取材:布施雄一郎/編 集 部 撮影:桧川泰治/小貝和夫 写真提 供:ウォーキン PRESENTS ジャズ・ギター専門店ウォーキン・プライヴェート・ブランド アーチトップ・トリビュートの挑戦 実用面にフォーカスし、虚飾を配した“Made in Japan”クオリティのギター 1998年、東京・渋谷に店を構えたジャズ・ギター専門店ウォーキ ン。歴史的アーチトップのヴィンテージや新作の販売だけではなく、 修理やメンテナンスにおいてもトップ・プロをはじめ、絶対的な信頼 を寄せるプレイヤーは多い。また、ジェシ・ヴァン・ルーラー、ウル フ・ワケーニウスのギター・クリニックなども積極的に行ない、ギタ ー・ショップの枠を超えた日本を代表するアーチトップ・ギター専門 店だ。そのウォーキンが、2010 年秋にプライヴェート・ブランド “Archtop Tribute”を発表した。これまでに膨大なアーチトッ プ・ギターの流通、修理を行なってきた同店ならではの高いクオリテ ィと、ジャズ・ギターに対する譲れないこだわりによって完成したこ の “アーチトップ・トリビュート”は、いずれも大きな反響を呼んでい る。ブランドの誕生のいきさつ、そして現在入手できるラインナップ を、試奏を交えてじっくりと紹介しよう。 Archtop Tribute製品の売り上げの一部を、義援金とさせて頂きます この度の大震災にて被災されました皆様、ご家族、ご友人の方々に、心よりお見舞い申し 上げます。また、安否不明な方々のご無事を、心よりお祈り申し上げております。 弊社では、株式会社寺田楽器様ご賛同のもと、Archtop Tribute製品の売り上げの一部 を、 「日本赤十字社 東日本大震災義援金」 に募金させて頂いております。 日本製であることの素晴らしさを謳った弊社製品が、未曾有の大災害を乗り切らんと する被災地の皆様に、僅かばかりでもお役立てを頂くことが叶うのであれば、それはまた私 達にとっても、大きな心の支えとなります。願わくは、Archtop Tribute製品オーナー各 位にも、今回の募金につきましてのご理解を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。 重ねまして、被災されました皆様のご無事とご健康を、心よりお祈り申し上げております。 有限会社ウォーキン 社員一同 試奏 高内"HARU"春彦 (http://www.haru-jazz.com 田辺充邦 http://tanabe-mitsukuni.com 馬場孝喜 http://www.geocities.jp/babatakayoshi/ 問:ウォーキン渋谷駅前店3階フロア(TEL.03-5467-1625) 、 渋谷駅前店4階フロア(TEL.03-5467-1627) WEB:http://www.walkin.co.jp ここで紹介している記事は、ジャズライフ2010年9月号、10月号、11月号、12月号、2011年5月号、6月号に掲載したものを再編集したものです。 2010年秋――アーチトップ・トリビュート101の誕生 アーチトップ・ギターの現在 ターをプロデュースしようというもので、2010年 秋にスタートした。ちなみに“101” とは、入門、初 ジャズライフ2010年 9月号掲載 ディテール かつて入門用や安定したサブ・ギターとして評 級を意味する。 まずデザインは、60年以上にわたってジャズ・ 価の高かった、10万円前後から10万円台の新品日 この企画で、ウォーキンとコラボレーションす ギターの定番モデルとして愛されている “イチナナ 本製アーチトップ・ギターは、景気や為替相場の変 る楽器メーカーは、アーチトップの量産にかけて ゴ” をモティーフとし製作された。ブランド名は偉 動、木材資源の枯渇と高騰、原油高による製造コス は、世界でも屈指の実力を評価されている寺田楽 大なモデルへのリスペクトを忘れず“Archtop トの上昇などの理由により、残念ながら現在入手す 器。材料の仕入れに始まり、その材料の加工、組 Tribute” と名付けられ、モデル名は “AT101” 。価 ることは難しい。 み上げ、仕上げ、といった行程で進められ、その 格は、税別ながら99,800円というロー・プライスを しかし、 「10万円程度で良いアーチトップ・ギタ すべてにおいて、日本製ならではの優れた品質管 実現させている。採用予定パーツは、優れた精度の ーを」 といった問い合せはウォーキンに常にあり、 理が行なわれる。 日本製汎用パーツを使用することにより、品質の維 なんとかリーズナブルなエントリー・モデルを販売 できないものかと、以前からスタッフ間で検討を続 けてきた。 そして、このリクエストに応えるべく立案され たプロジェクトこそが、Archtop Tributeの始ま りだった。 “101 (ワン・オー・ワン) ” と銘打たれた この企画は、スタンダード・モデルの販売価格を10 万円未満に設定し、充分なアフター・サービス体制 の下、エントリー・ユーザーはもちろん、プロの使 用にも耐えうる高いクオリティのアーチトップ・ギ ボディのトップとバックには、4.4mm厚のウォーキン特注合板 “Rich Presence Plywood” を採用。フロント・ポジションに 設けられたピックアップ・ホールは、この時点ではまだ仮の状態だ。 セル・バインディングの巻き付け行程を待つ、半完成のボディた ち。スタンダード・モデルの “AT101” 、上位モデルの “AT102” ともに、ボディ自体は共用だ。 1 持と共にコストは大幅な軽減が可能となった。ピ イウッドだ。より存在感のあるサウンドを目指し、 いては、くせがなく、またマッチングも良好だっ ックアップはフロント・ポジションのみ、ボディの 本プロジェクトのために特注製作されたこの合板 た、アルニコ・マグネット採用の日本製ハムバッカ セル・バインディングはシングルで、ネックにバイ 材、 “Rich Presence Plywood” は、メイプル/ ーに決定した。そして、今回もう1機種、P-90スタ ンディングはなく、ポジション・マークはドット。 スプルース/スプルース/メイプルという4層構 イルのシングルコイル・ピックアップをマウントし まさに、実用面のみにフォーカスし、装飾を極限ま 造を持ち、約4.4mmという、適度な厚みを持たせ た “AT101 Classic” もラインナップされた。 でそぎ落としたモデルと言ってもよいだろう。 た仕様に仕上げられている。これは倍音を豊かに フィンガリングのこだわり セットアップのこだわり 含みつつ音痩せのないエレクトリック・ジャズ・ ギター・トーンを目指したもので、生鳴りのヴォ 完成したギターは、寺田楽器で出荷前の最終確認 ただし、あえてコスト・アップを選択した部分は リューム感よりも、むしろアンプリファイズした を終えた後、一旦すべてがウォーキンの自社工房へ 何点もある。そのひとつが指板。 “心地よいフィンガ 際の使い勝手の良さにフォーカスした故のこだわ 送られ、ナットやブリッジの仕上げに入る。なおそ リング” の実現のため、指板のアール形状を整える行 りだ。 の仕上げについては、必要以上に弦高を下げるよう 程でも細心の注意を払い、フレッティング行程の一 連の作業には、より多くの時間を割く。これは現在、 ハードウェアの選定 な “攻めた” セッティングではなく、プレイヤーの好 みによる調整の余地を残した、 “ニュートラルな状 寺田楽器で製作されている最上級の機種にのみ採用 “AT101” は、マウントされるハードウェアももち されている手法と、まったく同一の作業工程である。 ろん日本製で組まれる。ペグは世界的に定評のある れた後、さらに演奏面のチェックや微妙な調整が行 GOTOH製の “SD90” が採用される。また、ジグザ なわれる。 グ・スタイルのテールピースも、リーズナブルで高 ここまで徹底してなお、プライス・タグの表記は 精度な国内製作品で構成される。ピックアップにつ 99,800円なのだ。 ■ プライウッドのこだわり さらにもうひとつこだわったのが、合板材=プラ Made in Japanに拘る その理由とは…… アーチトップ・トリビュートが、なぜ「日本製」 であることに 拘るのか。そこにはいくつかの理由がある。そのひとつは、た とえばスタビリティ=安定性だ。これはほとんどすべてのギタ バ イ ン デ ィ ン グ 巻 き 付 け ーに当てはまることだが、主な材料が「木」 である以上、多少の 差はあれど、ギターには経年変化や季節毎の変化が生じる。そ れは木が本来に持つ固有の性質であったり、あるいはシーズニ ング (材料の乾燥工程) の問題であったり、また時には、ギター のおかれた気候や管理の状況等、外的な要因によることもある だろう。日本のように四季の寒暖、乾湿の差が大きければ、な 態” を目指しているという。そうして店舗に納品さ ネ ッ ク ・ ジ ョ イ ン ト 99,800円に設定されたAT101のボディには、シ ンプルなシングル・バインディングが採用される。対 して上位モデルのAT102は、より “イチナナゴ ” テ イストなトリプル・バインディングを採用。 指 板 の 接 着 ごく僅かな狂いが全体に及んでしまうため、ネックと ボディのジョイント工程には非常に繊細な作業が要 求される。この組み上げ時の精度の高さと、後々の 狂いの少なさは、日本製ならではの魅力だ。 ネ ッ ク ・ シ ェ イ プ おのことである。それはまた、ギターが「生き物」 にたとえられ る所以でもあり、味わいとも言えるのだが、過度の状態の変化 は、当然プレイヤーのストレスに直結する。 現在、世界中の多くの有名ブランドがOEMで日本製のフル ローズウッドの指板は、AT101がシンプルなバイ ンディングレス仕様、AT102はシングル・バウンド 仕様となる。ネックはいずれもマホガニー材だが、 AT102にはより良質な1ピース材を採用。 アコをリリースしているのは、そんなストレスがなく、仕上が りの精度だけではない長期的な安定性が評価され続けてきた結 果でもある。同一の工場設備で数十年に渡ってフルアコを製作 し続け、少しずつ改良を重ね、そしてそのノウハウを蓄積した 上で製作される日本製の製品には、安定性の面で圧倒的なアド ヴァンテージがあるのだ。 また、細かな仕上げにも気を遣う日本人気質と、良い意味で 木 地 の 研 磨 作り手としてだけではなく、弾き手としての勘どころ も要求される工程だ。この後、全体の塗装工程を経 てから指板面のシェイプを整える作業に入り、続い てその指板にフレットが打ち込まれる。 下 塗 り の職人気質が、ギター1本1本の仕上がりに反映される点も大 きな強みだ。そして、多くの日本の楽器工場では、音楽が好き な製作スタッフたちが、実際に製作の現場で作業にあたってい るという点も見逃せない。実際に弾き手が作ったギターか、そ 写真はfホール断面部分の木地を仕上げている様子。 直接サウンドに影響する部分ではないが、こうした細 やかな仕上げの美しさも、日本製のフルアコが高評価 を受ける一因だ。 うでないか……。各工程における “さじ加減” の積み重ねは、ギ ターが単なる工業製品ではなく “楽器” として成り立つために、 欠かすことのできない要素なのだ。 “Archtop Tribute” には、確かに半世紀以上を生き抜いてき たヴィンテージ・ギターのような風合いはない。また、高い精 度で組み上げられ、均一に仕上げられたその外観は、ともすれ ば存在感が希薄だと受け取られることもあるだろう。しかし、 このプロジェクトの狙いは、そもそもそこにはない。 「楽器=道 具」 としての本来の用途に立ち戻り、スタンダードかつリーズナ ヘ ッ ド の ロ ゴ 貼 り ブラウン・サンバーストの下色となる、イエロー系の 着色を行なっている。写真を注意して見ると、カッタ ウェイが左右逆になっていることが分かる。このモデ ルがレフト・ハンド仕様だ。 ト ッ プ コ ー ト ブルなフルアコでありながら、サウンド、演奏性、品質的な安 定性、そしてもちろん販売価格のバランスにおいて、ベストの 製品を生み出すこと。そしてその目標達成のためには、やはり 日本製以外の選択肢は考えられなかったのだ。 ■ 木工以外でも、このような地道で繊細な作業が連 続 する。ち なみにこの後の 工程では、“A r c h t o p Tribute” のロゴの下に、“Made in Japan” の文 字をレイアウトした図案が入る。 着色後のトップコートを塗装している様子。ブラウ ン・サンバーストの色合いは、マウントされるピック アップの形式によって異なる。フィニッシュはポリ系 だが、こちらも別注指定にて極薄仕上げだ。 2 AT101/AT101 Classic/AT102/AT102 Classic 試 奏 高内"HARU"春彦×田 辺充邦 ジャズライフ2010年11月号掲載 ょうどいい感じなんじゃないかな。 田 辺:ブーミーではなくて、はっきりと音が 聴き取りやすいですね。1∼2弦と4∼6弦 の音のバランスがすごく良いですよ。さっ き、HARUさんが相当変なコードを弾いてま したけど (笑) 、音の分離がよく、聴きやすか ったですからね。 HARU: 「AT102」 は、よりハムバッカーの 音で、ポリトーンとの組み合わせは抜群だよ ね。 「AT102 Classic」 も、さっきのモデルは 高音域でシングルならではの可憐さを感じた けど、これはまたちょっと違う個性がある。 田辺:カラッとしてるけれど、艶やかで、音 に芯がありますね。 「AT102」 も「AT102 Classic」 も、アンプで鳴らした時の音が、も 「価格に関係なく好きなものを選んでいいと 言われても、これは充分に第一候補になるね」 高内"HARU"春彦 AT101/AT101 Classic HARU:1、2弦の鳴りがすごく良いね。そ れにネックの厚みや太さ、フレットの高さも のすごく良い! HARU:この 「AT102 Classic」 は相当良い ですよ。普通のシングル・ピックアップとま た違って力強さがあるし、ローランドJC-120 で鳴らした時の、コーラスのかかり具合もす ごくきれい。 田辺:JC-120で良い音が鳴らせるというは、 ン感も良い。田辺くんが言ったように、ラミ すごく強みだと思います。ライヴハウスには、 ネート構造のこのタイプのギターは、1∼2 弦が「ビョン」 って鳴る物が多いんだけど、こ ほとんどJC-120が置かれていますから。 HARU:どこのライヴハウスでもこの音が出 れは音が真っ直ぐ鳴ってくれるので、まった せれば、地方のツアーにこのギターだけを持 って行くというのもいいかも。 抜群、とても弾きやすい。 田辺:10万円前後のロー・プライスのギター くストレスなく演奏できる。この完成度の高 さには驚きだよね。 だと、どうしても1∼2弦がペキペキ鳴って 田 辺:“ポロン” と弾いたときの「A T 1 0 1 Classic」 の生鳴りの良さには、ほんとうに驚き くれるので、僕のような刻みが多いプレイヤ ーには本当に嬉しいですよ。アーチトップの ました。僕は、ボディの上側 (ネック付け根の 形状も自然で素晴らしいし、本当に細かい部 分にこだわりを感じます。 しまい、仕事で使うには厳しいモデルが多い けれど、これは1∼2弦が充分にメロディを 田辺:トーンも、音がこもらずに甘くなって 歌ってくれます。温かい響きがするし、トー ンを全開にしても音が薄くなることがありま 上側部) が鳴ってくれる楽器が好きなんです。 さらに、ボディ裏がお腹に響く感じで、もう せん。しかも11∼13フレットあたりがすごく これはアンプで鳴らさなくてもいいくらいの ギターだって確信できました (笑) 。ヴォリュ と思っちゃうよね (笑) 。しかも、 「安い割に良 い」 のではなくて、楽器として素晴らしい。ラ ーム5程度で、生鳴りとアンプの音が混ざっ ミネート構造のギターで、価格に関係なく好 きなのを選んでいいと言われても、これは充 気持ちが良いですね。ジャズは FやE♭のキー をよく使うので、このあたりの鳴りが良いと HARU:どれもこんなに安くていいのかな、 いうことは、ギターにとってとても重要なこ とだと思います。 た音が一番気持ち良いですね。 HARU:それに2本とも、音程がすごく良い AT102/AT102 Classic よね。ヴィンテージのピッチの悪さが作り出 す甘い響きではなく、現代的な響き。僕はこ 田辺:トーンを絞るとパット・メセニーやジ ム・ホール的なアプローチもできるし、ちょ 田辺:2本とも、バインディングやパーツが のモダンなトーンが大いに気に入った。 田辺: 「AT101 Classic」 は芯がスーっと出る グレード・アップしているせいか、やはり鳴 りがちょっと違いますね。 っと硬めの音にすればファンキーなプレイも バッチリですね。そして何よりも、 “Made in シングル・ピックアップ特有の音、 「AT101」 HARU:より中低音が出るよね。僕は低音が 鳴り過ぎない方が好きなんだけど、これはち はハムバッカーらしい甘さがあって、しっか りと個性が出ている点も、素晴らしいです ね。僕は「AT101 Classic」 の生の鳴りと、 「AT101」 のヴィンテージが放つような特有の サンバーストの色合いに惚れ込みました (笑) 。 HARU:どちらも音が上品で、ゲージ012の 弦が張られているとは思えないほどテンショ 撮 影:桧川泰治 (人物) 、小貝和夫 (楽器) 分に第一候補になるよね。 Japan” ってヘッドに入っているのが嬉しいで す。日本は、これだけのギターをこの価格で 作れるんだという誇りを感じます。 ■ 「“AT101 Classic”の生鳴りと、 “AT101”のサンバーストの色合いに 惚れ込みました (笑)」田辺充邦 3 AT102 Classic AT102 販売価格:¥129,800(税抜き) 「AT101」 をグレード・アップ したモデル。コントロール・ポ ットはCTS社製、コンデンサ ーはオレンジ・ドロップが使わ れており、ネック材は1ピース のマホガニー材となる。ピック アップは、 「AT101」 と同様。 販売価格:¥129,800(税抜き) トリプル・バウンドのボディ・ バインディングやスプリット・ パラレログラム・シェイプのポ ジション・マークなど、 「AT102」 と同スペック。ただ ピックアップのみ、P-90スタ イルが組み込まれている。 上が50年代後期のヴィン テージをイメージした “Late '50s Burst” 、下 が50年代前期のヴィンテ ージをイメージした “Early '50s Burst”。何れのブ ラウン・サンバーストも、 その年代の雰囲気を見事に 再現している。 SPEC ●ピックアップ:ハムバッカー(アルニコ・ マグネット)●ネック:マホガニー1ピース ●指 板:ローズウッド ●ポジション・マーク:スプリ ット・パラレログラム ●ブリッジ:ローズウッド ●ボディ:プライウッド (メイプル/スプルース)● ポット:CTS ●コンデンサ:オレンジドロップ ● 出力ジャック:スイッチクラフト ●カラー:Light Amber Natural、Late '50s Burst SPEC ●ピックアップ:P-90タイプ(シングルコ イル)●ネック:マホガニー1ピース ●指板:ロ ーズウッド ●ポジション・マーク:スプリット・ パラレログラム ●ブリッジ:ローズウッド ●ボ ディ:プライウッド (メイプル/スプルース)●ポ ット:CTS ●コンデンサ:オレンジドロップ ● 出力ジャック:スイッチクラフト ●カラー: Light Amber Natural、Early '50s Burst AT101 販売価格:¥99,800 (税抜き) 実用面のみにフォーカスし、装 飾を極限までそぎ落としたモデ ル。GOTOH製のペグなど、 ハードウェアも日本製にこだわ っている。ピックアップはアル ニコ・マグネット製のハムバッ カーを採用。 AT101 Classic 販売価格:¥99,800(税抜き) こだわりの材、またハードウェ アはすべて 「AT101」 と同様の もので構成されている。ピック アップには、P-90スタイルの シングルコイル・ピックアップ が搭載されている。 上のピックアップは、 「AT101」 「AT102」 に 搭載されているアルニコ・マグネット採用のハ ムバッカー。下は、 「Classic」 シリーズに採用 されたP-90スタイルのシングルコイル・ピッ クアップ。もちろんどちらも日本製 ブランド名“Archtop Tribute” は、ジャズ・ ギターの定番モデルへの リスペクトから名付けら れた。ロゴ下には、 “Made in Japan” の 文字が刻まれている SPEC ●ピックアップ:P-90タイプ(シングルコイ ル)●ネック:マホガニー ●指板:ローズウッド ● ポジション・マーク:ドット ●ブリッジ:ローズウ ッド ●ボディ:プライウッド (メイプル/スプルース) ●出力ジャック:スイッチクラフト ●カラー:Light Amber Natural、Early '50s Burst SPEC ●ピックアップ:ハムバッカー(アルニコ・マグネット) ●ネック:マホガニー ●指板:ローズウッド ●ポジション・ マーク:ドット ●ブリッジ:ローズウッド ●ボディ:プライ ウッド (メイプル/スプルース)●出力ジャック:スイッチクラ フト ●カラー:Light Amber Natural、Late '50s Burst ※写真の個体は、2010年製作のプロトタイプです。製品版とは若干仕様が異なる場合があります。 4 P-90スタイルのピックアップを 搭載した “AT102 Classic” は、シリーズ中1、2を争う人気 機種だ。その2ピックアップ仕様 がこちらのモデル。シングルコイ ルの割にはノイズが少なく、また 程良い太さを持った歯切れの良い ジャズトーンと、1950年代前 期の色合いを再現した“Early '50s Burst ” のフィニッシュの 組み合わせが、価格を超えた高 級感を演出している。 AT102D Classic AT102M AT202MD AT135STP AT135TTP AT102D Classic ジャズライフ2011年6月号掲載 販売価格:¥139,800(税抜き) 試奏 田 辺充邦 × 馬場孝喜 田辺充邦 撮影:桧川泰治 (人物&楽器) 馬場孝喜 ト ー ン の 効 き も ジ ャ ズ に ぴ っ た り ﹂ 田 辺 ﹁ 低 音 弦 の 鳴 り が 良 く 、 音 の 輪 郭 が 鮮 明 。 馬場:少し太めのグリップですが、これは弾きやすい ですね。ネックの太さも、ふだん使い慣れている97年 のギブソンES-175と変わらないので違和感がまったく ありません。まさにフルアコの王道というサウンドで す。ヴォリューム全開で鳴らしているのに、いっぱい いっぱいな感じがなく、低音弦を弾いた時にもそれほ どブーミー感がありませんから、気持ちよく弾けま す。音の分離も良くて、スカッと出てくれるので、ボ サ・ノヴァ系の複雑なコードでもいけます。これでし たらバンドで演奏しても音が埋もれないと思います。 欲しいです (笑) 。 田辺:音のバランスが良いですし、リア・ピックアッ プのマウントにスペーサーが装着してあるので、リア が気持ち良く出てくれます。ふつうはここまで鳴りま せんよね。低音弦の鳴りも良い感じです。バランスが 取れていて、音の輪郭が鮮明です。ピッチが正確で、 サスティンもあり、ハーモニクスもきれいに出ます。 トーンの効きも、絞るとコモるのではなく、甘くなる 印象。ジャズにはぴったりですね! ■ SPEC ●ピックアップ:2×P-90タイプ(シングルコイル)●ネック:マホガ ニー1ピース ●指板:ローズウッド ●ポジション・マーク:スプリット・パ ラレログラム ●ブリッジ:ローズウッド ●ボディ:プライウッド (メイプル/ スプルース)●ポット:CTS ●コンデンサ:オレンジドロップ ●出力ジャッ ク:スイッチクラフト ●カラー:Light Amber Natural、Early '50s Burst 5 定番モデル “AT102” のミッド・ デプス仕様。ボディ厚は約 2.5 インチとなり、フル・デプスの AT102よりも約21mm程度 薄くなる。サウンドは、ロー・ミ ッドの輪郭が一回りクリアにな る印象だが、それでもアコーステ ィック感は非常に豊か。ボディ のホールド性も高く、またエレク トリック・ユースに特化したモデ ルとして、ブリッジはTune-Oタ イプが標準採用となる。 弾 く 人 の 音 色 に な っ て く れ る ギ タ ー ﹂ 馬 場 ﹁ オ ー ソ ド ッ ク ス に も 、 コ ン テ ン ポ ラ リ ー に も 、 ミッド・デプス仕様 “AT102M” の2×ハムバッカー/コンター・ ブレイシング仕様。全体の外寸 は、右のAT102Mに準じた仕 様ながら、ボディ・トップ裏側の ブレイシングにスノコ状の “コン ター・ブレイシング” を採用し、 あえてトップの振動を抑え込む 指向でデザインされている。ハウ リングにも強く、また芯のある独 特のトーンはアンサンブルの中で の音抜けも良好だ。 AT102M AT202 MD 販売価格:¥133,800 (税抜き) 販売価格:¥145,800(税抜き) 田辺:アーチトップ・トリビュートのどのモデルにも 言えることですが、高音弦側に行っても音が細くなら ないで、音のバランスが良い。これはもうパット・メ セニー好きは放っとかないでしょう (笑) 。基本的なこ とかもしれませんが、フレットがしっかり打ってある ので、ビビリません。ピックアップのポジションも絶 妙で、オーソドックスなジャズの甘いサウンドでプレ イすることができます。トーンを使う必要もありませ んでした。16インチのボディで、抱えた時のバランス も良いと思います。チューニングもしやすいですね。 馬場:このギターは弾く人の音色になってくれるとい うか、弾く人によって印象が変わるモデルかもしれま せん。田辺さんがおっしゃったように、オーソドック スなジャズでも、さらにコンテンポラリーにも、いず れにしても、弾いていて不満はありませんでした。コ ーラス、空間系のエフェクトを使うとさらに面白いと 思いました。何年かすると、アーチトップ・トリビュ ートの音としてこの世界でも認められる、そういう音 ですね。 ■ SPEC ●ピックアップ:1×ハムバッカー(アルニコ・マグネット)●ネック: マホガニー1ピース ●指板:ローズウッド ●ポジション・マーク:スプリッ ト・パラレログラム ●ブリッジ:TOKIWA TABR-1(特注ブラス・サドル仕 様)●ボディ:プライウッド (メイプル/スプルース)●ポット:CTS ●コン デンサ:オレンジドロップ ●出力ジャック:スイッチクラフト ●カラー:Light Amber Natural、Late '50s Burst、Dark Gray Burst 調 整 な し で 使 え る ク オ リ テ ィ ﹂ 馬 場 ﹁ ラ イ ヴ で 実 証 済 み 。 こ の ま ま ス テ ー ジ で 、 馬場:このギターは、先日ラウンド弦を張って、実際 にライヴに使ってみました。攻撃的にもプレイできる し、優しくもプレイできるギターで、とっても気に入 りました。ライヴで共演したオルガン奏者が、 「ロー のいらない部分は鳴らず、しかも中域も締まってい る。このギター、 “おしゃれイコライジング” が入って るの?」 って言うんです (笑) 。なるほどと思いました。 あと、ハウリングにも強い。このまんま、調整なしで ステージで使えるクオリティです。 田辺:オルガン奏者が言ったところに説得力がありま すね (笑) 。確かに音にパンチがあります。1、2弦が ちょっと頼りない音の新作ギターがよくありますが、 これはそういったところがまったくない。高音弦がき れいに鳴ります。6弦をドーンと鳴らした後でも、そ の音がきれいに残ってくれます。ぼくは、175とはひ と味違うイメージを持ちました。ボディ厚の影響かも しれませんが、これが「アーチトップ・トリビュート」 の他にはない音と言えるかもしれません。カート・ロ ーゼンウィンケルが好きな人にもお薦めです。 ■ SPEC ●ピックアップ:2×ハムバッカー(アルニコ・マグネット)●ネック: マホガニー1ピース ●指板:ローズウッド ●ポジションマーク:スプリット・ パラレログラム ●ブリッジ:TOKIWA TABR-1 (特注ブラス・サドル仕様) ●ボディ:プライウッド (メイプル/スプルース)●ポット:CTS ●コンデン サ:オレンジドロップ ●出力ジャック:スイッチクラフト ●カラー:Light Amber Natural、Late '50s Burst、Dark Gray Burst 6 幅広で薄めのグリップを持つネ ックにブロック・ポジションマー ク、そしてトラピーズ・テールピ ースを持つセミアコ・モデル。 1960年代中期の過渡期的仕 様とも言えるこのモデルには、 AT135STPと同じく17度の ヘッド角が与えられ、1964年 頃のスペックが再現されている。 これはATシリーズ全般に言える ことだが、セットアップの水準 は非常に高い。 程良く太めのグリップを持つ17 度ヘッドのネック、抜きの少ない センターブロック、ロングガー ド、ストップ・テールピース、ま さに王道とも言えるスペックを持 つセミアコが、このAT135STP だ。ATシリーズ専用の材 “Rich Presence Plywood” を用いる ことにより、豊かな倍音を含みつ つ、そして高音弦の音痩せのな い、バランスの良いセミアコ・モ デルに仕上げられている。 低 音 か ら 高 音 の 音 の つ な が り も 良 い ﹂ 馬 場 ﹁ 単 音 の ラ イ ン が こ こ ま で 鳴 ら せ る と は 。 AT135 STP AT135 TTP 販売価格:¥134,800(税抜き) 販売価格:¥134,800(税抜き) 馬場:いやー、弾きやすいです。実は、これまでセミ アコは苦手で、ぼくが弾くギターではないなって思っ ていました。弾くポジションによって、頼りない音だ ったり、とても音が大きくかったりと、とにかくバラ ンスが良くないイメージがありましたが、これなら気 持ち良く弾けます。気を使わず単音のラインがここま で鳴らせるとは思いませんでした。しかも、低音弦か ら高音弦までの音のつながりが良いですね。音の立ち 上がりも速くて、カッティングもいけます。 田辺:セミアコなのに高音弦でも柔らかい音が自然に 出ますね。トーンがフルでも、 “ウーマン・トーン” の ようなサウンドもいけます。もしかしたらブライン ド・テストをしたら、フルアコと間違える人も多いか もしれません。クリーン・トーンでの空間系のエフェ クトはもちろんですが、歪み系のエフェクトでも音の バランスが良いですね。フィードバックも自由自在で す。フレットの調整が良くできていて、ネックも吸い 付くような握り心地です。弦の押さえ方でもトーンの ヴァリエーションを出すことができます。 ■ SPEC ●ピックアップ:2×ハムバッカー(アルニコ・マグネット)●ネック: マホガニー1ピース ●指板:ローズウッド ●ポジション・マーク:ドット ● ブリッジ:GOTOH GE104B ●ボディ:プライウッド (メイプル/スプルー ス)●ポット:CTS ●コンデンサ:オレンジドロップ ●出力ジャック:スイ ッチクラフト ●カラー:Light Amber Natural、Late '50s Burst、 Relic Cherry Red 空 間 系 の エ フ ェ ク ト に も ぴ っ た り ﹂ 田 辺 ﹁ フ ァ ン ク に も 合 う し 、 親 指 で 弾 い て も よ し 。 馬場:コードはもちろんですが、サスティンがあって このギターも単音がきれい。こんなに弾きやすいもの なんですね、セミアコって (笑) 。気分良くメロディが 弾けます。個体差かもしれませんが、若干硬めのトー ンを持っている印象です。ですから、セミアコを越 えたトーンの幅を感じさせます。歪ませても、品の あるサウンドです。クランチ気味にしてブルースも 良いですね。 田辺:ネックがやや薄めで、親指を指板から出して握 り込むタイプのプレイヤーにお薦めです。ケニー・バ レルのような押さえ方も可能です。馬場さんがコメン トしたとおり、発音が良く音がはっきりしていますか ら、シンセサイザーやエレクトリック・ベースのプレ イヤーとプレイしても、音が硬めの分だけ音が抜けて くると思います。ファンクにも合うし、親指で弾いて もそれらしいトーンが出ますね。もちろん、トラピー ズ・テールピースですから、甘い音作りも可能です。 コーラス、ディレイの空間系のエフェクトで、ビル・ フリーゼル系のサウンドもいけます。 ■ SPEC ●ピックアップ:2×ハムバッカー(アルニコ・マグネット)●ネック: マホガニー1ピース ●指板:ローズウッド ●ポジション・マーク:ブロック ●ブリッジ:GOTOH GE104B ●ボディ:プライウッド (メイプル/スプル ース)●ポット:CTS ●コンデンサ:オレンジドロップ ●出力ジャック:ス イッチクラフト ●カラー:Light Amber Natural、'60s Light Burst、 Relic Cherry Red 7 AT130 販 売価 格:¥129,800 ( 税抜き) 試奏 田 辺 充邦 ジャズライフ2011年 5月号掲載 田辺:ウォーキンのオリジナル・ブランド 「アーチトップ・ト リビュート」 のシンライン・モデルです。まず、手に持って驚 いたのがとてもボディが軽いことです。色合いも自然な木目 の出方に好感が持てます。サウンドだけでなく、フィニッシ ュの完成度の高さもこのブランドのこだわりを大いに感じさ せますね。たくさんのヴィンテージを実際に見ていないと、 AT130 Late '50s Burst AT130 Light Amber Natural この絶妙な雰囲気は出せないものです。 そして、そのこだわりはサウンドや作りにも繋がります。 グリップはやや太く、しっかりとした印象です。長く弾いて いても疲れを感じません。テールピースがブランコ・テール ピースというのも良いですね。そしてテールピースの長さも、 汎用パーツに比べ、約1cm以上長く設計されています。ギブ ソンES-330なども、この長さなのですが、そこまで細かく再 現しているのもうれしいですね。そのためか、弦のテンショ ンも柔らか過ぎず硬過ぎず、チョーキングもできますし、ク リーン・トーンでも音が寂しくなりません。この状態で絶妙 なバランスが取られていますから、このままライヴハウスで 演奏できますね。 ピックアップには、P-90タイプが搭載されています。この タイプのピックアップですと、ノイズの問題で敬遠してしま うギタリストもいらっしゃるかもしれませんが、このギター は驚くほどノイズがありません。オーバードライブをかなり かけても、まったく気にならないほどでした。これなら、フ ェイザー系のエフェクターをかけてもおもしろいでしょう。 さらに驚いたのがフロント・ピックアップの音色です。と てもこの薄いボディのギターから出ている音ではないですね。 まさにジャズ・ギターの音。この価格ですから、シンライン を初めて持つ人にはもちろんお薦めですが、プロのプレイヤ ーが弾いても充分に使えるモデルだと痛感しました。 ■ SPEC ●ピックアップ:2×P-90タイプ(シングルコイル)●ネック:マホガニー1ピース ●指板:ローズウッド ●ポジション・マーク:ドット ●ブリッジ:GOTOH GE104B ●ボディ:プライウッド (メイプル/スプルース)●ポット:CTS ●コンデンサ:オレンジ ドロップ ●出力ジャック:スイッチクラフト ●カラー:Light Amber Natural、Late '50s Burst、Relic Cherry Red 今回、特注したフロント・ポジション用の薄 型ドッグイヤー・ピックアップ・カヴァー。 厚みが異なるスペイサーが付属し、これらを カヴァーの下に挟み込むことにより、ピック アップ自体の高さもアジャストできる “アーチトップ・ トリビュート” 左利きモデルも登場! オリジナルの長さに忠実に製造されたブラン コ・テールピース。弦長、テンションがより オリジナルのモデルに近づいた。ボディ材 は、人気のアーチトップ・トリビュート専用 特注合板"Rich Presence Plywood" ジャズライフ2010年 12月号掲載 AT102L/AT102L Classic 販売価格:各¥142,800(税抜き) 「アーチトップ・トリビュート」 の左利きプレイヤー用のモデル も2機種登場。それぞれの基本仕様は、 「AT102L」 がハムバッカ ー仕様、 「AT102L Classic」 と名付けられたモデルはシングル コイル・ピックアップ仕様となっている。専用に開発されたプラ イウッドや、特別ラインでのフレッティングを始めとした製作精 度のこだわりも、そのまま受け継がれている。製品の特性上、ど うしても右利き用のモデルよりは幾分割高になってしまうが、そ れでもこのクオリティのフルアコが15万円を切る価格ならば、充 分にリーズナブルと言えるだろう。そもそもほとんど選択肢がな かったギターのジャンルだけに、左利きのジャズ・ギター・プレ イヤーにとってはこの上ない朗報だ。 ■ 撮影:小貝和夫 (楽器) AT102L AT102L Classic 8
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