ＩＤＦリーダーズブリーフ ２０１３年１０月 １９号 ＩＤＦ文書をＪＩＤＦ事務局が翻訳 今号の特集記事 コーデックス食品規格委員会 第３６回コーデックス食品規格委員会は、世界の酪農乳業にとって新 しい重要なスタンダードやその他の文書を採択しました。ＩＤＦは技 術的な専門性を提供することにより意義深い貢献を果たしています。 専門家の見解：栄養豊 そのいくつかを例示すると： かな食事で健康維持 コーデックス食品規格 委員会 ＧＤＡＡ報告セッショ ン、ＩＤＦワールドデ イリーサミット２０１ ３ 年長乳児および幼児用の調整補助食品に関する改訂指導書 年長乳児および幼児の健康への重要性を認識して、ＩＤＦはコーデッ クス栄養委員会に専門技術を提供することで指導文書の改訂を支援し ました。新しい方針書では、たんぱく質の品質を評価する道具として ＩＤＦ炭素および水フ たんぱく質消化補正アミノ酸スコア（ＰＤＣＡＡＳ）を参照していま ットプリントガイド す。ＩＤＦは、最新の科学的な知見と方法に従いたんぱく質の品質を ＩＤＦ世界の酪農情況 測定する考え方を支持します。グローバルデイリープラットフォーム （ＧＤＰ）と共同して、ＩＤＦは新しく改善された測定方法の消化必 ２０１３ 須アミノ酸スコア（ＤＩＡＡＳ）を十分認めてもらえるように努力を 続けています。 微生物的な基準の確立と適用のための改訂コーデックス原理と方針書 1 この改訂は食品安全管理制度、とりわけ微生物学的リスク管理基準の 急速な発展を反映して開始されました。ＩＤＦは食品事業者によるＨ ＡＣＣＰ制度の運用成績を確認するために微生物学的基準の見本をつ くる助言者に指名されました。その採択された改訂文書は乳製品およ びそれ以上について消費者保護を確保するために堅固な法的基盤とな ＩＳＯとＩＤＦの合同作業 は世界の酪農乳業セクター ります。 新しい乳製品のスタンダ ードが毎日実施される数 百万回に及ぶ乳の試験の 精度を向上させます にとって、重要な分析スタ ンダードの更新情報をもた らしました。 酪農乳業用語の保護 コーデックスアジア地域委員会（ＣＣＡＳＩＡ）から提案された非発 ISO 9622|IDF 141 は、中赤外 酵性大豆食品の表示方法に係るコーデックス委員会の議論にＩＤＦは 分析機器で乳および乳製品 積極的に貢献しています。「豆乳」という用語に懸念を抱くＩＤＦの を試験するための方針書を 会員国その他の政府派遣団が下した調停に基づき、ＣＣＡＳＩＡが適 含んでいます。 切な地域スタンダードの開発継続を推進するなかで、コーデックス食 品規格委員会は、ＣＣＡＳＩＡがこの問題を課題として取り上げるべ きであると決めました。 コーデックス規格の入手先： www.codexalimentarius.org/standards/en/ 専門家の見解：栄養豊かな食べ物で健康を維持する 世界中から集まったＩＤＦと他の７団体が、「栄養豊かな食べ物で健康を維持する：メタボリック シンドローム、心血管疾患、肥満およびサルコペニア筋減少症の予防における乳製品の役割」と題 するシンポジウムを共催し、乳および乳製品の確かな栄養の恩恵を提示しました。このシンポジウ ムはスペインのグラナダで９月１９日に、第２０回栄養科学国際連盟(IUNS)栄養会議と連動して開 催されました。以下に講演の抜粋を示します。 栄養豊かな乳という風呂敷 「乳は健康的な食事の指標です」と述べましたが、何が問題ですか？ 健康的な食事指数または食事に不足がちな９つの栄養素に基づいて食事の質を評価するとき、乳お よび乳製品の消費量が食事全体の品質を予測する材料となります。乳が必要不可欠な栄養素の源と なり乳やヨーグルトの消費量を増やすことで食事の全体的な品質を向上させるからです。 カリウムの研究が不足しているとのことでしたが、何ができますか？ 2 カリウムの推奨量を定めたときに用いられた主な結果は、血圧を下げるカリウムの効果に関するも のでした。最近の科学的エビデンスは、骨の健康と心血管疾患ＣＶＤへの効能も示されています。 どの食べ物でもいいのですが、現在はじゃがいもでカリウムの生物学的有用性について最初の研究 を行っています。しかし乳やその他の栄養源の試験も必要です。様々な年齢グループにおいてカリ ウムと多くの健康状態についてランダム化比較試験ＲＣＴがもっと必要です。 栄養科学国際連盟(IUNS)栄養会議で乳製品の摂取を促すことがどうして大切ですか？ 成長のために必須の栄養素をすべて提供する食べ物は２つしかありません。乳と卵です。コレステ ロールが懸念され消費量が落ちたため十分な量の栄養素を供給するために乳および乳製品が極めて 大切になりました。 乳、メタボリックシンドロームおよび血圧：第３回フランス集団研究ＭＯＮＩＣＡから科 学的エビデンス ＭＯＮＩＣＡプロジェクトとはどういうものですか？ ＭＯＮＩＣＡプロジェクトとは、心血管疾患の傾向と決定要素を監視するプロジェクトで、世界保 健機構ＷＨＯによって始められ、１９８５年から１９９５年まで実施されました。主に欧州に３７ カ所のＭＯＮＩＣＡセンターが開設され冠動脈疾患の発生を監視することが目的でした。 フランスにある３か所のＭＯＮＩＣＡセンターで１９９５－１９９６年に実施された最新の集団調 査では、３日間連続で参加者が摂った食べ物と飲み物を記録しました。 これまでの成果は？ フランスにおける最新の集団調査から得られた栄養データを分析すると、１４年間の追跡調査期間 でいくつかの食事パターンが総死亡率の低下と関係することが分かりました。とりわけ、乳、果物、 野菜および穀類を多く摂取することと死亡率の低下とが関係し、その一方アルコールや食塩の摂り すぎが死亡率の上昇と関係していました。総じて、多様な食事パターンが死亡率の低さと関係して いました。 冠動脈疾患の健康を良好な状態に維持するのに乳および乳製品が果たす役割は何ですか？ 乳および乳製品の成分のうち、カルシウムと恐らくある種の乳たんぱく質が血圧を下げる効果があ ります。カルシウムは腸内の脂肪吸収にも関与するとされています。 疫学調査データによると、一般的に乳および乳製品の摂取量が多い人は高血圧、メトボリック症候 群または糖尿病に罹患する可能性が低くなります。さらに、文献やメタアナリシスを精査すると、 乳および乳製品を最も摂取したヒトで虚血性心疾患や脳卒中のリスクが有意に下がることが示唆さ れました。しかしながら、冠動脈疾患の発生リスクを低下させる点で乳および乳製品に因果関係が あるかどうかを評価するには臨床試験が不足しています。 高脂肪乳製品と肥満、冠動脈疾患およびメトボリック症候群との関係 高脂肪乳製品と肥満、冠動脈疾患およびメトボリック症候群との関係についてシステマティック・ レビュー（文献の網羅的調査）を行う目的は？ 乳製品の脂肪／全脂肪乳製品と肥満のみならず心血管代謝病との関係について、広範囲にわたる文 献を通覧することを目的としました。肥満、冠動脈疾患およびメタボリック症候群のリスクを低減 するために低脂肪の乳製品を推奨する策が疫学的なエビデンスに支持されていないという事実が主 な動機です。事実、研究の大半は、低脂肪乳製品と全脂肪乳製品との間に無関係か、もしくは全脂 肪乳製品を消費する個人のほうにリスクが低いことが示唆されています。 貴殿の研究によると、高脂肪乳製品よりも低脂肪乳製品を奨めますか？ 3 全脂肪乳製品よりも低脂肪乳製品のほうがよいと推奨されていますが、観察的な研究から導いたこ れまでのエビデンスには支持されていないという結論に達しました。しかしながら、文献レビュー が観察的な研究に焦点を当てているので、慎重に考えて何かを推奨しませんでした。しかし、これ らのデータが示唆するものは、科学界や一般大衆に十分理解されていない何かのメリットが全脂肪 乳製品にあるかもしれないということです。 今後の研究余地は？ 科学者の世界では、飽和脂肪酸やコレステロールの起源となる乳脂肪に重く焦点を合わせてきまし た。両方とも、ＬＤＬとＨＤＬの比率を増やし、冠動脈疾患のリスクを高めることへの関与が知ら れています。しかしながら、この比率について飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いは思ったよりも小 さいこともよく理解されています。さらに言えば、乳製品の脂肪酸の大半はＬＤＬコレステロール を上げる種類の脂肪酸ではありません。事実、乳脂肪は約４００種類の脂肪酸を含みますが、その 多くは総脂肪量のわずかな量しかありません。新しいデータによると、これらの少ないほうの脂肪 酸には、体内でホルモン様の特異な効果を発揮するものがいくつかあることを示唆しています。 高齢者における筋肉量の維持と乳たんぱく質：筋委縮症（サルコペニア）の予防 筋委縮症（サルコペニア）の原因は？ 筋委縮症（サルコペニア）という用語は、通常、年齢とともに失われる筋肉量と筋力を表現するこ とに用いられています。最近の研究によると、アナボリック抵抗という造語、すなわち食品摂取し て同化する骨格筋組織の感受性が年齢とともに低下し、筋肉量が相当量失われることが示唆されて います。 筋委縮症（サルコペニア）の予防と対処の治療戦略で何が一番重要ですか？ より活発なライフスタイルと食事にたんぱく質を十分取ることが先決です。高年齢者においては、 抵抗運動（筋力トレーニング）が筋肉量と筋力を実質的に増やすために非常に有効で適しています。 食事にたんぱく質を補強することが筋力トレーニングの恩恵を増大し、ひいては筋肉量と筋力の増 加に大きく繋がります。 筋委縮症（サルコペニア）の治療戦略にあたり、食事中のたんぱく質が一定の役割を果たすとお考 えですか？ 私の研究グループや他の研究者の多くが、食後の筋肉たんぱく質合成速度を刺激するために、様々 なたんぱく質源の中で、たんぱく質の消化吸収速度論やアミノ酸組成が重要な役割を演じることを 示してきました。食事のたんぱく質で消化と吸収が早くロイシン含量が高いもの（たとえばホエー たんぱく質）は、より強い食後筋肉たんぱく質合成反応を引き出すように見えます。 筋委縮症（サルコペニア）の解決に乳はどのような役割を果たすとお考えですか？ ホエーたんぱく質、カゼインたんぱく質および乳たんぱく質全体が高齢者において、食後のみなら ず運動後の筋肉たんぱく質合成速度を強く刺激することができる高い品質のたんぱく質源となりま す。長時間に渡る筋肉トレーニング中に乳たんぱく質を補助食品として摂取すると、筋肉量と筋力 ともに増加することが示されました。 ＧＤＡＡ報告セッション２０１３ ＩＤＦワールドデイリーサミット２０１３において、１０月２８日に行われる酪農乳業関 係者によるグローバルな行動計画（ＧＤＡＡ）では、食糧需要の高まりと共に人口増に対 処するグローバルなデイリーセクターの取組みが報告されます。 4 この課題に対応するには原料やエネルギーのような投入物を最適利用しながら生産量を高めること が求められます。バリューチェーン全体を通じて、持続可能な成績を改善し続ける一方、デイリー セクターとしては、高品質で栄養価が高く美味しい乳製品の提供に傾注し、土地、水、飼料、燃料 および肥料をさらに効率的に運用しつつ、排出ガスと固形分の削減、水質、土壌の健全性および生 物多様性を維持してゆきます。 この目的のために、ＧＤＡＡ報告セッションでは、持続可能性に係る共通の立場を発展させるため にグローバルなデイリーセクターがこれまで取り組んできた作業の詳細が報告されます。またグロ ーバルな酪農乳業持続可能性の枠組みが初めて披露されます。多方面の利害関係者から成るチーム の仕事とデイリーバリューチェーン全体を通してあらゆる階層で現在の活動がどのように補完され るかが討議されます。 カーボンフットプリントとウォーターフットプリントの方針書 「デイリーセクターのための共通カーボンフットプリント：標準ライフサイクルアセスメント のＩＤＦガイド」は、急激に発展するこの分野において最新の進歩状況を把握するために見直 しをかけています。 グローバルな水不足、食糧確保への懸念という脈絡のなかで、ウォーターフットプリントが農 業および食糧セクターにおいて重要な持続可能性の指標として浮上してきました。ＩＤＦは共 通の方針書を策定し、ベンチマークを確立し、水資源の管理向上を目指す戦略の開発に努めて まいります。 １１月１日、横浜で開催されるＩＤＦワールドデイリーサミットの環境特別講演会で両方の方 針書に関するプレゼンテーションが行われます。 仮訳：ＪＩＤＦ事務局 編者注：仮訳の正確性、完全性、有用性等についてはいかなる保証をするものではありません。参考資料として 扱い、内容に疑義が生じた場合は英文の原文をご確認ください。 5
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