する共同研究に取り
ウェア・アーキテクチャに焦点を絞った内
を明確にすることに貢献し、最もふさわし
組んでいく方針です。
容に進みます。リアルタイムシステムは基礎
論と実践
理2009
年初め、シュトゥットガルト産
的なテクノロジとして扱われ、AUTOSAR
い志願者を選定します。学生は企業が提供
40
RT J1.2009
ECUの基礎
Marcus Jenterの講義は「ECUアーキテク
する研修プロジェクトに参加し、自動車工
オートモーティブITの学習
学の分野を専攻した学生の大半は、最終試
オートモーティブIT分野のカリキュラムは、
実践的な課題の中でECUソフトウェアの開
験を経てドイツ南西部の自動車メーカーや
数学・物理・電気工学の原理といったエン
発手法を取り上げ、学生はASCETツールを
サプライヤに採用されます。
ジニアリング教育の基礎科目全般に及んで
使用して、ECUの制御機能をモデル作成し、
います。これらと並行して、教室での授業
ラピッドプロトタイピングシステム上でテス
やeラーニングを通じて予備の数学コースを
トします。また課題の一環で、クルーズ制
取ることができます。IT科目は、コンピュー
御モデルの開発にも取り組みます。アクセ
タやソフトウェアのテクノロジの実践的な
ルペダル操作量のアップロードや、Bosch
学びに重点を置いています。
Car Multimedia社製の計器クラスタ上で
といった今日の標準規格も紹介されます。
クルーズ制御の学習教材:ドライバー、制御、
制御対象、品質機能をシミュレーション
のバス・シミュレーション、同クラスタ上で
オートモーティブITを実践的に修得
の車速や警告の表示、スロットルバルブの
2008年、(2009年の大学名称変更に先立
制御などが含まれます。
つ)シュトゥットガルト産学連携教育大学
昨年の講義の目玉は、シュヴァーベン地方
(以下、シュトゥットガルト教育大)は、
ミュンジンゲンのテストトラックで行った野
外授業でした。ダイムラー社のエンジニア
イータス製のVME ハードウェアシステム
ES1000を使用してオートモーティブ・ラボ
を交えてECUプログラミングの取込みを実
ラトリの設備を整えました。今年には実験
地に学び、制御機能の仕様作成から自動
室の拡充も予定され、昨年度の科目履修者
コード生成、実験車両での検証、電気自動
がソフトウェアエンジニアリングのプロセス
2名が、ETASの後援を受けて共同研究プロ
ジェクトに取り組みました。 ETAS では、
オートモーティブITの学生達が学んだ知識
全体を経験しました。
を実際に応用できるように、興味あるテー
シュトゥットガルト教育大とETASの連携
実践的なセミナーで
マに関するインターンシップや研究論文の
シュトゥットガルト教育大のオートモーティ
計器クラスタを使用して
モデルベース開発
提供なども行っています。現実にさまざま
ブITに関する学習プログラムは、順調にス
プロトタイピングを行う
上 記 の ECU基 礎 課 程 に 続 き 、 Dr. Kai
Pinnowは「ビジュアル・プログラミングお
な問題に直面する学生は、ETAS製の開発支
タートしました。第一期の卒業生がすでに
学生Christian Luz(左)
援ツールを活用しながら解決を試みます。例
自動車メーカーのエレクトロニクス部門で
よびシミュレーション」をテーマに、オープ
えばドライブ・バイ・ワイヤのプロトタイプ
働いており、彼らの新鮮なちからは社内の
ンループ/クローズドループ制御回路のモ
を組み立て、ASCETを使用してプログラミ
開発推進に貢献しています。ETASのスタッ
デルベース開発について講義を行いました。
ングを行い、その結果からECUのコードを
フは、レクチャーの開催や実践的なプロジェ
この開発手法は、再利用性や品質の向上に
生成することができます。
クトの指導を通じて研修コースを支援して
車でのデータ適合に至るまで、参加者全員
、
とStefan Zick(中央)
プロジェクトを指導する
ETASのAndy Staats
(右)
います。これらのプロジェクトから、学生達
寄与するという点から、自動車のソフトウェ
ア開発プロセスに導入されています。学生
学生フォーミュラへの展開
はオートモーティブITの開発プロセスに習熟
は、ハザード警告灯や路面凍結、速度制御
2007年後期、オートモーティブITの学生達
するための実例の数々に触れることができ
といった具体例を通じて、先進的なソフト
の共同企画により、シュトゥットガルト教
ます。
ウェアエンジニアリング手法の基本的なプ
育大の学生フォーミュラ・チームが発足し、
シュトゥットガルト教育大の学生が取り組
ロセス手順(要求分析、実装、自動コード
ETASは一人乗りレーシングカーの応用に取
んだ共同プロジェクトは、彼らの熱心さと
生成、ソフトウェアのテスト等)を学びま
り組むチームの支援を行いました。ホンダ
専門知識、実践的なスキルにより、優れた
す。実際の課題では、ASCETを使用してブ
社製CBRエンジンを搭載し、独自の給排気
成果をあげています。学生達が開発支援
ロックダイアグラムやステートマシンを作成
システムを備えたクルマで、ECUインター
ツールの操作に習熟するように支援するこ
し、成果物を評価し合います。各種サプラ
フェースハードウェアと測定・適合ツール
とは、オートモーティブITの学習プログラム
イヤのツールを実際に利用することで、ツー
INCAが使用されました。全世界から集まっ
や若い技術者達に有効なものであり、ETAS
ルの現況を広く見渡す機会が得られます。
た学生チームによるコンペの模様は、学生
にも利益となるものです。
講義の終盤では将来のテクノロジにも言及
フォーミュラのプログラム(www.formu-
します。
la-student.de)に紹介されています。この
競技会は単に走りの速さを競うのではなく、
クルマをつくるための技術力や性能、企画
力、プレゼンテーション能力などが総合的
に評価の対象となります。
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