December 2007

Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
ISSN 1348-5474
December 2007
第6巻 別冊
Journal of Japanese Society for Extremophiles
極限環境微生物学会 第8回シンポジウム、ならびに第8回年会 要旨集
第 8 回極限環境微生物学会シンポジウム要旨 ……………… 89
第 8 回極限環境微生物学会年会要旨 …………………………103
89
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
シンポジウム
プログラム&講演要旨
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別冊
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
極限環境微生物学会 第 8 回シンポジウム
~ 環境中における微生物機能 ~
日時:2007 年 7 月 3 日(火)午後 1 時~5 時 40 分 (6 時より懇親会の予定)
場所:東京工業大学 すずかけ台キャンパス すずかけホール 3F 多目的ホール
交通:東急田園都市線すずかけ台駅下車徒歩 5 分 (横浜市緑区長津田町 4259)
概要
テーマ:「環境中における微生物機能」
近年環境 DNA の解析技術が進んで、環境中における微生物叢の解析が盛んに行われている。しかし実際に
これらの微生物が生命活動を営み環境と関連を持つの かについてはまだ不明な点が多い。今回のシンポジ
ウムではさまざまなアプローチでこれらの課題に取り組んでおられる先生をお招きしてお話を伺う。
プログラム(敬称略)
13:00-13:10 開会の挨拶
13:10-13:50 北島 富美雄(九州大学大学院理学研究院 助教)
「Archaea が生産するテトラエーテル脂質を用いた環境温度の推定について」
13:50-14:30 木庭 啓介(東京農工大学大学院共生科学技術研究院 特任准教授)
「安定同位体を用いた窒素循環研究-微生物機能へのアプローチを目指して」
14:30-15:10 津田 雅孝(東北大学大学院生命科学研究科 教授)
「生態系での細菌ゲノム情報発現 -遺伝学的手法を用いた発現遺伝子群の探索-」
コーヒーブレイク
15:30-16:10 福田 雅夫(長岡技術科学大学生物系 教授)
「PCB 分解菌の芳香族分解遺伝子発現制御と環境応答」
16:10-16:50 高尾 祥丈(水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所日本学術振興会特別研究員)
「ウイルス研究から明らかになった海産原生生物ラビリンチュラ類の分解特性の多様性」
16:50-17:30 鎌形 洋一(産業技術総合研究所ゲノムファクトリー研究部門 部門長)
「難培養性環境微生物の培養化と微生物種間ネットワークの解析」
17:30-17:40 閉会挨拶
18:00-20:00 懇親会(すずかけホールラウンジ)
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
Archaea が生産するテトラエーテル脂質を
用いた環境温度の推定について
シンポジウム要旨
北島 富美雄(九州大学大学院理学研究院 助教)
【はじめに】
1. 温度変化と脂質組成
バクテリアやアーキアは、環境の変化に対応して、
細胞膜の物性を維持するために、膜脂質の組成を変
える。バクテリアでは、温度の変化に伴い、脂肪酸
の鎖長、二重結合の数、メチル側鎖の数などを変え
る。アーキアの場合、膜脂質にエーテル脂質を含む
ことが知られているが、その中にはテトラエーテル
型脂質のイソプレノイド鎖の部分に五員環を持つも
のがある(図 1)。Sulfolobus や Thermoplasma など
の好熱性アーキアでは、このイソプレイド鎖に含ま
れる五員環の数は、増殖時の温度が高いほど増大す
る [1]。このような性質は、脂質組成が一種の温度
計として利用できることを示唆するものである。ま
た、イソプレノイド鎖のような炭化水素は、比較的
年代の古い地質試料中にも残ることがあり、たとえ
ば、白亜紀の地層中から見い出されたものも報告さ
れている [2]。有機物を利用した過去の水温を推定
するための温度計としては、ハプト藻が生産する長
鎖アルケノンを利用した地質温度計が知られている
が、エーテル脂質は、これと同様に利用できること
が期待できる。われわれは、この性質を陸上熱水系
における堆積時の温度を推定するための温度計とし
て利用する試みを続けてきた [3]。
一方、Marine Group の Crenarchaeota はその大部
分が培養できないアーキアであるが、イソプレノイ
ド鎖に含まれる五員環の数は、やはり表面海水温度
(SST)と相関があることが指摘され、TEX86 という
指標(Marine Group に特有の Crenarchaeol とその
異性体をパラメーターとして含んでいる)を用いた
温度計が提案されている[4]。この温度計の適用範囲
は 0 oC から 30 oC である。Marine Group に近縁の古
H2C
X
H2C
O
HC
O
O
O
CH
CH2
CH2
(1) X=H; GDGT (2) X=
OH
OH
H
H
CH2OH
H
H
OH
2. 熱水系でのテトラエーテル脂質温度計
われわれは、これまで、好熱好酸性アーキアであ
る Sulfolobales が生産するエーテル脂質に着目し、
温度計として用いることを検討してきた。この温度
計の適用範囲は 65 oC から 80 oC であり、酸性の熱水
環境には Marine Group に近縁のアーキアが棲息しな
いところもあることから、陸上熱水系における温度
計として、TEX86 による温度計とはまた別の有用性を
持つと期待できる。Sulfolobales は GDGT (Glycerol
Dialkyl Glycerol Tetraether)の他に、グリセロー
ル残基の一方がカルジトール残基となった GDCT
(Glycerol Dialkyl Calditol Tetraether)を生産
する(図 1)。GDCT は Sulfolobales が特異的に生
産するので、堆積物中から見い出された場合、生産
者を特定するのに有利である。しかし、GDCT は分子
量が大きく、このままの形では分析しにくいため、
HI/LiAlH4 処理を行って、イソプレノイドに分解しな
ければならない。これは、時間と手間がかかるうえ
に、より多くのサンプル量も必要とする。GDGT は、
分子構造そのものから生産者を特定することはでき
ず、生産者に関する他の情報を必要とするが、分解
を行うことなしに HPLC でより容易に分析できる点
では有利である。われわれは、GDCT を用いた場合と
GDGT を用いた場合、それぞれについて、熱水系にお
いて活用できる温度計の開発を試みた[3, 6]。
【実験】
1. GDCT 温度計 GDGT と GDCT では、平均環化率の温
度依存性が異なっている。今までは、全エーテル脂
質の環化率と温度の関係式しか利用できなかったが、
われわれは、Sulfolobales を 65、70、75、80 oC で
定常期まで培養し、新たに GDCT の平均環化率と温度
の関係式を求めた。分析は、DeLong et al. [7]を一
部改変した方法で、GDCT をイソプレノイドに分解し、
GC-MS を用いて行った。得られた関係式を鹿児島県
霧島温泉の 3 ヶ所(八幡地獄、湯の野地獄、銀湯)
で採取した表層堆積物に当てはめ、古水温を推定し
た。
OH
O
細菌は、その後、海洋だけでなく中性・アルカリ性
の陸水中にも発見されており[5]、TEX86 を用いた温
度計は、しだいに普及しつつある。しかし、この場
合のエーテル脂質の生産者は、五員環数の温度依存
性が最初に明らかになった好熱性アーキアではない。
;GDCT
図 1. GDGT、GDCT の構造
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
2. GDGT 温度計 Sulfolobales の 65、70、75、80oC
の培養物の全脂質抽出物をメタノリシスし、
Schouten et al. [4]の方法に従い、HPLC で分析し
た。Sulfolobales と Marine Group では、脂質組成
が異なり、Sulfolobales は Crenarchaeol を生産し
ないため、TEX86 をそのままの形で使うことはできな
い。そこで、GDGT 1 分子当たりの環化率(イソプレ
ノイド鎖 1 本当たりの環化率と区別して、C*で表す)
を定義し、これと温度の関係式を求めた。また、銀
湯で採取したコアサンプルを縦に 2 分割した後、さ
らに 2 分割した一方を 3cm ずつに分割し、それぞれ
から抽出した GDGT をメタノリシス後、HPLC で分析
して古水温を推定した。また、TOC(全有機態炭素)
測定およびアクリジンオレンジ染色による全菌数計
測を行った。
【結果】
1. GDCT 温度計
1-1. 表層堆積物から得られた GDCT から推定した古
水温は、全エーテル脂質から推定した古水温と 2 つ
の地点(八幡地獄、湯の野地獄)では 3 oC 以内で一
致した。これは、GDCT による温度計の有効性を示す
ものである。
2. GDGT 温度計
2-1. 培養物の GDGT の環化率(C*)と温度(T)の間
には、T=17.6C*+7.0 (R2=0.96)の関係が見い出され
た。
2-2. 銀湯のコアサンプルの抽出物を HPLC-APCI-MS
で分析したが、Marine Group に特有の Crenarchaeol
とその異性体は検出できなかったため、ここには、
Marine Group に近縁の Crenarchaeota は棲息してい
ないと考えられる。また、Sulfolobales 以外の陸水
における代表的な好熱性アーキアであり、やはりイ
ソプレノイド鎖に五員環を持つ Thermoplasma の培
養をここで採取した熱水から試みたが、増殖は確認
できなかった。従って、この地点から得られる GDGT
は、ほぼ Sulfolobales 由来と考えられる。また、コ
アサンプル内の生菌からの GDGT の寄与は、計測され
た全球菌数をすべて Sulfolobales の生菌数とみな
しても、コアから得られた全 GDGT 抽出物の 1/100
以下と見積もられたため、無視できると考えられる。
2-3. 銀湯のコアでは、15cm 以深で 77oC 以上という
高い推定温度が得られ、これは過去の地熱活動の活
発さを示すものであると考えられる。また、9 から
12cm の部位で推定温度の低下、また、15 から 18cm
の部位で TOC の低下が見られるとともに、この下の
部位より堆積物の粒度が粗くなっていることから、
まず堆積環境の変化が起こり、続いて温度が降下し
たことが示唆された。
93
別冊
【おわりに】
1. 五員環を持つテトラエーテル脂質を生産する好
熱好酸性アーキアの分布
Sulfolobales は陸水に分布する好熱好酸性アー
キアである。したがって、この菌が生産する脂質の
分布は、Marine Group の Crenarchaeota の場合とは
異なり、限定されたものとも予想される。しかし、
五員環を持つテトラエーテル脂質を生産する好熱好
酸性アーキアの分布は、今まで考えられていたより
はもう少し広いらしい。たとえば、脂質そのもので
は な い が 、 ODP で 採 取 さ れ た 海 洋 コ ア か ら
Sulfolobus の rDNA が見い出されている[8]。また、
最近、偏性好熱好酸性のアーキア(Aciduliprofundum
boonei)が、深海底熱水噴出孔からは、はじめて単離
されている[9]。このアーキアは五員環を持つテトラ
エーテル脂質を生産する。したがって、熱水系にお
けるテトラエーテル脂質温度計は、海洋を含め、も
う少し広い範囲で利用できるかもしれない。
2. バクテリアが生産する五員環を持つテトラエー
テル脂質
一方、バクテリアもエーテル脂質を生産すること
が最近さかんに報告されるようになってきた。これ
にはジエーテル型もテトラエーテル型もある。バク
テリアのエーテル脂質は、アーキアのエーテル脂質
のイソプレノイド鎖の部分がイソプレノイドではな
い炭化水素である。また、C-2 位の立体配置がアー
キア型の sn-2,3 ではなく、バクテリア型の sn-1,2
である。こちらのテトラエーテル脂質の五員環数は、
温度ではなく pH と相関があるらしい。また、炭化水
素鎖の C-5、C-5’位がメチル化されるが、その割合
は温度と pH の両方に依存すると報告されている
[10]。しかし、報告されている相関は必ずしも高く
はなく、環境因子の何が脂質組成を主に決定してい
るのか、状況はまだ混沌としているとも言えるが、
環境指標となる微生物由来の有機化合物が、現在、
次々と提案されている。
【参考文献】
[1] De Rosa M. et al. (1980) Phytochemistry 19, 827-831.
[2] Kuypers M. M. M. et al. (2001) Science 293, 92-94.
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67, A220. [4] Schouten S. et al. (2002) Earth Planet. Sci.
Lett. 204, 265-274. [5] Pearson A. et al. (2004) Appl.
Environ. Microbiol. 70, 5229-5237. [6] Kitajima F. et al.
(2006) Abstracts The Japan Geoscience Union Meeting
2006, B220-P003. [7]DeLong E. F. et al. (1998) Appl.
Environ. Microbiol. 64, 1133-1138. [8] Inagaki F. et al.
(2001) Extremophiles 5, 385-392. [9] Reysenbach A.-L.
et al. (2006) Nature 442, 444-447. [10] Weijers J. W. H.
et al. (2007) Geochim. Cosmochim. Acta 71, 703-713.
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
シンポジウム要旨
別冊
安定同位体を用いた窒素循環研究
-微生物機能へのアプローチを目指して
木庭 啓介(東京農工大学大学院共生科学技術研究院 特任准教授)
ある生態系における物質循環像を描き出す際には、
生息している生物群集の情報(特に機能情報)から
駆動している物質循環を予想するアプローチと、物
質の濃度変動を追跡することで物質循環像全体を予
想するアプローチがあると考えられる。しかしこれ
までの物質循環研究と言えばほとんどが後者を指し
ている。その理由として、ある生態系に生息してい
る生物群が持つ機能を類推することがきわめて困難
であることが挙げられると発表者は考えている。し
かし物質の濃度変動情報はおおよその物質循環像を
描くことを可能にはするものの、特に回転の速い生
元素については、それらのフローを濃度情報のみで
表現することは難しい。例えばリン酸は環境中で常
に低濃度であり、その濃度の低さだけを議論すると
すればリンの循環が行われていないという誤った結
論に至ってしまう。そのため安定同位体の利用(ラ
ベル化合物または同位体自然存在比として)が古く
から行われてきた。
ところで近年の分子生物学的手法の発達は、ある
環境に生息している微生物の群集構造について詳細
な情報をもたらしてくれるようになった。そのため
今後の物質循環研究は、ある環境中にどんな微生物
が存在しているのかという最も基本的かつ重要な情
報を手にした上での議論を行うことが可能になると
期待される。例えば微生物の群集構造と生態系での
物質循環について、分子生物学的手法と物質濃度・
同位体比手法を駆使した研究は貧酸素水塊で盛んに
行われてきている。これらの生態系では、メタンが
物質循環の中で重要であり、かつ非常に特徴的な炭
素同位体比を取ることが、微生物群集機能と物質循
環を上手くつなげることを可能にしている点である。
今後はこのような研究スタイルによって、物質循環
を駆動している主役である微生物群集構造と、そこ
から予想される機能群、そして発揮された機能の結
果としての物質濃度を詳細に比較検討して行くこと
で、より良い理解が進むはずである。
しかし、重要な生元素の一つである窒素について
は、そのような形での研究スタイルはまだ確立され
ていないように思われる。微生物群集と機能の関係
を解析する際には、例えばアンモニア酸化であれ脱
窒であれ、様々な微生物が同じような機能を担って
いることが困難を生んでいるように見受けられる。
しかし、窒素固定における 15N-DNA-SIP のような、
手法の開発が今後様々な形で進むであろう。発表者
はもう一方の物質濃度・同位体の分野での研究を行
っているものとして、どのようなアプローチが微生
物の機能に迫るために可能か、微生物生態研究と物
質循環研究を積極的にリンクするためにどのような
アプローチが必要であるか、現在行っている研究の
94
例をご紹介したい。
一つは、窒素同位体自然存在比(・15N 値)の利用
である。残念ながらメタンのように生態系の中で特
異的な同位体比を安定して持つ化合物は窒素循環の
中では見あたらない。しかしアンモニウム、亜硝酸、
硝酸、一酸化二窒素、窒素ガスという窒素循環を形
作る物質は様々な酸化数を取っており、生成・消費
が活発に行われていることから、自然界で・15N 値は
大きく変動する。すなわち・15N 値の解析によって、
窒素循環の再構築が可能であると期待できる。本発
表ではこれら窒素化合物の中で、硝酸と一酸化二窒
素に注目する。この 2 つの化合物は、好気的環境で
独立栄養的に生じる硝化と、嫌気的で従属栄養的に
生じる脱窒という、2 つの相対するプロセスに関与
している。
東京工業大学吉田尚弘教授の研究室では、一酸化
二窒素の・15N 値だけでなく、・18O 値、さらには直
線分子である一酸化二窒素の中央と末端の窒素原子
の同位体比の差(Site Preference;SP)の測定(ア
イソトポマー測定)を行ってきた。そして近年、こ
の SP によって硝化由来の一酸化二窒素と脱窒由来
の一酸化二窒素を区別することが可能であるとの報
告がなされている。このパラメーターがもたらす情
報に、さらに硝酸についての・15N・・18O 値の情報も
加えることでどのような解析が可能となっているか、
森林地下水での研究を例として発表したい。
もう一つは 15N ラベル化合物測定の簡便化である。
上に挙げた窒素化合物中の 15N 含有量を測定するこ
とは未だに煩雑であり、試料量を大量に必要とする
ことが多い(例えば 100 マイクログラム窒素)
。その
ため現在のところ、単一のプロセスにのみ着目して
測定を行う、例えばアナモックス活性を測定する際
は、発生する 29/30N2 のみの測定に終始してしまうこ
とが多い。しかしラベル実験においては様々なプロ
セス(アナモックス活性測定であればアンモニウム
同化、DNRA や一酸化二窒素の発生)がマイクロコズ
ム中で同時駆動している可能性が多分にある。今後、
物質濃度変化と微生物群集構造とのマッチングを積
極的に行ってゆくには、一つのプロセスだけに着目
するのではなく同時進行している可能性のあるプロ
セスについて積極的に追跡して行く必要がある。特
に競争関係にあるプロセス(脱窒と DNRA、アナモッ
クス)の状況について濃度変動研究側から提供する
ことは、機能ポテンシャルと実際に発揮されている
機能との違いを解釈する際に非常に重要になってく
ると考えられる。
そこで現在、産業技術総合研究所の諏訪裕一博士
のご協力の下、比較的安価である四重極質量分析計
を利用し、硝酸の・15N・・18O 測定技術を応用した窒
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便な手法によって、主要な窒素化合物についてのト
素酸素トレーサー測定技術を開発中である。硝酸、
レーサー測定が可能となり、今まで見逃していた窒
亜硝酸を一酸化二窒素に変換することでそれらの窒
素フローを明らかにすることが可能となれば、微生
素と酸素のトレーサー含有量を、またアンモニウム
物生態の情報とより良い議論が可能となると期待さ
については硝酸に酸化して窒素のトレーサー含有量
れる。
を比較的容易に測定することが可能である。この簡
___________________________________________________________________________________________
シンポジウム要旨
生態系での細菌ゲノム情報発現
-遺伝学的手法を用いた発現遺伝子群の探索-
津田雅孝, 西山依里, 宮越昌利, 永田裕二, 大坪嘉行 (東北大・院生命科学)
様々な自然生態系から多種多様な生物現象を示す
微生物株が数多く分離され、実験室で純粋培養した
これら微生物をいろいろな角度から検討することで、
先人たちは個々の生物機能の詳細な分子メカニズム
を明らかにしてきた。その一方で、複雑な物理的並
びに化学的環境要因の大規模な変動に曝される複合
生物系の自然生態系で、研究対象としてきた環境微
生物が実験室で純粋培養したときと同じような様式
で生物機能を発揮しているのかという、シンプルだ
が最も重要な問題は手がつけられないでいた。一方、
動植物病原細菌を扱う研究者は 1990 年代より、感染
モデル生物を「培養装置」と見立て、この環境で菌
の生存・増殖に必要な遺伝子や特異的に発現する遺
伝子を探索・解析することで、病原細菌の「培養装
置」での生きざまを明らかにし、病原性発揮に直接
的並びに間接的に必要な遺伝子群の総合的理解を深
めてきた(1, 2)。このような方向性を持った研究は、
微生物ゲノムの全塩基配列決定が容易になるにつれ、
さらに進展している。他方、環境細菌においては、
土壌などの自然環境を「培養装置」と見立て、本環
境で生存・増殖に必要な遺伝子や特異的に発現する
遺伝子を探索・解析する研究がなかったが、この数
年の間に自然環境での微生物の特定遺伝子やゲノム
全体の発現を解析する手法が急速に確立されてきた
(3)
ことから、このような研究が可能になりつつある。
本講演では、土壌環境で実際に機能している遺伝子
をどのように検索・解析するについて、我々の最近
の研究例(4)を紹介する。
我々の研究室では、かつては Pseudomonas 属に分
類されていた細菌で、土壌や水圏・植物表面などの
多様な自然環境に常在する好気性 b-プロテオバク
テリア Burkholderia multivorans の研究に取り組ん
でいる。本菌は、環境汚染物質も含めた極めて多様
な有機化合物を Pseudomonas 以上に炭素・エネルギ
ー源にできるが、ゲノムが 3 本環状染色体から構成
される点でも通常環境細菌とは大きく異なる特徴を
もつ(5)。B. multivorans ゲノムの全塩基配列を決定
し、本菌が根圏土壌生態系で主要炭素源となる様々
な芳香族化合物の好気的分解酵素遺伝子群を数多く
もつことを確認した(6)。現在、芳香族化合物をはじ
めとする多様な炭素・エネルギー源化合物の分解・
代謝を中心にしたゲノム微生物学的研究を実験室系
95
で行っている。これと並行して、土壌で特異的に発
現する本菌の遺伝子とこの環境での生存・増殖に必
要な遺伝子の網羅的取得を、各々In Vivo Expression
Technology (IVET) ( 図 1)(1) と Signature-Tagged
Mutagenesis (STM) (図 2)(2)と呼ばれる遺伝学的手
法で実施し、実験室系と生態系でのゲノム情報発現
の違いの検討、この違いを規定する環境要因特定化、
そして、ゲノムの各遺伝子への当該要因シグナルの
情報伝達機構の解明を目指している。
我々が IVET に用いているプラスミド pEN3 では、
egf がリジンと細胞壁前駆体ジアミノピメリン酸
(DAP)の合成に必要な酵素遺伝子 dapB で、レポータ
ー遺伝子が lacZ である。B. multivorans ゲノム DNA
断片をプロモーターのない dapB-lacZ カセット上流
に 挿 入 し た pEN3 誘 導 体 ラ イ ブ ラ リ ー を B.
multivorans の dapB 欠損株ゲノムに相同組換えによ
り組み込んだ。取得した B. multivorans 誘導体ライ
ブラリーを花崗岩質土壌に接種し、90 日後にリジン
と DAP、X-gal を含む最小寒天培地を用いて B.
multivorans を回収した。1%未満の回収株で認めら
れた白色コロニーでは土壌特異的に転写されるゲノ
ム領域に pEN3 誘導体が挿入されたと推定された。こ
のような約 250 の土壌特異的発現遺伝子候補として、
各種物質代謝(41%)、物質透過系(20%)、細胞表層成
分合成系(6%)に関わる遺伝子が 3/4 を占め、機能未
知遺伝子が 1/6 ほどあった。物質代謝遺伝子にはア
ントラニル酸や p-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢
酸などの芳香族化合物分解に関わる遺伝子が約 2 割
を占め、接種土壌にはこのような植物由来化合物が
多く存在すると推定された。また、細胞表層成分合
成系遺伝子の中には菌体外多糖合成酵素遺伝子があ
り、接種株の土壌粒子表面や粒子間隙での安定な定
着・増殖に菌体外多糖が必要であろうと推定してい
る。いくつかの「土壌特異的発現遺伝子候補」につ
いて土壌での候補遺伝子発現を LacZ 活性で測定し、
上記の芳香族化合物分解や菌体外多糖合成に関わる
遺伝子の土壌特異的転写を確認した。現在、このよ
うな遺伝子破壊株を作製して実験室系と土壌での挙
動と、両環境での遺伝子発現制御の分子機構を検討
している。
STM は基本的にはトランスポゾン挿入変異株ライ
ブラリーから、目的とする遺伝子に変異がある株を
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
効率よく negative screening する手法である(2)。
我々は Tn5 をベースにした STM 系を使い、土壌での
生存・増殖に必要な B. multivorans 遺伝子の取得を
行っている。実際には、tag 部分が異なる 36 種のト
ランスポゾンを挿入した突然変異株を合計 7,000 ほ
ど取得し、tag 部分が異なる 36 のトランスポゾン挿
入変異株をひとまとめにしたプールを 200 弱ほど作
製した。現在までに、7 割のプールを IVET で用いた
時と同じ花崗岩質土壌に接種、2 週間後に回収し、
土壌での生存・増殖に必要な遺伝子に欠損がある
180 程の候補変異株を取得した。この中には、アミ
ノ酸生合成系の突然変異株も存在し、遊離アミノ酸
がほとんど存在しない土壌ではこれら変異株は増殖
できないことを踏まえると、本 STM 系は、上記生合
成系遺伝子以外の目的遺伝子取得にも有効と判断し
ている。まだ目的遺伝子取得過程だが、取得変異株
には物質取り込み輸送系やストレス応答の変異株が
存在した。土壌では栄養分も少ないとともに様々な
物理的並びに化学的要因によるストレスがたいへん
多く、取得変異株は土壌環境で生存・増殖できない
と推定している。今後、このような推定も考慮しな
がら各取得株の詳細な解析を進める予定である。
1) H. Rediers, et al.: Microbiol. Mol. Biol. Rev., 69, 217
(2005)
2) P. Mazurkiewicz, et al.: Nat. Rev. Genet., 7, 929
(2006)
3) S. Saleh-Lakha, et al.: J. Microbiol. Methods, 63, 1
(2005)
4) 津田雅孝ら: 化学と生物, 印刷中(2007 年 7 月号)
5) E. Mahenthiralingam, et al: Nat. Rev. Microbiol., 3,
144 (2005)
6) Y. Ohtubo et al: in preparation
Tc
Tc
ori
ori
IVETプラスミド
egf rep
egf rep
Ap
Ap
Δegf
短いゲノムDNA
断片の挿入
promoter
別冊
標的ゲノム
相同組換えでゲノムに挿入
egf rep
Tc
Ap
Ap
Δegf
IVETプラスミド
野生型ゲノム断片
図1. IVETの原理. egfはあらゆる環境での生存・増殖に必須因子遺伝子で repはレポーター遺伝子。
IVETプラスミドは標的細菌株で複製不可能。本プラスミド上のegfとrepはいずれもプロモーターを欠く。
96
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
[Aでのプライマー対]
tag1, 2, -, -, n
[Bでのプライマー対]
tag1からtagnまでを
トランスポゾン内に挿入
薬剤耐性
遺伝子
tag1からtagnまでの各トランスポゾンを
用いた挿入変異株の作製
挿入変異株プール
(プール内の各変異株は異なる
tagの挿入を受けている)
B
A
① DNA抽出
② tag領域の
PCR増幅・
ラベリング
③ サザン解析
Cycle number
特定環境
① DNA抽出
② tag領域のリアル
タイムPCR増幅
Fluorescence
コロニーの全DNAを
貼り付けたメンブラン
Fluorescence
プール化
回収した
菌集団
Cycle number
図2. STMの原理. 我々は「B」の手法を採用。[Bでのプライマー対]で、
左側のプライマーは1種類の共通プライマー、右側のプライマーは tag毎で異なる
可変プライマー。[共通プライマー]とn種の[可変プライマー]を同時に用いたPCRで、
n個の特異的増幅断片の取得が可能。
___________________________________________________________________________________________
シンポジウム要旨
PCB分解菌の芳香族分解遺伝子発現制御と
環境応答
福田 雅夫(長岡技術科学大学生物系
Rhodococcus sp. RHA1株は殺虫剤のリンデン(γ
-HCH、γ-BHCとも呼ぶ)汚染土壌から分離されたPCB
(ポリ塩化ビフェニル)分解細菌でビフェニル代謝
酵素系を利用してPCBを共代謝により分解する。PCB
分解にかかわる酵素遺伝子の解析においてビフェニ
ル/PCB分解経路上流の各ステップで複数のアイソザ
イムが関与することや多くの酵素遺伝子が2つの巨
大な線状プラスミドに分かれてコードされているこ
とから注目を集め、カナダ政府のプロジェクトとし
てBritish Columbia大学に我々が協力する形でゲノ
ム解析が進められた。一昨年にDNAシーケンスが完了
してアノテーションを開始し、昨年秋に解析結果を
報告することができた。その結果、RHA1株のゲノム
は7.8 Mbの線状染色体、1.1 Mb、 0.44 Mb、および
0.33 Mbの3つの線状プラスミドで構成され、全体で
9.7 Mbに及ぶ現時点で細菌最大のゲノムをもつこと
が明らかになった。アノテーションでは9,145のORF
が見いだされ、その4割近くが機能未知であった。
教授)
イム遺伝子が見いだされ、DNAアレイを用いた解析で
はビフェニル/PCB分解経路下流のペンタジエン酸代
謝経路の各ステップでも複数のアイソザイムが転写
誘導されることが示唆された。さらにビフェニル生
育時には300を超える遺伝子の転写レベルが上昇し
ていることが示唆された。安息香酸やフタル酸での
生育では転写レベルが上昇する遺伝子は100をはる
かに下回るのに比べ、異常な数の遺伝子の転写レベ
ル上昇である。ビフェニル/PCB分解経路上流のアイ
ソザイム遺伝子は5つの遺伝子クラスターに配置さ
れている。各遺伝子クラスターのビフェニルによる
転写誘導が二成分制御系のBphS1T1により制御され
ていることをすでに明らかにしている。RNA1株には
BphS1T1と相同性の高いもう一つの制御遺伝子セッ
トBphS2T2があり、ビフェニル以外のエチルベンゼン
やトルエンなどの芳香族化合物が存在する場合は
BphS1T1とBphS2T2が協調して各遺伝子クラスターの
転写を誘導する。ビフェニルに対してはBphS2T2が応
答しないため、BphS1T1のみが各遺伝子クラスターの
転写を誘導する。しかしながら300を超える遺伝子の
ビフェニル代謝系酵素については多数のアイソザ
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
PCB汚染の浄化を考えると汚染土壌にRNA1株を導
入して使用することが想定され、土壌中でのRHA1株
の応答に興味が持たれる。そこで、農業環境技術総
合研究所の小川直人博士(現・静岡大学農学部)ら
と共同で、RHA1株を滅菌土壌に接種して培養後、DNA
アレイを用いて遺伝子発現プロファイルを解析する
ことを試みている。農業環境技術総合研究所のグル
ープが試行錯誤の末、土壌から直接RNAを抽出する手
法を確立した成果である。まだ具体的な結論を得る
には至っていないが、土壌から直接調製したRNAで
DNAアレイ解析が可能になった意義は大きいと考え
ている。
転写誘導が全てBphS1T1の支配下にあるとは考えに
くく、これらの遺伝子の転写制御メカニズムに興味
が持たれる。一方、ビフェニル/PCB分解経路上流酵
素遺伝子の転写がグルコースにより抑制されること
も見いだしている。DNAアレイを用いた解析では300
近い遺伝子の転写レベルがグルコース存在下で低下
していることが示唆された。Rhodococcusは放線菌の
一種でグルコース抑制のメカニズムが明確になって
いないが、ビフェニル水酸化酵素遺伝子(bphA1)プロ
モーターにおいてBphS1T1による転写誘導を受ける
最小領域でグルコース抑制もかかることが示唆され
ている。
___________________________________________________________________________________________
シンポジウム要旨
ウイルス研究から明らかになった
海産原生生物ラビリンチュラ類の分解特性の多様性
高尾 祥丈(水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所日本学術振興会特別研究員)
1980 年代の終わりに、海洋には夥しい量 (104
〜 109 / ml)のウイルスおよびウイルス様粒子
(VLP: virus-like particle) が存在することが明
らかとなって以降、様々な細菌や真核藻類に感染
するウイルスが発見され、ウイルス感染が宿主の
現存量変動に大きく影響していることが明らか
となった。またウイルス感染は、炭素や窒素、そ
の他の栄養塩の循環に大きく寄与していると考
えられており、海洋生態系においてウイルスの果
たす役割の重要性に関する認識が高まりつつあ
る。現在、海洋ウイルスに関する研究の多くは、
細菌類や真核微細藻類を宿主とするウイルスを
対象とするものであり、今日までに単離され研究
材料として用いられている真核微細藻類感染性
ウイルスの多くは Phycodnaviridae 科として分類
される (もしくは Phycodnaviridae 科ウイルスと共
通した性質を持つ) 大型 DNA ウイルスであるが、
近年、小型 DNA
ウ イ ル ス や
RNA ウイルス
も相次いで発
見されている。
これらのウイ
ルスに関する
分子生物学的
な研究により、
海洋ウイルス
の多様性の一
図 1. ラビリンチュラ類の光学顕微
鏡像
端も解明され
(スケール:10 μm)
つつあり、海産
真核微細藻類
に感染するウイルスに関する生態学的ならびに
分子生物学的な理解は着実に深まりつつある。し
かし無色従属栄養性原生生物を宿主とするウイ
98
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
きく異なるクレードに属していることが明らか
ルスに関する知見は非常に少ないのが現状であ
となった。
る。
さらに、2004 年および 2005 年に広島県五日市
一方、ラビリンチュラ類は海洋に生息する直径
港においてラビリンチュラ類感染性ウイルスの
5 - 20μm の無色の原生生物であり、クロミスタ界、
現存量調査を行ったところ、上述の2タイプのウ
ストラメノパイル生物群に属する生物群である。
イルスが検出された。前者は赤潮原因藻の一つ
本生物群は極域から熱帯に至る沿岸域に広く分
布し、現存量の豊富さ、ならびに高度不飽和脂肪
H.akashiwo による赤潮発生後に急増したのに対
酸の生産能力等の特徴から、海洋生態系における
重要な真核生物の分解者として注目されつつあ
る。しかしながら、分類の混乱や検出・計数法の
不備等の理由により、本生物群の詳細な生態学的
知見は得られていない。
ウイルスは、宿主の存在なしには増殖すること
が不可能であり、その宿主特異性は非常に高いこ
図 2 ラビリンチュラ類感染性ウイルス
とが知られている。そのため、ウイルスの生態は
A: SssRNAV B: SmDNAV
宿主のそれと密接に関係しているおり、ウイルス
の生理・生態について研究を行うことは、その宿
し,後者は調査期間を通して急激な現存量の変化
主生物の生理・生態についても多くの知見をもた
を示さず、両者の動態は著しく異なることが明ら
らすと考えられる。そこで、演者らは、日本各地
かとなった。両ウイルスの動態はそれぞれが宿主
の海域からラビリンチュラ類感染性ウイルスの
とするラビリンチュラ類の量的推移を反映して
分離を行い、152 株を確立した。これらのウイル
いると考えられることから、ラビリンチュラ類群
ス株は、その宿主域と遺伝学的・形態学的特徴に
集中には、赤潮藻類の捕食ならびに死骸を積極的
基 づ き 「 小 型 球 形 の 1 本 鎖 RNA ウ イ ル ス
に分解するグループとその他の有機物を栄養源
(SssRNAV:φ25 nm)」と「大型不定形ウイルス
として有するグループとが共存しており,それぞ
の2本鎖 DNA ウイルス(SmDNAV:φ140 nm)」
れが全く性質の異なるウイルスの影響を受けて
の2タイプに群別され、それぞれのウイルスが宿
いる可能性が示唆された。
主とする株はラビリンチュラ内で系統学的に大
___________________________________________________________________________________________
難培養性環境微生物の培養化と
微生物種間ネットワークの解析
シンポジウム要旨
鎌形 洋一(産業技術総合研究所ゲノムファクトリー研究部門
部門長)
であり、実際には優占種と希少種がいてその種の総
数は 1 グラムの土あたり 1,000,000 種のオーダーで
はないか、という驚くべき報告がなされた。ある特
定の地理的位置にある森林土壌 1 グラムあたりの微
生物種が 1,000,000 とすれば地球環境全体でいった
い何種の微生物が存在するかは、天文学的数値とは
言わないまでも、今日の我々の想像を大きく越えた
値であることは疑いようがない。もっとも微生物の
種とは何か、という本質的な点については今なお議
論すべき問題は残している。だがその問題について
は敢えて問わないことにして、仮に地球上の全微生
物種をさらに3桁多い 1,000,000,000 種とするだけ
でも、現在正確に記述された微生物種は全体のわず
か 0.0005%ということになる。
2. 難培養性微生物とは何か?
さて本演題である難培養微生物についてであるが、
上述の 0.0005%が培養可能な微生物であり、残りは
培養困難微生物であると捉えるのは大きな誤りであ
1. 地球上に存在する微生物の種の数はどれくらい
か?
今日性質が解明され、命名されている微生物は
5,000 種にも満たないほどである。昆虫の 65 万種に
比べれば、いかにその数が少ないかがわかると同時
に、微生物の種の数が昆虫の種の数より少ないはず
はないであろうと思うのは当然のことである。それ
では一体微生物の種はどれくらいの数だけ存在する
のであろうか?その答えはもちろん誰も持ち合わせ
てはいない。ただ 1990 年、16S rRNA 遺伝子による
多様性解析とは一線を画した研究として森林土壌を
対象に、複雑微生物系全体から抽出した全 DNA の解
離曲線の解析結果から微生物種の数を割り出した結
果がある。それによれば土壌 1 グラムには 109 個オ
ーダーの原核生物がいて、種の数はおよそ 10,000
のオーダーであると推定された。しかし、2005 年に
なって 10,000 種というのはひとつひとつの種の微
生物が同じような数だけ存在していると仮定した値
99
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
る。近代微生物学のおよそ 100 年の歴史の中で、正
確な記述がなされてきたものは確かに 5,000 種程度
であるが、培養されてもなんら記述されていない微
生物も膨大であることは間違いのないところである。
しかし、それを差し引いてもなお、多くの微生物が
培養困難な微生物あるいは、
(感覚的に)容易に培養
できない微生物であることは疑う余地がない。活性
汚泥、メタン発酵汚泥、ルーメン、バイオフィルム
など微生物が非常に高密度に集積している系を顕微
鏡で観察し、その後、適当な培地上で培養をして見
ると、顕微鏡で見えた形態的多様性とは似ても似つ
かないほど、形状的に見てわずかな種類の微生物し
かコロニーを形成していないことは、誰でも“直感
的に”経験しているところである。
演者はこれまで多くの難培養微生物と対峙してき
た経験から、難培養微生物を分類するとおおよそ以
下のようになると考えている。もちろんもっとさま
ざまな考え方や分類の仕方があることはご了承いた
だきたい。
(1) 生育速度が著しく遅い微生物:大腸菌の実験室
での平均世代時間は 30 分である。筆者らの常識では
この世代時間はいわば“非常識な”速さである。こ
れまでに筆者らが培養に成功した微生物のうち平均
世代時間が最も長かったのは 1 週間である。これは
(基質濃度など条件によるが)液体培養でほぼ静止
期に達するまで 3 ヶ月を要する長さである。実際の
環境を考えた場合、有機物濃度が常に律速になって
いるが、それでも少しずつ供給されているような場
であれば増殖が速くなければならない必然性はない。
(2) 寒天でコロニーを形成しない微生物:これは先
にも述べたが、そもそも寒天という物理化学的な足
場の上でコロニーを作る微生物のほうが圧倒的に少
ないと考えるべきである。自然界における微生物の
生育の場とは鉱物粒子、植物遺体、動物消化管、水
系、さらには他の微生物のバイオフィルムなど多様
であるから、寒天というのはむしろ特殊な場である
と言えよう。
(3) 濁度として検知できない細胞数レベルで静止期
を迎えてしまう微生物:このような微生物の代表例
はアンモニア酸化細菌、鉄還元細菌、硫黄還元菌な
どであるが、その他にも同様の傾向を示すものもあ
る。生成物阻害や基質や電子受容体の濃度律速で起
きる場合が多い。
(4) 生育に一定以上の細胞濃度を必要とする微生
物:微生物学の基礎は細胞ひとつからの生育を前提
としている。したがって液体培養においては理論的
にひとつの生きた細胞を接種すれば生育は開始する
はずである。しかし、筆者らの経験では 103 から 105
以上の初期接種量が絶対必須な微生物が確かに存在
する。これは N-アシルホモセリンラクトンによるク
オーラムセンシングと同様の効果を持つ生育因子あ
る い は 近 年 bacterial cytokine と 呼 ば れ る
Resuscitation promoting factor (Rpf)のような物
質の存在を示唆するものである。
(5) 他の微生物の生育因子を必要とする微生物:こ
100
別冊
れは上記(4)とも関連するが、異種微生物間のクロス
トークと呼べるような現象であり、精緻な解明が成
されている例は少ないが、あらゆる環境が複雑微生
物系によって成立している以上、異種微生物間のコ
ミュニケーションや生育因子のやりとりはおそらく
普遍的な現象ではないかと思われる。このような微
生物は生育に必要な因子を供給する微生物が見つか
らない限り培養は困難である。筆者らは最近、活性
汚泥中のある種の微生物(A)が別種の微生物(B)の生
産する物質によって生育が著しく助長されることを
見いだした。さらに微生物(B)の生産物は微生物(A)
のみならず、種や属を越えた他の微生物(C)や微生物
(D)の生育を促進すること、さらに微生物(C)は属種
の異なる微生物(G, F, I, J, K)の生産物によっても
生育促進を受けることを明らかにした。これらのこ
とは微生物間での物質のやり取りは我々が想像する
以上に複雑多様であり、さまざまな微生物間のクロ
ストークが行われていることを強く示唆するもので
ある。
(6) 種間水素伝達を行う共生微生物:嫌気性微生物
においては種間で主にやりとりされる分子は水素で
ある。多くの嫌気性微生物は物質の分解過程で水素
を発生する(水素発生型発酵微生物)。しかし、水素
は一定以上の濃度まで蓄積すると、物質の嫌気的酸
化反応そのものを阻害してしまう。水素発生型嫌気
性微生物群はこれを回避するために、発生する水素
を速やかに除去する微生物を必要とする。特に脂肪
酸や低級アルコール、芳香族化合物を分解する微生
物にその傾向が顕著である。”水素除去者”は多く
の場合、水素を用いて炭酸ガスを還元しメタンを作
るメタン生成古細菌である。実際の複雑系を in situ
hybridization などの手法で観察すると、水素発生
を行う微生物を取り囲むように水素資化性メタン生
成古細菌が存在している。このような水素発生型嫌
気性微生物(嫌気共生細菌と呼ばれている)はほと
んど例外なく分離培養が難しい。筆者らはこのよう
な微生物の分離を試みてきたが、もっぱら分離にあ
たっては、水素を消費するメタン生成古細菌を共存
させた共培養を行っている。
(7) 昆虫などに共生する微生物:昆虫の体内にはさ
まざまな微生物が共生しているのはよく知られてい
る事実である。通常一種の昆虫に一種の微生物が共
生しているが、時として複数種の微生物を共生させ
ていることもある。最もよく研究されているものの
ひとつとしてはアブラムシの体細胞に共生している
Buchnera と呼ばれる大腸菌と遠縁の微生物である。
似たような細菌はカメムシを初めとする他の多くの
昆虫にも見いだされている。数ある難培養微生物の
中でこれらの微生物群はおそらく最も培養が難しい
微生物であると考えられる。その最大の理由はこれ
らの微生物は宿主昆虫に極度に依存した生活環を持
ち、宿主とともに共進化したため、単独で生きてゆ
くために必要な多くの遺伝子を欠損させている。極
言すればミトコンドリアのような運命をたどろうと
している微生物であり、もはや細胞の一器官の様相
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
を呈しているといってよいからである。
本講演では演者らが取り組んできた微生物の培養化
の試みを通して得られた難培養性微生物の実体につ
いて概観したい。
極限環境微生物学会 極限シンポジウム委員会
委員長
為我井秀行(日本大学)
副委員長
野尻 秀昭(東京大学)
委員
伊藤 政博(東洋大学)
佐藤 孝子(海洋研究開発機構)
玉腰 雅忠(東京薬科大学)
八波 利恵(東京工業大学大学院)
道久 則之(東洋大学)
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
102
別冊
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
2007 年 11 月 29 日(木)・30 日(金)
九州大学西新プラザ
103
別冊
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
第8回極限環境微生物学会年会の開催にあたって
極限環境微生物学会は2007年度の年会を11月29、30の両日に九州大学西新プラザで開催す
ることになりました。福岡の地で皆様をお迎えする機会をいただけ、大変嬉しく、私どもの研究室一同
張り切って準備を進めてまいりました。また今年は、極限環境微生物の中の大きな部分を占めるアーキ
アが発見されて30周年にあたり、この記念の年に本年会のお世話をさせていただけるのは、長年アー
キアの研究を行ってきました私にとりましては格別に記憶に残ることと思います。歴史を振り返ります
と、2000年に本学会が発足して第1回の大会を東京大学山上会館で開催してから、今年は第8回の
年会を迎えますが、第3回大会が徳島大学で開催されて以来の地方開催ということになります。遠路お
越しいただく皆様に、是非とも満足していただけるように頭を捻りましたが、なかなか斬新なアイデア
が浮かびませんでした。特別講演の二題は私の研究領域に近い内容で恐縮ですが、アーキアの遺伝情報
伝達系に関する講演(DNA 複製、プロテインスプライシング)を準備いたしました。また、極限微生物
由来の酵素、タンパク質の構造と機能の研究が世界中で活発に展開されるようになった現在、我が国を
代表するこの領域の研究者の方々にご協力いただき、「極限環境微生物の蛋白質研究最前線」と題する
講演会を、時間の関係でサテライトシンポジウムという形で前日に開催することを企画いたしました。
そして今大会のもう一つのトピックスは、本学会が「微」を取って極限環境生物学会に拡大していく第
一歩として、不死身の生物として知られるクマムシが極限環境に耐えるしくみについての特別講演が用
意されていることです。さらに、これらの招待講演に加えて、昨年度より始まりました「技術コーナー」
では5社のバイオ企業にご協力いただき、装置、試薬や新技術の紹介が行われますので、こちらにも是
非足をお運びいただけますようにお願い申し上げます。
以上のような企画をもって皆様のご来福をお待ち申し上げておりますので、本学会会員の皆様、また
非会員の皆様にも、サテライトシンポジウム共々本年会にできるだけ多くの方々に参加いただけ、新し
い情報収集とともに、人と人との交流を通して新たな共同研究の可能性などを探る機会としてご活用い
ただけましたら大変幸いでございます。
平成19年11月
九州大学大学院
農学研究院
石野良純
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
第8回極限環境微生物学会年会
「極限環境微生物の蛋白質研究
別冊
サテライトシンポジウム
最前線」
日時:平成19年11月28日 午後1時~6時30分
場所:九州大学箱崎キャンパス
農学部4号館1階110講義室
参加費無料
プログラム:
超好熱ア-キア Pyrobaculum islandicum のグルタミン酸脱水素酵素の構造と活性化機構
大島 敏久(九州大院・農学研究院)
超好熱菌のゲノム情報と発現形質の矛盾に着目した新規代謝酵素の探索
跡見 晴幸(京都大院・工学研究科)
ゲノム情報を利用した機能解析による超好熱古細菌糖代謝経路の解析
河原林 裕(産業技術総合研究所)
[Fe]ヒドロゲナーゼの結晶構造と活性中心の収斂進化
嶋 盛吾 (Max-Planck-Institute, Germany)
超好熱古細菌翻訳関連タンパク質の構造生物学
木村 誠 (九州大院・農学研究院)
古細菌の極性脂質生合成酵素の特徴
古賀 洋介(産業医科大)
Thermus thermophilus によるシリカ鉱物化機構の解明
~地殻で最も多い化合物の形成に関わる極限環境微生物の機能を解き明かす~
土居 克己(
(九州大院・農学研究院)
New Biomaterials: Biofabrication of biosilica-glass by sponges
Werner E.G. Muller (Universitut, Duesbergweg, Germany)
九州大学西新プラザ
105
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
第8回極限環境微生物学会年会・スケジュール
11 月 29 日(木)
(12:30-13:00 評議員会)
13:00-13:10 開会挨拶
13:10-14:00
セッション1「環境適応 I」O-01~03 座長:石野良純(九州大)
14:00-14:30
総会、学会奨励賞授賞式
14:30-15:50 ポスター発表(奇数番号)、コーヒーブレーク
15:50-17:10 特別講演 座長:石野良純(九州大)
S-01 "Protein Escape Artists" Dr. Francine Perler (New England Biolabs, Inc.)
S-02 "Evolution of complex replication proteins in the third domain of life" Dr. Isaac Cann (University of
Illinois at Urbana-Champaign)
17:10-18:10
セッション2「生態と進化」O-04~07 座長:丸山正(独立行政法人海洋研究開発機構)
18:30-
懇親会、ポスター賞発表・授賞式
11 月 30 日(金)
10:00-11:40
セッション3「環境適応 II」O-08~10 座長:跡見晴幸(京都大)
セッション4「極限環境生物」O-11~13 座長:國枝武和(東京大)
11:40-13:30 昼食、休憩
13:30-14:00 学会奨励賞受賞講演 松永藤彦(九州大学)
14:00-14:40 特別講演 座長:三輪哲也(独立行政法人海洋研究開発機構)
S-03 「極限環境に耐える動物:クマムシの仕組みを探る」 國枝武和 (東大理)
14:40-16:00 ポスター発表(偶数番号)、コーヒーブレーク
16:00-17:00
セッション5「代謝と生理」O-14~17 座長:大島敏久(九州大)
17:00- 閉会挨拶
発表の要領
1)口頭発表(特別講演を除く)
発表時間:15分(12分報告、3分質疑応答、でお願いいたします)
発表方法:原則的に PC プロジェクターを使います(ただし OHP 対応可)。各自のパソコンをお使い下さい。
会場側として Windows PC (VISTA, PowerPoint2007)を1台用意いたしますので、USB フラッシュメモリー、
CD-R、DVD-R の対応は可能です。(MAC の場合は画像表示 互換性の問題があり、ご持参いただくのが安全で
す。なお、mini-VGA ポートを持ったモバイル PC や iBook,PowerBook をご持参される場 合は、mini-VGA---VGA
変換アダプター(Apple VGA 変換アダプター等)を必ずご持参下さい。)
2)ポスター発表
ボードサイズ(縦 180cm×横 90cm)、画鋲は事務局で用意します。初日の 13:00 までには所定の位置に掲示
してください。なお発表日は、奇数番号 が 29 日(木)偶数番号が 30 日(金)となっています。発表番号を
ご確認の上、指定時間にお願いいたします。なお、本年度も優秀ポスター賞を数点表彰いた します。審査対
象に指名されたポスター発表者は、別途指定された審査時間にもポスター発表を行ってください。よろしく
お願いいたします。
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
第8回極限環境微生物学会年会・プログラム
11 月 29 日(木)
13:00~13:10 開会挨拶、
13:10~14:00
セッション1「環境適応 I」 座長:石野良純(九州大)
O-01 K+チャネルと K+/H+アンチポーターの特性を併せ持つ 2 成分 K+/H+アンチポーターの発見 藤澤 誠
(マウントサイナイ医科大学)、○伊藤政博(東洋大学)、Terry A. Krulwich(マウントサイナイ医科大学)
O-02 Shewanella violacea DSS12 の圧力応答におけるエイコサペンタエン酸の生理機能の解析 ◯川本
純 (京大化研)、阿部文快、佐藤孝子、加藤千明 (海洋機構)、仲宗根 薫 (近大工)、佐藤 智 (京大院理)、
細川雅史 (北大院水産)、栗原達夫、江崎信芳 (京大化研)
O-03 低温菌 Shewanella livingstonensis Ac10 の低温適応に要求される高度不飽和脂肪酸の構造的特徴
◯佐藤翔、川本純 (京大・化研)、佐藤智 (京大・院理)、栗原達夫 (京大・化研)、江崎信芳 (京大・化研)
14:00~14:30
総会
14:30~15:50
ポスター発表(奇数番号)、コーヒーブレーク
15:50~17:10
特別講演 座長:石野良純(九州大)
S-01
"Protein Escape Artists" Dr. Francine Perler (New England Biolabs, Inc.)
S-02 "Evolution of complex replication proteins in the third domain of life" Dr. Isaac Cann (University
of Illinois at Urbana-Champaign)
17:10~18:10
セッション2「生態と進化」 座長:丸山正(独立行政法人海洋研究開発機構)
O-04 南極地域由来新規微生物の分離と同定 ○三吉祐輝、近藤由佳、横山祐一郎、島原由利江、跡見晴幸、
今中忠行(京都大学工学研究科 合成・生物化学専攻)
O-05 成層圏から単離された極限環境微生物 ◯Yinjie Yang(東京薬科大学)、横堀伸一(東京薬科大学)、
山上隆正(宇宙航空研究開発機構)、飯嶋一征(宇宙航空研究開発機構)、井筒直樹(宇宙航空研究開 発機
構)、福家英之(宇宙航空研究開発機構)、斉藤芳隆(宇宙航空研究開発機構)、松坂幸彦(宇宙航空研究
開発機構)、並木道義(宇宙航空研究開発機 構)、太田茂雄(宇宙航空研究開発機構)、鳥海道彦(宇宙航
空研究開発機構)、瀬尾基治(宇宙航空研究開発機構)、山田和彦(宇宙航空研究開発機構)、山 岸明彦(東
京薬科大学)
O-06 南部マリアナトラフにおける熱水性堆積物中の微生物相 ◯加藤真悟、小林智織(東薬大)、掛川武、
佐藤誠悟(東北大)、益田晴恵(大阪市立大)、浦辺徹郎(東大)、横堀伸一、山岸明彦(東薬大)、YK05-09
航海乗船者一同
O-07 rpoB’遺伝子による好塩性古細菌の系統解析 ○峯岸 宏明、亀倉 正博(好塩菌研究所)、伊藤 隆(理
化学研究所)、水木 徹(東洋大学)、越後 輝敦(東洋大学)、宇佐美 論(東洋大学)
107
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
18:30~
別冊
懇親会、ポスター賞発表・授賞式
11 月 30 日(金)
10:00~11:40
セッション3「環境応答 II」 座長:跡見晴幸(京都大)
O-08 触媒ドメインの好アルカリ性化とキシラン結合ドメインの結合能向上に基づくアルカリキシラナーゼ
の機能強化 梅本博仁,高倉 淳,谷澤里沙,Ihsanawati,八波利恵,福居俊昭,熊坂 崇,田中信夫,◯
中村 聡(東工大院生命理工,CREST-JST)
O-09 Thermus thermophilus の抗生物質感受性に及ぼすシリカの影響 ○岩井 覚(崇城大学)、中薗 武
雄(崇城大学)、福田 耕才(崇城大学)、土居 克実(九州大院)、緒方 靖哉(崇城大学)
O-10 プラスミド由来 MvaT family 転写制御因子 Pmr の結合位置の網羅的検出 内藤邦彦、新谷政己、尾曲
克己、宮腰昌利、山根久和、○野尻秀昭(東京大学)
セッション 4「極限環境生物」 座長:國枝武和(東京大)
O-11 極限環境耐性動物クマムシの一種、Ramazzottius varieornatus の 培養法の確立 ○堀川大樹(東京
大学)、國枝武和(東京大学)、阿部渉(東京大学)、中原雄一(農業生物資源研究所)、渡邊匡彦(農業生物資源
研究所)、 坂下哲哉(原子力研究機構)、浜田信行(原子力研究機構, 群馬大学)、小林泰彦(原子力研究機構, 群
馬大学)、東正剛(北海道大学)、奥田隆(農業生物資源研究所)
O-12 極限環境生物(深海生物)の生存捕獲法とオオグチボヤの運動特性 ○三輪哲也,花園美樹(海洋研
究開発機構)、高山茂樹(魚津水族館)、三宅裕志(新江ノ島水族館)、掘越弘毅(海洋研究開発機構)
O-13 シロウリガイ共生細菌ゲノムの比較からみえるゲノム縮小進化 ◯桑原宏和、高木善弘、吉田尊雄、
島村繁、瀧下清貴、加藤千明、丸山正 (海洋研究開発機構 極限環境生物圏研究センター)、James D Reimer (琉
球大学)
11:40~13:30
昼食、休憩
13:30~14:00
学会奨励賞受賞講演
14:00~14:40
特別講演 座長:三輪哲也(独立行政法人海洋研究開発機構)
S-03 「極限環境に耐える動物:クマムシの仕組みを探る」 國枝武和 (東大理)
14:40~16:00
ポスター発表(偶数番号)、コーヒーブレーク
16:00~17:00
セッション5「代謝と生理」 座長:大島敏久(九州大)
O-14 Pyrococcus furiosus 由来ウラシル DNA グリコシラーゼ-PCNA 間の機能的相互作用 ◯清成信一、内村
真伊子、石野良純(九州大学 農学研究院 遺伝子資源工学部門)
O-15 超好熱アーキア Sulfolobus tokodaii の L-セリン生合成系の解明:ホスホセリンアミノ基転移酵素
(PSAT)の機能解析 ○清水泰博(九州大学)、米田一成(九州東海大学)、土居克実(九州大学)、櫻庭
春彦(徳島大学)、大島敏久(九州大学)
O-16 Hydrogenobacter thermophilus の窒素同化代謝
108
○亀谷将史、新井博之、石井正治、五十嵐泰夫(東
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
京大学)
O-16 深海底泥からのアミノグリコシド抗生物質生合成遺伝子の探索 ○為我井秀行、青木里恵、神田優美、
長屋篤史(日本大学)、荒川康、加藤千明(独立行政法人海洋研究開発機構)
17:00
閉会挨拶
ポスター発表
11 月 29 日 13 時までに所定の位置に掲示する。30 日 16 時以降に掲示を外す。発表日は、
11 月 29 日(火)14:30~15:50 奇数番号
11 月 30 日(水)14:40~16:00 偶数番号
(優秀ポスター賞審査時間 29 日 14:30-14:50)
p-01 Thermus 属細菌における Silica-induced protein (Sip)の発現誘導とその制御機構の解析 ○藤野泰寛、
横山拓史、大島敏久(九州大学)、緒方靖哉(崇城大学)、土居克実(九州大学)
p-02 Aeropyrum pernix 由来の DNA ポリメラーゼと PCNA 間の相互作用解析 ◯松川博昭、奈須えりこ、石野
良純 (九州大学)
p-03 高度好塩性アーキア Haloarcula japonica rrn オペロン破壊株の作成と遺伝学的解析 ○前田豊、仲宗
根薫(近畿大学システム工学研究科)
p-04 高度好塩性アーキア Haloarcula japonica 転写因子 TBP, TFB, TFE の構造解析 ○仲宗根 薫(近畿大
工・生化)松味 弘也(近畿大院・システム工学)
p-05 高度好塩性アーキア Haloarcula japonica RNA ポリメラーゼの高発現及びサブユニット間相互作用の解
析 ○ 松味弘也、下浦洋祐、仲宗根薫(近畿大学工学部)
p-06 超好熱性アーキア Pyrococcus furiosus における DNA 複製起点の二重鎖開裂反応の解析 ○竹村貴恵、
足立彰紀、松永藤彦、石野良純(九州大学大学院 遺伝子資源工学専攻)
p-07 超好熱性アーキア Pyrococcus furiosus 由来複製開始因子 Cdc6/Orc1 の生化学的解析 ◯秋田 眞季、
松永 藤彦、石野 良純 (九州大学)
p-08 超好熱性アーキア Aeropyrum pernix 由来 DNA リガーゼ遺伝子の同定と酵素の特性 ○上河内 徹、清
成 信一、石野 良純(九州大学)
p-09 超好熱性アーキア Pyrococcus furiosus の DNA 複製開始・伸長段階で機能する GINS 複合体について ○
吉用武弘、藤兼亮輔、川波美幸、松永藤彦、石野良純(九州大学)
p-10 Thermococcus kodakaraensis KOD1 株の染色体構造の解析 ○円山由郷(京都大学)、大庭良介(筑波
大学)、松見理恵、跡見晴幸、今中忠行、竹安邦夫(京都大学)
p-11 泉温および溶存元素濃度が異なる酸性硫黄泉間におけるアーキア群集構造の比較
修一、山本英夫、黒沢則夫(創価大学大学院 工学研究科)
○佐藤智子、山本
p-12 深海底泥から得られた新菌種 Alkalimonas collagenimarina AC40(T) 由来のコラーゲン分解酵素 ◯
倉田淳志、内村康祐、宮崎征行、島村繁、能木裕一、小林徹、掘越弘毅(独立行政法人海洋研究開発機構 極
限環境生物圏研究センター)
p-13 沖縄近海海底土壌の遺伝子資源を利用した Taq DNA Polymerase の改変による新規有用酵素の創製 ○
鍋 健吾(九州大学), 松川 博昭(九州大学), 山上 健(九州大学), 田島 秀二(プレシジョンシステムサイエ
109
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
ンス), 河原林 裕(産総研),石野 良純(九州大学)
p-14 相模湾および伊豆小笠原海域でプランクトンネットを用いて採捕した中深層性生物の組織培養
西聡史,喜多村稔,Dhugal Lindsay,小山純弘,三輪哲也,掘越弘毅(JAMSTEC)
○小
p-15 高濃度フェノール分解能を有する深海底酵母に関する研究
○朝柄武司、鈴木絢也、高橋桃子、橋本
英樹(明治大学)、長濱統彦((独)海洋研究開発機構所・極限環境生物圏センター)、浜本牧子(明治大
学)
p-16 ”ちきゅう”による下北半島沖掘削試験から得られたコア堆積層中の好気生菌が生産する酵素解析
○ 三浦 健、森 梢、小出 修、小林 徹、高井 研、掘越 弘毅(海洋研究開発機構)
p-17 ”ちきゅう”による下北半島沖掘削試験から得られたコア堆積層中の好気生菌の多様性
○小出 修、
森 梢、島村 繁、三浦 健、高木善弘、小林 徹、布浦拓郎、井町寛之、稲垣史生、高井 研、掘越弘毅
(海洋研究開発機構 極限環境生物圏 研究センター)
p-18 日本近海深海底の湧水環境における微生物学的多様性カタログ作成の試み
理学部化学科,海洋研究開発機構)
p-19 マリアナ海溝より得られた脱窒細菌の硝酸還元酵素の発現制御
加藤千明、掘越弘毅(海洋機構)、為我井秀行(日本大学)
p-20 深海微生物による生分解性プラスチックの分解過程の解析
口峻允、榎牧子、兼広春之(東京海洋大学)
◯森久夏海(日本大学文
○池田恵理子、安藤理美(日本大学)、
◯佐藤孝子、加藤千明(海洋機構)、関
p-21 好アルカリ性細菌 Bacillus pseudofirmus OF4 株の走化性レセプター
ノ)、伊藤政博(東洋大・バイオナノ、東洋大・生命科学)
○荒川康(東洋大・バイオナ
p-22 好アルカリ性細菌 Bacillus pseudofirmus OF4 株の走化性レセプターの蛍光タンパク質を用いた可視化
○友松 貴央、藤浪 俊、伊藤 政博(東洋大学大学院・生命科学)
p-23 新規酵素アルカリペクチナーゼの探索 ◯加藤武揚、深田洋介、井上明(東洋大学大学院 生命研究科)
p-24 蛍光タンパク質を用いた好アルカリ性細菌 Bacillus pseudofirmus OF4 株の電位駆動型 Na チャネルの
可視化 ○藤浪 俊(東洋大)、佐藤孝子(海洋機構)、Terry A. Krulwich(Mount Sinai School of Medicine)、
川岸郁朗(法政大)、伊藤政博(東洋大)
p-25 好アルカリ性 Bacillus 属細菌、枯草菌、黄色ブドウ球菌がもつ Cation/Proton Antiporter-3(CPA-3) フ
ァミリーのアンチポーター解析 ○夏井信介(東洋大院・生命科学)、大平高之(東洋大・生命科学)、Talia
H. Swrtz、David B Hicks、Terry A.Krulwich(Mount Sinai School of Medicine) 伊藤政博(東洋大院・東
洋大・生命科学)
p-26 非塩性土壌から分離した新規好アルカリ性中度好塩性細菌の分類学的研究 ○越後 輝敦(東洋大学バ
イオ・ナノエレクトロニクス研究センター)、峯岸 宏明(東洋大学バイオ・ナノエレクトロニクス研究セン
ター)、水木 徹(東洋大学バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター)、長岡 修平(東洋大学・工学部・
応用化学科)、亀倉 正博(好塩菌研究所)、宇佐美 論(東洋大学バイオ・ナノエレクトロニクス研究セン
ター、東洋大学・工学部・応用化学科)
p-27 低温菌 Shewanella livingstonensis Ac10 のエイコサペンタエン酸生合成調節機構の解析
敬太郎、川本 純、栗原達夫、江崎信芳(京都大学 化学研究所)
p-28 南極細菌 Flavobacterium xanthum 由来 AFP 遺伝子の大腸菌発現系の構築
斉(関西大学 生命生物工学科)
p-29 高い銅耐性を有する深海酵母の銅タンパク質の同定
110
○古賀
○比嘉桜、河原秀久、小幡
○皆川 洋一、角 公一郎、大浦 隆宏(東京工
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
業大学)、三浦
健、阿部 文快(海洋研究開発機構)、梶原
別冊
将(東京工業大学)
p-30 深海酵母の脂質蓄積能の解析 ○丹羽 智晃、大浦 隆宏(東京工業大学)、三浦 健、阿部 文快(海
洋研究開発機構)、梶原 将(東京工業大学)
p-31 低温活性 β-ガラクトシダーゼを生産する深海底酵母に関する研究
○斉藤美保子(明治大学)、長
濱統彦((独)海洋研究開発機構所・極限環境生物圏センター)、浜本牧子(明治大学)
p-32 rpoB’遺伝子とそのアミノ酸配列による好塩性古細菌の系統関係
峯岸宏明、亀倉正博(好塩菌研究
所)、伊藤隆(理化学研究所)、水木徹(東洋大学)、越後輝敦(東洋大学)、宇佐美論(東洋大学)
p-33 市販天然塩から分離された好酸性好塩性古細菌
峯岸宏明、○水木徹(東洋大学)、越後輝敦(東洋
大学)、長岡修平(東洋大学)、亀倉正博(好塩菌研究所)、宇佐美論(東洋大学)
p-34 三角形平板状の形態をもつ高度好塩性古細菌 Haloarcula japonica の形態形成に関与する因子の探索
○川崎 乙美(東洋大院・生命科学)、高品 知典(東洋大・生命科学)
p-35 市販天日塩を用いた新奇好塩性微生物の探索 ○ 長岡修平(東洋大学・工学部応用化学科)、峯岸宏
明(東洋大学・バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター)、水木 徹(東洋大学・バイオ・ナノエレク
ト ロニクス研究センター)、越後輝敦(東洋大学・バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター)、西澤実
奈子(東洋大学・工学研究科バイオ・応用化学専攻)、 亀倉正博(好塩菌研究所)、宇佐美 論(東洋大学・
工学部応用化学科・バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター)
p-36 放射線抵抗性細菌における組換え修復の分子メカニズム
成(原子力機構)
p-37 放射線抵抗性細菌の遺伝子発現調節因子の機能的特性
(原子力機構)
○佐藤勝也、菊地正博、大庭寛史、鳴海一
○大庭寛史、佐藤勝也、菊地正博、鳴海一成
p-38 Na+/H+対向輸送体をコードする枯草菌由来 mrp(sha)ABCDEFG 遺伝子産物の複合体形成の検討 ○小田
切正人(理研・環境分子生物、横浜市大)、梶山裕介(理研・環境分子生物、信州大)、関口順一(信州大)、
工藤俊章(長崎大)、古園さおり(理 研・環境分子生物)
p-39 Aeropyrum pernix 由来 PCNA の多量体形成に関する研究
大・院、農学研究院)
○内村真伊子、清成信一、石野良純(九州
p-40 Burkholderia cepacia ST-200 株由来のコレステロールエステラーゼの諸性質の解析
洋大学 生命科学部)
p-41 枯草菌のホメオスタシスに関わる K+輸送系機構の解明
(東洋大学大学院 生命科学研究科)
○道久則之(東
○上田哲也、棚橋飛鳥、土屋貴弘、伊藤政博
p-42 Pyrococcus furiosus の DNA 組換え関連タンパク質 Rad54 の生化学的解析
品川日出夫、石野良純(CREST,JST)
○石野園子、小森加代子、
p-43 シアニディオシゾンメロラエのフェレドキシンに関する研究 ○山岡麻美、小澤由希子(立教大学)、
中島 薫(立教大学)、原 匡孝(立教大学)、今井竹夫(立教大学)、漆山秋雄(立教大学)、吉田大和
(立教大 学)、黒岩常祥(立教大学)
p-44 Sulfolobus tokodaii str.7 由来 Alcohol dehydrogenase(ST0053)の機能解析
奈、土居克実、大島敏久(九州大学)
○矢内久陽、前田華
p-45 深海由来の好圧性及びシロウリガイに共生する微生物のイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素の環境適応
機構解析 ◯輿石武(立教大学、海洋機構)、佐藤孝子(海洋機構)、笠原良太、為我井秀行(日本大学)、
今井竹夫(立教大学)、加藤千明(立教大学、海洋機構)
111
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
p-46 シマイシロウリガイの共生微生物のゲノム解析から見えた代謝系の特徴
機構 極限環境生物圏研究センター)
別冊
◯加藤千明(海洋研究開発
p-47 100,000g での大腸菌の増殖
◯下重裕一 (東洋大学大学院)、出口茂、津留美紀子(海洋研究開発
機構)、宇佐美論(東洋大学大学院)、掘越弘毅(海洋研究開発機構)
p-48 有機溶媒耐性 LST-03 リパーゼの異種宿主での過剰発現と分子シャペロンを用いた活性化
祐、荻野博康(大阪府立大学)
◯井上相
p-49 極限環境暴露がクマムシ Ramazzottius varieornatus の 生存期間と繁殖能に与える影響 ○堀川大樹
(東京大学)、國枝武和(東京大学)、坂下哲哉(原子力研究機構)、川井清司(東京工科大学)、岩田健一(農業生
物資源研究所))、中原雄一 (農業生物資源研究所)、浜田信行(原子力研究機構, 群馬大学)、小関成樹(食品
総合研究所)、山本和貴(食品総合研究所)、小林泰彦(原子力研究機構, 群馬大学)、奥田隆(農業生物資源研
究所)
p-50 凸面上に接着した細胞の蛍光ナノ粒子を用いた可視化
○永原朋幸(海洋機構/東京理科大学)、小
西聡史、掘越弘毅(海洋機構)、庄野厚、大竹勝人(東京理科大学)
p-51 高校における極限環境微生物を扱った課題研究
112
◯中川和倫(松山南高校)
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
特別講演要旨
S-01
Inteins: Protein Escape Artists
Francine B. Perler
New England BioLabs, Ipswich, MA, 01938, USA,
email: [email protected]
Inteins are the protein equivalent of introns. They must be removed before the host protein
becomes functional. The intein plus the first amino acid following its C-terminus act as a single
turnover enzyme that removes the intervening intein sequence from the precursor protein and
ligates the flanking sequences (termed exteins) to form the mature host protein. This reaction is
self-catalytic and does not require external cofactors or energy. The standard intein-mediated
protein splicing pathway consists of four coordinated nucleophilic displacement reactions. Over
400 inteins have been identified in archaea, bacteria and unicellular eukaryotes (see InBase, the
on-line intein database at <http://www.neb.com/neb/inteins.html>). This large family of enzymes
show several polymorphisms in nucleophiles and facilitating residues, resulting in an increasing
number of variations in intein-mediated protein splicing mechanisms. We have combined NMR
structural data, mutation analysis, bioinformatics, kinetic data and biochemical analysis to further
refine the catalytic steps that occur during protein splicing of standard and atypical inteins. Our
recent work with atypical inteins has led to the possibility of a new mechanism that includes two
branched intermediates in the splicing pathway. Understanding the mechanism of protein
splicing has allowed researchers to modify inteins to perform various proteolytic cleavage or
ligation reactions that have a multitude of uses in biotechnology and protein engineering.
____________________________________________________________________
S-02
Evolution of complex replication proteins in the third domain of life
Isaac K.O. Cann
Department of Animal Sciences, Department of Microbiology, Institute for Genomic Biology,
University of Illinois at Urbana-Champaign, Urbana, IL 61801, USA
e-mail: [email protected]
Phylogenetic analysis, based on small subunit ribosomal RNA sequences, suggests that life on our
planet is divided into three different domains: Archaea, Bacteria, and Eukarya. Fascinatingly, the
results from this analysis also suggest that the archaea are more closely related to eukaryotic
organisms, including the yeast and humans, than bacteria, although bacteria and archaea appear
similar in ultrastructure. The phylogenetic relationship of the archaea to eukaryotes is further
confirmed by the striking similarities in the proteins involved in DNA replication in the two
domains. The archaeal proteins are, however, less complex when compared to their eukaryotic
counterparts. Recently, through analysis of the genomes of several archaeal organisms, it has
become evident that there are proteins functioning at the replication fork that exhibit complexities
that suggest a transition from the least complex in archaea to the most complex in eukaryotes.
Examples of these proteins include the minichromosome maintenance (MCM) protein,
single-stranded DNA-binding proteins (RPA), and replication factor C (RFC). The MCM, RPA, and
RFC function at the replication fork by unwinding the DNA, stabilizing the ssDNA that is
generated, and loading the processivity factor (PCNA), respectively. In most hyperthermophilic
archaea, a single MCM homolog that oligomerizes into a homohexamer has been described.
113
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
However, in organisms such as M. kandleri, M. jannaschii, and M. acetivorans multiple MCM
homologs that are likely the ancestors of the heterohexameric MCM proteins of eukaryotic
organisms are found. A similar scenario is found in the archaeal RPA homologs. Our analysis
suggests that the archaea have invented different gradations of complexity of this protein. These
proteins range from single-OB fold (ssDNA binding module) polypeptides in organisms such as S.
solfataricus and F. acidarmanus, five-OB fold polypeptides in M. thermoautotrophicus to a
heterotrimeric RPA with similarity to eukaryotic RPA in P. furiosus. We have recently characterized
one of these proteins from the hypethermophilic archaeon M. kandleri and the 2.5 Å resolution
crystal structure of this protein will be presented and discussed. Finally, RFC a molecular motor
that switches DNA replication from very slow with frequent dissociation (distributive) to very fast
with infrequent dissociation is composed of four similar small subunits and one large subunit to
form a heteropentameric complex in eukaryotes. The high similarity of the small subunits
suggested that these four proteins likely originated from the same ancestor. Interestingly, the
genomes of all hitherto sequenced hyperthermophilic and thermophilic archaea contain a single
RFC small subunit-encoding gene and also one gene coding for a RFC large subunit. The product of
the RFC small gene, however, oligomerizes into four protomers to form a complex with the large
subunit and hence mimicking the eukaryotic RFC complex. Therefore, the small RFC subunit of the
hyperthermophilic archaea may represent the ancestral form. Interestingly, we have discovered a
RFC homolog that appears to be a “missing link” in the evolution of the very complex eukaryotic
RFC from the ancestral form. This RFC homolog is made up of two small subunits and one large
subunit. Using biochemical and biophysical analysis, we have determined the unique subunit
organization of this clamp loader found mostly in mesophilic methanogens and the haloarchaea.
Aside from biophysical analysis that allowed us to observe self-assembly of the sliding clamp
(PCNA), we also designed experiments that allowed us to visualized loading of the sliding clamp to
a primer/template junction. Most importantly, we show for the first time that the clamp loader itself
may participate in the assembly of the homotrimeric PCNA, and the physiological implications of
this finding will be discussed. Thus an analysis of archaeal genomes that includes those of
mesophiles and hyperthermophiles may yield important insights into the evolution of complex
replication proteins as seen in extant eukaryotes.
___________________________________________________________________________________________
S-03
極限環境に耐える動物:クマムシの仕組みを探る
○國枝武和
東京大学・理学系研究科・生物科学専攻
[email protected]
目的
クマムシ類は体長数百ミクロンの微小動物で、4 対の肢で歩行する。分類学的には後生動物(=多細
胞動物)に属し、緩歩動物門という独自の動物門を構成する。これまでに、海水生・淡水生・陸生あわ
せて 1000 種あまりが知られる。陸生クマムシの多くは生存環境に応じて乾燥耐性を持ち、乾燥して水
分を失うと、樽のように丸まり水分含量が数%の乾眠と呼ばれる状態に移行する。この状態のクマムシ
は生命活動を示さず、様々な極限環境に耐えることができる(図1)。乾眠状態は給水により速やかに
解除され、通常の生命活動を再開する。クマムシの乾眠は高等動物においても乾燥耐性や極限環境耐性
を持つという好例であり、その機構の解明は動物細胞や臓器の乾燥保存など応用面にも資することが大
きい。我々はクマムシを材料に多細胞動物の乾燥耐性・極限環境耐性を支える分子機構の解明を目的に
研究を進めている。
方法
乾眠に移行するには乾燥がゆっくり進行する必要があることが知られており、この間に乾燥に耐える
準備をすると考えられている。多くの乾燥耐性動物でトレハロースが大量に蓄積することから、この糖
が乾眠に重要な役割を果たすと推定されてきた。そこでまずクマムシについてトレハロース関連遺伝子
の解析を行った。トレハロースの合成・分解酵素について種間で保存された領域からプライマーを設計
し、活動状態・乾眠状態のクマムシから抽出した RNA を鋳型として RT-PCR により目的断片を増幅、
114
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
配列を決定した。得られた配列をもとに特異的なプライマーを作成し、リアルタイム PCR により乾眠移
行時の発現変動を定量的に解析した。
次に、乾眠に関わる実働因子を同定するため、乾眠時に変動するタンパク質を網羅的に探索した。消
化管中の餌の混入を避けるため、2日間の絶食の後、半数を乾燥させ、活動状態のもの、乾眠状態のも
のそれぞれからタンパク質を抽出した。2次元電気泳動で分離した後、タンパク質の泳動パターンを乾
眠前後で比較した。
乾燥耐性機構を解析する上で比較対象として用いる目的で、乾燥耐性の無い、あるいは弱いクマムシ
種の人工飼育系の構築を試みた。野外から採取した淡水生・陸生のクマムシ類4種を冠水寒天培地上に
移し、餌として数種類の菌・藻類・原生動物・微小動物を与えて摂食・繁殖の様子を観察した。人工飼
育が可能な種については、さらに乾燥耐性の有無を調べた。
結果
増幅された遺伝子断片の配列はいずれも目的としたトレハロース関連遺伝子と相同性が高く、クマム
シの該当遺伝子が増幅できたと考えられた。リアルタイム PCR の結果、トレハロース分解酵素の発現量
が、乾眠への移行にともなってやや減少していることが分かった。
乾眠時に発現変動するタンパク質を探索した結果、ほとんどのスポットに変動は見られなかったもの
の、乾眠状態にのみ再現性良く検出されるスポットを3つ見出した。
新たな飼育系の構築については、今回採取した4種のうち2種について飼育系を構築できた。餌とし
て原生動物や微小動物を添加した場合にのみ産卵が見られたことから、いずれも肉食性もしくは雑食性
と考えられる。飼育可能になったうちの1種 Isohypsibius sp.は、水再生センターの活性汚泥より採取し
た淡水生の種で、乾燥しても樽様形態に変化せず給水による活動の再開も見られなかった。一方、竹林
の表層土壌より採取した Macrobiotus sp.は、乾燥を感知して樽構造を形成するが、給水時の生存率が低
く乾燥耐性は弱いと考えられた。
考察
クマムシの乾眠時に見られたトレハロース分解酵素の減少は、乾眠解除時の急速なトレハロース分解
を説明しづらいだけでなく、アルテミアなど他の乾燥耐性動物の発現変動とは逆のものであり、クマム
シが独自の乾燥耐性機構を持つことが考えられる。また、トレハロースの蓄積量が 2%程度と他の乾燥
耐性動物の 15-20%より格段に低いことから、クマムシはトレハロースに頼らない乾燥耐性機構を発達
させている可能性がある。今回プロテオーム解析で新たに見いだされたスポットは、こうしたクマムシ
の乾眠機構に関わる有力な候補のタンパク質と考えている。
さらに、今回、乾燥耐性が無いあるいは弱いクマムシについて新たに飼育系を構築した。これら 2 種
を比較対象とすることで乾燥耐性に関わる分子機構を浮き彫りにできるのではないかと期待している。
Title: Tardigrades as a Model Organism for Extremotolerance in Animal Kingdom.
Authors (affiliation): Takekazu Kunieda (Grad. School of Science, The University of Tokyo)
115
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
研究奨励賞受賞講演要旨
松永藤彦(九州大学・農学研究院・遺伝子資源工学部門)
遺伝情報を蓄える染色体 DNA は細胞増殖に伴い完全な形で,かつ細胞あたりの量が変動しないように複
製される必要がある.そのため,DNA 複製は開始・伸長・終結・分配の各段階において厳密な調節を受
けている.なかでも複製開始過程は,DNA 複製を行う領域や頻度を決定する重要な調節段階である.真
核生物と真正細菌における複製開始反応は,特定の蛋白質(複製開始因子)が染色体上の特定の領域(複
製起点)に働きかけて活性化される.しかしながら,数年前まで古細菌の DNA 複製開始に至る分子機構
は謎に包まれていた.
我々は,超好熱古細菌パイロコッカスをモデルとして DNA 複製開始の分子機構を解析しており,古
細菌で初めて複製起点と複製起点に結合する複製開始因子の同定に成功した.パイロコッカスの複製起
点 oriC は,進化的に保存された多数の繰り返し配列 (ORB, origin recognition box) とアデニン・チ
ミンに富んだ領域 (AT-rich 領域) の組み合わせからなる事が分かった.この構造は真正細菌の複製起
点に類似している.一方で,古細菌ゲノムは真核生物に類似した DNA 複製関連因子を多数持つ.パイロ
コッカスのゲノムも,真核生物の複製起点認識蛋白質である ORC (origin recognition complex) およ
び Cdc6 のホモローグをコードする(Cdc6/Orc1).
Cdc6/Orc1 の DNA 結合活性を解析したところ,
Cdc6/Orc1
は ORB 配列を認識しており,1.8M bp の染色体 DNA から oriC を選択し極めて高い特異性をもって結合し
ている事が分かった.また,この結合によって oriC の AT-rich 領域の二重鎖開裂が起こり,DNA 複製の
最初期反応が起こることも明らかになった.
Mcm ヘリカーゼも oriC へ特異的に結合し,この結合は DNA 複製時に限って観察された.Mcm のヘリカー
ゼ活性は Gins と複合体を形成する事で促進されるが,Mcm と Gins はそれぞれが Cdc6/Orc1 と直接相互
作用した.Cdc6/Orc1 が引き起こす AT-rich 領域の局所的二重鎖開裂部位に Gins と Mcm がロードされ,
活性化された Mcm によって DNA 二重鎖巻き戻しが進展すると考えられる.拡大した一本鎖 DNA 領域には
一連の DNA 合成酵素(プライマーゼや DNA ポリメラーゼなど)が導入されると予想される.実際に新生
DNA 鎖の合成開始点をマップすると,合成開始点は AT-rich 領域および ORB 配列に隣接していた.
これら一連の DNA 複製開始反応は,細胞周期あたり一定の頻度に抑える必要がある.Cdc6/Orc1 は
ATPase 活性を持つが,Cdc6/Orc1 が oriC の ORB 配列に結合する事で ATPase 活性が抑制されたことから,
ATPase 活性の調節を介した複製頻度制御があるのかも知れない.また,パイロコッカスの DNA 複製開始
には新規蛋白質合成が必要であり,Mcm あるいは Mcm をロードする因子の発現量も重要と考えられる.
古細菌の複製起点は真正細菌のそれに似た構造をとるが,実際に DNA 複製を行う因子の多くは真核
生物のものに類似している.古細菌 DNA 複製の分子機構を解明する事で DNA 複製に働く共通原理と多様
性,そして生命進化の道筋が明らかになると期待している.
Molecular mechanism of the initiation of DNA replication in Archaea: a view from the
hyperthermophilic archaeon Pyrococcus sp.
Fujihiko Matsunaga
Department of Genetic Resources Technology, Kyushu University
116
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
口頭発表講演要旨
セッション1「環境適応 I」
O-01
K+チャネルと K+/H+アンチポーターの特性を併せ持つ 2 成分 K+/H+アンチポ
ーターの発見
藤澤
誠1)、○伊藤政博2)、Terry A. Krulwich1)
Mount Sinai School of Medicine, Department of Pharmacology and Systems Therapeutics、2)東洋
大学・生命科学
1)
伊藤政博:[email protected]
【目的】
細菌の 1 価のカチオン/プロトンアンチポーターは Na+や K+を細胞外に排出し、H+を取り込むことで、
カチオン耐性や細胞内の酸性化に寄与している。多くの 1 価のカチオン/プロトンアンチポーターのファ
ミリーの中で、唯一、CPA2 ファミリーが K+チャネルと考えられているいくつかのタンパク質を含んで
いる。
大腸菌の KefC タンパク質は最もよく研究された CPA2 ファミリーのメンバーであり、K+チャネルと
の1次構造の類似性や機能の特性から K+チャネルであると考えられている[1]。通常、KefC は細胞内の
酸化還元状態に関与するグルタチオンによって抑制されているが、大腸菌がメチルグリオキサールや
N-エチルマレイミドなどの求電子試薬に曝されたとき、KefC はその制御から開放され、K+を排出する。
この K+の排出が未知の H+の取り込み系を刺激し、細胞内が酸性化されることで、求電子試薬に対する
耐性が得られると考えられていた。また、枯草菌の YhaU と好アルカリ性 Bacillus pseudofirmus OF4
の AmhT はどちらも大腸菌 KefC と同じ CPA2 ファミリーに属し、K+排出系(K+チャネル)であると推定
されていた[2, 3]。
しかし近年、これまで測定されてこなかったような高い pH や高い K+濃度で働く K+/H+アンチポータ
ーが報告されてきた[4, 5]。したがって、我々はこれら CPA2 ファミリーの K+チャネルと考えられてき
たタンパク質について再度アンチポート活性を詳細に検証することにした。加えて、これら K+チャネ
ル様の KefC、YhaU、AmhT はそれぞれ同じオペロン内にコードされた
親水性タンパク質 KefF、YhaT、AmhM によって K+排出活性が変化する
ことが分かっている[1, 2, 3]。そこで、これらの親水性タンパク質と膜タ
ンパク質を共発現したときのアンチポート活性についても測定すること
にした。もし、KefC が K+/H+アンチポート活性を示すならば、これまで
不明であった求電子試薬への耐性に関わる H+の取り込み経路の少なくと
も一部が明らかになると考えられた。
【方法・結果】
Na+(K+)/H+アンチポート活性を欠損した大腸菌 KNabc 株で枯草菌の
YhaT、YhaU、YhaTU をそれぞれ高発現ベクターpKK223-3 から発現さ
せ、反転膜小胞を作成し、アクリジンオレンジを用いた蛍光消光法によっ
てアンチポート活性を測定した。結果、YhaU は親水性タンパク質である
YhaT と共発現したときのみ K+/H+アンチポート活性を示した(図) [6]。同
様の実験で、Bacillus pseudofirmus OF4 の AmhT は単独で K+/H+アン
チポート活性を示したが、親水性タンパク質 AmhM と共発現したときに
その活性は増大した(図)。
これらの結果から、大腸菌の KefC タンパク質も K+/H+アンチポート活
性を持っている可能性が示唆された。そこで、pKK223-3 に kefF、kefC、 (図)蛍光消光法によるアン
kefFC をそれぞれクローニングし、同様の実験を行なった。その結果、 チポート活性の測定
KefC は KefF と共発現したときのみ K+/H+アンチポート活性を示した(図)。YhaTU、AmhT、AmhMT、
KefFC は K+/H+アンチポート
加えて、この KefFC システムは Na+(Li+, Rb+)/H+アンチポート活性も持 活性を示した。 KefFC シス
っていることが分かった。KefFC の K+/H+アンチポート活性は 10 mM 以 テムは Na+(Li+, Rb+)/H+アン
チポート活性も示した。
117
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
上のグルタチオンの添加によっておよそ 50%が抑制された。
さらに KefC は NAD(H)の結合領域と考えられている Rossman-fold をその分子内に持っている。し
かし、これまでに KefC への NAD(H)の役割については明らかになっていなかった。そこで、蛍光消光
法を利用して、NAD と NADH の KefFC の K+/H+アンチポート活性における効果を評価した。グルタ
チオンによる制御のないとき、NAD と NADH のどちらも KefFC の活性にどのような効果も与えなか
ったが、NADH のみがグルタチオンに制御された KefFC の活性をさらに抑制した。
【考察】
本研究で明らかになった CPA2 ファミリーに属する 2 成分の新規 K+/H+アンチポーターは、K+チャネ
ルと K+/H+アンチポーターの進化の関連性を示唆している。また、KefFC の活性は細胞内の酸化還元状
態とリンクしており、求電子試薬に曝されたときの耐性機構である細胞内の酸性化に KefFC が直接関
与していることが示唆された。
【参考文献】
1. Booth, I. R. et al. (2005) in Bacterial Ion Channels and Their Eukaryotic Homologs, eds Kubalski
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6. Fujisawa, M., Ito, M., Krulwich, T. A. (2007) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104, 13289-13294.
Three 2-Component Transporters with Channel-like Properties have Monovalent Cation/Proton
Antiport Activity.
○Makoto Fujisawa1, Masahiro Ito2, Terry A. Krulwich1 (1Dept. of Pharmacol. & Syst. Therap.,
Mount Sinai School of Medicine, 2 Fac. of Life Sci. Toyo Univ.)
___________________________________________________________________________________________
0-02
Shewanella violacea DSS12 の圧力適応におけるエイコサペンタエン酸の生
理機能の解析
○ 川本 純1)、阿部文快2)、佐藤孝子2)、加藤千明2)、仲宗根
達夫1)、江崎信芳1)
薫
3)、佐藤
智
4)、細川雅史 5)、栗原
1)
京都大学・化学研究所、2)海洋研究開発機構、3)近畿大学・工学部、4)京都大学大学院・理学研究
科 5)北海道大学大学院・水産科学研究院
川本 純:[email protected]
【目的】
深海のような低温高圧環境から単離された細菌の多くは、高度不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン
酸 (DHA)やエイコサペンタエン酸 (EPA) を生産することが知られている。一般に、低温高圧環境では
生体膜の流動性が低下することが知られており、好圧好冷細菌は DHA や EPA を生産することで、流
動性の高い膜を形成していると考えられている。特に深海から単離された Shewanella 属細菌は、他の
環境由来の Shewanella 属細菌に比べて EPA を多く含む細胞膜を形成することから、Shewanella 属
細菌の高圧低温環境適応において EPA が重要な機能を担っていることが予想される。しかしながら、
好圧好冷細菌の高圧低温環境適応における DHA や EPA の機能を詳細に解析した例は少ない。
Shewanella violacea DSS12 は、琉球海溝 5,110 m から単離された好圧好冷菌であり、全脂肪酸の約
30% 以上が EPA であることがわかっている。本研究は、S. violacea DSS12 の EPA 合成遺伝子を破
壊することで、高圧環境での EPA の生理機能を明らかにすることを目的とした。
【方法】
S. violacea DSS12 のゲノム配列から EPA 合成遺伝子クラスターを見出し、遺伝子破壊用プラスミ
ド pKNOCK-Kmr を用いた相同組み換えにより、EPA 合成遺伝子 (orf5) 破壊株を作製した。全脂肪
118
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
酸組成は GC-MS で、リン脂質組成は ESI-MS で解析した。
【結果および考察】
6˚C、0.1 MPa で培養した S. violacea DSS12 は、全脂肪酸の約 30% が EPA であり、膜を構成す
るリン脂質のアシル鎖として存在することがわかった。一方、EPA 遺伝子破壊株は EPA を生産せず、
野生株では全脂肪酸の 30% 程度であったパルミトレイン酸の生産量が、遺伝子破壊株で全脂肪酸の
60% まで高生産されていることがわかった。S. violacea DSS12 は 30 MPa で良好に生育する好圧菌
であるが、30 MPa で EPA 非生産株の生育速度は顕著に低下し、伸長した細胞を形成することがわか
った。また、EPA 非生産株を EPA 含有リン脂質を含む培地で培養した結果、6˚C、30 MPa で親株と
同様に生育し、通常のサイズの菌体を形成した。一方、アシル鎖としてオレイン酸のみを含むリン脂質
を添加した場合は、EPA 欠損株の生育速度と菌体の形状に影響しなかった。以上の結果から、EPA は
S. violacea DSS12 の高圧下での生育に重要であり、オレイン酸やパルミトレイン酸では代替できない
機能を担っていることが示された。特に、EPA は高圧下での細胞分裂に関与していることが示唆され
た。
Physiological role of eicosapentaenoic acid in high-pressure adaptation of Shewanella violacea DSS12
Jun Kawamoto1), Fumiyoshi Abe2), Takako Sato2), Chiaki Kato2), Kaoru Nakasone3), Satoshi Sato4), Masashi
Hosokawa5), Tatsuo Kurihara1), Nobuyoshi Esaki1) (1)Institute for Chemical Research, Kyoto University, 2)Japan
Agency for Marine-Earth Science and Technology, 3)School of Engineering, Kinki University, 4)Graduate School
of Science, Kyoto University, 5)Graduate School of Fisheries Sciences, Hokkaido University)
___________________________________________________________________________________________
0-03
低温菌 Shewanella livingstonensis Ac10 の低温適応に要求される高度不飽
和脂肪酸の構造的特徴
○佐藤
1)
翔1)、川本
純1)、佐藤
京都大学・化学研究所、
佐藤
智2)、栗原達夫1)、江崎信芳1)
2)
京都大学大学院・理学研究科
翔:[email protected]
【目的】 エイコサペンタエン酸 (EPA) などの高度不飽和脂肪酸 (PUFA) はリン脂質の成分として生
体膜で重要な機能を果たす。しかし、PUFA のどのような構造的特徴が in vivo での機能に重要なのか、
系統的に解析された例はほとんどない。本研究では EPA をリン脂質成分としてもつ低温菌 Shewanella
livingstonensis Ac10 を用いて、本菌の低温適応に要求される PUFA の構造的特徴を解析した。
【方法】 S. livingstonensis Ac10 は低温誘導的に EPA を生産し(4℃生育時に全脂肪酸の約 5%)
、EPA
合成酵素を欠損させた変異株では低温での生育能が著しく低下する。種々の EPA アナログを含有する
リン脂質を化学合成して EPA 非生産株の培養液に添加し、低温での生育におよぼす効果を調べた。添
加するリン脂質は sn-1 位をオレイン酸に統一し、sn-2 位に EPA およびそのアナログを含むホスファ
チジルエタノールアミン (PE) とした。EPA アナログとしては、炭素数 20 で二重結合の数を変えたア
ラキジン酸、cis-11-エイコセン酸、cis-11,14-エイコサジエン酸、cis-8,11,14-エイコサトリエン酸、アラキ
ドン酸の 5 種類(C20 シリーズ)、炭素数 18 で二重結合の数および位置を変えたオレイン酸 (Δ9)、ペ
トロセリン酸 (Δ6)、リノール酸 (Δ9,12)、α-リノレン酸 (Δ9,12,15)、γ-リノレン酸 (Δ6,9,12) の 5 種
類 (C18 シリーズ)、およびドコサヘキサエン酸 (DHA) を用いた。
【結果および考察】 C20 シリーズおよび C18 シリーズ双方において二重結合の増加に伴い低温での
生育の回復が確認され、またα-リノレン酸とγ-リノレン酸とではγ-リノレン酸において、オレイン酸
とペトロセリン酸とではペトロセリン酸においてより顕著な生育の回復が確認された。これらのことか
ら二重結合数が多いほど、また二重結合の位置がエステル結合に近いほど低温での生育に有利な膜構造
をとることが示唆された。野生株のレベルまで生育が回復したのは、sn-2 位に EPA または DHA を含
む PE を添加した場合のみであり、これらのリン脂質は二重結合の数と位置において他のリン脂質より
も優れた特性をもつことが示された。
119
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
Structural characteristics of polyunsaturated fatty acid required for the low-temperature growth of
Shewanella livingstonensis Ac10
Sho Sato1), Jun Kawamoto1), Satoshi Sato2), Tatsuo Kurihara1), Nobuyoshi Esaki1) (1)Institute for Chemical
Research, Kyoto University, 2)Graduate School of Science, Kyoto University)
___________________________________________________________________________________________
セッション2「生態と進化」
O-04
南極地域由来新規微生物の分離と同定
○三吉祐輝、近藤由佳、横山祐一郎、島原由利江、跡見晴幸、今中忠行
京都大学大学院工学研究科 合成・生物化学専攻
[目的]
南極地域には低温・高塩濃度・貧栄養などの極限環境が存在しており、また他地域に比べて十分に微生
物研究が行われていないことから従来から知られている微生物と異なる特性を示す新規微生物の発見
が期待される。本研究では南極地域の様々な地点からの水・土壌サンプルからの微生物の分離と同定を
試みた。
[方法・結果]
南極地域で採取した 262 種類の試料のうち、好気条件下で採取された 130 種類の試料を yeast extract,
tryptone, peptone など一般的に用いられる栄養成分を含む培地に植菌し、低温・高塩濃度・酸性・アルカ
リ性・低有機物濃度などの条件で培養を行った。これらの条件で 1000 種類を超える微生物が生育し、
200 種類の微生物の 16S rRNA 配列解析を行った。
その結果、既知の微生物との相同性が 93%である 120-1
株や、相同性が 94%の Roseomonas 属に近縁と考えられる微生物群など、新種と考えられる微生物を複
数種得ることができた。また、T 字や Y 字といった珍しい形状の桿菌や、強力なプロテアーゼを分泌す
るバクテリアなどが得られており、それらの諸性質解析を進めている。120-1 株についてはゲノム解析
を進め、現在、全塩基配列に基づいたアノテーション作業を進めている。
株
120-1
89
62-5
56
262-2
60-2-1
107-E-2
147-1
120-1 株
相同性(16S rRNA)
93.03%
93.70%
94.01%
94.29%
94.59%
96.71%
97.75%
98.69%
最近縁属
Mesorhizobium
Roseomonas
Roseomonas
Roseomonas
Roseomonas
Psychroflexus
Lysobacter
Rhodopseudomonas
147-1 株
備考
ゲノム配列決定
好塩性
プロテアーゼ生産
T,Y字型を示す桿菌
107-E-2 株
Title : Isolation and characterization of novel microorganisms isolated from Antarctica
Authors (affiliation) : Yuuki Miyoshi, Yuka Kondo, Yuichiro Yokoyama, Yurie Shimahara, Haruyuki
Atomi, Tadayuki Imanaka (Department of Synthetic Chemistry and Biological Chemistry,
Graduate School of Engineering, Kyoto University)
___________________________________________________________________________________________
120
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
0-05
The culturable extremephiles above the troposphere
○Yinjie Yang 1), Shin-ichi Yokohori 1), Takamasa Yamagami 2), Issei Iijima 2), Naoki Izutsu 2),
Hideyuki Fuke 2), Yoshitaka Saitoh 2), Sachihiko Matsuzaka 2), Michiyoshi Namiki 2), Shigeo Ohta 2),
Michihiko Toriumi 2), Kazuhiko Yamada 2), Motoharu Seo 2) and Akihiko Yamagishi 1)
1)
Department of Molecular Biology, Tokyo University of Pharmacy and Life Science
2)
Institute of Space and Astronautical Science, Japan Aerospace Exploration Agency
The information about microorganisms at high altitudes is important for testing the hypothesis
Panspermia (5, 10, 11, 14). In the troposphere that is constantly replenished by various microbiota
from soil, water and other sources, the abundance and genera of microbes generally decrease with
increasing height (1-3, 8, 13). The tropopause, a natural barrier between the troposphere and the
stratosphere, allows few terrestrial particles cross (14). The atmosphere above tropopause is
characterized with almost complete dryness, elevated UV radiation, extremely low pressure and
stronger fluctuation of temperature. The survivors in such environments, if present, presumably
highly resistant to harsh conditions such as strong UV irradiation, are of great interest. However,
there have been so few microbial surveys above troposphere (4, 6, 12) that we know little about the
microbes in such extreme environments. We previously isolated two Deinococcus (formerly
classified as Micrococci) strains, one Bacillus strain, one Paenibacillus strain and one Streptomyces
strain from the high atmosphere using an aircraft (16). The Deinococcus isolates and the
Streptomyces isolate exhibited much higher UV resistance than the surface isolates. One of the
Deinococcus isolates (ST0316) was collected above the troposphere. The goals of this study are to
isolate and identify the microorganisms above the troposphere and to analyze the UV resistance of
the isolates.
After strict sterilization of specially designed sampling device, microorganism in the
stratosphere above northern Japan (12~35 km altitude) was successfully collected on the
membrane filters using a balloon in June 2005. The filters were placed on mTGE agar plates at
30oC for days. The colonies appeared were inoculated and subcultured into liquid and solid medium
containing mTGE broth. The isolates were identified by morphological characteristics and
phylogenetic analysis based on 16S rDNA sequencing data. UV resistance of the isolates was
analyzed by exposing the isolates to UV light for different periods, plating serial dilutions of
irradiated suspension onto solid medium, and counting colonies.
Four isolates were obtained from the stratospheric samples. Their 16S rDNA sequences share
more than 99% similarity to those of spore-forming species previously recorded in public databases.
Three of them are the strains of the genus Bacillus, while the fourth is Paenibacillus strain. One of
the isolates (BL511) is phylogenetically close relative of a described 40 km altitude isolate B.
altitudinis JCM13350 (14) and the most commonly isolated bacteria B. pumilus from spacecrafts (7,
9, 15). Another isolate (BL512) is closely related to a reported isolate B. sphaericus NP71 from 20
km altitude (4). One of the isolates (BL511) exhibited much higher resistance than general ground
Bacillus species.
The presence of microorganisms above the troposphere is beyond question. The isolates appear
to be terrestrial origin. Since the majority of the isolates in previous related surveys were also spore
formers (fungi and bacteria) and Micrococci, these microbes are likely most successful in
penetrating the tropopause via various mechanisms and surviving the journey to the upper
atmosphere. UV and desiccation resistance may be needed for the microorganisms to survive the
journey. The dominance of spore formers and Micrococci in the culturable microbes from the upper
atmosphere highlights their potential on the seeding of life onto extraterrestrial planets. Such
microbes should be put into the first consideration when we discuss or test the interplanetary
transfer of life.
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
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3.
O-06
南部マリアナトラフにおける熱水性堆積物中の微生物相
○加藤真悟1)、小林智織1)、掛川武2)、佐藤誠悟2)、益田晴恵 3)、浦辺徹郎 4)、横堀伸一1)、山岸明彦1)、
YK05-09 航海乗船者一同
1)
東京薬科大学・生命科学部、2)東北大学・理学部、3)大阪市立大学・理学部、4)東京大学・理学系
研究科
加藤真悟:[email protected]
熱水湧出地帯では、還元型物質が含まれる熱水と、酸化物が含まれる海水とが反応することで、
海底熱水系に特異的な堆積物が形成されることが知られている。ハワイの Loihi 海山や、大西洋中央海
嶺の Rainbow サイト、東太平洋海嶺の Guaymas 海盆などで熱水性堆積物が発見されており、微生物
学的解析が行われてきた。堆積物の微生物学的特徴は、多くの菌体(~108 cells/g)が存在し、多様な微
生物(真正細菌、古細菌、真核生物)が検出されることである。未知微生物も多く検出されており、新
規微生物の単離培養が期待される。最近、Loihi 海山の堆積物から新規プロテオバクテリア綱、ζ-プロ
テオバクテリアに属する微好気性鉄酸化細菌が発見された。海底熱水系の低温環境における一次生産者
として、硫黄酸化菌が主であると考えられているが、同様に鉄酸化菌も重要な役割を担っていることが
示唆された。
122
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
2005 年の 7 月から 8 月にかけて行われた、南部マリアナトラフにおける YK05-09 調査航海におい
て、背弧海盆拡大軸上で二つの熱水噴出地帯 Mrk#16 と Mrk#18 が確認された。本研究の目的は、二つ
の海底熱水噴出地帯周辺の熱水性堆積物中の微生物相を解析することである。
EDS による鉱物分析により、堆積物の大部分は鉄とシリカで構成されていることがわかった。堆積
物近傍の熱水は、温度が 33-116ºC、pH6-7 であった。硫化水素は、116ºC の熱水からは 300µM 程検出
されたが、30ºC 付近の熱水では検出限界以下であった。DNA 染色による蛍光顕微鏡観察では、球菌、
桿菌、鞘状菌等が多数観察された。蛍光顕微鏡による直接菌体数計数と定量 PCR により、Mrk#16 と
Mrk#18 の熱水性堆積物中の菌体数は約 108 cells/g と推定された。
リボソーム RNA 遺伝子を対象にした DNA 解析の結果、どちらの堆積物からもζ-プロテオバクテ
リア(鉄酸化菌)に属するクローンが検出された。Loihi 海山以外の海底熱水地帯からも、少数ではあ
るがζ-プロテオバクテリアに属するクローンが検出されていることから、このグループは世界中の熱水
性堆積物中に広く存在することが示唆された。δ-プロテオバクテリア綱(硫酸還元菌等)、γ-プロテオ
バクテリア綱(メタン酸化菌等)、Nitrospira 綱(亜硝酸酸化菌等)に属するクローンも同様に検出さ
れた。多様な従属栄養細菌も検出された。また、古細菌の Marine group I(アンモニア酸化菌)も検出
された。さらに dsrAB 遺伝子、pmoA 遺伝子、amoA 遺伝子解析の結果、熱水性堆積物中で硫酸還元、
メタン酸化、アンモニア酸化が微生物によって行われていることが示唆され、16S rRNA 遺伝子解析結
果を支持する結果となった。好気性細菌、微好気性細菌、硫酸還元菌が検出されたことは、堆積物中で
酸素濃度の勾配があることを意味する。熱水性堆積物中には、複雑な生態系が存在することが推定され
た。真核生物は、繊毛虫門、環形動物門などに属するクローンが検出され、そのいくつかは Rainbow
サイトの熱水性堆積物から検出されたクローンと高い相同性を示した。これらの真核生物が異なる熱水
地帯で発見されたのは初めてである。
興味深いことに、他の熱水性堆積物によくみられるεまたはγ-プロテオバクテリアに属する硫黄
酸化菌は検出されなかった。おそらく、今回の調査地域に特徴的な地球化学的要因を反映していると考
えられる。
Microbial diversity in the hydrothermal deposits around the deep-sea hydrothermal system at the
southern Mariana trough
Shingo Kato[1]; Chiyori Kobayashi[1]; Takeshi Kakegawa[2]; Seigo Sato[2]; Harue Masuda[3];
Tetsuro Urabe[4]; Shin-ichi Yokobori[1]; Akihiko Yamagishi[1]
[1] Dep. Mol. Biol., Tokyo Univ. Pharm. Life Sci.; [2] IMPE, Tohoku Univ.; [3] Dept. Geosci.,
Osaka City Univ.; [4] Earth and Planetary Sci., Univ. of Tokyo
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0-07
rpoB’遺伝子による好塩性古細菌の系統解析
○峯岸 宏明1)、亀倉 正博 2)、伊藤 隆2)、水木 徹2)、越後 輝敦 3)、宇佐美 論1)
1)
東洋大学・バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター
好塩菌研究所
3)
理化学研究所・バイオリソースセンター
2)
【目的】
現在、様々な生物種において、その系統学的位置を決定する際にはリボソームの小サブユニットを構
成する RNA の塩基配列が用いられている。これらの塩基配列はその保存性が高く、進化系統が離れた
生物同士でも容易に配列の比較ができる。また、原核微生物ではその 16S rRNA 遺伝子の相同性が 97%
以下であれば別種であると推定できるなど、近年の微生物分類において重要な情報となっている。しか
しながら、多くの生物種においてそれらの遺伝子は複数のコピーが存在する、形態的分類との相違があ
る、DNA-DNA 相同性との相関がないなど多くの問題が指摘されている。そこで、近年様々な生物種に
おいて RNA polymerase サブユニットの遺伝子による系統解析が注目されている(Klenk and Zillig, 1994)。
現在、Halobacteriacea 科は 26 属 89 種の好塩性古細菌が存在する。これらの中には 16S rRNA 遺伝子
を複数個もつ種が多く存在し、なかでも Halosimplex carlsbadense は rrnA, rrnB および rrnC の 3 つの 16S
rRNA 遺伝子をゲノム上に保持しており、それらの相同性は、rrnA と rrnB で 98.5%、rrnA と rrnC で 93.1%、
rrnB と rrnC で 94.4%と低く、各々の配列で系統樹のトポロジーは異なる(Wright, 2006)。
123
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
このような問題を解決すべく、16S rRNA 遺伝子に替わる分類指標として、Halobacteriacea 科におい
ても rpoB’遺伝子に基づく系統解析が行われている(Walsh. et. al., 2004;Enache. et. al., 2007)。しかしな
がら、これら報告で用いられている塩基配列はその内部配列(約 1,200 bp)であり、また各属種におい
て使用するプライマーセットも異なり、増幅も困難であるなどの問題点が指摘されている。
そこで本研究では、rpoB’遺伝子増幅条件の検討を行った。また、それらの塩基配列をもとに系統樹
を作製し、rpoB’全体の遺伝子による Halobacteriacea 科の系統関係を解析した。
【方法】
既にゲノム塩基配列が公開されている 5 種の RNA polymerase サブユニット H, B’’, B’, A’の塩基配列
から新たに増幅用にプライマーを作製し、Halobacteriacea 科の 86 種の rpoB’遺伝子全長(約 1,800 bp)
を増幅した。既知の rpoB’遺伝子を元にシークエンシング用プライマーを 8 本作製し、rpoB’遺伝子塩基
配列を解析した。これら塩基配列をもとに近隣結合法により系統樹を作製した。
【結果・考察】
数種のプライマーセットを用い、増幅条件を検討した。その結果、rpoB’遺伝子の上流および下流の
約 150 bp 付近の配列から作製した HrpoB2-1420F と HrpoA-153R のプライマーセットを用いて、熱変
性 96℃, 1 分、アニーリング 48℃, 1 分、伸長反応 72℃, 2 分 30 秒の条件において、Halobacteriacea
科の 86 種全てで rpoB’遺伝子の増幅に成功した。また、これら PCR 産物を Sap/ExoⅠ処理後に、各々
8 本のシークエンシング用プライマーを用いて、塩基配列を解析することに成功した。塩基配列と推定
されるアミノ酸配列は各々1827-1842 塩基、608-614 残基であったが、特筆すべきはこれら塩基配列の
違いが 5’末端(N 末端)に集中し、1812 塩基にわたり 1 塩基の gap もなくアラインできること、近隣
結合法により作製した系統樹から 16S rRNA 遺伝子に基づくそれと類似していることなど、新たな分類
指標として非常に有用であることが分かった。更に Haloterrigena/Natrinema 属、また、中性/アルカ
リ性 Natrialba 属の再分類にも有用であることが示唆された。
【引用文献】
1) Klenk and Zillig (1994) J. Mol. Evol. 38, 420-432.
2) Walsh. et al. (2004) Mol. Biol. Evol. 21, 2340-2351.
3) Wright (2006) IJSEM 56, 1223-1227.
4) Enache. et al. (2007) IJSEM 57, 2289-2295.
Phylogenetic analysis within halophilic archaea inferred from rpoB’ gene
Hiroaki Minegishi1), Masahiro Kamekura2), Takashi Itoh3), Toru Mizuki1), Akinobu Echigo1) and Ron
Usami1)
1)Bio-Nano Electronics Research Centre, Toyo University
2)Halophiles Research Institute
3)Japan Collection of Micro-organisms, RIKEN BioResource Center
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セッション3「環境応答 II」
O-08
触媒ドメインの好アルカリ性化とキシラン結合ドメインの結合能向上に基づ
くアルカリキシラナーゼの機能強化
梅本博仁 1),高倉
熊坂
淳 1),谷澤里沙 1),Ihsanawati1),八波利恵 1,2),福居俊昭 1),
崇 1),田中信夫 1),○中村
聡 1,2)
東工大院生命理工,2)CREST-JST
1)
キシランは D-キシロースがβ-1,4 結合で直鎖状に連なった多糖であり,キシランのβ-1,4 結合を加水
分解する酵素がキシラナーゼである。好アルカリ性バシラス属細菌 41M-1 株が生産するキシラナーゼ
J(XynJ)は反応の至適をアルカリ性領域に有するアルカリ酵素であり,糖質分解酵素(GH)ファミリー11
に属する触媒ドメインと糖質結合モジュール(CBM)ファミリー36 に属するキシラン結合ドメイン
124
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
(XBD)からなる。立体構造比較の結果,XynJ の触媒残基近傍には他の中性酵素には見られない塩橋ネ
ットワークが存在しており,本酵素の好アルカリ性への関与が示唆された。一方,XBD は不溶性キシ
ランに結合し,触媒ドメインによる不溶性キシランの加水分解を促進する働きを担う。これまでに,キ
シラン結合に関与するアミノ酸残基を特定する過程で,不溶性キシラン結合能が向上した XBD の取得
に成功している。本研究では,XynJ に特徴的な塩橋を構成する残基にアミノ酸置換を導入した各種変
異型酵素を調製し,それらの性質検討を行った。また,結合能が向上した XBD 変異体を XynJ の触媒
ドメインに連結することで,不溶性キシラン分解活性のさらなる向上をめざすこととした。
最初に,XynJ の触媒ドメイン領域(ΔXBD)を基盤として用い,XynJ に特徴的な塩橋ネットワークを
構成する残基(Asp14,Glu16,Glu177,Arg48,Lys51 および Lys52)にアミノ酸置換を導入した変異
型酵素を調製し,それらの反応至適 pH を調べた。アミノ酸置換を含まないΔXBD の反応の至適は pH
8.5 であったが,アミノ酸置換により塩橋ネットワークを破壊した変異型酵素においては,反応至適 pH
が酸性側(pH 5.0 から pH 6.0)へシフトしていた。これより,XynJ の特徴的塩橋ネットワークは本酵素
のアルカリ性での活性発現に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。一方,Lys を Arg に置
換することで塩橋ネットワークを強化した変異型酵素においては,反応至適 pH のアルカリシフト(pH
9.0)が観察された。
次に,不溶性キシランに対する結合能が向上した変異型 XBD に含まれるアミノ酸置換(Thr316 の Ile
への置換)を導入した変異型酵素(XynJT316I)を調製し,不溶性キシラン加水分解活性を調べた。その結果,
これより,
XynJT316I の不溶性キシラン加水分解活性は野生型酵素よりも向上していることがわかった。
XBD にキシラン結合能の向上をもたらしたアミノ酸置換が XynJ の加水分解能向上にも働くことが示
された。XynJ の立体構造から,Thr316 はキシラン結合部位近傍に位置していることが明らかとなった。
これより,キシラン結合部位近傍にアミノ酸置換を導入することが,キシラン結合能の向上に効果的で
あることが考えられる。現在,Thr316 を種々のアミノ酸に置換した変異型 XynJ を調製し,それらの
性質検討を行っている。
Functional improvement of alkaline xylanase from alkaliphilic Bacillus sp. strain 41M-1 by amino
acid substitutions
Hirohito Umemoto, Jun Takakura, Risa Yazawa, Ihsanawati, Rie Yatsunami, Toshiaki Fukui,
Takashi Kumasaka, Nobuo Tanaka and ○Satoshi Nakamaura (Tokyo Tech, CREST)
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O-09
Thermus thermophilus の抗生物質感受性に及ぼすシリカの影響
○岩井
覚1)、中薗 武雄1)、福田
大・応微、
2)
耕才1)、土居 克実2)、緒方 靖哉1)
1)
崇城
九大院・農院
背景・目的
地殻から湧出する地熱水には高濃度のシリカが溶存しており、このような地熱水環境下では非結晶性
シリカ鉱物(主成分:SiO2)が沈着・形成される。3, 4, 5) 一方、同様な環境下で操業している地熱発電所で
は、パイプライン等の設備にシリカ鉱物が沈着し、シリカスケールが形成され、操業のトラブル要因に
なっている。4, 5)
我々は、これまでに、地熱発電所の熱水滞留槽に銅板を沈め、そこに生じたシリカスケールを電子顕
微鏡などで観察、分析し、シリカスケールの形成に熱水中の微生物が深く関与していると推察した。1)
またシリカスケールより Thermus thermophilus TMY を分離した。6) シリカ(メタケイ酸ナトリウム)
を添加した液体培養(シリカ濃度 300ppm 以上)において、高純度非結晶性シリカ沈殿形成に成功した。
1, 4, 5) 次いで、このシリカ沈澱(バイオシリカ)の進行と同時に、細胞膜タンパク質 SipB(silica‐induced
protein B)が顕著に増加すること、4, 5) さらに SipB が近縁の Thermus thermuphilus HB8 の ABC ト
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
ランスポーターの構成成分である Fe(Ⅲ)結合性ペリプラズマタンパク質(FBP)と高い相同性のあること
が推定された。5) また、FBP の推定上のアミノ酸配列をブラスト検索した結果、さまざまな細菌の鉄
結合性 ABC トランスポーターと高い相同性があることが確認できた。
Salmonella 属や Pseudomonas 属細菌の鉄結合性 ABC トランスポーター(PmrB など)は、バイオフ
ィルム成分排出のほかに、抗生物質排出などにも関与しているといわれおり、近年多重薬剤耐性菌に関
連付けられて研究が進められている。2) 本研究では、SipB の ABC トランスポーターの機能を明らかに
するため、抗生物質感受性に及ぼすシリカの影響を検討した。
方法
本 実 験 に は Thermus thermophilus HB8 お よ び TMY 株 を 使 用 し た 。 抗 生 物 質 に は Ampicillin,
Bacitracin(B), Chloramphenicol, Colistin(C), Kanamycine, Polymyxin B(PB), Streptomycin, Tetracycline(Tc),
Thiostrepton を使用した。
まず、抗生物質の使用濃度を決定するために、阻止円検定法を用いて、菌が生育する限界の濃度を調
べた。次いで、抗生物質による生育阻害に及ぼすシリカの影響は、それぞれの抗生物質を添加した培養
液について、植菌後 1 時間毎の濁度(OD660)を測定することにより検討した。
結果・考察
阻止円検定の結果、PB では 5μg/ml 以下の濃度で、B では 1μg/ml 以下の濃度で、その他の抗生物質で
は 0.5μg/ml 以下の濃度で阻止円が確認できた。また、液体培養では、使用した全ての抗生物質において、
10μg/ml 以下で著しく生育が阻害された。このことから、本菌株は抗生物質に対する感受性が非常に強
いことが示唆された。
抗生物質感受性に及ぼすシリカの影響ついて、C, PB, B では、シリカを添加することにより、抗生物
質による生育阻害が著しく緩和された。C, PB については、Salmonella 属の PmrB において、バイオフィ
ルム成分と抗生物質の排出機能が示唆され、研究が進められている。他方、Tc では、シリカを添加し
た条件の方が、生育阻害が増大した。この結果は、抗生物質の作用機構と作用サイトの違いによると考
えられた。細胞表層(細胞膜や細胞壁)の形成に作用する前者の抗生物質は、シリカ添加によって増加し
た SipB の ABC トランスポーター機能によって排出されるため、抗生物質への耐性が強化され、逆に細
胞内部で作用する Tc では、SipB の ABC トランスポーター機能では排出されず、増加した ABC トラン
スポーター機能によって細胞内への拡散浸透が容易になって、抗生物質の影響を強く受けたと推察した。
その他の抗生物質では、生育阻害が著しく、シリカ添加の影響を明確にすることができなかった。
一方、シリカ添加培養では培養器壁面に菌体が著しく付着することが観察されるので、抗生物質存在
下での菌体付着への影響を検討中である。
引用文献:
1) F. Inagaki , T. Yokoyama , K. Doi , E. Izawa and S. Ogata: Bio-deposition of Amorphous Silica by Extremely
Thermophilic Bacterium , Thermus spp.. Biosci. Biotechnol. Biochem., 62, 1271-1272 (1998).
2) Marc M. S. M. Wösten , Linda F. F. Kox , Sangpen Chamnongpol , Fernando C. Soncini and Eduardo A.
Groisman: A Signal Transduction System that Responds to Extracellular Iron, Cell, 103, 113-125 (2000)
3) F. Inagaki , Y. Motomura , K. Doi , S. Tafuchi , E. Izawa , Donald R. Lowe and S. Ogata: Silicified Microbial
Community at Steep Cone Hot Spring, Yellowstone National Park. Microbes and Environments, 16, 125-130
(2001).
4) F. Inagaki , Y. Motomura , S. Ogata : Microbial silica deposition in geothermal hot waters. Appl. Microbiol.
Biotechnol., 60, 605-611 (2003)
5) 土居克実、稲垣史生、緒方靖哉:Thermus 属細菌によるシリカ鉱物化作用、化学と生物, 42, 326-332
(2004).
6) Y. Fujino , R. Kawatsu , F. Inagaki , A. Umeda , T. Yokoyama , Y. Okaue , S. Iwai , S. Ogata , T. Ohshima and
K. Doi: Thermus thermiphilus TMY isolated from silica scale taken from a geothermal power plant. Appl.
Microbiol., ISSN 1364-1507. doi:10.1111/j. 1365-2672.2007.03528.X (2007).
Influence of silica on antibiotic susceptibility of Thermus thermophilus.
S. Iwai1) , T. Nakazono1) , K. Fukuda1) , K. Doi2), S. Ogata1)
1) Applied Microbial Technology, Faculty of Bioscience, Sojo University.
2)Geneic Resources Technology, Faculty of Agriculture, Kyushu University.
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126
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
O-10
プラスミド由来 MvaT family 転写制御因子 Pmr の結合位置の網羅的検出
内藤邦彦1)、新谷政己1)、尾曲克己1)、宮腰昌利1)、山根久和1)、西田洋巳2)、
○野尻秀昭1,2)([email protected])
1)
東京大学・生物生産工学研究センター、2)東京大学・農学生命科学研究科
(目的)Pseudomonas 属細菌の MvaT family 転写制御因子は、大腸菌における核様体構成タンパク質
である H-NS の機能的ホモログであり、グローバルな転写制御因子として機能することが予想されてい
る。Pseudomonas putida KT2440 株には染色体上に MvaT family 転写制御因子をコードする 5 つの遺
伝子 PP0017, PP1366 (turA), PP2947, PP3693, PP3765 (turB)が存在する。一方、含窒素芳香族化合
物であるカルバゾールの分解酵素遺伝子群を有する分解プラスミド pCAR1 上には、MvaT family 転写
制御因子をコードする遺伝子 pmr (plasmid-encoded MvaT-like regulator gene)が存在する。当研究室
では、pCAR1 を保持する KT2440 株をモデルに、分解プラスミドが機能を発揮するために必要なプラ
スミドと染色体間の特異的相互作用について解析を行ってきた1,2)。その過程で、プラスミド-染色体
間相互作用の鍵因子として Pmr が同定され、pmr 破壊株を用いたトランスクリプトーム解析の結果、
pmr レギュロンとして染色体上の 42 遺伝子、プラスミド上の 17 遺伝子が同定された(p value < 0.05,
fold change > 2.0 の条件で抽出)3)。また、プルダウンアッセイによって、Pmr がホモ多量体を形成す
るとともに、
KT2440 株染色体上にコードされる 5 つの MvaT family 転写制御因子のうち TurA、PP2947
産物、TurB の3つと、ヘテロ多量体を形成することも示されている3)。
これらの結果より、pCAR1 由来 Pmr は染色体上の 3 つの MvaT family 転写制御因子と協調するこ
とで、プラスミド、染色体両ゲノム上の遺伝子の発現制御を行っていることが予想できる。しかし、
MvaT family 転写制御因子の結合のためのコンセンサス配列は明らかにされておらず、Pmr の DNA へ
の結合も示されていない。そこで我々は、まず Pmr のゲノム上での結合位置を網羅的に明らかにする
ことにした。
(手法)Pmr 結合位置の網羅的解析は ChAP-chip(Chromatin affinity purification coupled with high
density tiling chip)法にて行った。C 末端に 6×His tag が付いた Pmr (Pmr-His)を構成的に発現させ
るプラスミドを作成し、P. putida KT2440(pCAR1)に導入した。この菌体をコハク酸で培養し、早期対
数増殖期(OD600, 0.15-0.25)で集菌した。菌体のホルマリン処理により DNA とタンパク質を架橋させた
後に sonication を行い、Ni+アフィニティーカラムにより、DNA-Pmr-His 複合体を精製・回収した。
その後 Pmr-His に結合していた DNA を熱処理により解離させ、random PCR による増幅、ビオチン
ラベリングを経て高密度タイリングアレイ(pCAR1 は 9 塩基密度、染色体は 11 塩基密度)にハイブリ
ダイズさせた。対照としては、アフィニティーカラムによる精製を経ずに同様の操作を行ったサンプル
(input control)を用いた。実験は 3 連で行った。
(結果)Pmr の pCAR1 上での結合位置候補を 9 箇所検出した(図1)。そのうち Pmr レギュロンに含
まれる遺伝子が近傍に存在するのは 4 箇所であった。また、pCAR1 上の Pmr レギュロン 17 遺伝子の
うち Pmr が 3 kb 以内に結合していたのは 9 遺伝子であった。一方、染色体上の推定 Pmr 結合位置も
数十箇所検出できた。その中には上記の MvaT family 転写制御因子 5 つのうち 4 つの遺伝子領域も含
まれていた。また、Pmr が pCAR1 上の pmr 遺伝子の直上流に結合していることも明らかになり、pmr
の発現が Pmr 自身に依存している可能性も示された。
図1.pCAR1 用タイリングアレイを用いて検出された Pmr の推定結合位置
緑色の長方形のうち、上段は pCAR1 上の+鎖における ORF を、下段は pCAR1 上の-鎖における ORF を
表す。水色のシグナルは、アレイ上の各 probe における p value の値を示す。グラフ上では山が高いほど Pmr
の結合の確からしさが高い。p value<10-3.5 で threshold を設定すると、pCAR1 上に赤丸で示す 9 箇所の Pmr
127
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
推定結合位置を検出できた。
(考察)上記の結果は、P. aeruginosa 等において報告されている「MvaT family 転写制御因子同士が
お互いの発現量を転写レベルで制御する現象」が、MvaT family 転写制御因子が転写を制御する遺伝子
の近傍に結合することによって起こる可能性を示している。今後、タイリングアレイを用いたより詳細
な Pmr レギュロンの抽出を行うと共に、その結果を ChAP-chip 解析の結果と詳細に比較する必要があ
る。また、Pmr との相互作用が検出された染色体上の3つの MvaT family 転写制御因子についても、
Pmr と同様に ChAP-chip 解析、レギュロンの解析を進めている。これらも含めて総合的に比較するこ
とで、Pmr と染色体 MvaT family 転写制御因子が各遺伝子の発現制御において相互作用するか否か(近
傍の遺伝子領域に結合するか否か)が明らかになる。これらの情報は、Pmr を含めた MvaT family 転
写制御因子が実際にどの様に発現制御を行っているのかを解明する手がかりを与えてくれるものと期
待される。
本研究は、生研センター基礎研究推進事業として行われた。
(引用文献)
1) 野尻ら,化学と生物,45, 635-643 (2007).
2) Miyakoshi et al., J. Bacteriol., 189, 6849-6860 (2007).
3) Miyakoshi, Terabayashi, Shintani et al., unpublished results.
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セッション 4「極限環境生物」
O-11
極限環境耐性動物クマムシの一種、Ramazzottius varieornatus の培養法
確立
○堀川大樹 1)、國枝武和 1)、阿部渉 1)、中原雄一 2)、渡邊匡彦 2)、坂下哲哉 3)、浜田信行 3), 4)、小林泰彦
3), 4)、東正剛 5)、奥田隆 2)
1)東京大学大学院・理学系研究科、2)農業生物資源研究所・乾燥耐性研究ユニット、3)原子力研究開発機
構・マイクロビーム細胞照射研究グループ、4)群馬大学大学院・医学系研究科、5)北海道大学大学院・地
球環境科学研究科
堀川大樹:[email protected]
目的
クマムシ類は緩歩動物門に属する体長 1mm 以下の動物群の総称である。陸生のクマムシ は 、
周囲の水がなくなると自ら脱水し、乾眠 “anhydrobiosis” とよばれる無代謝状態に陥る。乾 眠
状態のクマムシは、−273ºC 1)から 151ºC 2)の温 度、1.2GPa 3)、アルコール 4)および放射線照射 5, 6)
など、さまざまな極限環境に対する耐性を示す事が知られている。クマムシの乾眠や極限環 境
耐性の謎を解くことで、多細胞生物を扱った極限環境生物学が発展すると思われる。だが、実
験室下でのクマムシの培養法が大変な労力を要する不安定なものであり、この生物に関する研究は満
足になされてこなかった。そこで、本研究では、クマムシを極限環境高等生物のモデル生物 と
して発展させるため、複数種のクマムシを採集し、簡便な培養が可能な種を探索した。
方法
国内外のフィールドから乾燥した環境に生育するコケ類を採取し、クマムシ類を単離した。単離した
クマムシを種ごとに寒天培地に入れ、藻類 Chlorella vulgaris を餌として与え、成長・繁殖するか確
認した。最も繁殖効率の良い種について、その生活史を記録するとともに、乾眠能と極限環境耐性の有
無を調査した。
結果
野外調査によって得られた 4 種類のクマムシのうち、札幌市の路上のコケから採取したクマムシの一種、
Ramazzottius varieornatus (図1) が C. vulgaris を餌として成長・繁殖できる事が分かった。人工培養環境下
における R. varieornatus の寿命はおよそ 35 日間であり、孵化期間は 5.7±1.1 日であった。
128
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
生殖様式は単為生殖か自家生殖であることが判明し、1 個体あたり、生涯に 8 個の卵を産んだ。また、R.
varieornatus は、卵、幼体、成体のすべての発生ステージにおいて乾眠に移行できることが 確
認された (図 2) 。さらに、乾眠状態の成体の R. varieornatus を種々の極限環境に暴露しても、
高い生存率を示した。
考察
本研究により、クマムシの一種、R. varieornatus の培養法を確立することに成功し、同種が乾眠能
を有することと極限環境を持つことを示した。R. varieornatus は、これまでに報告されている培養が可
能な種のクマムシ 7, 8)よりも、培養作業の頻度が少なくても維持が可能なことから、今後、 R. varieornatus
を極限環境生物学のモデル生物として、高等生物における乾眠や極限環境耐性のメカニズム が
解明される事が期待される。
引用文献
1) Becquerel, P. (1950) C. R. hebd. Séances Acad. Sci. Paris 231, 261–263.
2) Rahm, P.G. (1921) Z. allgem. Physiol. 20, 1-35.
3) Horikawa, D.D. et al. (2007) High Pressure Biosci. Biotechnol.1, 157-160.
4) Ramløv, H. and Westh, P. (2001) Zool. Anz. 240, 517–523.
5) May, R. et al. (1964) Bull. Biol. Fr. Belg. 98, 349–367.
6) Horikawa, D.D. et al. (2006) Int. J. Radiat. Biol. 82, 843–848.
7) Suzuki, A.C. (2003) Zool. Sci. 20, 49–57.
8) Altiero, T. and Rebecchi, L. (2001) Zool. Anz. 240, 217-221.
A
蘇生率 (%)
100
B
80
60
40
20
0
50μm
図
1 (A) 活 動 状 態 及 び20μm
(B) 乾 眠 状 態 の R.
varieornatus
卵
幼体
成体
図 2 R. varieornatus における卵、幼体 (3 日齢)、成
体 (20 日齢) の 10 日間乾燥後の蘇生率。全てのステ
ージで高い蘇生率を示した。卵における蘇生率 (孵化
率) は、非処理区の孵化率を考慮して補正した値。
Title
Establishment of culture system of the extremotolerant tardigrade Ramazzottius varieornatus
Authors (affiliation)
Daiki D. Horikawa1), Takekazu Kunieda1), Wataru Abe1), Yuichi Nakahara2), Masahiko Watanabe2),
Tetsuya Sakashita3), Nobuyuki Hamada3, 4), Yasuhiko Kobayashi3, 4), Seigo Higashi5), and Takashi
Okuda2)
(1) Graduate School of Science, The University of Tokyo, 2) Anhydrobiosis Research Unit, National Institute of
Agrobiological Sciences, 3) Microbeam Radiation Biology Group, Japan Atomic Energy Agency, 4) Gunma
University Graduate School of Medicine, 5) Graduate School of Environmental Earth Science, Hokkaido
University)
___________________________________________________________________________________________
O-12
極限環境生物(深海生物)の生存捕獲法とオオグチボヤの運動特性
○三輪哲也,花園美樹、高山茂樹,三宅裕志,掘越弘毅
独立行政法人 海洋研究開発機構・魚津水族館・新江ノ島水族館
三輪哲也:[email protected]
【目的】「ハイパードルフィン」による富山湾深海領域における生物分布調査が実施から、富山湾深海
129
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
海底において広くオオグチボヤが継続的に生息することが確認された。オオグチボヤは原索動物であり、
ホヤ類のなかでも内性の、亜種の少ない珍しい形態を有している。このような深海生物の研究は、その
情報がきわめて少ない。その理由は、極域に棲む深海生物の採取が偶然の出会いに支配されていること、
サンプル回収方法や船上での飼育・輸送システムが十分に検討されていないこと、さらに生きたままの
サンプリングが環境変動を大きく受けるために容易でないこと、それらの理由が重なって生物の動的な
環境応答研究まで持っていくためのサンプル数が圧倒的に少ないことなどによると考えている。我々は
深海多細胞生物研究の基礎的な準備として、深海生物を捕獲することを目的とした装置
(DEEPAQUARIUM)を開発し、深海生物の生きたままの採取と飼育・保管を試みている。富山湾にお
けるオオグチボヤの生存捕獲方法の検討と、実験生物としての安定利用の可能性を検討し、さらにその
生物の運動特性を計測した。
【方法】富山湾の黒部・魚津沖合の水深 600m の沖合に、ハイパードルフィンを潜航させ、採集した。
また、同海域に付着基板等を沈め、適期的に引き上げ生物の付着状況を検討した。採集したオオグチボ
ヤは 1℃の低温水槽に保存し、飼育しながら状態を観察した。また、DEEPAQUARIUM の加圧容器に
再設置し、5MPa までの加圧環境計測を行った。
【結果と考察】大気圧環境下での飼育の開閉のパターンを検討した結果、非常に大きな入水孔前部にお
いて、その入水孔前部を定期的に開閉するの動作が観察された。3秒程度の閉口行動と、1 分程度の開
口行動を5分から15程度の周期で繰り返すことが見いだされ、入水孔前部に存在する微細毛が刺激さ
れることにより閉口することが確認できた。さらに、圧力環境を DEEPAQUARIUM で制御した結果、
入水孔の開閉パターンの間隔が広くなり、開閉のリズムが遅くなることが確認できた。入水孔の開閉は、
見かけ上、クラゲの遊泳における伸縮運動と類似しているように考えられ、例えばカルシウムイオンチ
ャンネルによる原始的な運動制御のようなものがあると考えられる。
Surviving Capture of Megalodicopia hians from deep-sea and Movement of Branchial Aperture
(Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, Uozu Aquarium, Enoshima Aquarium,
Hiroshima Univ.) MIWA, Tetsuya; HANAZONO, Miki; TAKAYAMA, Shigeki; MIYAKE, Hiroshi;
HORIKOSHI, Koki
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0-13
シロウリガイ共生細菌ゲノムの比較からみえるゲノム縮小進化
○桑原宏和1)、高木善弘 1)、吉田尊雄 1)、島村繁 1)、瀧下清貴 1)、James D Reimer1),2)、加藤千明1)、
丸山正1)
1)
海洋研究開発機構 極限環境生物圏研究センター、2)琉球大学
桑原宏和: [email protected]
細胞内共生細菌のゲノムは、ゲノム縮小進化についての重要な知見を与えてくれる。それらは祖先と
考えられる自由生活型細菌から、細胞内共生細菌へと、進化してきた過程でゲノムを縮小してきたと考
えられる。アブラムシの細胞内共生細菌でありγプロテオバクテリアに属するブフネラでは、細胞内共
生を獲得した後、比較的早期に大規模なゲノム縮小が生じ、その後ゲノム縮小速度は減少し、現存では
ゲノムは比較的安定した状態にあると考えられている。
深海の湧水域、熱水噴出域に優占種として生息する二枚貝であるシロウリガイ類はγプロテオバクテ
リアに属する化学合成細胞内共生細菌を有しており、最近そのうちのシマイシロウリガイとガラパゴス
シロウリガイの共生菌 (Vesicomyosocius okutanii: Vok, Ruthia magnifica: Rma) のゲノムが報告され
た (Kuwahara et al 2007, Newton et al 2007)。シロウリガイ共生細菌のゲノムサイズは、Vok では 1.02
Mb、Rma では 1.16 Mb と小さく、宿主と細胞内共生関係を築き垂直伝達される事により、ゲノムを縮
小してきたのではないかと考えられた。Vok と Rma の系統的近縁関係を考えると両者のゲノムサイズ
の差は約 140 kb と大きく、シロウリガイ共生細菌では、現在でも大きなゲノム縮小進化が起こってい
るのではないかと推定された。私たちは、ゲノムが安定する前の途中段階でのゲノム縮小進化プロセス
を理解するため、これらシロウリガイ共生細菌のゲノムの比較を行った。
二つのゲノムを比較した結果、両ゲノムの基本的な構造は保存されているのにもかかわらず、1 つの
130
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
逆位と多くの 100 bp 以下の小さな欠失から、1 kbp 以上 11 kbp に至るまでの大きな欠失が認められ、
その数はサイズが大きくなるにしたがって指数関数的に少なくなっていた。また欠失の頻度、短いリピ
ート配列の頻度、および A+T 含量が、コード領域よりも非コード領域に高く認められた。
ブフネラの場合と同様に、シロウリガイ共生細菌は recA 遺伝子を失っており、認められた逆位や欠
失は、RecA 非依存でショートリピートに依存する機構で起こったのではないかと考えられる。またシ
ロウリガイ共生細菌は多くの DNA 修復系遺伝子をコードしておらず中でも mutY 遺伝子 (G-A ミスマ
ッチペアを G-C ペアに修復する) が存在せず、変異が高 A+T 含量に傾くと考えられる。よって、この
AT バイアスが塩基配列の複雑さを低下させ非コード領域にショートリピートを生み出し、それがゲノ
ム縮小進化を促進しているのではないかと考えられる。
現存のシロウリガイ共生細菌におけるゲノム縮小進化は、遺伝子が変異を蓄積し非コード領域になり、
何回かの小さな欠失により失われていく場合と、いくつかの遺伝子を含んだ領域が一度の大きな欠失に
より失われていく場合があると考えられる。それら欠失は RecA 非依存でショートリピートに依存して
起こっており、ショートリピートを再生させながら現在のシロウリガイ共生細菌のゲノム縮小進化が起
こっていると考えられる。シロウリガイ共生細菌のゲノム縮小進化がさらに進んだ時、ゲノムは安定し
2 つは似たものになると考えられる。さらにゲノム縮小進化が進んだとしたら、いつか化学合成を行う
オルガネラが誕生するかもしれない。
引用文献
Kuwahara H, Yoshida T, Takaki Y, Shimamura S, Nishi S, Harada M, Matsuyama K, Takishita K,
Kawato M, Uematsu K et al: Reduced Genome of the Thioautotrophic Intracellular Symbiont in a
Deep-Sea Clam, Calyptogena okutanii. Curr Biol 2007, 17(10):881-886.
Newton IL, Woyke T, Auchtung TA, Dilly GF, Dutton RJ, Fisher MC, Fontanez KM, Lau E,
Stewart FJ, Richardson PM et al: The Calyptogena magnifica chemoautotrophic symbiont
genome. Science 2007, 315(5814):998-1000.
Title
Process of reductive genome evolution: genomic comparison of chemoautotrophic intracellular
Calyptogena symbionts
Authors (affiliation)
Hirokazu Kuwahara1), Yoshihiro Takaki1), Takao Yoshida1), Shigeru Shimamura1), Kiyotaka
Takishita1), James D Reimer1), 2), Chiaki Kato1), Tadashi Maruyama1)
(1)Extremobiosphere Research Center, Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology
(JAMSTEC), 2)Department of Marine Science, Biology and Chemistry, University of the Ryukyus)
___________________________________________________________________________________________
セッション5「代謝と生理」
O-14
Pyrococcus furiosus 由来ウラシル DNA グリコシラーゼ-PCNA 間の機能的
相互作用
○ 清成信一、内村真伊子、石野良純
九州大・院、農学研究院
【 目的 】
染色体 DNA 上では絶えず様々な種類の DNA 損傷が生じている。なかでも DNA の塩基部分が酸化や
アルキル化などの修飾を受けることによって生じる種々の損傷塩基はそれぞれに対応する DNA グリコ
シラーゼによって除去されている。生体内においては DNA 鎖上のシトシンの脱アミノによるウラシル
の形成が高頻度で生じており(G-C から G-U)、これがウラシル DNA グリコシラーゼ(UDG)によって
除去されない場合、次の DNA 複製の際に G→A 変異が起こる原因となる。このシトシンの脱アミノ化
は常温環境よりも高温環境下において高頻度で起こるとされているため(1)、高温環境下で生育する好熱
性細菌や好熱性アーキアにおけるウラシル除去修復機構の詳細については特に興味のもたれるところ
である。
高等真核生物の損傷塩基除去修復機構については詳細な解析がなされており、DNA グリコシラーゼ
によって塩基が除去された部位に対して AP エンドヌクレアーゼが作用し、二本鎖 DNA 上に一塩基の
131
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
ギャップを生じさせることがわかっている。生じたギャップ部分の修復には塩基除去修復系専用の DNA
ポリメラーゼβによって一塩基の DNA 合 成が行われて修復される経路と DNA 複 製系で働く
PCNA-DNA ポリメラーゼδ複合体によって十数塩基が連続的に合成されて修復される経路の二つが存
在する(2)。好熱性アーキアにおける塩基除去修復機構は完全に解明されていないが、DNA ポリメラー
ゼβと同じファミリーに属する DNA ポリメラーゼが保存されていないことから、後者の PCNA 依存的
な経路によって修復がなされているものと推測される。
我々はアーキアにおける塩基除去修復機構の全容を解明していく手順としてまず超好熱性アーキア
である Pyrococcus furiosus 由来の UDG(PfuUDG)の生化学的解析を行うことにした。そして次に PCNA
と UDG の機能的な相互作用について解析を行った。
【 方法 】
P. furiosus のゲノム DNA から UDG をコードする遺伝子(PF1385)を pET21a ベクターにクロー
ニングし、大腸菌を用いて UDG 蛋白質の大量発現を行った。またプラスミド上の遺伝子に部位特異的
変異を導入した。野生型 UDG およびその変異体の蛋白質は複数種のカラムクロマトグラフィーを用い
て SDS-PAGE 上で単一バンドになるまで精製したものを実験に用いた。UDG の活性測定に用いたウラ
シル含有オリゴ DNA は依頼合成により入手した。活性測定は基本的に Sulforobus solfataricus 由来
UDG の生化学的研究に用いられた条件に従って行った(3)。PCNA との物理的相互作用は BIACORE シ
ステムを用い、表面プラズモン共鳴(SPR)解析によって評価を行った。
【 結果と考察 】
精製した PfuUDG は in vitro において二本鎖 DNA 鎖中のウラシル塩基を除去する活性を有している
ことが確認された。また他の UDG と同様に一本鎖 DNA 中のウラシル塩基も除去できることが判明し
た。酵素活性には二価金属イオンを要求せず、EDTA 存在化でも酵素活性を有していた。また反応系の
塩濃度の増加に従って活性は減少し、0.2 M KCl 以上の塩濃度では活性を示さなかった。in vitro にお
ける酵素反応の至適温度は 80 ℃付近であることがわかった。
アーキアでもクレナーキオタに属する Pyrobaculum aerophilum と S. solfataricus 由来の UDG は酵
素蛋白質の C 末端に存在する PCNA 結合モチーフを介して PCNA と相互作用することが確認されてい
るが、ユリアーキオタに属するアーキアが有する UDG には明確な PCNA 結合モチーフが存在しないこ
とが以前から指摘されていた(3, 4)。P. furiosus 由来 PCNA が固定化された BIACORE センサーチップ
を用いて PfuUDG との物理的相互作用について解析を行ったところ、クレナーキオタ由来のものと同
様に PCNA との結合が確認された。また 0.1 M KCl の塩濃度下において PfuUDG の酵素活性は PCNA
によって活性化されることがわかった。さらに PfuUDG の PCNA 結合部位を同定するために種々の変
異体 PfuUDG を用いた解析を行った結果、クレナーキオタ由来の UDG とは特徴を異にする新規な
PCNA 結合モチーフを酵素蛋白質鎖の末端ではなく内部の位置に同定することに成功した。
【 引用文献 】
(1) Lindahl, T., Nyberg, B. (1974) Biochemistry, 13, 3405-3410.
(2) Barnes, D.E., Lindahl, T. (2004) Annu. Rev. Genet., 38, 445-476.
(3) Dionne, I., Bell, S.D. (2005) Biochem. J. 387, 859-863.
(4) Yang, H., Chiang, J.H., Fitz-Gibbon, S., Lebel, M., Sartori, A.A., Jiricny, J., Slupska, M.M.,
Miller, J.H. (2002) J. Biol. Chem. 277, 22271-22278.
Functional interaction between uracil DNA glycosylase and PCNA from Pyrococcus furiosus
○Shinichi Kiyonari, Maiko Uchimura, Yoshizumi Ishino
(Dept. Genet. Resources Tech., Kyushu University)
___________________________________________________________________________________________
O-15
超好熱アーキア Sulfolobus tokodaii の L-セリン生合成系の解明:ホスホセ
リンアミノ基転移酵素(PSAT)の機能解析
○清水泰博1)、米田一成 2)、土居克実 1)、櫻庭春彦 3)、大島敏久 1)
1)
九州大学大学院・生物資源環境科学府・遺伝子資源工学専攻
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
2)
3)
九州東海大学農学部・バイオサイエンス学科
徳島大学大学院・ソシオテクノサイエンス研究部
清水泰博:[email protected]
目的:我々はゲノム情報と酵素機能解析から、超好熱アーキアに特異的な物質代謝系の解明を行ってい
る。本研究では S. tokodaii における D-3-ホスホグリセリン酸からの L-セリン生合成系[下図:括弧内に
S. tokodaii における関連遺伝子を示す]に関与する 3 種の酵素の機能解析を進めてきた。既に、 S.
tokodaii のゲノム情報から L-セリン合成経路の初発酵素である D-3-ホスホグリセリン酸脱水素酵素
(PGDH)の遺伝子ホモログ(ST1218)を見出し、その遺伝子産物の機能を明らかにした。今回は、
L-セリン生合成経路の第 2 段階の反応であるホスホヒドロキシピルビン酸からホスホセリンの合成に関
与するホスホセリンアミノ基転移酵素(PSAT)の機能解析を試みた。
[図: L-セリン生合成経路]
PSAT
(ST1217)
PGDH
(ST1218)
D-3-Phosphoglycerate
3-Phosphohydroxypyruvate
Phosphoserine
phosphatase
L-Glutamate
Phosphoserine
2-Oxoglutarate
L-Serine
方法:まず S. tokodaii のゲノム情報から PSAT 遺伝子を探索した。得られた PSAT 遺伝子(ST1217)
を発現ベクター(pET11a)に組み込み、大腸菌 Rosetta-gami (DE3)内で発現させた。その発現産物を
熱処理(70℃・10 分間)
、疎水性及びゲルろ過クロマトグラフィーにより均一になるまで精製した。精
製後の酵素についてその分子質量及び諸性質を解明した。
結果と考察:S. tokodaii のゲノム上の PSAT 遺伝子ホモログを探索したが、有意な相同性を示す ORF
を見出すことはできなかった。一方、大腸菌 PSAT はクラス 5 に分類されるアミノ基転移酵素であり、
S. tokodaii にそれと同じクラスに分類されるアミノ基転移酵素をコードする ST1217 遺伝子を見出した。
さらに、この遺伝子は初発酵素をコードする ST1218 遺伝子と遺伝子クラスターを形成することが判明
した。これは、ST1217 遺伝子が PSAT をコードすることを示唆している。しかし、ST1217 遺伝子産
物は、既に機能と構造が明らかにされている大腸菌 PSAT1)や Bacillus alcalophilus PSAT2)とのアミノ
酸配列の相同性をほとんど示さず(同一性:8~13%)、基質結合に必要な残基もほとんど保存されてい
なかった。そこで、ST1217 遺伝子産物が PSAT 活性を有するかどうかを調べるため、
大腸菌での ST1217
遺伝子産物の発現を行った。その結果、本遺伝子産物は PSAT 活性を有していた。
S. tokodaii PSAT は熱処理と 2 種類のクロマトグラフィーを用いて簡便に精製されたが、精製後の酵
素活性は著しく減少し、その活性は 1 週間で完全に失われた。そこで、酵素安定性に関与する諸因子を
検討したところ、補酵素(Pyridoxal 5’-phosphate:PLP)が S. tokodaii PSAT の安定性に関与してい
ることが明らかになった。特に、細胞破砕時に PLP を添加することで、S. tokodaii PSAT は安定化し、
酵素活性は精製後 1 週間経ても減少しなかった。この結果は PLP が酵素の安定性に関与していること
を示唆している。
次に S. tokodaii PSAT の諸性質を検討した。本酵素は分子質量は 61.3 kDa で、ホモ 2 量体構造を形
成していた。また、本酵素は 90℃・1 時間の熱処理でも変性しない高い耐熱性を示し、アミノ基受容体
として、2-オキソグルタル酸の代わりに、オキサロ酢酸やピルビン酸を利用するという特徴を有した。
さらに S. tokodaii PSAT の結晶化に成功しており、本酵素の立体構造解析も進めている。
上記のように、本研究において、ST1217 がコードする PSAT が S. tokodaii の L-セリン生合成経路
の第 2 反応に機能することを証明した。今後の研究で、S. tokodaii の L-セリン生合成経路の第 3 反応
に関与するホスホセリン脱リン酸化酵素遺伝子ホモログの探索及び機能解析を進め、本菌の L-セリン生
合成経路の全貌を明らかにする予定である。
参考文献
1) G. Hester, W. Stark, M. Moser, J. Kallen, Z. Marković-Housley and J. N. Jansonius (1999)
Crystal structure of phosphoserine aminotransferase from Escherichia coli at 2.3 Å resolution:
133
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
comparison of the unligated enzyme and a complex with α-methyl-L-glutamate. J. Mol. Biol., 286,
829-850.
2) A. P. Dubnovitsky, E. G. Kapetaniou and A. C. Papageorgiou (2005) Enzyme adaptation to
alkaline pH: Atomic resolution (1.08 Å) structure of phosphoserine aminotransferase from Bacillus
alcalophilus. Protein Sci., 14, 97-110.
Title: Functional analysis of phosphoserine aminotransferase in the phosphorylated L-serine
biosynthesis of the hyperthermophilic archaeon Sulfolobus tokodaii
Authors: ○ Yasuhiro Shimizu1), Kazunari Yoneda2), Katsumi Doi1), Haruhiko Sakuraba3) and
Toshihisa Ohshima1)
1) Microbial Genetics Division, Institute of Genetic Resources, Faculty of Agriculture, Kyushu
University
2) Department of Bioscience, School of Agriculture, Kyushu Tokai University
3) Department of Biological Science and Technology, Faculty of Engineering, The University of
Tokushima
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O-16
Hydrogenobacter thermophilus の窒素同化代謝
○亀谷将史、新井博之、石井正治、五十嵐泰夫
東京大学・農学生命科学研究科
亀谷将史:[email protected]
<目的>
Hydrogenobacter thermophilus は Aquificae 門に属し、バクテリアの中でももっとも古くに分岐し
たと推定される好熱性細菌である。本菌は水素を唯一のエネルギー源とし、また還元的 TCA 回路によ
り二酸化炭素を唯一の炭素源とする(図 1)など、特徴的な代謝系を有することがこれまでに明らかと
なっており、また還元的 TCA 回路を触媒する個々の酵素レベルでも新規な性質を有していることが近
年明らかとなってきている。
本菌の窒素同化代謝に関しては、glutamine synthetase (GS)と glutamate synthase (GOGAT)の共役
反応によりアンモニアが Glu へと取り込まれることがこれまでに示されている(図 1、引用文献 1、2)。
既報のバクテリアの GOGAT が NADPH を電子供与体として用いるのに対し、本菌の GOGAT はフェ
レドキシンを電子供与体とした。これは、これまでシアノバクテリア・植物にしか存在しないと考えら
れていた性質である。さらに本酵素では、還元的 TCA 回路の中間代謝産物により活性化されるといっ
た新規な性質も見られた。これらの知見から、本菌では炭素代謝のみならず窒素代謝においても特徴的
な性質を有すると考えられた。
炭素同化代謝 (還元的TCA回路)
窒素同化代謝
Citrate
Acetyl-CoA
Fdred CO2
Isocitrate
Citryl-CoA
GS
Fdox
Pyruvate CO2
Oxalosuccinate
Gln
Fd, ferredoxin
Glu
CO2
Oxaloacetate
糖新生
NH3
2-Oxoglutarate
Fdox
Malate
Fdox
各種アミノ酸
生合成へ
GOGAT
Fdred
Fumarate
Glu
Fdred
CO2
Succinyl-CoA
Succinate
図 1:本菌の還元的 TCA 回路および GS/GOGAT 経路。GOGAT が電子供与体として用いるフェレドキ
シンは、還元的 TCA 回路の炭酸固定反応でも用いられる。
134
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
本発表では、GS/GOGAT 経路により生成した Glu から各種アミノ酸を合成する aminotransferase
についての研究を報告する。Aminotransferase はアミノ酸と 2-オキソ酸間でアミノ基転移を触媒する。
反応性のある基質の組み合わせは酵素ごとに異なり、一次構造からその基質特異性を予想するのは難し
い。そこで本研究では、酵素学的手法で本菌の aminotransferase 活性の検出とその精製を行うことで、
本菌のアミノ酸合成系の解明、また各 aminotransferase の性質を明らかにすることを目的として実験
を行った。
<方法>
各種 aminotransferase 活性は、以下 2 つのいずれかの手法によって検出した。
①Phenylthiocarbamyl 誘導体化による生成アミノ酸の定量
②各種 2-オキソ酸脱水素酵素を用いた、基質 2-オキソ酸減少の測定
各 aminotransferase の精製では、Butyl-Toyopearl、DEAE-Toyopearl、CHT-Hydroxyapatite、MonoQ、
Phenyl Superose カラムを用いた。
<結果>
本菌の細胞抽出液を用いて各種 aminotransferase 活性測定を行ったところ、以下の 4 種類の活性が
検出された(図 2)。
Glutamate:oxaloacetate aminotransferase (GOT):
Glu + oxaloacetate ↔ 2-oxoglutarate + Asp
Glutamate:pyruvate aminotransferase (GPT):
Glu + pyruvate → 2-oxoglutarate + Ala
Glutamate:glyoxylate aminotransferase (GGT):
Glu + glyoxylate → 2-oxoglutarate + Gly
Alanine:glyoxylate aminotransferase (AGT):
Ala + glyoxylate → pyruvate + Gly
Asp
GOT
GPT
Ala
Glu
GGT
AGT
Gly
図 2 本菌の細胞抽出液で検出された aminotransferase
活性
上記 4 種の活性を指標に酵素精製を行ったところ、これらの活性が 3 種類の aminotransferase に由
来することが明らかとなった。GOT・GGT 活性、GPT・GGT 活性、AGT 活性を有する酵素をそれぞ
れ AT1, AT2, AT3 と名づけ、得られた精製酵素を用いて各酵素の動力学的解析を行った。
<考察>
アミノ酸配列に基づいて作製した aminotransferase 系統樹では、AT1 は既報の GOT 活性を有する
酵素と同じクラスターに位置していた。一方 AT2 と AT3 は、その基質特異性に対して系統樹上で特殊
な位置にあり、その aminotransferase の進化系統を考える上で興味深い知見と言える。
<引用文献>
1. Kameya M, Arai H, Ishii M, Igarashi Y (2006) Purification and properties of glutamine
synthetase from Hydrogenobacter thermophilus TK-6. J Biosci Bioeng 102: 311-315
2. Kameya M, Ikeda T, Nakamura M, Arai H, Ishii M, Igarashi Y (2007) A novel
ferredoxin-dependent glutamate synthase from the hydrogen-oxidizing chemoautotrophic
bacterium Hydrogenobacter thermophilus TK-6. J Bacteriol 189: 2805-2812
___________________________________________________________________________________________
O-17
深海底泥からのアミノグリコシド抗生物質生合成遺伝子の探索
○為我井秀行1)、青木里恵1)、神田優美1)、長屋篤史1)、荒川康2)、加藤千明2)
1)
日本大学・文理学部、2)独立行政法人海洋研究開発機構・極限環境生物圏研究センター
代表者
為我井秀行:[email protected]
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
【目的】
抗生物質は産業上もっとも有用な二次代謝産物の一つであり、その多くは細菌によって生産される。
近年新規抗生物質の発見は困難になってきており、より効率のよい探索法が求められている。一つの方
法として考えられるのは環境 DNA から生合成遺伝子を探索し、これらを多く含む土壌から生産菌の探
索を行う方法である。見いだされた遺伝子断片は探索のためのプローブとしても用いることが出来るし、
生合成遺伝子改変による生物学的類縁体合成のための遺伝子バンクとして利用することも出来る。深海
はこれまで人間の探索の手が及んでいない未知の領域である。しかしこれまでの研究で深海にも多くの
微生物が存在することが明らかとなっている。したがってそこには多くの未利用遺伝子資源が眠ってい
ると考えられる。
本研究ではアミノグリコシド系抗生物質に注目した。本系抗生物質は古くから結核の治療などに応用
され、今日でも HIV 感染症への適用などが考えられるなど臨床的に重要な抗生物質である。これまでの
研究で陸上の環境 DNA 中にはアミノグリコシド生合成遺伝子が見いだされている[1, 2]。深海のような
未知の環境にもこのような遺伝子資源が存在するかどうかについては興味の持たれるところである。そ
こで私たちは深海環境 DNA 中におけるアミノグリコシド生合成遺伝子の探索とその多様性に関する研
究を行った。
【方法】
太平洋釧路沖広尾海底谷から回収した底泥より抽出した DNA を鋳型とし、アミノグリコシド生合成
系に特異的にみられるアミノ基転移酵素遺伝子、2-デオキシ-scyllo-イノソース合成酵素遺伝子をターゲ
ットとした。既知配列を基に設計した degenerate プライマーを用いた nested PCR により遺伝子の増
幅を行った。得られた遺伝子断片はベクターに組込み、配列解析を行った。またアミノ基転移酵素遺伝
子に関しては温度勾配ゲル電気泳動(TGGE)による解析も行った。
【結果・考察】
数地点の底泥から抽出した DNA サンプルより、多数のアミノ基転移酵素遺伝子断片、2-デオキシ
-scyllo-イノソース合成酵素遺伝子断片が見いだされた。アミノ基転移酵素遺伝子の場合、これまで生産
菌や陸上の環境 DNA には見いだされていない、深海特有の配列を持った断片が数多く発見された。ま
た TGGE の解析によってアミノ基転移酵素遺伝子断片が分離できることが明らかとなり、本法による
多様性解析の有用性が示された。一方 2-デオキシ-scyllo-イノソース合成酵素遺伝子は、同じ深海環境
DNA を用いて実験を進めたにもかかわらず、陸上の環境 DNA から得られた結果に比べて非常に低い多
様性を示した。アミノグリコシド抗生物質はアグリコンとして myo-イノシトール誘導体を持つもの 2デオキシストレプタミン(DOS)を持つものの 2 種類に分類できる。アミノ基転移酵素は両方の生合成
に関与するが、2-デオキシ-scyllo-イノソース合成酵素は DOS 含有型にのみ特異的である。本研究の結
果は、少なくとも本地点においては DOS 含有型よりも myo-イノシトール誘導体含有型アミノグリコシ
ドを生産する細菌が優勢であることを示すものと思われる。
【引用文献】
[1] Nagaya, A., Takeyama, S. and Tamegai, H. (2005) Identification of aminotransferase genes for
biosynthesis of aminoglycoside antibiotics from soil DNA. Biosci. Biotechnol. Biochem. 69,
1389-1393
[2] Tamegai, H., Kuki, T., Udagawa, Y., Aoki, R., Nagaya, A. and Tsukada, S (2006) Exploration of
genes that encode carbocycle-forming enzyme involved in biosynthesis of aminoglycoside
antibiotics. Biosci. Biotechnol. Biochem. 70, 1711-1716
Exploration of genes involved in the biosynthesis of aminoglycoside antibiotics from deep sea
Hideyuki Tamegai1, Rie Aoki1, Yumi Kanda1, Atsushi Nagaya1, Shizuka Arakawa2 and Chiaki Kato2
(1Department of Chemistry, College of Humanities and Sciences, Nihon Univesity and 2
Extremobiosphere Research Center, Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)
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136
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
ポスター発表要旨
P-01
Thermus 属細菌における Silica-induced protein (Sip)の発現誘導とその制御
機構の解析
○藤野
泰寛1)、横山
1)
拓史2)、大島
敏久3)、緒方
靖哉4)、土居
克実3)
2)
九州大学・大学院生物資源環境科学府、 九州大学・大学院理学研究院、
九州大学・大学院農学研究院、4)崇城大学・生物生命学部、
3)
代表 土居 克実: [email protected])
【目的】
シリカ(SiO2)は地殻の約 60%を占める地球上で最も多い化合物の一つであり、火山活動の活発な地熱地帯
では、地下を移動・循環する熱水の主要な化学構成成分である。シリカの前駆体である単量体のケイ酸
(Si(OH)4)の溶解度は温度や圧力に依存し、我が国の天然水では 5~100 ppm、地熱熱水では 400 ppm 以上
の濃度で溶解している。ケイ酸濃度が過飽和に達し、脱水縮合により重合したものがシリカである。高温・高圧の
条件下で著量のケイ酸が溶解している地熱熱水を汲み上げ、発電に利用している地熱発電所では、シリカスケ
ールと呼ばれるシリカの沈着物が熱水輸送管などに形成され、輸水効率の低下やメンテナンスなどが深刻な問
題となっている。シリカスケールの形成は、熱水中のケイ酸が温度・圧力の低下により過飽和化してシリカコロイ
ドを形成し、ついで Al3+や Fe3+などの金属イオンによって凝集・沈殿することなどの化学的要因に依ると指摘さ
れてきたが、地熱発電所で見られるスケールは、非常に速い形成や、特定の場所における成長など、溶解度と
化学平衡で規定される無機化学モデルのみでは説明できない現象と捉えられていた 1)。
我々は、シリカスケールと高温熱水域で生息する好熱
性微生物との関連に着目し、地熱発電所の熱水滞留槽
中に銅製のテストピースを設置し、それらの上にシリカス
ケールを形成させた。これらのシリカスケール中に微生物
の存在を確認し、Thermus thermophilus HB8 に近縁
な T. thermophilus TMY を分離した 2)。TMY 株を含む
Thermus 属細菌を、過飽和シリカ(>300 ppm, 70oC)を
含む TM 培地中で培養すると、対数増殖期の中期から後
期にかけて急速にシリカ沈殿物の形成が観察されるととも
に、約 35 kDa の膜表層タンパク質 Sip (silica-induced
protein) が 誘 導 産 生 さ れ た ( 図 1 ) 3),4) 。 本 研 究 で は 、
TMY 株由来の Sip の内部アミノ酸配列を決定し、近縁株
である HB8 のゲノム情報より相同性検索を行い、本情報
をもとに TMY 株の産生する Sip をコードする遺伝子を同
定し、その発現誘導機構の解明に取り組んだ。
【方法】
図1
T. thermophilus TMY を用いた in vitro
T. thermophilus TMY、T. thermophilus HB8 および
シリカ沈殿と Sip 発現
A:TMY 株の増殖とシリカ沈殿との相関関係
Thermus aquaticus YT1 を様々な濃度の SiO2 を含む TM
B:シリカ濃度と Sip の発現との関係
培地で培養し、経時的に膜表層画分を調製した。これ
らを SDS-PAGE に供し、Sip の発現誘導について検討
した。また、TMY 株の産生する Sip をカラムクロマトグラフィーにより精製後、endoprotease Asp N に
よる消化断片のアミノ酸配列を決定した。本配列を HB8 ゲノムとの相同性検索を行い、その情報を基に
TMY 株の Sip をコードする ORF を決定した。さらに高濃度シリカを含む培地中で培養した菌体から RNA
を抽出し、Northern blotting、primer extension 法などを用いて Sip の発現誘導機構について解析している。
【結果・考察】
シリカによる Sip の発現誘導は Thermus 属細菌において広く観察され、特に 400 ppm 以上のシリカ濃
137
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
度では、添加後 1 時間で Sip の発現誘導が確認された。400 ppm という濃度は培養温度 75℃におけるシ
リカの溶解度よりわずかに高く、Sip の誘導には過飽和シリカの存在が重要であることが示唆された。
このような条件下で調製した膜表層画分を 2 次元電気泳動に供したところ、Sip(分子質量 35 kDa、pI 9.5)
以外に著量発現誘導されるタンパク質は検出されなかった。また、TMY 株の Sip は N 末端がブロック
されていた為、Asp N 消化断片のアミノ酸配列(SXIXAGEIXLGSXNDYAVV)を決定した。本配列は HB8
株の ferric iron binding ABC transporter (solute-binding protein)と有意な相同性を示した。本 ABC transporter
は solute-binding protein、permiase、ATPase より成る遺伝子 cluster を形成しており、Serratia marcescens
の SfuABC に類似していたため 5)、ポリシストロニックな転写を受けると推察された。しかし、2D-PAGE
で Sip のみの発現しか認められず、sip 遺伝子をプローブにした Northern blotting では、シリカ誘導時に
sip が単独で転写されていることが示唆された。さらに、TMY、HB8 株の sip 周辺領域を検索したとこ
ろ、sip の終止コドンの直下にヘアピン構造が確認され、これが sip の terminator と考えられた。今後、
promoter 領域を含む sip 上流の解析と、Sip の発現と iron binding ABC transporter が主に機能すると考え
られる鉄イオンの輸送について追及していく予定である。
【引用文献】
1) K. Doi et al., 化学と生物, 42 (5), 326-332, 2004
2) Y. Fujino et al., J. Appl. Microbiol., in press
3) F. Inagaki et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 62 (6), 1271-1272, 1998
4) F. Inagaki et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 60, 605-611, 2003
5) A. Angerer et al., J. Bacteriol., 172 (2), 572-578, 1990
Title:
Induction and regulation mechanisms of silica-induced protein observed among Thermus strains
Authors:
Yasuhiro Fujino1), Takushi Yokoyama2), Toshihisa Ohshima3), Seiya Ogata4), and Katsumi Doi3)
(Graduate school of Bioresource and Bioenvironmental Sciences1), Faculty of Science2), Faculty of
Agriculture3), Kyushu Univ. and Fuculty of Bioscience, Sojo Univ4). )
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P-02
Aeropyrum pernix 由来の DNA ポリメラーゼと PCNA 間の相互作用解析
○松川博昭、奈須えりこ、石野良純
九州大学大学院・遺伝子資源工学専攻
【目的】
DNA ポリメラーゼは DNA の複製や修復における中心的な役割を担っており、生命の維持にとって極め
て重要な酵素である。DNA ポリメラーゼは細胞内において様々な因子と相互作用することが知られてい
るが、その中でも DNA ポリメラーゼが鋳型 DNA 鎖上からこぼれ落ちずに連続的な DNA 合成を行うために
はクランプと呼ばれる分子を必要とする。真正細菌においては PolⅢホロ酵素として同定されたβサブ
ユニットがそれにあたり、真核生物では PCNA(Proliferating Cell Nuclear Antigen)と呼ばれる分子が
その働きを担っている。また、第 3 の生物ドメインであるアーキアにおいても PCNA と相同な配列をも
つタンパク質が存在している。現在アーキアにおいてはファミリーB および D に分類される 2 種の DNA
ポリメラーゼが同定されている。アーキアのサブドメインであるクレナーキオタに属する種では複数の
ファミリーB DNA ポリメラーゼを有しており、異なる機能を担っていることが予想される。興味深いこ
とにクレナーキオタでは PCNA においても 3 種の分子種が見つかっているが、それぞれの役割分担につ
いてはあまりよく解っていない 1)。クレナーキオタの 1 種である Aeropyrum pernix においても 2 種のフ
ァミリーB DNA ポリメラーゼ 2)と 3 種の PCNA3)が生化学的に解析されている。PCNA と相互作用を示すタ
ンパク質においては一般的に PIP box(PCNA interacting protein box)と呼ばれるコンセンサス配列
“Q-x-x-h-x-x-a-a”(h:疎水性アミノ酸、a:芳香族アミノ酸)が存在し、その部位を介して PCNA と結合
する 4)。A. pernix 由来の DNA ポリメラーゼⅡ(ApePolBⅡ)においても典型的な PIP box 様配列がその
C 末端に存在している。
現在までのゲノム解析と詳細なアノテーション作業の結果から、以前同定された 2 種の A. pernix 由
138
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
来の DNA ポリメラーゼは N 末端が短いことが示唆された 5)。我々は、新たに両 Pol 遺伝子のクローニン
グをやり直し、発現させたそれぞれの DNA ポリメラーゼと 3 種の PCNA 分子との特異的な相互作用を解
析することを目的として研究を行った。今回は特に DNA ポリメラーゼⅡと PCNA 分子との物理的および
機能的な相互作用を中心に報告したい。
【方法】
ApePolBⅡの PIP box にあたる“792 QSTLLDFM 799”の内、798F および 799M をアラニンに置換した変
異体と、4 アミノ酸全てをアラニンに置換した変異体を作成し、SPR 解析による PCNA-ApePolⅡ間の物理
的相互作用と PCNA によるポリメラーゼのプライマー伸長活性の促進を指標とした機能的な相互作用の
解析を行うことで、3 種の PCNA との相互作用様式についての知見を深めようと試みた。
【結果および考察】
SPR 解析の結果から、A. pernix 由来の DNA ポリメラーゼⅡの C 末端に存在する PIP box 様配列が実
際に PCNA との結合に直接関与していることが確認された。さらに変異体を用いた解析結果から、コン
センサス配列である 4 アミノ酸の内 Q および L のどちらか、もしくは両方のアミノ酸が特に PCNA との
結合に重要であることが示唆された。クレンアーキアにおける DNA ポリメラーゼ I(PolI)およびⅡの配
列を比較してみると、C 末端領域において PIP box 内に存在している疎水性アミノ酸や芳香族アミノ酸
に相当すると予想される配列が保存されていることから、これらの DNA ポリメラーゼはおそらく C 末端
の PIP box 様配列を介して実際に PCNA と結合すると推測している。しかしながら、 Sulfolobus
solfataricus においては N 末端の配列が PCNA との結合に重要であるとの報告もあることから、A. pernix
の DNA ポリメラーゼⅠについても現在解析を進めているところである 6)。さらに興味深いことに、当研
究室における以前の研究で、A. pernix の PolⅡが 3 種の PCNA 全てと結合することが確認されているの
に対し、PolI は 1 種の PCNA のみとしか結合しないことから、この特異性の分子機構を明らかにしたい
と考えている。
1) Grabowski, B. et al. Archaeal DNA replication: eukaryal proteins in a bacterial context. (2003)
Annu. Rev. Microbiol. 57, 487-516
2) Cann, I. et al. Two family B DNA polymerases from Aeropyrum pernix, an aerobic
hyperthermophilic crenarchaeote. (1999) J. Bacteriol. 181, 5984-5992
3) Daimon, K. et al. Three proliferating cell nuclear antigen0like proteins found in the
hyperthermophilic archaeon Aeropyrum pernix: intersctions with the two DNA polymerases. (2001)
J. Bacteriol. 184, 687-694
4) Wabrick, E. The puzzle of PCNA’s many partners. (2000) Bioessays 22, 997-1006
5) Yamazaki, S. et al. Proteome analysis of an aerobic hyperthermophilic crenarchaeon, Aeropyrum
pernix K1. (2006) Mol. Cell. Proteomics. 5, 811-23.
6) Dionne, I. et al. A heterotrimeric PCNA in the hyperthermophilic archaeon Sulfolobus
solfataricus. (2003) Molecular Cell 11, 275-282
Analysis of the interaction between DNA polymerase and PCNA from Aeropyrum pernix.
Hiroaki Matsukawa (Dept. Genet. Resources Tech., Grad. School. Biores. Bioenviron. Sci., Kyushu
Univ.)
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P-03
高度好塩性アーキア Haloarcula japonica rrn オペロン破壊株の作成と遺伝学
的解析
○前田
豊 1)、仲宗根
薫 1, 2)
1)近畿大院・システム工学、2)近畿大工・生化工
塩田から分離され、三角形の特異な形態を有する Haloarcula japonica TR-1 株は、至適塩濃度 20%
の高度好塩古細菌である。系統分類解析を目的とした 16S rDNA の解析において、H. japonica にはお
互いに配列の異なる 16S rDNA(A 及び B)が存在し、それら相同性の差違は 5%(通常の差異は 1%未
満)と大きな違いを示した。これは、少なくともヘテロなリボソームの存在(リボソーム多様性の概念)
を示唆すると同時に、「一種の細胞に一種のリボソーム」という概念から対立する考えであることを示
している。そこで、染色体上の rrn オペロンを破壊し、解析を行な逆遺伝学的アプローチにより本菌株
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
rrnB オペロン破壊株の作成を試みた。
まずはじめに本菌株遺伝子ライブラリーのスクリーニングによる rrn オペロン及びその周辺領域の構
造解析を行った。その構造情報に基づき、rrnB オペロンの上流及び下流域の一部を SOE-PCR により
連結させた後、シャトルベクターpWL102 に組み込むことにより、 ダブルクロスオーバーで相同組換
えが可能な遺伝子破壊用ベクターpDRB を構築した。これを H. japonica に導入し、rrnB 破壊株を得た。
現在、遺伝子破壊株の生理学的特徴を得るための実験を行っており、その実験経過も併せて報告したい。
Construction and genetic analysis of rrn operons disruption strain in Haloarcula japonica
○Yutaka MAEDA1) and Kaoru NAKASONE1,2)
(1)Graduate School of Systems Engineering, Kinki University. 2)School of Engineering, Kinki
University.)
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P-04
高度好塩性アーキア Haloarcula japonica 転写因子 TBP, TFB, TFE の構造解
析
○仲宗根
薫 1, 2)、松味
弘也 2)
1)近畿大工・生化、2)近畿大院・システム工学
高度好塩古細菌 Haloarcula japonica TR-1 株は、生育の至適塩濃度が 20%の Haloarcula 属に分類さ
れる古細菌である。好塩微生物においては塩濃度の変化により制御される遺伝子発現システムが示唆さ
れているものの、その研究例は少ない状況にある。このような背景から、好塩微生物の遺伝子発現機構
の解明、またその応用として耐塩性・好塩性酵素の生産を目指し、転写関連遺伝子の構造及び機能解析
を開始した。本研究においては、転写因子である TBP、TFIIB, TFIIE 遺伝子のクローニング及びその
構造解析を行ったので報告する。
まずはじめに degenerate primer PCR による目的遺伝子の部分クローニングを行った。次に本菌株
遺伝子ライブラリー構築の後、これら遺伝子をプローブとして用いスクリーニングを行ったところ、
各々約 20 個の陽性クローンが得られた。これらについてショットガン法による塩基配列決定、さらに
サザン法によるゲノム上における各遺伝子のコピー数推定を行った。構造解析の結果、TFIIE に関して
は保存性が非常に高く、ゲノム上のコピー数は1コピーであることが、TBP 及び TFIIB に関しては、
他の古細菌群と比較してアミノ酸配列上の多様性に富み、またコピー数も多いことが推測された。現在、
蛋白発現、転写因子ネットワークの記載を目的として、高発現ベクター及び Two hybrid システムの構
築を行っている。
Structural analyses of transcription factors TBP, TFB and TFE in Haloarcula japonica
○Kaoru NAKASONE1,2) and Hironari MATSUMI2)
(1)School of Engineering, Kinki University, 2)Graduate School of Systems Engineering, Kinki
University)
___________________________________________________________________________________________
P-05
高度好塩性アーキア Haloarcula japonica RNA ポリメラーゼの高発現及びサ
ブユニット間相互作用の解析
○ 松味
弘也 1)、下浦
洋祐 2)、仲宗根
薫 1,2)
1)近畿大院・システム工学、2)近畿大工・生化工
高度好塩性アーキア Haloarcula japonica TR-1 株は生育至適塩濃度が 20%の Haloarcula 属に分類さ
れるアーキアである。一般的に好塩性微生物の持つ遺伝子は高濃度の塩環境下で制御される遺伝子群の
存在が示唆されているものの、その詳細な研究例は少ない状況にある。こうした背景から好塩性微生物
の遺伝子発現機構の解明、また耐塩性・好塩性酵素の生産を目指し、RNA ポリメラーゼサブユニット
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
遺伝子のクローニングを開始した。これまでに本菌株の RNA ポリメラーゼは 10 種以上のサブユニット
から構成されていることが明らかとなっており、現在までにいくつかの RNA ポリメラーゼサブユニッ
ト遺伝子の構造解析及び大腸菌における高発現を行った。またそれらの試験管内再構成のための情報と
すべく、Two-hybrid 法を用いてサブユニット-サブユニット相互作用解析を行った。
サブユニット遺伝子の大腸菌における高発現においては、His-Tag 精製法が可能な pCold ベクターを
用いた。RNA ポリメラーゼサブユニット間相互作用の解析においては、BacterioMatch II Two-hybrid
system を用い、Bait 及び Target プラスミドを構築した。これらのプラスミドを用い、His-欠損最少培
地における相互作用解析を行った結果、いくつかのサブユニット間における相互作用が確認されたので
報告する。
Overexpression in Escherichia coli of the genes for RNA polymerase subunits from extremely
halophilic archaeon, Haloarcula japonica and its subunit-subunit interactions by two-hybrid system
○Hironari MATSUMI1), Yosuke SHIMOURA2) and Kaoru NAKASONE1,2)
(1)Graduate School of Systems Engineering, Kinki University. 2)School of Engineering, Kinki
University.)
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P-06
超好熱性アーキア Pyrococcus furiosus における DNA 複製起点の二重鎖開裂
反応の解析
○竹村貴恵 1)、足立彰紀 1)、松永藤彦 2)、石野良純 2)
1)九州大学大学院
2)九州大学
生物資源環境科学府 遺伝子資源工学専攻
農学研究院 遺伝子資源工学部門
染色体 DNA の複製は細胞増殖に必須な現象である。真正細菌である大腸菌では複製開始起点(oriC)
に DnaA 蛋白質が結合することで DNA 複製反応が開始される。真核生物では、複製開始起点(origin)
に ORC 複合体が結合し、Cdt1 および Cdc6 蛋白質が ORC 複合体に結合した後、複製前複合体を形成
する。アーキアの染色体 DNA は小さくて環状である点で、真正細菌のものとよく似ている。しかし、
興味深いことに DNA 複製に関連した蛋白質因子は多くのものが真核生物のものに類似している。複製
開始に関連する因子としてアーキアは Cdc6/Orc1 を持つ。Cdc6/Orc1 は複製起点(oriC)に結合するが、
その結果起こる複製開始反応については、まだよく分かっていない。
我々は、Pyrococcus furiosus をモデル生物とし DNA 複製開始反応の解明に取り組んでいる。 P.
furiosus は染色体 DNA 上に全長約 1 kb の複製開始起点(oriC)を 1 つ持つ。oriC 領域内には、ORB
(Origin Recognition Box)と呼ばれる繰り返し配列が二箇所存在し(ORB1 および ORB2)、また oriC か
ら離れた別の領域にも一箇所 ORB 配列(ORB3)が存在している。そこで、Cdc6/Orc1 が oriC に結合し
た時に、複製開始の最初期反応である DNA 二重鎖の開裂が起こるのか、in vitro で検証を行った。酵
母菌を宿主として発現、精製した Cdc6/Orc1 を用いて oriC 領域を組み込んだプラスミド DNA と反応
させた。その後、一本鎖 DNA 特異的に切断するエンドヌクレアーゼである P1 nuclease を作用させ、
一本鎖 DNA 由来の DNA 断片が生じているのか否かを確かめた。その結果、このプラスミド中に
Cdc6/Orc1 依存的に P1 nuclease が切断する部位が生じることが分かった。つまりその部位周辺で
Cdc6/Orc1 依存的に DNA 二本鎖の開裂が起きることが示された。P1 nuclease による切断と切断箇所
既知の制限酵素処理によって生じた DNA 断片の長さから予想して、oriC 領域内の ORB1 と ORB2 の
間に存在する AT-rich な領域、および ORB2 の隣に存在する AT-rich な領域付近の二箇所で DNA 二本
鎖の開裂が生じていることが分かった。また、これら DNA 二重鎖開裂反応には DNA がスーパーコイ
ルの状態をとっていることが必要であることも分かった。
さらに、Cdc6/Orc1 は ATPase 活性を持つが、
これらの開裂はヌクレオチドの影響を受けず生じていることも分かった。
1)両者は本研究に対して等しく貢献した
The effect of Cdc6/Orc1 on DNA unwinding reaction in Archaea
Kie Takemura, Akinori Adachi, Fujihiko Matsunaga,Yoshizumi Ishino
141
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
Graduate school of Biores.Bioenviron.Sci., Kyushu University
Department of Genetic Resources Technology, Kyushu University
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1)
2)
P-07
超好熱性アーキア Pyrococcus furiosus 由来複製開始因子 Cdc6/Orc1 の生化
学的解析
○秋田眞季1)2)、松永藤彦2)、石野良純2)
1)
大阪大学大学院・生命機能研究科、2)九州大学農学研究院・遺伝子資源工学部門
目的
DNA 複製は、生命にとって極めて重要なプロセスであり、開始・伸長の各段階で厳密な制御を受け
ている。真正細菌および真核生物の DNA 複製研究により、DNA 複製に関与する様々な因子が同定され、
両者は進化的に異なる系統の DNA 複製装置および機構を持つ事が分かっている。また、ゲノム解析や
多くの生化学的解析からアーキアの DNA 複製関連蛋白質は多くのものが真核生物の因子に類似してい
ることが明らかとなっている。
真核生物では ORC (ORC1-6)は複製起点の認識を、Cdc6 蛋白質は MCM ヘリカーゼの複製起点への
誘導を行っている。両者に相同性を示すアーキアの Cdc6/Orc1 は AAA+ドメインと WH ドメインを有
する。WH ドメインは DNA 結合ドメインであるが、ATP 結合と加水分解を行う AAA+ドメインの DNA
複製開始制御に果たす役割は不明である。超好熱性アーキア Pyrococcus furiosus は、DNA 複製の開始
制御機構に関わる蛋白質として、Cdc6/Orc1 ホモログをコードする遺伝子を一つ持つ。また、DNA 複
製開始起点(oriC)は ORB(Origin Recognition Box)と呼ばれる繰り返し配列をもつ。本研究では、超
好熱性アーキア P. furiosus をモデル生物として、アーキアの DNA 複製開始反応における Cdc6/Orc1
の機能を明らかにするため、Cdc6/Orc1 の oriC 配列依存的な結合および ATPase 活性を解析した。
方法
Loading assay: P. furiosus oriC 配列を導入した oriC プラスミドあるいは oriC の ORB 配列を二つ含
む約 500bp の直鎖状 oriC DNA を P. furiosus の細胞抽出液と反応させる。DNA に結合した蛋白質を
回収し SDS-PAGE で解析した。
ATPase assay: 精製 Cdc6/Orc1 蛋白質と[gamma-32P]ATP を 55 ˚C で反応させ、薄層クロマトグラフ
ィー法により、ATP の加水分解を検出した。
Limited protease assay: 精製 Cdc6/Orc1 を Protease K で限 定的に 分解させ、 分解の様 子 を
SDS-PAGE で解析した。
結果
Loading assay により細胞抽出液中にある oriC 配列特異的結合活性を示す蛋白質を解析したところ、
プラスミドでも直鎖状 DNA でも、 oriC 配列特異的な Cdc6/Orc1 の結合活性が検出された。精製
Cdc6/Orc1 を用いた Loading assay により、ヌクレオチドの影響をみたが、ヌクレオチドの有無や
ADP/ATP の違いによる Cdc6/Orc1 蛋白質の複製起点への結合効率の差異は見られなかった。また、
Cdc6/Orc1 蛋白質は ATP を結合し加水分解する事が明らかとなった。この ATPase assay にコントロ
ール DNA を添加しても Cdc6/Orc1 による ATPase 活性は同程度検出される。しかし、ORB 配列を含
む DNA が存在下すると、Cdc6/Orc1 の ATPase 活性が著しく抑制される事が分かった。さらに、この
条件下で Cdc6/Orc1 は Proteinase K に対する感受性が上昇しており、DNA に結合していない時やコン
トロール DNA の存在下と比較して、分解のされ方や速度が明らかに異なった。
考察
P. furiosus Cdc6/Orc1 は oriC 配列を含む DNA に結合したとき、その ATPase 活性が抑制される事や
Limited protease assay の結果が異なることから、この時 Cdc6/Orc1 の構造変化が起きているのではない
かと考えられる。複製起点への結合や複製起点の二本鎖開裂にヌクレオチドは大きな影響を与えない
事から、Cdc6/Orc1 の AAA+ドメインによる ATP 結合や加水分解は、その後に起こると考えられる
Mcm ヘリカーゼを導く過程に必要なのではないかと予想される。
142
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
引用文献
(1). Fujihiko Matsunaga et al. Genomewide and biochemical analyses of DNA-binding activity of Cdc6/Orc1
and Mcm proteins in Pyrococcus sp. Nucleic Acids Research, 2007, 1–9
Title: Biochemical analyses of Pyrococcus furiosus Cdc6/Orc1
Author: Masaki Akita, Fujihiko Matsunaga, Yoshizumi Ishino
Grad.School of Frontier Biosciences, Osaka Univ., Grad.shool of Biores, Bioenviron, Sci., Kyushu Univ
___________________________________________________________________________________________
P-08
超好熱性アーキア Aeropyrum pernix 由来 DNA リガーゼ遺伝子の同定と酵素
の特性
○上河内
徹、清成
信一、石野
良純
九州大学大学院・生物資源環境科学府 , 遺資工
【目的】
超好熱アーキア Aeropyrum pernix 由来 DNA リガーゼにつてい、その機能及び構造解析を行うこと
によってアーキアと真核生物に共通の ATP 依存型 DNA リガーゼの基本的な性質と特徴的な性質を分子
レベルで理解する。
【方法】
A.pernix 由来 DNA リガーゼ(以下 ApeLig)を宿主大腸菌 BL21 codon plus RIL を用いて発現後、
各種カラムにより精製を行った。ApeLig の活性測定は 49 mer の二本鎖 DNA の一方にニックを入れた
ものを 32P でラベル化し、それを基質として行った。
ApeLig の開始メチオニンを同定するために、ApeLig(1-619)と ApeLig(18-619)をリコンビナントタ
ンパク質として調製し western blotting を用いて A.pernix の細胞抽出液中に存在する DNA リガーゼの
バンドとそれらのバンドを比較した。また ApeLig の熱安定性を調べるために、ApeLig(1-619)と
ApeLig(18-619)を 110℃で過熱後その活性を測定した。
ApeLig と PCNA(proliferation cell nuclear antigen)の機能的な相互作用を測定するために 0.3 M
グルタミン酸カリウムで ApeLig の活性を抑制した後、PCNA を添加しライゲーションの活性を測定し
た。
ApeLig と PCNA の相互作用部位を同定するために、ApeLig が PCNA と相互作用する際に必要と推
定したアミノ酸をアラニンに置換した変異体 ApeLigF132A を作成し、同様の方法で ApeLigF132A と
PCNA の機能的な相互作用を測定した。
ApeLig および ApeLig F132A と PCNA の物理的相互作用を測定するために、表面プラズモン解析法
(SPR)を用いた。
更に ApeLig の構造を解析するために ApeLig の結晶化に取り組んだ。
【結果】
A.pernix の細胞抽出液中の DNA リガーゼのバンドと ApeLig(1-619)、ApeLig(18-619)を western blot
解析に供し、SDS-PAGE 上で検出されたバンドの位置を比較した結果、細胞抽出液中のネイティブな
DNA リガーゼは ApeLig(1-619)と推定された。
ApeLig(1-619) と ApeLig(18-619) の 熱 安 定 性 を 比 較 し た 結 果 、 ApeLig(18-619) は 明 ら か に
ApeLig(1-619)より熱安定性が低かった。
ApeLig と PCNA の機能的な相互作用を測定した結果、ApeLig のライゲーション活性は PCNA によ
り促進されることが分かった。また、同様の条件下で ApeLigF132A に対する PCNA の影響を調べたと
ころ、その促進効果はほとんど見られなかった。
ApeLig および ApeLigF132A と PCNA の物理的相互作用を測定した結果、Ape Lig WT は PCNA と
の直接結合がはっきり検出されたのに対し、ApeLigF132A はその結合が消失していた。
【考察】
本研究において、A.pernix の細胞抽出液中のネイティブな DNA リガーゼタンパク質の大きさを調べ
143
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
たことにより、Lig 遺伝子の翻訳領域を推定することができた。これより、今後は ApeLig(1-619)を
ApeLigWT とする。ApeLigWT は ApeLig(18-619)より熱安定性に富むことから、ApeLigWT の N 末端
がその熱安定性に関与していると考えられる。
ApeLigWT は PCNA と機能的および物理的に相互作用するものの、ApeLigF132A はそれらが極端に
低下したことから、ApeLig の 132 位のフェニルアラニンが PCNA との相互作用にとって極めて重要な
アミノ酸であることが考えられる。
Title
Identification of the Lig gene from Aeropyrum pernix and characterization of the DNA ligase.
Authors (affiliation)
Toru Kamigochi , Shinichi Kiyonari , Yoshizumi Ishino
(Grad,school,Biores,Bioenviron Sci.,Kyushu Univ.)
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P-09
超好熱性アーキア Pyrococcus furiosus の DNA 複製開始・伸長段階で機能す
る GINS 複合体について
○吉用武弘1)、藤兼亮輔1)、川波美幸 1)、松永藤彦 1)、石野良純 1)
九大院・生物資源環境科学府・遺資工
吉用武弘:[email protected]
【背景及び目的】
DNA 複製は生命にとって必須のイベントであり、その分子メカニズムの解明を目指して真核生物、
真正細菌、アーキアと様々な生物群において研究が盛んに行われている。DNA 複製反応の中でも DNA
複製開始の制御は最も興味深い研究テーマの一つである。真核生物の DNA 複製開始過程で働く因子と
して同定された GINS 複合体は、Sld5、Psf1、Psf2、Psf3 からなる四量体のタンパク質複合体であり、
複製フォークの場においても複製ヘリカーゼと考えられている MCM 複合体、Cdc45 と共に DNA 二本
鎖解離に働いていると提唱されている。詳細なゲノム解析の結果、アーキアにおいても GINS のホモロ
グが存在することが提唱され、GINS 複合体の祖先的な分子ではないかと示唆されている(1)。そして近
年、クレナーキオタに属する Sulfolobus solfataricus の持つ二つの GINS ホモログが 2:2 の量比でヘテ
ロ四量体を形成すること、そして SsoMCM と相互作用することが示された(2)。我々はモデル生物とし
て研究しているユリアーキオタの Pyrococcus furiosus において、DNA 複製開始反応の詳細を理解する
ため P. furiosus の GINS 複合体(PfuGINS)の役割を、主に PfuMCM と共に働く DNA unwindsome と
しての働きに焦点を絞って解析することにした。
【材料及び方法】
P. furiosus のゲノムデータベースから Sld5、Psf1 と相同性を示す配列(Gins51)をコードする遺伝子、そ
して Psf2、Psf3 と相同性を示す配列(Gins23)をコードする遺伝子を検出し、全ゲノム配列が明らかにな
っているアーキアを対象に、BLAST 検索を用いて gins 遺伝子の分布を検証した。
P. furiosus の GINS51、GINS23 のクローニングを行って大腸菌による組換えタンパク質産生系に供し
た。得られた細胞粗抽出液を種々のカラムクロマトグラフィーに供して、Gins23、そして Gins51 と Gins23
の共発現体(PfuGINS)を SDS-PAGE 上で単一バンドになるまで精製した。
この精製タンパク質を用い、SPX200 ゲル濾過カラムによる多量体解析、PfuMcm との相互作用を検証
する各種生化学的解析を行った。
真核生物において GINS 複合体は DNA 複製開始に必須である。アーキアにおいても GINS が複製開始
に関わっているかを検証するため対数増殖期、定常期の Pyrococcus 細胞を用いてクロマチン免疫沈降法
を用いて GINS の複製起点への選択的結合の有無を調べた。
また PfuGINS と他の複製開始関連タンパク質との相互作用を Yeast-Two Hybrid 解析及び、in vivo 免疫
沈降法を行い検証した。
144
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
【結果及び考察】
BLAST 検索の結果、クレナーキオタでは Gins51、Gins23 共に高く保存されていた。しかし、ユリア
ーキオタでは殆んどの種で Gins51 のみ有しており、我々のモデル生物である P. furiosus を含む
Thermococcales 属でのみ両方の gins 遺伝子が保存されていた。
Gins23、PfuGINS は、SDS-PAGE 上で単一バンドになるまで精製され、アミノ酸配列上からの予想さ
れる分子量のところに泳動された。また、組換え Gins23 によって作成した抗血清を用いてウエスタンブ
ロット解析を行った結果、P. furiosus 細胞抽出液中から、精製組換え Gins23 と同一の大きさのバンドが
唯一検出された。
Yeast-Two Hybrid 解析の結果、Gins51:Gins51、Gins23:Gins23、Gins51:Gins23、Gins51:Cdc6、Gins23:Mcm
がそれぞれ相互作用することが明らかとなった。さらに Gins23 と Mcm の相互作用については in vivo 免
疫沈降においても対数増殖期の P. furiosus 細胞抽出液中での相互作用を確認した。
精製 PfuGINS を用いたゲル濾過解析の結果、PfuGINS は Gins51:Gins23 が 2:2 の四量体を形成した。
さらに精製 PfuMCM を用いてヘリカーゼ活性測定を行ったところ、PfuMCM のヘリカーゼ活性は
PfuGINS の濃度依存的に促進された。さらにそのヘリカーゼ活性の促進は、PfuMCM の ATPase 活性が
PfuGINS と相互作用することによって上昇していることによるものであると考えられた。
クロマチン免疫沈降の結果、PfuGINS は DNA 複製が盛んに行われている対数増殖期において、複製
起点 OriC 領域に優先的に結合していた。しかし定常期においてはその結合が見られなかった。
本研究はユリアーキオタで初めて GINS 複合体について解析したものであり、アーキアで初めて GINS
が MCM ヘリカーゼの活性を促進しているという結果を示した。今後、アーキアの複製開始から伸長の
課程における分子機構の全容を解明していくために重要な知見を提供したものと考える。
【引用文献】
1) Makarova, K. S, et.al (2005) Nucleic Acids Res. 33, 4626-4638
2) Marinsek, N, et.al (2006) EMBO Rep. 7, 539-545
The GINS complex from Pyrococcus furiosus stimulates the MCM helicase activity
Takehiro Yoshimochi , Ryosuke Fujikane , Miyuki Kawanami , Fujihiko Matsunaga , and Yoshizumi
Ishino
Dept.Genet.Res.Tech., Grad.School of Biores.Bioenvirom.Sci., Kyushu Univ.
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P-10
Thermococcus kodakaraensis KOD1 株の染色体構造の解析
○円山由郷1)、大庭良介 2)、松見理恵 3)、跡見晴幸 3)、今中忠行 3)、竹安邦夫1)
1)
京都大学・生命科学研究科、3)筑波大学・人間総合科学研究科、3)京都大学・工学研究科
竹安邦夫:[email protected]
目的
ゲノム DNA は細胞内で高度に折りたたまれており、転写・複製・染色体分配といった機構と密接に
結びついている。始原菌の一種である Thermococcus kodakaraensis は、真核細胞の染色体の基本構成因子
であるヒストンと相同な遺伝子を 2 個もっている(1)。真核細胞においては約 146bp の DNA が 4 種のヒ
ストンからなる八量体に 2 回転巻きついてヌクレオソームが形成され、これが繰り返されてできるクロ
マチン繊維がさらに折りたたまれて染色体の高次構造が構築されているが(2)、始原菌の染色体がどのよ
うに構築されているかは明らかではない。始原菌と真核細胞の染色体構築の共通点と相違点を明らかに
するために、T. kodakaraensis の染色体構造を解析した。
方法
対数増殖期および定常期の T. kodakaraensis KOD1 株を MilliQ 水で破裂させ、放出された染色体を DAPI
染色および原子間力顕微鏡(AFM)によって観察した。また、染色体の基本的な構造を明らかにするた
め、各期の染色体を Micrococcal nuclease (MNase)により部分消化した。
145
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
結果
DAPI 染色の結果、増殖期に破裂させた細胞の染色体 DNA は広い範囲に広がるのに対して(図 1a)、
定常期の染色体は凝集していた(図 1b)。AFM によってより詳細な構造を観察すると、増殖期において
2 本鎖 DNA 上に約9nm の粒子が不均等な間隔で結合していることが観察された(図 2)。これに対して
定常期では DNA 繊維は広がらず染色体全体が凝集していたが、この定常期の染色体を RNase A で処理
すると、直径約 10nm の繊維が放出されることが AFM によって観察された(図 3)。
増殖期および定常期の染色体を MNase で部分消化すると、約 73bp を最小単位として約 23bp ずつ長い
DNA が切り出された(図 4a,b)。これは、約 200bp の繰り返し単位からなるヒト HeLa 細胞染色体の MNase
消化パターンとは異なっていた(図 4c)。
考察
大腸菌 E. coli の染色体(ヌクレオイド)は定常期に凝集することが知られている(3)。T. kodakaraensis
においても同様に定常期において染色体が凝集することは、この現象が細菌から始原菌まで保存されて
いることを示唆する。
MNase による部分消化の結果により増殖期・定常期を通して 73bp の DNA がタンパク質に保護され
た構造が存在し、メタン菌などの研究結果から(4)、この単位は DNA がヒストン四量体に巻きついた構
造であると推測される。23bp ごとに形成された MNase 耐性領域は、ヒストンとは異なるタンパクがヌ
クレオソーム間のリンカーDNA に結合したことによるものであり、この結合によって RNase A 耐性の
10nm 繊維(図 3)が形成されていると考えられる。このようなタンパクの候補として、すべての超好熱
性始原菌が持つ低分子量の DNA 結合タンパクである Alba が挙げられる(5)。そしてこの 10nm 繊維を基
本構造として、RNA やタンパクを介してより高次の構造が形成され、定常期にはさらに特有の機構によ
り染色体が凝集していると考えられる。
今後、ヒストン遺伝子を持たない始原菌種や Alba 遺伝子をもたない始原菌種の染色体構造解析によ
りこの仮説を検証する予定である。
引用文献
1.
Higashibata, H., Fujiwara, S., Takagi, M., and Imanaka, T. (1999) Biochem Biophys Res
Commun 258, 416-424
2.
Luger, K., Mader, A. W., Richmond, R. K., Sargent, D. F., and Richmond, T. J. (1997) Nature
389, 251-260
3.
Kim, J., Yoshimura, S. H., Hizume, K., Ohniwa, R. L., Ishihama, A., and Takeyasu, K. (2004)
Nucleic Acids Res 32, 1982-1992
146
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
4.
5.
別冊
Pereira, S. L., Grayling, R. A., Lurz, R., and Reeve, J. N. (1997) Proc Natl Acad Sci U S A 94,
12633-12637
Wardleworth, B. N., Russell, R. J., Bell, S. D., Taylor, G. L., and White, M. F. (2002) EMBO J
21, 4654-4662
Analysis of chromosome structure of Thermococcus kodakaraensis KOD1 strain
Hugo Maruyama1), Ryosuke L. Ohniwa2), Rie Matsumi3), Haruyuki Atomi3), Tadayuki Imanaka3),
Kunio Takeyasu1)
1) Graduate School of Biostudies, Kyoto University, Japan.
2) Graduate School of Comprehensive Human Sciences, Tsukuba University, Japan.
3) Graduate School of Engineering, Kyoto University, Japan.
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P-11
泉温および溶存元素濃度が異なる酸性硫黄泉間におけるアーキア群衆構造の
比較
○佐藤智子、山本修一、山本英夫、黒沢則夫
創価大学・工学部・環境共生工学科
黒沢則夫:[email protected]
目的
陸上の温泉において、個別にアーキアの群衆構造を解析した例はいくつか報告されているが(1,2)、
泉温や泉質が異なる温泉について同じ条件で解析、比較を行った例は非常に少ない。そのため、どのよ
うな非生物学的要因が陸上温泉におけるアーキアの群集構造に影響を与えているのかよくわかってお
らず、また、そこでの物質循環における好熱性アーキアの寄与についても不明な点が多い。本研究では、
陸上温泉の生態系を理解する一助として、泉温や溶存元素濃度が異なる酸性硫黄泉間におけるアーキア
群衆構造の比較を行った。
方法
鹿児島県の霧島温泉において、複数の源泉から底泥を含む温泉水を採取した。試料の一部を 0.2μm
のメンブレンフィルターでろ過し、ICP 分光分析により無機金属を中心に溶存元素濃度を分析した。泉
温および溶存元素濃度が大きく異なる 3 つの源泉試料(Table 1)について、環境 DNA を抽出・精製し、
16S rDNA クローン解析法により、アーキア群衆構造を調べた。16S rDNA の PCR 増幅には、フォワ
ー ド プ ラ イ マ ー : A21F ( 5’-TTCCGGTTGATCCYGCCGGA )、 リ バ ー ス プ ラ イ マ ー : U1492RM
(5’-GGYTACCTTGTTACGACTT)を用いた。
結果および考察
計 23 箇所の温泉水における溶存元素濃度を分析した結果、鉄の濃度が他の元素と比較して相対的
に高い温泉と低い温泉とに大別された。鉄濃度の割合が高い温泉は、硫黄やルビジウムの濃度の割合
も高い傾向にあったが、セシウムの濃度は鉄濃度にかかわらずほぼすべての温泉で 200 ppm 以上の高
い値を示した。
鉄・硫黄・ルビジウムの濃度の割合、または泉温が大きく異なる 3 つの温泉試料(Table 1)を用
いて、それぞれにおけるアーキア群集構造を解析した(Fig. 1)。その結果、鉄・硫黄・ルビジウムを
高い割合で含み泉温が高い温泉では、Sulfolobaceae 科が 89%と圧倒的に優占していることがわかっ
た。同様に上記元素濃度が高く泉温が 70℃弱と比較的低い温泉においても、最優占科は Sulfolobaceae
科であったが、その割合は 23%にとどまった。一方、鉄・硫黄・ルビジウムの濃度が低く泉温も 70℃
弱 と 低 い 源 泉 で は 、 Caldisphaera 科 が 26 % と 最 も 優 占 し て お り 、 そ の 他 59 % を 未 知 の
Thermoproteales 目古細菌が占めていた。以上の結果から、泉質や泉温の違いに依存したアーキアの
住み分けが示唆された。今後解析例を増やして再現性等をチェックし、アーキア群集構造と泉質との
関係を明らかにするとともに、検出されたアーキアの代謝様式と温泉の物質循環などとの関係につい
147
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
ても考察してゆきたい。
Table 1 アーキア群集構造解析を行った温泉の温度、pH、および元素組成
No. 8
93
2.6
濃度
(ppm)
1300
390
210
180
120
32
51
2283
源泉
温度 (℃)
pH
元素
Fe
Rb
Cs
S
Si
Al
他
計
No. 8
No. 2
66
2.0
濃度
(ppm)
1500
460
360
270
150
72
86
2898
組成
(%)
57
17
9
8
5
1
2
100
Sulfolobaceae
Thermoproteaceae
組成
(%)
52
16
12
9
5
2
3
100
(a) 2%
Sulfolobaceae
9%
Caldisphaeraceae
Thermoproteaceae
(a)
23%
No. 15
組成
(%)
19
7
42
9
16
0.2
8
100
Desulfurococcaceae 2%
87%
No. 2
No. 15
67
2.2
濃度
(ppm)
130
47
290
64
110
1
53
695
9%
5%
(b)
33%
30%
Caldisphaeraceae
(d) 2%
(b)
26%
(c)
59%
13%
Fig. 1 泉温および溶存元素濃度が異なる酸性硫黄泉間におけるアーキア群集構造
No. 8, No. 2, No. 15 は温泉番号を示す。 (a) uncultured Sulfolobales, (b) uncultured Thermoproteales, (c)
uncultured Euryarchaeota, (d) uncultured Desulfurococcales
参考文献
1) Barns SM et al. Proc Natl Acad Sci USA. (1994) Mar 1;91(5):1609-13.
2) Barns SM et al. Proc Natl Acad Sci USA. (1996) Aug 20;93(17):9188-93.
Comparison of archaeal community structures among the acidic-sulfataric hot springs of different
temperature and elemental composition.
Tomoko Satoh, Shuichi Yamamoto, Hideo Yamamoto and Norio Kurosawa
(Department of Environmental Engineering for Symbiosis, Soka University, Tokyo)
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P-12
深海底泥から得られた新菌種 Alkalimonas collagenimarina AC40T 由来のコ
ラーゲン分解酵素
148
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
○倉田淳志、内村康祐、宮崎征行、島村繁、能木裕一、小林徹、掘越弘毅
独立行政法人海洋研究開発機構 極限環境生物圏研究センター
倉田淳志:[email protected]
目的) コラーゲンや、コラーゲンの変性産物であるゼラチンを分解するプロテアーゼは工業的に利用
価値が高い (1)。コラーゲンの加水分解物には、保湿性やシワ形成予防作用、血圧降下作用等が見いだ
されており、実際に医療や化粧品、食品分野において応用されている。また、ゼラチン分解酵素は、廃
棄フィルムからの銀の回収に適している。従ってコラーゲンやゼラチンを分解できる酵素は非常に有用
であり、これまでに様々なコラーゲン分解酵素に関する報告がある。これら酵素の多くは、酸性から中
性域において最適反応pHを有するメタロプロテアーゼに属している。本研究では、魚類などを由来と
するコラーゲンが存在する深海底泥から、アルカリ性条件下で作用するコラーゲン分解酵素生産菌の単
離、並びに生産される酵素の特性の解明を目的とした。
方法) 1% コラーゲン含有寒天プレート(pH 9)を用いて、深海底泥サンプルからコラーゲンを溶解
する菌株を選抜した。取得された菌は、16S rRNA 遺伝子配列を決定した後、定法に従って分類同定を
行った。コラーゲンを炭素および窒素源とする液体培地で 15℃、2 日間振盪培養し、得られた培養上清
から各種カラムクロマトグラフィーにより 2 種類のコラーゲン分解酵素を精製した。酵素活性はコラー
ゲンを基質としローリー法により測定した。それぞれの酵素をコードする遺伝子のクローニングをショ
ットガン法または PCR 法にて行った。
結果及び考察) 鳥島沖深海底泥(4,026 m)から、新種のコラーゲン分解菌を単離した。本菌は好ア
ルカリ性、低温耐性の新種であり、Alkalimonas collagenimarina AC40T と命名された(2)。本菌 は
15˚C で良好にコラーゲンを分解し、その培養液中に少なくとも3種類のプロテアーゼを生産した。こ
のうち 2 種類(AcpI、AcpII)について電気泳動的に均一に精製した。両酵素ともにアルカリ性領域に
おいて最適反応 pH を有し、コラーゲン、ゼラチン等のタンパク質を良好に分解したが、分解率に違い
が認められた。それぞれの遺伝子を取得し、アミノ酸配列を解析したところ、ともに subtilase family A
に属するセリンプロテアーゼであった。AcpI は分子量 28 kDa であったが、遺伝子から推定される分
子量 57 kDa と大きな差があった。AcpI の LC-MS/MS 解析により、生産中にC 末端側アミノ酸が切
断されて小型化されることが判明した (3)。一方、AcpII の触媒ドメインには約 100 個のアミノ酸の
挿入が認められた。このアミノ酸配列は、基質特異性、酵素と基質の結合親和性などへの関与が示唆さ
れる PA ドメインと高い相同性を示した。そのため、AcpI と AcpII の基質の分解率の違いはこの PA
ドメインの挿入によるものと考えられた。
図. Alkalimonas collagenimarina AC40T
コラーゲンを良好に分解する。鳥島沖深海底泥(4,026 m)から単離した。
バー:1µm
引用文献)
1. Watanabe, K. (2004). Appl Microbiol Biotechnol 63, 520-526.
2. Kurata, A et al. (2007) Int J Syst Evol Microbiol 57, 1549-1553
149
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
3. Kurata, A et al (2007) Appl Microbiol Biotechnol In press
Title: Collagenolytic proteases from deep-sea bacterium, Alkalimonas collagenimarina AC40T
Atsushi Kurata, Kohsuke Uchimura, Masayuki Miyazaki, Shigeru Shimamura, Yuichi Nogi, Tohru
Kobayashi, and Koki Horikoshi
(Extremobiosphere Research Center of Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)
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P-13
沖縄近海海底土壌の遺伝子資源を利用した Taq DNA Polymerase の改変によ
る新規有用酵素の創製
鍋 健吾 1), 松川 博昭 1), 山上 健 1), 田島 秀二 2), 河原林 裕 3),石野 良純 1)
1)九大・院農・遺資工, 2)プレシジョンシステムサイエンス, 3)産総研・生物機工
○
鍋 健吾: [email protected]
【目的】
酵素の産業的利用を目指し,微生物の網羅的スクリーニングとそれらの持つ有用な機能遺伝子の同定
が絶えず行われている.しかし,環境中に広く生育しているが人工的に培養する事ができない微生物は,
微生物フローラの 99%も占める事が明らかになってきており,ほとんど全ての微生物は未だ未利用もし
くは未解析のままであると考えられる.我々は,微生物の培養という過程を経る事無しに直接環境中か
ら遺伝子断片を取得し,それらを用いて,既存の酵素の機能改変を目指している.T.aquaticus から得
られた Taq DNA Polymerase は PCR 法や DNA のシークエンス解析などで頻用されており,遺伝子工
学技術において特に重要な酵素である.この酵素は PCR において伸長性・増幅効率に優れているので,
この特徴を活かし,さらに伸長性に優れ,短時間で効率よく DNA を増幅する事ができる酵素を創製す
る事ができれば遺伝子工学技術の改良に大きく貢献できる.
【方法】
沖縄県神山島南,及びナガンヌ島沖の海底の計 19 箇所から土壌を採取し,そこに含まれる環境 DNA
を溶出した.それを鋳型とし,Taq DNA Polymerase も属している Family A 型 DNA Polymerase に高
度に保存されており,かつ活性部位を含むアミノ酸配列を元に作製した縮重プライマーを用いて PCR
法を行った.そして増幅された遺伝子断片をクローニングし,個々のクローンについて塩基配列を決定
し,アミノ酸配列に変換した.その結果,取得された 380 個の遺伝子断片から 251 種類の異なる DNA
Polymerase 遺伝子断片を得る事ができ,データベース上の配列と比較して,それらが全て新規配列で
ある事を確認した.これらの遺伝子断片を Taq DNA Polymerase 遺伝子中の相当する領域と置換する
事によって chimera DNA Polymerase 遺伝子を作製した.配列解析の結果から,有用酵素となる可能
性が高い 6 種類を選び出し,大腸菌による発現系でそれぞれの組換えタンパク質を発現させ,精製した
chimera DNA Polymerase の活性測定を行った.活性は DNA polymerase activity,Primer extension
activity,Reverse transcript activity を測定した.
【結果】
活性測定を行った 6 種の chimera Taq DNA polymerase のうち,Taq DNA Polymerase と比較して
DNA polymerase activity が優れていたものが 1 種類あり,Primer extension activity が優れていたも
のが 4 種類,そして,reverse transcript activity が優れていたものを 4 種類得る事ができた.
【考察】
活性測定を行った chimera Taq DNA Polymerase のアミノ配列の違いと活性の強さの相関を求め,
活性の違いが何に起因するかを考察した.本研究における活性測定の結果で得られた情報だけでは,
DNA Polymerase activity や Primer extension activity について十分な議論をする事ができないので,
Reverse transcript activity についての考察に焦点を当てた.Reverse transcript activity が Taq DNA
Polymerase より優れていた chimera Taq DNA Polymerase のアミノ酸配列と Taq DNA Polymerase,
Tth DNA Polymerase (本研究において Reverse transcript activity の Positive control として使用し
150
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
た) のアミノ酸配列のアライメントを取り,比較した結果,chimera Tth DNA Polymerase と Tth DNA
Polymerase との間では共通し,Taq DNA Polymerase とは異なるアミノ酸が見出された.そしてその
アミノ酸は chimera Taq DNA Polymerase に Taq DNA Polymerase がほとんど持たない Reverse
transcript activity を獲得させた要因であることが推測される.
Protein Engineering of Taq DNA polymerase using genetic resources form the soil samples in the
seas near Okinawa
Kengo Nabe1 ) , Hiroaki Matsukawa1 ) , Takeshi Yamagami1 ) , Hideji Tajima2 ) , Yutaka
Kawarabayasi3), Yoshizumi Ishino1)
○
1)Dept.
Genet. Resources Tech., Grad. school. Biores. Bioenviron Sci., Kyushu Univ., 2)Precision Sys.
Sci. Co. Ltd., 3)Inst. Biol. Funct., AIST
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P-14
相模湾および伊豆小笠原海域でプランクトンネットを用いて採捕した中深層
性生物の組織培養
○小西聡史,喜多村稔,Dhugal Lindsay,小山純弘,三輪哲也,掘越弘毅
独立行政法人 海洋研究開発機構・極限環境生物圏研究センター,
小西聡史:[email protected]
【目的】われわれは深海生物研究の発展に寄与するために,深海生物の株化細胞ライブラリーを構築し
ている.これまで,生物を保圧容器で生存採捕し,実験室で減圧後に組織培
養するという方法で底生生物の細胞株化に成功している 1).しかしながら保
圧容器を用いた採捕方法では中層生物を採捕することは不可能であった.そ
こで,プランクトン採捕に利用されているネットを曳網し,採捕された中深
層性生物を直ちに船上で組織培養する方法を提案した.本研究では現場培養
の有効性を調べた.
【方法】多段開閉式プランクトンネット IONESS を用いて中深層性生物の
採捕を行った.航海 KY06-11 にて相模湾および伊豆小笠原海域で曳網した
(図 1).採補された魚類の尾ヒレ組織を,船内ラボに設置されたクリーンベ
ンチ内で直ちに滅菌し,細かく切断して培地(L-15,4g/L-NaCl,10%FBS,
1%PS/ST)に浸し,採捕水深の水温にあわせて 4,8,12℃のインキュベータ
内で培養した.下船後も実験室で培養を続けた.
図 1.生物採捕地点
【結果と考察】相模湾,須美寿島東沖,孀婦岩東沖の 3 地点で
曳網し,採捕した生物からヨコエソ,ハダカイワシ,クロハダ
カ,オニハダカの初代培養を試みた.8,12℃のヨコエソ,12℃の
ハダカイワシ,8,12℃のクロハダカの組織から細胞の遊走が確認
された.12℃のクロハダカから遊走した繊維芽細胞は約 6 ヶ月
間培養することができた(図 2).
【引用文献】
1) S. Koyama et al., Tissue culture of the deep-sea eel Simenchelys
parasiticus collected at 1,162 m., Extremophiles, 7, 245-248 (2003)
図 2.クロハダカ細胞(12℃)
Tissue culture of midwater organisms captured by plankton net in Sagami bay and Izu-Ogasawara
island areas.
Satoshi Konishi, Minoru Kitamura, Dhugal Lindsay, Sumihiro Koyama, Tetsuya Miwa, Koki
Horikoshi (Extremobiosphere Reseach Center, Japan Agency for Marine-Earth Science and
Technology)
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151
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
P-15
高濃度フェノール分解能を有する深海底酵母に関する研究
○朝柄武司1)、鈴木絢也 2)、高橋桃子 2)、橋本英樹 2)、長濱統彦 3)、浜本牧子 1,2)
1)
明治大学・院・農・生命科学、2)明治大学・農・生命科学、3)(独)海洋研究開発機構所・極限環
境生物圏センター
[目的]
海面下2百メートルより深い海、深海は太陽光がほとんど届かず、高水圧、低水温、また、性質の違
いから表層と深海の海水は混合しないため、ほぼ独立した海水循環システムが存在すると考えられてい
る。しかし、深海を探索する手段はきわめて困難で限られており、そのほとんどは未踏の領域であるた
め、そこに生息する微生物は新たな遺伝資源として注目されている。一方、有害廃棄物による環境汚染
を解決する方法のひとつとして環境負荷の少ないバイオレメディエーションに期待がよせられている。
そこで本研究では、深海底酵母を活用した環境浄化を目指して、高濃度のフェノールの分解能を有する
菌株のスクリーニングを行った。
[方法]
スクリーニングには、深度1千〜1万メートルの深海底より採集した堆積物、泥、および動物試料か
ら分離した酵母を用いた。まず、一次スクリーニングとして高濃度のフェノール(15 mM)を単一炭素
源として含む寒天培地上に生育する菌株をフェノール分解性の菌株として選抜した。次に、一次スクリ
ーニングにより選抜された菌株について、フェノールを含む液体培地で培養した時の培地中のフェノー
ル量の減少を経時的に測定することによりフェノール分解能を調べた。一方、フェノール分解能を有す
ると考えられた菌株について、形態学的、生理・生化学的、および分子系統学的な手法を用いて分類学
的な位置づけを行った。
[結果・考察]
深海底試料から分離された 495 株の酵母についてスクリーニングを行った。その結果、11 株が高濃度
のフェノール(15 mM)を単一炭素源として含む寒天培地上に生育することが明らかになった。次に、
この 11 株について液体培地中のフェノールの減少を経時的に調べた結果、KY-307 株がその細胞増殖に
伴い、培地中のフェノール量を減少させ、さらに、細胞増殖が定常期に達する頃にはフェノールがまっ
たく検出されなくなることが明らかになった。以上の結果から、KY-307 株はフェノールを炭素源およ
びエネルギー源として用いることにより生分解していると考えられた。次に種々の培養条件でフェノー
ルの分解を調べた結果、KY-307 株は 10℃という低温条件下でも、また、海水とほぼ同じ NaCl 濃度であ
る 3% NaCl 存在下でもフェノールを完全に分解することが明らかになった。
KY-307 株の分類学的な性状を調べた結果、本菌株は 4℃という低温条件下、および、18% NaCl を含
む培地にも生育可能であった。また、適当な条件下で子嚢菌酵母 Debaryomyces 属に典型的な子嚢胞子
を形成した。以上の結果とリボソーム RNA 遺伝子の解析結果から、KY-307 株は低温性かつ耐塩性の
Debaryomyces hansenii であると考えられた。
Title:
The biodegradation of phenol at high initial concentration by the ascomycetous yeast isolated from
deep sea
Authors (affiliation):
Asagara, T.1), Suzuki, J.2), Takahashi, M.2), Hashimoto, H.2), Nagahama, T.3) and Hamamoto, M.1, 2)
1) Graduate School of Agriculture, Meiji University
2) School of Agriculture, Meiji University
3) Extremobiosphere Research Center, Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology
(JAMSTEC)
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P-16
“ちきゅう”による下北半島沖掘削試験から得られたコア堆積層中の好気生
菌が生産する酵素解析
152
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
○ 三浦
健、森
梢、小出
修、小林
徹、高井
研、掘越
別冊
弘毅
海洋研究開発機構 極限環境生物圏研究センター
三浦
健:[email protected]
目的
我々は、昨年度(2006 年 8~10 月)、下北半島東方沖(八戸市北東沖約 100 km)掘削試験により得
られた“ちきゅう”コアサンプル(水深:1180 m、掘削深度:342 mbsf)中に酵素活性を確認するこ
とに成功した。これらの酵素はコアサンプル中に存在していた多数の好気性菌が生産することが示唆さ
れた。これらの地殻内微生物がどのような酵素を生産するのか、深度による分布や多様性があるか等を
調べることを目的とした。
方法
“ちきゅう”コアサンプル(10 箇所)中に存在する酵素活性を確認するために、コアサンプルを人工
海水で懸濁し遠心分離後、その上清を用いてキット(アピザイム)による酵素活性の確認を行うと共に、
カタラーゼ、エステラーゼ、ホスファターゼ活性を測定した。チトクローム・オキシダーゼ活性は試験
紙を用いて確認した。次にコアサンアンプルから単離された地殻内微生物 552 株についてプレートアッ
セイ法によりプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、ホスファターゼ、キチナーゼ、核酸
分解酵素(DNase)等の生産の有無を調べた。さらに数種の酵素については培養上清を用いて大まかに
作用 pH を調べた。
結果および考察
0 mbsf~342 mbsf から得られた 10 箇所のコアサンプル中、ほとんどのサンプルから酸性ホスファタ
ーゼおよびカタラーゼ活性が確認された。また、44.91 mbsf 層においては、エステラーゼ活性、184.41
mbsf と 339.66 mbsf ではオキシダーゼ活性が確認され、地殻内における酵素活性を初めて見出した。
さらに詳細な活性測定を行った結果、酸性ホスファターゼ、カタラーゼ、C4 エステラーゼ活性をほぼ
全てのコアサンプル中に見出すことができた。このことは好気性菌が地殻内において活動していること
を示唆した。実際にコアサンプル中には多数の好気性細菌の存在を確認した。
次に、各コアサンプルから単離、純化された好気性細菌(552 株)の生産する酵素について調べたと
ころ 90%以上の菌がカタラーゼ及びチトクロム・オキシダーゼを生産していた。プレートアッセイ法で
確認されたプロテアーゼ、リパーゼ、キチナーゼ、DNase 生産菌の多くは、Pseudoalteromonas 属細
菌、同様にアミラーゼ生産菌は、Pseudomonas 属細菌であった。また、生産菌数は少ないもののセル
ラーゼ生産菌の多くは、Pseudomonas 属細菌、キシラナーゼ生産菌では Microcella 属、Cytophaga 属
由来であった。アルギン酸分解酵素の生産菌は 0 mbsf で分離された Shewanella 属由来のものであっ
た。一方、海藻類を構成する多糖を分解するアガラーゼ、カラギナーゼ生産菌は全く見出せなかった。
その他、ペクチナーゼ、リグニナーゼ、コンドロイチナーゼ生産菌も確認できなかった。
また、作用 pH を調べたところ、ほとんどの酵素が中〜アルカリ性であり、アミラーゼ、セルラーゼ
の最適 pH は、約 80%が中性、ホスファターゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、アルギン酸分解酵素は、ほ
とんどがアルカリ性であり、キチナーゼ、キシラナーゼは、中性とアルカリ性はほぼ同じ割合であった。
DNase のみ、酸性に最適 pH を示すものが約 60%あった。
Analysis of enzymes produced by subseafloor aerobic microorganisms from Shimokita test-site of a
deep-sea drilling vessel ‘Chikyu’
○Takeshi Miura, Kozue Mori, Osamu Koide, Tohru Kobayashi, Ken Takai,
Koki Horikoshi
Extremobiosphere Research Center of Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology
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P-17
“ちきゅう”による下北半島沖掘削試験から得られたコア堆積層中の好気生
菌の多様性
153
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
○ 小出 修、森 梢、島村 繁、三浦 健、高木善弘、小林
井町寛之、稲垣史生、高井 研、掘越弘毅
別冊
徹、布浦拓郎、
海洋研究開発機構 極限環境生物圏研究センター
小出
修:[email protected]
【目的】
2006 年 8~10 月、地球深部探査船“ちきゅう”による下北半島東方沖の掘削試験が行われた。海面
下 1180 mの掘削により得られた海底下 342 m までの 11 箇所のコア堆積層サンプル中における好気性
細菌の生存の有無、数、種類などを調べることを目的とした。
【方法】
“ちきゅう”上でサンプリングされたコア堆積層の一部を滅菌人工海水で 2 倍に希釈し、窒素ガスを
封入した後、4℃で保存されていたサンプルをマリンアガー
(MA) 、2%食塩で 10 倍に希釈したマリンアガー (1/10MA) 、脱イオン水にて 10 倍に希釈したニュー
トリエントアガー (1/10NA) 等の寒天平板培地に塗抹した。培地の pH は 4.5、7、9 の 3 種類、培養温
度は 4℃、15℃、30℃及び 50℃とし、1-4 週間の培養を行った。菌数を測定し、種々の形状、色のコ
ロニーを選抜し純化した。分離株の 16S rRNA 遺伝子配列を決定し、相同性 97%を閾値としてグルー
ピングを行い、系統解析を行った。
【結果】
当初、コア堆積層サンプル中に好気生菌は殆ど存在しないと考えられたが、海底下 342 m 付近にお
いても 107 オーダーの好気性菌の存在が明らかになった。最も生菌数の多かったサンプルは 2.4×108
cells cm-3 であった (海底下 212.9 m、メタンハイドレート層)。これらの菌数は従来報告されてきたコ
ア堆積層サンプル中における培養可能な菌数に比べ 102~103倍多い値であった。生菌数は 4℃、15℃、
30℃培養で多く、50℃では著しく減少した。また、pH 4.5 の条件では 15℃、30℃以外では菌の生育は
認められなかった。好気性菌は全てのコア堆積層サンプルに認められた訳ではなく、海底下 6.9 m、16.4
m、101.9 m 付近のサンプル中にはすべての条件下で生育する菌は殆ど認められなかった。各層におけ
る 30℃培養時の優先種は、上層では Bacillus、中層では Halomonas, Paracoccus, Rhodococcus、深部
層では Pseudomonas 属の細菌群であった。分離した菌(552 株)の 16S rRNA 遺伝子の系統解析の結
果、Actinobacteria, Bacteroides/Chlorobi, Firmicutes, Proteobacteria (α, γ)の 4 つの phylum に分
類された。分離した菌は Actinobacteria に 9 属 9 種、Bacteroides/Chlorobi に 4 属 5 種、Firmicutes
に 11 属 31 種、α- Proteobacteria に 5 属 5 種、γ- Proteobacteria には 9 属 12 種に細分された。分類
された株の中で 4 株が、既知の 16S rRNA 配列と比較して相同性 90%以下であり、系統解析の結果か
ら新属と考えられた。
Phylogenetic diversity of subseafloor aerobic microorganisms buried in coastal sediments off
Shimokita retrieved by a deep-sea drilling vessel ‘Chikyu’
Osamu Koide, Kozue Mori, Shigeru Shimamura, Takeshi Miura, Yoshihiro Takaki,
Tohru Kobayashi, Hiroyuki Imachi, Fumio Inagaki, Takuro Nunoura, Ken Takai,
Koki Horikoshi
Extremobiosphere Research Center of Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology
(JAMSTEC)
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P-18
日本近海深海底の湧水環境における微生物学的多様性カタログ作成の試み
◯森久夏海 1,2)、荒川康 1.3)、國嶋雅之 1,2)、佐藤孝子 1)、為我井秀行 2)、加藤千明 1)
1)独立行政法人海洋研究開発機構、2)日本大学文理学部、3)東洋大学バイオナノエレクトロニクス研究
センター
加藤千明:[email protected]
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
わが国周辺の海底においては、4 つのプレート(北アメリカプレート、ユーラシアプレート、太平洋
プレートおよびフィリッピン海プレート)の活発な動きによって、湧水や熱水噴出等の現象が広く分布
している。筆者らによるこれまでの微生物調査から、こうした海域においては地殻活動にリンクした特
長的な微生物相が確認されている[1,2]。すなわち、地殻内部から出てくる二酸化炭素と水素に依存して
バイオジェニックなメタンを生産するアーキア(メタン生成アーキア)、こうして得られたメタンと海
水中に含まれる硫酸イオンとから硫化水素を作る硫酸還元コンソーシアム(嫌気的メタン酸化アーキア
と硫酸還元バクテリアとの複合体)、更に硫化水素を酸化してエネルギーを得るイオウ酸化バクテリア
とこれと共生する化学合成共生系生物、である。こうした微生物構造は、海域を超えて一般的に見られ
ている[1,2]が、生成されるメタンの性質(バイオジェニックかジェオサーモジェニックか)とか、硫酸
還元コンソーシアムで生産される硫化水素の濃度などで、その組成は異なっている。これまでの知見か
ら、それぞれの海域ごとにコールドシープの微生物活動に特徴が見られ、日本海溝では、陸側斜面から
海溝中軸に深度が深くなるほど活発になること[3]、南海トラフでは付加体形成に伴う圧力で、逆に深度
が浅くなるほど活発になること[4]、そして北東日本海(奥尻海嶺)では、活断層直上の微生物マットに
おいて活発な微生物活動が予測された[5]。これらの結果は、地殻活動と微生物学的多様性との相関関係
を示唆するもので、微生物調査から地殻変動を推定する可能性を示している。
本報告では、これまでの各海域における微生物学的多様性の結果を総合し、それそれの微生物群集構
造をカタログ化する試みについてまとめた。その結果、微生物学的多様性が、現場海域の地質学的特徴
とよく相関している状況が考察できた。
[1] 加藤千明、他(2005)月刊地球、27(12)、939-948.
[2] Kato, C., et al. (2007) In High-Pressure Microbiology, Michiels, C. and Bartlett, D. H. (eds), ASM
press, Washington DC, in press.
[3] Arakawa, S., et al. (2005) J. Jpn. Soc. Extremophiles, 4, 50-55.
[4] Arakawa, S., et al. (2006) J. Gen. Appl. Microbiol., 52, 47-54.
[5] Arakawa, S., et al. (2006) Extremophiles, 10, 311-319.
Title: Catalog of the microbial diversity in the deep-sea seep environments around Japan.
Authors (affiliation): N. Morihisa1,2), S. Arakawa1.3), M. Kunishima1,2), T. Sato1), H. Tamegai2) and C.
Kato1) (1)JAMSTEC, 2)Nihon University, 3)Toyo University)
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P-19
マリアナ海溝より得られた脱窒細菌の硝酸還元酵素の発現制御
○池田恵理子1)、安藤理美1)、加藤千明2)、掘越弘毅2)、為我井秀行1)
1)
日本大学・文理学部、2)(独)海洋研究開発機構・極限環境生物圏研究センター
代表者氏名 為我井秀行:[email protected]
(目的、方法)
マリアナ海溝 11,000 m の深海底泥より単離された脱窒細菌である Pseudomonas sp. strain MT-1 は、
浅海から得られた脱窒細菌 Pseudomonas stutzeri と 16S rDNA 配列の相同性が高く極めて近縁である
が、本細菌は P. stutzeri と比較して低温・高圧での生育に強く、深海環境に適応した性質を示す。脱窒
系は酸素呼吸系の祖先型であると考えられているため、マリアナ海溝のように閉鎖された環境に存在す
る脱窒系酵素がどのように進化を遂げたのかはとても興味深い。
脱窒の初段階に関与する異化型硝酸還元酵素には二種類存在していることが知られている。すでに
我々は膜結合型硝酸還元酵素に関与する nar 遺伝子クラスターの解析、ペリプラズム型硝酸還元酵素に
関与する nap 遺伝子クラスターの解析と Nap 酵素の活性測定を行い、本細菌には両方の酵素が存在す
ることが明らかとなっている。遺伝子の配列解析の結果、本細菌の nap 遺伝子は近縁である P. stutzeri
とそれぞれ 80%前後の相同性を示したが、他の脱窒細菌では機能発現に必須と考えられていた遺伝子
napE や napF が strain MT-1 では存在しなかった。しかし硝酸還元活性を示したことから、本細菌に
はこれらの遺伝子は必須ではないことが考えられる。nar 遺伝子クラスターも同様に P. stutzeri との相
同性が高かったが、硝酸輸送タンパク質をコードする遺伝子 narM は他の海洋性細菌と高い相同性を示
した。strain MT-1 におけるこれら二種類の硝酸還元酵素の生理的役割を解明することを目的とし、本
研究では様々な条件で培養した本細菌のペリプラズム型酵素の活性を測定し、さらに RT-PCR により
155
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
Nap と Nar をコードする遺伝子の発現制御を調べた。
(結果および考察)
様々な条件で培養した strain MT-1、P. stutzeri の可溶性画分の硝酸還元酵素活性測定を行った(Fig.1)。
strain MT-1 では脱窒条件のときにのみ大きく活性を示したのに対し、P. stutzeri では他の条件のとき
にも活性を示した。
次に strain MT-1 と P. stutzeri の nap 遺伝子の RT-PCR の結果を Fig.2 に示す。P. stutzeri では脱
窒条件下での発現が強く見られたが、strain MT-1 では好気条件下でより強い発現を示し、二種の細菌
では nap 遺伝子発現の様子が異なった。また、strain MT-1 での活性測定と遺伝子発現パターンの関係
が、P. stutzeri のものと大きく異なった。この要因には、翻訳後修飾などが起こっていることが考えら
れ、種によって生理的役割の違いがあることが示唆される。また、Fig.3 に示した strain MT-1 nar 遺
伝子群の RT-PCR の結果では、脱窒条件下で強い発現を示したように、同じ種においても酵素の違いに
よって発現パターンに違いが示されたことから、二種の酵素は異なる役割を持つことが考えられる。
110
120
100
100
5
-O2 +NO3-
15
18
15
+O2 –NO3-
+O2 +NO3-
-O2 –NO3-
Fig.1 Napの硝酸還元活性
strain MT-1
strain MT-1
P. stutzeri
16S
16S
左: narK
右: narG
napA
napA
① ② ③ ④ ① ② ③ ④
① ② ③ ④ ① ② ③ ④
Fig.2 napAのRT-PCR解析
① -O2 +NO3-
② -O2 +NO3-
③ +O2 +NO3-
①
②
③
④
Fig.3 nar遺伝子群のRT-PCR解析
④+O2 –NO3-
Regulation on the expression of nitrate reductases of denitrifying bacterium isolated from Mariana
Trench
Eriko IKEDA, Satomi ANDOU, Chiaki KATO, Koki HORIKOSHI, and Hideyuki TAMEGAI
(1Department of Chemistry, College of Humanities and Sciences, Nihon University,
2Extremobiosphere Research Center, Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)
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P-20
深海微生物による生分解性プラスチックの分解過程の解析
○佐藤孝子1)、加藤千明1)、関口峻允2)、榎牧子2)、兼広春之2)
1)
海洋研究開発機構・極限環境、2)東京海洋大学・海洋科学部
佐藤孝子:[email protected]
目的
従来の分解されにくいプラスチック製品は、処理にコストのかかる廃棄物となるために、生分解性プ
ラスチックが開発されつつある。一方、海洋においては、流出によるレジ袋などのプラスチック製品が、
海洋生物被害や深海底を含む環境問題を引き起こしている。そこで、生分解性プラスチックが、環境微
156
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
生物によって分解されていく過程を検討することにより、一方で廃棄物の効率的な微生物分解が、また
一方では、使用中は十分な強度を保持し,かつ流失後は海中ですみやかに分解するといった分解性が制
御された環境に配慮された漁具等の開発に寄与することが期待される。これまでに、河川,海洋表層環
境水中における様々なプラスチックの生分解性に関する報告はあるが、低温・高圧下の深海域における
プラスチック分解性についての知見はほとんどない。そこで本研究では,富山湾深層水(水深321mより
取水)を用いて数種の生分解性プラスチック(脂肪族ポリエステル)繊維の浸漬試験を行った。さらに,
鹿児島若尊プロトカルデラを始めとする深海堆積物からプラスチック分解菌の集積培養を行い、微生物
群集解析及び単離を試みている。
方法
深層水浸漬試験には脂肪族ポリエステル系の繊維3種類(ポリカプロラクトン(PCL),ポリヒドロ
キシブチレート/バリレート(PHB/V),ポリブチレンサクシネート(PBS))と天然繊維1種類(絹糸)
の計4種類を使用した。浸漬試験は富山県水産試験場の深層水汲み上げ施設内にある流水式飼育水槽(常
圧,平均水温0.5℃)と加圧タンク(流水式:水圧約20atm,平均水温3.6℃)内で行った。浸漬期間は
1年間とし, 1,3,6,9,12 ヶ月経過時に試料を採取した。試料の力学的特性の測定(強度,伸度)
と電子顕微鏡による表面観察を行い,分解性の評価とした。深海堆積物による分解過程の検討には、シ
ート状に成形したプラスチックを使用し、現場環境温度と圧力条件での培養を行った。
結果と考察
生分解性プラスチック繊維の浸漬試験飼育水槽および加圧タンク内に浸漬した結果、生分解性繊維
(PCL,PHB/V,PBS,絹)全てにおいて浸漬時間の経過に伴い強度保持率の低下,および表面に穴やクラ
ックといった分解痕が見られた。素材による違いとしては,天然繊維である絹の強度低下が最も大きく,
次いで微生物合成系のPHB/V および化学合成系のPCL,そして最も強度低下の進行速度が遅かったも
のはPBS であった。試験した試料の中で,脂肪族ポリエステル系のPCL とPHB/V については飼育水
槽中に浸漬した試料に比べ,加圧タンク中に浸漬した方が強度低下が大きかった。SEM による表面観
察結果からも加圧タンク浸漬試料の方が繊維表面の分解が進行していることが確認された。繊維の分解
は深層水中の微生物分解によって進行しているものと予測されるが,分解の速さにおいて圧力依存性が
あることが示唆された。鹿児島若尊プロトカルデラ深海堆積物からは、真菌性のプラスチック分解活性
のある微生物が分離され、千島海溝カデ海山堆積物からは、プラスチック基質を炭素源とした微生物の
増加がDAPI染色による顕微鏡観察により認められた。深海環境では、多様な微生物がプラスチック分
解に関わってることが考えられる。現在、詳細を解析中である。
参考文献
1) Kanehiro H., T. Tokai and K.Matuda : Marine litter composition and distribution on the sea-bed
of Tokyo Bay. Fish. Eng., 195-199, 1995.
2) 海水中における生分解性プラスチックの分解戎井,田畠,兼廣,今田,小林水産工学2003; 40: 143-149
The process of bioplastic degradation by deep-sea microorganism
○Takako Sato1, Chiaki Kato1, Takayoshi Sekiguchi2, Makiko Enoki2 and Haruyuki Kanehiro 2
1 Extremobiospheres Research Center, Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology
(JAMSTEC), 2Department of Marine Sciences, Tokyo University of Marine Science and Technology.
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P-21
好アルカリ性細菌 Bacillus pseudofirmus OF4 株の走化性レセプター
の網羅的機能解析
○荒川
康1)、伊藤政博 1,2)
1)
東洋大・バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター、2)東洋大・生命科学
荒川
康:[email protected]
【目的】
運動性のある細菌は糖などの誘引物質に向かって近づき、金属イオンなどの忌避物質からは遠ざかる
という性質(走化性)を持っている。誘引物質や忌避物質の感知は、走化性レセプター(MCP)と呼ば
れる膜タンパク質によって行われており、これらのセンサーは、桿菌では細胞の極に局在することが知
157
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
られている 1)。
好アルカリ性細菌 Bacillus pseudofirmus OF4 株(以下 OF4 株)では、電位駆動型ナトリウムチャ
ネル(NaVBP)を欠損させると走化性の異常が起こる 2)。また、免疫蛍光染色法を用いた研究から NaVBP
欠損株では、細胞の極に局在する MCP の局在性が低下することが報告されている 3)。また、アスパラ
ギン酸やマルトースが誘引物質であることが知られている。しかし、分子生物学的手法を用いた OF4
株の走化性レセプターに関する研究は、ほとんど行われていない。
OF4 株のゲノム上には、少なくとも 15 種類の MCP 様タンパク質が同定された。しかし、それぞれの
MCP がどの物質に対するレセプターとして機能するのかは分かっていない。そこで、OF4 株の MCP 破
壊株を網羅的に構築し、その機能を明らかにすることにした。
【方法】
OF4 株の推定上の MCP 遺伝子領域の上流領域と下流領域を gene SOEing 法で増幅した。温度感受性
シャトルベクターpG+host4 へクローニングし、目的領域を欠失させるプラスミドを構築した。この構築
したプラスミドを OF4 株へ形質転換し、取得した形質転換株から MCP 欠損株を構築した。
MCP 欠損株は、一般的な走化性試験方法であるキャピラリーアッセイにより、走化性に異常が生じて
いるかを調べた。
【結果および考察】
現在、複数の MCP 破壊株の構築を試みている。破壊株が取得されたものから、それらの走化性試験
を行っている。詳細は、ポスターにて報告する。
好アルカリ性細菌が持つ MCP の中には、アルカリ性環境に対して認識・応答するアルカリ応答セン
サーのようなユニークなものが有ることが期待される。
引用文献
1.
2.
3.
Wadhams G.H., Armitage J.P. (2004) Making sense of it all: bacterial chemotaxis. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 5,
1024-1037.
Ito M., Xu H., Guffanti A.A., Wei Y., Zvi L., Clapham D.E., Krulwich T.A. (2004) The voltage-gated Na+
channel NavBP has a role in motility, chemotaxis, and pH homeostasis of an alkaliphilic Bacillus. Proc Natl
Acad Sci U S A. 101, 10566-10571.
Fujinami S., Sato T., Trimmer J.S., Spiller B.W., Clapham D.E., Krulwich T.A., Kawagishi I., Ito M., The
Voltage-Gated Na+ Channel NaVBP Co-localizes with Methyl-Accepting Chemotaxis Protein at Cell Poles of
Alkaliphilic Bacillus pseudofirmus OF4. (2007) Microbiology, in press
Functional Analysis of Putative Chemoreceptor Proteins in alkaliphilic Bacillus pseudofirmus OF4
Shizuka ARAKAWA1 , Masahiro Ito1, 2 (1Bio-Nano Electronics Research Centre, 2Faculty of Life
Sciences, Toyo University)
___________________________________________________________________________________________
P-22
好アルカリ性細菌 Bacillus pseudofirmus OF4 株の走化性レセプターの蛍光
タンパク質を用いた可視化
◯友松
貴央、藤浪
俊、伊藤
政博
東洋大学大学院・生命科学
友松貴央:[email protected]
【目的】
運動性のある細菌は糖などの誘引物質に向かって近づき、金属イオンなどの忌避物質からは遠ざかる
という性質(走化性)を持っている。誘引物質や忌避物質の感知は、走化性レセプター(MCP)と呼ば
れる膜タンパク質によって行われており、これらのセンサーは、桿菌では細胞の極に局在することが知
られている 1)。
好アルカリ性細菌 Bacillus pseudofirmus OF4 株(以下 OF4 株)では、電位駆動型ナトリウムチャ
ネル(NaVBP)を欠損させると走化性の異常が起こる 2)。また、免疫蛍光染色法を用いた研究から NaVBP
欠損株では、細胞の極に局在する MCP の局在性が低下することが報告されている 3)。しかし、分子生
158
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
物学的手法を用いた OF4 株の走化性レセプターに関する研究は、ほとんど行われていない。そこで、
NaVBP 欠損株の走化性異常と MCP との関連性の解明を行うために、まず当研究室でクローニングされ
ているいくつかの MCP の細胞内での局在を調べることとした。
【方法】
細胞内での MCP の細胞内局在を観察するため、当研究室でクローニングされたいくつかの MCP に
蛍光タンパク質の GFP や DsRed を融合させたプラスミドを構築した。それらのプラスミドを野生株や
NavBP 欠損株に形質転換し、細胞内での MCP の局在を蛍光顕微鏡で観察した。
【結果】
野生株に形質転換した蛍光タンパク質が融合した MCP のうち、Mcp793-2 は、他の桿菌と同様に極
に局在することを確認した。現在、形質転換株の発現や観察の条件検討を行っており、詳細は当日ポス
ターにて発表する。
【考察】
今回、蛍光タンパク質と融合した走化性レセプターの Mcp793-2 が極に局在することが確認された。
今後、極に局在性を示す NavBP と Mcp793-2 を用いてどのような相互関係があるかを明らかにしてい
きたいと考えている。
引用文献
1) Gestwicki J.E., Lamanna A.C., Harshey R.M., McCarter L.L., Kiessling L.L., Adler J.J. (2000)
J.Bacteriol. 182, 6499-6502.
2) Ito M., Xu H., Guffanti A.A., Wei Y., Zvi L., Clapham D.E., Krulwich T.A. (2004) Proc Natl Acad
Sci U S A. 101, 10566-10571.
3) Fujinami S., Sato T., Trimmer J.S., Spiller B.W., Clapham D.E., Krulwich T.A., Kawagishi I., Ito
M., The Voltage-Gated Na+ Channel NaVBP Co-localizes with Methyl-Accepting Chemotaxis
Protein at Cell Poles of Alkaliphilic Bacillus pseudofirmus OF4. (2007) Microbiology, in press
Title : The visualization of the chemotaxis receptor of Alkaliphilic Bacillus pseudofirmus OF4 by
using fluorescent protein fusion.
Authors(affiliation):○Takahiro Tomomatsu, Shun Fujinami, and Masahiro Ito (Graduate School of
Life Sciences, Toyo University)
___________________________________________________________________________________________
P-23
新規酵素アルカリペクチナーゼの探索
◯加藤武揚、深田洋介、井上明
東洋大学 大学院 生命研究科
[email protected]
【目的】
ペクチンは柑橘類の果皮に多く含まれる物質で、単糖 D ガラクツロン酸が α 1,4 結合で繋がりメチ
ル化された多糖である。このペクチンを単糖に分解する酵素ペクチナーゼは今までに多く報告されて
いるが、それらの酵素の至適pHは酸性および中性付近で、アルカリ性付近で高い活性を示す酵素ア
ルカリペクチナーゼ(APase)の報告例は少ない。本研究は従来にない高いアルカリ側で活性を有
し界面活性剤等の化学物質に耐性を持つアルカリペクチナーゼの発見によって、新しい産業分野への
応用展開を目的としている。
【実験方法】
1) APase 生産菌スクリーニング
各地の土壌試料から、アルカリ掘越改変培地(pectin 1%含有)を用いてAPase 生産菌を分離した。
さらに分離した菌株のAPase の各種至適条件(温度、pH)および各種化学物質(界面活性剤等)
耐性によりAPase 生産株を選定した。また選定菌株の同定は16srRNA遺伝子解析および各
159
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
種菌学的性質で行った。
2) 酵素精製および性質検討
陰イオン交換クロマトグラフィーおよびハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーで精製を行
い、精製酵素の各種至適条件(pH、温度)および 0.1%直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LB
S)等への耐性,
分解様式を測定し性質検討を行った。
【結果および考察】
1)
土壌試料にはミカン農園の果皮廃棄場等から採取した230試料を用い行った。一次スクリー
ニングの結果APase 生産菌607菌株を分離した。分離した菌株の培養液上清を 80%硫安沈殿で
濃縮し、それを粗酵素として生産酵素の性質を検討し高いアルカリ側で活性を有し 0.1%LBS に耐
性を持つAPase 生産菌1菌株(BPEL-1 株 1 株)を選定した。BPEL-1 株 1 株はグラム陽
性、運動性があり胞子形成能を持つ桿菌で、16srRNA遺伝子解析の結果 Bacillus sp.であった。
2)
本酵素の分子量はSDS―PAGEにより32kDaであり、至適pHは11、至適温度は7
0℃であった。また各種化学物質への耐性を検討した結果、0.1%LBS下で80%の残存活性を有
し 0.1%キレートビルダー(合成ゼオライト)に 40%残存活性を持つ end-pectate lyase であった。
本酵素のN末端アミノ酸配列を解析し、NCBI BLASTで相同性検索したところ pectate
lyase (EC4.2.2.2)と70%の相同性があった。
Isolation and characterization of a new pectinase.
Takeaki Kato(toyo university)
___________________________________________________________________________________________
P-24
蛍光タンパク質を用いた好アルカリ性細菌 Bacillus pseudofirmus OF4 株の
電位駆動型 Na チャネルの可視化
俊1)、佐藤孝子2)、Terry A. Krulwich3)、川岸郁朗4)、伊藤政博1)
○藤浪
1)東洋大学大学院・生命科学研究科、2)海洋研究開発機構・海洋生態、3)Department
of Pharmacology and
Systems Therapeutics, Mount Sinai School of Medicine, 4)法政大学・工学部生命機能学科
藤浪
俊:[email protected]
目的
微生物のイオンチャネルは、結晶化が難しい真核生物のイオンチャネルの立体構造解析に役立ってお
り、細菌におけるこれらイオンチャネルの生理学的機能の解明が期待されている 1)。
好アルカリ性細菌 Bacillus pseudofirmus OF4 株(以下 OF4 株と省略)では膜電位駆動型 Na チャ
ネル NaVBP を欠損させると、高アルカリ性環境での細胞内 pH 調節能が低下すること以外にも、タン
ブリングの頻度が上昇し、誘引物質や忌避物質に対して野生株と反対の反応を示すことが報告されてい
たが、この走化性異常の原因は不明であった 2)。そこで我々は、Na チャネルの欠損と走化性異常との
関連がどのような分子機構によって起こるのか解明することを目的として研究を行ってきた。
方法
2005 年度極限環境微生物学会年会において以下のことを報告した。まず、免疫蛍光顕微鏡観察(IFM)
の結果、野生株では、NaVBP と推定上の走化性レセプターMcpX が細胞の極で共局在が観察された。
また NaVBP 欠損株では、McpX の発現量はほぼ変わらないものの、その局在性は低下していた。これ
らの結果より、NaVBP 欠損株の走化性異常は McpX の脱局在化が寄与している可能性が示唆された。
そこで今回は生細胞内での NaVBP の細胞内局在を観察するため、NaVBP と蛍光タンパク質である
CFP の融合タンパク質(NaVBP-CFP)を発現するプラスミドを構築し、NaVBP 欠損株に形質転換し、そ
の局在を確認した(図 1)。
結果
NaVBP-CFP の細胞の極への局在が観察された(図 1A)。CFP のみを発現させた場合にはこのような局
在は観察されなかった(図 1B)。抗 CFP 抗体を用いたウエスタンブロッテイングにより、NaVBP-CFP
160
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
は膜画分に、CFP は細胞内画分に発現していることを確認した。また NaVBP-CFP を発現するプラス
ミドは NaVBP 欠損株(SC34 株)における運動性、走化性の異常をほぼ相補するが、CFP のみを発現す
るプラスミドは相補しないことを確認した。
図 1. 好アルカリ性細菌 Bacillus pseudofirmus OF4 株における NaVBP-CFP の細胞内局在の観察。
NaVBP 欠損株(SC34 株)に NaVBP-CFP を発現するプラスミドpSC-CFP(A)または CFP を発現するプ
ラ ス ミ ド p CFP(B) を 形 質 転 換 し 、 蛍 光 顕 微 鏡 で 観 察 し た 。 DIC: 微 分 干 渉 顕 微 鏡 画 像 、
NaVBP-CFP/CFP:蛍光顕微鏡画像。バーは 5um を示す。
考察
今回の結果から電位駆動型 Na チャネル NaVBP が細胞の極に局在していることが強く示唆された。
これまでの結果と考えあわせると NaVBP 欠損株の走化性異常は McpX の脱局在化が寄与している可能
性が示唆された。桿菌において MCP は細胞の極に局在化することが広く知られている 3)。しかし、膜
電位駆動型チャネルが極に局在しているという報告例はこれまでになく、新規性の高い発見であると考
えられる。これらは共局在していることから相互作用している可能性もあり、好アルカリ性細菌の研究
だけでなくイオンチャネルの研究においても興味深い結果であるといえる。
引用文献
1) Kung, C, Blount, P (2004) Mol Microbiol. 53, 373-380.
2) Ito, M, Xu, H, Guffanti, AA, Wei, Y, Zvi, L, Clapham, DE, Krulwich TA (2004) Proc Natl Acad
Sci U S A. 101, 10566-10571.
3) Gestwicki JE, Lamanna AC, Harshey RM, McCarter LL, Kiessling LL, Adler JJ (2000) J.
Bacteriol. 182, 6499-6502.
Title:The visualization of the voltage-gated Na+ channel of Alkaliphilic Bacillus pseudofirmus OF4
by using fluorescent protein fusion.
Authors (affiliation):Shun Fujinami1, Takako Sato2, Terry A. Krulwich3, Ikuro Kawagishi4, and
Masahiro Ito1 (1Graduate School of Life Sciences, Toyo University, 2Japan Agency for Marine-Earth
Science and Technology (JAMSTEC), 3Department of Pharmacology and Systems Therapeutics,
Mount Sinai School of Medicine, 4Department of Frontier Bioscience, Faculty of Engineering, Hosei
University.)
___________________________________________________________________________________________
P-25
好アルカリ性 Bacillus 属細菌、枯草菌、黄色ブドウ球菌がもつ
Cation/Proton Antiporter-3(CPA-3) ファミリーのアンチポーター解析
○夏井信介 1)、大平高之 2)、Talia H. Swrtz3)、David B Hicks3)、Terry A.Krulwich3) 伊藤政博 1,2)
東洋大院・生命科学
2)東洋大・生命科学
3)Mount
1)
Sinai School of Medicine
目的
細菌の一価カチオン/プロトンアンチポーターは、アルカリや塩耐性、細胞内 pH の維持など細胞にと
って多様な役割を果たしている。本研究でターゲットとした Cation/Proton Antiporter-3(CPA-3) ファ
161
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
ミリーは、好アルカリ性 Bacillus pseudofirmus OF4 株(MrpBPOF4)や好中性細菌 Bacillus subtilis
(MrpBS)、黄色ブドウ球菌(Mnh、Mnh2)など様々な環境に生息する細菌から発見されている。CPA-3
ファミリーは、6 つあるいは 7 つの疎水的な遺伝子産物から構成されており、それら全てがアンチポー
ト機能に不可欠であることが報告されている。
本研究では、
3 種のグラム陽性細菌(好アルカリ性 Bacillus
pseudofirmus OF4、枯草菌、黄色ブドウ球菌)における CPA-3 ファミリーのアンチポート特性を明らか
にすることを目的とした。
方法
上記 3 種の細菌から4つの CPA-3 ファミリー遺伝子をクローニングした。それらを主要な Na+/H+
アンチポーターを欠損した大腸菌 EP432 株(ΔnhaA,ΔnhaB)に形質転換し、Na+濃度および pH を変化
させた LBK 培地で相補実験を行った。そして反転膜小胞を調製しアンチポーター活性の測定を行い、
その解析を行った。
結果
MrpBPOF4、MrpBS、Mnh は、大腸菌 EP432 株の Na+感受性を相補したが、Mnh2 は、相補しなかっ
た。また、MrpBPOF4、MrpBS、Mnh、Mnh2 いずれもコントロールと比較して、高 pH においても生育
することができた。
Na+/H+アンチポーター活性の測定において、MrpBPOF4 と MrpBS は、最適 pH がアルカリ側にあり、
また、Mnh は、pH7~9 において高いアンチポート活性を示した。Na+に対する見かけの Km 値は非常
に低かった。Mnh2 は、一価カチオンとのアンチポーター活性も示さなかった。
また、MrpBPOF4 と Mnh についてはΔΨに依存した Na+/H+アンチポーター活性を測定したところ、
活性を示した。
考察
MrpBPOF4 と MrpBS は Na+に対して非常に低い Km 値を示したことから、親和性の高い Na+/H+アン
チポーターであると考えられる。また、MrpBPOF4 はΔΨによって駆動されたことから、2次輸送型のア
ンチポーターであると考えられる。
Mnh は、非常に低い Km 値を示し、さらに pH7~9 で高い Na+/H+アンチポーター活性を示したこと
から、Mnh が黄色ブドウ球菌に強力な Na+、アルカリ耐性を付与する要因となると考えられた。また、
Mnh2 はどのような一価カチオンとのアンチポーター活性も示さなかったので、なにか別の役割を果た
していると考えている。
引用文献
Talia H. Swrtz. et al (2007) J.Bacteriol, Apr. 2007, p. 3081–3090
Catalytic Properties of Staphylococcus aureus and Bacillus Members of the Secondary
Cation/Proton Antiporter-3 (Mrp) Family Are Revealed by an Optimized Assay in an Escherichia
coli Host.
1
Shinsuke Natsui, 2Takayuki Ohira, 3Talia H. Swartz, 3David B. Hicks, 3Terry A. Krulwich1 and 1,2Masahiro Ito
(1Graduate School and 2Faculty of Life Sciences, Toyo University, 3Department of Pharmacology
and Biological Chemistry, Mount Sinai School of Medicine)
___________________________________________________________________________________________
P-26
非塩性土壌から分離した新規好アルカリ性中度好塩性細菌の分類学的研究
○越後 輝敦 1)、峯岸 宏明 1)、水木 徹 1)、長岡 修平 2)、亀倉 正博 3)、宇佐美 論 1), 2)
1)東洋大学バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター、
2)東洋大学・工学部・応用化学科、3)好塩菌研究所
【背景・目的】
好塩性微生物は一般に増殖に 0.2 M (1.2% (w/v))以上の NaCl を必要とする微生物である。その中で
中度好塩性微生物は増殖至適 NaCl 濃度が 0.5-2.5 M (2.9-15% (w/v))の微生物であり、
現在までに塩湖、
塩田、塩蔵食物、天日塩、岩塩などの様々な含塩試料、塩性環境から分離されている。好塩性微生物は
162
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
増殖に高濃度の NaCl を必要とすることから、高塩濃度環境からのみ分離が可能であると考えられてい
たため、非塩性環境である一般的な土壌などから好塩性微生物が分離されたという報告はなかった。し
かし我々はこれまでに好塩性微生物を非塩性環境中から分離することに成功し、環境中に普遍的に存在
していることを明らかにするとともに、その中から 2 種類の好アルカリ性中度好塩性細菌 Alkalibacillus
silvaisolus と Halalkalibacillus halophilus を新規分類群として提唱している。本研究では分離株の中
から、さらに新規な好アルカリ性中度好塩性細菌を見出し、分類学的解析を行った。
【方法】
関東近郊の非塩性土壌から分離した新規好アルカリ性中度好塩性微生物について、16S rRNA 遺伝子
塩基配列に基づく系統解析、GC 含量の測定、形態観察、生育至適条件の確認、その他の生理・生化学
的試験などの各種試験を行った。
【結果・考察】
16S rRNA 遺伝子塩基配列に基づく系統解析の結果、分離株は Bacillaceae 科の菌株と最も近縁であ
ったが、既知の菌株とは 95%以下の相同性しかなかった。
分離株は好気性のグラム陽性ブドウ状球菌であり、運動性は確認できなかった。NaCl 濃度は
5.0-25.0% (w/v)の範囲で生育し、生育至適 NaCl 濃度が 10-15% (w/v)の中度好塩性であり、pH は
6.0-10.0 の範囲で生育し、生育至適 pH は 8.5 の好アルカリ性であった。これらの系統学的特徴、およ
び表現型の特徴から、分離株は新規な好アルカリ性中度好塩性細菌に分類されると考えられる。
___________________________________________________________________________________________
P-27
低温菌 Shewanella livingstonensis Ac10 のエイコサペンタエン酸生合成調
節機構の解析
○古賀
敬太郎、川本
純、栗原達夫、江崎信芳
京都大学・化学研究所
古賀
敬太郎:[email protected]
【目的】
低温環境から単離された Shewanella 属の細菌は、低温で高度不飽和脂肪酸の一種であるエイコサペ
ンタエン酸 (EPA) を生合成する。EPA はリン脂質のアシル鎖として細胞膜に存在し、低温環境におけ
る膜機能の保持に重要な役割をもつと推定されてきた。我々は、南極海水から分離した Shewanella
livingstonensis Ac10 の EPA 生合成系遺伝子群を破壊することにより、EPA が低温での生育に重要
であることを明らかにした。本菌の EPA 生合成系遺伝子群はゲノム上でクラスターを形成しているが、
これに隣接して機能未知の ORF (orf4) が存在する。orf4 がコードするタンパク質は DNA 結合タン
パク質にみられる helix-turn-helix 構造をもつことから、低温における EPA 生合成系遺伝子群の転写
を制御している可能性が示唆された。本研究では、S. livingstonensis Ac10 の EPA 生合成における
orf4 の機能を明らかにすることを目的とした。
【方法】
S. livingstonensis Ac10 で機能する強力なプロモーター(alkyl hydroperoxide reductase 遺伝子プ
ロモーター)の下流に orf4 を配置した orf4 高発現プラスミドを構築し、これを本菌に導入すること
で orf4 高発現株を作製した。orf4 高発現株の低温での生育特性を解析し、形態を観察するとともに、
GC-MS を用いて全脂肪酸組成を解析した。
【結果および考察】
S. livingstonensis Ac10 の EPA 生合成系遺伝子を
破壊することで得られた EPA 欠損株は、低温での生育
速度が野生株に比べて低下し、EPA の生産が低温での
生育に重要であることがわかっている。そこで、orf4 高
発現が生育および EPA 生合成へおよぼす影響を調べ
た。orf4 高発現株の 4℃での生育速度は野生株に比べ
163
図
4℃で培養した野生株と orf4 高発
現株の形態観察
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
て著しく低下しており、EPA 欠損株とほぼ同じレベルであった。EPA 欠損株は野生株に比べて細長い
形態の細胞を形成することが確認されているが、orf4 高発現株も野生株に比べて細長い形態の細胞を形
成することが明らかとなった(図)
。これらの結果から、orf4 高発現株は EPA 欠損株と同様の特徴を
有し、orf4 が EPA の生合成に関与していることが示唆された。
そこで、orf4 高発現株の EPA 生産量を GC-MS によって解析した。その結果、4℃で培養した場合、
全脂肪酸に占める EPA の割合は、野生株では 5% 程度であるのに対し、orf4 高発現株では、ほぼ 0%
であることが示された。以上のことから、orf4 が EPA 生合成の抑制に関与していると考えられた。
Analysis of regulation mechanism of EPA-biosynthesis in a psychrotrophic bacterium, Shewanella
livingstonensis Ac10
Keitaro Koga, Jun Kawamoto, Tatsuo Kurihara, Nobuyoshi Esaki (Institute for Chemical Research,
Kyoto University)
___________________________________________________________________________________________
P-28
南極細菌 Flavobacterium xanthum 由来 AFP 遺伝子の大腸菌発現系の構築
○比嘉
桜、河原
秀久、小幡
斉
関西大学・生命生物工学科
河原
秀久:[email protected]
【目的】
地球上の約 80%は 5℃以下の低温環境下に一度は曝されるといわれており、多くの生物は低温環境に
順応している可能性が高い 1)。そこで、低温環境下に生存する生物は何らかの形で低温に対する防御機
構を有していると考えられる。不凍タンパク質(Antifreeze Protein;AFP)は低温に耐えるために生
産される物質の一つであると考えられおり、魚、昆虫、カビ、バクテリア、植物、地衣類から発見され
ている。AFP は水溶液の融解温度を変化させずに、非束一的に凍結温度を低下させる熱ヒステレシス
(Thermal Hystresis;TH)活性、時間経過と共に微細氷結晶同士が結合して結晶が大きくなる再結晶
化を抑制する(Recrystallization Inhibition;RI)活性、氷結晶の形態抑制活性の全て或いはいずれか
を有している特徴がある 2)。今回、使用した南極細菌 Flavobacterium xanthum IAAM120026 由来 AFP
(FlAFP)は、TH、RI、氷結晶形態抑制が非常に強く、分子量約 60,000 のタンパク質であることがわ
かっている 3)。本研究では、不凍活性が非常に強い南極細菌 F. xanthum 由来 AFP 遺伝子を用いた発現
系の構築を目的とする。
【方法】
1. 発現系の構築
PCR により増幅した FlAFP 遺伝子(afpB)を NdeⅠ・XhoⅠで消化し、同制限酵素で消化した pColdⅠ
ベクターとライゲーションし、BL21(DE3)株に形質転換を行った。
2. 培養方法
アンピシリン(100 μg/ml)を含む LB 培地で形質転換体を 37℃で一晩前培養を行い、同培地 100 ml
に前培養液 1 ml を添加し、O.D.600=0.4~0.5 になるまで 37℃培養した。その後、終濃度が 1 mM にな
るようにイソプロピル-1-チオ-β-ガラクトシド(IPTG)を添加し、15℃で 15 分間低温馴化させ、15℃
で 24 時間培養した。
3. 試料の調製
培養液から遠心分離により菌体を洗浄・回収を行い、超音波破砕機により破砕し、遠心分離を行い、
その上清は粗抽出液とした。
4. TH 活性、形態抑制活性測定
熱ヒステレシス活性測定は、Meyer 法によって行った 4)。サンプル 1 μl を温度制御可能な位相差顕微
鏡(温度制御調節;リンカム社、位相差顕微鏡;オリンパス社)にのせ、100℃/min の速度で-40℃に
し、その後、温度を上昇させ、氷結晶を単一にした。単一にした結晶を 1℃/min の速度で温度を下げ、
氷結晶が成長するまでの時間を測定し、以下の式より TH を算出した 5)。また、氷結晶が成長した際の
形態を観察し、氷結晶形態抑制活性を確認した。
TH(℃) = 60-1 (℃/s)×測定時間 (s)
5. RI 活性測定
164
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
RI 活性測定はシュークロースサンドイッチ法を用いて行った 5)。終濃度 30%(w/v)シュークロース
を添加したサンプルをカバーガラスに 1 μl のせ、もう一枚のカバーガラスで挟み、温度制御可能な位相
差顕微鏡にのせ、100℃/min の速度で-40℃まで冷却した。その後、同速度で-6℃まで温度を上昇させた。
-6℃になった時点を 0 min とし、そのまま温度を維持し、30 min 後の氷結晶の状態を比較した。ブラ
ンクとして、サンプルの代わりに、超純水を使用した。
6. 精製
金属キレートクロマトグラフィー(HisTrap FF crude カラム)と陰イオン交換クロマトグラフィー
(SuperQ カラム)を用いて精製を行った。
【結果】
Recombin
pColdⅠベクターに F. xanthum 由来 AFP 遺伝子を組み込み、 M.M
(kDa
Marke at AF
BL21(DE3)株を用いて発現させたところ可溶性画分に活性を示し、 )
r
P
タンパク質濃度 1.0 mg/ml で TH 活性が 1.34℃、RI 活性も非常に 113.
91.
0
強い活性を示した。また、SDS-PAGE で発現の確認を行ったところ、 0
49.
目的物質の大きさである約 60 kDa の位置にバンドが確認できた 9
6 kD
(図)。また、粗抽出液を金属キレートクロマトグラフィーで精製を 35.
0 a
行ったところ、720 μg/ml で TH 活性が 1.92℃、陰イオン交換ク 128.
ロマトグラフィー後では 720 μg/ml で 3.24℃と活性が上昇したこ 4
20.
とがわかった。さらに、RI 活性も同様に明らかになった。
8
【考察】
図 SDS-PAGE 分析
FlAFP は、TH・RI 活性が非常に強く、氷結晶形態抑制活性に関
しては、樹木状に爆発的に成長する。本発現系で得られた可溶性部
分においても元株と同様な特徴を確認することができ、SDS-PAGE でも目的分子量の位置にバンドを
確認する事ができた。また、金属キレートクロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィーで精
製を行ったところ、高い TH 活性が得られた。しかし、SDS-PAGE より夾雑タンパク質が確認できる
ため、さらなる精製の検討により TH 活性の上昇が期待できると推測できる。
【引用文献】
1) 畝本 力:特殊環境に生きる細菌の巧みなライフスタイル 共立出版
2) A.C. De Vries:Trans.R.Soc.Lond. (B304) 1984
3) Kawahara H, Iwanaka Y, Higa S, Muryoi N, Sato M, Honda M, Omura H & Obata H:A novel
intracellular antifreeze protein in an Antarctuc bacterium, Flabovacterium xanthum. Cry
Lletters 28 2007 :39-49
4) Meyer K, Keil M & Naldrett:The assay for the antifreeze activity (observing the morphology of
the ice crystals grown and measured TH). FEBS Lett 447 1999, :171-178.
5) Smallwood M, Worrall D, Byass L, Elias L, Ashford D, Doucet CJ, Holt C, Telford J, Lillford P &
Bowles DJ:The assay for the inhibition of ice recrystallization Biochem J 340 1999:385-391.
Title; Construction of E.coli expression system of AFP gene from Flavobacterium xanthum
Authors; Sakura Higa, Hidehisa Kawahara, Hitoshi Obata
(Department of Life Science and Biotechnology, Kansai University)
___________________________________________________________________________________________
P-29
高い銅耐性を有する深海酵母の銅タンパク質の同定
○皆川
洋一1)、角
1)東京工業大学
公一郎1)、大浦
隆宏1)、三浦
大学院生命理工学研究科
健 2)、阿部
文快 2)、梶原
将1)
分子生命科学専攻、2)海洋研究開発機構
極限環境微生
物圏研究センター
【目的】
深海酵母 Cryptococcus liquefaciens N6 は、日本の有人潜水調査船である「しんかい 6500」により、
日本海溝の水深 6500m の土壌から単離された深海微生物である。N6 株の特徴としては、重金属、特に
銅に対して非常に耐性を示し、50mM という高濃度の銅イオン存在下においても生育可能であることが
挙げられる。
165
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
生命にとって必須の金属元素である銅は、微量元素の中では比較的多く細胞内で見出されており、そ
のほとんどがタンパク質などの特定の部位に結合している。銅タンパク質の多くは、酸素運搬、電子伝
達、生体物質などの酸化還元の触媒として働いており、生体内の銅の恒常性が失われると、様々な過剰
症や欠損症が生じてくることが知られている。
生体内の銅の輸送や銅耐性のメカニズムは、大腸菌 Escherichia coli や出芽酵母 Saccharomyces
cerevisiae で研究が進んでいるが、高い銅耐性を有する N6 株に関しては、近年発見されたこともあり、
ほとんど明らかになっていない。しかし、他の生物と比較
し、突出した高い銅耐性を示すことから、他の生物とは異
なる特有の銅耐性システムを有している可能性が高いと
考えられる。そこで本研究では、高濃度の銅を添加した培
地を用いて培養した N6 株から、可溶性タンパク質を抽出
し、銅タンパク質を精製し、同定することにより、N6 株
の銅耐性に関わる因子の解明を試みている。
【実験方法と結果】
これまで、細胞内の過剰な銅を排出するためのポンプや、
銅を酸化還元させる酵素など、多くの銅タンパク質が見つ
けられ、その機能解析が行われている。銅タンパク質は、
一般にメチオニンやヒスチジン、そしてシステインによっ
て銅イオンと配位結合している。この特性を利用し、N6
株から銅タンパク質の分離を試みた。
まず、凍結乾燥させた N6 株を破砕し抽出した可溶性全タンパク質を、銅をキレートしたアフィニテ
ィーカラムを用いてイミダゾール濃度勾配によるクロマトグラフィーを行った。SDS-PAGE の結果、
特定の濃度範囲で溶出されるタンパク質のバンドが複数確認された。それらタンパク質を含むフラクシ
ョンを集め、イオン交換クロマトグラフィーを行うことにより、さらなる精製を行った。その後、ポリ
アクリルアミドゲルで分画し PVDF 膜にエレクトロブロッティング後、目的タンパク質のバンドを複数
切り出した。これらのタンパク質を同定するために、エドマン分解による N 末端アミノ酸配列分析を行
い、データーベースとの解析を行った。その結果、1つのタンパク質が他の生物の抗酸化酵素であるス
ーパーオキシドジスムターゼ2(SOD2)と高い相同性を有していることがわかった。残りのタンパク
質は、N 末端が修飾されているため解析不可能であった。そこで現在、トリプシン消化したサンプルを
用いて、MALDI/TOF-Mass によるペプチドマスフィンガープリント解析と、断片化されたペプチド
を用いた N 末端アミノ酸配列解析などを試みている。
【考察】
スーパオキシドジスムターゼ(SOD)は活性中心に配位している金属によって分類され、銅あるいは亜
鉛が配位した SOD1、マンガンが配位した SOD2 そして鉄が配位した SOD3 などが知られている。し
かしながら、本研究で同定したのはマンガンが活性部位である SOD2 であった。なぜ N6 株の SOD2
166
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
タンパク質が銅結合タンパク質として同定されたかは現在のところ不明である。
今後、N6 株が産生する SOD2 ホモログの遺伝子クローニングお行い、大腸菌と出芽酵母に高発現させ、
このタンパク質を大量に精製し、その金属結合性などを解析することで、N6 株の SOD2 ホモログの機
能や N6 株特有の銅耐性への関与などを解明することが期待される。
【引用文献】
Delicate Balance:Honeostatic Control of Copper Uptake and Distribution
Pena.MM et al. ;J.Nutr.1999 :129(7):1251-60
One-step purification of metallothionein extracted from two different sources.
Honda RT et al.;2005: 25;820(2):205-10
Identification of copper proteins from the heavy-metal-tolerant yeast Cryptococcus
liquefaciens strain N6
○Y.Minagawa1),K.Sumi1),T.Oura1),T.Miura2),F.Abe2), S.Kajiwara1)
(1)Department of Life Science,Graduate School of Bioscience and Biotechnology,Tokyo Institute of
Technology, 2)Extremobiosphere Research Center,Japan Agency for Marine-Earth Science and
Technology(JAMSTEC))
___________________________________________________________________________________________
P-30
深海酵母の脂質蓄積能の解析
○丹羽
智晃 1)、大浦
隆宏 1)、三浦
健 2)、阿部
文快 2)、梶原
将 1)
1)
東京工業大学 大学院生命理工学研究科 分子生命科学専攻、2)海洋研究開発機構 極限環境微生
物圏研究センター
〈目的〉
酵母の中には乾燥菌体重量の 20~60%もの油脂(主にトリアシルグリセロール)を菌体内に蓄積す
るものがあり、油脂生産酵母と呼ばれている(兎束ら、1979)。酵母以外の生物油脂資源としてはアブ
ラナのような植物やカビ等の糸状菌もあり、それらによる油脂生産の研究開発、産業化も行われている。
また、油脂生産酵母もこれまで食用、または工業用の油脂資源として利用しようと研究されてきた。酵
母は他の油脂生産生物に比べて増殖が速く、細胞壁が比較的薄い単細胞生物であるので油脂抽出も比較
的容易であるというメリットがある。そこで酵母を使ってアラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、
ドコサヘキサエン酸(DHA)といった高度不飽和脂肪酸や、石油代替燃料となるオクタン価の高い脂肪酸
を含む脂質を多量に発現させることができれば工業的に有意義であると考えられる。本研究では深海酵
母の中から脂質蓄積能の高い株を探し出す目的で、数種の深海酵母の脂質生産性に関する分析を行った。
〈方法〉
脂質の細胞内蓄積量が高いと以前報告された Rhodosporidium toruloides NRRL Y-1091 を比較対照
株とし(Yoon ら、1983)、これと同等かそれ以上の脂質蓄積能を有する深海酵母を見つけるため、同属
である Rhodosporidium sp. N-1、Rhodosporidium sp .N-3、Rhodosporidium sp. S-15 を、窒素源を制
限し炭素源の割合を多くした培地で培養し、脂質を抽出して乾燥菌体重量に対する脂質量の割合を調べ
た。同時にこれらの酵母の増殖速度を調べ、単位時間に生産される脂質量を算出した。さらに TLC に
よって脂質貯蓄量が高い 2 株の脂質分析を行い、全脂質量中のトリアシルグリセロール量の割合を調べ
た。
〈結果・考察〉
酵母乾燥菌体重量に対する脂質の割合を調べた結果、NRRL Y-1091 株が 1 番高く、2 番目に N-3 株
が高かった。次に測定した増殖速度から倍加時間を算出し、それをもとに単位時間に蓄積する脂質量を
計算し、酵母の脂質蓄積効率を比べた。その結果、単位時間における脂質蓄積量は N-3 株の方が 1 番多
いことが分かった。そこで脂質蓄積量が高い NRRL Y-1091 株、N-3 株の 2 株の全脂質量中のトリアシ
ルグリセロール量の割合を調べた。TLC による脂質分析を行った結果、N-3 株は NRRL Y-1091 株より
も全脂質中のトリアシルグリセロールの割合が高いことが明らかとなり、N-3 株は油脂生産酵母の有力
な候補となることが分かった。現在これら 2 株の脂質蓄積量を詳細に解析するため、HPLC による分析
167
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
を行っている。
〈引用文献〉
兎束 保之、油脂資源としての酵母、酵母の利用と開発、学会出版センター、1979、171-183
S.H. Yoon,J.S.Rhee.Lipid from Yeast Fermentation:Effects of Cultural Conditions on Lipid
Production and Its Characteristics of Rhodotorula glutinis.JAOCS,1983,60(7):1281-1286
Lipid-Accumulating activity of deep-Sea yeasts
○T.Niwa1), T.Oura1), T.Miura2), F.Abe2), S.Kajiwara1)
(1)Department of Life Science,Graduate School of Bioscience and Biotechnology,Tokyo Institute of
Technology, 2)Extremobiosphere Research Center,Japan Agency for Marine-Earth Science and
Technology(JAMSTEC))
___________________________________________________________________________________________
P-31
低温活性 β-ガラクトシダーゼを生産する深海底酵母に関する研究
◯斉藤美保子1)、長濱統彦 3)、浜本牧子 1,2)
1)
明治大学・院・農・生命科学、2)明治大学・農・生命科学、3)(独)海洋研究開発機構所・極限環
境生物圏センター
[目的]
ガラクトオリゴ糖はプレバイオティクス(プロバイオティクスのエサとして利用される食品成分)の
ひとつであり、口、胃、小腸で分解されることなく大腸に到達し、腸内の有害菌にはほとんど利用され
ないが、有用菌が増殖するためのエサとして利用されることにより、腸内フローラや便性を改善し疾病
につながるリスクを低下させる機能をもっていると考えられている。ガラクトオリゴ糖は高濃度のラク
トース溶液中で β-ガラクトシダーゼの糖転移反応により生成されるが、既知の β-ガラクトシダーゼのほ
とんどは 40~60℃という高温で活性をもつことが知られている。
深度 1,000-10,000 メートルの深海底は高塩濃度、高水圧、また、年間を通して概ね 4℃以下の低温域
であり、このような深海底に生息する微生物は新たな遺伝資源として注目されている。そこで本研究で
は、プレバイオティクスとして新規の優れた機能を有するガラクトオリゴ糖を生成させることを目的と
して、低温で強い活性を有する新規 β-ガラクトシダーゼを生産する酵母の探索を行った。
[方法・結果]
深海底の試料から分離された酵母 867 株を供試菌株として用い、一次スクリーニングとしてラクトー
スを単一炭素源として生育する菌株のスクリーニングを行った。単一炭素源としてラクトースを含む培
地に菌株をスポットし、その生育を観察した結果、867 株中 151 株がラクトースを単一炭素源として生
育できることが明らかになった。次に、二次スクリーニングとして β-ガラクトシダーゼ生産株のスクリ
ーニングを行った。β-ガラクトシダーゼ生産は X-gal の加水分解によるコロニーの青色呈色を指標とし
た。その結果 151 株中 62 株が 17℃で β-ガラクトシダーゼを生産することが明らかになり、このうち
14 株が 4℃というきわめて低温で β-ガラクトシダーゼを生産することが明らかになった。この 14 株が
生産する β-ガラクトシダーゼ活性を、o-Nitrophenyl-β-D-Galactopyranoside を基質として用いて測定
した。その結果、既知の β-ガラクトシダーゼに比べて低温域で高い活性を有する β-ガラクトシダーゼを
生産する 1 菌株が見出された。リボソーム RNA 遺伝子の解析より、本菌株は担子菌酵母 Trichosporon
属に属すると考えられた。
Title
Basidiomycetous yeast isolated from deep sea producing cold active beta-galactosidase
Authors (affiliation)
Saito, M.1), Nagahama, T.3) and Hamamoto, M.1, 2)
1) Graduate School of Agriculture, Meiji University
2) School of Agriculture, Meiji University
3) Extremobiosphere Research Center, Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology
(JAMSTEC)
___________________________________________________________________________________________
168
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
P-32
rpoB’遺伝子とそのアミノ酸配列による好塩性古細菌の系統関係
○峯岸 宏明1)、亀倉 正博 2)、伊藤 隆2)、水木 徹2)、越後 輝敦 3)、宇佐美 論1)
1)
東洋大学・バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター
好塩菌研究所
3)
理化学研究所・バイオリソースセンター
2)
【目的】
Halobacteriacea 科には好塩性古細菌 26 属 89 種が存在する。これら好塩性古細菌の中には 16S rRNA
遺伝子を複数個もつ種が多く存在し、なかでも Halosimplex carlsbadense は rrnA, rrnB および rrnC の 3 つ
の 16S rRNA 遺伝子をゲノム上に保持しており、これらの相同性はそれぞれ低く、各々の配列で系統樹
のトポロジーは異なる。
このような問題を解決すべく、16S rRNA 遺伝子に替わる分類指標として、Halobacteriacea 科におい
ても rpoB’遺伝子に基づく系統解析が行われている(Walsh. et. al., 2004;Enache. et al., 2007)。しかしな
がら、これら報告で用いられている rpoB’遺伝子の塩基配列はその内部配列(約 1,200 bp)であり、また、
各属種において使用するプライマーセットも異なり、増幅も困難であるなどのことから分類指標として
用いるには現状のままでは問題点が多い。
そこで本研究では、Halobacteriacea 科の 86 種を用いて、 rpoB’遺伝子の塩基配列による系統学的位置
と 16S rRNA 遺伝子による系統学的位置との比較検討を行った。
【方法】
本研究において作製したプライマーを用いて Halobacteriacea 科 86 種の rpoB’遺伝子の塩基配列を解
析した。解析した rpoB’遺伝子の塩基配列から近隣結合法により系統樹を作製し、そのアミノ酸配列と
16S rRNA 遺伝子との系統関係を比較した。
【結果・考察】
Halobacteriacea 科 86 種の rpoB’遺伝子の塩基配列を解析し近隣結合法により系統樹を作製した。
rpoB’遺伝子に基づく系統樹は 16S rRNA 遺伝子によるそれと類似していた。また、そのアミノ酸配列
と 16S rRNA 遺伝子の系統樹とも類似しており、新たな分類指標としての可能性を見いだせた。本発表
では、これら系統樹の比較により、16S rRNA 遺伝子を用いた Halobacteriacea 科の系統分類の問題点
を示したい。
【引用文献】
5) Walsh. et. al. (2004) Mol. Biol. Evol. 21, 2340-2351.
6) Enache. et. al. (2007) IJSEM 57, 2289-2295.
Phylogenetic relationships within the family Halobacteriaceae inferred from rpoB’ gene and protein
sequences.
Hiroaki Minegishi1), Masahiro Kamekura2), Takashi Itoh3), Toru Mizuki1), Akinobu Echigo1) and Ron
Usami1)
1)Bio-Nano Electronics Research Centre, Toyo University
2)Halophiles Research Institute
3)Japan Collection of Micro-organisms, RIKEN BioResource Center
___________________________________________________________________________________________
P-33
市販天然塩から分離された好酸性好塩性古細菌
峯岸 宏明1)、○水木 徹1)、越後 輝敦1)、長岡 修平2)、亀倉 正博3)、宇佐美 論 1),2)
1)
東洋大学,バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター
東洋大学,工学部応用化学科
好塩菌研究所
2)
3)
【目的】
169
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
現在までに Halobacteriacea 科の好塩性古細菌は 26 属 89 種が報告されている。既知の好塩性古細菌は
全て、中性または好アルカリ性で良好に生育し、増殖至適 pH が酸性である株の報告は皆無である。一
方、酸性土壌から好アルカリ性菌が、また非塩性土壌からも好塩性微生物が分離されていることから、
微生物の生育条件は分離源の環境に必ずしも依存しないといえる(Echigo, 2006)。近年、塩の販売自由
化により様々な種類の天日塩や岩塩を手軽に入手することが可能になった。これらの市販天然塩からも
多種多様な好塩性古細菌が分離できることが分かっている。
そこで本研究では、高塩濃度環境が乏しい日本国内においても簡単に入手できる市販天然塩を用いて、
好酸性の好塩性古細菌の分離を試みた。
【方法】
好酸性の好塩性古細菌分離用に調整した液体培地(pH 4.5)に市販天然塩を懸濁し、37℃で静置集積
培養した。一週間培養後、濁りの有無にかかわらず全ての培養液を固体培地に塗布し、さらに一週間培
養した。分離株は更に単離操作を繰り返し、最終分離株の 16S rRNA 遺伝子に基づく系統解析および増
殖至適 pH の確認を行った。
【結果・考察】
市販天然塩 237 種類を用いてスクリーニングを行った結果、27 種類の塩から 400 株以上の好酸性の
好塩性古細菌の候補株が取得できた。これら分離菌株の内 50 株の 16S rRNA 遺伝子の塩基配列を確認
した結果、既知種である Halobacterium noricense と 91.3%の相同性を示し(Gruber, 2004)、これら
分離菌株は Halobacteriacea 科の新規分類群であることが推定された。これら分離菌株から 16S rRNA
遺伝子に基づく系統樹およびコロニー形状、菌体形状などから4菌株を選出し、それらの増殖至適 pH
の確認を行った。その結果、これらの増殖 pH 範囲は pH 4.0~6.0 であり、増殖至適 pH はいずれの菌株
においても pH 4.5 付近であった。また、増殖 NaCl 濃度は 10-28%であり、これら分離菌株は好酸性の
好塩性古細菌であることが示唆された。南西オーストラリアの酸性塩湖をはじめ、酸性条件下の高塩濃
度環境にどのような好塩菌が生息しているのか興味深い。
【引用文献】
1) Gruber et. al. (2004) Extremophiles. 8, 431-439.
2) Echigo et. al. (2005) Saline Systems. 20, 1-8.
Isolation of acidphilic and halophilic archaea from natural salts.
Hiroaki Minegishi1), Toru Mizuki1), Akinobu Echigo1), Shuhei Nagaoka2), Masahiro Kamekura3) and
Ron Usami1), 2)
1) Bio-Nano Electronics Research Centre, Toyo University
2) Department of Applied Chemistry, Faculty of Engineering, Toyo University
3) Halophiles Research Institute
___________________________________________________________________________________________
P-34
三角形平板状の形態をもつ高度好塩性古細菌 Haloarcula japonica の
形態形成に関与する因子の探索
○川崎
乙美1)、高品
知典2)
1)
東洋大院・生命科学、2)東洋大・生命科学
【目的】高度好塩性古細菌 Haloarcula japonica は、1988 年に石川県能登半島の塩田土壌から世界で始
めて発見された菌で、三角形平板状という特殊な形態を有する。
生育可能塩濃度 2.6~4.3M、生育可能温度 24~45℃(最適温度 42~45℃)
、生育可能 pH6~8(最適
pH7.0~7.5)であり、高い Mg2+濃度(40mM 以上)存在下で生育する。特に Mg2+は、三角形平板
状の形態を維持するためにも必要である。
現在、この菌は、培養液に存在する Mg2+を除去することで S-レイヤーと呼ばれる細胞表層糖タンパ
ク質(cell surface glycoprotein:CSG)が遊離して、形状が球状化(スフェロプラスト化)することが
明らかになっている。従って、形態維持には CSG が関与していると考えられているが、確かな形態形
170
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
成機構については未だ解明されていない。
本研究では、Ha.japonica において形態変化にともなうタンパク質組成の差異を二次元電気泳動法に
よって解析することを目的とした。
【方法】Cho らが行なった Halobacterium salinarum の二次元電気泳動の方法を参考にして実験を行
なった1)。まず、Ha.japonica の培養液を遠心集菌し、Mg2+含有の Buffer、または非含有の Buffer で
洗浄し、三角形平板状を保った菌体およびスフェロプラスト状に形態変化させた菌体を作成した。それ
らを再度集菌し、各菌体と、さらに菌体を洗浄した各 Buffer を外液成分として取得した。それらを抽
出 Buffer に再溶解後、泳動サンプルとした。
一次元目に等電点電気泳動、二次元目に SDS-PAGE を行い、サンプルを比較した。
【結果・考察】二次元電気泳動後の CBB 染色において、三角形平板状形態の菌体とスフェロプラスト
化菌体を洗浄したことによって得られた外液では、いくつかのスポットに消失や濃淡の違いなどの差異
が認められた。
現在、Buffer 処理後の菌体サンプルの二次元電気泳動解析を進めている。また、差異の認められたス
ポットの TOF-MASS 解析を試みている。
【引用文献】
1)Improvement of the two-dimensional gel electrophoresis analysis for the proteome study of
Halobacterium salinarum :Chang-Won Cho, So-Hee Lee, Jiyeon Choi, Soo-Jin Park, Dong-Jin Ha,
Hyo-Jeong Kim, Chan-Wha Kim :Proteomics,(2003)3,2325-2329
Title: Screening for factors involved in the morphogenesis of triangular extremely halophilic
archaeon Haloarcula japonica
Authors (affiliation) :Otomi Kawasaki1), Tomonori Takashina2)
(1)Graduate School of Life Sciences,
Toyo University, 2)Faculty of Life Sciences, Toyo University)
___________________________________________________________________________________________
P-35
市販天日塩を用いた新奇好塩性微生物の探索
○ 長岡 修平1)、峯岸 宏明2)、水木
亀倉 正博4)、宇佐美 論1)、2)
徹2)、越後
輝敦2)、西澤
実奈子3)、
1)
東洋大学、工学部応用化学科
東洋大学、バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター
3)
東洋大学、工学研究科バイオ・応用化学専攻
4)
好塩菌研究所
2)
【目的】
高度好塩性微生物は主に塩湖や岩塩鉱山などに分布するが、日本では存在せず、塩の製造は 1972 年
から全面的にイオン交換膜を用いた膜濃縮せんごう方式に転換され、国外からの輸入も 2002 年の自由
化までは塩専売法により制限されていた。そのため、高度好塩性微生物の日本国内における分離は海岸
の塩が付着した砂より分離された高度好塩性古細菌 Natrialba asiatica、石川県能登半島の揚浜式塩田の
砂より分離された高度好塩性古細菌 Haloarcula japonica などの非常に限られた報告しかない。いずれも
自然界に存在する高塩濃度の環境から分離されている。そこで、日本国内でも販売されている輸入塩な
どを分離源とすることで、日本国内にいても好塩性微生物の分離、研究を容易にできることが期待でき
る。
そこで本研究では、市販天日塩を分離源として、様々な培地を用いて好塩性微生物の分離を行うこと
で、好塩性微生物のスクリーニングにおける市販天日塩の有用性を明確にすることを目的とする。
【実験方法】
各種培地に対し、245 種類の市販天日塩を分離源とし、37℃で集積培養した。その後限界希釈法によ
り単離操作を行い、16S または 26S rRNA 遺伝子の塩基配列に基づく系統解析と各種同定試験を行った。
【結果・考察】
分離源となる市販天日塩 245 種類のうち 12 種から各種培地上にコロニー形成能を有する微生物、約
171
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
70 菌株を分離した。これらの 16S または 26S rRNA 遺伝子の塩基配列に基づく系統解析を行った結果、
真核生物が 1 菌株、約 50 菌株が真正細菌、14 菌株が古細菌であった。
真核生物は 26S rRNA 遺伝子の塩基配列に基づく系統解析から Pichia triangular の近縁種であることが
推定された。
分離した真正細菌の大半が、中度好塩性細菌である Halovibrio 属と高い相同性を示した。また、それ
らのうちの真正細菌 4 菌株は 16S rRNA 遺伝子の塩基配列で相同性の違いが示されたが、それぞれの近
縁種と 95%以下の相同性を示し、新規分類群であることが推定された。
古細菌として分離した 16 菌株は Halococcus 属、Haloferax 属と高い相同性が確認された。
真正細菌として分離した菌株はすべて白いコロニーを形成し、古細菌として分離したものはいずれも
赤いコロニーの形成が観察された。顕微鏡観察では真正細菌はすべて桿菌であることが観察され、高度
好塩性古細菌の形状はいずれも、二つの球が連なった双球菌状であることが観察された。
市販天日塩から様々な好塩性微生物の分離できたことから、市販天日塩には好塩性微生物が多数トラ
ップされており、分離源として可能であることがわかった。
【参考文献】
Stan-Lotter, H., Pfaffenhumer, M., Legat, A., Hans-Jürgen, B., Radax, C,. & Gruber. C,. (2002). Halococcus
dombrowskii sp. nov., an archaeal isolate from a Permian alpine salt deposit. International Journal of Systematic
and Evolutionary Microbiology, 52, 1807-1814
Kamekura, M., Oesterhelt, D., Wallace, R., Anderson, P., & Kushner, D.J.(1988).
Lysis of Halobacteria in Bacto-Peptone by Bile Acids.
古細菌の生物学
古賀洋介/亀倉正博
東京大学出版会
Title Screening for novel halophilic microorganism used for solar salt
Authors (affiliation) ○Shuhei Nagaoka(Department of Applied Chemistry, Faculty of Engineering, Toyo
University), Hiroaki Minegishi(Bio-Nano Electronics Research Centre, Toyo University), Toru Mizuki
(Bio-Nano Electronics Research Centre, Toyo University), Akinobu Echigo(Bio-Nano Electronics Research
Centre, Toyo University), Minako Nishizawa(Major of Biotechnology & Applied chemistry Engineering research
course,Toyo University), Masahiro Kamekura(Halophiles Research Institute), Ron Usami(Department of
Applied Chemistry, Faculty of Engineering, Toyo University・Bio-Nano Electronics Research Centre, Toyo
University)
___________________________________________________________________________________________
P-36
放射線抵抗性細菌における組換え修復の分子メカニズム
○佐藤勝也 1), 2)、菊地正博 1)、大庭寛史 1), 2)、鳴海一成 1), 2)
1)
原子力機構・バイオ応用技術、2) 原子力機構・量子生命フロンティア
佐藤勝也:[email protected]
【目的】
放射線抵抗性細菌デイノコッカス・ラジオデュランスは、電離放射線、紫外線および薬剤に対して極
めて抵抗性である。この高い抵抗性は、当該菌が非常に効率的な DNA 修復能力を有していることに起
因していると考えられている[1]。特筆すべきは、ラジオデュランスが DNA 損傷の中でも最も致死的効
果の高い DNA2 本鎖切断(DSB)に対して、高い修復能力も持っている点である。DSB の修復は、主に、
組換え修復系を介した機構で修復される。大腸菌は、主要な RecBCD 経路と副次的な RecFOR 経路の
2 つの組換え修復機構を有している。一方、ラジオデュランスのゲノム DNA は recB および recC 遺伝
子を持たないが、recFOR 遺伝子群を持つことがゲノム情報解析から分かっている。このことから、ラ
ジオデュランスにおける DSB 修復機構には RecFOR 経路が重要な役割を担っていると考えられる。そ
こで、RecFOR 経路の主要タンパク質である RecF の DSB 修復機構における役割を明らかにするため、
ラジオデュランスの recF 遺伝子破壊株を作製し、ガンマ線に対する感受性を調べるとともに、切断さ
れたゲノム DNA の修復過程、照射前後での DNA 修復タンパク質の細胞内量変動を解析した。
172
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
【方法】
遺伝子破壊株は我々のグループが開発した薬剤遺伝子カセット挿入変異導入法によって作製した[2,
3]。ガンマ照射は、培養菌体を 10 mM リン酸緩衝液に再懸濁し、原子力機構高崎量子応用研究所の食
品照射コバルト照射棟 2 セルにて 0.1-5 kGy/h の線量率で行った。タンパク質の細胞内量変動はウエス
タンブロット法[4]、ゲノム DNA 断片の再構築過程はパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)[5]
を用いて解析した。
【結果および考察】
野生株に比べて、recF 遺伝子破壊株はガンマ線に対して高い感受性を示した。しかし、その感受性は
recA 遺伝子破壊株よりもわずかに低かった(図 1)。また、放射線照射後、recF 遺伝子破壊株では、野
生株と同様に RecA タンパク質の細胞内発現量が増加していたが、DNA 組換え修復に必要な RecA タン
パク質の活性化が起こらないことから、RecA タンパク質の活性化機構に RecF タンパク質が寄与して
いると考えられた。さらに、RecA タンパク質は DSB 修復を介さない DNA 相同組換えに関与している
が、RecF タンパク質はこれに関与していないこと、ラジオデュランスには RecF/RecA 非依存的な DNA
相同組換え機構が存在することが示唆された。
ラ ジ オ デ ュ ラ ン ス の DSB 修 復 機 構 に お い て 、 DNA polymerase I が 関 与 す る extended
synthesis-dependent strand annealing(ESDSA:伸長合成依存的な鎖対合)と呼ばれる DNA 断片再
構築機構が DNA 修復の初期に働き、その後組換え修復機構が働くことが示唆されている[6]。PFGE 解
析の結果、recF 遺伝破壊株において、ゲノム DNA 断片の再構築過程の遅延が観察されたものの、polA
遺伝子破壊株と比べると修復の遅延度は低かった。このことから、RecF タンパク質が ESDSA に関与
していないことが示唆された。しかし、polA 遺伝子破壊株が recF 遺伝子破壊株よりもガンマ線抵抗性
を示したこと(図 1)から、ESDSA 経路を介さなくても、RecF タンパク質を介した RecA タンパク質に
よる組換え修復機構がゆっくりと進行すると考えられた。
図 1.ガンマ線に対する
生存曲線
【引用文献】
[1] I. Narumi, Trends. Microbiol. 11, 422 (2003).
[2] T. Funayama, I. Narumi, M. Kikuchi, S. Kitayama, H. Watanabe and K. Yamamoto, Mutat. Res.
435, 151 (1999).
[3] H. Nishida and I. Narumi, Microbiology 148, 2911 (2002).
[4] K. Satoh, I. Narumi, M. Kikuchi, T. Yanagisawa, K. Yamamoto and H. Watanabe, J. Biochem.
131, 121 (2002).
[5] M. Kikuchi, I. Narumi, S. Kitayama, H. Watanabe, K. Yamamoto, FEMS Microbiol. Lett. 174,
151 (1999).
[6] K. Zahradka, D. Slade, A. Bailone, S. Sommer, D. Averbeck, M. Petranovic, A. B. Linder, M.
Radman, Nature 443, 517 (2006).
Molecular mechanism of recombination repair in the radioresistant bacterium
Katsuya Satoh 1), 2), Masahiro Kikuchi 1), Hirofumi Ohba 1), 2), Issay Narumi 1), 2)
173
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
Radiation-Applied Biology Division, JAEA, 2) Research Unit for Quantum Beam Life Science
Initiative, JAEA
___________________________________________________________________________________________
1)
P-37
放射線抵抗性細菌の遺伝子発現調節因子の機能的特性
○大庭寛史 1), 2)、佐藤勝也 1), 2)、菊地正博 1)、鳴海一成 1), 2)
1)
原子力機構・バイオ応用技術、2) 原子力機構・量子生命フロンティア
大庭寛史:[email protected]
【目的】
放射線抵抗性細菌デイノコッカス・ラジオデュランスの非常に効果的な DNA 二本鎖切断修復には、
放射線照射によって DNA 損傷が生じた後に誘導されるタンパク質が重要な役割を果たしている。ラジ
オデュランスの DNA 修復促進タンパク質 PprA[1]の放射線誘導には、ラジオデュランス特有の PprI タ
ンパク質が関与していると考えられている[2,3,4]。しかし、PprI タンパク質は膜結合蛋白質であり pprA
遺伝子プロモーターに直接的に結合しないことから、PprI タンパク質と pprA 遺伝子プロモーターとの
間には未知の調節タンパク質が介在する可能性が示唆された[5]。そこで我々は、プロテオーム解析を行
い、PprI タンパク質の制御下で働く新たな遺伝子発現調節因子 PprM を発見し、PprA タンパク質の発現
が PprM タンパク質によって制御されていることを明らかにした。本研究では、PprI 及び PprM タンパ
ク質の機能的特性を解析し、ラジオデュランスの放射線応答に関する分子メカニズムの解明を試みた。
【方法及び結果】
PprI タンパク質は、活性酸素による DNA 酸化損傷に対する防御機構の制御に関与していると考えら
れている[2]。そこで、PprM タンパク質が DNA 防御機構の制御にどのように関わっているかを調べるた
めに、各遺伝子破壊株について、活性酸素の除去に働くカタラーゼ及びスーパーオキシドジスムターゼ
(SOD)の活性を調べた。その結果、PprI タンパク質がカタラーゼ活性の制御に関与するのに対して、PprM
タンパク質は PprI 非依存的に SOD 活性の制御に関与している事を明らかにした。さらに、DNA の主た
る酸化損傷体である 8-ヒドロキシ-デオキシグアノシン(8-OHdG)のγ線照射前後での生成量を調べたと
ころ、6 kGy のγ線照射後では照射前に比べて 8-OHdG 量の著しい増加が認められた。しかし、カタラ
ーゼ及び SOD 活性の減少が見られた pprI 遺伝子破壊株及び pprM 遺伝子破壊株における 8-OHdG の生
成量は、照射前後ともに野生株と同程度であった。この知見と、pprI 遺伝子破壊株及び pprM 遺伝子破
壊株の放射線耐性が野生株に比べて著しく低いことを考え合わせると、DNA 損傷防御機構がラジオデ
ュランスの放射線超耐性に寄与する度合いは低く、PprM タンパク質の放射線応答機構における役割と
しては、DNA 修復促進タンパク質 PprA の遺伝子発現調節因子としての働きが重要であると考えられた。
さらに、PprM タンパク質の機能的特性を解析するために、PprM タンパク質を精製し、抗 PprM 抗体
を作成した。この抗体を用いて、細胞内での生理的特徴を解析したところ、PprM タンパク質はホモ二
量体及び他のタンパク質との複合体を形成していることを明らかにした。また、γ線照射後の PprM タ
ンパク質の細胞内変動を解析したところ、野生株では、γ線照射、非照射にかかわらず、PprM タンパ
ク質の細胞内発現量は一定であり、pprI 遺伝子破壊株においても発現量は一定であった。さらに、2次
元電気泳動展開したゲルのウエスタンブロット解析を行ったところ、野生株では pprI 遺伝子破壊株に比
べ、PprM タンパク質の等電点がアルカリ性側にシフトしていることが明らかになり、野生株では PprM
タンパク質が PprI タンパク質によって何らかの翻訳後修飾を受けていると考えられた。
【考察】
PprM タンパク質は cold shock protein (CSP)のホモログである。CSP は、大腸菌では低温や飢餓に対す
る応答に関与する因子として知られているが、今回の研究において、CSP ホモログが放射線応答に関わ
ることを初めて明らかにした。大腸菌は9つの CSP を持ち、また、ラジオデュランスと進化的に近縁種
の Thermus thermophilus は2つの CSP を持つが、PprM はラジオデュランスの唯一の CSP であり、大腸
菌 CspD と進化的に近い。
大腸菌の CSP と同様に、PprM には二つの RNA 結合モチーフが存在し、 -barrel
構造を持つと考えられる。しかし、PprM タンパク質は大腸菌 CspD と比べるとアミノ酸配列 C 末端が
11 残基長く、この領域がラジオデュランス特有の放射線応答メカニズムに関与していると考えられた。
174
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
【引用文献】
[1] Narumi, I., Satoh, K., Cui, S., Funayama, T., Kitayama, S., and Watanabe, H. (2004) PprA: a novel protein
from Deinococcus radiodurans that stimulates DNA ligation. Mol. Microbiol. 54: 278-285.
[2] Hua, Y., Narumi, I., Gao, G., Tian, B., Satoh, K., Kitayama, S., and Shen, B. (2003) PprI : a general switch
responsible for extreme radioresistance of Deinococcus radiodurans. Biochem. Biophys. Res. Commun. 306:
354-360.
[3] Gao, G., Le, D., Huang, L., Lu, H., Narumi, I., and Hua, Y. (2006) Internal promoter characterization and
expression of the Deinococcus radiodurans pprI-folP gene cluster. FEMS Microbiol. Lett. 257: 195-201.
[4] 佐藤勝也, 大庭寛史, 鳴海一成. (2006) 放射線抵抗性細菌の新規 DNA 修復タンパク質. 生物物理 46:
270-274.
[5] Ohba, H., Satoh, K., Yanagisawa, T., and Narumi, I. (2005) The radiation responsive promoter of the
Deinococcus radiodurans pprA gene. Gene 363: 133-141.
Functional characterization of a modulator for gene expression in Deinococcus radiodurans
Hirofumi Ohba1), 2), Katsuya Satoh1), 2), Masahiro Kikuchi1), and Issay Narumi1), 2).
1)
Radiation-Applied Biology Div., JAEA 2) Quantum Beam Life Sci. Initiative, JAEA
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P-38
Na+/H+対向輸送体をコードする枯草菌由来 mrp(sha)ABCDEFG 遺伝子産物
の複合体形成の検討
○小田切正人 1,3)、梶山裕介 1,2)、関口順一 2)、工藤俊章 4)、古園さおり 1)
1)理研・環境分子生物、2)信州大、3)横浜市大、4)長崎大
古園さおり:[email protected]
[目的] Na+/H+アンチポーターは、細菌から高等生物にいたるまで広く存在するイオン輸送性の膜タン
パク質であり、Na+と H+を交換輸送することにより細胞内の Na+及び pH 恒常性の維持に中心的な役割
を持つ。Na+/H+アンチポーターの 1 種である Mrp/Sha 輸送体は、好アルカリ菌 Bacillus halodurans の好
アルカリ性因子として初めて発見され、現在では枯草菌 B. subtilis を始めとして細菌種に広く存在する
ことが明らかとなっている。多くの Na+/H+ アンチポーターが 1 遺伝子にコードされるのに対し、
Mrp/Sha
輸送体は保存された 7 (6)遺伝子にコードされ、7 (6)種類のサブユニットから構成されるマルチコンポー
ネントの超分子複合体であると予想されているが、その分子構造は明らかにされておらず、各サブユニ
ットの役割およびイオン輸送機構の構造・機能相関についても不明な点が多い。本研究では、枯草菌由
来 mrp(=sha)ABCDEFG 遺伝子産物の複合体形成について検討した。
[方法] 枯草菌(B. subtilis)由来の各 sha 遺伝子欠損株 (∆shaA, B, C, D, E, F, or G)の aprE 部位に His タグを
付加した各 Sha タンパク質をコードする遺伝子(sha-his)を導入し、7 種類の∆sha/sha-his 相補株を作成し
175
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
た。∆sha/sha-his 相補株の NaCl 耐性は 1 M NaCl まで復帰し、Sha-His が正常に機能していることを確認
した。これらの相補株より調製した膜画分に対しアフィニティー精製を行い、抗 ShaE 抗体を用いたウ
エスタンブロットを行う Pull-down assay により、Sha-His と ShaE 間の相互作用を検討した。複合体形成
の検討は、Blue Native (BN)-PAGE による 1 次元展開と SDS-PAGE による 2 次元展開を行い、ウエスタ
ンブロットにより複合体に含まれる Sha-His を検出する方法、もしくは His タグによるアフィニティー
精製画分に含まれるタンパク質分子を TOF-MS により同定する方法により検討した。
[結果および考察] 7 種類の相補株の膜画分を用いた Pull-down assay の結果、すべての Sha-His タンパク
質は ShaE と共沈することを確認した。さらに、同じ膜画分について BN-PAGE による 1 次元展開、
SDS-PAGE よる 2 次元展開後、抗 His タグ抗体を用いたウエスタンブロットを行った結果、共通して分
子量約 410 kDa の位置に ShaA, B, C, D, E, F, G-His に由来する His タグ由来のシグナルを検出した。
また、
ShaD-His によるアフィニティー精製画分を SDS-PAGE で展開後、共精製される電気泳動上のバンドを
TOF-MS 解析した結果、ShaB 以外のサブユニットを全て同定することに成功した。以上の結果から、
shaABCDEFG 遺伝子産物は、実際に一つのイオン輸送複合体を形成することを明らかにした。BN-PAGE
において膜複合体に結合していると考えられる CBB 量を考慮すると、Sha 複合体の分子量はおよそ 228
kDa と見積もられた。この値は、各 Sha サブユニットが 1 分子ずつ複合体に含まれる場合の理論値(210
kDa)と良く一致した。
Sha 輸送体を構成する Sha タンパク質のうち、ShaA/D サブユニットは互いに相同であり、呼吸鎖複合
体 I(Nuo)などの H+輸送性トランスポーターの疎水性サブユニット(NuoL/M)にも相同性を持つ。膜貫通
領域に位置する酸性アミノ酸に注目した部位特異的変異解析により、機能に必須な酸性アミノ酸残基
(ShaA-E113, ShaD-E137)は相同領域の対応する位置に存在すること、また結晶構造が明らかにされた輸
送体において、基質結合部位周辺に構造の対称性が見られることが指摘されていることから、相同な
ShaA/D サブユニットが Na+/H+結合部位およびイオン輸送通路を形成している可能性が考えられた。
[参考文献]
1. J Bacteriol. 189: 7511-7514 (2007).
Complex formation by the mrp(sha)ABCDEFG gene products, which constitute a principle Na+/H+
antiporter in Bacillus subtilis.
Masato Otagiri (Environmental Molecular Biology Laboratory, RIKEN, Yokohama City University)
Yusuke Kajiyama (Environmental Molecular Biology Laboratory, RIKEN, Shinshu University)
Junichi Sekiguchi (Shinshu University)
Toshiaki Kudo (Nagasaki University)
Saori Kosono (Environmental Molecular Biology Laboratory, RIKEN)
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P-39
Aeropyrum pernix 由来 PCNA の多量体形成に関する研究
○内村真伊子、清成信一、石野良純
九州大・院、農学研究院
【 目的 】
in vivo において複製系 DNA ポリメラーゼは DNA スライディングクランプと呼ばれる補助因子と結
合することで連続した DNA 合成を達成している。真正細菌においては DNA ポリメラーゼ III のβサブ
ユニットがこれにあたり、ホモ二量体からなるリング状構造を二本鎖 DNA 上で形成する。真核生物で
は PCNA(Proliferating Cell Nuclear Antigen、増殖細胞核抗原)がホモ三量体のリング構造をとるこ
とで DNA スライディングクランプとして機能している。生物の第三のドメインであるアーキアでは真
核生物の PCNA と相同性を示すものが保存されている。ユリアーキオタに属するアーキアが有する
PCNA は真核生物と同様にホモ三量体のリング構造をとることが実験的に証明されているが、クレナー
キオタに属するアーキアでは複数種の PCNA 分子が存在することが近年の研究から明らかになってき
ている(1, 2)。
クレナーキオタに属する Aeropyrum pernix 由来の PCNA(ApePCNA1、2、3)はヘテロ三量体の
ほかに PCNA2 のみからなるホモ三量体構造や PCNA2、3 からなるヘテロ三量体構造をとることが我々
176
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
の研究から明らかとなったが(3)、結晶構造が決定されていないためにその詳細な相互作用様式は明らか
となっていない。以前、我々の研究グループが行った Pyrococcus furiosus 由来 PCNA(PfuPCNA)の
結晶構造解析から PCNA 分子間の結合は主に静電的な相互作用によるものであることが示唆されてお
り、近接する PCNA 分子の相互作用面に存在するアスパラギン酸をアラニンに置換した変異体
PfuPCNA は三量体を形成しないことが実験的にも証明されている(4)。そこで本研究では PfuPCNA の
多量体形成に関する知見をもとに、ApePCNA の多量体形成において重要な役割を果たしている負電荷
アミノ酸の同定を行うことにした。
【 方法 】
実験に用いた ApePCNA1、2、3 のクローニングおよび発現、精製は文献(3)に示す方法で行った。
ApePCNA 間の相互作用は BIACORE システムを用い、表面プラズモン共鳴(SPR)解析によって評価
を行った。
PfuPCNA と ApePCNA1、2、3 のアミノ酸配列を用いたマルチプルアライメントの結果から
ApePCNA 間の相互作用に関与していると考えられる酸性および塩基性アミノ酸を推定した(下図)
。
まず ApePCNA3-PCNA2 間の相互作用に Asp150 が関与していることを実験的に証明するために
ApePCNA3(D150A)変異体を作成した。同様に ApePCNA2-PCNA1 間の相互作用に Asp148 と Glu144
が関与していることを証明するために ApePCNA2(E144A)および ApePCNA2(E144A/D148A)変異体を
作成した。作成した変異体を各種の野生型 ApePCNA が固定化されている BIACORE センサーチップ
に対して添加し、結合相および解離相における挙動の変化を観察した。
また ApePCNA2 は ApePCNA1、3 とは異なり、単独でホモ三量体を形成することがわかっているた
め、二種の ApePCNA2 変異体がとる多量体の状態をゲルろ過により解析した。
【 結果と考察 】
1)ApePCNA1-2-3 のヘテロ三量体形成における負電荷アミノ酸の役割
これまでの研究結果から ApePCNA3 は ApePCNA2 のみと相互作用することがわかっているが(3)、
どちらの相互作用面の負電荷が PCNA 分子間の結合において重要であるかは明らかとなっていない。
本研究において野生型 ApePCNA2 に対する ApePCNA3(D150A)の結合能力が著しく低下したことから、
この二分子間の結合は上図に示すような位置関係をとり ApePCNA3 の Asp150 と ApePCNA2 の Arg84
および Arg110 間の静電的な相互作用が大きく寄与していることが推測される。これと同様に
ApePCNA1 は ApePCNA2 の み と 相 互 作 用 す る こ と が わ か っ て い る 。 野 生 型 ApePCNA1 と
ApePCNA2(E144A)および ApePCNA2(E144A/D148A)との相互作用を観察した結果、これら二種の
ApePCNA2 変異体の結合能力は低下していた。また、これら ApePCNA2 変異体の野生型 ApePCNA3
に対する結合様式に変化は見られなかったことからも ApePCNA のヘテロ三量体形成における分子間
相互作用は上図に示すような静電的相互作用のネットワークによるものであると考えられる。
2) ApePCNA2 のホモ三量体形成における負電荷アミノ酸の役割
ゲルろ過解析において PfuPCNA(D143A)と PfuPCNA(D143A/D147A)は単量体として存在すること
がわかっている(4)。本研究において ApePCNA2(E144A)は二量体、ApePCNA2(E144A/D148A)は単量
体を形成していることが示唆され、ApePCNA2 も PfuPCNA と同様に静電的な相互作用によって多量
体を形成していることが強く示唆された。しかしながら、これらのインターフェイスにおける静電的な
177
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
相互作用が多量体形成に及ぼす影響の強さは両 PCNA 間で異なるものと考えられる。
【 引用文献 】
(1) Daimon, K., Kawarabayasi, Y., Kikuchi, H., Sako, Y., Ishino, Y. (2002) J. Bacteriol. 184, 687-694.
(2) Dionne, I., Nookala, R.K., Jackson, S.P., Doherty, A.J., Bell, S.D. (2003) Mol. Cell 11, 275-282.
(3) Imamura, K., Fukunaga, K., Kawarabayasi, Y., Ishino, Y. (2007) Mol. Microbiol. 64, 308-318.
(4) Matsumiya, S., Ishino, S., Ishino, Y., Morikawa, K. (2003) Protein Sci. 12, 823-831.
Studies on the heterotrimeric structure of Aeropyrum pernix PCNA.
○Maiko Uchimura, Shinichi Kiyonari, Yoshizumi Ishino
(Depart. Genet. Resources Tech., Kyushu University)
___________________________________________________________________________________________
P-40
Burkholderia cepacia ST-200 株由来のコレステロールエステラーゼの諸性
質の解析
○道久則之
東洋大学 生命科学部
道久則之:[email protected]
【目的】
コレステロールエステラーゼ(COE)は、高脂血症や肝機能の検査のため、血清や血漿中の総コレス
テロールの定量にコレステロールオキシダーゼとともに使用されている臨床検査用酵素である。これま
でに、有機溶媒存在下で効率よくコレステロールを酸化修飾する有機溶媒耐性菌 Burkholderia cepacia
ST-200 株を単離し、報告している。ST-200 株の有機溶媒存在下におけるコレステロールの酸化修飾に
菌体外コレステロールオキシダーゼ(COX)が関与していたことから、ST-200 株の生産する COX を
精製し、諸性質を解析した結果、本酵素は市販の様々な微生物由来の COX よりも高い有機溶媒耐性お
よび界面活性剤耐性を示すことが分かっている。本研究では ST-200 株の培養上清に COX 活性以外に
COE 活性も見出されたことから、ST-200 株由来の COE を精製し、諸性質の解析を行った。
【方法】
LB 培地に ST-200 株を植菌し、30℃で培養した。遠心分離により培養上清を回収し、この培養上清
を 80%飽和硫安沈殿した。沈殿物を回収して透析した後、アセトン沈殿を行い、ゲルろ過および陰イオ
ン交換カラムを用いて精製した。精製した酵素標品を用いて、酵素活性に対する温度、pH、有機溶媒
の影響や基質特異性などを調べた。また、本酵素をコードする遺伝子をクローニングし、塩基配列を決
定した。
【結果・考察】
Burkholderia cepacia ST-200 株由来の COE を培養上清から精製した。精製した酵素の分子量は 37
kDa であった。本酵素は、pH 5.5 から 12 まで安定であり、pH 5.5 から 7.5 において高い活性を示した。
また、本酵素の pH 7.0 における最適温度は、45℃であった。市販の COE に比べて、本酵素は様々な
親水性有機溶媒存在下において安定であった。本酵素は長鎖のコレステロール脂肪酸エステルに対して
高い分解活性を示した。本酵素は、p-ニトロフェニルエステルに対しても分解活性を有しており、有機
溶媒中においてこのエステルに対する分解活性が向上した。本酵素をコードする遺伝子をクローニング
して塩基配列を決定した。本酵素は、365 アミノ酸残基からなり、成熟型酵素は、325 アミノ酸からな
ることが分かった。アミノ酸配列に対する相同性を調べた結果、本酵素は、B. cepacia DSM3959 のリ
パーゼと高い相同性を示した。
Title: Characterization of cholesterol esterase from Burkholderia cepacia ST-200
Authors (affiliation): Noriyuki Doukyu (Toyo University, Department of life science)
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
P-41
枯草菌のホメオスタシスに関わる K+輸送系機構の解明
○上田哲也、棚橋飛鳥、土屋貴弘、伊藤政博
東洋大学大学院 生命科学研究科
代表者氏名:上田哲也 [email protected]
【目的】
枯草菌細胞内で K+は膨圧の維持・細胞内 pH の制御・胞子形成などに関与することから、細胞内 K+
濃度を適切に維持することは重要である。枯草菌が有する K+取り込み系として CzcOD、TetA(L)、Ktr
システムである KtrAB、KtrCD が挙げられる。Ktr システムに関する Holtmann らの報告によると、
①低 K+濃度培地 SMM(0~30mM KCl)培地を使用した生育実験で、野生株は生育に 0.5mM KCl を必要
とし、ktrAB 欠損株は 2mM KCl、ktrCD 欠損株は 0.5mM KCl、ktrAB ktrCD 欠損株は 30mM KCl
を必要とした。②SMM(0.05mM KCl)におけるノーザンブロットの実験では ktrAB、ktrC は転写され
ていたが、ktrD は検出できないほど転写量が低かった。このことから低 K+濃度環境で働く主要な Ktr
システムは KtrAB であると考えられた[1]。
本研究で同様の培地を使用し生育実験を行ったところ、ktrCD 欠損株の方が ktrAB 欠損株よりも、
生育により多くの K+を必要とした。また Ktr システム以外の K+取り込み系である czcOD、tetA(L)に
ついても欠損株を構築し、低 K+濃度環境下で枯草菌の K+取り込み系がどのように機能するのかを調べ
た。
【方法】
枯草菌の K+取り込み系として知られる ktrAB、ktrCD、czcOD、tetA(L)の各欠損株、またこれらの
遺伝子を複数欠損させた多重欠損株を構築し、SMM(0~5mM KCl)にを添加したで 15 時間培養し濁度
を測定した。
【結果】
低 K+濃度培地で野生株は生育に 0.5mM KCl を必要とし、ktrAB 欠損株は 0.5mM KCl、ktrCD 欠
損株と ktrAB ktrCD 欠損株は 1mM KCl を必要とした。czcOD 欠損株と tetA(L)欠損株は、野生株と同
様の生育を示した。Ktr システムを欠いたとき、 czcOD 欠損株と tetA(L)欠損株は生育に>1mM KCl
を必要とした。
【考察】
SMM(0~5mM KCl)培地での生育実験より、ktrCD 欠損株の生育には ktrAB 欠損株の生育よりも多く
の K+を必要としたことから、低 K+濃度環境下で働く Ktr システムは KtrCD であることが推察された。
また Ktr システム以外の K+取り込み系である czcOD、tetA(L)を欠損させても、野生株と変わらない生
育を示したことから、低 K+濃度環境下で働く主要な K+取り込み系は、Ktr システムであり、Ktr シス
テムを欠いたときに CzcOD と TetA(L)がカバーすることが推察された。
現在 ktrAB、ktrCD、czcOD、tetA(L)を染色体上に戻すプラスミドを構築している。それらのプラス
ミドを ktrAB、ktrCD、czcOD、tetA(L)欠損株や多重欠損株に戻してやることで、各欠損株の生育が相
補されるのかを調べている。詳細はポスターで発表する予定である。
【引用文献】
[ 1 ] Gudrun Holtmann., Evert P. Bakker., Nobuyuki Uozumi, Erhard Bremer (2003)
J.Bacteriol.185, 1289–1298
Tiltle : Analysis of K+ transport system that related with homeostasis in Bacillus subtilis.
Authors(affiliation) : Tetsuya Ueda, Asuka Tanahashi, Takahiro Tsutiya, and Masahiro Ito
(Graduate School of Life Sciences, Toyo University)
___________________________________________________________________________________________
179
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
P-42
Pyrococcus furiosus の DNA 組換え関連タンパク質 Rad54 の生化学的解析
○石野園子1)2)、小森加代子2)、品川日出夫1)、石野良純2)3)
1)CREST,
JST、2)生物分子工学研究所、3)九大院・農・遺資工、
石野園子:[email protected]
目的
ゲノム情報の安定な維持に働く主要なDNA修復経路の一つとして、DNA相同組換えが機能しているこ
とが知られている。DNA相同組換え過程では、単鎖DNA領域にRadA/RecA/Rad51が結合してヌクレオ
プロテインフィラメントを形成し、それが相同二重鎖DNAを検索して対合しDNA鎖の交換反応をおこ
ない、形成された組換え中間体を解離して、二組の二本鎖DNAに戻す。この過程の詳細な分子機構を解
明するために、我々はPyrococus furiosusをモデル生物として、DNA組換え関連蛋白質のin vitro にお
ける生化学的解析を行っている。
方法
Archaeaには、DNA相同組換えに関わるタンパク質として真核生物のホモログが存在することが知られ
ている。鎖交換反応を行うRad51ホモログのRadA,RadBおよび一本鎖DNA結合タンパク質のRPAはP.
furiosus由来のタンパク質について、すでに解析されている(1-3)。そこで、真核生物において鎖交換反
応のメディエーターとして働くことが提唱されているRad54に注目し、P. furiosus由来のRad54ホモロ
グをコードする遺伝子をクローニングして、大腸菌を用いて高純度のリコンビナントタンパク質を精製
した。得られたタンパク質を用いて、DNA結合活性、DNA依存性のATP加水分解活性、in vitroにおけ
る組換え反応について解析を行い、関連するタンパク質との相互作用を調べた。また、昨年ヒト由来
Rad54がDNA相同組換えの後期過程に関わるという報告がなされたので、P. furiosusのRad54が同様の
機能を有することを確かめるために、DNA結合活性および分岐点移動活性を調べた。
結果
P. furiosus 由来 Rad54 タンパク質を、His タグを付加したリコンビナントタンパク質として大腸菌内で合
成し、熱処理に続いて3種のカラムクロマトグラフィー精製により、高純度の標品を得た。Rad54 タン
パク質はゲルシフトアッセイにより、二本鎖 DNA に対して顕著な結合活性を有することがわかった。
またその ATP 加水分解活性も二本鎖 DNA の存在下で促進されることがわかったが、ホリディ構造やそ
の他の分岐構造をもつ DNA に対する優先性は顕著には見られなかった。RadA の鎖交換反応に対しては
RPA 存在下で影響を及ぼすことがわかった。免疫沈降実験の結果、Rad54 は RadA,RadB,RPA,と共に沈
降し、さらにホリディ構造 DNA 切断酵素 Hjc(4)との共沈降も見られ、両者の相互作用が示唆された。
考察
種々の生化学的解析の結果より、P. furiosus 由来 Rad54 は機能的にも真核生物 Rad54 のホモログである
ことが推察される。また Hjc は DNA 相同組換えの後期過程で働くタンパク質であり、免疫沈降実験で
Hjc との相互作用が検出されたことは、Rad54 が後期過程でも働いている可能性を示唆している。ヒト
由来 Rad54 がホリディ構造 DNA の分岐点移動活性を有することが報告されているので、P. furiosus Rad54
による分岐点移動活性の測定は大変興味深い実験であるが、基質 DNA の構造上の制約があり、至適温
度で測定を行うことが難しいために、多くの反応条件検討が必要とされる。
引用文献
1. Komori, K., Miyata, T., DiRuggiero, J., Holley-Shanks, R., Hayashi, I., Cann, I., Mayanagi, K.,
Shinagawa, H., and Ishino, Y. (2000) Both RadA and RadB are involved in homologous
recombination in Pyrococcus furiosus. J. Biol. Chem. 275, 33782-33790.
2. Komori, K., Miyata, T., Daiyasu, H., Toh, H., Shinagawa, H., and Ishino, Y. (2000) Domain
analysis of an archaeal RadA protein for the strand exchange activity. J. Biol. Chem. 275,
33791-33797.
3. Komori, K., and Ishino, Y. (2001) Replication protein A from Pyrococcus furiosus. J. Biol. Chem.
276, 25654-25660.
180
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
4. Komori, K., Sakae, S., Shinagawa, H., Morikawa, K., and Ishino, Y. (1999) A novel Holliday
junction resolvase: functional similarity to E. coli RuvC provides evidence for conserved
mechanism of homologous recombination in Bacteria, Eukarya, and Archaea. Proc. Natl. Acad.
Sci. USA 96, 8873-8878.
Title
Biochemical analysis of DNA recombination protein Rad54 from Pyrococcus furiosus.
Authors (affiliation)
Sonoko Ishino1)2), Kayoko Komori2), Hideo Shinagawa1), Yoshizumi Ishino2)3)
(1)CREST JST, 2)Biomolecular Engineering Research Institute, 3)Kyushu Univ.)
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P-43
Sulfolobus tokodaii str.7 由来 Alcohol dehydrogenase (ST0053)の機能解析
○矢内久陽 1)、前田華奈 1)、土居克実 2)、大島敏久 2)
1)九州大学・大学院生物資源環境科学府、2)九州大学・大学院農学研究院
Alcohol dehydrogenase(ADH)は、ほとんどすべての生物種が保持している酵素であり、幅広い基
質特異性を持つことで知られる。これらの ADH のうち、NAD(P)(H)を補酵素とするものは、主に
short-chain zinc-independent ADHs (約 250 残基)、medium-chain zinc-dependent ADHs(約 350 残基)、
long-chain iron-activated ADHs(約 385 残基)の3つに分類することができる 1)。本酵素の基質であ
るアルコールやアルデヒド、ケトンは、医薬品や農薬合成の構成要素(ビルディングブロック)として
重要である 2)。ADH の利用は、有機合成法では困難な、光学純度の高いアルコールやアルデヒドの生
産を可能にする。特に、好熱菌由来の ADH は、耐熱・耐有機溶媒・耐酸塩基性といった性質を有する
ため、安定性の高いバイオ電池素子や気体状態のアルコールを検出可能なセンサー素子の開発につなが
ると期待されている 3)。本研究は、好酸性超好熱アーキアである Sulfolobus tokodaii str.7 ゲノム上に
ある 10 個の機能未知 ADH 遺伝子の詳細な機能を明らかにし、上記のような産業利用可能な資源を提
供することを目的としている。
今回我々は、Sulfolobus tokodaii str.7 の ADH のうち、ST0053(344 残基、分子質量 37.5 kDa)を
大腸菌内で大量発現させて精製を行い、詳細な機能の解析を行った。まず、大腸菌内で発現させた組換
え ST0053 を、疎水性の Butyl-Sepharose カラムで精製した。得られた ST0053 は、SDS-PAGE で 37.5
kDa の位置に単一のバンドを示し、アミノ酸配列から推定された分子量と一致した。また、ゲルろ過の
結果(1.33×102 kDa)から、ST0053 は四量体構造をとることが示唆された。この四量体構造は、ST0053
と 同 様 の 超 好 熱 ア ー キ ア 由 来 medium-chain ADH で あ る Sulfolobus solfataricus DSM 1617
ADH(SsADH)、 Sulfolobus sp. strain RC3 ADH(RC3ADH)、Aeropyrum pernix K1 ADH(ApADH)
と同様であった 1,4)。次に、生化学的な機能解析を行った。まず、ST0053 の最適反応 pH を求めたとこ
ろ、酸化反応では pH10.45、還元反応では pH7.0 であった。酸化反応について ST0053 は、中性付近
の pH7.5 においても最大活性の 40%近くが得られたのに対し、ApADH では中性付近で最大活性の 10%
以下であった。一方、還元反応については、pH7 より塩基性側では急激に低下し(pH7.5 で最大活性の
50%程度)、有効な pH 範囲は apADH のそれよりも狭かった 1)。次に、ST0053 の基質特異性を検した
ところ、酸化反応においては、1級アルコールを基質とした場合が、2級アルコールを基質とした場合
よりも相対的に高い活性を示した。検した基質のうち、環状鎖を含む Benzylalcohol を用いた活性が最
大であった。これらの特徴は、SsADH と類似していた 4)。還元反応では、ケトンよりアルデヒドを基
質とした場合が相対的に高い活性を示し、中でも Benzylaldehyde が最大であった。この特性は、apADH、
SsADH と同様の特徴であった 1,4)。さらに、金属塩や阻害剤が ST0053 活性に与える影響を調べたとこ
ろ、ZnSO4、ZnCl2、CoSO4 による活性の上昇が確認された。一方、HgCl2 やヨード酢酸は、活性を低
下させた。興味深いことに、ST0053 はヨード酢酸で不活性化されたのに対し、SsADH は Cys-38 のカ
ルボキシメチル化によって著しく活性化される 4)という点で大きな差異が認められる。
本研究結果から ST0053 は、既報の ADH と同様、幅広い基質を認識することが示された。このこと
から ST0053 は、様々な種類のアルコール、アルデヒド、ケトンの合成に利用できることが判った。し
かしながら、ST0053 を産業利用するためには、生化学的機能の詳細な解明とともに、物理化学的な情
181
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
報(pH 安定性、熱安定性)が必要である。現在これらについても研究を進めている。
引用文献:
1. Hidehiko Hirakawa et al., J. Biosci. Bioeng. 97,202(2004)
2. Werner Hummel et al., Adv.Biochem.Eng.Biotechnol. 58,145(1997)
3. Archana H. Trivedi et al., Biotechnol.Prog. 22,454(2006)
4. Carlo A. Raia et al., Meth.Enzymol. 331,176(2001)
Title:
Purification and characterization of alcohol dehydrogenase (ST0053) from Sulfolobus tokodaii str.7
Authors (affiliation):
Hisaaki Yanai1), Kana Maeda1), Katsumi Doi2) and Toshihisa Ohshima2)
( 1)Graduate School of Bioresource and Bioenvironmental Sciences, 2)Kyushu University, Faculty of
Agriculture, Kyushu University )
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P-44
Cyanidioschyzon merolae フェレドキシンに関する研究
○山岡麻美1)、小澤由希子2)、中島
吉田大和2)、黒岩常祥2)
薫2)、原
匡孝1)、今井竹夫2)、漆山秋雄3)、
1)
立教大学理学部生命理学科,2)立教大学大学院理学研究科生命理学専攻
立教大学大学院理学研究科化学専攻
3)
山岡麻美:[email protected]
Cyanidioschyzon merolae(シゾン)は単細胞紅藻の一種であり、現在知られている生物の中では、
最も原始的な最小真核生物であると考えられている。シゾンは、硫酸酸性(pH ~1.5)の高温環境(~42°C)
を好む生物であり、直径は 1.5~2.0 μm である。
培養したシゾンからフェレドキシン(Fd)を精製したところ、Fd は一種だけ得られ、アミノ酸配列
決定を行ったところ、葉緑体由来のフェレドキシンであることが判明した。
ゲノム情報をもとにシゾン Fd のクローニングを行い、クローニングした大腸菌からの Fd の精製を
試みた。そして精製した Fd をもちいて、そのフェレドキシンの鉄-イオウクラスター構造および耐熱、
耐酸性に関する性質について調べた。対照としてはホウレンソウ Fd をもちいた。
シゾン Fd とホウレンソウ Fd の可視紫外線吸収スペクトルおよび FNR を介したシトクロムc の還
元速度の比較から、シゾン Fd はホウレンソウ Fd と比べて耐熱性に優れていることが明らかになった。
また、pH 安定性に関しても、シゾン Fd はホウレンソウ Fd よりも低 pH・高 pH で共に安定性が高か
った。さらに、NaCl の安定性に対する影響は、シゾン Fd もホウレンソウ Fd も共に、NaCl 濃度が高
い条件では安定性が増大することが分かった。鉄-イオウクラスターに関する情報は低温共鳴ラマンラ
マンスペクトルから得られ、ホウレンソウ Fd と同じ型の 2 鉄型鉄-イオウクラスターを含むことが明
らかになった。
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P-45
深海由来の好圧性及びシロウリガイに共生する微生物のイソプロピルリンゴ
酸脱水素酵素の環境適応機構解析
○輿石武1、2)、佐藤孝子2)、笠原良太3)、為我井秀行3)、今井竹夫1)、加藤千明1、2)
1)立教大学・理学部、2)海洋研究開発機構・極限環境、3)
日本大学・文理学部
輿石武: [email protected]
目的
深海に適応して生息している微生物は、好圧性など生育環境を反映した特性を示していることが既に
182
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
知られている。例えば、地球の深海底最深部である、マリアナ海溝チャレンジャー海淵(深度 10,898 m)
の堆積物から分離された「絶対好圧性微生物」Shewanella benthica DB21MT-2 株は、現場圧力に近い
100 MPa での生育が可能な反面、大気圧下から 50 MPa まではほとんど生育がみられず、生育至適圧
力が 10℃において 70 MPa であるという特殊な生育特性を示した。また、近年、我々は自由生活をす
る微生物ばかりでなく、シロウリガイ(Calyptogena okutanii)などの高等生物の共生細菌として深海に
生息するイオウ酸化細菌のゲノムも解明し、深度だけでなく、様々な環境に生息する微生物の蛋白質の
圧力適応機構を解明する情報が得られつつある。そこで、モデル蛋白質として、熱安定性についても情
報の多いイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素を選び、その環境適応機構解析を、共生菌のような培養系の
確立されていない微生物においても検討する。
方法
まず、絶対好圧性微生物 S. benthica DB21MT-2 と圧力感受性微生物 S. oneidensis MR-1 由来の必須
蛋白質であるイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素(IPMDH)の遺伝子 LeuB を発現ベクターにクローニ
ング、大腸菌での発現後、Ni カラムにより精製された His-tag 付き IPMDH の活性から、圧力適応解
析を試みた。また、深度別シロウリガイのエラ組織から共生細菌の DNA を抽出し、ゲノム情報からプ
ライマーをデザインし、PCR により LeuB のクローニングを行った。
結果
MT-2 株と MR-1 株の IPMDH の推定アミノ酸配列の相同性は約 85%と高かった。また、至適温度活
性のピークは両方とも同じ 65℃であったが、MR-1 は MT-2 に比べ同じ温度条件下で高い活性率を示し
た。さらに、共生細菌の推定アミノ酸配列の相同性も、深度にかかわらず、高いことが明らかとなった。
現在蛋白質精製を試みているところである。また、好圧性および共生細菌の推定されたアミノ酸配列を
用い、WEB サービスの SWISS-MODE によりタンパク質の立体構造を推定し、PyMOL プログラムに
より描画した。
考察
MT-2 株と MR-1 株のアミノ酸配列の間で、主に C 末端側に相違が多く検出された。また描画された
立体構造で見ると、N 末端から 339~344 アミノ酸残基で形成されるターン構造近辺の立体構造に違い
があることが示され(図1の楕円で示された部分)、これが、圧力による活性化体積変化(ΔV)に影響
し、加圧下での酵素活性に違いをもたらした可能性が示唆された。これに比べ、生息深度の違う各シロ
ウリガイ共生細菌においては、アミノ酸配列の違いは散在しており、立体構造で見ても、それぞれの間
に大きな違いは認められなかった。
図 1. E. coli, MR-1 株, DSS12 株, MT-2 株 の予測された立体構造図
参考文献
1) Kato, C, Li, L, Nogi, Y, Nakamura, Y, Tamaoka, J, Horikoshi, K (1998) Appl. Environ. Microbiol.
64, 1510-1513.
2) Fujita, M, Tamegai, H, Eguchi, T, Kakinuma, K (2001) Biosci. Biotechnol. Biochem. 65,
2695-2700.
3) Graczer, E, Varga, A, Hajdu, I, Melnik, B, Szilagyi, A, Semisotnov, G, Zavodszky P, Vas, M (2007)
Biochem. 46, 11536-11549.
183
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
4) dePoorter, LMI, Suzaki, Y, Sato, T, Tamegai, H, Kato, C (2004) Mar. Biotechnol. 6, S190-S194.
The mechanism for high pressure adaptation of the isopropyl malatedehydrogenase from deep-sea
piezophilic bacteria and symbiotic chemoautotrogh of Calyptogena sp.
○Takeshi Koshiishi1, 2, Takako Sato2, Ryota Kasahara3, Hideyuki Tamegai3, Takeo Imai1 and
Chiaki Kato1, 2
1 Department of Life Sciences, Rikkyo University, 2Extremobiospheres Research Center, Japan
Chemistry,
Agency for Marine-Earth Science and Technology (JAMSTEC), 3Department of
College of Humanities and Sciences, Nihon University.
___________________________________________________________________________________________
P-46
シマイシロウリガイの共生微生物のゲノム解析から見えた代謝系の特徴
桑原宏和 1)、吉田尊雄 1)、高木善弘 1)、島村繁 1)、西真郎 1)、原田麻衣子 1)、松山和世 1)、瀧下清貴 1)、
河戸勝 1)、植松勝之 1)、藤原義弘 1)、佐藤孝子 1)、◯加藤千明 1)、北川正成 2)、加藤郁之進 2)、丸山正 1)
1)独立行政法人海洋研究開発機構、2)タカラバイオ株式会社、ドラゴンジェノミクスセンター
加藤千明:[email protected]
2004 年 6 月に実施された深海調査研究において、無人探査機「ハイパードルフィン」によって相模湾
初島沖水深 1.157mの海底にある冷水湧出域(北緯 35°0.069’ 、東経 139°13.444’)の周辺のシロウリ
ガイ群集より生きたシマイシロウリガイを採取し、共生微生物のゲノム解析を行った。得られたシマイ
シロウリガイのエラの細胞を破砕後 DNA 分解酵素を加え、宿主染色体 DNA を分解させ、共生微生物を
分離した。その後、この分離された共生微生物からゲノム DNA を取り出し、ゲノムライブラリーを作
成しゲノム塩基配列解析を行った。得られたゲノム塩基配列情報から遺伝子の機能解析予測を行い、各
遺伝子の情報について整理し、エネルギーの生成や輸送の機構を示した代謝マップを作成した
(Kuwahara et al., 2007, Curr. Biol., 17, 881-886)。
その結果、シマイシロウリガイの共生微生物の全ゲノムの大きさは 1,022,154 塩基対からなり、同ゲ
ノムに含まれている 939 個の遺伝子の機能解析を行った結果、本共生微生物が持つ代謝系が推定された
(図 1)。
本共生微生物の代謝系の特徴を以下にまとめた。
(1) 宿主細胞により取り込まれた硫化水素を基質とするイオウ酸化代謝経路(図 1 中の黄色く囲まれた
部分)によりエネルギー物質の合成を行っている。
(2) 独立栄養的に二酸化炭素から有機物を生産する炭酸固定回路(図 1 中の水色の丸の部分 「カルビ
ン・ベンソン回路」)を持つ。
(3) ほぼ全てのアミノ酸の生合成系などを完備しており、上記(1)(2)で述べたエネルギー物質・有機物な
どを用いて、アミノ酸、補酵素等の栄養物質を生合成できる。
(4) しかしながら、こうして合成された栄養物質などを宿主細胞に輸送するシステムを欠いている。
(5) そのゲノムの大きさが、熱水噴出孔周辺に生息するガラパゴスシロウリガイの共生微生物のゲノム
よりも小さく、宿主生物との共生進化の結果、かなり縮小し現在までに調べられた独立栄養微生物
中最小である。その結果、通常の微生物にとって生育に必須ないくつかの重要な遺伝子(細胞分裂
蛋白質、外膜蛋白質等の遺伝子など)までもが欠損している。
これらの結果、共生微生物中に蓄積された栄養物質などは同微生物が宿主細胞内で消化される事で宿主
細胞に取り込まれ、さらに分解されていることが推定された。これらのことは、あたかも共生微生物が
家畜化されて宿主細胞により管理されていること、そして細胞分裂システムを持たない共生微生物の増
殖には、未知のメカニズムが関与していることなどが考えられる(電子顕微鏡写真での細胞分裂像、図
2)。
184
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
図 1.ゲノムから推定された共生微生物の代謝マップ(抜粋)
(1)黄色で示された部分は、宿主により取り込まれた硫化水素を酸化してエネルギーを取り出す「イ
オウ酸化代謝経路」を示している。
(2)水色の丸の部分(カルビン・ベンソン回路)は、独立栄養的に二酸化炭素から有機物炭化水素
を合成する「炭酸固定回路」を示している。
図 2.宿主細胞(エラ細胞)内の共生微生物の電子顕微鏡写真。矢印は共生微生物が分裂している様子
を示す。
Title: Characterization of the metabolic systems from the genome analysis of symbiotic bacteria in
Calyptogena okutanii.
Authors (affiliation): H. Kuwahara, T. Yoshida, Y. Takaki, S. Shimamura, S. Nishi, M. Harada, K.
Matsuyama, K. Takishita, M. Kawato, K. Uematsu, Y. Fujiwara, T. Sato, C. Kato and T. Maruyama
(JAMSTEC); M. Kitagawa and I. Kato (Takara Co.)
___________________________________________________________________________________________
P-47
100,000g での大腸菌の増殖
○下重裕一 1),2)、出口茂 1)、津留美紀子 1)、宇佐美論 2)、掘越弘毅 1)
185
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
海洋研究開発機構 1)、東洋大学大学院 2)
下重裕一:[email protected]
【目的】微生物の増殖は、pH、塩濃度、有機溶媒濃度などの化学刺激のみならず、温度、圧力などの
物理刺激によっても、様々な影響を受ける。これらの刺激に対する微生物の耐性は、その多様性と密接
に関連することから、これまでに多くの研究がなされている。最近、スペースシャトル等を用いた実験
によって、重力の変化もまた、微生物の増殖に影響を与えることが分かってきた。しかしながら、微生
物の重力に対する耐性、換言すると、どの程度高い重力まで微生物は増殖できうるのか、に関する知見
は全くない。本研究では、モデル生物として大腸菌 K-12 W3110 株を用い、超高重力下での微生物の挙
動に関する基礎的検討を行った。
【方法】Luria-Bertani(LB)培地を用いて大腸菌を対数増殖期中期(A600 約 0.7)まで振とう培養し
た。本菌液を LB 培地に 1%植菌(約 2.5 × 106 cells/mL)し、37 ºC で遠心機あるいは超遠心機を用い
て 100,000g までの重力下で培養した。1g での対照実験は、静置培養にて行った。培養後、高重力条件
下での生育を濁度(A600)、コロニー形成能(CFU)および細胞数(Cell Count)の測定を行って調べ
た。また、高重力下における生育曲線の対数増殖期から比増殖速度を算定し、増殖速度を解析した。さ
らに、大腸菌の増殖機構を調べるために、大腸菌の長さの測定および Total DNA 量を測定した。各重
力条件下の Total DNA 量は、DNeasy のプロトコールに従い染色体 DNA を抽出し、分光光度計を用い
て UV 260 nm によって定量した。
【結果】Fig. 1 に 50,000g での培養結果を示す。培養後 12 時間で、遠心管底部にペレットの形成が確
認され(Fig. 1b)、その後培養時間とともに大きくなったことから(Fig. 1c, 1d)、50,000g の高重力下
で、大腸菌が増殖することが分かった。さらに、100,000g においても大腸菌が増殖することを、同様
のペレット形成により確認した(Fig. 1e)。
Fig. 2 に各重力条件下における大腸菌の生育曲線を示す。7,500g での培養では、顕著な重力効果は
見られず、得られた生育曲線は 1g でのそれと一致した。ところが、培養重力 15,000g 以上では、重力
の増加と共に増殖が遅れた。増殖曲線より倍加時間を算出したところ、1g、 7,500g では、約 1 時間で
あった倍加時間が、20,000g では 3 時間に、50,000g では 5 時間にまで増加した(Fig. 3)。しかしなが
ら、いずれの重力下でも、最終的な菌体濃度は、培養重力に関わらず、ほぼ一定であった。また顕著な
ラグタイムは、50,000g での培養においても認められなかった。
透過型電子顕微鏡観察では、50,000g で 24 時間培養した大腸菌細胞と 1g で培養した大腸菌細胞との
間に、顕著な差異は認められなかった。50,000g で培養した大腸菌では、伸長した菌体が見られたもの
の(Fig. 4)、その割合は全細胞の 3%程度に過ぎなかったことから、高重力が細胞形態に与える影響は
無視できると考えられる。
【考察】大腸菌が重力に対して高い耐性を示し、
100,000g という極めて高い重力の下でも増殖する
ことが分かった。現時点では、重力が大腸菌の増殖
に影響する機構の詳細は全く不明である。高重力下
では、細胞内部での生体分子の密度差による濃度勾
配の形成や、ペレット内で細胞が高密度に充填され
ることによる力学刺激など、高重力環境に固有の現
象が発現すると期待される。今後、様々な微生物の
高重力条件下における生育をより詳細に比較検討す
るとともに、分子生物学的手法なども用いて高重力
下での微生物の挙動を解明する予定である。
186
Fig. 1. 高重力下での大腸菌の増殖.(a)植菌
直 後 、 (b)50,000g 、 12 時 間 培 養 後 、
(c)50,000g、24 時間培養後、(d)50,000g、48
時間培養後、(e)100,000g、48 時間培養後.
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
Fig. 2. 高重力下での大腸菌の増殖曲線
別冊
Fig. 3. 高重力下での大腸菌の倍加時間の変化
Fig. 4. 50,000g で 24 時間培養した後の大
腸菌の透過型電子顕微鏡像.スケールバー
は 5 µm.
Growth of Escherichia coli at 100,000g
Hirokazu Shimoshige, Shigeru Deguchi, Mikiko Tsudome, Ron Usami, and Koki Horikoshi
(Extremobiosphere Research Center, Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology
(JAMSTEC), and Department of Bio-Nano Science Fusion, Graduate School of Interdisciplinary
New Science, Toyo University)
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P-48
有機溶媒耐性 LST-03 リパーゼの異種宿主での過剰発現と分子シャペロンを用
いた活性化
○井上相祐、荻野博康
大阪府立大学大学院工学研究科
荻野博康:[email protected]
【目的】
リパーゼは難水溶性の脂質を基質とし、有機溶媒存在下ではエステル合成・交換反応を触媒する為、
有機溶媒存在下で用いられることが多い1)。有機溶媒耐性微生物 Pseudomonas aeruginosa LST-03 株2)
187
Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
は有機溶媒に安定なリパーゼ(LST-03 リパーゼ)を分泌する3,4)。また、LST-03 リパーゼの遺伝子の
下流にはリパーゼ特異的分子シャペロン遺伝子が存在し、LST-03 リパーゼの活性発現には本分子シャペ
ロンが必要である5)。さらに、LST-03 リパーゼとリパーゼ特異的分子シャペロンを T7 プロモーターの
支配下に配置し、発現を誘導すると、LST-03 リパーゼは多量に過剰発現され、封入体を形成し、分子シ
ャペロンは細胞内に可溶性タンパク質として存在することが見出されている。本研究では、不溶性の封
入体となった LST-03 リパーゼの可溶化やリフォールディングとリパーゼ特異的分子シャペロンによる
活性化の条件について検討した。特に、分子シャペロンによる LST-03 リパーゼの活性化に及ぼすカル
シウムイオンの影響を検討した。
【方法】
宿主には、Escherichia coli BL21(DE3)株を用いた。プラスミドは T7 プロモーターの下流にシグナル配
列を切除した LST-03 リパーゼ(d25Lip9)遺伝子とリパーゼ特異的分子シャペロン(Lif9)遺伝子を配
した pE_d25L9_F9、T7 プロモーターの下流に N 末端の 58 アミノ酸を除き、C 末端に 6 つの His 残基を
付与した分子シャペロン(d58Lif9His)遺伝子を配した pE_d58F9His を用いた。
【結果と考察】
LST-03 リパーゼは、pE_d25L9_F9 で形質転換した大腸菌の不溶性画分に多く含まれ、4 M 尿素、0.05
mM DTT を用いるとほぼ完全に可溶化できた。可溶化した封入体中の LST-03 リパーゼの純度は 85%以
上であった。一方 pE_d58F9His で形質転換した大腸菌の細胞破砕液に存在する His-tag を付与した分子
シャペロンは、Ni-NTA カラムを用いて、単一に精製した。封入体を可溶化して得た LST-03 リパーゼは、
希釈や透析により尿素や DTT 濃度を低下させても、不溶化しないが、活性もなかった。しかし、分子
シャペロンを添加することにより、LST-03 リパーゼは活性化した。
また、本来の LST-03 リパーゼには 1 つのカルシウムイオンが含まれているので、LST-03 リパーゼの
可溶化や活性化の際にカルシウムイオンを添加し、分子シャペロンの活性化に及ぼす影響を調べたとこ
ろ、分子シャペロンを作用させる前にカルシウムイオンを添加した場合、分子シャペロンを作用させて
も LST-03 リパーゼは十分に活性化せず、分子シャペロンを作用させ、活性化した LST-03 リパーゼにカ
ルシウムイオン添加すると高度に活性化されることがわかった。
さらに、カルシウムイオンや分子シャペロンの添加による LST-03 リパーゼの構造の変化を CD スペ
クトルの変化を測定することにより調べた。カルシウムイオン非存在下に分子シャペロンを添加した場
合は、LST-03 リパーゼの CD スペクトルは変化するが、カルシウムイオン存在下に分子シャペロンを添
加した場合は、CD スペクトルは変化しなかった。カルシウムイオンが LST-03 リパーゼに先に結合する
と、構造が硬くなり、分子シャペロンによる活性化が起こりにくいものと考えられる。
本研究は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の平成 17 年度産業技術研
究助成事業により実施いたしました。
【引用文献】
1) H. Ogino and H. Ishikawa, J. Biosci. Bioeng., 91, 109-116 (2001).
2) H. Ogino et al., Appl. Environ. Microbiol., 60, 3884-3886 (1994).
3) H. Ogino et al., Biochem. Eng. J., 4, 1-6 (1999).
4) H. Ogino et al., J. Biosci. Bioeng., 89, 451-457 (2000).
5) H. Ogino et al., Extremophiles, in press (2007).
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P-49
極限環境暴露がクマムシ Ramazzottius varieornatus の生存期間と繁殖能に
与える影響
○堀川大樹 1)、國枝武和 1)、坂下哲哉 2)、川井清司 3)、岩田健一 4)、中原雄一 4)、浜田信行 2), 5)、小関成
樹 6)、山本和貴 6)、小林泰彦 2), 5)、奥田隆 4)
1)東京大学大学院・理学系研究科、2)原子力研究開発機構・マイクロビーム細胞照射研究グループ、3)東
京工科大学・応用生物学部海道大学大学院・地球環境科学研究科、4)農業生物資源研究所・乾燥耐性研
究ユニット、5)群馬大学大学院・医学系研究科、6)食品総合研究所・食品高圧技術ユニット
堀川大樹:[email protected]
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
目的
緩歩動物クマムシは、乾眠 “anhydrobiosis” とよばれる無代謝状態になると、さまざまな 極
限 環 境 に 耐え る こ と が知 ら れ て いる 。 しかし、クマムシの極限環境耐性を調査したほとんどの研究
では、環境暴露後から最長で3日間までの個体の生存を観察しただけであり、生存期間(寿命)や繁殖
能への影響といった種の存続にとってより本質的な耐性能力については満足に調査されてこなかった
1-5)。これは、実験室下での簡便なクマムシの培養が困難であり、継続的な観察が不可能であったためと
考えられる。最近、演者らはクマムシの一種、Ramazzottius varieornatusの簡便な培養法を確立し、
実験室内での長期観察を可能にした。本研究では、培養したR. varieornatusを用いて極限環境暴露後の
個体の生存期間と繁殖能に与える影響を明らかにすることで、地球外環境における多細胞生物の存在可
能性を探りたい。
方法
乾眠状態のヨコヅナクマムシに、高温 (100ºC, 1 時間)、超高圧 (1 GPa, 30 分)、有機溶媒 (99.8% ア
セトニトリル, 1 時間)、およびイオンビーム (4He, 5,000 Gy) など の極限環境に暴露した。なお、高温
と高圧に暴露する場合は、個体の周囲を流動パラフィンで満たした。その後、個体に給水して培地に移
し、生存期間と産仔数を調査した。
結果
イオンビーム以外の極限環境に暴露した個体の生存期間は、非処理区の場合よりも低下する事は無か
った (図 1A)。また、超高圧とイオンビームを処理した個体の産仔数は、非処理区の場合に比べ有意な
低下が見られたものの、すべての条件において暴露個体から次世代が生じた (図 1B)。
考察
本研究により、極限環境に暴露された動物が子孫を残せることが初めて明らかになった。
耐 性 の 指 標 を 環 境 暴 露 後 の 生 存 期 間 と 繁 殖 能 と し て 考 え る と 、 イ オ ン ビ ー ム は R.
varieornatusに対し、きわめて大きな損傷を与えると思われる。一方、高温とアセトニトリ
ルの暴露は、個体の生命活動にほとんど影響を与えないことが伺える。この結果は、多細
胞生物が仮にこうした極限環境に遭遇しても、その複雑な生体構造を失うことなく、種を
存続させるポテンシャルを保持できることを意味しており、地球外に高等生物が存在する
ことを示唆する。今後、R. varieornatusの耐性の仕組みを分子レベルで明らかにしていきた
い。
非処理
100ºC
1 GPa
AN
5000G
y
1 個体当りの産仔数
B
生存期間 (日)
A
非処理
100ºC
1 GPa
AN
5000G
y
図 1 R. varieornatus (7 日齢) に高温 (100ºC)、超高圧 (1 GPa)、99.8% アセトニトリル (AN)、イオンビーム
(5,000 Gy) を暴露後の、(A) 個体の生存期間および (B) 1 個体当たりの産仔数 (*: p < 0.01; (A)Chi-square test,
(B)Mann-Whitney U test)。イオンビーム以外の極限環境暴露後の生存期間は非処理区より下回る事はなかった
(B)。 また、高温とアセトニトリルの暴露後の産仔数は、非処理区との間で有意な差は見られなかった (B)。
引用文献
1) Becquerel, P. (1950) C. R. hebd. Séances Acad. Sci. Paris 231, 261–263.
2) Rahm, P.G. (1921) Z. allgem. Physiol. 20, 1-35.
3) Horikawa, D.D. et al. (2007) High Pressure Biosci. Biotechnol.1, 157-160.
4) Ramløv, H. and Westh, P. (2001) Zool. Anz. 240, 517–523.
5) May, R. et al. (1964) Bull. Biol. Fr. Belg. 98, 349–367.
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
Title: Effects of extreme environments on survival period and reproductive ability of the tardigrade
Ramazzottius varieornatus
Authors (affiliation): Daiki D. Horikawa 1), Takekazu Kunieda 1), Tetsuya Sakashita 2), Kiyoshi
Kawai 3), Ken-Ichi Iwata 4), Yuichi Nakahara 4), Nobuyuki Hamada 2, 5), Shigenobu Koseki 6),
Kazutaka Yamamoto 6), Yasuhiko Kobayashi 2, 5), and Takashi Okuda 4)
(1) Graduate School of Science, The University of Tokyo, 2) Microbeam Radiation Biology Group,
Japan Atomic Energy Agency, 3) School of Bioscience and Biotechnology, Tokyo University of
Technology, 4) Anhydrobiosis Research Unit, National Institute of Agrobiological Sciences, 5)
Gunma University Graduate School of Medicine, 6) Food Piezo-technology Laboratory, National
Food Research Institute)
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P-50
凸面上に接着した細胞の蛍光ナノ粒子を用いた可視化
○永原朋幸1),2)、小西聡史1)、掘越弘毅1)、庄野厚2)、大竹勝人2)
1)
海洋研究開発機構・極限環境生物圏研究センター、2)東京理科大学・工学研究科工業化学専攻
小西聡史:[email protected]
目的 従来の動物細胞担体は平面または凹面で構成されている.浮遊状態で球形である動物細胞は,
これらの担体表面で伸展して接着する.これに対し,われわれが新規な担体として提案したメッシュは,
凸面で構成されている.動物細胞にとって極限環境ともいえる凸面に動物細胞を接着させた場合,細胞
が球形を保持したまま接着することがわかってきた 1),2),3).しかしながら,凸面に接着した細胞は接着
が弱く,従来の免疫染色法では細胞を観察することができなかった.そこで本報告では,凸面である繊
維上に接着した細胞の形状を観察するために,蛍光標識されたナノ粒子を細胞内に導入し,蛍光観察を
行う観察方法について検討を行った.
方法 細胞担体として用いた繊維はナイロン製モノフィラメント(東レ株式会社製 繊維径 104μm)で
ある.これにマウス繊維芽細胞 3T3L1 を含む DMEM 培地を添加して 37℃,5%CO2 のインキュベータ
で振盪培養し,繊維上に 3T3L1 を接着させた.辻村らの方法 4)を参考にして蛍光ナノ粒子を 3T3L1 に
導入した.蛍光標識された粒径 15 nm のスチレン-DVB 共重合粒子(micromod 社製 micromer-greenF)
を DMEM 培地に懸濁させ,3T3L1 が接着した繊維をこの蛍光ナノ粒子懸濁培地に浸漬した.この時の
蛍光ナノ粒子懸濁濃度を 8,20,30%(v/v)とし,浸漬時間を 3,6h とした.培地中に残った蛍光ナノ粒子を
除去した後,3T3L1 に導入された蛍光ナノ粒子を共焦点顕微鏡で観察した.
結果と考察 蛍光ナノ粒子を 20%(v/v)で 6h で導入した 3T3L1 が繊維に接着した蛍光像を図 1 に示す.
繊維上の細胞形状と蛍光像がよく一致しており,今回用いた方法で,担体に弱く接着した細胞の形状を
容易に蛍光観察できることがわかった.さらに,観察後の 3T3L1 が蛍光ナノ粒子を含まない培地で増
殖を続けることを確認した.
図 1 蛍光ナノ粒子を導入した 3T3L1
引用文献
1)小西聡史ら,化学工学会秋田大会研究発表講演要旨集 C117(2004)
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
2)永原朋幸ら,第 7 回極限微生物学会年会要旨集 P-21(2006)
3)永原朋幸ら,化学工学会第 72 年会講演発表プログラム要旨集 I123(2007)
4)辻村純平ら,化学工学会第 72 年会講演発表プログラム要旨集 A202(2007)
Visualization of cells adhering to convexities using fluorescent nanoparticles
Tomoyuki Nagahara1),2),Satoshi Konishi1), Koki Horikoshi1), Atsushi Shono2) ,Katsuto Otake2)
(1)JAMSTEC, 2)Tokyo University of Science)
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P-51
高校における極限環境微生物を扱った課題研究
○ 中川和倫:
愛媛県立松山南高等学校
[email protected]
<はじめに>
愛媛県立松山南高校は、平成 14 年度から文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定
されており、筆者は理数科及び生物部の課題研究に極限環境微生物をテーマとして、生徒に研究活動を
させてきた。その過程で、高校生対象のさまざまな科学系コンテストに入賞するとともに、生徒は研究
テーマを活かした進学をして大学でも頑張っている。ここでは、その一端を紹介したい。
<研究テーマの変遷と成果>
平成 15 年度 「極限微生物の生育環境」日本学生科学賞・愛媛県審査・最優秀(全国審査進出)
平成 16 年度 「有機溶媒耐性細菌の極限生育機能」日本学生科学賞・愛媛県審査・最優秀/県知事賞
(全国審査進出)
「好塩菌と広塩菌について」JSEC・ファイナリスト(全国入選)
日本海洋学会(愛媛大学)でもポスター発表
「好アルカリ性細菌の研究」全国高校生理科・科学クラブ研究論文・努力賞(全国入選)
「極限環境における広域耐性を有するスーパー微生物の特性」土佐生物学会論文コンク
ール・山中賞(全国最優秀)
「好熱性細菌の研究」と「貧栄養性細菌の研究」は選外
平成 17 年度 「広域耐塩性細菌の研究」日本学生科学賞・愛媛県審査・最優秀/市町教委連合会長賞
(全国審査進出)
「有機溶媒耐性細菌を利用した環境浄化の可能性」高校環境化学賞・優秀賞(全国3位)
主催の日本環境化学会に招待され口頭発表
「極限環境微生物と通常微生物の化学走性とアレロパシー活性について」は選外。この
年、国際生物学オリンピック日本代表が出た。
平成 18 年度 「耐塩性細菌の研究」生物系3学会中四国支部大会(愛媛大学)高校生ポスター発表部
門・最優秀プレゼンテーション賞
「有機溶媒耐性細菌を利用した排水浄化へのアプローチ」日本陸水学会(愛媛大学)高
校生ポスター発表会・特別賞(高校最優秀)
「岩塩中に眠っていた細菌の培養について」は選外
<大学進学状況について>
上記の研究に携わった生徒の大部分が国公立大学の医学部・薬学部・理学部・農学部等に進学し、入
学後も微生物学分野の専攻を目指している者が多い。特にAO入試や推薦入試を利用して進学した生徒
の比率が高く、中にはテキサス大学に進学した生徒もいる。今後も微生物分野を目指す研究者の卵を育
てていきたい。
A Research on Extremophiles at Senior High School
Kazunori Nakagawa(Matsuyama-Minami Senior High School)
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Journal of Japanese Society for Extremophiles (2007) Vol.6
別冊
編集委員会
委 員 長:石井正治(東大)
副委員長:石野良純(九大)
委
員: 阿部文快(JAMSTEC)、伊藤 隆(理研)、鎌形洋一(産総研)、河原林裕(産総研)、
高品知典(東洋大)、為我井秀行(日大)、中村 聡(東工大)、星野貴行(筑波大)、
三輪哲也(JAMSTEC)、湯本 勲(産総研)
学会事務局
〒374-0193 群馬県邑楽郡板倉町泉野 1-1-1
東洋大学生命科学部生命科学科 井上研究室
FAX:020-4662-1960
E-Mail:[email protected]
学会誌編集
〒374-0193 群馬県邑楽郡板倉町泉野 1-1-1
東洋大学生命科学部生命科学科 高品研究室
TEL:0276-82-9201
FAX:0276-82-9201
E-Mail:[email protected]
発刊日
192
2007 年 12 月 31 日