知識工学 第07回 ・基本的な知識表現と推論 -概念階層と論理型言語の融合 -概念辞書とオントロジー 担当: 馬場 博巳 論理型言語における概念階層の取り扱い 概念階層 サッカー少年は若者である. 東京のサッカー少年はサッカー少年である. 事実 太郎は東京のサッカー少年である. サッカーはスポーツである. 太郎の趣味はサッカーである. Prologによる記述 若者(X) :- サッカー少年(X). サッカー少年(X) :- 東京のサッカー少年(X). 東京のサッカー少年(太郎). スポーツ(サッカー). 趣味(太郎, サッカー). 2 知識工学 第07回 2014/06/02 Prologへの質問 「太郎は若者ですか?」という質問 ?- 若者(太郎). yes. 「スポーツを趣味とする若者はいますか?」とい う質問 ?- 趣味(X, Y), 若者(X), スポーツ(Y). X = 太郎 Y = サッカー 3 知識工学 第07回 2014/06/02 問題点 概念階層上で距離が離れている場合,介在する ルールが多くなり,推論ステップが非常に多くな る. 概念階層とルールを別形式で記述した方が,概念 を整理しやすい. ⇒ 概念階層とルールを別個に扱う論理型言語が 開発された.(LOGINなど) ※概念の検索が高速に行える. 4 知識工学 第07回 2014/06/02 概念階層と論理の融合 概念階層 論理 p(・, ・) ← q(・), r(・, ・) 5 知識工学 第07回 2014/06/02 概念階層の例 T 地域で分類した人 年齢で分類した人 スポーツ 東京人 大阪人 若者 サッカー 少年 大阪の 野球少年 東京の サッカー少年 三郎 太郎 球技 野球少年 野球 サッカー 格闘技 ラグビー 次郎 ⊥ 6 知識工学 第07回 2014/06/02 用語説明 トップ(T):最上位の概念 ボトム(⊥):最下位の概念 束構造(そくこうぞう)(lattice structure):ど の2つの概念をとっても,共通の上位概念と共通 の下位概念を持っているグラフ構造 最大下界(さいだいかかい)(Greatest Lower Bound: GLB):下にたどった時,共通概念の最 も上位のもの 最小上界(さいしょうじょうかい)(Lowest Upper Bound: LUB):上にたどった時,共通概 念の最も下位のもの 7 知識工学 第07回 2014/06/02 概念辞書とオントロジー 概念階層やルールベースなど,知識ベースの作成 は負担が大きい. 膨大な知識を矛盾なく整理し,記述せねばならない. 専門家のノウハウは明文化が困難である. 従来の多くの知的システムの知識システムは,シ ステム固有の物で再利用できない. もし,知識ベースを他のシステムと共有したり, 再利用する事が出来れば,知識ベース開発の負担 軽減となる. ⇒ オントロジー(ontology)に注目 8 知識工学 第07回 2014/06/02 オントロジーとは オントロジー(存在論)は,哲学用語で,世の中の全 ての物の共通の規定や性質を系統だてて説明する事を 目指した理論. 人工知能の分野では,明確な定義はない. ※「対象世界の概念を切り出し,概念間の関係を体系的か に,かつ一般性を持つように整理し,コンピュータで理 解が可能な形式にまとめたもの」という意味で使ってい る. オントロジーは汎用の知識ベース,あるいは,汎用の 概念辞書としての意味合いが強いが,知識ベースとは 異なる. ※知識ベースには,経験的知識もルールとして含まれるが, オントロジーに経験的知識は含まれない. 9 知識工学 第07回 2014/06/02 言語知識のオントロジーの代表例 EDR電子化辞書(日本電子化辞書研究所) 日本語語彙体系(NTTコミュニケーション科学研 究所) 日本語計算機用語辞書IPAL(情報処理振興事業協 会) WordNet(プリンストン大学) CYC(Cycorp社) 10 知識工学 第07回 2014/06/02 ARPAにおけるオントロジーの共有 米国ARPAの知識共有活動(Knowledge Sharing Effort)では,ネットワーク上のエージェントが 知識を共有するため,以下を提案している. エージェント通信言語KQML(Knowledge Query and Manupulation Language) 知識交換用言語KIF(Knowledge Interchange Format) 共通オントロジー記述言語Ontolingua 11 知識工学 第07回 2014/06/02 エージェント通信言語KQML エージェントが互いに情報を交換するための言語 で,情報を記述する言語とオントロジーを指定し て通信を行う. 記述例:「motor2 についての情報を送って欲し い.返事には,識別情報q1をつけて欲しい.」 (stream-about : language KIF : ontology motor : reply-with q1 : contents motor2) 12 知識工学 第07回 2014/06/02 知識交換用言語KIF 一階述語論理を拡張し,集合演算や非単調推論な どができるようにした言語. 記述例:「?xが?yの父親ならば,?xは男性かつ? yの親である.」というルールを表す. (forall ?x (exists ? (=> (father ?x ?y) (and (man ?x) (parent ?x ?y))))) 13 知識工学 第07回 2014/06/02 共通オントロジー記述言語Ontolingua 対象領域をオブジェクト,関数,関係の集まりと して定義するための言語. 記述例:「?authorが著者であるのは,?authorが personであって,author.nameとperson.nameが 一致していることである.」を表す. (def-class AUTHOR(?author) : def (and (person ?author) (<=>(author.name ?author ?name) (person.name ?author ?name)))) 14 知識工学 第07回 2014/06/02 インターネット上での知識共有 インターネット上でのオントロジーの標準化の試 みが始まっている. Berners-Leeが提唱するセマンティック Web(Semantic Web)は,Web上のリソースに メタ知識を付与して,エージェントがそれらのリ ソースに対して意味的な処理が行えるようにする 試みである. セマンティックWebが実現されると,エージェン トはWeb上の複数のオントロジーやリソース上の メタデータを利用し,Web上の情報を有効利用し た知的処理を実現する事が期待される. 15 知識工学 第07回 2014/06/02
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