目 次 - 鳥取短期大学

北東アジア文化通信
No.33 2009.5.20
編集発行:鳥取短期大学
北東アジア文化総合研究所
〒682-8555 鳥取県倉吉市福庭854 TEL(0858)26-1811 FAX(0858)26-1813
目
た中国人が、琉球に漂着したり渡来した
りしたことにあった。これら中国人が久
米村に招かれて子弟の教育や風水の伝授
にも力を注いだといわれている。そして
17世紀後半になると、久米村の子弟の中
には、福州に留学して風水を学ぶ者も現
れ、風水が本格的に受容されていく。琉
球の特徴は、風水が国家事業に用いられ
たことにある。18世紀前半、久米村出身
次
沖縄県読谷村における
都市計画と風水
生活学科住居・デザイン専攻 浅井 秀子
韓国でのモバイル通信体験談
さいおん
の蔡 温 が宰相となり、風水を用いた大規
模な事業を実施した。蔡温の一連の事業
は、近世琉球の景観を新たに造り出し、
その環境にも深い影響を与えることにな
った。
琉球の風水思想については、道教的信
仰の日本伝来の調査研究の第一人者であ
る窪徳忠著『沖縄の風水』や、都築晶子
著『琉球と中国の神々』に論述されてい
るので参照されたい。ここでは、現代に
おける地域将来構想のキーコンセプトと
して「風水」が用いられている事例とし
て、沖縄県読谷村の都市基本計画におけ
る風水の関わりについて述べる。
―2005年、2006年および2009年―
生活学科情報・経営専攻 野津 伸治
受贈図書
沖縄県読谷村における
都市計画と風水
生活学科住居・デザイン専攻 浅井 秀子
受贈図書一覧
読谷村の歴史と特性
読谷村は、沖縄本島中部の西側にあっ
はじめに
て東シナ海に面し、那覇市より28㎞に位
近代以前の沖縄、つまり琉球は中国と
置する。海に突き出た半島状の地形をな
朝貢関係を結んで、直接に海上交易を営
し、中央部で南北に国道58号線が縦断し
んでいた。伝来では、既に14世紀末には、 て い る 。 人 口 3万 8千 人 余 (2007(平 成 19)
琉 球 に 中 国 人 (福 建 人 )が 移 住 し 、 後 の
年4月現在)、面積は35.17k㎡で、本島中
「久米村」を築いて交易に従事していた。 部においては沖縄市(48.23 k㎡)に次い
琉球に風水がいつ伝来したのかはっきり
で2番目の大きさで、北は恩納村、東は
しないが、17世紀前半に風水に通じてい
沖縄市、南は嘉手納町に隣接している。
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1946年
1972年
2000年
図 1.読 谷 村 に お け る 軍 用 地 面 積 の 変 遷
(「平和の炎 Vol.13」pp.11-13より転記)
読谷村は、古くは中山国の最北端にあ
ったことから、「うふにし(大北)」と呼
ばれた。琉球の古謡集「おもろさうし」に
は、「よんたもざ」「よんたむざ」と記され
ている。地形が半島となって海に突き出
ていることから、「さきよた(崎枝)」とも
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呼ばれた。
戦前は、山や海の幸に恵まれた自然豊
かな村で、沖縄県内でも有数のサトウキ
ビ栽培が盛んな村として有名であった。
しかし第二次世界大戦において米軍の上
陸地点となり、砲撃は激烈を極め、壊滅
的な打撃を受けて焦土と化した。その後、
村土全域が米軍占領下におかれ、米軍用
地として接収された。1946(昭和21)年11
月に第一次復帰が実現したが、村土の
95%が 米 軍 占 領 地 で あ っ た 。 1972(昭 和
47)年の日本復帰時でも米軍占領地は73%
を占め、その後返還が進められてきたと
はいえ、未だ村面積の約45%を占めてい
る ( 図 1) 。 そ の た め 読 谷 村 は 「 基 地 の
村」という戦後を歩むことになる。
その中で新しい村づくり「人間性豊か
な環境・文化村」を目標に掲げ、「文化
村づくり」に取り組んだ。この文化村構
想は、読谷山花織の復興、陶芸の拠点と
してのヤチムンの里建設等をはじめ、軍
用地跡地の平和利用へと繋がっていった。
読谷村の都市計画と風水
1992(平成4)年の都市計画法改正を受
けて、「市町村の都市計画に関する基本
的な方針(都市計画マスタープラン)」と
「新用途地域」を定めることになった。
これを受けて読谷村においても、都市部
門では初めての全体計画である「読谷村
都市基本計画」いわゆる都市計画マスタ
ープランを1995(平成6)年3月に策定した。
その中で将来地域像を象徴する形として、
ひ ほう か まん く が に か ん
表現されたものが「飛 鳳 花 蔓 黄金環 」であ
る(図2)。これは韓国釜山市在住の風水
師の見立てによる言葉をもとに具象化し
た形である。そして飛鳳花蔓黄金環につ
いて以下のような説明が付記されている
(「読谷村都市基本計画」1995年(平成7
年)3月,p.17転記)。
読谷村の将来地域像
21世紀は、地球的視野に立った、自然
と共に生きる安定した地域社会建設の時
代である。沖縄には、自然と人とを結ぶ
地域社会的な意識、フンシー(風水)が生
きている。この中に織り込まれている自
然との調和力を未来へと投射し、読谷村
の地形形象を基本に将来像を次に示すよ
うに「飛鳳花蔓黄金環」とする。
飛鳳花蔓黄金環
読谷村は、残波岬を頭として東シナ海
たこうやま
に飛び立つ鳳である。読谷岳から多幸山
ざ
き
み じょう
をへて座喜味 城 にいたる山並みは、飛
翔の風をはらむ羽である。鳳はサンゴの
はなづる
花 蔓 を引き、海の花畑でニライカナイか
か
り よし
ら来訪する嘉 利 吉 を迎える。この嘉利吉
くがにかん
を、座喜味グシクを頂きとする黄金環 で
受け止める。座喜味グスクは、風を宿す
くさ てぃ
うふ みち
腰当 であり、大路 のカジマヤーでは、人
・物・文化が結ばれる。そして西に賑わ
いをおき、東を粛として山裾を養い長田
川の恵みを活かし、過ぎたるを流す。
図2.将来像-飛鳳花蔓黄金環
読谷村は、これまで第1次と第2次総合
計画基本構想において、「人間性豊かな
環境文化村」を目標に掲げ、社会基盤の
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整備と文化村づくりの土台を築き上げて
きた。「第3次総合計画基本構想
(1998(平成10)年~2007(平成19)年)」で
は、21世紀につなぐ更なる発展を目指し
「恒久平和」「自主自立」「共生持続」
を基本理念に、新たな目標・あるべき姿
を琉歌で、「ゆたさある
ちむぐくる
さ き ふ く
る は な や
ふん し
風水
ま さ る
優る
む ら ぬ みあ てぃ
肝 心 咲き誇 る 文化 や 村 の 指針 」 と
した。
「第4次総合計画基本構想(2008(平成
20)年~2017(平成29)年)」では、「平和
共存・文化継承・環境保全・健康増進・
共生持続」を基本理念に、それらのある
べき姿として、「ゆたさある
ま さ る ちむぐくる
さ き ふ く
る は な や
ふん し
風水
がんじゅう ぬ し ま
優る 肝 心 咲き誇 る 文化 健 康 の 村 」
としている。「ゆたさある風水」とは、
自然・土地利用・住環境に共通する「豊
かな環境」を目指すことである。「優る
肝心」は、「共に生きる」「心と人づく
り」を表現している。「咲き誇る文化」
は、「活力ある社会」すなわち文化・伝
統工芸・産業等の活力ある社会づくりを
目指すことである。「健康の村」は、村
民全員が健康で生き活きとし、元気な村
民の力により村づくりに取り組むことを
目指すことである。
おわりに
このように読谷村において、風水が将
来構想のあるべき姿として挙げられる理
由としては、風水に由来する「フンシ
ー」の概念が日常生活の中で息づいてい
たからに他ならない。しかし沖縄県内の
自治体で、地域総合政策において風水を
活用した事例はない。このようにみてみ
ると、読谷村における都市基本計画と風
水の関わりは、中国から伝来してきた風
水思想に留まらず、戦後の日本復帰から
現在に至るまで辿ってきた歴史をも集約
的に表現している。つまり読谷村が「基
地の村」から「文化村」へと整備を進め
ていく上で、伝統的住環境を活かした地
域づくりや、自然環境の維持・保全を重
視した概念を取り入れたことにあるとい
える。これは、現在の日本における「風
水」のイメージを一新するものであって、
一般的な「運を呼び込む占い」という迷
信的イメージとはかなり違っている。
韓国でのモバイル通信体験談
―2005年、2006年および2009年―
生活学科情報・経営専攻 野津 伸治
著者は、2005年、2006年、および2009
年にソウルを中心に韓国でのコンピュー
タ、移動体通信、GPSと電子地図、デジ
タル放送等を利用した。ここでは日本人
が韓国でこれらを利用する場合のポイン
トを解説する。
まず電源について、電圧は日本と違い
AC220Vで、形状もC型もしくはSE型であ
る。電池類や自動車のシガーライターか
らの電圧・形状は世界共通である。した
がって、持参する電子機器のACアダプタ
がユニバーサル電源であれば、形状変換
器を日本の空港等で入手すればよい。
次に各種記憶メディアについては、
SDHCカードやメモリースティック等は世
界標準であり、ビデオカメラやデジタル
カメラの記憶媒体とし利用できる。為替
レートも考慮し、ソウル市内の「龍山」
や「江辺」などでの購入もコスト的に魅
力がある。
第3番目に日本からノート型パソコン
を持参すれば、ホテルや喫茶店等での有
償 ・ 無 償 の 無 線 LAN ( ほ と ん ど が
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IEEE802.11b/g)を利用でき、以前のよ
うにモデム形状変換アダプタや音響カプ
ラの持参は不要である。トラブル時や現
地でのパソコン購入(ハングルキーボー
ド以外は入手が難しい)後の利用に備え
て、日本語版のOS、オフィス・ソフトお
よびワクチンのDVD-ROM持参が望ましい。
現地で自由に利用できるパソコンが確保
できるなら前述の3点をUSBメモリーにイ
ンストールし利用するのが便利である。
逆に日本ではハングルキーボードが入手
しやすいとは言えないが、英語キーボー
ドでの入力とオフィス・ソフトの多国語
対応機能の発展でハングルの表示・印刷
・入力は簡単にできるしWeb閲覧や電子
メールのやり取りもほとんど問題がない。
第4番目に各種カメラの利用について
である。最近のこれらの機器はGPS機能
を持っており、撮影時点での緯度・経度
・時刻を映像に記録してくれるので、あ
とで電子地図(例えば、Googleマップな
ど)と同期させて、移動地点のトレース
や映像の整理に便利である。また解像度
もイメージスキャナーの代替的な利用も
可能となってきた。これらは目視で文字
の識別は可能だが、ハングル語の
OCR(Optical Character Reader) ソ フ ト
利用は難しい。フルハイビジョン映像の
記録は、従来以上の臨場感を再生時に感
じられる。
第 5番 目 に 、 GPS(Global Positioning
System)と電子地図についてである。こ
の 二 つ を 利 用 し て PND(Portable
Navigation System)が可能である。日本
国内で入手できるGPSは当然世界標準で
どこでも利用できるが、電子地図の入手
は韓国用に限らず選択肢がほとんどない。
英語表記なら米国Garmin社のもののみで
ある。また現地でも入手できるものはす
べてハングル表記であるのでハングルを
読めない者は利用しにくい。
第6番目として電話についてである。
固定電話は複数のキャリアがあり、テレ
フォンカードは使い分ける。また公衆電
話は国際電話が故障で使えないものもよ
く出くわした。携帯電話は、韓国政府の
保護政策のせいで、長らく日本とともに
携帯電話世界のガラパゴス島状態( SIM
ロック等の問題など)であった。電話機
の利用キャリアの制限(SIMロック)が
まだあり、プリペイドのSIMカードの販
売はなされていない。プリペイド携帯電
話の販売のみである。もちろん日本の携
帯電話を持参し、国際roaming契約をし
てあれば3Gの通話・通信は可能である。
しかし、現地の隣の人にかける場合も国
際通話になるのでとても割高である。同
じアジアでも台湾、香港、タイなどはこ
のあたりが充実している。また特に地下
鉄内での通話マナーについては日本と対
照的である。
第7番目にテレビ放送についてである。
デジタル放送は開始済みで、移動中の
視聴はワンセグ・チューナー中心の日
本と異なりほとんどがフルセグメント
も対応しており、機器のコストも安い。
放送形式が異なるので日本と互換性は
ない。ホテル等では日本のNHKのBS放送
が視聴できる。巨大なパラボラアンテ
ナとチューナーを用意すれば、韓国の
家庭でも技術的には可能である。釜山
なら対馬向けの地上波デジタル放送も
受信可能である。逆に日本でもスカパ
ー !の 791chで韓 国KBSの 番組が 視聴 可
能 で あ る 。ま た 鳥 取 県な ら 直 径 65cm程
度のパラボラアンテナで韓国KBSの直接
受信も技術的に可能である。画質の低
下 も妥協 でき れば Internetでのスト リ
ーミングでの視聴が可能なものもある。
第8番目に、各種の音楽CD-ROM、映画
の DVD-ROMお よ び Blu-ray Discに つ い
てである。日本の多くのミュージシャ
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ン の 音 楽 CDが 現 地 で 割 安 で 販 売 さ れ て
いる。Region-Codeが異なるため日本で
は見られない映画DVDと違い、はるかに
高画質・音質である映画 Blu-ray Disc
は多くが All-Regionのため、日本で も
視聴可能である。その場合サブタイト
ル(字幕言語)はハングル・英語はも
ちろん、中国語・フランス語・スペイ
ン語まではあるが、日本語はほとんど
ない。販売価格は為替レートの関係で
半額以下の場合もある。
最後に著者は情報処理が専門であり、
韓 国 文 化 ( 映 画 や TV番 組 の 影 響 で ) や
人々(現地の知人やホームステイ受け
入れなどで)にはとても関心があるが、
残念ながらハングルは全く読み書きが
できないし、もちろん話すことも聞く
こともできない。何事も英語表記や漢
字表記が頼りである、したがってコミ
ュニケーションは専ら英語である。好
奇心だけは旺盛なつもりなので一回訪
れると100人程度には話かけている(道
を聞くことも含め)。それでも極めて
限られているが、知り合いも少しずつ
増えている。改めて前述の機器類も駆
使するのはある意味、安心の確保のた
めで、人間同士のコミュニケーション
の足しにはならないことも認識してい
る。
◆平成21年度運営委員紹介◆
所長
野津和功
学術委員長
中村光彦
国際文化交流学科
荒井
住居・デザイン専攻
浅井秀子
食物栄養専攻
綾木義和
幼児教育保育学科
齊木恭子
事務局長
髙木新一
優
◆「北東アジア文化研究」第28号
2008年10月◆
外務省『竹島』批判
内藤正中
明治政府の竹島=独島認識
朴
炳渉
米国の農産物貿易構造と輸出戦略
―2000年代の動向を中心に―
◆受贈図書◆(H20/10/1~H20/12/17受入分)
・岩田書院
「地方史情報」089
・大谷大学真宗総合研究所
藤本晴久
<研究ノート>
「研究所報」No.53
・神奈川大学日本常民文化研究所
チベット自治区の歴史と帰属問題について
周
非文字資料研究センター
建中
<資料>
ニューズレター「非文字資料研究」No.20
・学習院大学東洋文化研究所
鳥取県民話サークル連合会の歩み
酒井董美
「東アジアにおける陽明学」
「中日陽明学者墨跡」
・関西外国語大学国際文化研究所
◆新着図書・雑誌◆
「THE JOURNAL OF INTERCULTURAL
・「イオ」H20/10-12月号
STUDIES」No.34&35
(朝鮮新報・時報鳥取支局)
・国立国会図書館関西館
・「統一評論」H20/10-12月号
「アジア情報室通報」第6巻第3号
(朝鮮新報・時報鳥取支局)
・(財)鳥取県国際交流財団
・月刊「スッカラ」H20/9-H21/3月号
「とっとり国際通信」第87号,88号
(アートン)
・日本の朝鮮統治―「一視同仁」の建前と実相―
・(財)とっとり政策総合研究センター
「TORCレポート」No.31
(学術出版会)
・韓国農業経済論―生産物・組織・政策の経済分析―
・(財)日韓文化交流基金
「(財)日韓文化交流基金NEWS」No.47
(学術出版会)
・島根県教育庁文化財課古代文化センター
・葬送墓制研究集成 全5巻(名著出版)
【韓国の学術と文化シリーズ(法政大学出版局)】
「しまねの古代文化」第15号
・1「韓国現代政治の条件」
「古代文化研究」第16号
・2「朝鮮王朝社会と儒教」
「調査報告書39
平塚運一古瓦コレクション資料集」
・3「日清戦争期の韓国改革運動」
「出雲藍板締めの復元研究」
・7「朝鮮近世の御用商人」
・島根県立大学北東アジア地域研究センター
・8「韓国の近現代文学」
「NEAR News」第29号
・9「韓国環境運動の社会学」
・成蹊大学アジア太平洋研究センター
・10「韓国社会とジェンダー」
「CAPS Newsletter」100号
・13「春香伝の世界」
・朝鮮大学校図書館
・15「黄金の海・イシモチの海」
・17「韓国政治のダイナミズム」
「朝鮮大学校 学報 vol.8(日本語版)」
・21「朝鮮民族解放運動の歴史」
・都留文科大学附属図書館紀要編集委員会
「都留文科大学研究紀要」第68集
・22「ソウルにダンスホールを」
・同志社大学人文科学研究所
・23「韓国の藁と草の文化」
「社会科学」第82号
・26「現代韓国の地方自治」
・27「朝鮮後期漂流民と日朝関係」
・・・
・30「韓国家族制度の研究」
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ありがとうございました。
・・・