「自動二輪車駐車対策モデル実験」 (財 )東 京 都 道 路 整 備 保 全 公 社 (財 )東 京 都 道 路 整 備 保 全 公 社 ( 以 下 、 公 社 ) で は 、 公 社 所 有 の オ ー ト バ イ 専 用 駐 車 場 に おいて、ライダーが求めるサービス、自動二輪車の一時貸し利用の増加を図るためのサー ビス等、どのような施策が有効なのかを把握するためのモデル実験を実施した。 1.モ デ ル 実 験 実 施 の 背 景 と ね ら い 平 成 16 年 度 調 査 に お い て は 、絶 対 的 に 不 足 す る 自 動 二 輪 車 の 駐 車 供 給 量 を 増 加 さ せ る こ とが、効果的な取締りやライダーの入庫習慣の定着につながると考えられた。 そ こ で 17 年 度 、利 用 し や す い サ ー ビ ス 水 準 を 検 討・検 証 す る た め モ デ ル 実 験 を 実 施 し 、 この実験結果をもとに、民間事業者等による駐車場の整備・運営方法に役立てることを目 的とした。 2.実 験 実 施 場 所 の 概 要 今 回 モ デ ル 実 験 を 実 施 し た「 六 本 木 オ ー ト バ イ 駐 車 場 」は 、港 区 六 本 木 3 丁 目 に 位 置 し 、 周辺は赤坂アークヒルズや泉ガーデンタワーといったオフィスビルが多く立地する地区と な っ て い る 。 ま た 、 六 本 木 交 差 点 周 辺 や 六 本 木 ヒ ル ズ 等 の 商 業 系 集 積 の あ る 地 区 か ら 600 m ~ 1,000m 程 度 離 れ て い た 。 六本木オートバイ駐車場は公社管理の駐車場で、自動二輪車専用の駐車場として運用し ていた。また、周辺に広幅員の歩道があり、自動二輪車の違法駐車が多く見られることか ら、今回、モデル実験実施駐車場として選定した。 [六本木オートバイ駐車場の概要] ・ 営 業 時 間 : 24 時 間 ( 無 休 ) ・ 駐 車 料 金 : 1 時 間 毎 100 円 最 大 利 用 料 金 : 1 日 最 大 500 円 入 庫 か ら 24 時 間 ・ 収 容 台 数 : 105 台 ( 一 時 貸 し 46 台 、 月 極 め 59 台 ) ・駐車場形態:平面自走式、全車屋外、無人 3.協 議 会 の 設 置 モデル実験の実施にあたっては、自動二輪車の違法路上駐車削減に向けた継続的な取り 組みが必要であること、地区特有の課題等を把握する必要があること、都内全域での自動 二輪車駐車整備に向けた取り組みにつなげていきたいこと等の理由から「 、自動二輪車協議 会 」( 以 下 、 協 議 会 と い う ) を 設 置 し て 検 討 を 行 っ た 。 協議会は学識経験者(東京海洋大学、髙橋洋二教授)を会長とし、東京都、警視庁、所 轄 警 察 署 、港 区 、自 動 二 輪 車 駐 車 場 経 営 者 、地 元 自 治 会 、自 動 二 輪 車 駐 車 場 機 器 メ ー カ ー 、 ライダー代表等から構成し、実験内容や問題・課題、今後の方向性等について、それぞれ の立場から意見を頂いた。 4.モ デ ル 実 験 の 実 施 内 容 と ポ イ ン ト 1 モデル実験のメニューとして、以下の 3 つを用意した。 (1)駐 車 1 時 間 未 満 無 料 実 験 自動車(4輪車)のような短時間利用のニーズがあるのか。また、短時間駐車に対する 料金の支払い意志が低いとは考えられるが、短時間駐車を無料にすることで収入全体の増 加につながるのかを検証するため、1 時間未満の駐車を無料にすることとした。 ◆ 実 施 時 期 : 2005 年 12 月 5 日 ( 月 ) ~ 2006 年 3 月 31 日 ( 金 ) [実験期間中の駐車料金] 1 時間未満 2 時間未満 3 時間未満 4 時間未満 通常料金 実験期間中料金 1 日最大 100 円 200 円 300 円 400 円 500 円 無 200 円 300 円 400 円 500 円 料 注:1 時間を越えると通常の料金 (2)目 的 地 送 迎 満 無 料 実 験 駐車場から一定の範囲内で離れた場所に目的地を持つ利用の取り込みを期待し、自動二 輪車の戸口性を確保するため、駐車場から目的地までタクシーで無料送迎を行った。 この実験は、地域循環バス等のエリアに駐車場を設置した場合、乗換の交通行動が働く のかを検証するため、実施した。 ◆ 実 施 時 期 : 2006 年 1 月 16 日 ( 月 ) ~ 2006 年 1 月 22 日 ( 日 ) [実施イメージ] 六本木オートバイ駐車場 目的地 ①自動二輪車で駐車場へ ②無料タクシーに乗換え目的地へ (3)駐 車 場 画 像 の パ ソ コ ン ・ 携 帯 電 話 へ の 配 信 利用者が駐車場の空き状況を確認したり、利用者が自分の車両の画像を確認して安心感 を 得 ら れ る よ う 、駐 車 場 に Web カ メ ラ を 設 置 し 、パ ソ コ ン や 携 帯 電 話 に 駐 車 場 の 画 像 を 配 信した。 ◆ 実 施 時 期 : 2006 年 1 月 6 日 ( 金 ) ~ 2006 年 3 月 31 日 ( 金 ) [実施イメージ] Web カメラで駐車場 の状況を撮影 駐車場の映像をキャ プチャー画像として PC、携帯電話へ配信 5.実 施 結 果 2 (1) 駐 車 1 時 間 未 満 無 料 実 験 の 利 用 状 況 実際の実験期間中の 1 時間未満(無料)の利用実績は 1 日平均 1 台以下だった。 実験開始後も利用状況に大きな変化は見られず、利用台数は減少傾向だった。これは実 験 期 間 が 冬 期 で あ っ た こ と か ら 、自 動 二 輪 車 自 体 の 利 用 そ の も の が 減 少 し た と 考 え ら れ る 。 駐車場平均利用台数の推移 12~3月無料利用台数 台 25 20 23 19 18 23 台 22 1.00 19 18 17 0.80 14 15 11 10 12 11 11 8 8 7 5 0.60 11 5 5 1月 2月 0.40 7 0.20 0.00 0 6月 7月 8月 9月 10月 平日平均 11月 12月 3月 12月 1月 2月 3月 休日平均 [1 日 当 た り の 月 別 平 均 利 用 台 数 ] [1日当たりの期間中の月別平均無料利用台数] 六本木オートバイ駐車場利用者や周辺の路上駐車における駐車行動を見ると、駐車時間 は7時間以上と長く、また来訪目的は通勤が多い。 そのため、1時間未満無料実験については、多くのライダーの駐車行動とは整合してい ない可能性があり、実験参加者の増加には直接結びついていない。 しかしながら、本実験においては、通勤目的の長時間駐車をしたライダーであっても、 目的や目的地が変われば、短時間駐車を行うことが想定される。そのため、1箇所の駐車 場で実施しても、需要地と離れている場合は利用しない可能性が高いが、駐車場整備が進 捗し、駐車場の箇所数が増加した以降については、多くの目的地と整合する駐車場が増え ることから、短時間駐車無料施策は効果的であると考えられる。 (2)無 料 送 迎 タ ク シ ー の 利 用 状 況 平成16年度の調査結果からも明らかなように、自動二輪車の容姿は原付や自転車と類 似しているが、目的地まで直接利用するという駐車行動は、自動車(4輪車)に近いこと が把握されている。 駅 2.6% その他 97.4% n=541 図 平成16年度自動二輪車に関する実態調査による駐車後の目的地(平日) 一 方 、 P.T.調 査 に よ る と 、 目 的 地 ま で の 距 離 が 長 く な る ほ ど 、 自 転 車 や 原 付 は 鉄 道 に 乗 換えるが、自動二輪車及び自動車については、目的地までの距離が長くても代表交通機関 として利用し、鉄道等へ乗換えずに直行している。このことからも、自動二輪車の交通行 動は、自動車と類似しているといえる。 3 < 目 的 地 ま で 0 ~ 30 分 > > < 目 的 地 ま で 30~ 60 分 > 目的地までの自動車での所要時間 : 0分~30分 < 目 的 地 ま で 60 分 ~ 目的地までの自動車での所要時間 : 60分~ 目的地までの自動車での所要時間 : 30分~60分 自転車 78% 22% 自転車 原付 81% 19% 原付 自転車 2% 80% 20% 原付 36% 64% 自動二輪車 96% 4% 自動二輪車 96% 4% 自動二輪車 自動車 94% 6% 自動車 94% 6% 自動車 目的地まで直行 0% 鉄道等へ乗換 20% 40% 60% 目的地まで直行 0% 鉄道等へ乗換 80% 100% 20% 40% 60% 17% 目的地まで直行 0% 鉄道等へ乗換 80% 100% 98% 83% 91% 9% 77% 20% 40% 23% 60% 80% 100% 出 典 : H10 東 京 P.T.調 査 そのため、離れた場所に駐車し、送迎サービスを利用するのではなく、目的地の近くま で自動二輪車で行き、周辺で路上駐車をする可能性も想定された。 し か し な が ら 、 実 験 に お い て は 、 平 均 的 に 1 日 2 名 程 度 で あ る が 、 目 的 地 か ら 1 km 程 度離れている駐車場に、駐車料金を支払って駐車するライダーも存在している。 したがって、地域循環バス等のエリアにおいて、目的地より少し離れた場所に駐車し、 別の交通手段において移動する等の交通行動が働く可能性もあると考えられる。 (3)駐 車 場 画 像 へ の ア ク セ ス 状 況 駐車場の画像提供は、満車・空車の情報が得られるだけではなく、駐車したバイクが横 転や盗難にあっていないかを、ライダーが確認できるという視覚的な効果が大きい。 本実験でも、画像提供へのアクセス回数は多く、また利用者の満足度も高い。 一方、こういった駐車場情報を、ライダーが駐車場選択に活用するためには、同様のサ ービスを多くの駐車場で実施することが重要と考えられ、その結果、ライダーの駐車行動 や嗜好性に応じた駐車場への選択が促進されると考えられる。 回 画像閲覧回数 9 00 8 00 PC 7 00 携帯電話 6 00 5 00 4 00 3 00 2 00 1 00 0 1月 2月 3月 [月 別 画 像 ア ク セ ス 数 ] 6.自 動 二 輪 車 駐 車 場 に 求 め ら れ る こ と 今回実施したアンケート調査によると、バイクを駐車してからの歩行時間は、概ね 5 分 以 内 で あ る ( 歩 行 距 離 で は 250m~ 300m 程 度 )。 こ れ は 、 4 輪 車 の 駐 車 場 整 備 計 画 を 立 案 する場合とほぼ同様の距離である。 一方、路上駐車をしているライダーは、駐車場利用者に比べて目的地までの歩行時間が 短 く な っ て お り 、歩 行 時 間 1 ,2 分 と い う 回 答 も 多 い 。こ れ は 、歩 行 距 離 に 換 算 す る と 数 十 4 メートル程度であり、こういった路上駐車を駐車場へ転換するためには、より目的地に近 い場所に駐車場を整備することが必要と考えられる。 これらのことは、戸口性が高いという自動二輪車の特徴からしても当然の結果と考えら れ、自動二輪車の特性を損なわずに駐車場への入庫を促進させるためには、1箇所当たり の整備台数は少なくても、数多くの駐車場を整備することが重要であると考えられる。 また、ライダーのアンケート結果においても、小規模の駐車場を数多く整備する要望が 高い結果となった。 一方、ライダーが駐車場のサービスとして期待しているものは、店舗による割引やセキ ュリティ対策以上に、屋根の設置が最も多くなっている。したがって、新たに駐車場を整 備する場合や、既存駐車場を変更する場合は、屋根の設置が効果的であると考えられ、こ れにより利用者の満足度も高まる可能性がある。 また、アンケート調査による、駐車料金に関するライダーの希望としては以下の通りで あるが、周辺の4輪車の料金水準や、事業採算性、利用動向等から入庫が期待できる料金 設定をする必要がある。 料金体系 最大支払意思額 月極料金 1万円以下 時間料金 100円 1日最大料金 500円以下 7.今 後 の 課 題 、 今 後 の 方 向 自動二輪車駐車場を効率的に整備し、かつライダーに利用してもらうためには、利用者 のニーズを的確に捉えるとともに、自動二輪車の交通行動に応じた駐車場整備が必要と考 えられる。 また、自動二輪車駐車場は、すべてが新設されるわけではない。効率的な整備量の確保 に向けては、既存の4輪車駐車場において、自動二輪車を受入れていただくことが必要で ある。しかしながら、自動二輪車の受入れに際しては、料金収入や改修費用の問題、乗用 車との混在によるトラブル発生の懸念等があり、受入れに際しての問題点についても検討 しておくことが必要であると考える。 5
© Copyright 2024 Paperzz