摂食障害のからだ版(PDF)

国立病院機構長崎病院 小児科 錦井友美 2005 年版
摂食障害の
からだ版
-1参考文献:厚生労働科学研究思春期やせ症の実態把握及び対策に関する研究班
国立病院機構長崎病院 小児科 錦井友美 2005 年版
飢餓によるからだへの影響
感覚の
判断力
異常
の低下
(食欲)
不安
脳萎縮
抑うつ
こだわり
不整脈
骨粗しょう症
心機能
低下
その他の
低身長
内臓障害
肝機能
腎機能など
子宮・卵巣
発育障害
きっかけはいろいろですが、体 重 減 少 がおこると、これらのような飢 餓 状 態 に
よる症 状 が出 ます 。飢 餓 状 態 になると、脳 内 にベータエ ンド ルフィンという ホ
ルモ ン が 分 泌 さ れ、 飢 餓 の 苦 痛 はや わ ら げら れ 、食 べ なくて も 平 気 にな り ま
す 。この見 かけ 上 の「から元 気 」のまま、成 果 も無 い のにど ん どん 活 動 し 、止
まらなくなります。また、脳 は萎 縮 し、判 断 力 は失 われ、食 欲 の中 枢 にも異
常 を 来 たし 、 おい し く 感 じ ること や 、 空 腹 や 満 腹 の感 覚 が わ から なくなり ます 。
胃 腸 の機 能 も 低 下 し 、便 秘 など の 腹 部 症 状 が お こり ます 。 この よ う に、食 べ
ずに飢 餓 になっ たことは、更 に、食 べ られ ない 状 況 を生 み 、正 常 な考 えがで
きなくなったり、食 欲 などの感 覚 に異 常 をきたし、飢 餓 状 態 を助 長 する、悪
循 環 なのです。
からだの機 能 の低 下 が進 行 すると、次 第 に動 けなくなってきます。
心 臓 の機 能 も低 下 し、不 整 脈 などが起 こることがあります。
-2参考文献:厚生労働科学研究思春期やせ症の実態把握及び対策に関する研究班
国立病院機構長崎病院 小児科 錦井友美 2005 年版
大 切 なからだの症 状
脈 拍 ・・・徐 脈 60/分 以 下
昼
夜
昼
昼 間 の活 動 す る時 間 帯 には 、
健康
反 応 的 に心 拍 が上 昇 して、
危険ライン
活 動 に備 える生 理 学 的 なし
心拍 60
くみになっています。しかし、
飢 餓 状 態 のために自 律 神 経
冬眠中のようにからだは
やせ状態
の異 常 (副 交 感 神 経 の活 動
冷たく、脈はゆっくり
が 優 位 ) が お こ り 、そ の 結 果 徐 脈 ( 脈 が 遅 い ) に な り ます 。つ ま り 、 昼 間 活 動
しようとしているときも、からだは冬 眠 中 の動 物 状 態 だということなのです。
からだは「もうだめだ…動くな。じっとしていろ」と合図をしています。
骨 の成 長
女 性 の骨 は 20 歳 までに最 大 骨 量 に到 達 し、それ以 降 は減 少 するという事
実 が明 らかになりました。腰 椎 の骨 密 度 の年 間 成 長 スピードは 13~14 歳 で
最 大 となりそれ以 降 急 激 に減 少 し、20 歳 以 降 は増 加 しなくなります。つまり、
その後 いくらカルシウムをとっても、骨 を大 きく増 やすことはできなくなるのです。
成 長 因 子 や卵 巣 の働 き によ り、思 春 期 という 短 期 間 に骨 は完 成 し 、一 生 の
健 康 度 を決 めるのです。骨 量 増 加 は思 春 期 のみの特 徴 的 な現 象 です。こ
の時 期 に体 重 を急 激 に変 化 させることは、骨 の成 長 を阻 害 します。
体 脂 肪 との関 係
脂 肪 はからだに必 要 な物 質 を放 出 する大 切 な物 質 で す 。減 少 するといろい
ろな臓 器 に影 響 を及 ぼします。卵 巣 機 能 は大 きく影 響 を受 け、無 月 経 となり
ます。また、骨 の成 長 も、卵 巣 から分 泌 されるエストロゲンの影 響 を強 く受 け
て い ます 。体 重 の急 激 な変 化 ⇒ 卵 巣 機 能 の低 下 ⇒ 月 経 異 常 と、骨 の成 長
への影 響 を及 ぼし、骨 粗 しょう症 のリスクを長 い人 生 背 負 うことになります。
今こそ骨を育てておかなきゃ!
そのほかの症 状
手 足 が冷 たい・・・からだは冬 眠 状 態 で内 部 から温 める力 が衰 えています。
便 秘 ・・・規 則 的 に食 べないので胃 腸 の動 きが衰 えています。
皮 膚 ・髪 の毛 の乾 燥 ・・・皮 膚 のつやのためには水 分 や脂 肪 が必 要 です。
毛 深 い・・・対 表 面 から熱 を逃 がさないように生 き延 びようとしているのです。
-3参考文献:厚生労働科学研究思春期やせ症の実態把握及び対策に関する研究班