フランスの食文化

フランスの食文化
チーズの種類が246もある国を、君はどうやって統治するというんだい?
シャルル・ド・ゴール
肥沃な土、多様に変化した地形と気候、そして様々な文化と千年の伝統。ユネスコの「無形文化
財」にも指定されているように、フランスには豊かで世界的にも認知されている食文化がありま
す。しかし本当のフランス食文化とは、地方や村々、各家庭におけるそれぞれの特徴的な『味』
と言った方がもっと正しいのかも知れません。
それではフランスでよくみられる食べ物、そしてその食べ物にまつわる特別な意味などをご紹介
します。
Map of French food
第 63 回世界家庭料理~フランス料理編~
キャベツのスープ
『俺のキャベツのスープ、小僧、お前の内臓を香らせ
る、五臓六腑の端から端まで心地良い。お前の体に染
みついて、頭にだって効くときた。教えてやろうか?
このスープはお前を今よりも良い人にしてくれる。』
レ・グラウデ(1981)
La Glaude and La Denrée
eating cabbage soup
キャベツのスープは名前のとおり、キャベツを主な材料とした、フランスでもっとも伝統的なス
ープです。美味しそうな見た目と素材の味を保つ調理法は、中世のスパイスの効いた料理法から
よりナチュラルな調理法への移行において、重要な転機となりました。よりシンプルで自然な料
理法、キャベツ本来の味を味わいたいという事は、『私がキャベツスープを食べているとき』と
いう詩に集約されています。値段と収穫の容易さから、昔は田舎の方でとても一般的でした。キ
ャベツのスープは歌や本、更には映画にまで登場し、フランス文化の中では特別な意味を持って
います。
サーモンのキッシュ
このキッシュはセイボリー(甘くない、惣菜系、食事系)で、クラスト(外側の生地)にクリー
ムと卵などを混ぜたフィリングを流し込んで焼いたものです。伝統的なフランス料理として知ら
れていますが、実際はドイツ発祥で、
「キッシュ」は「ケーキ」を意味し、ドイツ語の「Kuchen」
が語源です。少なくとも 16 世紀からは伝わっていると言われています。キッシュは色々な中身
(具材)
、冷たくても温かくても召し上がって頂けます。でも一番人気のキッシュは「キッシュ・
ロレイン」でこれはカスタードフィリングにベーコンかラードを混ぜたものです。フランスのど
のベーカリーやケータリングでも見つけることが出来ます。
第 63 回世界家庭料理~フランス料理編~
クレープ
クレープとは、とても薄いパンケーキの事です。一般的な材料は、小麦粉、卵、牛乳、バター、
そして一つまみの塩です。クレープは大きく分けて 2 種類あります。いわゆる「クレープ」と呼
ばれる、少し甘味のある小麦粉で出来たもの。それから「ガレット」は甘くないそば粉で出来た
ものです。冷めても温かくても、メインディッシュとしてもデザートとしても、そのままでもど
んな中身(具材)でも召し上がって頂けます。そしてふつうはりんごジュースやサイダーと一緒
に食べます。ブリタニー地方やノルマンディー地方が有名ですが、フランス、ベルギー、ケベッ
ク、そしてヨーロッパやアフリカの多くの地域で食べられています。レストランや、地方のマー
ケット、そしてお祭りなどで見つけることが出来ます。フランスでは、クレープは伝統的にキャ
ンドルマス(2 月 2 日)に出されます。この日は元々聖母マリアの清めの日ですが、フランスで
はクレープをご馳走する日『クレープ・デー』として知られています。
左手に金貨を握ったまま、右手に持ったフライパンで空中に放られたクレープを受けることが出
来たら、その年にお金持ちになれると信じられています。
第 63 回世界家庭料理~フランス料理編~
ガレット・デ・ロワ(王様のケーキ)
キングのケーキは多くの国において、クリスマスシーズンの終わり(1 月 6 日)のキリスト教の
公現祭に関係したタイプのケーキです。フランスでは2つのバージョンがあります。一つ目は北
フランスのもので、シュー生地が重なったものの中央にアーモンドミックスかりんごがぎっしり
詰まったもの。それから南フランスのものは、環状(ドーナツ型)のブリオッシュにキャンディ
ード(溶かした砂糖を絡めて、表面が固くコーティングされた状態)の果物と砂糖、王冠の色と
形に真似たものです。
キリストの『公現祭』にちなんで、
‘王様を引き当てる’という伝統があります。La Feve と呼ば
れるフィギュアがケーキの中に隠されており、これが入っているスライスを選んだ人が一日王
様になり、次のケーキをあげなければなりません。ケーキが公平に分配されるように、伝統で
は一番若い人がテーブルの下に潜って、ケーキを配る人に次に誰に配るか名前を告げます。更
に付け加えると、ケーキは人数分+1 人分多く切り分けます。この余分な 1 人分は『神の取り分』
または『乞食の取り分』と呼ばれます。予期せなかったゲストの分、又は近くを通る最初の貧
しい人にあげるなど様々な解釈がありますが、キリスト教の「施し」の教えを伝える伝統とな
っています。
Kingcake sharing: from the village to the presidential palace
第 63 回世界家庭料理~フランス料理編~