Mr. Bassman （ベースマン列伝）　Vol.28 ジャズにおいてベース弾きとは、縁の下の力持ち、水先案内人といったやや日陰の存在。おまけに、ウッドベースなら持ち運びも大変･･･。だが、黙々とベースをウォーキングさせ、バンドをスイングさせることに魂を注ぐベースマンが、一度化けの皮を剥ぐともの凄い名演･名盤が生まれるのだ。このコーナーでは、そんなジャズ・ベースマンの偉業を称えるとともに、ジャズ・ベースの素晴らしさを伝えていきたい。 Slam Stewart 【スラム・スチュアート】 Profile Photo by William Gottlieb 1914 年 9 月 21 日、米国ニュージャージー州イングルウッドで生まれる。本名は Leroy Elliott Stewart。元々ヴァイオリンを弾いていたが、 20 歳の時にベースに転向。ボストン音楽院在学中にヴァイオリンを弾きながら歌うレイ・ペリーを見て影響を受け、同じスタイルをべースで試み、後のアルコ（弓弾き）とユニゾンで歌うスキャットによる独自のスタイルを確立する。 37 年にスリム・ゲイラードとのデュオ “ スリム＆スラム ” を結成し、翌 38 年に発表した曲「フラット・フット・フルージー」が大ヒットを記録する。 40 年代に入るとレスター・ヤング、アート・テイタム、ベニー・グッドマン、ファッツ・ウォーラー、コールマン・ホーキンス等のグループで活躍し、 45 年にはチャーリー・パーカーも在籍したディジー・ガレスピーのバンドに参加。また、自己のトリオやクインテット等でも活躍した。同 47 年にジーン・ノーマン主催の『ジャズ・ジャスト・コンサート』でライオネル・ハンプトンのコンボで演奏した「スターダスト」のソロは名演と称されている。 50 年代末から 60 年代にかけて黒人女性歌手ローズ・マーフィーと組んでツアーに出るなど、晩年もライヴ活動やリーダー・アルバムを発表し、精力的に活動を続けた。 1987 年 12 月 10 日、ニューヨーク州ビンガムトンで息を引き取る。享年 73 歳。 “ 歌うベース奏者 ” ～ハミング・ベースで名を馳せた名ベーシストハミング・ベースで名を馳せたスラムのスタイルは、後年メジャー・ホリー等に継承されたが、その独特の存在感はジャズ・シーンだけに留まらず、当時の映画界にも注目され、ジャズ・ベーシストとして出演を果たしている。 1941 年の映画『Hellzapoppin』には、スリム・ゲイラードとの “ スリム＆スラム ” で出演。 1947 年の映画『Boy! What a Girl!』には、ベリル・ブッカーとジョン・コリンズを率いた自己のトリオで出演。また出演ではないが、 1993 年の映画『Swing Kids』では、ベニー・グッドマンが演奏した “ スリム＆スラム ” の大ヒット曲「フラット・フット・フルージー」が使用されている。 SS's Great Album The Walker's 24 1970 年代に仏のレーベル「Black & Blue」に残したリーダー・アルバムの他、サポート・アルバムでは、アート・テイタム (p) と共演した『Art Tatum Trio 1944』等も秀逸です。 Complete Columbia Master Slim Gaillard & Slam Stewart （Definitive : DRCD-11190 [Import CD]）ボウイン・シンギン・スラムスラム・スチュアート（コロムビアミュージック： COCB-50422）名デュオ “ スリム＆スラム ” が放った 56 曲を 3 枚の CD に収めた豪華アルバム。大ヒット曲「フラット・フット・フルージー」が 1 曲目を飾る。録音は 1944~45 年。スラムの記念すべき初リーダー・アルバム。 “ 歌うベース奏者 ” ＝スラムのハミング・ベースの魅力が満載。全 12 曲収録。スター・ダストライオネル・ハンプトン（ユニバーサル・ミュージック： UCCU-9813) SHUT YO' MOUTH! Slam Stewart & Major Holley （Delos : DE-1024 [Import CD]） 1947 年に行われたコンサートの実況盤。このライオネル・ハンプトンのコンボでの「スターダスト」のソロは、スラムの名演のひとつとして有名。録音は 1981 年。ハミング・ベースを継承した後輩ベーシスト＝メイジャー・ホリーとの共同名義アルバム。内容とタイトルもいい。全 9 曲収録。