具体的資料編(簡易版)

在日外国人教育指導資料
~「本名指導」をすすめるために~
具体的資料編(簡易版)
東大阪市教育委員会
Ⅰ.知っておきたい大切なこと(歴史的経過より)
在日韓国・朝鮮人には、なぜ通称名(日本式の名前)があるのですか?
①韓国・朝鮮人に通称名ができたのは、いつからですか?
1910年・・・「韓国併合」
1940年・・・「創氏改名」
「自由意思」という名のもとでの「創氏改名」
日本は明治維新以後、資本主義化を急ぐとともに海外進出を図り、朝鮮の開国を強要す
るため雲揚号事件を起こし、1876年「江華島条約」を結びました。その後、日清戦争(1894
∼95年)・日露戦争(1904∼05年)に勝利した日本は、朝鮮を保護国化して外交権を奪い、
1910年に韓国を「併合」しました。
当初、日本の植民地政策は「土地調査事業」などにより農民の生活基盤をうばいました
が、3・1独立運動以降は「皇民化政策」を推し進め、1940年日本式の氏名に変え
させる「創氏改名」を実施しました。
②なぜ、いまだに、日本名が残っているのですか?
1945年8月15日・・・終戦記念日(日本)、光復節(大韓民国)、
祖国解放記念日(朝鮮民主主義人民共和国)
戦前…
「併合」当時、2500人ほどだった渡日朝鮮人は、強制連行や徴用などによ
り、1940年には、約120万人に達していました。その人たちも、日本名を名の
ることを余儀なくされました。
戦後…
在日朝鮮人は次々と祖国に帰り、創氏改名は南北朝鮮では廃止の手続きがとられました。
日本に残った人たちも本名を使い始めましたが、「朝鮮人学校閉鎖」などの実施
によって、多くの人たちが本名での就職や入居を拒否されたりしたため日常生活
では隠さざるを得なくなり、再び日本名を使い始めた人たちも多くいました。そして、
1947年の外国人登録令施行による登録の際に、生活の便宜のために従来使っていた日
本名を、通称名としてカッコ書きすることを事実上余儀なくされたのです。
現在まで…
今も日本社会には在日韓国・朝鮮人に対しての民族差別が存在し、偏見が根強く残って
いますが、「あなたは韓国・朝鮮人には見えない」「韓国・朝鮮人ということを内緒にしてあげ
る」という言葉に象徴されるように、日本人の多くは自分たちが抑圧しているという実感を持
っていません。
現在、日本名(通称名)を強要する法律などが存在しないため、在日韓国・朝鮮人が日
本名を使っているのは本人の意思には違いありません。しかしその背景には、かつてきび
しい差別からのがれるために、やむなく日本名を使ったという事実や、今なお本名で生活す
ると不利益を被るという現実があります。
かつての日本における歴史的な経緯や民族的偏見が、その意思決定に大きく
作用しているのは言うまでもありません。
③アメリカや中国、ドイツなど他の国にもたくさんの韓国・朝鮮人がいますが、その
人たちも通称名を使っているのですか?
歴史的経過はそれぞれの国によって異なります。たとえば、在米韓国人の場合、
民族名を名のる人もいれば、米国式に変える人、民族名を使いつつ、米国式のミドルネ
ームをつくって通称とする人などさまざまです。しかし、日本でのような「通称名」はあ
りません。
その人の名前は、民族やその人の出自を自然と表現するものとして当然受け入れら
れています。日本のように、在日韓国・朝鮮人が民族差別から逃れるために通称名
を使う例は、ほとんどないといえるでしょう。
④そして今…
最近、韓流ブームであらたな韓国との交流が進んでいるようですが?
日本も、一歩一歩多文化共生社会へと向かいつつあります。互いのちがいを認
め合い、豊かな関係づくりをめざす教育の取り組みも進んでいます。そんな中、在日韓国・
朝鮮人の人たちの本名が、ありのまま受け入れられつつあります。
特に、若者の間でスポーツや芸能を通じて新たな交流も生まれています。
Ⅱ.ふだん思っていることをあらためて考えてみよう。(Q&A)
~よくある話ですが、大切な話…~
しつもん1
家庭訪問で在日韓国・朝鮮人の保護者に、「うちは帰化するので民族に関わる教育
は必要ない。学校では教科の勉強を教えてくれればよい。」と言われたが…。
こたえ1
子どもの幸せを願わない保護者はいません。この保護者の考えの背景にはこれまで
の被差別の体験が色濃くあると考えられます。子どもを差別から逃れさせるための具
体的手段として通称名を選び、民族から遠ざけようとしているのではないでしょうか。
学校としては、差別を許さない姿勢と、すべての子どもの人権を保障する強い意志
を示していくことで少しずつ信頼が得られるのではないでしょうか。
しつもん2
子どもと本名について考えていたら、在日韓国・朝鮮人の保護者から「子どもの意
志で決めさせるので、学校で強制するのはやめてほしい。」と言われたが…。
こたえ2
名のるかどうかについて、子どもの意志を尊重するのは当然のことでしょう。
ただ、その判断をするためにたくさんの選択肢やいろいろな考え、歴史などを教え
るのは学校や家庭での教育です。また、社会的にはなかなか名のりにくい状況がある
中で、本名を名のることの意義を伝えるのは重要なことだと考えます。
しつもん3
保護者の中には、韓国・朝鮮人であることの自覚や誇りがあまりないように思える
ことがあるのですが…。
こたえ3
民族としての自覚や誇りは、保護者が2世、3世となる中で、自然に育つ部分は少
ないようです。学校や地域の環境を整え、民族の文化に触れる機会や、歴史を学ぶな
どの体験を増やすことにより、民族的なアイデンティティを育てていくことが大切で
す。そのためには学校や地域のねばり強い取り組みこそが大切だと考えます。
しつもん4
「本名を名のってわざわざ苦労することもない、まだまだ民族差別は残っているのだ
から。」と言われたのですが…。
こたえ4
残念ながら日本社会では、今なお民族差別が残っているのは事実でしょう。しか
し、差別をなくそうとする取り組みも着実に一歩一歩すすんでいます。
子どもたちには未来に向けて積極的に肯定的に生きてほしいと願っています。そ
のためにも本名を大事にし、自分を大事にしてほしいのです。
本名を肯定することは自分を(民族を含めて)肯定することだからです。自分を
肯定することは、日本人の子どもも含めて、国際感覚が豊かになることにつながる
のではないでしょうか。
しつもん5
在日韓国・朝鮮人の子どもが卒業するときに、保護者が本名と通称名の2通の卒業
証書とがほしいと言ってきましたが…。
こたえ5
もし、本人(保護者)がほしいということで通称名を書いた卒業証書を渡してい
たとすれば、後々困ったことが起こりかねません。通称名では本人の自己同一性が
確かめられないからです。
これは実際にあった話ですが、外国籍の子どもがアメリカの大学で入学手続き中、
これまでの学歴を証明するものとして卒業証書を提出したところ、パスポートに書
かれてある本名と卒業証書に書かれてある通称名とが違い、本人であることが証明
できなかったといった話がありました。
卒業証書は公文書に準ずるものとして扱うので、本名で書くように府教育委員会
も指導しているところです。
しつもん6
通称名を名のるのも人権であるから、ことさら本名を強調するのはおかしいと言わ
れたが…。
こたえ6
在日韓国・朝鮮人が通称名を使うようになったのは、植民地時代の「創氏改名」
からであり、戦後も多くの場合、民族差別から逃れるために使い続けたものです。
自分自身と自分のルーツを表すものが名前ですから、本名使用を強調するのは当
然のことです。保護者の意向も尊重しながら、ねばり強く本名使用を働きかけてい
きましょう。
しつもん7
本名で生活している子どもがいるが、呼び方がややこしいので名前を日本語読み
呼んでいます。それでもよいと本人も保護者も言っているのですが…。
こたえ7
母国語読みに至る過程でのことと考えます。原則として限りなく母国語の読み方
発音で呼ぶのが正しいと考えて下さい。また、ややこしいという感じ方はどうでし
ょうか。保護者は学校に遠慮しているのかもしれません。むしろ逆に学校の考え方
として、母国語読みを働きかけることで保護者の被差別体験を払拭するきっかけに
なるかもしれません。また子どもは母国語読みになれていないこともあり、ややこ
しく感じているところもあるでしょうが、積極的に母国語の発音に親しむことによ
って本来の感覚を取り戻すのではないでしょうか。
しつもん8
在日韓国・朝鮮人の子どもたちだけでなく、新しく渡日した子どもたちの中にも日
本名を名のっている場合があると聞いたのですが…。
こたえ8
そういう事例があるのは事実です。
日系ブラジル人や中国残留日本人のように日本にルーツをもつ子どもの場合であ
っても、まったくの日本人のようにふるまうことで差別から逃れようとすることが
その背景にあるのではないでしょうか。
これまでの在日韓国・朝鮮人教育で積み上げてきた成果を、新たに渡日する子ど
もたちの教育に生かし、すべての子どもたちが互いの違いを認め合い、当たり前に
本名を呼び、名のれるような取り組みが日本の国際化につながると考えます。
しつもん9
母国語学級の取り組みと本名を呼び、名のる取り組みはどのような関係があるので
しょうか。
こたえ9
母国語学級では、母国語(韓国・朝鮮語)を中心として文化・歴史を中心に学ん
でいます。これは目的でなく、手段です。言葉や歴史、文化などを通して、ふだん
触れることが少なくなった自己の民族性に向き合い、その豊かさに出会うことを通
して誇りを持ち、民族的な自覚を高めることを目的にしています。これはとりもな
おさず、本名を呼び、名のったりすることにつながっています。自分が韓国・朝鮮
人であるということに誇りを持てるプロセスは、本名が呼ばれていくプロセスと考
えます。
ですから、母国語学級での本名を名のる取り組みと、学級・学年での本名を呼び
名のる取り組みとは互いに補い合い、高め合っていけるものです。
今後、民族講師と日本人教師とが目的意識を持って取り組めば、その教育的効果
は一層高くなるでしょう。
しつもん10
本名を呼び名のる取り組みは、在日韓国・朝鮮人の子どもにとっては必要かもしれ
ないが、クラスの大多数を占める日本人の子どもにとってはどんな意味があるのです
か。
こたえ10
本名の問題は、基本的には日本社会の人権上の課題です。そのことは学校でも同
じで、基本的には日本人の子どもたちの韓国・朝鮮人の子どもたちへの無関心や、
無理解は、韓国・朝鮮人の子どもたちの被差別の現状を放置するだけでなく、日本
人の子どもたちにとっても21世紀を生きるための基本となる国際感覚を養うとい
う機会を失うことにもなりかねません。
今日の日本社会では、異文化との出会いや、外国人との交流は日常的なものにな
りつつあります。一方で、自分がふだんからいっしょにかかわっている友だちの中
に韓国・朝鮮人の仲間がいることに気づかず、或いは意識していないことがあるこ
とも現実です。子どもたちには、身近な「外国人である韓国・朝鮮人」との出会い
を通して学びあえるチャンスがあります。学習を通して民族と向き合う経験をして
いれば、スムーズに互いの民族の違いを認め合い尊重しあえる豊かな国際感覚が育
っていくでしょう。そのためにも、韓国・朝鮮人の子どもがいる、いないに関わり
なく本名の取り組みは必要と言えるでしょう。
しつもん11
在日韓国・朝鮮人の子どもと母親の姓が違うのはなぜですか。
こたえ11
韓国・朝鮮では、婚姻によって夫婦が同じ姓を名乗りません。夫も妻もそれまで
と同じ姓を名乗るのです。そして父系性の意識が強い朝鮮民族の間では、子の姓は
父方の姓を名乗ります。ですから、母親の姓と子どもの姓が違うことが起きるので
す。女性の独立性が認められている関係という考え方もできますが、むしろ女性は
結婚して男性の家に入ってもその家族の外におかれるという意識の反映であるよう
です。現在、韓国では、法律も改正され、子どもはどちらの姓を名乗ってもいいこ
とになっています。
Ⅲ.こんなことできます(具体的実践例)
<本名を大切にする基本的な考え方>
共に生きる
互いを尊重し合う
【めざす子ども像】
・人権を大切にする心豊かな子
・互い(民族・文化・生活習慣等)の「ちがい」を認め合
える子
・ちがいを豊かさに,あたたかな心をもてる子
・自分で判断し,行動できる子
・自分の未来に夢を持てる子
人権総合学習
多民族・多文化共生
の集団づくり
民族の誇りを高め
自尊感情を育む
保護者の理解・地域の共感
(学校から地域への発信・地域の願いや課題を受け止める学校づくり)
こんなことできます(本名を呼び名のる学校をめざして)
<小学校編>
1.入学時の取り組み
小学校の場合、本名使用については学年が低いほど保護者の意向が大きく作用します。保護者
は自分の経験上、子どもが学校で本名を名乗ることについて大きな不安を持っています。在日外
国人の保護者の多くは、本名で生きにくい社会の状況をよく知っているから、学校に対しても不
安があるのでしょう。また、本名に対する思いはあるものの、子どもへその思いを伝えることに
消極的な保護者もいます。だからこそ、入学時に、本名の意義を伝えることと同時に、本名使用
に関わって学校が支援するという姿勢を示すことは大切なことです。
すべての子どもを大切に思う学校とは、個々の子どもの人権を大切にすることであり、本名を
大切にしていくことはその一つの表れだという学校の姿勢をしっかり保護者に伝えることが必要
ではないでしょうか。入学時の取り組みは、人権教育を大切にしている学校の姿勢を保護者へ伝
え、学校への信頼感を得るチャンスでもあります。
例えば、就学手続の時に「本名を希望されますか?
通名を希望されますか?」というように
保護者に投げかけることが当然のように考えている場合があるようです。これは、本名の意義を
伝えるには不十分です。むしろ、こんなふうに問いかけられた保護者は、本名にすることに不安
を覚えるようになります。学校は、在日外国人の子どもが本名で生きることを希望し、そのため
の人権教育を行っていることを伝えることが、保護者にとっては大きな安心につながります。
以下、入学時にどんな取り組みができるのか考えてみましょう。
【就学手続き時】
ほとんどの保護者が学校を訪れる初めての機会です。
①本名使用についての学校の取り組みを文書や口頭で伝えましょう。この時点で、「通名で行き
たい」とする保護者には、再度、熟考を促しましょう。
②子どもの母国語読みなどを知っているのか。また、発音のしかたなどを確認しましょう。
また、子どもだけでなく、保護者の本名も同様に聞くことが望ましいです。
参考となる対応事例を紹介しましょう。
保護者との対応事例①
学校
:本名の呼び方をお尋ねします。お子さんの本名の母国語読みをご存知ですか?
保護者:はい、知っています。○○○○(本名)といいます。でも、うちは通名を希望してい
ますので、通名でお願いします。
学校
:(「本名使用についてのお願い」プリントを配布し)本校では、本名で通学されます
ことを希望しており、そのための学校づくりをしています。どうか、入学までよくお
考えになって下さい。後日お考えを詳しくお聞きしたいと思っておりますので、よろ
しくお願いします。
保護者との対応事例②
保護者:私たちの時代は通名があたりまえと思ってきましたが、今はどうなんでしょうか。ど
うしようか、少し迷ってるんですが・・・
学校
:(「本名使用についてのお願い」プリントを配布し)ぜひ本名で通学されることを希望し
ます。
本校には、母国語学級もあり民族講師とともに在日外国人教育をすすめています。
安心して、本名でご入学ください。
【入学説明会】
学校長から学校教育方針を保護者に伝えるときは、母国語学級があることや、本名を呼び、名
のる意義を伝え、具体的な取り組みについては外国人教育主担者が説明をするなどし、自分の民
族を明らかにして生きることや通学することのよさをすべての保護者が理解できるように内容を
工夫しましょう。
さらに、違いを認め合える仲間づくり、集団づくりの観点から、本名で生活することは在日韓
国・朝鮮人児童や保護者だけでなく、すべての児童、保護者にとっても意義あることとして伝え
ることが重要です。
そういう学校の姿勢が、外国人保護者の安心感につながります。
【家庭訪問】
本名の意義を伝えるために、保護者と個別の話をすることは学校との信頼づくりを構築するた
めにも欠かすことができないものです。本名に否定的な保護者ほど、民族に対する思いやこだわ
りを持つ場合が多く、簡単には保護者の本音(思い)を知ることはできません。個別の話をする
中で、保護者は自分の生いたちを語り、時として差別を受けた体験を話し、日本社会への不安や
あきらめを口にする場合もあります。また、「そんなに民族にはこだわっていない」という保護
者が、話をしていくにつれ、「まだまだ、差別はありますね」という本音(思い)を話されるこ
ともあります。自分の民族を考えない保護者はひとりとしていないといっても過言ではありませ
ん。そんな、保護者の思いを家庭訪問を通じて知り、保護者の不安を学校が受け止め、しっかり
と取り組んでいくという姿勢を伝えましょう。保護者の信頼感は、真剣に取り組もうとする学校
の姿勢や教職員の熱意が伝わることで得られるものではないでしょうか。
「保護者との信頼関係がまったくないのに、本名の話をするのは抵抗がある。」という意見を
聞く場合があります。確かに、信頼関係が十分でない中で、本名を名のる意義だけを伝えても保
護者は受け入れることができないという場合もあるようです。学校側の思いだけを伝えると、保
護者はかえって抵抗を示す時もあるかもしれません。信頼関係をつくるために、本名の話をする。
つまり、学校は外国人保護者としての思いをしっかりと受け止めるために、本名の話をするのだ
という基本姿勢を忘れず、地道な働きかけを積み重ねていくことが大切です。
【入学式】
入学式は、新入生をむかえる大切な日です。初めて通学する学校がどんな取り組みをしている
学校なのかを児童や保護者に正しく知ってもらう日です。そのためにも、掲示物や舞台発表など
を通じて、在日韓国・朝鮮人の子どもをはじめ、他の在日外国人の子どももいることがわかり、
それらの子どもたちが生き生きと学校生活を送っているようすが伝わるように工夫してはどうで
しょうか。
2.6年間の主な取り組み
本名の意義は在日韓国・朝鮮人児童にとってのみならず、まわりの児童にとっても大切な課題
であるということは改めて言うまでもありませんが、本名を呼び名のる意義を学校全体で認識す
るためには、継続したきめ細かい取り組みが必要です。
ここでは、6年間を通した指導内容として、A小学校の事例を紹介します。
指導内容例
学習内容・主な活動例
テーマ:「遊びを通して、さまざ 遊びを通じて、いろいろな文化があることを知る
まな文化を知る」
○本名で通う児童を通じ、韓国・朝鮮人の友だちが学級
・母国語学級活動報告
にいることを理解する
1 ・母国語学級入級への取り組み ○自分の名まえについて語ったり、学習してきたことを
年 ・自分の家族
・みんなで遊ぼう
みんなに知らせる
○生活科での「生い立ち学習」など
○保護者などから昔遊びの聞き取りを通じてさまざまな
遊びを体験する
テーマ:「言葉を通してさまざま 国語教材等を通じて、言葉のちがいを知る楽しさを体験す
2
な文化への関心を持つ」
る
・自分の名前に誇りを持つ
○韓国・朝鮮語の発音を地域の方にしていただき、上手
・名前のハングル表記などの学習
年 ・大きくなったらわたしたち
な発音に対して関心をもつ
○母国語学級で学んだ歌や言葉を学級に伝える
○学級で本名を呼び合う取り組みにつなげる
○生活科での「聞き取り学習」など
テーマ:「地域の様子を知る」 地域に興味を持ち、地域を知る
・社会科「校区のようす」
・まちたんけん
3
・母国語学級発表会
年 ・文学教材などでの取り組み
・市のうつりかわり
○校区めぐりの学習の中に民族的な文化施設などの訪問
を位置づけ、交流を通じて学習を深める
○民族楽器の練習・発表を通じて、民族への理解を深める
○国語科「三年とうげ」での取り組み
○アジアの国々の民話等、諸外国の民話に親しむ
○小学校の歴史や母国語学級のあゆみを学ぶ
テーマ:「隣接する各市の文化を 隣接する市の文化を知り、視点を広げる
4
年
知る」
○「まちづくり」の単元で、在日外国人教育を取り入れる
・社会科の「まちづくり」単元
○民族学校の子どもたちとの交流を深めることで、互い
・近隣の学校との交流
・世界の国々の文化を知ろう
の文化を大切にする気持ち育てる
○コリアタウンフィールドワークを通じ、学習を広げる
・フィールドワーク
テーマ:「交流の文化を学ぶ」 韓国・朝鮮の文化を知り、体験する
・夜間学級の見学・交流
・社会科「伝統工業」学習
・国際理解教育などの取り組み
5
年
○夜間学級で学ぶ人との交流から、学ぶ意欲や自分の行
き方について考える
○食べ物や言語、服装などについての調べ学習
・国語科「わたしたちの学校生活」 ○伝統的な日本文化についての調べ学習
の単元
伝統工芸の学習の中で、朝鮮人の陶工の歴史や思いに
学ぶ
○家庭科調理実習を通じて各国の料理にふれる
○国語科で自分の伝えたい体験を書く
テーマ:「歴史から生き方を考え 韓国・朝鮮と日本の歴史的なつながりから自分の生き方を
る」
考える
・夜間学級生からの聞き取り
○聞き取り学習を通じて「生きざま」に学ぶ
・修学旅行での聞き取り
また、韓国・朝鮮の歴史について学習を深める
・社会科の歴史分野において、 ○在日韓国・朝鮮人被爆者からの聞き取りを通じ、学習
6
年
隣国との関係史を学習
を深める
・社会科の公民分野において、 ○歴史的認識を理解させ、今後の日本と外国との友好関係
基本的人権についての学習
を構築していく
・国語科「ガイドブックを作ろう」 ○在日外国人の人権について学習する中で、本名につい
ての学習を深める
○国語科のガイドブック作りに、在日外国人にかかわる
施設や見どころを作成する
取り組みを進める中で、本名でいこうかどうか考えていた子どもが、まず学級の中で本名で生
活することを友だちに話し、その後、学年全体でも話をし、本名を呼び名のることが自然となっ
ていくことは少なくありません。もちろん学校だけの取り組みではなく、保護者との連携があり、
保護者の子どもへの本名に対する思いがいい形でひきだされていくということもあるようです。
3.卒業時のとりくみ
<中学校編>を参照ください
<中学校編>
1.入学時の取り組み
【新入生ってどんな子!?】
教育活動をすすめるに当たっては、生徒を理解することが必要です。生徒一人ひとりを正しく理解す
るためには、多くの情報を集める努力をするのは当然のことです。特にその生徒が朝鮮半島に民族的
なルーツをもっている場合には、民族についてどのような理解と認識をもっているのか、また小学校
でのこれまでの取り組みをいっそう発展させるためにも、小学校でどのような実践をしてきたのかを
理解することが大切です。
具体的には、次のような留意点が考えられます。
①母国語学級がある場合、どのように関わってきたか。
②本人及び保護者が、民族についてどれほど認識をもっているか。
③本名について
・母国語に近い発音で読めるか。
・小学校では本名で呼ばれていたか。
④小学校では在日外国人教育(国際理解教育・多文化共生教育を含む)をどのように取り組ん
でいたか。また、その時の生徒の様子はどうであったか。
⑤その他、必要な事項
【中学校は大丈夫かな!?】
○入学式を前にして
中学校での新たな学校生活には、だれもが不安を持つものです。特にその生徒が朝鮮半島に民
族的なルーツを持っている場合、中学校が在日外国人についての教育にどのように取り組んでい
るのか非常に敏感になっているものです。そのような時こそ、学校の人権教育(在日外国人教育・
国際理解教育など)の取り組みをしっかりと示すチャンスではないでしょうか。
①保護者が就学届を学校に持ってきたとき。
[管理職が対応]
・学校の人権教育の基本的な考えを明確に説明する。
・本名を大切にしている教育方針を説明する。
②入学式を前にして
・場合によっては、保護者と事前に連絡を取り合うことが必要なこともある。
【入学式にて】
学校長が祝辞のなかで、人権教育について触れるときには朝鮮半島に民族的なルーツを持っている子
どもの存在に触れるとともに、あわせて本名の大切さについてふれることが、本名を名のるきっかけ
となり、また保護者や地域の人たちの啓発につながるのではないでしょうか。子どもたちは、地域の
人たちに見守られて成長していきます。本名を大切にする地域の環境を育てていくためにも、入学式
での祝辞は絶好の機会と言えるのではないでしょうか。
学校長による人権教育の推進の話に加えて、人権教育(在日外国人教育)主担者からのきめの細かい
実践的な説明は、保護者を含めて、子どもたちの心に深く入る機会になるのではないでしょうか。
本名を大切にする話は、朝鮮半島に民族的なルーツをもっている子ども、保護者にとって、おおい
に勇気づけられるのではないでしょうか。
さらに、本名を名のる取り組みは入学式だけでなく、母国語学級の入級式や文化発表などでも取り
組んでいる学校があります。特に入学式の後の歓迎行事の場での朝鮮文化の発表は、子どもたちを勇
気づけ、地域の啓発にもおおいに効果があるのではないでしょうか。
2.3年間の主な取り組み (B中学校の事例)
●違いを認め,それを豊かさに変えていく集団づくり
目
標
自
●本名を正しく知る(漢字・ハングルで書け・読める)
●生活を出し合い、仲間との出会いを大切にする
尊
●クラス(学年・地域)の仲間との出会いを通して
感
●母国語学級への参加、見学を通して
情
1
を
年
●人権教育(多文化共生教育・国際理解教育)を通して
内
高
容
め
・「かけがえのない自分」を意識し,自尊感情を育む。
・在日韓国・朝鮮人の生徒は自分が朝鮮半島に民族的ルーツを持ってい
ることを肯定的に受け止める。
る
・日本人の生徒は友人が朝鮮半島に民族的ルーツを持っていることを違
いとして肯定的に、そして尊重しながら受け入れることが出来る。
・集団(クラス・学年・学校)づくりにおいて,それぞれに違いがあるこ
人
目
●日本と朝鮮のかかわりを歴史を通して学ぶ
権
標
●今日の在日韓国・朝鮮人の状況と課題を自分たちのこととして考える。
感
●日本と朝鮮の友好の歴史を知り、近・現代の不幸な時代がその一部分に
覚
2
を
年
高
過ぎないことを知り、それを相対化できる視点を養う。
内
●植民地時代を歴史の事実として正しく認識し、今の自分たち自身の人間
容
関係や、社会関係のゆがみや差別的状況をのりこえるきっかけをつかむ。
め
●違いがあるからこそ、ゆたかな人間関係(社会関係)に育だっていく可
る
能性があることに気づかせる。
●本名で卒業する(その友だちを励ます)大切さを学ぶ。
自
目
分
標
の
生
き
方
を
創
る
●地域の中で生きていく自覚を育み、「本名」で生活する意義を認識する。
●社会を見つめ将来への展望を持つ。
●地域や社会で本名で生き、活躍している人々の様子を知る。
3
・ビデオ教材、本人へのインタビユ−、調べ学習等。
年
内
容
●入居差別や就職差別などの民族差別の例とそれを解決しようとしている
人々の姿を学ぶ
・通称名(日本名)で日本籍を取得(帰化)した人たちが再び民族名を
名のったという事例など。
3.卒業時の取り組み
【卒業証書って何!?】
その人がその学校を卒業したことを証明するものです。
証書の名前については、住民票または外国人登録原票記載事項証明書等に記載されて
いる名前を使
用することが原則です。
① その人の名前は「本名」以外にない。
<エピソード>
在日韓国・朝鮮人のある生徒が、高校を卒業してからアメリカに留学することになりまし
た。無事アメリカの大学の許可もおり、必要な関係書類を提出することになりました。さて
学歴のところで中学校の卒業を証明するものとして、卒業証書を提出しました。ところが、
その書類は無効、意味のないものとされて突き返されたのです。なぜかというとその卒業証
書の名前には本名ではなく、日本名が記載されていたからです。アメリカの大学の事務手続
きのなかでは、生徒の名前はすべて本名でした。また、通名などというものは公文書では一
切通用しないのは世界中のどこでも同じです。ですから、その卒業証書は、その生徒の卒業
を証明するものにはならなかったのです。
その後のことですが、その生徒は日本に帰り卒業した自分の中学校に行って、本名で卒業証
明書を書いてもらった後、再びアメリカに行って無事、入学したそうです。
②2枚あるの?
卒業証書は1枚という原則をもとに、保護者の理解を求めていくことが大切です。
③ハングル文字で書かれた名前について
漢字圏でない民族の生徒もいます。これからもっともっと増えるでしょう。その生徒 の卒業証書
をカタカナや、漢字で書くことはどうしてもおかしなものになります。また、
もあるように基本的にはその人の国が使用している言語による表現が
前のエピソ−ドに
世界基準です。
日本の高校でも、在日韓国・朝鮮人生徒の卒業証書が、ハングルで記載された例があ
ります。
【高校入学願書の名前記入】
高校にとって、本人確認の大切な資料です。
生徒が、韓国・朝鮮人であることをはっきりと表すことができるのが名前の欄です。ですから、本名
で記入することが大切です。どうしても通称名で記入するときには、本名を記入し、(
)をつけて
通称名を書くこともできます。通称名だけを書いた場合、その生徒は日本人と見なされ、さまざまな
面で不都合な状況を生じることがあります。
たとえば…
○朝鮮奨学会への案内情報
朝鮮奨学会は民族の子どもたちに奨学金を給付する団体で、奨学金は無返還で多くの生徒に給付
されています。日本人生徒と見なされて、このことの案内が不十分になる可能性があります。
○卒業後の進路指導において
残念ながら、今なお在日韓国・朝鮮人生徒への差別的な就職状況があります。高校としてもその
ことを十分踏まえた進路指導を行っています。ですから、その生徒が入学のときから韓国・朝鮮
人生徒であることを知っておく必要があるのです。
○民族的自覚を高める教育実践から
多感な高校時代において、民族的な教育活動に触れる機会が大切です。高校側からもその必要
性が指摘されている現状があります。また、近年、そのような実践が多く報告されています。そ
のような機会に触れさせるためにも、入学当初より韓国・朝鮮人生徒であることを明確にしてお
くことが大切です。
これらのことを生徒に十分説明をすることは、大切な情報伝達であり、日本人生徒にとっても知っ
ておくべき重要な事実です。学活等の時間を使って話しておきましょう。
【卒業式】
卒業式には、たくさんの保護者や地域の人たちが来られます。地域の人たちは、案外だれが韓国・朝
鮮人であるのか知っておられるものです。そのような人たちの前で、通称名で呼ばれて卒業するのか、
本名で呼ばれて卒業するのかは、自分がこれからどう生きていくのかを宣言するといった面もありま
す。そのためにも、地域で韓国・朝鮮人であることに誇りを持って、生きてほしいものです。
また、日本人の生徒が韓国・朝鮮人の友人と学校生活を送ってきたことに気づくことは、これからの
人生で出会う韓国・朝鮮人に対して、プラスイメージを持つことにつながるのではないでしょうか。
一番大切なのは、自分自身に対してです。新たな人生のスタートにあたり、自分が韓国・朝鮮人であ
ることを見つめて、それを魅力の一つとして受けとめながら卒業していきたいものです。これは、ど
の生徒にも当てはまることです。
そんなとても素敵な機会が卒業式ではないでしょうか。