The Murata Science Foundation 法教育に関する国際比較研究 -韓国・アメリカ・フランス・フィンランド Etude comparative sur l’éducation du droit: la Corée, les Etats-Unis, la France et la Finlande. H23助人03 代表研究者 大 村 敦 志 東京大学 大学院法学政治学研究科 教授 Atsushi Omura Professor, Graduate School for Law and Politics,University of Tokyo Au Japon, depuis dix ans, on a commencé à s’intéresser à l’éducation du droit. Car l’introduction de système du jury dans la procédure pénale nécessite de diffuser les connaisance et méthode du droit parmi les citoyens-profanes. Ici, il faut la distinguer de l’enseignement du droit donné au niveau de l’enseignement supérieur. On réserve l’expression ‘’l’éducation du droit ‘’ pour l’enseignement primaire et secondaire. Le ministère de la Jusitce a organisé d’abord un groupe d’étude, ensuite une commission de promotion ‘’Education du droit ‘’. Certains pédagogues, partisants de ce movement, ont cité à plusieurs reprises le cas des Etats-Unis comme modèle à adopter. Aussi le groupe d’étude a cité non seulement le cas des Etats-Unis, mais ceux de la France et de la Finlande dans son rapport final. Et depuis récemment le Ministère vient d’étudier le cas de la Corée, où le Gouverement coréen joue un role important. C’est ainsi qu’il faudrait choisir les quatres pays tells que la Corée, les Etats-Unis, la France et la Finlande comme les objets d’une étude comparative sur l’éducation du droit. Certes certaines informations sur ces quatre pays sont déjà données, mais il nous semble que l’on n’a pas encore connu qu’une partie de la réalité de chaque pays. Nous avons essayé d’en trouver un autre aspect. Les séjours relativement long, pas un simple visite pour la recherche, nous permettent d’arriver à la connaissance plus profonde. Cette étude comparative nous conduira, avec un autre recherche historique, à une théorie sur l’éducation du droit au point de vue juridique. ことが必要になっているという事情が存する。 研究目的 法務省は、法教育研究会や法教育推進協議 「法教育」とは、狭義では、主として初等・ 会を設けて、 「法教育」の発展を目指している 中等教育段階における法の教育を指し、高等 が、法教育研究会が公表した報告書「はじめて 教育段階における「法学教育」とは区別される。 の法教育」においては、アメリカの事例と並ん このような意味での法教育に対する関心は、こ で、フランスやフィンランドの事例が紹介され こ10年来高まりを見せている。その背後には、 ている。また、最近では、政府主導で法教育が 司法制度改革の一環として裁判員制度が導入 行われている韓国の事例も関心を集めている。 され、法に関する知識や方法を市民に教える しかしながら、これらの4つの国々における ─ 643 ─ Annual Report No.27 2013 法教育の実情やその背景事情については、必 る法教育が求められる理由は必ずしも明らかで ずしも十分に知られているとは言えない。本研 はない。 究は短期の訪問調査によるのではなく、一定期 第三にフランスであるが、この国では教育の 間にわたって研究対象国に居住し、継続的な 世俗性が強調されており、市民の育成が教育 観察や関係者との意見交換を行うこととを通 の大きな目的とされている。教育全体がその方 じて、法の教育の見えざる諸前提を明らかに 向を向いていると考えることもできる。また、 しようというものである。 子ども議会など子どもたちの実践の機会も設 けられている。各種の副読本が「個人」ベース 概 要 でスタートしながら「共和国」に至っているのが 本研究は、日本の法教育に対して、モデル 興味深い。ただし、特別な法教育は存在しな としての意味を持つとされている韓国・アメリ いようであり、かつ、パリ弁護士会の活動もと カ・フランス・フィンランドにおける法教育に ても活発というわけではない。 関する比較研究である。 第四にフィンランドであるが、この国も特に 4ヶ国における法教育の状況につき、簡単な 法教育に熱心であるようには見えない。出版物 要約をし、対比をしてみよう。 が充実しているというわけではない。ただし、 第一に韓国であるが、この国の法教育の特 この国は、 「社会」というものの重要性が、外部 徴は、その「制度化」にあると言えるだろう。 に現れやすい国であるように思われる。学校教 法教育は法務部が推進する政策であり、高等 育もまた、この点を重視しているように見える。 学校では「法と社会」が科目化されている。そ では、日本はどうだろうか。 の背後には、非行の予防という目的があるが、 まず第一に、法務省が法教育を推進してい 最近では、校内暴力との関係が関心の対象と るという点では、韓国に類似する。しかし、国 なりつつある。他方、韓国ではソウル弁護士会 家や社会のレベルで考えてみると、フランス・ を訪れた。弁護士の活動という観点から見る アメリカ・フィンランドにおける市民教育に対 と、法教育は必ずしも盛んであるようには見え 比しうるようなものが展開されているわけでは ない。さらに、限られた知見の範囲ではあるが、 ない。 児童向けの絵本・副読本類が発達していると 第二に、韓国やアメリカにおいては、非行や も言えない。 刑事事件が問題になり、フランスやフィンラン 第二にアメリカであるが、この国において法 ドにおいては、異民族の統合が問題になってい 教育がどの程度まで普及しているのかは定かで る。これに対して、日本においてはそのような はない。法教育支援法があって様々な試みは 事情があるわけではなく、むしろ裁判員制度へ なされているようではある。また、弁護士たち の対応が強調されている。 の中にも熱心な人たちがいるようではある。他 第三に、日本では弁護士会が法教育に力を 方、公立図書館によせ児童書店にせよ、広い 注いでいる。これは特筆すべき特徴である。ア 意味での市民教育に対して熱心であり、その メリカでも同様かもしれないが、日本ほど熱心 基盤をなす書籍類も豊富に揃っている。しか であるかどうかはわからない。韓国・フランス し、それは市民教育の話である。 「草の根」の では弁護士会は一定の活動を行っているが、 市民教育は充実しているが、これとは区別され 必ずしも十分ではない。 ─ 644 ─ The Murata Science Foundation 第四に、アメリカ・フランスは、広く市民教 育にかかわるような出版物が多い点にも特徴が ある。他方、日本では、法学の側に、法教育 と類似した試みがあるのが大きな特徴であろう。 法教育の基礎理論の構築にあたっては、以 上のような比較の結果を念頭に置かなければな らない。 −以下割愛− ─ 645 ─
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